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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-08
(45)【発行日】2023-05-16
(54)【発明の名称】物理気相堆積システム及びプロセス
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20230509BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/56 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021549623
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 US2020020029
(87)【国際公開番号】W WO2020180582
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】62/812,605
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/801,621
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ジンダル, ビブー
(72)【発明者】
【氏名】バート, サンジェイ
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-139549(JP,A)
【文献】特開2007-107888(JP,A)
【文献】特表2019-502030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0291500(US,A1)
【文献】特開平11-302841(JP,A)
【文献】特開平05-126999(JP,A)
【文献】特開2011-097041(JP,A)
【文献】特開平02-243762(JP,A)
【文献】特開2005-281832(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0132107(US,A1)
【文献】特開昭60-029956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
G03F 1/00- 1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理気相堆積(PVD)チャンバであって、
スパッタリングプロセス中に第1のターゲットを支持するように第1のバッキング板を含む第1のカソードアセンブリと、スパッタリングプロセス中に第2のターゲットを支持するように構成された第2のバッキング板を含む第2のカソードアセンブリとを備えた複数のカソードアセンブリ;
直径を有し、かつ第1のカソードアセンブリを露出するように上部シールド上に位置決めされた第1のシールド孔と、直径を有し、かつ第2のカソードアセンブリを露出するように上部シールド上に位置決めされた第2のシールド孔とを有する、複数のカソードアセンブリの下の上部シールドであって、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域を除き、平らな内面を有する、上部シールド
第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域にある隆起部であって、該隆起部が、平らな内面から1センチメートルを超える高さを有し、かつ第1のシールド孔の直径及び第2のシールド孔の直径を超える長さを有し、PVDチャンバが上部シールドを回転させずに第1のターゲット及び第2のターゲットから材料を交互にスパッタするように構成されている、隆起部
スパッタリングプロセス中に第3のターゲットを支持するように第3のバッキング板を含む第3のカソードアセンブリ;並びに
第4のターゲットを支持するように構成された第4のバッキング板を含む第4のカソードアセンブリ
を含み、
第1のカソードアセンブリが第1のバッキング板から第1の距離で間隔を空けて配置された第1の磁石を含み、第2のカソードアセンブリが第2のバッキング板から第2の距離で間隔を空けて配置された第2の磁石を含み、ここで、第1の磁石及び第2の磁石は、第1の距離を変化させることができ、かつ第2の距離を変化させることができるように移動可能であり、第1のターゲットがモリブデンターゲットを含み、第2のターゲットがケイ素ターゲットを含み、第3のターゲットがダミーターゲットを含み、第4のターゲットがダミーターゲットを含む、チャンバ。
【請求項2】
隆起部が第1のターゲットからスパッタされた材料が第2のターゲットに堆積するのを防ぎ、かつ第2のターゲットからスパッタされた材料が第1のターゲットに堆積するのを防ぐように、スパッタリングプロセス中に隆起部が十分な高さを有する、請求項1に記載のチャンバ。
【請求項3】
第1の磁石及び第2の磁石が、第1の距離及び第2の距離を減少させて第1の磁石及び第2の磁石によって生成される磁場強度を増加させるように、かつ第1の距離及び第2の距離を増加させて第1の磁石及び第2の磁石によって生成される磁場強度を低下させるように移動するように構成される、請求項に記載のチャンバ。
【請求項4】
上部シールドが第1の位置にあるときに、第1のターゲットが第1のシールド孔を通して露出され、第2のターゲットが第2のシールド孔を通して露出され、第3のターゲット及び第4のターゲットが上部シールドによって覆われ、かつ上部シールドが第2の位置に回転すると、第4のターゲットが第2のシールド孔を通して露出され、第2のターゲットが第1のシールド孔を通して露出されるように、第3のターゲット及び第4のターゲットが第1のターゲット及び第2のターゲットに対して位置決めされる、請求項に記載のチャンバ。
【請求項5】
上部シールドが第3の位置に回転すると、第1のターゲットが第2のシールド孔を通して露出され、第4のターゲットが第1のシールド孔を通して露出される、請求項に記載のチャンバ。
【請求項6】
物理気相堆積(PVD)チャンバであって、
モリブデンを含む第1のターゲットを支持する第1のバッキング板を含む第1のカソードアセンブリと、ケイ素を含む第2のターゲットを支持する第2のバッキング板を含む第2のカソードアセンブリ、ダミー材料を含む第3のターゲットを支持する第3のバッキング板を含む第3のカソードアセンブリ、及びダミー材料を含む第4のターゲットを支持する第4のバッキング板を含む第4のカソードアセンブリを備えた、複数のカソードアセンブリ;
直径を有し、かつ第1のターゲットを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第1のシールド孔と、直径を有し、かつ第2のターゲットを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第2のシールド孔とを有する、複数のカソードアセンブリの下の上部シールドであって、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域を除き、平坦な表面を有しており、かつ、上部シールドがモリブデン及びケイ素材料が上部シールドを回転させずにそれぞれ第1のターゲット及び第2のターゲットから交互にスパッタできるように構成される、上部シールド;及び
第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域にある隆起部であって、該隆起部が、1センチメートルを超える高さを有し、かつ第1のシールド孔及び第2のシールド孔の直径を超える長さを有し、上部シールドが、第1のシールド孔及び第2のシールド孔の一方が第1のターゲットと第3のターゲット及び第4のターゲットの一方とを露出させることができるように回転可能である、隆起部、
を備えている、チャンバ。
【請求項7】
第1のカソードアセンブリ、第2のカソードアセンブリ、第3のカソードアセンブリ、及び第4のカソードアセンブリの各々が、第1のバッキング板から第1の距離で、第2のバッキング板から第2の距離で、第3のバッキング板から第3の距離で、及び第4のバッキング板から第4の距離で間隔を空けて配置された磁石を含み、該磁石の各々が、第1の距離、第2の距離、第3の距離、又は第4の距離の各々を増減するように移動可能である、請求項に記載のチャンバ。
【請求項8】
第1の距離、第2の距離、第3の距離、又は第4の距離の減少が磁石によって生成される磁場強度を増加させ、第1の距離、第2の距離、第3の距離、又は第4の距離の増加が磁石によって生成される磁場強度を減少させる、請求項に記載のチャンバ。
【請求項9】
交互の材料層の堆積中に適用される磁場より大きい磁場を第1のターゲットに適用することによって、第1のターゲットの上に堆積された第2の材料を洗浄することをさらに含む、請求項に記載のチャンバ
【請求項10】
第2のターゲットから第1の材料を洗浄する前に上部シールドを第1の位置から第2の位置に回転させることをさらに含み、第4のターゲットが第2のシールド孔を通して露出され、第2のターゲットが第1のシールド孔を通して露出される、請求項に記載のチャンバ
【請求項11】
第1のターゲットが第2のシールド孔を通して露出され、第4のターゲットが第1のシールド孔を通して露出されるように、上部シールドを第2の位置から第3の位置に回転させることをさらに含む、請求項10に記載のチャンバ
【請求項12】
基板が極端紫外線(EUV)マスクブランクを含む、請求項11に記載のチャンバ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、基板処理システムに関し、より詳細には、実施形態は、物理気相堆積のための複数のカソードアセンブリ(マルチカソード)を備えた物理気相堆積システム及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングは、物理気相堆積(PVD)とも呼ばれ、半導体集積回路の製造における金属及び関連材料の堆積に用いられる。スパッタリングの使用は、ビア又は他の垂直相互接続構造などの高アスペクト比の孔の側壁上に金属層を堆積させるだけでなく、極端紫外線(EUV)マスクブランクの製造にまで拡大している。EUVマスクブランクの製造では、粒子が最終製品の特性に悪影響を与えるため、粒子の生成を最小限に抑えることが望ましい。さらには、EUVマスクブランクの製造では、異なる材料、例えばケイ素及びモリブデンの交互の層を含む多層リフレクタが、PVDチャンバ内で堆積される。ケイ素及びモリブデンのターゲットの相互汚染によって引き起こされる個々のケイ素層及びモリブデン層の汚染は、EUVマスクブランクの欠陥につながる問題となりうる。
【0003】
プラズマスパッタリングは、DCスパッタリング又はRFスパッタリングのいずれかを使用して達成することができる。プラズマスパッタリングは、典型的には、スパッタリングターゲットの背面に位置決めされたマグネトロンを備えており、該マグネトロンは、磁気ヨークを介してそれらの背面で磁気的に結合された、少なくとも2つの反対極の磁石を含み、処理空間に磁場を放射して、プラズマの密度を高め、ターゲットの前面からのスパッタリング速度を向上させる。マグネトロンに用いられる磁石は、通常、DCスパッタリングでは閉ループであり、RFスパッタリングでは開ループである。
【0004】
物理気相堆積(PVD)チャンバなどのプラズマ強化基板処理システムでは、高磁場及び高DC電力での高出力密度PVDスパッタリングは、スパッタリングターゲットにおいて高エネルギーを生成し、スパッタリングターゲットの表面温度を大幅に上昇させうる。スパッタリングターゲットは、ターゲットバッキング板を冷却流体と接触させることによって冷却される。通常、商業的に実施されるプラズマスパッタリングでは、スパッタ堆積される材料のターゲットは、コーティングされるウエハを含む真空チャンバに密封される。アルゴンがチャンバに導入される。スパッタリングプロセスでは、スパッタリングターゲットは、プラズマなどの高エネルギーイオンによって衝撃を受け、材料がターゲットから移動させられ、チャンバ内に置かれた基板上に膜として堆積される。
【0005】
マルチカソードPVDチャンバ内の粒子及び異なる材料のターゲットの相互汚染などの欠陥源を低減することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の実施形態では、物理気相堆積(PVD)チャンバは、スパッタリングプロセス中に第1のターゲットを支持するように第1のバッキング板を含む第1のカソードアセンブリとスパッタリングプロセス中に第2のターゲットを支持するように構成された第2のバッキング板を含む第2のカソードアセンブリとを備えた複数のカソードアセンブリ;直径を有し、かつ第1のカソードアセンブリを露出するように上部シールド上に位置決めされた第1のシールド孔と、直径を有し、かつ第2のカソードアセンブリを露出するように上部シールド上に位置決めされた第2のシールド孔とを有する、複数のカソードアセンブリの下の上部シールドであって、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域を除き、平らな内面を有している、上部シールド;並びに、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域にある隆起部であって、該隆起部が、平らな内面から1センチメートルを超える高さを有し、かつ第1のシールド孔の直径及び第2のシールド孔の直径を超える長さを有し、PVDチャンバが上部シールドを回転させずに第1のターゲット及び第2のターゲットから材料を交互にスパッタするように構成されている、隆起部を含む。
【0007】
本開示の第2の実施形態によれば、物理気相堆積(PVD)チャンバは、モリブデンを含む第1のターゲットを支持する第1のバッキング板を含む第1のカソードアセンブリと、ケイ素を含む第2のターゲットを支持する第2のバッキング板を含む第2のカソードアセンブリ、ダミー材料を含む第3のターゲットを支持するように第3のバッキング板を含む第3のカソードアセンブリ、及びダミー材料を含む第4のターゲットを支持する第4のバッキング板を含む第4のカソードアセンブリを備えた、複数のカソードアセンブリ;直径を有し、かつ第1のターゲットを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第1のシールド孔と、直径を有し、かつ第2のターゲットを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第2のシールド孔とを有する、複数のカソードアセンブリの下の上部シールドであって、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域を除き、平面を有しており、該上部シールドが、モリブデン及びケイ素材料が上部シールドを回転させずにそれぞれ第1のターゲット及び第2のターゲットから交互にスパッタできるように構成される、上部シールド;並びに、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域にある隆起部であって、該隆起部が、1センチメートルを超える高さを有し、かつ第1のシールド孔及び第2のシールド孔の直径を超える長さを有する、隆起部、を含み、ここで、上部シールドは、第1のシールド孔及び第2のシールド孔の一方が、第1のターゲットと第3のターゲット及び第4のターゲットの一方とを露出させることができるように回転可能である。
【0008】
本開示の第3の実施形態は、物理気相堆積(PVD)チャンバ内で交互の材料層を堆積する方法であって、第1の材料を含む第1のターゲットを含む第1のカソードアセンブリと第1の材料とは異なる第2の材料を含む第2のターゲットを含む第2のカソードアセンブリとを備えた複数のカソードアセンブリを含むPVDチャンバ内に基板を配置することを含む、方法に関する。該方法は、複数のカソードアセンブリの下に上部シールドを配置することをさらに含み、該上部シールドは、直径を有し、かつ第1のターゲットを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第1のシールド孔と、直径を有し、かつ第2のターゲットを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第2のシールド孔とを有する。上部シールドは、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の平面、並びに少なくとも第1のシールド孔及び第2のシールド孔の直径に等しい長さを有する2つのシールド孔間の隆起部をさらに含む。該方法は、上部シールドを回転させずに、第1のターゲット及び第2のターゲットから材料を交互にスパッタリングすることをさらに含み、ここで、隆起部は、第1の材料が第2のターゲットを汚染するのを防ぎ、かつ第2の材料が第1のターゲットを汚染するのを防ぐ。
【0009】
本開示の上記の特徴を詳細に理解できるように、その一部が添付の図面に示されている実施形態を参照することにより、上に簡単に要約されている本開示のより詳細な説明を得ることができる。しかしながら、本開示は、他の同等に有効な実施形態も許容しうることから、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来技術の堆積システムの側面図
図2】1つ以上の実施形態によるPVDチャンバの側面図
図3図2のPVDチャンバの上部シールドの底部等角図
図4A】第1の回転位置における上部シールド及びターゲットの底面図
図4B】第2の回転位置における上部シールド及びターゲットの底面図
図4C】第3の回転位置における上部シールド及びターゲットの底面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の幾つかの例示的な実施形態を説明する前に、本開示が、以下の説明に記載される構成又はプロセスステップの詳細に限定されないということが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態も可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することができる。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「基板」という用語は、処理が行われる表面又は表面の一部を指すために用いられる。基板に対しての言及は、文脈上他のことが明示されない限り、基板の一部分のみを指すこともありうることもまた、当業者に理解されよう。さらには、基板上への堆積についての言及は、むき出しの基板と、1つ以上の膜又は特徴がその上に堆積又は形成された基板の両方を意味しうる。
【0013】
本明細書で用いられる「基板」とは、その上で製造処理中に膜処理が行われる、任意の基板表面又は基板上に形成された材料表面のことを指す。例えば、処理が実施されうる基板表面は、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、ストレインドシリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、炭素をドープした酸化ケイ素、アモルファスシリコン、ドープしたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに、金属、金属窒化物、金属合金、及び他の導電材料など、他の任意の材料を含む。基板には半導体ウエハが含まれるが、これに限定されない。基板は、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、UV硬化、電子ビーム硬化、及び/又はベークするための前処理プロセスに晒されてもよい。基板自体の表面に直接膜処理することに加えて、本開示では、開示された任意の膜処理工程は、以下により詳細に開示されるように、基板上に形成された下層にも行うことができ、「基板表面」という用語は、文脈が示すように、こうした下層を含むことが意図されている。したがって、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面上に堆積されている場合には、新たに堆積された膜/層の露出面が基板表面となる。
【0014】
本明細書で用いられる「水平」という用語は、その配向性とは無関係に、マスクブランクの平面又は表面に平行な平面として定義される。「垂直」という用語は、先に定義された水平に対して垂直な方向を指す。「上」、「下」、「底部」、「上部」、「側面」(「側壁」など)、「より高い」、「より低い」、「上部」、「上方」、「下方」などの用語は、図に示すように、水平面に対して定義される。
【0015】
「~上(on)」という用語は、要素間に直接的な接触が存在することを示す。「~のすぐ上(directly on)」という用語は、要素の介在なしに、要素間に直接的な接触が存在することを示す。
【0016】
当業者は、処理領域を説明するための「第1」及び「第2」などの序数の使用は、処理チャンバ内の特定の位置、又は処理チャンバ内での露出の順序を意味しないことを理解するであろう。
【0017】
本開示の実施形態は、堆積システム、例えば、少なくとも1つのカソードアセンブリを含む物理気相堆積(「PVD」)チャンバ、及び特定の実施形態では、複数のカソードアセンブリを含むPVDチャンバ(本明細書では「マルチカソードチャンバ」と呼ばれる)のための磁石設計に関する。
【0018】
図1は、従来技術のPVDシステムを示しており、PVDチャンバ100の形態の堆積システムの一部の側面図が示されている。PVDチャンバの形態の堆積システムが、複数のカソードアセンブリ102を含むマルチカソードPVDチャンバ100として示されている。マルチカソードPVDチャンバ100は、MRAM(磁気抵抗ランダムアクセスメモリ)を製造するように構成されたマルチターゲットPVD源、又は極端紫外線(EUV)マスクブランクを製造するように構成されたマルチターゲットPVD源、例えば、EUV光を反射する多層スタックを形成するためのケイ素を含むターゲット及びモリブデンを含むターゲットを含むものとして示されている。
【0019】
マルチカソードPVDチャンバは、複数のカソードアセンブリ102を間隔を空けた関係で適所に保持するように構成されたアダプタ(図示せず)を含むチャンバ本体101を備える。マルチカソードPVDチャンバ100は、PVD及びスパッタリングのための複数のカソードアセンブリ102を含みうる。カソードアセンブリ102の各々は、直流(DC)及び/又は高周波(RF)を含む電力供給源112に接続される。
【0020】
断面図は、基板又はキャリアが処理される内部容積121を画成するチャンバ本体101を含むPVDチャンバ100の例を示している。図1に示される実施形態におけるカソードアセンブリ102は、異なる材料を材料層103としてスパッタリングするために使用することができる。カソードアセンブリ102は、回転ペデスタル110上の基板又はキャリア108の上に配置される、上部シールド106のシールド孔104を通して露出される。上部シールド106は、概して、円錐の形状をしている。概して、回転ペデスタル110の上方又は上には、1つのキャリア108のみが存在しうる。
【0021】
基板又はキャリア108は、集積回路の製造に用いられる半導体材料を有する構造として示されている。例えば、基板又はキャリア108は、ウエハを含む半導体構造を含む。あるいは、基板又はキャリア108は、EUVマスクブランクを形成するために用いられる超低膨張ガラス基板などの別の材料であってもよい。基板又はキャリア108は、円形、正方形、長方形、又は他の任意の多角形などの任意の適切な形状でありうる。
【0022】
上部シールド106は、カソードアセンブリ102を使用してシールド孔104を通じて材料層103を堆積させることができるように、シールド孔104を伴って形成される。電力供給112がカソードアセンブリ102に適用される。電力供給112は、直流(DC)又は高周波(RF)電力供給を含みうる。
【0023】
上部シールド106は、一度にカソードアセンブリ102の1つを露出し、他のカソードアセンブリ102を相互汚染から保護するように構成される。相互汚染は、あるカソードアセンブリ102から別のカソードアセンブリ102への堆積材料の物理的な移動又は伝達である。カソードアセンブリ102はターゲット114の上に位置決めされる。チャンバの設計はコンパクトにすることができる。ターゲット114は、任意の適切なサイズでありうる。例えば、ターゲット114の各々は、約4インチから約20インチ、又は約4インチから約15インチ、又は約4インチから約10インチ、又は約4インチから約8インチ又は約4インチから約6インチの範囲の直径でありうる。
【0024】
図1では、基板又はキャリア108は、垂直方向に上下に移動することができる回転ペデスタル110上にあるものとして示されている。基板又はキャリア108がチャンバの外に移動する前に、基板又はキャリア108は、下部シールド118の下に移動しうる。テレスコピックカバーリング120が下部シールド118に当接する。次に、回転ペデスタル110は下に移動することができ、次いで、キャリア108がチャンバの外へと移動する前に、キャリア108がロボットアームで持ち上げられうる。
【0025】
材料層103がスパッタされるときに、ターゲット114からスパッタされた材料は下部シールド118の外側ではなく内側に保持されうる。この従来技術の実施形態では、テレスコピックカバーリング120は、湾曲し、かつ事前定義された厚さを有する、隆起したリング部分122を含む。テレスコピックカバーリング120はまた、下部シールド118に関する、事前定義された間隙124及び事前定義された長さも含みうる。したがって、材料層103を形成する材料は、回転ペデスタル110の下には存在せず、それによって、汚染物質が基板又はキャリア108に広がることを排除する。
【0026】
図1は、個々のシュラウド126を示している。シュラウド126は、キャリア108上に堆積されないターゲット114からの材料の大部分がシュラウド126に含まれるように設計することができ、したがって、材料の再生及び保存が容易となる。これはまた、各ターゲット114についてのシュラウド126の1つをそのターゲットに対して最適化可能にし、より良好な接着及び欠陥の低減を可能にする。
【0027】
シュラウド126は、カソードアセンブリ102間のクロストーク又はクロスターゲット汚染を最小化し、カソードアセンブリ102の各々について捕捉される材料を最大化するように設計することができる。したがって、カソードアセンブリ102の各々からの材料は、その上にカソードアセンブリ102が位置決めされているシュラウド126の1つによって個々に捕捉されるだけであろう。捕捉された材料は、基板又はキャリア108上には堆積されないであろう。例えば、第1のカソードアセンブリ及び第2のカソードアセンブリは、極端紫外線マスクブランクの形成において異なる材料の交互の層、例えば、第1のターゲット及びカソードアセンブリ102から堆積されたケイ素と、第2のターゲット及びカソードアセンブリ102から堆積されたモリブデンとの交互の層を適用することができる。
【0028】
基板又はキャリア108は、シュラウド126上のターゲット114からの金属を含む堆積材料を使用して、基板又はキャリア108の表面に堆積された均一な材料層103でコーティングすることができる。次に、シュラウド126には回復プロセスが施されうる。回復プロセスは、シュラウド126を洗浄するだけでなく、シュラウド126上又はシュラウド126内に残っている堆積材料の残留量も回収する。例えば、1つのシュラウド126上にはモリブデンが存在していてよく、次に別のシュラウド126上にはケイ素が存在していてもよい。モリブデンはケイ素よりも高価であることから、モリブデンを含むシュラウド126は回収プロセス用に送り出すことができる。
【0029】
図1に示されるように、下部シールド118には、小角度130に起因する第1の屈曲と、大角度132に起因する第2の屈曲とが設けられており、これにより、下部シールド118に屈曲部119がもたらされる。この屈曲部119は、堆積中に粒子が蓄積しうる領域を提供し、したがって、欠陥を処理するための有力源である。
【0030】
PVDチャンバ及びプロセスは、極端紫外線(EUV)マスクブランクの製造に利用される。EUVマスクブランクは、マスクパターンを有する反射マスクを形成するために使用される光学的に平坦な構造である。EUVマスクブランクの反射面は、極端紫外線光などの入射光を反射するための平坦な焦点面を形成する。EUVマスクブランクは、EUVレチクルなどの極端紫外線反射要素に構造的支持を提供する基板を含む。基板は、温度変化中の安定性を提供するために低い熱膨張係数(CTE)を有する材料、例えば、ケイ素、ガラス、酸化物、セラミック、ガラスセラミック、又はそれらの組合せから作られる。
【0031】
軟X線投影リソグラフィとしても知られる極端紫外線(EUV)リソグラフィは、0.0135ミクロン以下の最小特徴サイズの半導体デバイスの製造に使用することができる。しかしながら、概して5から100ナノメートルの波長範囲にある極端紫外線光は、ほぼすべての材料に強く吸収される。そのため、極端紫外線システムは、光の透過ではなく、反射によって機能する。非反射吸収マスクパターンでコーティングされた一連のミラー又はレンズ素子、及び反射素子又はマスクブランクの使用を通じて、パターン化された作用光がレジストでコーティングされた半導体基板上で反射される。
【0032】
極端紫外線リソグラフィシステムのレンズ素子及びマスクブランクは、モリブデン及びケイ素などの材料の交互反射層のコーティングの反射多層スタックでコーティングされる。レンズ素子又はマスクブランクあたり約65%の反射値は、例えば、13.5ナノメートルの紫外線光で12.5から14.5ナノメートルのバンドパスなど、非常に狭い紫外線バンドパス内で極端紫外線光を強く反射する多層コーティングでコーティングされた基板を使用することによって得られている。EUVマスクブランク及びレンズ素子の製造中には、粒子源及び高反射率の反射多層スタックからの欠陥などの欠陥の最小化が一般的に所望される。
【0033】
図2は、本開示の第1の実施形態によるPVDチャンバ200を示している。PVDチャンバ200は、複数のカソードアセンブリ202a及び202bを含む。2つのカソードアセンブリ202a及び202bのみが図2の側面図に示されているが、マルチカソードチャンバは、2つより多くのカソードアセンブリ、例えば、5、6、又は6より多くのカソードアセンブリを含んでいてもよい。上部シールド206が複数のカソードアセンブリ202a及び202bの下に設けられており、該上部シールド206は、カソードアセンブリ202の底部に配置されたターゲット205a、205bをPVDチャンバ200の内部空間221に露出するための2つのシールド孔204a及び204bを有している。中間シールド216が上部シールド206の下に隣接して設けられており、下部シールド218が上部シールド206の下に隣接して設けられている。
【0034】
モジュラチャンバ本体が図2に開示されており、中間チャンバ本体225が下部チャンバ本体227の上に隣接して配置されている。中間チャンバ本体225は、下部チャンバ本体227に固定されて、下部シールド218及び中間シールドを取り囲むモジュラチャンバ本体を形成する。上部アダプタリッド273(図8に示される)は、上部シールド206を取り囲むように中間チャンバ本体225の上に配置される。
【0035】
PVDチャンバ200には、図1の回転ペデスタル110と同様の回転ペデスタル210も設けられている。当業者は、上記図1では参照されているが図2では明確さの目的で省略されているものなど、PVDチャンバの他の構成要素が、1つ以上の実施形態によるPVDチャンバ200に提供されることを容易に認識するであろう。図2のPVDチャンバ200の上部シールド206は、図1の円錐形の上部シールド106と比較して、実質的に平坦であることが認識されよう。
【0036】
したがって、本開示の第1の態様は、スパッタリングプロセス中に第1のターゲット205aを支持するように構成された第1のバッキング板210aを含む第1のカソードアセンブリ202aと、スパッタリングプロセス中に第2のターゲット205bを支持するように構成された第2のバッキング板210bを含む第2のカソードアセンブリ202bとを備えた複数のカソードアセンブリを含むPVDチャンバ200に関する。PVDチャンバは、直径D1を有し、かつ第1のカソードアセンブリ202aを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第1のシールド孔204aと、直径D2を有し、かつ第2のカソードアセンブリ202bを露出するように上部シールド206上に位置決めされた第2のシールド孔204bとを有する、複数のカソードアセンブリ202a、202bの下の上部シールド206をさらに含み、該上部シールド206は、第1のシールド孔204aと第2のシールド孔204bとの間の領域207を除き、実質的に平らな内面203を有する。
【0037】
上部シールド206は、第1のシールド孔と第2のシールド孔との間の領域207に隆起部209を含み、該隆起部209は、平らな内面203から1センチメートルを超える実質的に平らな内面203からの高さ「H」(図1に最もよく示されている)を有し、かつ第1のシールド孔204aの直径D1及び第2のシールド孔204bの直径D2を超える長さ「L」を有しており、ここで、PVDチャンバは、上部シールド206を回転させずに、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bから材料を交互にスパッタするように構成されている。
【0038】
1つ以上の実施形態では、隆起部209は、スパッタリングプロセス中に、隆起部の高さHが、第1のターゲットからスパッタされた材料205aが第2のターゲット205b上に堆積するのを防ぎ、かつ第2のターゲットからスパッタされた材料205bが第1のターゲット205a上に堆積するのを防ぐのに十分であるような高さHを有する。
【0039】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、第1のカソードアセンブリ202aは、第1のバッキング板210aから第1の距離d1で間隔を空けて配置された第1の磁石を含み、第2のカソードアセンブリ202bは、第2のバッキング板210bから第2の距離d2で間隔を空けて配置された第2の磁石220bを含み、ここで、1の磁石220a及び第2の磁石220bは、第1の距離d1を変化させことができるように(矢印211aによって示されるように)及び第2の距離d2を変化させことができるように(矢印211bによって示されるように)移動可能である。距離d1及び距離d2は、距離d1を変化させるための線形アクチュエータ213a及び距離d2を変化させるための線形アクチュエータ213bによって変化させことができる。線形アクチュエータ213a及び線形アクチュエータ213bは、それぞれ、第1の磁石アセンブリ215a及び第2の磁石アセンブリ215bの線形運動をもたらすことができる任意の適切なデバイスを備えうる。第1の磁石アセンブリ215aは、回転モータ217aを含み、これは、回転モータ217aに結合されたシャフト219aを介して第1の磁石220aを回転させるサーボモータを含みうる。第2の磁石アセンブリ215bは、回転モータ217bを含み、これは、回転モータ217bに結合されたシャフト219bを介して第2の磁石220bを回転させるサーボモータを含みうる。第1の磁石アセンブリ215aは、第1の磁石220aに加えて複数の磁石を含みうることが認識されよう。同様に、第2の磁石アセンブリ215bは、第2の磁石220bに加えて複数の磁石を含みうることが認識されよう。
【0040】
1つ以上の実施形態では、第1の磁石220a及び第2の磁石220bは、第1の距離d1及び第2の距離d2を減少させて、第1の磁石220a及び第2の磁石220bによって生成される磁場強度を増加させるように、また、第1の距離d1及び第2の距離d2を増加させて、第1の磁石220a及び第2の磁石220bによって生成される磁場強度を低下させるように移動するように構成される。
【0041】
幾つかの実施形態では、第1のターゲット205aはモリブデンターゲットを含み、第2のターゲット205bはケイ素ターゲットを含み、PVDチャンバ200は、第3のターゲットを支持する第3のバッキング板205cを備えた第3のカソードアセンブリ(図示せず)(図4A~C参照)と、第4のターゲット205dを支持するように構成された第4のバッキング板を備えた第4のカソードアセンブリ(図示せず)(図4A~C参照)とをさらに含む。1つ以上の実施形態による第3のカソードアセンブリ及び第4のカソードアセンブリは、本明細書に記載される第1及び第2のカソードアセンブリ202a、202bと同じ態様で構成される。幾つかの実施形態では、第3のターゲット205cはダミーターゲットを含み、第4のターゲット205dはダミーターゲットを含む。本明細書で用いられる場合、「ダミーターゲット」とは、PVD装置200内でスパッタされることが意図されていないターゲットを指す。
【0042】
図4A~Cを参照すると、第1のターゲット205a、第2のターゲット205b、第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dは、互いに対して、並びに第1のシールド孔204a及び第2のシールドホールド(shield hold)204bに対して、そのように位置決めされる。示される実施形態では、第1のターゲット(第1のカソードアセンブリ202aの下に位置決めされる)は位置P1にあり、第2のターゲット205b(第2のカソードアセンブリ202bの下に位置決めされる)は位置P2にある。幾つかの実施形態では、隆起部209は、第1のシールドホールド(shield hold)204aと第2のシールド孔204bとの間に位置決めされる。示される実施形態では、第1のシールド孔204a及び第2のシールド孔204bは、第1のターゲット205a、第2のターゲット205b、第3のターゲット205c、及び第4のターゲット205dに対して位置決めされて、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bの洗浄を促進する。
【0043】
使用中、1つ以上の実施形態によるPVDチャンバは、堆積プロセス中に次のように動作する。第1のシールド孔204aは第1のターゲットを露出するように位置決めされ、第2のシールド孔204b第2のターゲット205bを露出するように位置決めされる。第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bは、異なる材料で構成される。本開示の特定の実施形態では、第1のターゲット205aはモリブデンを含み、第2のターゲット205bはケイ素を含む。堆積プロセス中、材料は、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bから交互にスパッタされて、隣接する層が異なる材料を含む交互の材料層の多層スタックを形成する。第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bからの材料の交互の層の堆積は、上部シールド206を回転させずに行われ、これは、異なる材料の交互の堆積を達成して、2つの異なる材料からなる多層スタックを形成するために上部シールドを回転させなければならない単一のシールド孔を備えた装置と比較して、粒子の生成を低減する。1つ以上の実施形態では、交互の層はケイ素及びモリブデンを含み、EUV光を反射する多層スタックを形成する。図4Aは、位置P1における第1のターゲット205a及び位置P2におけるターゲット205bの位置を示している。幾つかの実施形態では、上部シールドは、第1のシールドホールド(shield hold)204aと第2のシールド孔204bとの間の領域207に隆起部209を含む。
【0044】
示される実施形態では、上部シールド206は円形であり、第1の位置P1における第1のシールド孔204aの中心と、第2のシールド孔204bの中心が位置する第2の位置P2とは、第1のシールド孔204aの中心から矢印261によって示される反時計回りの方向に150度である。同様に、ターゲット205aの中心と位置P1及びP2における中心205bとは、互いに150度離れている。図4Aでは、第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dはダミーターゲットであり、これらは上部シールド206の平坦な表面によって覆われ、それらの輪郭が点線で示されている。
【0045】
図4Bは、第2のターゲット205bの上に配置された第1のシールドホールド(shield hold)204aの位置と、ダミーターゲットである第4のターゲット205dの上に位置決めされた第2のシールドホールド(shield hold)204bの位置とを示している。シールド孔204a及び204bは、図4Aの堆積位置から反時計回りに150度回転されている。位置P4における第1のシールド孔の位置は、第4のターゲット205dの上であり、その中心は、第1のターゲット205aの中心から反時計回りに300度に位置している。次に、第2のシールド孔204bは、第2のターゲット205bの上に配置され、その中心は、第1のターゲット205aの中心から反時計回りに150度に位置している。個々のターゲットの位置は、上部シールド206がターゲット上で回転している間、それぞれのカソードアセンブリに関して固定されていることが当業者に理解されるであろう。図4Bは、プラズマを使用して第2のターゲット205bを洗浄することができる洗浄位置である。第2のシールド孔204bがダミーターゲット(第4のターゲット205d)を露出し、一方、第1のシールド孔が第2のターゲット205bを露出するように位置決めされている図4Bに示される方法での洗浄の利点は、第1のターゲット205aが覆われている間に(破線で示されるように)第2のターゲットの洗浄を実施することができ、第1のターゲット205aは、第1のターゲットとは異なる材料である第2のターゲットから汚染物質を除去する洗浄プロセスによって汚染されないであろうことである。加えて、ダミーターゲットである第4のターゲット205dは、第2のターゲット205bから洗浄された材料が、開いたシールド孔(第2のシールド孔204b)を通って移動し、チャンバ、すなわち上部アダプタリッド273を汚染するのを防ぐ。
【0046】
図4Cは、図4Bに矢印260で示されるように、反時計回りに60度回転した後のシールド孔204a及び204bの位置を示している。この位置では、図4Aに示される堆積位置から210度回転している第2のシールド孔は、位置P1で第1のターゲット205aの上に位置決めされており、次に、第1のシールド孔204aは、ダミーターゲットである第3のターゲット205c上に位置決めされている。両方とも破線で示されている第2のターゲット205b及び第4のターゲット205dは、今度は、上部シールドで覆われている。図4Cに示される位置では、第1のターゲット205aは第2のシールド孔204bを通して露出され、かつ第3のターゲット205cは第1のシールド孔204aによって露出される。第1のターゲット205aは、プラズマを用いた洗浄プロセスで洗浄することができる。
【0047】
図4A~Cを要約すると、示される方法でマルチカソードチャンバの周囲に電極アセンブリ及び関連するターゲットを間隔を空けて配置し、示されるように上部シールドの周囲に互いに間隔を空けて配置された2つのシールド孔を含む回転可能な上部シールドを使用することによって、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bは、PVDチャンバ内のプラズマプロセスを使用して洗浄することができる。1つ以上の実施形態では、第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dが、堆積プロセスの一部としてスパッタされることが意図されていないダミーターゲットである場合、該ダミーターゲットは、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bの洗浄中のチャンバの汚染を防ぐ。幾つかの実施形態では、ダミーターゲットは、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bから洗浄された材料の大量の堆積後に粒子が生成されないようにすることを確実にするためにテクスチャ加工された、側面及び前面(PVDチャンバ及びPVDチャンバ内の基板に面する表面)を備えている。幾つかの実施形態では、テクスチャ加工された表面は、アーク噴霧によって提供される。
【0048】
示される特定の実施形態では、上部シールド206は円形であり、2つのシールド孔は、シールド孔の中心で上部シールド206の外周に間隔を空けて配置され、その結果、上部シールド206がPVDチャンバ200に対して回転するときに、シールド孔が2つのターゲット(第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bなどの堆積ターゲット)を露出させる。第1のシールドホールド(shield hold)204a及び第2のシールド孔は、上部シールド206の外周上でそれらの中心によって150度離間されており、図4Aの矢印261によって示されている。
【0049】
示される実施形態では、少なくとも4つのカソードアセンブリ及びカソードアセンブリの下のターゲットは、PVDチャンバの上部アダプタリッド273の外周の周りに間隔を空けて配置されており、その結果、上部シールド206が回転すると、上部シールドが回転するたびに2つの異なるターゲットが露出する。図4A~Cでは、円形である第2のターゲット205bの中心は、同じく円形である第1のターゲット205aの中心から反時計回り方向に150度である。加えて、円形かつダミーターゲットである第3のターゲット205cの中心は、第1のターゲット205aの中心から反時計回り方向に210度であり、円形かつダミーターゲットである第4のターゲット205dの中心は、第1のターゲットから反時計回り方向に300度である。このようにターゲットを上部アダプタリッド273上及び、シールド孔204a及び204bの中心が250度離間された上部シールド206上に配置するが、該上部シールド206を回転させることにより、第1及び第2のターゲット205a、205bは両方とも、堆積プロセス中に露出させることができ、次に、洗浄プロセス中に、第2のターゲット205b及びダミーターゲットを露出させて第2のターゲットを洗浄することができ、第1のターゲット205a及び別のダミーターゲットを露出させて、第1のターゲット205aを洗浄することができ、一方、他方の堆積ターゲットはターゲットの洗浄による汚染を被らない。
【0050】
別の言い方をすれば、1つ以上の実施形態では、第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dは、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bに対して位置決めされ、その結果、上部シールド206が第1の位置にあるときに、第1のターゲット205aは第1のシールド孔204aを通して露出され、第2のターゲット205bは第2のシールド孔204bを通して露出され、第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dは上部シールド206によって覆われる。上部シールド206が第2の位置に回転するときに、第4のターゲット205dは第2のシールド孔204bを通して露出され、第2のターゲット205bは第1のシールド孔204aを通して露出される。幾つかの実施形態では、上部シールド206が第3の位置に回転するときに、第1のターゲット205は第2のシールド孔204bを通して露出され、第4のターゲット205dは第1のシールド孔204aを通して露出される。
【0051】
別の実施形態では、物理気相堆積(PVD)チャンバ200は、モリブデンを含む第1のターゲット205aを支持する第1のバッキング板210aを含む第1のカソードアセンブリ202a、ケイ素を含む第2のターゲット205bを支持する第2のバッキング板210bを含む第2のカソードアセンブリ202b、ダミー材料を含む第3のターゲット205cを支持する第3のバッキング板を含む第3のカソードアセンブリ、及びダミー材料を含む第4のターゲット205dを支持する第4のバッキング板を含む第4のカソードアセンブリを備えた、複数のカソードアセンブリを含む。この実施形態では、上部シールド206は、複数のカソードアセンブリの下にあり、直径Dを有し、かつ第1のターゲット205aを露出させるように上部シールド上に位置決めされた第1のシールド孔204aと、直径Dを有し、かつ第2のターゲット205を露出させるように上部シールド上に位置決めされた第2のシールド孔204bとを有しており、該上部シールド206は、第1のシールド孔204aと第2のシールド孔204bとの間に平坦な表面203を有し、モリブデン及びケイ素材料は、上部シールド206を回転させずに、それぞれ、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bから交互にスパッタできるように構成される。この実施形態では、上部シールド206は、1センチメートルを超える高さHを有し、かつ第1のシールド孔204a及び第2のシールド孔204bの直径Dを超える長さを有する、2つのシールド孔間の隆起部207を含み、ここで、上部シールド206は回転可能であり、第1のシールド孔204a及び第2のシールド孔204bの一方が第1のターゲット205aと第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dの一方とを露出可能にする。
【0052】
幾つかの実施形態では、第1のカソードアセンブリ、第2のカソードアセンブリ、第3のカソードアセンブリ、及び第4のカソードアセンブリの各々が、第1のバッキング板から第1の距離で、第2のバッキング板から第2の距離で、第3のバッキング板から第3の距離で、及び第4のバッキング板から第4の距離で間隔を空けて配置された磁石を含み、各磁石は、第1の距離、第2の距離、第3の距離、又は第4の距離の各々を増減するように移動可能である。第1の距離、第2の距離、第3の距離、又は第4の距離を減少させると、磁石によって生成される磁場強度が増加する。第1の距離、第2の距離、第3の距離、又は第4の距離を増加させると、磁石によって生成される磁場強度が低下する。
【0053】
プラズマスパッタリングは、PVDチャンバ200内でDCスパッタリング又はRFスパッタリングのいずれかを使用して達成することができる。幾つかの実施形態では、処理チャンバは、RF及びDCエネルギーを各カソードアセンブリに関連するターゲットに結合するための供給構造を含む。カソードアセンブリ202aでは、供給構造の第1の端部をRF電源248a及びDC電源250に結合することができ、これらはそれぞれ、RF及びDCエネルギーをターゲット205aに供給するために利用することができる。RF電源248aは、249aにおいてRF電力に結合され、DC電源250aは、251aにおいてDC電力に結合される。例えば、DC電源250aを利用して、ターゲット305aに負の電圧又はバイアスを印加することができる。幾つかの実施形態では、RF電源248aによって供給されるRFエネルギーは、約2MHz~約60MHzの周波数範囲であってよく、あるいは、例えば、2MHz、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、又は60MHzなどの非限定的な周波数を使用することができる。幾つかの実施形態では、上記複数の周波数で高周波エネルギーを供給するために、複数のRF電源(すなわち2つ以上)が配設されうる。
【0054】
同様に、カソードアセンブリ202bでは、供給構造の第1の端部をRF電源248b及びDC電源250bに結合することができ、これらはそれぞれ、RF及びDCエネルギーをターゲット205bに供給するために利用することができる。RF電源248bは、249aにおいてRF電力に結合され、DC電源250bは、251bにおいてDC電力に結合される。例えば、DC電源250bを利用して、ターゲット305bに負の電圧又はバイアスを印加することができる。幾つかの実施形態では、RF電源248bによって供給されるRFエネルギーは、約2MHz~約60MHzの周波数範囲であってよく、あるいは、例えば、2MHz、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz、又は60MHzなどの非限定的な周波数を使用することができる。幾つかの実施形態では、上記複数の周波数で高周波エネルギーを供給するために、複数のRF電源(すなわち2つ以上)が配設されうる。
【0055】
示される実施形態は、カソードアセンブリ202a及び202bのための別々のRF電源248a及び248b並びにカソードアセンブリ202a及び202bのための別々のDC電源250a及び250bを含むが、PVDチャンバは、各カソードアセンブリへのフィードを備えた単一のRF電源及び単一のDC電源を備えていてもよい。
【0056】
本開示の別の態様は、物理気相堆積(PVD)チャンバ内で交互の材料層を堆積する方法に関する。一実施形態では、該方法は、第1の材料を含む第1のターゲット205aを含む第1のカソードアセンブリ202aと、第1の材料とは異なる第2の材料を含む第2のターゲット205bを含む第2のカソードアセンブリ202bとを備えた複数のカソードアセンブリを含むPVDチャンバ200内に基板270を配置することを含む。該方法は、複数のカソードアセンブリの下に上部シールド206を配置することをさらに含み、該上部シールドは、直径D1を有し、かつ第1のターゲット205aを露出するように上部シールド206上に位置決めされた第1のシールド孔204aと、直径D2を有し、かつ第2のターゲット205bを露出するように上部シールド206上に位置決めされた第2のシールド孔204bとを有しており、該上部シールド206はさらに、第1のシールド孔204aと第2のシールド孔204bとの間の平坦な表面203と、少なくとも第1のシールド孔の直径D1及び第2のシールド孔の直径D2に等しい長さLを有する、2つのシールド孔204a、204b間の領域207内の隆起部209とを備えている。幾つかの実施形態では、隆起部207は、1センチメートルを超える高さHを有する。本方法は、上部シールド206を回転させずに、第1のターゲット204a及び第2のターゲット204bから材料を交互にスパッタリングすることをさらに含み、ここで、隆起部は、第1の材料が第2のターゲットを汚染するのを防ぎ、かつ第2の材料が第1のターゲットを汚染するのを防ぐ。
【0057】
該方法の幾つかの実施形態では、PVDチャンバは、ダミー材料を含む第3のターゲット205c及びダミー材料を含む第4のターゲット205dをさらに含み、第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dは、上部シールド206が第1の位置にある場合、第1のターゲット205aが第1のシールド孔204aを通して露出され、第2のターゲット205bが第2のシールド孔204bを通して露出され、かつ、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bからの交互の材料層の堆積中に、第3のターゲット205c及び第4のターゲット205dが上部シールド206によって覆われるように、第1のターゲット205a及び第2のターゲット205bに対して位置決めされる。
【0058】
該方法の幾つかの実施形態では、該方法は、交互の材料層の堆積中に適用される磁場より大きい磁場を第2のターゲットに適用することによって、第2のターゲット205b上に配置された第1の材料を洗浄することをさらに含む。幾つかの実施形態では、該方法は、交互の材料層の堆積中に適用される磁場より大きい磁場を第1のターゲット205aに適用することによって、第1のターゲット205aの上に堆積された第2の材料を洗浄することをさらに含む。
【0059】
幾つかの実施形態では、該方法は、第2のターゲット205bから第1の材料を洗浄する前に、上部シールド206を第1の位置から第2の位置に回転させることをさらに含み、第4のターゲット205dは第2のシールド孔204bを通して露出され、かつ第2のターゲット205bは第1のシールド孔204aを通して露出される。1つ以上の実施形態では、該方法は、第1のターゲット205aが第2のシールド孔204bを通して露出され、かつ第4のターゲット205dが第1のシールド孔204aを通して露出されるように、上部シールド206を第2の位置から第3の位置に回転させることを含む。該方法の特定の実施形態では、基板270は、極端紫外線(EUV)マスクブランクを含む。該方法の特定の実施形態では、第1のターゲット材料はモリブデンを含み、第2のターゲット材料はケイ素を含む。幾つかの実施形態では、該方法は、モリブデンを含む第1の層とケイ素を含む第2の層とを含む複数の交互の材料層を堆積することをさらに含む。
【0060】
本明細書に記載される実施形態による、上部シールドに配置された第1のシールド孔204a及び第2のシールド孔を有する上部シールドの利点には、上部シールドを回転させずに、異なる材料の交互の層を堆積する能力が含まれる。幾つかの実施形態では、基板上に多層スタックを堆積するプロセスの完了後、上部シールドを上記のように回転させて、シールド孔の1つをダミーターゲット上に位置決めする洗浄動作を実施することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、記載された方法は、コントローラ290を使用することによって、PVDチャンバ200内で行われる。単一のコントローラが存在しても、複数のコントローラが存在してもよい。複数のコントローラが存在する場合には、各コントローラは、他の各コントローラと通信して、PVDチャンバ200の全体的な機能を制御する。例えば、複数のコントローラが利用される場合、一次制御プロセッサは、システムを制御するために、他のコントローラの各々に結合され、それらと通信する。コントローラは、さまざまなチャンバ及びサブプロセッサを制御するための産業環境で使用することができる、あらゆる形式の汎用コンピュータプロセッサ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサなどの1つである。本明細書で用いられる場合、「通信」とは、コントローラが有線通信回線を介して又は無線通信回線を介して信号を送受信することができることを意味する。
【0062】
各コントローラは、プロセッサ292、プロセッサに結合されたメモリ294、プロセッサ292に結合された入力/出力デバイス、及び異なる電子部品間の通信を提供するためのサポート回路296及び298を備えることができる。メモリは、1つ以上の一時的メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ)及び非一時的メモリ(例えば、ストレージ)を含み、プロセッサのメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、又は任意の他の形態のローカル又は遠隔デジタルストレージなど、容易に入手可能なメモリの1つ以上でありうる。メモリは、システムのパラメータ及び構成要素を制御するためにプロセッサによって動作可能な命令セットを保持することができる。サポート回路は、従来の方式でプロセッサを支持するようにプロセッサに結合される。回路は、例えば、キャッシュ、電源、クロック回路、入力/出力回路、サブシステムなどを含みうる。
【0063】
プロセスは、概して、プロセッサによって実行されると、処理チャンバに本開示の処理を実行させるソフトウェアルーチンとしてメモリに格納されうる。ソフトウェアルーチンはまた、プロセッサによって制御されているハードウェアから遠隔に位置している第2のプロセッサによって格納及び/又は実行されうる。1つ以上の実施形態では、本開示の方法の幾つか又はすべては、制御されたハードウェアである。したがって、幾つかの実施形態では、プロセスは、ソフトウェアに実装されてもよく、かつ、例えば、ハードウェア内のコンピュータシステムを特定用途向け集積回路又は他の種類のハードウェアの実装、若しくはソフトウェアとハードウェアとの組合せとして使用して、プロセスを実行することもできる。ソフトウェアルーチンは、プロセッサによって実行されると、汎用コンピュータを、プロセスが実行されるようにチャンバの動作を制御する特定用途向けコンピュータ(コントローラ)に変換する。
【0064】
幾つかの実施形態では、コントローラは、方法を実行するために、個々のプロセス又はサブプロセスを実行するための1つ以上の構成を有している。幾つかの実施形態では、コントローラは、方法の機能を実行するために中間構成要素を動作させるように接続及び構成される。
【0065】
本明細書に記載のPVDチャンバ200及び方法は、極端紫外線(EUV)マスクブランクの製造に特に有用でありうる。EUVマスクブランクは、マスクパターンを有する反射マスクを形成するために用いられる光学的に平坦な構造である。1つ以上の実施形態では、EUVマスクブランクの反射面は、極端紫外線光などの入射光を反射するための平坦な焦点面を形成する。EUVマスクブランクは、EUVレチクルなどの極端紫外線反射要素に構造的支持を提供する基板を含む。1つ以上の実施形態では、基板は、温度変化中に安定性を提供するために、低熱膨張係数(CTE)の材料で作られている。1つ以上の実施形態による基板は、ケイ素、ガラス、酸化物、セラミック、ガラスセラミック、又はそれらの組合せなどの材料から形成される。
【0066】
EUVマスクブランクは、極端紫外線光を反射する構造である多層スタックを備えている。多層スタックは、第1の反射層と第2の反射層の交互の反射層を含む。第1の反射層及び第2の反射層は、反射対を形成する。非限定的な実施形態では、多層スタックは、20~60の範囲の反射対を含み、合計で最大120の反射層を含む。
【0067】
第1の反射層及び第2の反射層は、さまざまな材料から形成されうる。一実施形態では、第1の反射層及び第2の反射層は、それぞれ、ケイ素及びモリブデンから形成される。多層スタックは、ブラッグリフレクタ又はミラーを生成するために異なる光学特性を有する材料の交互の薄い層を有することにより、反射構造を形成する。例えばモリブデンとケイ素の交互の層は、例えば本明細書に記載されるマルチカソード源チャンバ内で、物理気相堆積によって形成される。1つ以上の実施形態では、本明細書に記載されるチャンバ及び方法を使用して、モリブデン及びケイ素の20~60の反射対の多層スタックを堆積させることができる。2つのシールド孔を備えた上部シールドの独自の構造により、欠陥の少ない多層スタックの堆積が可能となる。本明細書に記載される実施形態で配置されるように、ダミーターゲットを含むターゲットを備えたマルチカソード配置は、モリブデン及びケイ素ターゲットの洗浄を促進する。
【0068】
本明細書に記載されるPVDチャンバ200は、多層スタック、並びにキャップ層及び吸収層を形成するために利用される。例えば、物理気相堆積システムは、ケイ素、モリブデン、酸化チタン、二酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ニオブ、タングステンルテニウム、モリブデンルテニウム、ニオブルテニウム、クロム、タンタル、窒化物、化合物の層、又はこれらの組合せの層を形成しうる。幾つかの化合物が酸化物として記載されているが、該化合物は、酸化物、二酸化物、酸素原子を有する原子混合物、又はそれらの組合せを含みうることが理解される。
【0069】
この明細書全体を通じての、「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、又は、「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに、この明細書全体の様々な箇所での「一又は複数の実施形態で」、「ある種の実施形態で」、「一実施形態で」、又は「実施形態において」などの表現の表出は、必ずしも、本開示の同一の実施形態に言及するものではない。さらには、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な態様で組み合わせることができる。
【0070】
本明細書の開示は具体的な実施形態を参照して説明されているが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の単なる例示であるものと理解されたい。本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に対してさまざまな修正及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内である修正及び変形を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C