(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】波形配管及び熱収縮緩和機構付き冷却配管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/15 20060101AFI20230509BHJP
F16L 11/20 20060101ALI20230509BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20230509BHJP
H02G 15/34 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
F16L11/15
F16L11/20
H02G3/04 068
H02G15/34
(21)【出願番号】P 2019174172
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-01-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、高温超電導実用化促進技術開発/高温超電導送配電技術開発/運輸分野への高温超電導適用基盤技術開発委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】玉田 紀治
(72)【発明者】
【氏名】矢口 広晴
(72)【発明者】
【氏名】大野 隆介
(72)【発明者】
【氏名】富田 優
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-511046(JP,A)
【文献】特開昭59-159491(JP,A)
【文献】特開平07-269759(JP,A)
【文献】特開平08-287750(JP,A)
【文献】特開2013-125647(JP,A)
【文献】特開2008-211878(JP,A)
【文献】特開昭57-057989(JP,A)
【文献】実開昭59-121584(JP,U)
【文献】特開平09-112749(JP,A)
【文献】実公平05-031321(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/15
F16L 11/20
H02G 3/04
H02G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って山部と谷部とが交互に形成された管壁と、
前記山部又は前記谷部の少なくとも一方に設けられた収縮抑制部材と、
を備え、
前記収縮抑制部材は、
少なくとも外側部が前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有し、前記山部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記山部の角度を広げるための第1部
材
を含むことを特徴とする波形配管。
【請求項2】
軸線方向に沿って山部と谷部とが交互に形成された管壁と、
前記山部又は前記谷部の少なくとも一方に設けられた収縮抑制部材と、
を備え、
前記収縮抑制部材は、
少なくとも外側部が前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有し、前記山部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記山部の角度を広げるための第1部材、
または、
前記管壁よりも小さい熱膨張係数を有し、前記谷部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記谷部の径方向内側への熱収縮を抑えるための第2部材
の少なくとも一方を含み、
前記収縮抑制部材は、前記第1部材又は前記第2部材の少なくとも一方として、周方向に沿って前記山部又は前記谷部に設けられた線状部材を含み、
前記線状部材は、前記山部又は前記谷部に沿って前記管壁の一周り以上の長さに延在す
る波形配管。
【請求項3】
前記山部及び前記谷部は前記軸線方向に沿って並ぶ複数の独立した凹凸を形成し、前記線状部材は前記管壁の周方向に沿って前記管壁の全周に亘って配置される1個以上のリングで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の波形配管。
【請求項4】
前記山部、前記谷部及び前記線状部材が前記管壁の周囲に螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の波形配管。
【請求項5】
軸線方向に沿って山部と谷部とが交互に形成された管壁と、
前記山部又は前記谷部の少なくとも一方に設けられた収縮抑制部材と、
を備え、
前記収縮抑制部材は、
少なくとも外側部が前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有し、前記山部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記山部の角度を広げるための第1部材、
または、
前記管壁よりも小さい熱膨張係数を有し、前記谷部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記谷部の径方向内側への熱収縮を抑えるための第2部材
の少なくとも一方を含み、
前記収縮抑制部材は、
前記山部より熱膨張係数が大きくかつ前記管壁の外側に前記管壁を囲繞するように配置されたスリーブで構成されることを特徴とす
る波形配管。
【請求項6】
軸線方向に沿って山部と谷部とが交互に形成された管壁と、
前記山部又は前記谷部の少なくとも一方に設けられた収縮抑制部材と、
を備え、
前記収縮抑制部材は、
少なくとも外側部が前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有し、前記山部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記山部の角度を広げるための第1部材、
または、
前記管壁よりも小さい熱膨張係数を有し、前記谷部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記谷部の径方向内側への熱収縮を抑えるための第2部材
の少なくとも一方を含む波形配管であって、
熱収縮前の前記山部と前記谷部との間の距離をλ、前記波形配管の使用時における前記管壁の温度低下量をΔT、熱収縮前の前記山部の角度をφとしたとき、熱収縮後の前記山部と前記谷部との間の距離λ’及び熱収縮後の前記山部の角度φ’は、下記式を満たすことを特徴とす
る波形配管。
0.9≦[λ×sin(φ/2)]/[λ’×sin(φ’/2)]≦1.1
λ’=λ×(1-βb×ΔT)
φ’/2=cos
-1[(R
L×(1-βs×ΔT)-R
S×(1-βb×ΔT))/λ’]
ここで、βb;前記管壁の熱膨張係数
βs;前記第1部材の熱膨張係数
R
L;前記山部の半径
R
S;前記谷部の半径
【請求項7】
軸線方向に沿って山部と谷部とが交互に形成された管壁と、
前記山部又は前記谷部の少なくとも一方に設けられた収縮抑制部材と、
を備え、
前記収縮抑制部材は、
少なくとも外側部が前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有し、前記山部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記山部の角度を広げるための第1部材、
または、
前記管壁よりも小さい熱膨張係数を有し、前記谷部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記谷部の径方向内側への熱収縮を抑えるための第2部材
の少なくとも一方を含み、
前記第1部材は、前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有する外側部と、前記外側部よりも熱膨張係数が小さく前記管壁よりも熱膨張係数が大きい内側部と、を含んで構成され、
前記山部の先端部が前記外側部及び前記内側部に挿入され、前記山部の先端部と前記外側部及び前記内側部の各々とは固着面を介して固着されていることを特徴とす
る波形配管。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の波形配管を含む内側配管と、
前記内側配管の外側に同心状に配置された外側配管と、
を備え、
前記波形配管と前記外側配管との間に真空空間が形成されていることを特徴とする熱収縮緩和機構付き冷却配管。
【請求項9】
前記熱収縮緩和機構付き冷却配管は超電導ケーブルの少なくとも一部を構成し、
前記内側配管は、
内部に冷却媒体の往路を形成する第1の前記波形配管と、
前記第1の波形配管の外側に設けられた超電導線層と、
前記超電導線層の外側でかつ前記真空空間の内側に設けられ、前記冷却媒体の復路を形成する第2の前記波形配管と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の熱収縮緩和機構付き冷却配管。
【請求項10】
基部に定位置に固定され超電導ケーブルの両端が接続される端末部を備え、前記端末部において前記超電導ケーブルの一部を構成することを特徴とする請求項9に記載の熱収縮緩和機構付き冷却配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波形配管及び該波形配管を備える熱収縮緩和機構付き冷却配管に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルは、一般に、極低温流体が流れ超電導導体層を極低温に保持する冷却管と、該冷却管の外側に設けられる断熱配管との間に真空空間を形成し、超電導導体層への熱侵入を防止する構造を有している。超電導ケーブルは非常に長い冷却管を極低温に冷却するので、熱収縮対策が重要な課題となる。例えば、2000mの超電導ケーブルを想定し、冷却管の材料をステンレス鋼とし、冷却管を常温から77Kに冷却すると、約6~8m収縮する。そのため、真空空間の外側に配置される常温の断熱配管との間の熱収縮量の差により曲がり角などで冷却管が常温の断熱配管と接触するおそれがあり、接触部位で冷却管が大きな熱侵入を受けるおそれがある。
【0003】
熱収縮の対策として、(1)超電導ケーブルの両端が接続される端末部を可動式とし、熱収縮量に応じて移動させる、(2)常温の外側断熱配管内で余剰の長さの冷却管を蛇行させて配置する、(3)超電導ケーブルに部分的に円弧状のオフセット部分を設けて敷設し、熱収縮に応じて該オフセット部分を直線状に変位させて収縮量を吸収する、等の方法が考えられる。特許文献1には、上記(3)の対策が開示されている。また、特許文献2及び3には、端末部の内部で超電導ケーブルに接続される導体の一部をフレキシブル導体とすることで、ケーブルの熱収縮に対応可能にした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-154571号公報
【文献】特開2013-143823号公報
【文献】特開2015-091162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記(1)の対策は、高電圧のケーブルを収容する端末部を可動式とすると、特に安全性に配慮した構成とする必要がある。上記(2)の対策は、冷却管を蛇行配置とすることで、外側の断熱配管と接触する可能性が高くなり、かつ冷却管全体の熱収縮を蛇行部分だけでは吸収しにくいという問題がある。(3)の対策は、冷却管と断熱配管との接触を避けながら断熱配管を冷却管の変位に合わせて変位させる必要があるために、無駄な広い空間を必要とし、超電導ケーブルのコンパクト性を生かすことができない。また、特許文献2及び3に開示された構成は、冷却管の熱収縮量が少ない場合には有効であっても、上述のように、熱収縮量が8m近くになると現実的な対応が難しいとされている。
【0006】
抜本的な解決策は、低温で熱収縮が生じない配管を実現することである。例えば、Niを36重量%含む鉄合金であるインバーと称する金属は、ステンレス鋼の1/10以下の熱膨張係数を有し、熱収縮を抑制できるが、極低温冷却時に強磁性特性が現れ、超電導材料の特性に悪影響を与えるおそれがある。
【0007】
一実施形態は、上記事情に鑑み、被冷却体に悪影響を与えずに冷却時に軸線方向の熱収縮に対応可能な配管を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)一実施形態に係る波形配管は、
軸線方向に沿って山部と谷部とが交互に形成された管壁と、
前記山部又は前記谷部の少なくとも一方に設けられた収縮抑制部材と、
を備え、
前記収縮抑制部材は、
少なくとも外側部が前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有し、前記山部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記山部の角度を広げるための第1部材、
または、
前記管壁よりも小さい熱膨張係数を有し、前記谷部に取り付けられて前記管壁の熱収縮時に前記谷部の径方向内側への熱収縮を抑えるための第2部材
の少なくとも一方を含む。
ここで、「径方向」とは波形配管の径方向を意味する。
【0009】
上記(1)の構成によれば、上記収縮抑制部材が上記第1部材を含むとき、上記第1部材の熱収縮量が山部の熱収縮量より大きいために、波形配管及び第1部材が冷却されると、第1部材が山部を径方向外側から内側へ収縮させる第1部材の熱収縮によって山部の角度を広げる力が働く。これによって、山部の角度が押し広げられるため、波形配管の軸線方向の熱収縮が抑制される。
上記収縮抑制部材が上記第2部材を含むとき、波形配管が冷却されると、上記第2部材の熱収縮量が谷部の熱収縮量より小さいために、第2部材によって谷部の熱収縮が抑制される。そして、管壁の他の部位の熱収縮によって谷部の角度が押し広げられるため、波形配管の軸線方向の熱収縮が抑制される。また、第1部材又は第2部材の熱膨張係数を選択し、山部又は谷部の角度増加分を調節することで、波形配管の軸線長さを調節できる。
【0010】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記収縮抑制部材は、前記第1部材又は前記第2部材の少なくとも一方として、周方向に沿って前記山部又は前記谷部に設けられた線状部材を含み、
前記線状部材は、前記山部又は前記谷部に沿って前記管壁の一周り以上の長さに延在する。ここで、「周方向」とは波形配管の周方向を意味する。
上記(2)の構成によれば、第1部材として上記線状部材が山部に設けられるとき、管壁の全周に亘り設けられた線状部材の軸線方向の熱収縮によって山部が径方向外側から内側へ収縮力を付加されるため、山部の角度が広がって管壁が軸線方向へ伸長し、波形配管の軸線方向の熱収縮が抑制される。第2部材として管壁の全周に亘り設けられた線状部材が谷部に設けられるとき、谷部の径方向内側への熱収縮が線状部材によって抑えられるため、谷部の角度が広がる。これによって、波形配管の軸線方向の熱収縮が抑制される。従って、線状部材の熱膨張係数を選択し、山部又は谷部の角度増加分を調節することで、波形配管の軸線長さを調節できる。
【0011】
(3)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記山部及び前記谷部は前記軸線方向に沿って並ぶ複数の独立した凹凸を形成し、前記線状部材は前記管壁の周方向に沿って前記管壁の全周に亘って配置される1個以上のリングで構成されている。
上記(3)の構成によれば、線状部材は管壁の全周を囲繞するリングで構成されているため、山部に作用する収縮力又は谷部の熱収縮に対する抑止力を十分発揮できる。
【0012】
(4)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記山部、前記谷部及び前記線状部材が螺旋状に形成されている。
上記(4)の構成によれば、螺旋状の線状部材が山部又は谷部に沿って管壁の周囲に一周り以上延在するため、山部への収縮力又は谷部の熱収縮に対する抑止力を十分発揮できる。
【0013】
(5)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記収縮抑制部材は、
前記山部より熱膨張係数が大きくかつ前記管壁の外側に前記管壁を囲繞するように配置されたスリーブで構成される。
上記(5)の構成によれば、波形配管及び上記スリーブが冷却されたとき、上記スリーブは山部より径方向の熱収縮量が増加するために、山部に対して径方向内側へ収縮させる収縮力を作用する。これによって、山部の角度が大きくなるため、波形配管の軸線方向の熱収縮が抑制される。従って、スリーブの熱膨張係数を選択し、山部の角度増加分を調節することで、波形配管の軸線長さを調節できる。また、上記スリーブの管壁外側への取付けは容易である。
【0014】
(6)一実施形態では、前記(1)~(5)の何れかの構成において、
熱収縮前の前記山部と前記谷部との間の距離をλ、前記波形配管の使用時における前記管壁の温度低下量をΔT、熱収縮前の前記山部の角度をφとしたとき、熱収縮後の前記山部と前記谷部との間の距離λ’及び熱収縮後の前記山部の角度φ’は、下記式を満たすことができる。
0.9≦[λ×sin(φ/2)]/[λ’×sin(φ’/2)]≦1.1
λ’=λ×(1-βb×ΔT)
φ’/2=cos-1[(RL×(1-βs×ΔT)-RS×(1-βb×ΔT))/λ’]
ここで、βb;前記管壁の熱膨張係数
βs;前記第1部材の熱膨張係数
RL;前記山部の半径
RS;前記谷部の半径
である。
上記(6)の構成によれば、山部の角度、管壁及び第1部材の熱膨張係数を適宜選択することで、管壁の熱収縮前後の軸線方向長さの差を10%以内に抑えることができる。
【0015】
(7)一実施形態では、前記(1)~(6)の何れかの構成において、
前記第1部材は、前記管壁よりも大きい熱膨張係数を有する外側部と、前記外側部よりも熱膨張係数が小さく前記管壁よりも熱膨張係数が大きい内側部と、を含んで構成され、
前記山部の先端部が前記外側部及び前記内側部に挿入され、前記山部の先端部と前記外側部及び前記内側部の各々とは固着面を介して固着されている。
上記(7)の構成によれば、波形配管及び上記構成の第1部材が冷却されると、山部の先端部は外側部及び内側部から上記固着面を介して山部の角度を広げる方向の力を受ける。この力は熱膨張係数の差に応じた大きさを有する。こうして、山部の角度を広げることができる。
【0016】
(8)一実施形態に係る熱収縮緩和機構付き冷却配管は、
前記(1)~(7)の何れかの構成を有する波形配管を含む内側配管と、
前記内側配管の外側に同心状に配置された外側配管と、
を備え、
前記波形配管と前記外側配管との間に真空空間が形成されている。
上記(8)の構成によれば、上記構成の波形配管を備えるために、冷却時における波形配管の軸線方向長さの熱収縮を抑制できる。従って、低温下にある内側配管と常温下にある外側配管との熱収縮量の違いに起因して波形配管が外側配管に接触するのを抑制できるため、波形配管への熱侵入を抑制できる。
【0017】
(9)一実施形態では、前記(8)の構成において、
前記熱収縮緩和機構付き冷却配管は超電導ケーブルの少なくとも一部を構成し、
前記内側配管は、
内部に冷却媒体の往路を形成する第1の前記波形配管と、
前記第1の波形配管の外側に設けられた超電導線層と、
前記超電導線層の外側でかつ前記真空空間の内側に設けられ、前記冷却媒体の復路を形成する第2の前記波形配管と、
を備える。
上記(9)の構成によれば、上記第1の波形配管が冷却媒体の往路を形成し、上記第2の波形配管が冷却媒体の復路を形成するので、これらの波形配管を含む内側配管は冷却時に軸線方向の熱収縮が抑制される。従って、冷却時に低温下にある内側配管と常温下にある外側配管とは軸線方向の熱収縮の差を抑制できるので、内側配管と外側配管との接触を抑制できる。これによって、内側配管への熱侵入を抑制できる。また、熱収縮緩和機構付き冷却配管(以下「冷却配管」とも言う。)が超電導ケーブルの一部を構成することで、超電導ケーブル全体の軸線長さを調節できる。
【0018】
(10)一実施形態では、前記(9)の構成において、
基部に定位置に固定され超電導ケーブルの両端が接続される端末部を備え、前記端末部において前記超電導ケーブルの一部を構成する。
上記(10)の構成によれば、上記端末部において上記冷却配管が超電導ケーブルの一部を構成することで、冷却時に内側配管の軸線方向の熱収縮を抑制できるため、内側配管と外側配管との接触を抑制でき、内側配管への熱侵入を抑制できる。また、この冷却配管が端末部において超電導ケーブルの一部を構成するため、超電導ケーブル全体の軸線長さを超電導ケーブルの両端に設けられた冷却配管によって調節することができる。
【発明の効果】
【0019】
幾つかの実施形態によれば、波形配管が冷却されたときの波形配管の軸線方向の熱収縮を抑制して軸線長さを調節できる。従って、該波形配管が内側に配置された冷却配管においては、内側配管と外側配管との熱収縮の差に起因した両者の接触などによる内側配管への熱侵入を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係る波形配管の模式的縦断面図である。
【
図3】一実施形態に係る波形配管の一部を拡大して示す模式的縦断面図である。
【
図4】一実施形態に係る波形配管の模式的縦断面図である。
【
図5】一実施形態に係る波形配管の模式的縦断面図である。
【
図6】一実施形態に係る波形配管の模式的縦断面図である。
【
図7】波形配管の長さ変化量と山部又は谷部の角度との関係の一例を示す線図である。
【
図8】一実施形態に係る熱収縮緩和機構付き冷却配管の横断面図である。
【
図9】一実施形態に係る超電導ケーブルの斜視図である。
【
図10】一実施形態に係る超電導ケーブルの全体図である。
【
図11】従来の真空断熱配管の熱収縮時を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0022】
図11は、超電導ケーブル100の構成を模式的に示している。超電導線層(不図示)が設けられた内側配管102は、内部に液体窒素などの極低温流体が流れ、極低温に冷却される。内側配管102の外側に真空空間Svを隔てて外側配管104が設けられ、外側配管104は真空空間Svの断熱効果で常温下にある。冷却された内側配管102のみが熱収縮を起し、内側配管102と外側配管104との間の熱収縮量の差により曲り角Bで外側配管104に接触すると、内側配管102は常温の外側配管104から熱侵入を受ける。特に、夏場においては外側配管104の熱膨張量が大きくなり、内側配管102との間で大きな伸び差が生じる。これによって、内側配管102と外側配管104とが接触して熱侵入が起りやすい。
【0023】
図1~
図4は、幾つかの実施形態に係る波形配管10(10A、10B、10C)の縦断面図である。波形配管10は軸線Aの方向に沿って山部14と谷部16とが交互に形成された管壁12で構成され、山部14又は谷部16の少なくとも一方に収縮抑制部材18(18a、18b)が設けられている。収縮抑制部材18(18a、18b)は、山部14に設けられる第1部材18(18a)又は谷部16に設けられる第2部材18(18b)の少なくとも一方を含む。第1部材18(18a)は少なくとも外側部が管壁12を構成する材料より大きい熱膨張係数を有する材料で構成され、第2部材18(18b)は管壁12を構成する材料より小さい熱膨張係数を有する材料で構成される。
【0024】
図1及び
図2は、山部14に第1部材18(18a)が設けられた実施形態を示し、
図3は、谷部16に第2部材18(18b)が設けられた実施形態を示し、
図4は、山部14に第1部材18(18a)が設けられ、谷部16に第2部材18(18b)が設けられた実施形態を示す。
【0025】
図1及び
図2に示すように、山部14に第1部材18(18a)が設けられた波形配管10(10A)では、第1部材18(18a)の熱収縮量が山部14の熱収縮量より大きいために、波形配管10(10A)が冷却されると、第1部材18(18a)が山部14を波形配管10(10A)の径方向外側から内側へ収縮させる収縮力が働く。この収縮力が山部14の角度をφからφ’に押し広げる方向に働く(φ<φ’)。こうして、第1部材18(18a)は径方向内側の18(18a)’へ熱収縮するため、山部14の角度φがφ’に広がる。山部14の角度φがφ’に広がると、波形配管10(10A)の軸線方向の熱収縮が抑制される。
【0026】
図3に示すように、谷部16に第2部材18(18b)が設けられた波形配管10(10B)では、波形配管10(10B)が冷却されると、第2部材18(18b)の熱収縮量が谷部16の熱収縮量より小さいために、谷部16の径方向内側への熱収縮が第2部材18(18b)によって抑えられる。そして、管壁12の他の部位の熱収縮によって山部14の角度φがφ’に押し広げられるため、波形配管10(10B)の軸線方向の熱収縮が抑制される。従って、第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)の熱膨張係数を選択し、山部14の角度増加分を調節することで、波形配管10(10A、10B)の軸線長さを調節できる。
図4に示す波形配管10(10C)は、第1部材18(18a)及び第2部材18(18b)を備えるため、これら部材の相乗効果により波形配管10(10C)の熱収縮抑制効果を向上できる。
【0027】
一実施形態では、
図1~
図4に示すように、収縮抑制部材18(18a、18b)としての第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)の少なくとも一方は、波形配管10の周方向に沿って山部14又は谷部16に設けられた線状部材で構成される。この線状部材は、山部14又は谷部16に沿って管壁12の一周り以上の長さに延在する。
図1~
図4は、いずれも第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)として線状部材が設けられた実施形態を示す。
【0028】
この実施形態によれば、第1部材18(18a)として上記線状部材が山部14に設けられるとき、管壁12の全周に亘り設けられた線状部材の軸線方向の熱収縮によって、山部14は径方向外側から内側へ収縮力を付加され、山部14の角度が広がる。第2部材18(18b)として上記線状部材が谷部16に設けられたとき、管壁12の全周に亘り設けられた線状部材が谷部16の径方向内側への熱収縮を抑えるため、谷部16の角度が広がる。こうして、波形配管10(10A、10B)の軸線方向の熱収縮を抑制できる。また、線状部材の熱膨張係数を選択し、山部14又は谷部16の角度増加分を調節することで、波形配管10の軸線長さを調節できる。
図4は、第1部材18(18a)及び第2部材18(18b)が共に線状部材で構成された実施形態を示す。
【0029】
第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)はどちらか一方又は両方が上記線状部材で構成されるが、線状部材は必ずしも山部14又は谷部16の全域に設ける必要はなく、その熱収縮抑制効果に応じて山部14又は谷部16の一部のみに設けることができる。
一実施形態では、第2部材は山部14の外側に設けられ、第2部材18(18b)は谷部16の内側に設けられる。
一実施形態では、第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)は山部14又は谷部16に溶接などの方法で固着される。しかし、山部14又は谷部16の熱収縮を抑える機能を保持できる条件下で、固着以外の方法によって山部14又は谷部16に固定してもよい。例えば、
図1及び
図2に示すように、第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)として用いられる線状部材に軸線方向に切込み20を形成し、切込み20に山部14又は谷部16の先端部を篏合させて固定するようにしてもよい。
【0030】
一実施形態では、山部14及び谷部16を含む管壁12を熱膨張係数βがβ=16×10-6/℃であるSUS316で構成し、第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)として、熱膨張係数βがβ=17.3×10-6/℃であるSUS304製の線状部材を山部14又は谷部16に設ける。
【0031】
一実施形態では、
図1~
図3に示すように、山部14及び谷部16は波形配管10の軸線方向に沿って並列に並ぶ複数の独立した凹凸を形成する。そして、第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)としての線状部材は山部14又は谷部16に設けられ、管壁12の周方向に沿って管壁12の全周に亘って配置される1個以上のリングで構成される。
この実施形態によれば、上記線状部材は管壁12の全周を囲繞する1個又は複数個の円形のリングで構成されているため、山部14に作用する収縮力又は谷部16の熱収縮に対する抑止力を十分発揮できる。例えば、リング状の線状部材が山部14の径方向外側に配置されたとき、山部14に対して外側から内側へ大きな収縮力を付加できる。また、リング状の線状部材が谷部16の径方向内側に配置されたとき、谷部16の径方向内側へ向かう熱収縮に対して大きな抑止力を発揮できる。
【0032】
図4は一実施形態に係る波形配管を示す。この波形配管10(10C)は、山部14及び谷部16が螺旋状に形成されている。そのため、山部14又は谷部16に沿って第1部材18(18a)又は第2部材18(18b)としての螺旋状の線状部材が山部14又は谷部16の少なくとも一方に設けられる。螺旋状の線状部材が管壁12の周囲に一周り以上延在するため、山部14への収縮力又は谷部16の熱収縮に対する抑止力として十分な力を発揮できる。また、1本の線状部材を連続的に山部14又は谷部16に掛け回せばよいので、線状部材の取付けが容易である。
なお、上記線状部材は中実材であってもよく、あるいは内部に空間を有する中空材であってもよい。
【0033】
図5は、一実施形態に係る波形配管10(10D)を示す。
図5において、収縮抑制部材18(18c)は、山部14より熱膨張係数が大きくかつ管壁12の外側に管壁12を囲繞するように配置されたスリーブで構成される。
この実施形態によれば、波形配管10(10D)及び上記スリーブが冷却されたとき、上記スリーブは山部14より熱収縮量が増加するために、山部14に対して径方向内側へ収縮させる収縮力を作用する。これによって、山部14の角度が押し広げられるため、波形配管10(10D)の軸線方向の熱収縮が抑制される。従って、スリーブの熱膨張係数を選択し、山部14の角度増加分を調節することで、波形配管10(10D)の軸線長さを調節できる。また、上記スリーブは管壁12の外側に容易に配置できる。
【0034】
一実施形態では、
図5に示す波形配管10(10D)は山部14及び谷部16が螺旋状に形成されている。そして、谷部16に第2部材18(18b)として線状部材が螺旋状に設けられている。また、上記スリーブを設けていない山部14には第1部材18(18a)として線状部材が螺旋状に設けられている。このように、スリーブと線状部材とを併設することで、山部14に対する熱収縮力及び谷部16の熱収縮に対する抑止力を高め、波形配管10(10D)の軸線方向の熱収縮量の抑制効果を増大できる。
【0035】
一実施形態では、
図2に示すように、熱収縮前の山部14と谷部16との間の距離をλ、波形配管10の使用時(冷却時)における管壁12の温度低下量をΔT、熱収縮前の山部14の角度をφとしたとき、熱収縮後の山部14と谷部16との間の距離λ’及び熱収縮後の山部14の角度φ’は、下記式を満たすように構成される。
0.9≦[λ×sin(φ/2)]/[λ’×sin(φ’/2)]≦1.1 (1)
λ’=λ×(1-βb×ΔT)
φ’/2=cos
-1[(R
L×(1-βs×ΔT)-R
S×(1-βb×ΔT))/λ’]
ここで、βb;管壁12の熱膨張係数
βs;山部14に設けられた第1部材18(18a)の熱膨張係数
R
L;山部14の半径(軸線Aからの距離)
R
S;谷部16の半径(軸線Aからの距離)
である。
【0036】
図2に示すように、熱収縮前の波形配管10の軸線方向の単位波形長をξとしたとき、次の式が成り立つ。
λ=(R
L-R
S)/cos(φ/2)
ξ=2λsin(φ/2)
温度がΔT低下した後の山部14の半径R
L(ΔT)、谷部16の半径R
S(ΔT)及び山部14と谷部16との間の距離λ’は、次の式で求められる。
R
L(ΔT)=R
L(1-βs×ΔT)
R
S(ΔT)=R
S(1-βb×ΔT)
λ’=λ(1-βb×ΔT)
そして、次の式が成り立つ。
φ’=cos
-1[(R
L(ΔT)-R
S(ΔT))/λ’] (2)
上記式(2)から、温度がΔT低下した後の単位波形長ξ(ΔT)を求める次の式(3)が導かれる。
ξ(ΔT)=2λ’sin(φ’/2) (3)
従って、ξとξ(ΔT)との比である上記式(1)を満たすことができるように、山部14の角度φ、管壁12の熱膨張係数βb及び第1部材18(18a)の熱膨張係数βsを適宜選択することで、管壁12の熱収縮前後の軸線方向長さの比を±10%以内に抑えることができる。
【0037】
図6は一実施形態に係る波形配管10(10E)を示す。
図6において、第1部材18(18d)は、管壁12より大きい熱膨張係数を有する外側部22と、外側部22に軸線A方向に沿う固着面Sfを介して固着され、外側部22より熱膨張係数が小さく、かつ管壁12より熱膨張係数が大きい内側部24と、を含んで構成されている。そして、山部14の先端部が外側部22及び内側部24の内部に挿入され、山部14の先端部は外側部22及び内側部24に夫々固着面を介して固着されている。
この実施形態によれば、波形配管10(10E)及び上記構成の第1部材18(18d)が冷却されると、山部14の先端部は、外側部22及び内側部24から、これらと山部14の先端部との固着面を介して山部14の角度φを広げる方向の力F
22及びF
24を受ける。力F
22及びF
24は、熱膨張係数の差に応じた大きさを有する。これによって、山部14の角度φを広げることができる。
【0038】
管壁12の熱膨張係数をβ12とし、外側部22の熱膨張係数をβ22とし、内側部24の熱膨張係数をβ24としたとき、
β12<β24<β22
が成り立つ。波形配管10(10E)を冷却すると、外側部22及び内側部24が熱収縮するので、山部14の先端部に対して力F22及びF24が加わり、山部14の角度φを広げることができる。外側部22及び内側部24の熱膨張係数の差から、
F24<F22
が成り立つ。内側部24だけで管壁12に力F24を加えることができるため、力F24だけで山部14の先端部の角度φを広げることができるが、外側部22によってさらに大きな力F22を付加できるので、角度φをさらに広げることができる。
【0039】
外側部22及び内側部24は、
図1~
図4に示すように、管壁12の周方向に巻回される線状部材であってもよく、あるいは別な形状を有する部材であってもよい。線状部材である場合、力F
22及びF
24の作用と、線状部材の軸線方向の熱収縮との相乗効果により、角度φの拡大効果を増すことができる。
【0040】
図7は、山部14又は谷部16の角度φと冷却後の波形配管10の軸線方向長さの変化量との関係を示す線図である。波形配管10が冷却されると、冷却温度によって、波形配管10の軸線方向の熱収縮量が第1部材18(18a)及び第2部材18(18b)の作用による伸長量を上回って波形配管10の軸線方向長さが減少する領域と、伸長量が熱収縮量を上回って波形配管10の軸線方向長さが増加する領域とが存在する。従って、山部14又は谷部16の角度φを上記2つの領域の境界に当たる角度とすることで、冷却後の波形配管10の熱収縮をなくすことができる。
【0041】
一実施形態では、第1部材18(18d)及び第2部材18(18b)が線状部材であり、線状部材の管壁12における延在方向長さは、波形配管10が冷却されたとき、常温より低い一部の温度領域で管壁12の軸線方向の熱収縮量と、線状部材の熱収縮による管壁12の軸線方向の伸長量とが相殺されるように調節される。即ち、波形配管10が冷却される設定温度で熱収縮量と伸長量との差が閾値以内となるように、予め線状部材の延在方向長さを設定しておけば、波形配管10が上記設定温度に冷却されたとき、波形配管10の熱収縮量を閾値以内に抑えることができる。
【0042】
一実施形態では、
図5に示す収縮抑制部材18(18c)としてのスリーブの軸線方向長さは、常温より低い一部の温度領域で管壁12の軸線方向長さの熱収縮量と、スリーブの熱収縮によって生じる管壁12の軸線方向長さの伸長量とが閾値以内となるように調節される。即ち、波形配管10(10D)が冷却される設定温度で熱収縮量と伸長量とが同一となるように、予めスリーブの軸線方向長さを設定しておけば、波形配管10(10D)が上記設定温度に冷却されたとき、波形配管10(10D)の熱収縮量を閾値以内に抑えることができる。
【0043】
一実施形態に係る熱収縮緩和機構付き冷却配管30(以下「冷却配管30」とも言う。)は、
図8に示すように、上記各実施形態の構成を有する波形配管10を含む内側配管と、該内側配管の外側に同心状に配置された外側配管32と、を備え、波形配管10と外側配管32との間に真空空間Svが形成されている。波形配管10の内部に形成される流路Pfには、例えば、液体窒素、液体ヘリウム、LNG等の低温流体が流れている。波形配管10は低温流体によって冷却されるが、波形配管10と外側配管32との間に真空空間Svが形成されているため、真空空間Svで外部からの熱侵入が抑制される。真空空間Svで熱遮断されるため、外側配管32は常温又は常温付近の温度に保たれる。
【0044】
冷却配管30は、波形配管10によって低温流体の流路Pfが形成されるために、低温流体によって冷却される波形配管10の軸線方向長さの熱収縮を抑えることができる。従って、冷却された内側配管と常温の外側配管32との熱収縮量の違いに起因して内側配管が外側配管32に接触するのを抑制できる。これによって、真空空間Svの断熱機能を維持できるため、内側配管への熱侵入を抑制できる。
一実施形態では、外側配管32の内側に断熱層34が形成される。断熱層34によって外部からの熱侵入をさらに抑制できる。
【0045】
冷却配管30は超電導ケーブルの少なくとも一部に適用できる。
図9は、冷却配管30を超電導ケーブルに適用したときの構成を示す斜視図である。この超電導ケーブル40は、中心に液体窒素などの冷却媒体が流れる流路Pf
1(往路)を形成する内側極低温配管42(第1の波形配管)が設けられる。内側極低温配管42の外側に超電導線層44が設けられ、超電導線層44の外側に熱・電気絶縁層46を設け、その外側に冷却媒体の流路Pf
2(復路)を形成する二重管47(第2の波形配管)が設けられる。この実施形態では、内側極低温配管42から二重管47までが内側配管48として構成される。
そして、二重管47の外側に真空空間Svが形成され、真空空間Svの外側に断熱層49が形成され、断熱層49の外側に外側配管50が設けられる。極低温配管42及び二重管47は波形配管10で構成される。
【0046】
この実施形態によれば、波形配管10で構成された極低温配管42が冷却媒体の往路を形成し、波形配管10で構成された二重管47が冷却媒体の復路を形成するので、極低温配管42及び二重管47を含む内側配管48は冷却時に軸線方向の熱収縮を抑制できる。従って、冷却時に低温下にある内側配管48と常温付近の外側配管50とは軸線方向の熱収縮の差を抑制できるので、内側配管48と外側配管50との接触を抑制でき、これによって、内側配管48への熱侵入を抑制できる。また、冷却配管30が超電導ケーブル40の一部を構成することで、超電導ケーブル全体の軸線長さを調節できる。
【0047】
一実施形態では、
図10に示すように、超電導ケーブル40の両端は、端末部52に接続される。端末部52は定位置に動かないように固定されている。そして、冷却配管30は、端末部52あるいは端末部52の近くにおいて、超電導ケーブル40の一部を構成する。超電導ケーブル40の両端部の溶接部分には内側配管48の熱収縮により大きな力が加わる。これが原因となって真空空間Svの真空度が劣化するおそれがある。本実施形態によれば、端末部52又は端末部52の近くに冷却配管30を設けることで、冷却時に端末部付近の超電導ケーブル40の応力増加を抑制できると共に、内側配管48の軸線方向の熱収縮を抑制できるため、内側配管48と外側配管50との接触を抑制でき、内側配管48への熱侵入を抑制できる。また、冷却配管30が端末部52において超電導ケーブル40の一部を構成するため、超電導ケーブル全体の軸線長さを超電導ケーブル40の両端に設けられた冷却配管30によって調節することができる。
なお、
図10に示す実施形態では、超電導ケーブル40の内側配管48の軸線方向収縮を吸収するためのオフセット部54を備えている。
【0048】
冷却配管30は、超電導ケーブルだけでなく、液体窒素や液体ヘリウム等の極低温流体を輸送するための真空断熱配管にも適用できる。この場合、極低温流体による熱収縮によって配管両端部に発生する応力を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
幾つかの実施形態によれば、波形配管が冷却されたときの軸線方向の熱収縮を抑制して軸線長さを調節できる。また、該波形配管が内側に配置された断熱配管が適用される超電導ケーブルや極低温流体の輸送設備等において、極低温の内側配管と常温付近の外側配管との熱収縮の差に起因した両者の接触などによる内側配管への熱侵入を効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0050】
10(10A、10B、10C、10D、10E) 波形配管
12 管壁
14 山部
16 谷部
18(18a、18b、18c、18d) 収縮抑制部材
18a、18d 第1部材
18b 第2部材
18c スリーブ
20 切込み
22 外側部
24 内側部
30 熱収縮緩和機構付き冷却配管
32、50、104 外側配管
34、49 断熱層
40、100 超電導ケーブル
42 内側極低温配管(第1の波形配管)
44 超電導線層
46 熱・電気絶縁層
47 二重管(第2の波形配管)
48、102 内側配管
52 端末部
54 オフセット部
A 軸線
B 曲り角
Pf 流路
Pf1 流路(往路)
Pf2 流路(復路)
Sf 固着面
Sv 真空空間