(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】マルチビーム用アパーチャ基板セット及びマルチ荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230511BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230511BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20230511BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
H01L21/30 541B
G03F7/20 504
H01J37/09 A
H01J37/305 B
(21)【出願番号】P 2019034558
(22)【出願日】2019-02-27
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕史
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-017698(JP,A)
【文献】特開2008-258587(JP,A)
【文献】特開平11-040485(JP,A)
【文献】特開2008-066441(JP,A)
【文献】特開昭61-064054(JP,A)
【文献】特開2003-202661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/00 - 37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1開口が形成され、前記複数の第1開口が含まれる領域に荷電粒子ビームの照射を受け、前記複数の第1開口を前記荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより第1マルチビームを形成する第1成形アパーチャアレイ基板と、
前記第1マルチビームのうち、それぞれ対応するビームの一部が通過する複数の第2開口が形成され、第2マルチビームを形成する第2成形アパーチャアレイ基板と、
を備え、
前記第2マルチビームの各ビームの形状は、前記第1開口における対向する辺と、前記第2開口における対向する辺とにより成形され
、
前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、対向する辺が互いに非平行な幅変化部を含むことを特徴とするマルチビーム用アパーチャ基板セット。
【請求項2】
前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、対向する辺が互いに平行な幅固定部を
さらに含むことを特徴とする請求項
1に記載のマルチビーム用アパーチャ基板セット。
【請求項3】
前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、第1幅固定部と、前記第1幅固定部よりも幅の大きい第2幅固定部とを有することを特徴とする請求項
2に記載のマルチビーム用アパーチャ基板セット。
【請求項4】
描画対象基板を載置する、移動可能なステージと、
荷電粒子ビームを放出する放出部と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマルチビーム用アパーチャ基板セットと、
前記第2マルチビームのうち少なくとも一部のビームが前記描画対象基板上の所定位置に照射されるように、前記
第2マルチビームを偏向する偏向器と、
を備えるマルチ荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム用アパーチャ基板セット及びマルチ荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターン(マスク、或いは特にステッパやスキャナで用いられるものはレチクルともいう。)をウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンは、電子ビーム描画装置によって描画され、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
マルチビームを使った描画装置は、1本の電子ビームで描画する場合に比べて、一度に多くのビームを照射できるので、スループットを大幅に向上させることができる。マルチビーム描画装置の一形態であるブランキングアパーチャアレイを使ったマルチビーム描画装置では、例えば、1つの電子銃から放出された電子ビームを複数の開口を持った成形アパーチャアレイに通してマルチビーム(複数の電子ビーム)を形成する。マルチビームは、ブランキングアパーチャアレイのそれぞれ対応するブランカ内を通過する。ブランキングアパーチャアレイは、ビームを個別に偏向するための電極対を有し、電極対の間にビーム通過用の開口が形成されている。電極対(ブランカ)の一方の電極をグラウンド電位で固定し、他方の電極をグラウンド電位とそれ以外の電位とに切り替えることにより、通過する電子ビームのブランキング偏向を行う。ブランカによって偏向された電子ビームは遮蔽され、偏向されなかった電子ビームは試料上に照射される。
【0004】
マルチビーム描画装置では、電流量を増やすことで描画時間を短縮できるが、クーロン効果によりビームの軌道が変化し、描画精度が劣化するという問題があった。製品のグレードに応じて、大電流で高速に描画するか、又は小電流で高精度に描画するかを切り替えることが望まれている。そこで、マルチビームの各ビームのサイズを調整して、電流量を切り替える手法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、マルチビームを形成する第1アパーチャ基板と、第1開口アレイと第2開口アレイとがオフセットをつけて配置された第2アパーチャ基板とを有する描画装置が開示されている。第1開口アレイの各開口は、第2開口アレイの各開口よりもサイズが大きくなっている。第1アパーチャ基板と第2アパーチャ基板との相対位置を調整し、マルチビームが第1開口アレイを通過するか、又は第2開口アレイを通過するか切り替えることで、ビームサイズを切り替えることができる。
【0006】
しかし、このような手法では、ビームサイズは、第2アパーチャ基板に形成した開口アレイの種類に限定される。例えば、第2アパーチャ基板に第1開口アレイと第2開口アレイの2種類の開口アレイが形成されている場合、形成可能なビームサイズは2種類のみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8546767号明細書
【文献】特開2001-15428号公報
【文献】特開2003-332204号公報
【文献】特開2000-30647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マルチビームの各ビームを様々なサイズに調整できるマルチビーム用アパーチャ基板セット及びマルチ荷電粒子ビーム装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるマルチビーム用アパーチャ基板セットは、複数の第1開口が形成され、前記複数の第1開口が含まれる領域に荷電粒子ビームの照射を受け、前記複数の第1開口を前記荷電粒子ビームの一部がそれぞれ通過することにより第1マルチビームを形成する第1成形アパーチャアレイ基板と、前記第1マルチビームのうち、それぞれ対応するビームの一部が通過する複数の第2開口が形成され、第2マルチビームを形成する第2成形アパーチャアレイ基板と、を備え、前記第2マルチビームの各ビームの形状は、前記第1開口における対向する辺と、前記第2開口における対向する辺とにより成形され、前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、対向する辺が互いに非平行な幅変化部を含むものである。
【0011】
本発明の一態様によるマルチビーム用アパーチャ基板セットにおいて、前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、対向する辺が互いに平行な幅固定部をさらに含む。
【0012】
本発明の一態様によるマルチビーム用アパーチャ基板セットにおいて、前記第1開口及び前記第2開口は、それぞれ、第1幅固定部と、前記第1幅固定部よりも幅の大きい第2幅固定部とを有する。
【0013】
本発明の一態様によるマルチ荷電粒子ビーム装置は、描画対象基板を載置する、移動可能なステージと、荷電粒子ビームを放出する放出部と、上記マルチビーム用アパーチャ基板セットと、前記第2マルチビームのうち少なくとも一部のビームが前記描画対象基板上の所定位置に照射されるように、前記第2マルチビームを偏向する偏向器と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、マルチビームの各ビームを様々なサイズに調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による描画装置の概略図である。
【
図2】(a)はアパーチャ基板セットの概略図であり、(b)は成形アパーチャアレイ基板の実装例の模式図である。
【
図3】(a)(b)は開口形状の例を示す図である。
【
図6】(a)(b)はビーム成形の例を示す図である。
【
図7】(a)~(c)は開口形状の例を示す図である。
【
図8】(a)(b)は開口形状の例を示す図である。
【
図9】(a)~(c)はビーム成形の例を示す図である。
【
図10】(a)(b)は開口形状の例を示す図である。
【
図11】(a)~(c)はビーム成形の例を示す図である。
【
図12】(a)(b)は開口形状の例を示す図である。
【
図13】(a)(b)はビーム成形の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0017】
図1は、実施形態に係る描画装置の概略構成図である。
図1に示す描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画装置100は、電子鏡筒102と描画室103とを備えている。電子鏡筒102内には、電子銃111、照明レンズ112、アパーチャ基板セットS、ブランキングアパーチャアレイ基板30、縮小レンズ115、制限アパーチャ部材116、対物レンズ117及び偏向器118が配置されている。
【0018】
アパーチャ基板セットSは、第1成形アパーチャアレイ基板10及び第2成形アパーチャアレイ基板20を有する。第1成形アパーチャアレイ基板10はそこに到達するビームの大部分を遮蔽するため、電子ビームの運動エネルギーが変換された熱がアパーチャ表面で発生する。第1成形アパーチャアレイ基板10の熱負荷を下げるために、第1成形アパーチャアレイ基板10の上方にプレアパーチャアレイ基板50がさらに設けられていてもよい。
【0019】
描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるマスク等の基板101が配置される。基板101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、基板101には、レジストが塗布されたマスクブランクスが含まれる。
【0020】
図2(a)(b)に示すように、第1成形アパーチャアレイ基板10は可動ステージ40に搭載されている。第2成形アパーチャアレイ基板20は、可動ステージ42に搭載され、第1成形アパーチャアレイ基板10の下方に配置されている。ブランキングアパーチャアレイ基板30は、可動ステージ44に搭載され、第2成形アパーチャアレイ基板20の下方に配置されている。
【0021】
第1成形アパーチャアレイ基板10には、縦m列×横n列(m,n≧2)の開口(第1開口)12が所定の配列ピッチで形成されている。各開口12は、
図3(a)に示すような所定方向に沿って延在する細長い形状になっている。開口12は、1組の対辺12a、12bと、非平行な1組の対辺12c、12dと、を有する四角形である。開口12の延在方向(図中上下方向、長手方向)に沿って、延在方向と直交する方向(図中左右方向、短手方向)の幅が変化する。例えば、開口12の形状は、1組の平行な辺(底)12a、12bと、1組の非平行な辺(脚)12c、12dを有する等脚台形状である。辺12aから辺12bに向かって徐々に幅が大きくなる。
【0022】
第2成形アパーチャアレイ基板20には、第1成形アパーチャアレイ基板10の各開口12の配置位置に合わせて開口(第2開口)22が形成されている。各開口22は、
図3(b)に示すような所定方向に沿った延在する細長い形状になっている。開口22の延在方向は、開口12の延在方向と直交し、開口22は開口12を水平面内で90°回転した形状になっている。
【0023】
具体的には、開口22は、1組の平行な辺(底)22a、22bと、1組の非平行な辺(脚)22c、22dを有する等脚台形状である。開口22の延在方向(図中左右方向、長手方向)に沿って、延在方向と直交する方向(図中上下方向、短手方向)の幅が変化する。辺22aから辺22bに向かって徐々に幅が大きくなる。
【0024】
プレアパーチャアレイ基板50には、第1成形アパーチャアレイ基板10の各開口12の配置位置に合わせて開口(第4開口)52が形成されている。開口52の形状は矩形でもよいし、円形でもよい。第一成形アパーチャアレイ基板10への熱負荷を下げるためには、開口52は開口12および22を用いて成型するビームの最大サイズより大きい範囲でなるべく小さくすると好適である。例えば、開口52の寸法は開口12の辺12a、22aより大きく、辺12c、12d、22c、22dより小さくすると好適である。
【0025】
プレアパーチャアレイ基板50の開口52を通過したビームが、第1成形アパーチャアレイ基板10の開口12を通過する。
図4、
図5に示すように、開口12を通過したビーム(第1マルチビーム)の一部が第2成形アパーチャアレイ基板20の開口22を通過する。複数の開口12及び22を電子ビーム130の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム130M(第2マルチビーム、
図1参照)が形成される。
【0026】
図3に示すアパーチャ形状を用いる場合、マルチビームの各ビームBの形状は完全な矩形でなく、対抗する辺がわずかに非並行な四角形になるが、この形状は描画精度を劣化させない。光学系起因によるビーム像のぼけ、およびレジスト中の反応物質の拡散によるぼけが作用したドーズのプロファイルがレジスト現像後のパターンの寸法と形状を決めるため、ビームの電流量が校正されていれば、前記ボケの幅より小さいビームの形状ずれはパターンの寸法と形状に影響しないからである。
【0027】
開口12と開口22とは平面視で長手方向が直交するように配置されている。可動ステージ40,42により開口12と開口22との相対位置を調整することで、マルチビーム130Mの各ビームBのサイズを調整できる。
【0028】
このとき、開口12の長手方向に可動ステージを移動させると、移動方向と直行する方向のビームサイズが、移動量よりも小さい寸法だけ変化する。開口22についても同様である。よって、略矩形のビームの二方向の寸法を独立に、可動ステージの機械的な位置精度よりも高い精度で調整できる。また、描画装置運用中の意図しない可動ステージの位置ずれや、アパーチャおよびアパーチャ保持部の温度変化によるアパーチャ位置の相対位置ずれの影響が、相対位置ずれの量よりも小さい変化としてビームサイズに現れる。よって、ビームサイズのアパーチャの寸法の高い安定性が得られる。なお、本実施形態では可動ステージを用いてビームサイズを調整したが、可動ステージを用いることなく、偏向により成形調整してもよい。つまり、第1成形アパーチャアレイ基板10の上側か、第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との間の少なくともいずれか一方に成形偏向器を設置して、ビーム偏向により第1成形アパーチャアレイ基板10を通過したビーム像の第2成形アパーチャアレイ基板20上での位置を制御することにより、第2成形アパーチャアレイ基板20を通過して基板101上に投影されるビームのビームサイズを調整する。
【0029】
例えば、
図6(a)に示すように、開口12の幅広部を通過したビームが開口22の幅広部を通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10及び第2成形アパーチャアレイ基板20を配置することで、各ビームBのサイズを大きくできる。
【0030】
また、
図6(b)に示すように、開口12の幅狭部を通過したビームが開口22の幅狭部を通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10及び第2成形アパーチャアレイ基板20を配置することで、各ビームBのサイズを小さくできる。
【0031】
本実施形態では、開口12の対向する1組の辺12c及び12dと、開口22の対向する1組の辺22c及び22dにより各ビームが成形される。
【0032】
ブランキングアパーチャアレイ基板30は、第2成形アパーチャアレイ基板20の下方に設けられ、第2成形アパーチャアレイ基板20の各開口22の配置位置に合わせて開口(第3開口)32が形成されている。各開口32の近傍に、対となる2つの電極(
図2(a)参照)の組からなるブランカ34が配置される。2つの電極は、開口32を挟むようにして対向配置されている。一方の電極はグラウンド電位で固定されており、他方の電極をグラウンド電位と別の電位とに切り替える。
【0033】
各開口32を通過する電子ビームは、ブランカ34に印加される電圧によってビームオンまたはビームオフの状態にビーム毎に独立に制御される。ビームオンの場合はブランカの対向する電極は同電位に制御されブランカはビームを偏向しない。ビームオフの場合はブランカの対向する電極は互いに異なる電位に制御されブランカはビームを偏向する。このように、複数のブランカが、第1成形アパーチャアレイ基板10の複数の開口12及び第2成形アパーチャアレイ基板20の複数の開口22を通過したマルチビーム130Mのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0034】
このようなアパーチャ基板セットSが設置された描画装置100において、電子銃111(放出部)から放出された電子ビーム130は、照明レンズ112によりプレアパーチャアレイ基板50を照明する。電子ビーム130が、プレアパーチャアレイ基板50の複数の開口52、第1成形アパーチャアレイ基板10の複数の開口12、及び第2成形アパーチャアレイ基板20の複数の開口22を通過することによって、複数の電子ビーム(マルチビーム)130Mが形成される。マルチビーム130Mは、ブランキングアパーチャアレイ基板30のそれぞれ対応するブランカ34の電極間及び開口32を通過する。
【0035】
ブランキングアパーチャアレイ基板30を通過したマルチビーム130Mは、縮小レンズ115によって縮小され、全ビームがオンの状態で、制限アパーチャ部材116上で理想的には同一の点を通過する。この点が制限アパーチャ部材116の穴の中に位置するように図示しないアライメントコイルでビームの軌道を調整しておく。ここで、ビームオフ状態に制御されるビームはブランキングアパーチャアレイ基板30のブランカ34によって偏向され、制限アパーチャ部材116の穴の外を通る軌道を通るため、制限アパーチャ部材116によって遮蔽される。一方、ビームオフ状態に制御されるビームはブランカ34によって偏向されないので、制限アパーチャ部材116の穴を通過する。このようにブランキングアパーチャアレイ基板30のブランキング制御により、ビームのオン/オフが制御される。
【0036】
このように、制限アパーチャ部材116は、複数のブランカ34によってビームオフの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームオンになってからビームオフになるまでに形成された、制限アパーチャ部材116を通過したビームにより1回分のショットのビームが形成される。
【0037】
制限アパーチャ部材116を通過したマルチビームは、対物レンズ117により焦点が合わされ、所望の縮小率で基板101に投影される。偏向器118によってマルチビーム全体が同方向にまとめて偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。XYステージ105が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従するように偏向器118によって制御される。
【0038】
上述したように、本実施形態によれば、第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを縦方向、横方向の寸法を独立に、成型アパーチャの移動量よりも小さい幅で様々なサイズに調整できる。描画パターンの寸法に水平方向と垂直方向に差がある場合、これを打ち消すように縦と横のビームサイズに差をつけてビームを成形すると好適である。
【0039】
開口12、22は、短手方向の幅が変化する形状であればよく、等脚台形に限定されず、
図7(a)に示すような二等辺三角形や
図7(b)に示すような直角三角形であってもよい。また、
図7(c)に示すように、対向する2辺が非平行な四角形であってもよい。
【0040】
図8(a)、(b)に示すように、開口12、22は、幅変化部12E、22Eと、幅変化部12E、22Eの一端に連なる幅固定部12F、22Fと、幅変化部12E、22Eの他端に連なる幅固定部12G、22Gと、を有する形状であってもよい。幅固定部12F、22F、12G、22Gは、対向する辺が平行であり、短手方向の幅が一定の領域である。幅固定部12F,22Fは幅変化部12E、22Eの最小幅に対応し、幅固定部12G、22Gは幅変化部12E、22Eの最大幅に相当する。
【0041】
図9(a)に示すように、開口12の幅変化部12Eを通過したビームが、開口22の幅変化部22Eを通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームのサイズを調整できる。各ビームは、幅変化部12Eの対向する1組の対辺と、幅変化部22Eの対向する1組の対辺とにより成形される。
【0042】
図9(b)に示すように、開口12の幅固定部12Fを通過したビームが、開口22の幅固定部22Fを通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを所定の小サイズに設定できる。各ビームは、幅固定部12Fの対向する1組の対辺と、幅変化部22Fの対向する1組の対辺とにより成形される。
【0043】
図9(c)に示すように、開口12の幅固定部12Gを通過したビームが、開口22の幅固定部22Gを通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを所定の大サイズに設定できる。各ビームは、幅固定部12Gの対向する1組の対辺と、幅固定部22Gの対向する1組の対辺とにより成形される。
【0044】
図9(b)(c)に示す例では、第1成形アパーチャアレイ基板10や第2成形アパーチャアレイ基板20の位置が多少ずれても、ビームサイズを一定に保つことができる。また、矩形のアパーチャを一枚のアパーチャで成型する場合、アパーチャ開口の形として矩形の角部を高い精度で形成することは困難であるが、
図9(b)(c)に示す例では、二枚のアパーチャを用いて矩形ビームの角部を容易に成形できる。
【0045】
図10(a)、(b)に示すように、開口12、22は、幅が狭い矩形状の幅固定部12H、22Hに、幅が広い矩形状の幅固定部12J、22Jが連なった八角形状であってもよい。
【0046】
図11(a)に示すように、開口12の幅固定部12Hを通過したビームが、開口22の幅固定部22Hを通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを所定の小サイズに設定できる。各ビームは、幅固定部12Hの対向する1組の対辺と、幅固定部22Hの対向する1組の対辺とにより成形される。
【0047】
図11(b)に示すように、開口12の幅固定部12Jを通過したビームが、開口22の幅固定部22Jを通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを所定のサイズに設定できる。各ビームは、幅固定部12Jの対向する1組の対辺と、幅固定部22Jの対向する1組の対辺とにより成形される。
【0048】
図11(a)(b)に示す例においても、第1成形アパーチャアレイ基板10や第2成形アパーチャアレイ基板20の位置が多少ずれても、ビームサイズを一定に保つことができる。
【0049】
なお、マルチビームの各ビームのサイズは必ずしも相似形となるように設定する必要はなく、形状を変更してもよい。例えば正方形であったものを長方形に設定してもよい。
図11(c)に示すように、開口12の幅固定部12Hを通過したビームが、開口22の幅固定部22Jを通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを、
図11(a)(b)に示す例のような正方形ではなく、長方形となる所定の中サイズに設定してもよい。
【0050】
図12(a)、(b)に示すように、開口12、22は、幅が狭い矩形状の幅固定部12K、22Kに、幅が広い矩形状の幅固定部12L、22Lが連なった八角形状であってもよい。
【0051】
図13(a)に示すように、開口12の幅固定部12Kを通過したビームが、開口22の幅固定部22Kを通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを所定の小サイズに設定できる。各ビームは、幅固定部12Kの対向する1組の対辺と、幅固定部22Kの対向する1組の対辺とにより成形される。
【0052】
図13(b)に示すように、開口12の幅固定部12Lのコーナー部C1を通過したビームが、開口22の幅固定部22Lのコーナー部C2を通過するように第1成形アパーチャアレイ基板10と第2成形アパーチャアレイ基板20との相対位置を調整することで、マルチビームの各ビームを様々なサイズに調整できる。
【0053】
コーナー部C1は、開口12の隣接する辺12pと辺12rの一端同士が接続した部分に相当する。コーナー部C2は、開口22の隣接する辺22pと辺22rの一端同士が接続した部分に相当する。すなわち、
図13(b)に示す例では、開口12の隣接する辺12p及び12rと、開口22の隣接する辺22p及び22rにより各ビームが成形される。
【0054】
図13(a)に示す例では、第1成形アパーチャアレイ基板10や第2成形アパーチャアレイ基板20の位置が多少ずれても、ビームサイズを一定に保つことができる。
図13(b)に示す例では、ビームサイズの可変寸法範囲を広くすることができる。
【0055】
上記実施形態において、電子線描画装置を例に挙げて説明したが、荷電粒子ビーム検査装置など、他の荷電粒子ビーム装置にも適用することもできる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 第1成形アパーチャアレイ基板
20 第2成形アパーチャアレイ基板
30 ブランキングアパーチャアレイ基板
50 プレアパーチャアレイ基板
100 描画装置
101 基板
102 電子鏡筒
103 描画室
111 電子銃