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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】発光型治療具
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20230510BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20230510BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61M25/00 530
A61M25/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022122588
(22)【出願日】2022-08-01
(62)【分割の表示】P 2018172413の分割
【原出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2022136319
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-08-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592212537
【氏名又は名称】株式会社ビー・アンド・プラス
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊広
(72)【発明者】
【氏名】亀田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】進藤 崇之
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 豊
(72)【発明者】
【氏名】小川 美香子
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝平
(72)【発明者】
【氏名】▲くわ▼谷 将城
(72)【発明者】
【氏名】平田 甫
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-507284(JP,A)
【文献】特表2002-518147(JP,A)
【文献】特表2018-511371(JP,A)
【文献】特表2016-531699(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103380(WO,A1)
【文献】特表2007-511279(JP,A)
【文献】国際公開第2006/130365(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光免疫療法に必要とされる特定波長の光を照射するための治療具であって、
先端部に配置される光透過性の発光部、第1ルーメン、及び第2ルーメンを有するチューブと、
前記第2ルーメン内で前記発光部の内側に配置され、前記特定波長の光を照射する発光体を実装したフレキシブル配線基板と、を備え、
前記第1ルーメンは先端が開口し少なくともガイドワイヤを挿通可能であり、前記第2ルーメンは前記フレキシブル配線基板よりも先端側が閉塞される、
発光型治療具。
【請求項2】
前記フレキシブル配線基板は、一対の側部が対向して配置するように、折曲部を介して折り曲げられた形状をなしており、各側部に前記発光体が複数個実装されている請求項1に記載の発光型治療具。
【請求項3】
前記フレキシブル配線基板は、螺旋状となるように捩られた形状をなしており、その外面に前記発光体が複数個実装されて、各発光体の向きが変化するように構成されている請求項1に記載の発光型治療具。
【請求項4】
前記フレキシブル配線基板は、円筒状となるように屈曲した形状をなしており、その外周面に前記発光体が複数個実装されている請求項1に記載の発光型治療具。
【請求項5】
前記発光体は、前記チューブの前記発光部内に充填される光透過性樹脂によって、前記発光部の内側に埋設されている請求項1~4のいずれか1つに記載の発光型治療具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光免疫療法に必要とされる特定波長の光を照射するための、発光型治療具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、癌治療法は様々なものが考案されている。例えば、下記特許文献1には、免疫増強作用のあるシアニン系色素を癌巣に投与して、一定の光を照射することによって、生体の免疫機能を増強する、光免疫療法が記載されている。この特許文献1には、光免疫療法のための装置として、光源部、光誘導部及び光導入路と薬液流入路から構成される注入部を備え、光源部としてレーザー発振器または発光ダイオードを使用し、更に、薬液としてシアニン色素を使用するようにした、光免疫療法による癌治療装置が記載されている。
【0003】
また、近年、正常組織を損傷することなく、腫瘍細胞を選択的に破壊する癌治療方法として、光免疫療法(近赤外光線免疫療法とも言われている)が注目されている。通常、癌細胞の周囲にも、癌細胞を破壊する免疫細胞が存在するが、癌細胞を取り巻く免疫抑制細胞によって、免疫細胞の作用が抑制されている。そこで、癌細胞や癌細胞の周囲に存在する免疫抑制細胞の表面にある特異的タンパク質を認識する抗体と、特定波長(例えば近赤外線)の光を吸収して化学反応を起こし、発熱等によって細胞を破壊する作用を有する感光物質とを結合させ、この結合体を体内に投与して癌細胞に付着させた後、感光物質が反応する特定波長の光を照射することで、感光物質に化学変化を起こさせ、癌細胞や免疫抑制細胞を破壊する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-144026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような、近赤外光線免疫療法では、光を照射する手段が必要であるため、上記特許文献1に記載の、レーザー発振器等の光源部を有する、癌治療装置を利用することが考えられる。しかし、上記のようなレーザー発振器は、大がかりな設備となるため、比較的規模の大きな医療施設でなければ、患者に治療を施すことができず、患者にとって負担であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、光免疫療法を比較的手軽に施すことができ、患者の負担を減らすことができる、発光型治療具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る発光型治療具は、光免疫療法に必要とされる特定波長の光を照射するための治療具であって、先端部に配置される光透過性の発光部、第1ルーメン、及び第2ルーメンを有するチューブと、前記第2ルーメン内で前記発光部の内側に配置され、前記特定波長の光を照射する発光体を実装したフレキシブル配線基板と、を備え、前記第1ルーメンは先端が開口し、前記第2ルーメンは前記フレキシブル配線基板よりも先端側が閉塞される
【0008】
上記発明によれば、チューブを先端側から体内に挿入し、光免疫療法の感光物質等が付着された患部に、チューブ先端側に設けた発光部を接触又は近接させて配置し、フレキシブル配線基板に実装された発光体を発光させその光を、患部に付着された感光物質等に照射して、患部の治療を施すことができる。
【0009】
したがって、この発光型治療具によれば、光免疫療法を比較的手軽に施すことができ、患者への負担を減らすことができる。
【0010】
本発明の発光型治療具においては、前記チューブの延出方向途中の外周には、身体の所定箇所に係止可能で、前記身体の所定箇所に対して前記チューブを保持する、ストッパが装着されていることが好ましい。
【0011】
上記態様によれば、チューブの延出方向途中の外周には、身体の所定箇所に係止可能で、身体の所定箇所に対して前記チューブを保持する、ストッパが装着されているので、例えば、食道癌等を治療すべく、鼻孔からチューブを挿入する際に、鼻孔周縁にストッパを係止させることで、チューブを保持することができ、チューブ先端側の発光部を、体内の患部に位置合わせしやすくなり、発光体からの光を患部に適切に照射しやすくなる。
【0012】
本発明の発光型治療具においては、チューブの基端部に接続される本体部には、身体又は衣服の所定箇所に係止可能で、前記身体又は衣服の所定箇所に対して前記本体部を保持する、係止具が設けられていることが好ましい。
【0013】
上記態様によれば、本体部には、身体又は衣服の所定箇所に係止可能で、身体又は衣服の所定箇所に対して本体部を保持する、係止具が設けられているので、本体部が体外で、ぶらついたり、ふらついたり、跳ねたりすることを抑制して、本体部を体外で安定して保持しやすくすることでき、携帯性を高めることができる。
【0014】
本発明の発光型治療具においては、前記係止具は、耳かけ、耳当て、クリップから選ばれた一種からなることが好ましい。上記態様によれば、係止具は、耳かけ、耳当て、クリップから選ばれた一種からなるので、本体部を身体に密着させやすくして、より安定して保持することができる。
【0015】
本発明の発光型治療具においては、前記フレキシブル配線基板は、一対の側部が対向して配置するように、折曲部を介して折り曲げられた形状をなしており、各側部に前記発光体が複数個実装されていることが好ましい。
【0016】
上記態様によれば、フレキシブル配線基板は、一対の側部が対向して配置するように、折曲部を介して折り曲げられた形状をなしており、各側部に前記発光体が複数個実装されているので、発光部の内部空間を無駄なく活用しつつ、発光部の内側構造を、比較的コンパクトにすることができると共に、発光部の2面側から発光体の光を照射でき、患部に対しての光を比較的広範囲に照射することができる。
【0017】
本発明の発光型治療具においては、前記フレキシブル配線基板は、螺旋状となるように捩られた形状をなしており、その外面に前記発光体が複数個実装されて、各発光体の向きが変化するように構成されていることが好ましい。
【0018】
上記態様によれば、フレキシブル配線基板は、螺旋状となるように捩られた形状をなしており、その外面に前記発光体が複数個実装されて、各発光体の向きが変化するように構成されているので、患部に対して光をより広範囲に照射することができる。
【0019】
本発明の発光型治療具においては、前記フレキシブル配線基板は、円筒状となるように屈曲した形状をなしており、その外周面に前記発光体が複数個実装されていることが好ましい。
【0020】
上記態様によれば、フレキシブル配線基板は、円筒状となるように屈曲した形状をなしており、その外周面に発光体が複数個実装されているので、発光部からの光を放射状に照射することができ、患部に対して光をより広範囲に照射することができる。
【0021】
本発明の発光型治療具においては、前記フレキシブル配線基板の前記一対の側部の間、又は、螺旋状となるように捩られた形状をなす前記フレキシブル配線基板の内側、又は、円筒状となるように屈曲した形状をなす前記フレキシブル配線基板の内側に、流体の流入により膨張するバルーンが配置されており、前記バルーンに流体を流入することで、前記フレキシブル配線基板を押し広げて、複数の前記発光体を、前記バルーンへの流体の流入前よりも、外方に移動させるように構成されていることが好ましい。
【0022】
上記態様によれば、バルーンに流体を流入することで、フレキシブル配線基板を押し広げて、複数の前記発光体を、バルーンへの流体の流入前よりも、外方に移動させるように構成されているので、発光体を患部に近接させることができ、患部に対して光を近距離で照射することができる。
【0023】
本発明の発光型治療具においては、前記発光体は、前記チューブの前記発光部内に充填される光透過性樹脂によって、前記発光部の内側に埋設されていることが好ましい。
【0024】
上記態様によれば、発光体は、チューブの発光部内に充填される光透過性樹脂によって、発光部の内側に埋設されるように構成されているので、発光体からの光が透過して、患部に問題なく照射されると共に、発光部内で、発光体が位置ずれしたりガタついたりすることを防止して、発光体を発光部内の所定位置に保持することができる。
【0025】
本発明の発光型治療具においては、前記チューブの前記発光部の外周には、体内で係止可能で、かつ、前記発光体から照射される光を散乱可能とする、凸部が設けられていることが好ましい。
【0026】
上記態様によれば、チューブの発光部の外周には、体内で係止可能で、かつ、発光体から照射される光を散乱可能とする、凸部が設けられているので、チューブ先端側に設けた発光部を、体内の所定位置において位置決め固定することができ、所望の患部に光を照射しやすくすることができると共に、発光体からの光を散乱させて、光を広範囲に照射することができる。
【0027】
本発明の発光型治療具においては、前記本体部は、発光体に電力を供給するための電源をオン・オフするスイッチと、前記電源からの電流を可変させる可変抵抗とを、更に有していることが好ましい。上記態様によれば、電源をオン・オフするスイッチと、電源からの電流を可変させる可変抵抗とを、更に有しているので、発光体の明るさを適宜調整することができる。
【0028】
本発明の発光型治療具においては、前記チューブは、少なくとも第1ルーメン及び第2ルーメンを有するカテーテルチューブであって、前記第1ルーメンには、ガイドワイヤが挿通可能とされており、前記第2ルーメンには、前記発光体を実装した前記フレキシブル配線基板が挿入されると共に、前記リード線が挿通されており、更に、前記第2ルーメンの先端開口部は閉塞部材で閉塞されていることが好ましい。
【0029】
上記態様によれば、第1ルーメンに挿通されるガイドワイヤを介して、カテーテルチューブであるチューブをガイドさせつつ、体内の所定位置に移動させることできるので、ガイドワイヤが必要な、例えば、胆管癌等の比較的内径が小さい箇所にも、光免疫療法を適切に施すことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光免疫療法を比較的手軽に施すことができ、患者への負担を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る発光型治療具の、第1実施形態を示す説明図である。
図2】同発光型治療具の要部拡大断面図である。
図3】同発光型治療具を構成するフレキシブル配線基板の、要部拡大斜視図である。
図4】(a)はフレキシブル配線基板及び発光体の関係を示す拡大説明図、(b)はフレキシブル配線基板の展開状態(折曲前の状態)での説明図である。
図5】同発光型治療具のチューブ先端側の製造工程を示しており、(a)は第1工程の説明図、(b)は第2工程の説明図、(c)は第3工程の説明図である。
図6】同発光型治療具における、回路構造を示す説明図である。
図7】同発光型治療具の使用状態を示す説明図である。
図8】本発明に係る発光型治療具の、第2実施形態を示しており、(a)はその説明図、(b)は(a)のA矢視線から見た場合の側面図である。
図9】本発明に係る発光型治療具の、第3実施形態を示しており、(a)は同発光型治療具のチューブ先端側の製造工程の第1工程の説明図、(b)は同製造工程の第2工程の説明図、(c)は、チューブ先端側に配置したバルーンを膨らませた状態の説明図である。
図10】本発明に係る発光型治療具の、第4実施形態を示しており、(a)は同発光型治療具のチューブ先端側の製造工程の第1工程の説明図、(b)は同製造工程の第2工程の説明図である。
図11】本発明に係る発光型治療具の、第5実施形態を示しており、その要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1~7を参照して、本発明に係る発光型治療具の、第1実施形態について説明する。
【0033】
この発光型治療具は、光免疫療法(近赤外光線免疫療法)に必要とされる特定波長の光を、患部に照射することによって、患部の治療を行うためのものである。この実施形態においては、例えば、図7に示すように、食道1内に生成された食道癌等の患部3に、光免疫療法を施すことが想定している。ただし、食道癌以外にも、例えば、胆管内に生成される胆管癌や、大腸癌、胃癌、その他の癌細胞が生成された様々な箇所に対して、光免疫療法を施す際に適用してもよく、適用箇所は特に限定されない。
【0034】
図1及び図2に示すように、この実施形態における発光型治療具10(以下、単に「治療具10」ともいう)は、先端部21に光透過性の発光部25を設けたチューブ20と、このチューブ20の発光部25の内側に配置され、特定波長の光を照射する発光体40を実装したフレキシブル配線基板30と、チューブ20の基端部22に接続され、発光体40に電力を供給するための電源51を有する本体部50と、チューブ20内に挿通され、一端がフレキシブル配線基板30に接続され、他端が電源51に接続されたリード線60とを有している。すなわち、この実施形態の治療具10は、複数の発光体40が実装されたフレキシブル配線基板30と、電源51とが、リード線60で有線接続された構造をなしている。また、この治療具10は、チューブ20の先端部21側の発光部25が体内に挿入される一方、チューブ20の基端部22側や本体部50は体外に配置されて、携帯可能な構造となっている。なお、上述したように、治療具10を食道癌が生成された患部3に配置する場合には、チューブ20を、その先端部21側から鼻孔5に挿入して、鼻腔や気道を通して、食道1内に挿入することになる。
【0035】
以下、治療具10について詳細に説明する。まず、チューブ20について説明すると、この実施形態におけるチューブ20は、一定径でもって所定長さで延びる円筒状をなしたチューブ本体23を有している。このチューブ本体23は、例えば、ポリウレタンや、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成され、その外径D(図2参照)は、2~0.5mmであることが好ましく、1~0.5mmであることがより好ましい。
【0036】
また、図2に示すように、チューブ20の先端部21は、前記チューブ本体23とは別部材とされた略円筒状をなすと共に、その最先端が丸みを帯びた曲面状の閉塞部21aによって閉塞された、有底キャップ状を呈している。そして、先端部21の基端面を、チューブ本体23の先端面に突き合わせて、その突き合わせ面が、接着剤や溶着等によって固着されることで、チューブ本体23に先端部21が接続されて一体化するようになっている。ただし、チューブ本体と先端部とを一体形成してもよい。また、チューブの形状は特に限定されない。
【0037】
更に図2に示すように、チューブ20の発光部25の、先端から基端までの長さLは、5~50mmであることが好ましく、10~20mmであることがより好ましく、更に、患部3の大きさよりも長いことが望ましい。
【0038】
また、図2に示すように、チューブ20の先端部21に設けられた発光部25の外周には、体内で係止可能で、かつ、発光体40から照射される光を散乱可能とする、複数の凸部27が設けられている。この実施形態では、両側面がテーパ状をなした、略台形状をなした凸部27が、発光部25の軸方向に沿って所定間隔を空けて複数設けられ(ここでは2個)、かつ、発光部25の周方向に沿って複数列設けられている。
【0039】
なお、凸部としては、例えば、(1)略四角形状をなすように発光部外周から突出した形状としたり、(2)チューブ先端側に向く面を、チューブ先端側から基端側に向けて次第に高さが高くなるテーパ面とし、チューブ基端側に向く面を直角面とした、略直角三角形状をなすように発光部外周から突出した形状としたり、(3)発光部外周が波打つように(波型曲線状をなすように)に突出した形状としたりしてもよく、体内で係止可能で、かつ、発光体から照射される光を散乱可能であれば、どのような形状であってもよい。
【0040】
また、上記チューブ20には、例えば、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、W、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金等からなる、X線不透過性のマーカーを設けることが好ましい。上記マーカーは、例えば、発光部25の先端及び/又は基端に隣接して設けることがより好ましい。
【0041】
次に、チューブ20の発光部25の内側に配置されるフレキシブル配線基板30(以下、単に「配線基板30」ともいう)について説明する。この配線基板30は、柔軟性を有しており折り曲げ可能となっている。また、この実施形態の配線基板30は、図4(b)に示すように、細長く延びる長板状をなしており、その長手方向中央が折曲線S(図4(b)参照)でR状をなして折り曲げられることによって、図2図3に示すように、R状曲面を有する折曲部31を介して、一対の側部33,33が互いに平行となるように対向して配置された、略U字形状となっている。
【0042】
更に図4(a)に示すように、各側部33の外面(対向配置された側部33の対向面とは反対側の面を意味する。以下の説明でも同様)には、複数の発光体40や電極45等を接続するための配線パターン(カソード配線34及びアノード配線35等)が形成されている。そして、各側部33の外面側に、カソード配線34を介して、発光体40が実装されている。この実施形態では、各側部33に、4個の発光体40が所定間隔をあけて実装されている。更に、各発光体40は、図4(a)に示すように、ワイヤー41を介して前記アノード配線35に電気的に接続されている(いわゆるワイヤーボンディング)。また、発光体40及びワイヤー41は、樹脂層43によって覆われて絶縁されている。
【0043】
なお、上記は、ベアチップを用いた、いわゆるベアチップ実装による、発光体の実装方法が示されているが、発光体40を標準的なパッケージ(例えば、1005,1608)に実装した状態で、フレキシブル配線基板30に実装してもよく、実装方法は特に限定されない。
【0044】
更に、この実施形態における発光体40は、いわゆる発光ダイオード(LED)とされている。なお、この発光型治療具10は、例えば、図7に示すように、癌組織である患部3に近接して配置され(図7では密着配置されている)、患部3に選択的に付着された感光物質に、発光体40により感光性の光を照射することで、患部3の治療を行う光免疫療法を施すものであるが、この際の感光物質としては、例えば、IR700を用いることができる。この際の、発光体40から照射される光としては、例えば、波長680~700nmの近赤外光とされている。
【0045】
また、図2図3に示すように、配線基板30の各側部33の外面であって、折曲部31とは反対側の端部には、電極45,45がそれぞれ設置されている。各電極45は、配線基板30の所定の配線パターンに接続されており、また、リード線60の一端が接続されている。
【0046】
上記のように、複数の発光体40が実装された配線基板30は、図2に示すように、少なくとも発光体40が実装された部分が、チューブ20の発光部25の内側に配置されるようになっている。また、図2に示すように、チューブ20の発光部25の内側と、複数の発光体40を実装した配線基板30との間には、例えば、エポキシ樹脂や、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂等の、透明な樹脂材料である光透過性樹脂29が充填されるようになっている。その結果、複数の発光体40は、チューブ20の発光部25内に充填される光透過性樹脂29によって、ワイヤー41及び樹脂層43ごと、発光部25の内側に埋設されることとなる(図2参照)。
【0047】
また、配線基板30のうち、複数の発光体40が実装されてない部分は、図2に示すように、チューブ20の発光部25の基端側から引き出されて、チューブ本体23内に位置するように配置される。
【0048】
なお、フレキシブル配線基板としては、上記のような略U字状に折曲した形状ではなく、単に長板状をなしていたり、円筒状に屈曲したり、螺旋状に捩られたりした形状であってもよい(円筒状や螺旋状の形状については、後述の実施形態で説明する)。また、フレキシブル配線基板30の一対の側部33,33の間に、流体の流入により膨張するバルーンを配置して、バルーンに流体を流入することで、フレキシブル配線基板30を押し広げて、複数の発光体40を、バルーンへの流体の流入前よりも、外方に移動させるように構成してもよい(このバルーンによる膨張構造については、後述の第3実施形態において詳述する)。
【0049】
上記のような、チューブ20の先端部21や発光部25側の構造は、例えば、図5(a)~(c)に示すような工程で製造することができる。
【0050】
すなわち、図4(b)に示すように、配線基板30の一対の側部33,33の外面側に、カソード配線34やアノード配線35等の配線パターンを形成すると共に、複数の発光体40をワイヤー41を介してアノード配線35に接続し、かつ、電極45を設置する。その後、折曲線Sを介して、一対の側部33,33を互いに平行となるように折曲する。
【0051】
そして、図5(a)に示すように、発光部25の外周形状を形成するための、内周形状を有し、互いに近接離反可能とされた上下一対の射出成型用の金型100,101の、キャビティ105(溶融樹脂が充填される空間)内に、配線基板30の、複数の発光体40が実装された部分をセットする。この実施形態の金型100,101の内周には、発光部25外周の凸部27に適合する、凹部103が複数形成されている。なお、配線基板30のうち、複数の発光体40が実装されてない部分は、一対の金型100,101のキャビティ105内から引き出された位置にセットする(図5(a)参照)。
【0052】
次いで、図5(b)に示すように、一対の金型100,101を近接させて、配線基板30の、複数の発光体40が実装されてない部分を挟持して、一対の金型100,101を閉じる。その状態で、金型100,101のキャビティ105内に、透明な光透過性の樹脂材料を充填する。その結果、発光部25の外周に、複数の凸部27が形成されると共に、発光部25の内側に、複数の発光体40が埋設された、チューブ20の先端構造が製造される(図5(b)参照)。その後、一対の金型100,101を開いて、各型内から先端部21を抜型し、その状態で、図5(c)に示すように、先端部21の基端面を、チューブ本体23の先端面に突き合わせて、その突き合わせ面を接着剤等で固着することで、チューブ本体23に先端部21が接続されて、先端部21に発光部25を設けたチューブ20を得ることができる。
【0053】
次に、チューブ20の基端部22に接続される本体部50について説明する。図1に示すように、この実施形態における本体部50は、内部空間を有する箱状をなしており、その内部に、配線基板30に実装した複数の発光体40に電力を供給するための、電源51が配置されている。この電源51には、一端が電極45,45に接続された、リード線60,60の他端がそれぞれ接続されるようになっており、これらのリード線60,60を介して、フレキシブル配線基板30と電源51とが導通するようになっている。
【0054】
この実施形態における電源51は、円盤状をなした、いわゆるボタン型電池となっており、また、この電源51は本体部50の外部に露出しないように、本体部50に内蔵されている。なお、電源としては、ボタン型電池でなくとも、例えば、円柱状の一般的な乾電池や、角型の積層電池、更には充電可能な二次電池等としてもよく、複数の発光体に光免疫療法に十分な電力(例えば、2.4~3.0V程度)を供給可能であればよく、特に限定はされない。また、電源は、本体部に複数設けてもよい。
【0055】
更に図1に示すように、本体部50は、電源51をオン・オフするスイッチ53と、電源51からの電流を可変させる可変抵抗55とを更に有している。前記スイッチ53の本体53a、及び、前記可変抵抗55の本体55aは、本体部50内に配置されている。また、前記スイッチ53の、スライド式の操作部53b、及び、前記可変抵抗55の、円柱状をなしたボリュームつまみ式の操作部55bは、本体部50の外部に露出しており、スイッチ53及び可変抵抗55を、本体部50の外側から操作可能となっている。このように、可変抵抗55の操作部55bを本体部50の外部から操作可能であるため、電源51からの電流を任意に変更可能となっている。更に、これらのスイッチ53や可変抵抗55は、図示しない導線を介して電源51に接続されている。
【0056】
図6には、この実施形態の治療具10の回路図が示されている。同図6に示すように、複数の発光体40が並列して配置されている(チューブ20の配線基板30側の構造)と共に、これらの複数の発光体40に、可変抵抗55、電源51、スイッチ53(本体部50側の構造)が接続された構成となっている。
【0057】
また、本体部50には、身体又は衣服の所定箇所に係止可能で、身体又は衣服の所定箇所に対して、本体部50を保持するための、係止具が設けられている。図1に示すように、この実施形態では、本体部50の側壁の所定箇所から、本体部50の外方へ向けて、曲面状をなすように延びる、耳かけ57が設けられている。図7に示すように、この耳かけ57は、患者の耳7に引き掛け可能となっており、それによって本体部50は耳7から脱落しないように保持されるようになっている。すなわち、この実施形態では、耳かけ57が本発明における「係止具」をなしている。
【0058】
ただし、係止具しては、上記のような耳かけ以外にも、ヘッドバンドで連結され両耳の側方に配置される、イヤーマフ型(オーバーイヤーヘッドホン型)の耳当てとしたり、更には、患者の身体ではなく、衣服に係止可能な、クリップ型(これについては後述の第2実施形態で説明する)、等としてもよく、特に限定はされない。
【0059】
更に、チューブ20の延出方向途中の外周には、身体の所定箇所に係止可能で、身体の所定箇所に対してチューブ20を保持するための、ストッパ70が装着されている。この実施形態のストッパ70は、図1に示すように、チューブ20の外周にスライド可能に配置された、円筒状をなした挿入部71と、該挿入部71のチューブ基端側の端部から、チューブ20の基端部22側に向けて次第に拡径する、ラッパ状をなした係止部73とが、一体形成された構造となっている。なお、このストッパ70は、チューブ20の軸方向に沿ってスライド可能となっている。ただし、ストッパ70の挿入部71の内周とチューブ20の外周とはぼぼ密接しており、ストッパ70はチューブ20の任意の箇所に保持可能となっている。
【0060】
そして、この実施形態のストッパ70は、図7に示すように、患者の鼻孔5内に、円筒状の挿入部71が挿入されると共に、鼻孔5の周縁部に、ラッパ状をなした係止部73が係止することで、鼻腔や気道を介して患者の食道1内に挿入されたチューブ20を、身体に対して保持可能となっている。
【0061】
なお、上記ストッパ70は、チューブを鼻孔5から挿入する場合に適した形状となっているが、例えば、大腸癌の治療のために、肛門からチューブを挿入する場合には、ラッパ状の係止部を更に拡径した形状等としてもよく、発光型治療具の適用箇所に応じて、適宜その形状を変更することが好ましい。
【0062】
次に、上記構成からなる本発明に係る治療具10の、使用方法の一例について説明する。なお、この使用方法は一例であり、特に限定はされない。
【0063】
この実施形態では、食道1に生成された食道癌である患部3に、光免疫療法を施す場合について説明するが、上述したように、胆管癌や、大腸癌、胃癌等に、光免疫療法を施す際に適用してもよく、適用箇所は限定されない。
【0064】
まず、抗体と感光物質(例えば、IR700)との結合体を、静脈注射等により体内に投与して、この結合体を患部3(ここでは食道癌)に付着させる。この状態で、例えば、X線透視下において、チューブ20の先端部21を鼻孔5に差し込んで、X線不透過性のマーカー等を確認しつつ、チューブ20を挿入していき、鼻腔や気道を通して、その先端部21を食道1の患部3に整合する位置まで移動させて、発光部25を患部3に接触又は近接させて配置する。ここでは、発光部外周に突設した複数の凸部27を、患部3に係止させて、チューブ20の先端部21を患部3に位置決め固定して、発光部25を患部3の内側に近接配置する。
【0065】
また、チューブ20の基端部22や本体部50は、体外に配置する。そして、本体部50に一体形成された耳かけ57を、耳7に引き掛けると共に、チューブ20に対してストッパ70を適宜スライドして、その位置を調整して、ラッパ状の係止部73を鼻孔5の周縁部に係止させることで、身体に対して本体部50及びチューブ20を保持する(図7参照)。
【0066】
上記状態で、本体部50のスイッチ53をオンにする。すると、本体部50内の電源51からの電力が、リード線60を通り、配線基板30の電極45,45を介して、複数の発光体40に供給されて、所定波長の光(例えば、近赤外光)が患部3に向けて照射される。その結果、患部3に付着されたIR700等の感光物質を反応させて、患部3に光免疫療法を施すことができる。
【0067】
そして、この発光型治療具10においては、複数の発光体40を発光させるための電力を、体外に配置される本体部50の電源51から直接供給することができると共に、本体部50は、体外に配置して携帯することができるので、光免疫療法を比較的手軽に施すことができ、患者への負担を減らすことができる。すなわち、従来のレーザー発振器等を有する癌治療装置の場合には、大がかりな設備となり比較的規模の大きな医療施設でなければ、患者に治療を施すことがないが、この治療具10では、電源51を有する本体部50がリード線60を介して配線基板30に接続され、本体部50を体外に配置して携帯できるので、比較的規模の小さい病院や診療所等でも、治療を施すことができ、また、治療中にある程度動くことも可能であるため、患者の身体への負担も少なく、時間的・経済的な観点からも負担が少ない。
【0068】
なお、胆管癌や大腸癌等に光免疫療法を施す場合には、図示しない内視鏡を、患者の口や肛門から挿入して、内視鏡の先端部を体内の所定位置(胆管や大腸)まで移動させた後、内視鏡のルーメンを通じて、治療具10のチューブ20を挿入して、内視鏡の先端部開口から、同チューブ20の先端部21を挿出させて、発光部25を胆管癌や大腸癌に接触又は近接配置した後、スイッチ53をオンにして発光体40を発光させて、光免疫療法を施すこととなる。
【0069】
また、この実施形態においては、図1に示すように、チューブ20の延出方向途中の外周には、身体の所定箇所に係止可能で、身体の所定箇所に対して前記チューブを保持する、ストッパ70が装着されている。そのため、図7に示すように、例えば、食道癌等を治療すべく、鼻孔5からチューブ20を挿入する際に、鼻孔5の周縁部にストッパ70(ここではストッパ70のラッパ状の係止部73)を係止させることで、チューブ20を身体(ここでは鼻孔5)に対して保持することができる。その結果、チューブ20の先端部21に設けた発光部25を、体内の患部3に位置合わせしやすくなり、発光体40からの光を、患部3に適切に照射しやすくなる。
【0070】
更に、この実施形態における本体部50には、身体又は衣服の所定箇所に係止可能で、身体又は衣服の所定箇所に対して本体部50を保持する係止具、すなわち、この実施形態では、図7に示すように、患者の耳7に引き掛け可能な耳かけ57が設けられている。そのため、本体部50が体外で、ぶらついたり、ふらついたり、跳ねたりすることを抑制して、本体部50を体外で安定して保持しやすくすることでき、その携帯性を高めることができる。また、上記のように、係止具を耳かけ57とした場合には、本体部50を身体(ここでは耳7)に密着させやすくして、より安定して保持することができる。
【0071】
更に、この実施形態における配線基板30は、図2に示すように、一対の側部33,33が対向して配置するように、折曲部31を介して折り曲げられた形状をなしており、各側部33に発光体40が複数個実装されている。そのため、チューブ20の先端部21に設けた発光部25の内部空間を無駄なく活用しつつ、発光部25の内側構造を、比較的コンパクトにすることができると共に、発光部25の2面側から発光体40の光を照射でき、患部3に対しての光を比較的広範囲に照射することができる。
【0072】
また、この実施形態における発光体40は、図2に示すように、チューブ20の発光部25内に充填される光透過性樹脂29によって、発光部25の内側に埋設されるように構成されている。そのため、発光体40からの光を透過させて、患部3に問題なく照射させることができると共に、発光部25内で、発光体40が位置ずれしたりガタついたりすることを防止して、発光体40を発光部25内の所定位置に保持することができる。
【0073】
更に、この実施形態においては、図2に示すように、チューブ20の先端部21に設けた発光部25の外周には、体内で係止可能で、かつ、発光体40から照射される光を散乱可能とする、凸部27が設けられている。そのため、この凸部27によって、チューブ先端側に設けた発光部25を、体内の所定位置において位置決め固定することができ、所望の患部3に光を照射しやすくすることができると共に、発光体40からの光を散乱させて、光を広範囲に照射することができる。
【0074】
また、この実施形態では、図1に示すように、本体部50は、電源51をオン・オフするスイッチ53と、電源51からの電流を可変させる可変抵抗55とを更に有しているので、発光体40の明るさを適宜調整することができる。
【0075】
図8には、本発明に係る発光型治療具の、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0076】
この実施形態の発光型治療具10A(以下、単に「治療具10A」ともいう)は、前記治療具10と比較して、本体部に設けた係止具の構造が異なっている。すなわち、図8(b)に示すように、この治療具10Aの本体部50には、その裏面(スイッチ53の操作部の露出面とは、反対側の面)側に、金属製のクリップ59が設けられている。このクリップ59は、基端部59a側から先端部59b側に向けて次第に高さが低くなり、先端部59bが本体部50の裏面に接する構造となっている。その結果、クリップ59の先端部59bと、本体部50の裏面との間で、衣服の所定箇所(例えば、胸ポケットや、襟、裾等)を挟持して、本体部50を保持可能となっている。
【0077】
そのため、このクリップ59を設けたことによって、本体部50が体外で、ぶらついたり、ふらついたり、跳ねたりすることを抑制して、本体部50を体外で安定して保持しやすくすることでき、その携帯性を高めることができると共に、本体部50を身体に密着させやすくして、より安定して保持することができる。
【0078】
図9には、本発明に係る発光型治療具の、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0079】
この実施形態の発光型治療具10B(以下、単に「治療具10B」ともいう)は、前記治療具10,10Aと比較して、フレキシブル配線基板の形状が異なっている。
【0080】
すなわち、図9(a)に示すように、この実施形態におけるフレキシブル配線基板30B(以下、単に「配線基板30B」ともいう)は、円筒状となるように屈曲した形状をなしており、その周面に発光体40が複数個実装されている。また、図9(b)に示すように、チューブ20の内周には、カテーテル81と、その先端部外周に装着されたゴム膜等からなるバルーン83とを有するバルーンカテーテル80が配置されている。そして、円筒状となるように屈曲した配線基板30Bの内側には、バルーンカテーテル80のバルーン83が配置されている。そして、このバルーンカテーテル80のカテーテル81を通してバルーン83内に流体を注入することで、図9(c)に示すように、バルーン83が膨張して、配線基板30Bを押し広げて外方に移動させることができるように構成されている。
【0081】
この実施形態においては、配線基板30Bは、円筒状となるように屈曲した形状をなしており、その外周面に発光体40が複数個実装されているので、チューブ20の発光部25からの光を放射状に照射することができ、患部3に対して光をより広範囲に照射することができる。また、円筒状に屈曲した配線基板30Bの内側に、配置されたバルーン83を膨張させて、配線基板30Bを内側から押し広げて、複数の発光体40を、バルーン83への流体の流入前(図9(b)参照)よりも、チューブ外方に移動させることにより、発光体40を患部3に近接させることができ、患部3に対して光を近距離で照射することができる。
【0082】
図10には、本発明に係る発光型治療具の、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0083】
この実施形態の発光型治療具10C(以下、単に「治療具10C」ともいう)は、前記治療具10,10A,10Bと比較して、フレキシブル配線基板の形状が異なっている。
【0084】
すなわち、この実施形態におけるフレキシブル配線基板30C(以下、単に「治療具10C」ともいう)は、図10(a)に示すような、長板状の配線基板30Cが、図10(b)に示すように、螺旋状となるように捩られた形状となっている。また、螺旋状に捩られた配線基板30Cの外面には、発光体40が複数個実装されており、その結果、各発光体40の向きが変化するように構成されている。
【0085】
また、螺旋状に捩れられた配線基板30Cの内側に、前記第3実施形態のように、流体の流入により膨張するバルーンを配置して、バルーンに流体を流入することで、フレキシブル配線基板30を押し広げて、複数の発光体40を、バルーンへの流体の流入前よりも、外方に移動させるように構成してもよい。
【0086】
そして、この実施形態においては、配線基板30Cは、螺旋状となるように捩られた形状をなしており、その外面に発光体40が複数個実装されて、各発光体40の向きが変化するように構成されているので、患部3に対して光をより広範囲にかつ均一に照射することができる。
【0087】
図11には、本発明に係る発光型治療具の、第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0088】
この実施形態の発光型治療具10D(以下、単に「治療具10D」ともいう)は、チューブ20Dが、少なくとも第1ルーメンR1及び第2ルーメンR2を有するカテーテルチューブとなっている。前記第1ルーメンR1には、ガイドワイヤGが挿通可能となっている。また、前記第2ルーメンR2の先端側内周には、複数の発光体40を実装した、長板状をなしたフレキシブル配線基板30Dが挿入されており、同フレキシブル配線基板30は、接着剤等を介して、第2ルーメンR2の内周に固定されている。また、一端がフレキシブル配線基板30に接続されたリード線60も、第2ルーメンR2内に挿通されている。更に、第2ルーメンR2の最先端の開口部内周に、閉塞部材28が圧入されて、第2ルーメンR2の先端開口部が閉塞されており、第2ルーメンR2内に、体液や血液が流入しないようになっている。なお、このチューブ20Dには、前記実施形態におけるチューブ20と同様に、発光部25を有すると共に、X線不透過性のマーカーが設けられている。
【0089】
そして、上記治療具10Dを用いて、例えば、胆管癌に光免疫療法を施すには、以下のようにする。すなわち、周知の内視鏡のルーメンに、治療具10のチューブ20Dを挿入し、内視鏡先端部を乳頭近傍まで位置させた後、チューブ20Dの第1ルーメンR1に挿通されたガイドワイヤGを、乳頭を介して胆管内に挿入して所定位置まで移動させる。その後、ガイドワイヤGを介して、X線透視下でマーカーを確認しながら、チューブ20Dを移動させて、チューブ先端部の発光部25を、胆管癌が生成された箇所に位置させた後、光免疫療法を施すこととなる。
【0090】
このように、この実施形態の治療具10Dにおいては、第1ルーメンR1に挿通されるガイドワイヤGを介して、カテーテルチューブであるチューブ20Dをガイドさせつつ、体内の所定位置に移動させることできるので、ガイドワイヤGが必要な、例えば、胆管癌等の比較的内径が小さい箇所にも、光免疫療法を適切に施すことができる。
【0091】
実施形態は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
本発明の一態様に係る発光型治療具は、光免疫療法に必要とされる特定波長の光を照射するためのものであって、先端部に光透過性の発光部を設けたチューブと、前記チューブの前記発光部の内側に配置され、前記特定波長の光を照射する発光体を実装したフレキシブル配線基板と、前記チューブの基端部に接続され、前記発光体に電力を供給するための電源を有する本体部と、前記チューブ内に挿通され、一端が前記フレキシブル配線基板に接続され、他端が前記電源に接続されたリード線とを有していることを特徴とする。上記発明によれば、チューブを先端側から体内に挿入し、光免疫療法の感光物質等が付着された患部に、チューブ先端側に設けた発光部を接触又は近接させて配置し、チューブの基端部及び本体部は体外に配置し、本体部の電源をオンにすることで、リード線を介して、フレキシブル配線基板に実装された発光体を発光させることができるので、その光を、患部に付着された感光物質等に照射して、患部の治療を施すことができる。そして、この発光型治療具においては、発光体を発光させるための電力を、体外に配置される本体部の電源から直接供給することができると共に、本体部は体外に配置して携帯することができるので、光免疫療法を比較的手軽に施すことができ、患者への負担を減らすことができる。
【0092】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 食道
3 患部
5 鼻孔
7 耳
10,10A,10B,10C,10D 発光型治療具(治療具)
20 チューブ
21 先端部
21a 閉塞部
22 基端部
23 チューブ本体
25 発光部
27 凸部
28 閉塞部材
29 光透過性樹脂
30,30B,30C,30D フレキシブル配線基板(配線基板)
31 折曲部
33 側部
34 カソード配線
35 アノード配線
40 発光体
41 ワイヤー
43 樹脂層
45 電極
50 本体部
51 電源
53 スイッチ
53a 本体
53b 操作部
55 可変抵抗
55a 本体
55b 操作部
57 耳かけ
59 クリップ
59a 基端部
59b 先端部
60 リード線
70 ストッパ
71 挿入部
73 係止部
80 バルーンカテーテル
81 カテーテル
83 バルーン
100,101 金型
103 凹部
105 キャビティ
R1 第1ルーメン
R2 第2ルーメン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11