(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-09
(45)【発行日】2023-05-17
(54)【発明の名称】充填剤、基板の処理方法、及び充填剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
(21)【出願番号】P 2019152916
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】内田 江美
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 明
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 智弥
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-042093(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119350(WO,A1)
【文献】特開2015-106645(JP,A)
【文献】特開2016-034006(JP,A)
【文献】特開2017-045850(JP,A)
【文献】特開2018-022861(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119244(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有する溶質(C)と、溶媒(S)とを含有し、前記溶質(C)が、表面に凹凸のパターンが形成された基板の凹部内で結晶化することで、前記凹部を充填する充填剤であって、
前記充填剤の光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.05μmより大きい粒子の数が、前記充填剤1mL当たり10個以上300個以下である、充填剤。
【請求項2】
前記溶媒(S)成分の含有量が、前記充填剤の全量に対して、50質量%以上である、請求項1に記載の充填剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する、基板の処理方法であって、
少なくとも前記パターンの凹部内で前記溶質(C)を結晶化させることによって、結晶化された充填剤を充填する、結晶充填工程と、
前記結晶化された充填剤を除去する除去工程とを有する、基板の処理方法。
【請求項4】
前記除去工程は、前記溶質(C)を昇華させることにより除去する、請求項3に記載の基板の処理方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の充填剤の製造方法であって、
前記溶質(C)と、前記溶媒(S)とを含有する粗充填剤をフィルターにより濾過する、濾過工程を有する、充填剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤、基板の処理方法、及び充填剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。パターンの微細化に伴い、パターンのアスペクト比は高くなる傾向にある。
【0003】
一方、半導体製造プロセスでは、パーティクル等の混入により製造歩留まりの低下が引き起こされる。そのため、基板に付着したパーティクル等を除去するために、リンス液による基板の洗浄が行われている。パターンが形成された基板をリンス液で洗浄した後、基板の乾燥によりリンス液は除去されるが、この際に、基板表面のパターンにおいて、パターン内に残留したリンス液の毛細管力によりパターン倒壊が発生することがある。
【0004】
このパターン倒壊の問題を解決するために、例えば、特許文献1及び特許文献2では、凹凸パターンが形成された基板をリンス液で洗浄した後、前記パターンの凹部内に残留したリンス液をショウノウ、ナフタレン等の昇華性物質を含む充填用処理液により置換し、前記パターンの凹部内に充填し、該処理液から昇華性物質を析出させ、該析出した固体の昇華性物質を昇華により除去する方法が提案されている。これにより、毛細管力が作用することによるパターン倒壊を低減することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-243869号公報
【文献】特開2013-42093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に開示されているような方法では、基板露出が多発して、成膜性に問題がある場合があった。そのため、基板表面のパターン倒壊抑制効果が十分ではなかった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、凹凸パターンが形成された基板表面を処理する際に、成膜性が良好な充填剤、当該充填剤を用いた基板の処理方法、及び当該充填剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、結晶性を有する溶質(C)と、溶媒(S)とを含有し、前記溶質(C)が、表面に凹凸のパターンが形成された基板の凹部内で結晶化することで、前記凹部を充填する充填剤であって、前記充填剤の光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.05μmより大きい粒子の数が、前記充填剤1mL当たり10個以上300個以下である、充填剤である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する、基板の処理方法であって、前記パターンの凹部内で前記溶質(C)を結晶化させることによって、結晶化された充填剤を充填する、結晶充填工程と、前記結晶化された充填剤を除去する除去工程とを有する、基板の処理方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様に係る充填剤の製造方法であって、前記溶質(C)と、前記溶媒(S)とを含有する粗充填剤をフィルターにより濾過する、濾過工程を有する、充填剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、凹凸パターンが形成された基板表面を処理する際に、成膜性に優れる充填剤、当該充填剤を用いた基板の処理方法、及び当該充填剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の基板の処理方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(充填剤)
本実施形態の充填剤は、前記溶質(C)が、表面に凹凸のパターンが形成された基板の凹部内で結晶化することで、前記凹部を充填するものである。典型的には、表面に凹凸のパターンが形成された基板をリンス液で洗浄した後、該パターンの凹部内に残留したリンス液を置換し、凹部を充填するために用いられる充填剤である。
本実施形態の充填剤は、結晶性を有する溶質(C)(以下、(C)成分ともいう)と、溶媒(S)(以下、(S)成分ともいう)とを含有する。
【0014】
<結晶性を有する溶質(C)>
本実施形態における(C)成分は、結晶性を有する溶質であり、例えば、共有結合結晶、イオン結晶、分子結晶等が挙げられる。本実施形態における(C)成分が結晶性を有することの確認は、例えばX線回折装置を用いて確認する方法や、簡便には偏光顕微鏡を用いて偏光の有無を観察することにより確認することができる。
本実施形態における(C)成分は上記の中でも、分子結晶であることが好ましく、昇華性を有する分子結晶(以下、昇華性物質ともいう)であることがより好ましい。
【0015】
≪昇華性物質≫
本実施形態における昇華性物質は、常圧、室温(25℃)条件下で固相から液相を経ずに気相に変化する物質である。具体的には、ナフタレン、パラジクロロベンゼン、テトラクロロジフルオロエタン、ショウノウ、イミダゾール及びその誘導体、ベンゾイミダゾール及びその誘導体、トリアゾール及びその誘導体、ベンゾトリアゾール及びその誘導体等が挙げられる。
【0016】
上記の中でも、(C)成分は、ベンゾトリアゾール及びその誘導体が好ましく、具体的には下記一般式(C-1)で表される化合物(異性体も包含する)であることがより好ましい。
【0017】
【化1】
[式中、Ra~Rdは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~5のアルキル基である。]
【0018】
式(C-1)中、Ra~Rdは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数1~5のアルキル基である。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0019】
該炭素原子数1~5のアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
該直鎖状のアルキル基は、炭素原子数1~5であり、好ましくは炭素原子数1~3である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
【0020】
該分岐鎖状のアルキル基として、具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
【0021】
(C)成分の含有量は、充填剤全量(100質量%)に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、8質量%以上が特に好ましい。
一方、(C)成分の含有量は、充填剤全量(100質量%)に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。
本実施形態における(C)成分の含有量は、充填剤全量(100質量%)に対して、例えば、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上30質量%以下がより好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましく、8質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
【0022】
(C)成分の含有量が上記好ましい下限値以上であれば、よりパターン倒壊抑制効果に優れる。
(C)成分の含有量が上記好ましい上限値以下であれば、結晶化された充填剤の除去性により優れる。また、上記好ましい上限値以下であっても、十分に成膜性に優れる。
【0023】
<(S)成分:溶媒>
本実施形態の充填剤は、(S)成分の中でも、(C)成分との相溶性の観点から、(S1)成分:極性有機溶媒を含有することが好ましい。
【0024】
(S1)成分:極性有機溶媒としては、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、モノアルコール系溶媒等のプロトン性極性溶媒;エステル系溶媒、アミド系溶媒、スルホキシド系溶媒、スルホン系溶媒、ニトリル系溶媒等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
【0025】
グリコール系溶媒として、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶媒として、具体的には、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ブチルジグリコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジイソプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
モノアルコール系溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール等が挙げられる。
【0026】
エステル系溶媒として、具体的には、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、シュウ酸ジエチル、酒石酸ジエチル、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
アミド系溶媒として、具体的には、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ブチルプロルドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒として、具体的には、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
スルホン系溶媒として、具体的には、スルホラン等が挙げられる。
ニトリル系溶媒として、具体的には、アセトニトリル等が挙げられる。
【0027】
(S1)成分は、上記の中でも、プロトン性極性溶媒が好ましく、モノアルコール系溶媒がより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノールが好ましく、イソプロパノールがより好ましい。
【0028】
本実施形態における(S1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本実施形態における(S)成分は上述した(S1)成分以外の溶媒を含有してもよい。(S1)成分以外の溶媒としては、水、無極性有機溶媒(炭化水素系溶媒等)などが挙げられる。
該水としては、純水、イオン交換水等を用いることができる。
該炭化水素系溶媒として、具体的には、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
【0030】
(S)成分の含有量の下限値は、成膜性向上の観点から、充填剤全量(100質量%)に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましい。
一方、(S)成分の含有量の上限値は、特に限定されず、例えば98質量%以下である。
【0031】
本実施形態における(S)成分全体のうち、上記(S1)成分の割合は、例えば、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。なお、100質量%であってもよい。
【0032】
(C)成分と(S1)成分との混合比(質量比)(C)成分:(S1)成分は、1:99~50:50が好ましく、5:95~30:70がより好ましく、8:92~20:80がさらに好ましい。
【0033】
<その他の成分>
本実施形態の充填剤は、本発明の目的を阻害しない範囲において、上述の成分以外の、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
≪界面活性剤≫
界面活性剤としては、たとえば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0035】
フッ素系界面活性剤として、具体例には、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれもDIC社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0036】
シリコーン系界面活性剤として、具体例には、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0037】
本実施形態の充填剤は、光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.05μmより大きい粒子の数が、前記充填剤1mL当たり10個以上300個以下である。
【0038】
本明細書における充填剤の0.05μmより大きい粒子の数は、液中パーティクルカウンター(Rion社製、製品名:KS-19F)を用いて、室温(25℃)における0.05μmより大きい粒子の数(1mLあたりの個数(個/mL))を測定した値を意味する。
【0039】
本実施形態の充填剤の0.05μmより大きい粒子の数が、前記充填剤1mL当たり10個以上であれば、該粒子が結晶核となり、結晶性を有する溶質(C)の結晶化が十分に進行し、成膜性に優れる。
一方で、本実施形態の充填剤の0.05μmより大きい粒子の数が、前記充填剤1mL当たり300個以下であれば、該粒子による基板にダメージを与えるリスク、歩留まり低下、及び信頼性の低下を抑制することができる。
【0040】
以上説明した本実施形態の充填剤は、結晶性を有する溶質(C)と、溶媒(S)とを含有する。加えて、該充填剤の光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.05μmより大きい粒子の数が、前記充填剤1mL当たり10個以上300個以下である。0.05μmより大きい粒子の数を上記の範囲とすることにより、結晶性を有する溶質(C)の結晶化が十分に進行し、成膜性に優れ、かつ、該粒子による基板にダメージを与えるリスク等を低減することができる。また、本実施形態の充填剤は、成膜性に優れるため、パターン倒壊抑制効果に優れる。
【0041】
(充填剤の製造方法)
本実施形態の充填剤の製造方法は、上述した(C)成分及び(S)成分を含む粗充填剤をフィルターにより濾過する、濾過工程を有する、充填剤の製造方法である。
上述した(C)成分及び(S)成分を含む粗充填剤をフィルターにより濾過することにより、上述した第1の態様に係る充填剤の光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.05μmより大きい粒子の数を調整することができる。
【0042】
[濾過工程]
本実施形態における濾過工程として、具体的には、上述した(C)成分及び(S)成分を含む粗充填剤を用意し、該粗充填剤を、送液ポンプを用いて、除粒子フィルター(例えば、ポリエチレンフィルター、孔径1nm)に通液させる方法が挙げられる。上記工程を循環させながら行い、その循環する時間によって、充填剤の光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定における0.05μmより大きい粒子の数を調整することができる。
なお、上記除粒子フィルターは2種類以上のフィルターを直列に連結し、連続的に通液するように使用してもよい。
【0043】
以上説明した本実施形態の充填剤の製造方法によれば、成膜性に優れる充填剤を簡易に製造することができる。
【0044】
(基板の処理方法)
本実施形態の基板の処理方法は、上述した第1の態様に係る充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する、基板の処理方法であって、前記パターンの凹部内で前記溶質(C)を結晶化させることによって、結晶化された充填剤を充填する、結晶充填工程と、前記結晶化された充填剤を除去する除去工程とを有する、基板の処理方法である。
【0045】
<第一の実施形態に係る基板の処理方法>
第一の実施形態に係る基板の処理方法は、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面をリンス液でリンスするリンス工程と、前記パターンの凹部内に残留したリンス液を上述した第1の態様に係る充填剤で置換し、前記パターンの凹部内を充填する置換充填工程と、前記パターンの凹部内で前記溶質(C)を結晶化させることによって、結晶化された充填剤を充填する、結晶充填工程と、前記結晶化された充填剤を除去する、除去工程とを有する、基板の処理方法である。
第一の実施形態に係る基板の処理方法について、
図1を用いて、詳細に説明する。
【0046】
図1(a)は表面に凹凸のパターンが形成された基板を模式的に示す図である。基板1の表面には凹凸のパターン11(複数のピラーを含むパターン)が形成されており、パターンの凹部11aとパターンの凸部11bとを備える。
【0047】
基板1としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウエハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
上記の中でも、基板1は、シリコンウエハ(シリコン基板)が好ましい。シリコン基板は、自然酸化膜、熱酸化膜及び気相合成膜(CVD膜など)等の酸化ケイ素膜が表面に形成されたものであってもよく、前記酸化ケイ素膜にパターンが形成されたものであってもよい。
【0048】
このようなパターンの形成は、公知の方法を用いて行うことができる。例えば、基板上に公知のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜を現像・露光してレジストパターンを形成した後、該レジストパターンをマスクとして基板をエッチング処理することにより、パターンを形成することができる。
【0049】
[リンス工程]
リンス工程は、基板1の表面を、後述するリンス液20でリンスする工程である。
図1(b)は、基板1の表面にリンス液20が接触している図である。
リンスの方法は、特に限定されず、半導体製造工程において、基板の洗浄に一般的に用いられる方法を採用することができる。そのような方法としては、例えば、後述するスピンコート法、浸漬法(ディップ法)、スプレー法、液盛り法(パドル法)等が挙げられる。その中でも、リンス方法としては、スピンコート法が好ましい。スピンの回転速度としては、100rpm以上5000rpm以下が例示される。
【0050】
スピンコート法は、基板をスピンコーター等を用いて回転させ、該回転した基板にリンス液をたらす又は噴霧する方法である。
浸漬法(ディップ法)は、基板をリンス液に浸漬させる方法である。
スプレー法は、基板を所定の方向に搬送させ、その空間にリンス液を噴射する方法である。
液盛り法(パドル法)は、基板にリンス液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法である。
【0051】
・リンス液
リンス工程に用いるリンス液20としては、特に限定されず、半導体基板のリンス工程に一般的に用いられるものを使用することができる。リンス液20としては、例えば、上述した極性有機溶媒及び無極性有機溶媒を含有するものが挙げられる。
リンス液20は、該有機溶媒に代えて、又は該有機溶媒とともに水を含有していてもよい。
リンス液20は、公知の添加物等を含有していてもよい。公知の添加剤としては例えば、上述したフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0052】
[置換充填工程]
置換充填工程は、パターンの凹部11a内に残留したリンス液20を上述した第1の態様に係る充填剤21で置換し、充填する工程である。
図1(c)は、パターンの凹部11a内に残留したリンス液20が充填剤21で置換され、パターンの凹部11a内及びパターンの凸部11b上を充填剤21で充填及び被覆している図である。
【0053】
パターンの凹部11a内に残留したリンス液20を充填剤21で置換し、充填する方法としては、充填剤21をスピンコート法、浸漬法(ディップ法)、スプレー法、液盛り法(パドル法)等を用いて、パターンの凹部11a内に接触させる方法が挙げられる。
【0054】
パターンの凹部11a内に充填剤21を接触させる際の温度は、例えば、常温(25℃)付近である。
【0055】
[結晶充填工程]
結晶充填工程は、充填剤21における(C)成分をパターンの凹部11a内で結晶化させることによって、結晶化された充填剤22を充填する工程である。
図1(d)は、パターンの凹部11a内及びパターンの凸部11b上を結晶化された充填剤22で充填及び被覆している図である。
なお、結晶化された充填剤22とは、例えば、結晶化された(C)成分((C)成分の結晶)である。
【0056】
充填剤21を結晶化させる方法としては、乾燥工程によって(S)成分を除去することにより、充填剤21を結晶化させることができる。
乾燥工程としては、スピンドライ、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥等の公知の方法を用いることができる。例えば、不活性ガス(窒素ガスなど)ブロー下でのスピン乾燥が好適に例示される。
【0057】
[除去工程]
除去工程は、結晶化された充填剤22を除去する工程である。
結晶化された充填剤22を除去する方法としては、結晶化された充填剤22((C)成分)を昇華させることにより除去することが好ましい。
図1(e)は、結晶化された充填剤22が昇華して、除去される過程を示す図である。
図1(f)は、結晶化された充填剤22が除去された図である。
【0058】
結晶化された充填剤22を昇華させる際の温度は、結晶化された充填剤22((C)成分)の融点よりも低い温度であり、結晶化された充填剤22((C)成分)が融解しない温度であれば特に限定されないが、例えば、(C)成分の融点より10~20℃低い温度で、結晶化された充填剤22((C)成分)を昇華させることが好ましい。
また、上記昇華は減圧下で行ってもよい。
【0059】
また、除去工程の変形例としては、たとえば充填剤22((C)成分)が分解する温度まで加熱し、充填剤22((C)成分)を除去する、といった態様が挙げられる。このような態様においても、減圧条件を採用することができる。
【0060】
<その他実施形態>
上述した第一の実施形態に係る基板の処理方法では、リンス工程と、置換充填工程とを有していたが、本実施形態の基板の処理方法はリンス工程と、置換充填工程とを有していなくともよく、第1の態様に係る充填剤でリンスし、上記パターンの凹部内を結晶化された充填剤で充填し、該結晶化された充填剤を除去する方法であってもよい。
すなわち、その他の実施形態としては、上述した第1の態様に係る充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する、基板の処理方法であって、前記充填剤を用いて、基板の前記表面をリンスするリンス工程と、少なくとも前記パターンの凹部内で前記溶質(C)を結晶化させることによって、結晶化された充填剤を充填する、結晶充填工程と、前記結晶化された充填剤を除去する、除去工程とを有する、基板の処理方法である。
【0061】
図1(a)において、複数のピラーを含むパターンが形成された基板について説明したが、凹凸のパターンの形状は、特に限定されず、半導体製造工程で一般的に形成されるパターン形状とすることができる。パターン形状は、ラインパターンであってもよく、ホールパターンであってもよく、複数のピラーを含むパターンであってもよい。パターン形状は、好ましくは、複数のピラーを含むパターンである。ピラーの形状は、特に限定されないが、例えば、円柱形状、多角柱形状(四角柱形状など)等が挙げられる。
【0062】
図1(c)及び(d)では、充填剤21及び結晶化された充填剤22が、パターンの凹部11a及びパターンの凸部11b上を充填及び被覆するような態様であるが、これに限定されず、少なくとも基板1からパターンの凸部11bの途中までの高さにおいて、パターンの凹部11aが充填剤21及び結晶化された充填剤22で充填されていればよい。
【0063】
以上説明した本実施形態の基板の処理方法は、上述した第1の態様に係る充填剤を用いて、表面に凹凸のパターンが形成された基板の前記表面を処理する方法である。上述した成膜性に優れる第1の態様に係る充填剤を用いているため、パターン倒壊を抑制することができる。また、上述した第1の態様に係る充填剤は成膜性が良好であるため、生産性にも優れる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0065】
<充填剤の製造方法>
(実施例1、2、比較例1、2)
(C)成分:ベンゾトリアゾール10質量%と、(S)成分:イソプロピルアルコール90質量%とを混合して混合溶液を製造した。該混合溶液を送液ポンプを用いて循環させながら、除粒子フィルター(ポリエチレンフィルター、孔径1nm)に通液させ、濾過した。循環時間の調整により、室温(25℃)において、液中パーティクルカウンター(Rion社製、製品名:KS-19F)における、0.05μmより大きい粒子の数(1mLあたりの個数(個/mL))が表1に示す値となる、各例の充填剤を製造した。
【0066】
[成膜性の評価]
<(C)成分の結晶化>
基板としては、6インチシリコンウエハを用いた。
該シリコンウエハ上に各例の充填剤を、スピンコート法を用いてそれぞれ塗布し、該シリコンウエハ上で(C)成分:ベンゾトリアゾールを結晶化させた。具体的には、SLOPE 10秒後、該シリコンウエハ上に1500rpmで各例の充填剤を10秒間吐出した。次いで、スピンドライで各例の充填剤を30秒間乾燥させ、イソプロピルアルコールで10秒間エッジリンスした。次いで、さらにスピンドライ10秒、SLOPE 10秒の条件で乾燥させた。その後、(C)成分が結晶化するまで静置した(温度25℃)。
【0067】
[結晶化時間の評価]
上記<(C)成分の結晶化>において、スピンコート法により各例の充填剤を塗布したときのスピンが静止してから、各例の充填剤が塗布されたシリコンウエハ上の全域が結晶化するまでの時間を計測した。なお、結晶化が完了したことの判断は、目視及び光学顕微鏡で観察して判断し、以下の基準で結晶化時間を評価した。その結果を表1に示す。
〇:5分以内に結晶化が完了している
×:5分以内に結晶化が完了していない
生産性の点から結晶化時間は短いほど好ましく、5分以内を〇として評価した。
【0068】
[結晶の充填性の評価]
上記<(C)成分の結晶化>によって形成された結晶について、目視及び光学顕微鏡(倍率5倍)で観察し、以下の評価基準で結晶の充填性を評価した。その結果を表1に示す。
〇:目視及び光学顕微鏡観察で基板露出が観察されない
×:目視で塗布領域での基板露出が観察される
【0069】
【0070】
表1に示す通り、実施例1、2の充填剤は、結晶化時間が短く、結晶の充填性が高く、成膜性に優れていた。
【0071】
0.05μmより大きい粒子の数が2000個/mLである比較例1では、結晶核となる粒子が多いため、結晶化時間は短かったが、結晶粒界により基板露出が多数散見された。そのため、実施例1、2の充填剤に比べ成膜性が劣っていた。
また、0.05μmより大きい粒子の数が8個/mLである比較例2では、1時間経過しても上記基板上の全域を占めるような結晶は形成されなかった。
【0072】
[パターン倒壊抑制効果の評価]
<基板の処理>
[結晶充填工程]
基板としては、ピラー構造を有するシリコンパターンチップ(2cm×2cm)を用いた。
実施例1の充填剤をスピンコート法により、該シリコンパターンチップの表面に塗布した。次いで、該充填剤をスピンドライで30秒間乾燥させ、該シリコンパターンチップの凹部内で、実施例1の(C)成分:ベンゾトリアゾールを結晶化させることによって、(C)成分:ベンゾトリアゾールを充填した。
【0073】
[除去工程]
上記[結晶充填工程]により、シリコンパターンチップの凹部内を充填している(C)成分:ベンゾトリアゾールの結晶を、80℃で加熱し、(C)成分:ベンゾトリアゾールを昇華させ、除去した。
【0074】
上記<基板の処理方法>によって処理したシリコンパターンチップをSEMで観察し、該シリコンパターンチップのパターンが倒壊しているか確認した結果、該パターンは倒壊していなかった。
【0075】
以上より、本実施形態の充填剤は、成膜性が良好であり、基板表面のパターン倒壊抑制効果に優れることが確認できる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・基板
11・・・凹凸のパターン
11a・・・パターンの凹部
11b・・・パターンの凸部
20・・・リンス液
21・・・充填剤
22・・・結晶化された充填剤