(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、レーザ加工方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/36 20140101AFI20230510BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20230510BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20230510BHJP
【FI】
B23K26/36
B23K26/08 D
B23K26/082
(21)【出願番号】P 2023507390
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2023002995
【審査請求日】2023-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】糸魚川 文広
(72)【発明者】
【氏名】前川 覚
(72)【発明者】
【氏名】近田 修
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-6135(JP,A)
【文献】特開2014-83567(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190977(WO,A1)
【文献】特開2017-30124(JP,A)
【文献】特開2019-126816(JP,A)
【文献】特開2020-104167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射されるレーザを加工対象物の加工面へと導く導光部と、
前記導光部に導かれるレーザの光路を、その光軸が母線となり、かつ、前記加工面と重なる光軸上の位置を頂点とする仮想円錐の円錐面に沿って、その軸線周りに変位させる光路変位部、および、前記加工対象物を、前記仮想円錐の軸線と交差する対象平面に沿って変位させる対象変位部、による変位をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
前記対象平面に沿って底面が拡がる仮想円錐台をその軸線周りに所定の角度範囲だけ切り取った形状における円錐台面を、前記加工面として形成する場合において、
前記制御部は、
前記対象平面上で、前記加工面が前記仮想円錐台の底面周りになす対象円弧の一端が前記仮想円錐の頂点となる対象開始位置から、前記仮想円錐の頂点を中心に前記対象円弧と同じ半径で描かれる仮想円の円周に沿って、前記対象円弧の他端側が前記仮想円錐の頂点と重なる対象終了位置に到達するまで、前記対象変位部に前記加工対象物を所定の対象角速度で変位させる対象制御と、
前記対象平面視で、レーザの光軸が、前記対象開始位置にある前記対象円弧の中心と前記仮想円錐の頂点とをつなぐ線分の延びる方向に沿う光路開始位置から、前記仮想円錐の軸線周りに、前記対象終了位置にある前記対象円弧の中心と前記仮想円錐の頂点とをつなぐ線分の延びる方向に沿う光路終了位置に到達するまで、前記光路変位部にレーザの光路を前記対象角速度と同じ光路角速度で変位させる光路制御と、
を同時に実施することで前記加工対象物にレーザによる前記加工面を形成する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記仮想円錐台における円錐台面と天面との境界稜線と重なる光軸上の位置を前記仮想円錐の頂点として、前記光路変位部にレーザの光路を変位させる、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記導光部は、光源から照射されるレーザが透過する筒状領域内で、該筒状領域の軸線と同軸かつ軸線方向に間隔を空けて配置された一対のウェッジプレートと、前記ウェッジプレートよりもレーザの光路下流側で、前記筒状領域の軸線と同軸に配置され、前記ウェッジプレート透過後のレーザを前記加工面に向けて屈折させるレンズと、前記ウェッジプレートを前記筒状領域の軸線周りに回転させることで、前記ウェッジプレート透過後のレーザを周方向に走査させる回転機構と、を備え、
前記光路変位部は、前記回転機構に前記ウェッジプレートを回転させることにより、前記導光部に導かれるレーザの光路を、前記仮想円錐の円錐面に沿って変位させる、
請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
光源から照射されるレーザを加工対象物の加工面へと導く導光部と、
前記導光部に導かれるレーザの光路を、その光軸が母線となり、かつ、前記加工面と重なる光軸上の位置を頂点とする仮想円錐の円錐面に沿って、その軸線周りに変位させる光路変位部と、
前記加工対象物を、前記仮想円錐の軸線と交差する対象平面に沿って変位させる対象変位部と、
を備えるレーザ加工装置によって、前記加工対象物に前記加工面を形成させるためのレーザ加工方法であって、
前記対象平面に沿って底面が拡がる仮想円錐台をその軸線周りに所定の角度範囲にわたって切り取った形状における円錐台面を、前記加工面として形成する場合において、
前記対象平面上で、前記加工面が前記仮想円錐台の底面周りになす対象円弧の一端が前記仮想円錐の頂点となる対象開始位置から、前記仮想円錐の頂点を中心に前記対象円弧と同じ半径で描かれる仮想円の円周に沿って、前記対象円弧の他端側が前記仮想円錐の頂点と重なる対象終了位置に到達するまで、前記対象変位部に前記加工対象物を所定の対象角速度で変位させる対象制御と、
前記対象平面視で、レーザの光軸が、前記対象開始位置にある前記対象円弧の中心と前記仮想円錐の頂点とをつなぐ線分の延びる方向に沿う光路開始位置から、前記仮想円錐の軸線周りに、前記対象終了位置にある前記対象円弧の中心と前記仮想円錐の頂点とをつなぐ線分の延びる方向に沿う光路終了位置に到達するまで、前記光路変位部にレーザの光路を前記対象角速度と同じ光路角速度で変位させる光路制御と、を同時に実施する、
レーザ加工方法。
【請求項5】
請求項1に記載の制御部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザによる加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザの光軸方向に延びる円筒状の照射領域を、その光軸と交差する方向へ変位させることにより、この照射領域が通過する加工対象物の表面側に加工面を形成する技術が提案されている(特許文献1)。この加工方法は、機械的な加工方法に比べて機械的損傷を減らし滑らかに加工面を形成できるという点で優れた加工方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の加工方法は、例えば、すくい面および逃げ面で形成された角部を有する切削工具のように、それぞれ隣接する2つの端面で形成された角部を有する加工対象物における角部の再生、といった用途でも用いられている。具体的には、すくい面または逃げ面の拡がる方向に沿って光軸が延びるようにレーザを照射させ、このレーザを変位させることによって、角部に新たなすくい面または逃げ面を形成することができる。
【0005】
ただ、このレーザによる加工が必ずしも現実的とはいえない加工対象物も存在する。例えば、ボールエンドミルのように、円錐台を軸線周りに所定の角度範囲だけ切り取った形状における円錐台面および底面のなす角部が形成されたものである。この角部では、一方の面(逃げ面)が円錐台面に沿った複雑な曲面形状をなしている。
【0006】
このように、角部が複雑な曲面形状の面を有していると、レーザの光軸や加工対象物を複雑に変位させなければ適切に加工面を形成できず、そのために多軸化が必要になるなど装置構成や制御が著しく複雑になってしまう。このようなことから、複雑な曲面形状の加工面に対しては、レーザによる加工が必ずしも現実的ではないという課題があった。
【0007】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複雑な曲面形状の加工面であっても、装置構成や制御の複雑化を抑えつつ、レーザによる加工を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため第1局面は、光源から照射されるレーザを加工対象物の加工面へと導く導光部と、前記導光部に導かれるレーザの光路を、その光軸が母線となり、かつ、前記加工面と重なる光軸上の位置を頂点とする仮想円錐の円錐面に沿って、その軸線周りに変位させる光路変位部、および、前記加工対象物を、前記仮想円錐の軸線と交差する対象平面に沿って変位させる対象変位部、による変位をそれぞれ制御する制御部と、を備え、前記対象平面に沿って底面が拡がる仮想円錐台をその軸線周りに所定の角度範囲だけ切り取った形状における円錐台面を、前記加工面として形成する場合において、前記制御部は、前記対象平面上で、前記加工面が前記仮想円錐台の底面周りになす対象円弧の一端が前記仮想円錐の頂点となる対象開始位置から、前記仮想円錐の頂点を中心に前記対象円弧と同じ半径で描かれる仮想円の円周に沿って、前記対象円弧の他端側が前記仮想円錐の頂点と重なる対象終了位置に到達するまで、前記対象変位部に前記加工対象物を所定の対象角速度で変位させる対象制御と、前記対象平面視で、レーザの光軸が、前記対象開始位置にある前記対象円弧の中心と前記仮想円錐の頂点とをつなぐ線分の延びる方向に沿う光路開始位置から、前記仮想円錐の軸線周りに、前記対象終了位置にある前記対象円弧の中心と前記仮想円錐の頂点とをつなぐ線分の延びる方向に沿う光路終了位置に到達するまで、前記光路変位部にレーザの光路を前記対象角速度と同じ光路角速度で変位させる光路制御と、を同時に実施することで前記加工対象物にレーザによる前記加工面を形成する、レーザ加工装置である。
【0009】
また、この局面においては、以下に示す第2局面のようにしてもよい。
第2局面において、前記制御部は、前記仮想円錐台における円錐台面と天面との境界稜線と重なる光軸上の位置を前記仮想円錐の頂点として、前記光路変位部にレーザの光路を変位させる。
【0010】
また、上記各局面においては、以下に示す第3局面のようにしてもよい。
第3局面において、前記導光部は、光源から照射されるレーザが透過する筒状領域内で、該筒状領域の軸線と同軸かつ軸線方向に間隔を空けて配置された一対のウェッジプレートと、前記ウェッジプレートよりもレーザの光路下流側で、前記筒状領域の軸線と同軸に配置され、前記ウェッジプレート透過後のレーザを前記加工面に向けて屈折させるレンズと、前記ウェッジプレートを前記筒状領域の軸線周りに回転させることで、前記ウェッジプレート透過後のレーザを周方向に走査させる回転機構と、を備え、前記光路変位部は、前記回転機構に前記ウェッジプレートを回転させることにより、前記導光部に導かれるレーザの光路を、前記仮想円錐の円錐面に沿って変位させる。
【発明の効果】
【0011】
上記局面のレーザ加工装置では、レーザの光路を仮想円錐の円錐面に沿って変位させつつ、加工対象物を仮想円の円周に沿って変位させる。これによって、レーザは、加工対象物における仮想円錐台の母線に沿った状態で、その円錐台面上を軸線周りに相対変位するため、仮想円錐台の円錐台面に沿った加工面が加工対象物に形成される。こうして、円錐台面のような複雑な曲面形状の端面を加工面として形成することができる。
【0012】
ここで、加工対象物に対するレーザの相対変位は、光路変位部および対象変位部に対する2軸制御によって実現できるため、複雑な曲面形状の加工面であっても、それ以上の多軸化および複雑な制御を要することなく、レーザによる加工を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態におけるレーザ加工装置の装置構成を示すブロック図
【
図2】本開示の一実施形態における加工対象物の先端形状を示す正面図
【
図3】本開示の一実施形態における導光部の構成を示す要部断面図
【
図4】本開示の一実施形態における加工対象物およびレーザの光路が変位する様子を示す正面図(a)および右側面図(b)
【
図5】本開示の一実施形態における加工処理の処理手順を示すフローチャート
【
図6】本開示の一実施形態における加工対象物およびレーザの光路が変位する様子を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
(1)全体構成
【0015】
レーザ加工装置1は、
図1に示すように、レーザを出力する光源10と、加工対象物100を保持する保持部20と、光源10から照射されるレーザを加工対象物100の加工面111へと導く導光部30と、導光部30に導かれるレーザの光路を変位させる光路変位部40と、加工対象物100を変位させる対象変位部50、レーザ加工装置1全体の動作を制御する制御部60と、を備える。
【0016】
本実施形態において、加工対象物100は、
図2に示すように、棒状に延びる部材の先端側(本実施形態では下端側)に複数の角部110が形成されたボールエンドミルである。角部110は、それぞれが仮想円錐台を軸線周りに所定の角度範囲(具体的には90度の範囲)だけ切り取った形状における円錐台面および底面で構成された刃であり、一方の面(逃げ面)が円錐台面に沿った曲面形状をなしている。
【0017】
光源10は、パルスレーザを出力するレーザ発振器、レーザの振動数の次数を調整する振動調整器、レーザの出力を調整するアッテネータ、レーザの径を調整するためのビームエキスパンダーなどを備え、これらを経たレーザが光学レンズ経由で出力されるように構成されている。これらのうち、レーザ発振器にはNd:YAGパルスレーザが用いられている。
【0018】
保持部20は、加工対象物100を、その先端が下方に位置し、角部における他方の面(すくい面)が後述する対象平面に沿う向きで保持する。
【0019】
導光部30は、
図3に示すように、光源10から照射されるレーザが透過する筒状領域を包囲する筒状の本体部31、筒状領域内で本体部31の軸線33と同軸かつ軸線33方向に間隔を空けて配置された一対のウェッジプレート35、37、光路下流側のウェッジプレート37よりもさらに光路下流側に配置されたレンズ39を備える。
【0020】
これらのうち、ウェッジプレート35、37は、光路下流側のウェッジプレート37を軸線33方向に沿った任意の位置に変位可能に構成されており(同図矢印参照)、これにより、一対のウェッジプレート35、37の間隔を任意に変更することができる。本実施形態では、一対のウェッジプレート35、37の間隔が広くなるほど、レーザの透過する位置が軸線33から径方向に遠くなる。
【0021】
また、レンズ39は、本体部31の軸線33と同軸に配置され、ウェッジプレート35、37透過後のレーザを加工対象物100の加工面111に向けて屈折させる光学レンズである。
【0022】
光路変位部40は、制御部60からの指令を受けて本体部31を軸線33周りに回転させるアクチュエータであり、この回転に伴って本体部31内に配置されたウェッジプレート35、37を軸線33周りに回転させる。
【0023】
ここで、ウェッジプレート35、37を回転させることは、ウェッジプレート35、37透過後のレーザをその光軸と交差する平面上で周方向に走査させることを意味する。こうして、ウェッジプレート35、37を透過したレーザは、さらにレンズ39を透過することで、光軸の軸線33に対する径方向の位置に応じた角度で屈折する。
【0024】
これによって、レーザは、
図4に示すように、その光軸を母線としかつ加工面111と重なる光軸上の位置を頂点210とする仮想円錐200の円錐面220に沿って、その軸線230周りに変位する(同図矢印a参照)。
【0025】
対象変位部50は、保持部20を仮想円錐200の軸線230と直交する対象平面(
図4(a)参照)に沿って変位させるアクチュエータであり、この保持部20を介してこれに保持される加工対象物100を変位させる。
【0026】
(2)制御部60による加工処理
続いて、制御部60が内蔵メモリ61に格納されたプログラムにより実行する加工処理を
図5に基づいて説明する。この加工処理は、図示されないインタフェース(操作装置または通信装置) からの起動指令を受けた際に起動される。
【0027】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、加工対象物100の角部110をなす一方の面(逃げ面)、つまり、仮想円錐台の円錐台面に沿った曲面形状を加工面111として形成する場合を例示する。
【0028】
この加工処理が起動されると、まず、加工対象物100が対象開始位置100sに位置決めされる(s110)。対象開始位置100sは、
図6に示すように、仮想円錐200の軸線230と交差する対象平面上で、加工面111が仮想円錐台の底面周りになす対象円弧の一端113が仮想円錐200の頂点210となる位置である。ここでは、レーザの光軸が仮想円錐台における円錐台面と天面との境界稜線と重なる位置が、仮想円錐200の頂点210として設定されており(
図3(b)参照)、この設定に基づいて以降の処理が実行される。
【0029】
次に、加工対象物100を変位させる対象制御と、レーザの光路を変位させる光路制御と、が同時に開始される(s120)。
【0030】
対象制御とは、
図6に示すように、加工対象物100を対象開始位置100sから対象終了位置100eに到達するまで変位させるための制御であり、対象変位部50への指令により実施される。ここで、対象終了位置100eは、対象平面上で対象円弧の他端115が仮想円錐200の頂点210と重なる位置である。
【0031】
そして、対象開始位置100sと対象終了位置100eとの間は、仮想円錐200の頂点210を中心に対象円弧と同じ半径で描かれる仮想円120の円周に沿って所定の対象角速度で変位するように、対象変位部50が制御される(同図矢印b参照)。
【0032】
他方、光路制御は、レーザの光路を光路開始位置300sから光路終了位置300eに到達するまで変位させるための制御であり、光路変位部40への指令により実施される。ここで、光路開始位置300sは、
図6に示すように、レーザの光軸が、対象開始位置100sにある対象円弧の中心117と仮想円錐200の頂点210とをつなぐ線分の延びる方向に沿う位置である。また、光路終了位置300eは、対象終了位置100eにある対象円弧の中心117と仮想円錐200の頂点210とをつなぐ線分の延びる方向に沿う位置である。
【0033】
そして、光路開始位置300sと光路終了位置300eとの間は、仮想円錐200の軸線230周りに対象角速度と同じ光路角速度で変位するように、光路変位部40が制御される。
【0034】
こうして、対象制御および光路制御が開始された以降、これら制御が終了するまで待機状態となり(s130:NO)、終了したら(s130:YES)、本加工処理が終了する。こうして対象制御と光路制御とを同時に実行することによって加工対象物100へのレーザによる加工面111の形成が実現される。
【0035】
(3)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0036】
例えば、上記実施形態では、導光部30が、一対のウェッジプレート35、37およびレンズ39により構成されたものを例示した。しかし、この導光部30としては、レーザの光路を仮想円錐200の円錐面220に沿ってその軸線230周りに変位させることができるものであれば上記構成に限られない。
【0037】
また、上記実施形態では、各構成要素を備えたものをレーザ加工装置1としているが、例えば、保持部20と、光路変位部40および対象変位部50に相当するアクチュエータとを備える汎用的な工作機械に対し、光源10、導光部30および制御部60(または当該工作機械の備える制御部に加工処理を実行させるためのプログラム)を搭載することによって、レーザ加工装置1を実現してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、レーザの光軸が仮想円錐台における円錐台面と天面との境界稜線と重なる位置が、仮想円錐200の頂点210として設定される構成を例示した。しかし、仮想円錐200の頂点210としては、加工面111において光路上流側の端部から下流側の端部に至る範囲における別の位置(例えば、光路上流側の端部)が設定される構成としてもよい。
【0039】
(4)作用効果
上記実施形態に係るレーザ加工装置1では、レーザの光路を仮想円錐200の円錐面220に沿って変位させつつ、加工対象物100を仮想円120の円周に沿って変位させる。これによって、レーザは、加工対象物100における仮想円錐台の母線に沿った状態で、その円錐台面上を軸線周りに相対変位するため、仮想円錐台の円錐台面に沿った加工面111が加工対象物100に形成される。こうして、円錐台面のような複雑な曲面形状の端面を加工面111として形成することができる。
【0040】
ここで、加工対象物100に対するレーザの相対変位は、光路変位部40および対象変位部50の2軸制御によって実現することができるため、複雑な曲面形状の加工面111であっても、それ以上の多軸化および制御を要することなく、レーザによる加工を実現することができる。
【0041】
また、上記実施形態のレーザ加工装置1では、ウェッジプレート35、37透過後のレーザがレンズ39により加工面111に向けて屈折するため、光源10からのレーザをウェッジプレート35、37の回転により周方向に走査させることで、レーザの光路を仮想円錐200の円錐面220に沿ってその軸線230周りに変位させることができる。
【0042】
また、上記実施形態において、汎用的な工作機械に光源10、導光部30および制御部60を搭載することでレーザ加工装置1を実現した場合には、汎用的な工作機械に一部構成要素を搭載するだけで、上記実施形態のレーザ加工装置1を低コストで実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示のレーザ加工装置は、複雑な曲面形状の加工面であっても、装置構成や制御の複雑化を抑えつつ、レーザによる加工を実現できる。
【符号の説明】
【0044】
1…レーザ加工装置、10…光源、20…保持部、30…導光部、31…本体部、33…軸線、35…ウェッジプレート、37…ウェッジプレート、39…レンズ、40…光路変位部、50…対象変位部、60…制御部、61…内蔵メモリ、100…加工対象物、100e…対象終了位置、100s…対象開始位置、110…角部、111…加工面、113…一端、115…他端、117…中心、120…仮想円、200…仮想円錐、210…頂点、220…円錐面、230…軸線、300e…光路終了位置、300s…光路開始位置。
【要約】
光源から照射されるレーザを加工対象物の加工面へと導く導光部と、前記導光部に導かれるレーザの光路を、その光軸が母線となり、かつ、前記加工面と重なる光軸上の位置を頂点とする仮想円錐の円錐面に沿って、その軸線周りに変位させる光路変位部、および、前記加工対象物を、前記仮想円錐の軸線と交差する対象平面に沿って変位させる対象変位部、による変位をそれぞれ制御する制御部と、を備え、前記制御部は、対象開始位置から、前記仮想円錐の頂点を中心に前記対象円弧と同じ半径で描かれる仮想円の円周に沿って、対象終了位置に到達するまで、前記対象変位部に前記加工対象物を所定の対象角速度で変位させる対象制御と、光路開始位置から、前記仮想円錐の軸線周りに、光路終了位置に到達するまで、前記光路変位部にレーザの光路を前記対象角速度と同じ光路角速度で変位させる光路制御と、を同時に実施することで前記加工対象物に前記加工面を形成する、レーザ加工装置。