(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】溶媒を添加して食品を調製するための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230510BHJP
A23L 23/10 20160101ALI20230510BHJP
【FI】
A23L5/00 D
A23L23/10
(21)【出願番号】P 2019110606
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】森 利弥
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真理
(72)【発明者】
【氏名】東 英範
(72)【発明者】
【氏名】上野 加奈江
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-000051(JP,A)
【文献】特開平9-154505(JP,A)
【文献】特開2014-057530(JP,A)
【文献】特開2010-104281(JP,A)
【文献】特開2015-171352(JP,A)
【文献】特開昭59-059155(JP,A)
【文献】特開昭49-066862(JP,A)
【文献】特開2020-065478(JP,A)
【文献】特開2000-125783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23
A21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顆粒状組成物及び粉末状組成物を含む、溶媒を添加して食品を調製するための組成物であって、前記顆粒状組成物が、穀粉と、油脂と、α化澱粉と、第1の澱粉分解物とを含み、前記粉末状組成物が、第2の澱粉分解物を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記第2の澱粉分解物の含有量は、添加する溶媒の質量に対して0.03質量%~30.0質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の澱粉分解物が、デキストロース当量(DE)2以上のデキストリンを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記α化澱粉の含有量は、添加する溶媒の質量に対して0.25質量%~約6.0質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記粉末状組成物が、風味原料をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
即席食品である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の溶媒を添加して食品を調製するための組成物と溶媒とを含む食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒を添加して食品を調製するための組成物に関しており、特に即席食品に適している組成物に関している。
【背景技術】
【0002】
近年の個食化の傾向から、カップに入れて熱湯を注ぐだけで簡単にコーンスープなどを作ることができる粉粒物からなる即席食品が製造販売されている。特許文献1及び2には、このような即席食品に使用することができる顆粒状組成物が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、増粘多糖類及びデキストリンを含有する粉末原料に、デキストリン水溶液を噴霧して、飲食品の風味を損なうことなく、粘度の立ち上がりと持続性が良好で、かつ分散性が良好で、ダマの発生が抑制された増粘剤造粒物を製造することが記載されている。しかしながら、即席食品などの溶媒を添加して食品を調製するための組成物が、顆粒状組成物及び粉末状組成物を含み、かつ当該粉末状組成物が、デキストリンなどの澱粉分解物を含むことは、いずれの文献にも記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-51号公報
【文献】特許第4511423号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の即席食品では、熱湯などの溶媒の添加により粘性を発揮することができても、喫食後の口中にねちゃつく又はべたつく感じが残ることがあり、十分な後味を有する食品をもたらすものではなかった。そこで、本発明は、溶媒の添加により粘性を生じつつも、すっきりとした後味をもたらすことができる組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粘性を発揮する顆粒状組成物と組み合わせて、デキストリンなどの澱粉分解物を含む粉末状組成物を配合することにより、溶媒を添加して調製した食品の後味がすっきりしたものとなることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下に示すような、溶媒を添加して食品を調製するための組成物を提供するものである。
〔1〕顆粒状組成物及び粉末状組成物を含む、溶媒を添加して食品を調製するための組成物であって、前記顆粒状組成物が、穀粉と、油脂と、α化澱粉と、第1の澱粉分解物とを含み、前記粉末状組成物が、第2の澱粉分解物を含むことを特徴とする、組成物。
〔2〕前記第2の澱粉分解物の含有量は、添加する溶媒の質量に対して0.03質量%~30.0質量%である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記第2の澱粉分解物が、デキストロース当量(DE)2以上のデキストリンを含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記α化澱粉の含有量は、添加する溶媒の質量に対して0.25質量%~約6.0質量%である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔5〕前記粉末状組成物が、風味原料をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔6〕即席食品である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の溶媒を添加して食品を調製するための組成物と溶媒とを含む食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従えば、溶媒を添加して食品を調製するための組成物に、穀粉と、油脂と、α化澱粉と、第1の澱粉分解物とを含む顆粒状組成物と組み合わせて、第2の澱粉分解物を含む粉末状組成物を配合することにより、そこへ溶媒を添加して調製した粘性を有する食品において、後味のすっきり感を向上することができる。したがって、良好な後味を有する食品を調製することのできる即席食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の溶媒を添加して食品を調製するための組成物は、顆粒状組成物及び粉末状組成物を含む。前記顆粒状組成物は、穀粉と、油脂と、α化澱粉と、第1の澱粉分解物とを含み、前記粉末状組成物は、第2の澱粉分解物を含む。前記顆粒状組成物は、熱湯などの溶媒と混合するだけで、他に加熱を要することなく、結果として生じる液体に粘性を付与することができるものであり、前記食品は、粘性を有するものとなり得る。すなわち、ある態様では、本発明の組成物は、即席食品であってもよく、前記液体は、例えば、コーンスープ、パンプキンスープ、及び汁粉などのスープであってもいいし、クリームシチュー及びビーフシチューなどのシチューであってもいいし、カレーソース、ホワイトソース、デミグラスソース、及びパスタソースなどのソースであってもよい。
【0009】
また、本明細書に記載の「溶媒」は、特に限定されないが、例えば、水、牛乳、調整乳、及び豆乳などを使用してもよい。また、前記溶媒は、好ましくは約80~約100℃、さらに好ましくは約85~約100℃であってもよい。
【0010】
本明細書に記載の「穀粉」としては、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、小麦粉、コーンフラワー、米粉、ライ麦粉、蕎麦粉、あわ粉、きび粉、はと麦粉、及びひえ粉などからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。穀粉を前記顆粒状組成物に含めることによって、穀粉らしい風味のある食品を得ることができる。前記穀粉は、前記油脂と共に焙煎して得られる、いわゆる小麦粉ルウなどの穀粉ルウとして、前記顆粒状組成物中に配合してもよく、後述する未α化澱粉とは区別して使用される。
【0011】
前記穀粉の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記顆粒状組成物の質量に対して、約7.0質量%以上、又は約15.0質量%以上であってもよく、約60.0質量%以下、又は約50.0質量%以下であってもよい。また、前記穀粉の含有量は、例えば、添加する溶媒の質量に対して、約0.5質量%以上、又は約1.0質量%以上であってもよく、約10.0質量%以下、又は約5.0質量%以下であってもよい。
【0012】
本明細書に記載の「油脂」としては、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、植物油脂、動物油脂、植物油脂及び/又は動物油脂の極度硬化油などを使用してもよい。油脂を前記顆粒状組成物に含めることによって、α化澱粉同士の結着を防いで、当該顆粒状組成物の溶媒への分散性をよくすることができる。
【0013】
上記植物油脂としては、特に制限はなく、あまに油、桐油、サフラワー油、かや油、くるみ油、けし油、ひまわり油、綿実油、なたね油、大豆油、からし油、カポック油、米ぬか油、ごま油、とうもろこし油、落下生油、オリーブ油、つばき油、茶油、及びひまし油などを使用することができる。また、上記動物油脂としては、特に制限はなく、牛脂、豚脂、魚油、及び羊油などを使用することができる。
【0014】
前記油脂の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記顆粒状組成物の質量に対して、約5.0質量%以上、又は約7.0質量%以上であってもよく、約40.0質量%以下、又は約30.0質量%以下であってもよい。また、前油脂の含有量は、例えば、添加する溶媒の質量に対して、約0.25質量%以上、又は約0.5質量%以上であってもよく、約6.0質量%以下、又は約3.0質量%以下であってもよい。
【0015】
本明細書に記載の「α化澱粉」としては、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができ、α化処理に加えて、さらにエステル化、エーテル化、酸化、架橋化などの化学的処理などを施して得られる加工澱粉を使用してもよい。例えば、α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、α化リン酸架橋澱粉、α化アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、α化アセチル化酸化澱粉、及びα化ヒドロキシプロピル澱粉などを使用してもよい。特にα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、α化リン酸架橋澱粉が望ましい。これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。α化澱粉を前記顆粒状組成物に含めることによって、適度な粘度が付与された食品を得ることができる。
【0016】
前記α化澱粉の含有量は、所望の粘性を生じることができる限り特に限定されないが、例えば前記顆粒状組成物の質量に対して、約5.0質量%以上、又は約7.0質量%以上であってもよく、約30.0質量%以下、又は約20.0質量%以下であってもよい。また、前記α化澱粉の含有量は、例えば、添加する溶媒の質量に対して、約0.25質量%以上、又は約0.5質量%以上であってもよく、約6.0質量%以下、又は約3.0質量%以下であってもよい。前記α化澱粉の含有量がこれらの範囲内であると、本発明の組成物に前記溶媒を添加したときに、結果として生じる液体の粘度がより好ましいものとなり得る。
【0017】
本明細書に記載の「澱粉分解物」としては、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、デキストリン、マルトデキストリン、還元デキストリン、還元マルトデキストリンなどを使用してもよい。前記澱粉分解物は、低分子化の度合いによってグレード分けされており、デキストロース当量(DE)によって区別されている。DE値は、デキストロース(ブドウ糖)の還元力を100とした場合の相対的な還元力を示しており、0に近いほど澱粉に似た特性を有し、100に近づくほどブドウ糖に似た特性を有しているといえる。
【0018】
第1の澱粉分解物を前記顆粒状組成物に含めることによって、当該顆粒状組成物の溶媒への分散性をよくすることができる。前記顆粒状組成物中に含まれる第1の澱粉分解物としては、所望の粘性を生じることができる限り特に限定されないが、例えば、DE値が約20以下、好ましくは約4~16、さらに好ましくは約6~12の澱粉分解物を使用してもよい。
【0019】
前記第1の澱粉分解物の含有量は、所望の粘性を生じることができる限り特に限定されないが、例えば、前記顆粒状組成物の質量に対して、約3.0質量%以上、又は約5.0質量%以上であってもよく、約30.0質量%以下、又は約20.0質量%以下であってもよい。また、前記第1の澱粉分解物の含有量は、例えば、添加する溶媒の質量に対して、約0.25質量%以上、又は約0.5質量%以上であってもよく、約5.0質量%以下、又は約2.5質量%以下であってもよい。前記第1の澱粉分解物の含有量がこれらの範囲内であると、本発明の組成物に溶媒を添加したときに、ダマの形成を抑制することで、結果として生じる液体の粘度が好ましい範囲となり得る。
【0020】
また、第2の澱粉分解物を前記粉末状組成物に含めることによって、そこへ溶媒を添加して調製した食品の後味のすっきり感を向上することができる。このことにより、良好な後味を有する食品を調製することのできる即席食品などの組成物を提供することが可能となる。前記粉末状組成物中に含まれる第2の澱粉分解物は、前記第1の澱粉分解物と同じであってもいいし、異なってもよい。前記第2の澱粉分解物としては、所望の後味をもたらすことができる限り特に限定されないが、例えば、DE値が約2以上、好ましくは約4以上の澱粉分解物を使用してもいいし、DE値が約40以下、DE値が約25以下、好ましくは約20以下の澱粉分解物を使用してもよい。なお、澱粉分解物はDE値が大きいほど甘味が強く、DE値が小さいほど甘味が弱いことを考慮して、調製される食品全体の風味を適宜調整してもよい。
【0021】
前記第2の澱粉分解物の含有量は、特に限定されないが、例えば、添加する溶媒の質量に対して、約0.03質量%以上、又は約0.06質量%以上であってもよく、約30.0質量%以下、約15.0質量%以下、約10.0質量%以下、又は約6.0質量%以下であってもよい。
【0022】
前記顆粒状組成物は、未α化澱粉をさらに含んでもよい。ここで、未α化澱粉とは、α化処理を施されていない澱粉のことをいう。未α化澱粉を組成物に含めることによって、ダマの形成を抑制しつつも粘度を発現させることができる。前記未α化澱粉としては、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉及びトウモロコシ澱粉などを使用してもよく、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉が好ましい。
【0023】
前記未α化澱粉の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記顆粒状組成物の質量に対して、約10.0質量%以上、又は約15.0質量%以上であってもよく、約60.0質量%以下、又は約50.0質量%以下であってもよい。また、前記未α化澱粉の含有量は、例えば、添加する溶媒の質量に対して、約0.5質量%以上、又は約1.0質量%以上であってもよく、約12.0質量%以下、又は約6.0質量%以下であってもよい。前記未α化澱粉の含有量がこれらの範囲内であると、本発明の組成物に前記溶媒を添加したときに、結果として生じる液体の粘度がより好ましい範囲となり得る。
【0024】
また、前記顆粒状組成物は、乳化剤をさらに含んでもよい。前記乳化剤としては、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、HLBが5以下の乳化剤が好ましく、モノグリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖エステルなどの親油性乳化剤、又は、ポリグリセリン酸脂肪エステル、及びソルビンタン脂肪酸エステルなどの乳化剤を使用してもよい。蒸留モノグリセリン脂肪酸エステルを好適に使用できる。
【0025】
前記乳化剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、前記顆粒状組成物の質量に対して、約0.5質量%以上、又は約1.0質量%以上であってもよく、約10.0質量%以下、又は約6.0質量%以下であってもよい。また、前記乳化剤の含有量は、例えば、添加する溶媒の質量に対して、約0.05質量%以上、又は約0.1質量%以上であってもよく、約1.0質量%以下、又は約0.5質量%以下であってもよい。前記顆粒状組成物中に乳化剤を配合すると、前記溶媒を注いだ後のダマの形成を抑制することで、粘性の発現を安定化することができる。
【0026】
前記顆粒状組成物及び/又は前記粉末状組成物は、風味原料(調味料)をさらに含んでもよい。前記風味原料としては、本発明の組成物を使用して調製するスープ、シチュー、又はソースなどの食品の種類又は風味などに応じて、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、バター、粉乳、生クリーム、クリーミングパウダー、油脂、酵母エキス、醤油、野菜ブイヨン、肉エキス、砂糖、食塩、香辛料、カレー粉、乳製品、及び、アミノ酸などを使用してもよい。
【0027】
前記顆粒状組成物及び/又は前記粉末状組成物は、本発明の目的を損なわない限り、当技術分野で通常使用される任意の食品原料又は任意の添加剤をさらに含んでもよい。前記任意成分は、例えば、賦形剤(グルコースなど)、香料、酸味料、酸化防止剤(ビタミンC、及びビタミンEなど)、増粘剤、調味料、甘味料、及び、着色料などであってもよい。
【0028】
前記顆粒状組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、まず、穀粉と油脂とを共に焙煎して、穀粉ルウを得、これに、その他の原料加えてミキサーなどを用いて加熱混合し、加熱溶融状の原料を押出し造粒機にかけて押出し造粒し、押出し造粒機から排出された造粒物を冷却することにより、顆粒状組成物を製造することもできる。
【0029】
本発明の溶媒を添加して食品を調製するための組成物は、具となり得る固形食品をさらに含んでもよい。前記固形食品は、熱湯を注いでも溶解せずに、生じた液体中で目視できる大きさを有するものであり、熱湯に溶解するようなものではない。前記固形食品としては、当技術分野で通常使用されているものを特に制限なく使用することができるが、例えば、ブロッコリー、人参、かぼちゃ、青梗菜、ほうれん草、エリンギ、ヒラタケ、マッシュルーム、茄子、ズッキーニ、そら豆、及びアスパラなどを使用してもよい。
【0030】
前記固形食品は、生のものでも乾燥させたものでもよいが、後者の方が水分が少ないため、熱湯を注いだ後に冷めにくく、生じた液体の粘性を発現させやすいという点で好ましい。前記固形食品を乾燥させる方法としては、当技術分野で通常使用されている方法を特に制限なく使用することができるが、例えば、フリーズドライ、熱風乾燥、天日乾燥、及び油揚げなどの方法を使用してもよい。前記乾燥した固形食品の水分含量は、約10質量%以下であり得る。
【0031】
前記顆粒状組成物及び前記粉末状組成物は、当技術分野で通常使用されている任意の方法によって製造することができる。本発明の組成物において、前記顆粒状組成物は、前記粉末状組成物よりも相対的に大きい粒度を有しているが、前記顆粒状組成物は、例えば、日本工業規格(JIS)のふるい網の目開きで、上限として2360μmPASS、好ましくは1000μmPASSの粒度を有していてもよく、下限として300μmON、好ましくは500μmONの粒度を有していてもよい。また、前記粉末状組成物は、例えば日本工業規格(JIS)のふるい網の目開きで、上限として1000μmPASSの粒度を有していてもよい。前記顆粒状組成物又は前記粉末状組成物の粒度が、これらの粒度範囲内にあることは、JISのふるい網を使用したふるい分け試験によって確認することができる。
【0032】
本発明の組成物を即席食品などとして市場に供する場合には、例えば、前記顆粒状組成物及び前記粉粒状組成物を混合した状態でアルミ製袋やプラスチック製袋などの包装袋に入れ、これを熱湯などの溶媒の注ぎ込み可能な容積を有する喫食用の容器(カップ容器など)に収容した形態としてもいいし、又は、前記顆粒状組成物及び前記粉粒状組成物を個別の包装袋に入れて、これらを喫食用の容器に収容し、前記溶媒を注ぐ直前に前記顆粒状組成物及び前記粉粒状組成物を混合する形態としてもよい。また、本発明の組成物に前記固形食品を含ませる場合には、当該固形食品を前記顆粒状組成物又は前記粉粒状組成物と一緒又は別個の包装袋に入れて、これを前記喫食用の容器に収容してもよい。あるいは、前記喫食用の容器に代えて、前記顆粒状組成物及び前記粉粒状組成物(並びに前記固形食品)を含む包装袋を、紙パッケージ又はプラスチックパッケージなどに収容し、これを製品として提供する形態として、消費者が、マグカップやスープ皿などの食器を用いて前記溶媒を注ぐようにしてもよい。
【0033】
本発明の組成物に熱湯などの溶媒を注ぐときには、例えば、前記組成物に前記溶媒を注いで10~90秒間撹拌すればよく、場合により、撹拌した後に1~5分間放置すればよい。本発明の組成物は、前記溶媒への溶解速度が速く、速やかに粘度を発現し、かつ所望の粘度に到達後にその粘度が安定に維持されるため、即食性が高く、例えば、約30秒間撹拌し、その後約1分30秒間放置しただけでも、喫食可能な状態となり得る。
【0034】
別の態様では、本発明は、溶媒を添加して食品を調製するための前記組成物と前記溶媒とを含む食品にも関している。前記食品は、粘性を有するものであり得て、例えば、コーンスープ、パンプキンスープ、及び汁粉などのスープであってもいいし、クリームシチュー及びビーフシチューなどのシチューであってもいいし、カレーソース、ホワイトソース、デミグラスソース、及びパスタソースなどのソースであってもよい。
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
〔試験例1〕
小麦粉及びパーム硬化油を以下の表1に記載の質量比で使用して常法により小麦粉ルウを調製した。この小麦粉ルウに表1に記載の他の原料を適宜混合して、常法により顆粒状組成物を調製した。また、表1に粉末状組成物用として記載されている原料と前記顆粒状組成物とをカップ内で適宜混合して、実施例及び比較例の即席食品を調製した。
【0037】
【表1】
*1α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉
【0038】
実施例1~6及び比較例1の即席食品に、100質量部の熱湯(95℃)を添加してスプーンで30秒間撹拌し、その後1分30秒間静置して、シチューを調製した。調製したシチューの風味(後味のすっきり感、後味のべたつき感、及び後味のざらつき感)を、5人のパネルが以下の基準で評価し、その評点の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0039】
(後味のすっきり感)
3:極めてすっきりしている
2:「3」ほどではないがかなりすっきりしている
1:従来品よりもすっきりしている
0:従来品(比較例1)
-1:従来品よりもすっきりしていない
-2:「-3」ほどではないがあまりすっきりしていない
-3:まったくすっきりしていない
【0040】
(後味のべたつき感)
3:まったくべたつきを感じない
2:「3」ほどではないがべたつきを感じない
1:従来品よりもべたつきが少ない
0:従来品(比較例1)
-1:従来品よりもべたつきが多い
-2:「-3」ほどではないがかなりのべたつきを感じる
-3:口の中にまとわりつくようなべたつきを感じる
【0041】
(後味のざらつき感)
3:まったくざらつきを感じない
2:「3」ほどではないがざらつきを感じない
1:従来品よりもざらつきが少ない
0:従来品(比較例1)
-1:従来品よりもざらつきが多い
-2:「-3」ほどではないがざらつきを強く感じる
-3:砂をかんだようなざらつきを感じる
【0042】
【0043】
顆粒状組成物及び粉末状組成物を含む即席食品において、粉末状組成物にマルトデキストリンが含まれていると、それから調製されるシチューのすっきり感が向上し、べたつき感やざらつき感も感じられなくなった(実施例1~6)。特に、後味に甘味が残らない程度の量のマルトデキストリンを含む実施例1~4の即席食品から調製されたシチューは、後味に残る甘味が適度であり、全体として非常に良好な風味を有していた。また、従来の即席食品は、熱湯を添加してから3分後に喫食可能な状態となるものが多かったが、本発明の即席食品は、粘度発現と当該粘度の安定性が優れているため、熱湯を添加してからわずか2分後に喫食可能な状態となっていた。
【0044】
〔試験例2〕
以下の表3に記載の原料を使用したことを除いて、試験例1と同様にして即席食品を調製した。そして、試験例1と同様にしてシチューを調製し、その風味を評価した。結果を表4に示す。
【0045】
【表3】
*1α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉
【0046】
【0047】
顆粒状組成物中にα化澱粉を含まない比較例2の即席食品に熱湯を注いでも粘性は生じず、調製された食品は、たとえすっきり感を有していても「シチュー」と呼べるものではなかった。また、粉末状組成物中にマルトデキストリンを配合する代わりに、顆粒状組成物中の小麦粉、α化澱粉、及び馬鈴薯澱粉(未α化澱粉)を増量した比較例3の即席食品から調製したシチューは、後味のべたつき感がひどく、シチューらしい美味しさもなかった。マルトデキストリンを粉末状組成物ではなく顆粒状組成物中に配合した比較例4~6の即席食品から調製したシチューは、その組成は実施例の即席食品から調製したものとほぼ同じ(特に比較例5及び6の組成は、実施例3及び4の組成とそれぞれ同じ)であるにもかかわらず、後味のすっきり感、後味のべたつき感、及び後味のざらつき感の改善作用がまったく発揮されていなかった。
【0048】
以上より、溶媒を添加して食品を調製するための組成物に、穀粉と、油脂と、α化澱粉と、第1の澱粉分解物とを含む顆粒状組成物と組み合わせて、第2の澱粉分解物を含む粉末状組成物を配合することにより、そこへ溶媒を添加して調製した粘性を有する食品において、後味のすっきり感を向上できることが分かった。したがって、良好な後味を有する食品を調製することのできる即席食品を提供することが可能となる。