(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、およびこれを含有してなるコート剤
(51)【国際特許分類】
C08F 299/06 20060101AFI20230511BHJP
C08G 75/045 20160101ALI20230511BHJP
C09D 175/16 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C08F299/06
C08G75/045
C09D175/16
(21)【出願番号】P 2019062434
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】谷口 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】小西 敦子
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-149224(JP,A)
【文献】特開2013-231167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C08F 299/06
C08G 75/045
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]が、炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基と、複数のチオール基を有する多官能チオール系化合物(B)のチオール基との付加反応により形成された炭素-硫黄結合を有する化合物であ
り、
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が、多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との反応生成物であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
多官能チオール系化合物(B)の全てのチオール基と、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基とが結合した構造を有する請求項
1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)のエチレン性不飽和基数が4個以上である請求項1
または2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
多官能チオール系化合物(B)のチオール基濃度が、4~30mmol/gである請求項1~
3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の重量平均分子量が1,500~50,000である請求項1~
4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなることを特徴とするコート剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、およびこれを含有してなるコート剤に関し、更に詳しくは、これをコート剤成分として用いた際に、屈曲性に優れ、かつ、硬化収縮が少なく、硬度にも優れた硬化塗膜を形成することができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、およびこれを含有してなるコート剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイなどの光学部材用途として、プラスチックフィルムが広く使用されており、中でも加工性や透明性などの光学物性に優れることから、アセチル化セルロース樹脂フィルムやポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが用いられてきた。しかしながら、これらのプラスチックフィルムは表面に傷が付きやすいという欠点があるので、硬度や耐擦傷性付与の目的で通常はハードコート剤を塗布して使用される。このハードコート剤としては、プラスチックフィルムへの密着性が優れていることや、硬化速度が速く生産性が向上するなどの理由から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が用いられることが多くなっている。
【0003】
このようなハードコート剤は、塗膜の硬化収縮が起こり、硬化塗膜がカールし易いという問題点があるので、硬化収縮が少なくカールし難いものが求められている。
また、ハードコート剤は、打ち抜き加工等の加工適正を向上させるためや、近年開発されているフレキシブルディスプレイで使用するために、硬化塗膜を形成したプラスチックフィルムを曲げてもクラック等が生じ難いこと(高屈曲性)が求められている。
【0004】
硬化収縮が少なくカールし難い硬化塗膜を得るための技術としては、硬化性樹脂に無機微粒子が添加された硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献1を参照。)や、硬化成分として高分子量化されたウレタン(メタ)アクリレートを含有する硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献2を参照。)、更には、水酸基価が130mgKOH/g以上であるペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物中の水酸基と、多価イソシアネート系化合物のイソシアネート基とを反応させてなるウレタン(メタ)アクリレートを含有してなる硬化性樹脂組成物(例えば、特許文献3を参照。)が提案されている。
【0005】
また、耐擦傷性を向上させるためにハードコート層をより高硬度化する手法として、例えば、反応性シリカ粒子およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含有してなる樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜が鉛筆硬度5H程度の硬度を発現することが知られている(例えば、特許文献4を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-77292号公報
【文献】特開2010-180319号公報
【文献】特開2012-229412号公報
【文献】特開2009-286924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および4の開示技術では、無機微粒子と硬化性樹脂との相溶性を考慮すると使用できる有機溶剤が限られたり、塗膜の表面異常が起こる可能性が高くなるという問題があった。また、一般的に無機微粒子は高価であるため、それを配合した樹脂や塗料も高価となり、現実的には硬化性樹脂の使用用途が特殊な用途に限られてしまうという問題もあった。
【0008】
また、上記特許文献2の開示技術では、硬化成分として使用するウレタン(メタ)アクリレートを高分子量化させるための製造法が多段反応となるので、操作が煩雑となったり、塗膜の耐擦傷性が低下するという問題があった。
【0009】
特許文献3の開示技術では、硬化収縮が小さくカールが抑制された硬化塗膜を得ることができるが、硬度の点で更なる改善が求められるものであった。
【0010】
また、特許文献1~4のいずれの開示技術も硬化塗膜の表面硬度が高く、カールが小さくなるコート剤の提供を目的としたものではあるが、屈曲性については何ら考慮されておらず、塗膜を屈曲させた際に割れが生じてしまうおそれがあった。
【0011】
本発明では、このような背景下において、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さいことからカールし難く、かつ硬度が高く、屈曲性にも優れるという効果が得られ、保存安定性も良好な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、およびこれを含有してなるコート剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、炭素-硫黄結合を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることにより、硬化塗膜を形成した際に、硬化収縮が小さいことからカールし難く、かつ硬度が高く、屈曲性にも優れた塗膜を形成することができ、またこの多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が保存安定性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち本発明は、炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であって、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]が、炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基と、複数のチオール基を有する多官能チオール系化合物(B)のチオール基との付加反応により形成された炭素-硫黄結合を有する化合物であり、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が、多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との反応生成物であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0015】
更に、本発明においては、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなるコート剤をも提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物によれば、高い硬度や屈曲性を有しており、さらに硬化収縮が小さいことからカールし難いという特性(低カール性)をも有する硬化塗膜を形成することができる。また本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は保存安定性に優れており、取り扱いが容易であり生産性が良好であるという効果を奏する。
したがって本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜に硬度と屈曲性が要求される用途に有用であり、例えば、高屈曲性が要求されるフレキシブルディスプレイ等の光学用部材の表面コート剤や、硬化塗膜に耐クラック性が要求される打ち抜き加工用等のコート剤、インモールド成型用のコート剤として、特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタアクリロイルを、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートを、(メタ)アクリロイロキシはアクリロイロキシあるいはメタクリロイロキシを、それぞれ意味するものであり、アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリレート系モノマーを1種以上含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有する。炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]は、炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基と、複数のチオール基を有する多官能チオール系化合物(B)のチオール基とが結合した結合部を2個以上有する。まず、炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)について説明する。
【0019】
<ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)>
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、多価イソシアネート系化合物(a1)および水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させた反応生成物や、多価イソシアネート系化合物(a1)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)およびポリオール系化合物(a3)を反応させた反応生成物が挙げられる。
【0020】
多価イソシアネート系化合物(a1)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート;ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の非環式脂肪族系ポリイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネート;或いはこれら多価イソシアネートの三量体化合物または多量体化合物;アロファネート構造、ヌレート構造、ビウレット構造等を有する多量体化した多価イソシアネート系化合物が挙げられる。
これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
これらの中でも、黄変が少ない点から、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式系ポリイソシアネートが好ましく用いられ、特に好ましくは、硬化収縮が小さい点で、脂環式系ポリイソシアネート(特に、イソホロンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート)が用いられ、更に好ましくは、反応性および汎用性に優れる点で、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが用いられる。
【0022】
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)としては、例えば、
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が2~20(好ましくは2~18)であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;
ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、脂肪酸変性-グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を1つ含有する(メタ)アクリレート系化合物;
グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイル-オキシプロピルメタクリレート等のエチレン性不飽和基を2つ含有する(メタ)アクリレート系化合物;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を3つ以上含有する(メタ)アクリレート系化合物;等が挙げられる。
これらは1種を単独で、または2種以上併せて用いることができる。
【0023】
また、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)としては、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られたジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物が塗膜に硬度を効果的に付与できる点で好ましい。
かかるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物としては、ジペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸を公知一般の方法で反応させたものが用いられる。
ジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物としては、その成分中に、ジペンタエリスリトールに対して(メタ)アクリル酸が一つ付加したもの、二つ付加したもの、三つ付加したもの、四つ付加したもの、五つ付加したもの、六つ付加したものが含まれ、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物などの副反応生成物が含まれることがある。
【0024】
かかるジペンタエリスリトールの(メタ)アクリル酸付加物の混合物における水酸基価としては、その水酸基価としては、30mgKOH/g以上であることが好ましく、より好ましくは40~280mgKOH/g、更に好ましくは40~150mgKOH/gである。
かかる混合物の水酸基価が小さすぎると、低分子量でエチレン性不飽和基数が多く、イソシアネートと反応しない(メタ)アクリル酸付加物の含有量が多くなるので、硬化時の硬化収縮が大きくなることから、カールし易くなる傾向があり、更には屈曲性が低下する傾向がある。なお、通常、上記水酸基価が大きくなりすぎると、分子量の増加に伴い、粘度が向上するので、取り扱い難くなる傾向がある。
なお、本明細書において水酸基価はJIS K 0070 1992に準じた方法により求められた値である。
また水酸基価の調整は、例えば、(メタ)アクリル酸が一つから六つ付加したものまでの付加物の混合比率を調整することにより行われる。
【0025】
ポリオール系化合物(a3)としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0026】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
【0027】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物、環状エステル(ラクトン)の開環重合物、多価アルコール、多価カルボン酸および環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0028】
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-テトラメチレンジオール、1,3-テトラメチレンジオール、2-メチル-1,3-トリメチレンジオール、1,5-ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサメチレンジオール、3-メチル-1,5-ペンタメチレンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4-シクロヘキサンジオール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトール等)等が挙げられる。
【0029】
上記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。
【0030】
上記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β-メチル-δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物、環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0032】
上記多価アルコールとしては、前記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0033】
なお、ポリカーボネート系ポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0034】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマーまたはコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。例えば、ポリイソプレン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ニトリルブタジエン系ポリオール、スチレンブタジエン系ポリオール等が挙げられる。
ポリオレフィン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリオレフィン系ポリオールであってもよい。
【0035】
(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体または共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0036】
ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0037】
これらポリオール系化合物(a3)の中でも、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオールが好ましく、より好ましくは、ポリオレフィン系ポリオールである。
また、ポリオール系化合物(a3)の含有する水酸基の数は、好ましくは1~5個、より好ましくは2~3個、更に好ましくは2個である。水酸基の数が多すぎると、反応中にゲル化が起こりやすくなる傾向がある。
【0038】
本発明において、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、次のようにして製造することができる。下記の説明は、多価イソシアネート系化合物(a1)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)およびポリオール系化合物(a3)を反応させた反応生成物についての説明であるが、かかる方法に準じて行うことにより、多価イソシアネート系化合物(a1)および水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させた反応生成物も製造できる。
【0039】
例えば、
(1)上記の多価イソシアネート系化合物(a1)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)およびポリオール系化合物(a3)を反応器に一括または別々に仕込み反応させる方法、
(2)多価イソシアネート系化合物(a1)とポリオール系化合物(a3)とを予め反応させて得られる反応生成物に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させる方法、
(3)多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)とを予め反応させて得られる反応生成物に、ポリオール系化合物(a3)を反応させる方法、
等が挙げられるが、反応の安定性や副生成物の低減等の点から(2)の方法が好ましい。
【0040】
多価イソシアネート系化合物(a1)とポリオール系化合物(a3)との反応には、公知の反応手段を用いることができる。その際、例えば、多価イソシアネート系化合物(a1)中のイソシアネート基:ポリオール系化合物(a3)中の水酸基とのモル比を通常2n:(2n-2)(nは2以上の整数)程度にすることにより、イソシアネート基を残存させた末端イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を得ることができ、該化合物を得た後、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応を行うことができる。
【0041】
上記多価イソシアネート系化合物(a1)とポリオール系化合物(a3)とを予め反応させて得られる反応生成物と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応にも、公知の反応手段を用いることができる。
【0042】
反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との反応モル比は、例えば、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が2個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:2程度であり、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が3個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:3程度である。
【0043】
この反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.3重量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が得られる。
【0044】
なお、多価イソシアネート系化合物(a1)および水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させてウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を製造方法する場合には、多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との反応モル比は、例えば、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が2個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、多価イソシアネート系化合物(a1):水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:2~1:5程度であり、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が3個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、多価イソシアネート系化合物(a1):水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:3~1:10程度である。
【0045】
この多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5重量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)が得られる。
【0046】
上記(1)~(3)の反応においては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましい。かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ-n-ブチル錫、ビスアセチルアセトナート亜鉛、ジルコニウムトリス(アセチルアセトネート)エチルアセトアセテート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等の有機金属化合物;オクテン酸錫、ヘキサン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫、酢酸カリウム等の金属塩;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ジアザビシクロノネン等のアミン系触媒;硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物;2-エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、ジ没食子酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0047】
また、上記反応においては、更に重合禁止剤を用いることが好ましい。かかる重合禁止剤としては、重合禁止剤として用いられている公知一般のものを使用することができる。例えば、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン等のキノン類;4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール等の芳香族類;p-t-ブチルカテコール等を挙げることができる。中でも、芳香族類が好ましく、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾールが特に好ましい。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0048】
上記反応においては、イソシアネート基に対して反応する官能基を有しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族類;等の有機溶剤を用いることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0049】
反応温度は、通常30~90℃、好ましくは40~80℃であり、反応時間は、通常4~72時間、好ましくは8~48時間である。
【0050】
なお、反応生成物中には、目的のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の他に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の未反応モノマー等が通常は含有される。
【0051】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、上記ポリオール系化合物(a3)を用いずに製造したもの、即ち、多価イソシアネート系化合物(a1)および水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させた反応生成物であることが、硬度が高く、硬化収縮が少なく、かつ屈曲性の全てに優れた硬化塗膜が得られる点で好ましい。
【0052】
またウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)は、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)由来の二重結合(エチレン性不飽和基、即ち、(メタ)アクリレート基)を4個以上有することが好ましく、より好ましくは6個以上、更に好ましくは10個以上である。上記エチレン性不飽和基が少なすぎると、所望の鉛筆硬度が得られない傾向がある。また、上記エチレン性不飽和基があまり多すぎると、硬化収縮が大きくなってしまう等の問題が生じる傾向があることから、上記エチレン性不飽和基の上限は20個、好ましくは12個である。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の重量平均分子量としては、1,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは1,200~20,000、更に好ましくは1,500~10,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、硬化塗膜が脆くなる傾向があり、大きすぎると高粘度となり取り扱いにくくなる傾向がある。
【0054】
なお、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC
XT 450を1本、ACQUITY APC XT 200を1本、ACQUITY
APC XT 45を2本の計4本を直列にして用いることにより測定される。
【0055】
<多官能チオール系化合物(B)>
次に、多官能チオール系化合物(B)について説明する。
かかる多官能チオール系化合物(B)としては、1分子中に2個以上のチオール基を有するものであれば特に限定されず、例えば、二官能チオール化合物(チオール基を2つ含有する化合物)、三官能チオール系化合物(チオール基を3つ含有する化合物)、四官能以上のチオール化合物(チオール基を4つ以上含有する化合物)等が挙げられるが、3個以上のチオール基を有するチオール系化合物が好ましく、更には4個以上のチオール基を有するチオール系化合物が好ましく、特には6個以上のチオール基を有するチオール系化合物が好ましい。
なお、チオール基の個数が多くなるほど、分子間の連結が多くなり、硬化塗膜の柔軟性が向上する傾向がある。更には、10個以上のチオール基を有するチオール化合物では連結基が多すぎることから網目構造となりゲル化し易い傾向があり、またチオール基が反応せずに残存した場合、樹脂溶液としての粘度安定性が低下する傾向にあるので好ましくない。
そして、多官能チオール系化合物(B)としては、特に6個以上のメルカプト基を有するメルカプトプロピオネートであることが硬化性および塗膜硬度の点から好ましい。
【0056】
多官能チオール系化合物(B)としては、脂肪族チオール化合物や芳香族チオール化合物が挙げられ、中でも脂肪族チオール化合物が好ましい。
【0057】
脂肪族チオール化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
二官能チオール化合物としては、例えば、
テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,2-プロピレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-プロピレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、1,2-プロピレングリコールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトイソブチレート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(2-メルカプトイソブチレート)、1,2-プロピレングリコールビス(2-メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、等のグリコール系チオール化合物;
1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3-メルカプトイソブチレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、等のブタンジオール系チオール化合物;
1,8-オクタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(2-メルカプトイソブチレート)等のオクタンジオール系チオール化合物;
ヘキサンジオールビスチオグリコレート等が挙げられる。
これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0058】
三官能チオール化合物としては、例えば、
トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート) 、トリメチロールプロパントリス( 3-メルカプトブチレート) 、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート等のトリメチロールプロパン系チオール化合物;
トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ) -エチル]-イソシアヌレート、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート) 、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
これらの中でも汎用性の点において、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート) が好ましい。
これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0059】
四官能以上のチオール化合物としては、例えば、
ペンタエリスリトールテトラキス( 3-メルカプトプロピオネート) 、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート) 、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトイソブチレート)等のペンタエリスリトール系チオール化合物;
ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート等のジペンタエリスリトール系チオール化合物;等が挙げられる。
これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0060】
芳香族チオールのうち二官能芳香族チオールとしては、例えば、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,4-ナフタレンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール、2,7-ナフタレンジチオール、2,2' -ジメルカプトビフェニル、4,4' -ジメルカプトビフェニル等が挙げられる。
【0061】
多官能チオール系化合物(B)としては、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)(以下「DPMP」という。)、トリメチロールプロパントリス(3- メルカプトプロピオナート) (以下「TMMP」という。)、チオシアヌル酸(以下「TMT」という。)、p-キシレンジチオール(以下「PXDT」という。)が好ましい。これら多官能チオール系化合物(B)は適度な網目構造となる連結基となることから、樹脂溶液としてゲル化せずに得ることができ、硬化塗膜としても硬度と屈曲性のバランスを有する性状として得られる。また、脂肪族構造であるDPMPやTMMPが硬化塗膜の耐久性(黄変性)の観点から好ましい。
【0062】
多官能チオール系化合物(B)のチオール基濃度は、4~30mmol/gであることが好ましく、5~25mmol/gがより好ましく、6~20mmol/gが更に好ましい。
なお、チオール基濃度の測定方法はヨージメトリー法により定量することができる。
【0063】
多官能チオール系化合物(B)の重量平均分子量としては、100~1,000であることが好ましく、より好ましくは150~900、更に好ましくは170~800である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、連結基を有するものの分子中にアクリル基が密集している構造となることから硬化収縮を低減しにくく、塗膜がカールし易くなり、また屈曲性能に劣る傾向があり、大きすぎると硬化塗膜のカール性は低減でき屈曲性は良好になるものの、硬度が低くなる傾向がある。
なお、多官能チオール系化合物(B)の重量平均分子量は構造式から算出できる。
【0064】
<炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]>
本発明における炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I](以下単に「ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]」という。)は、炭素-硫黄結合を有しない上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基と、上記多官能チオール系化合物(B)のチオール基とが結合した結合部を2個以上有する。
【0065】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]としては、特に限定されないが、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)と上記多官能チオール系化合物(B)との反応生成物であることが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基と多官能チオール系化合物(B)のチオール基との付加反応により炭素-硫黄結合を形成することが好ましい。
【0066】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]において、多官能チオール系化合物(B)の全てのチオール基と、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の(メタ)アクリロイル基とが結合した構造を有することが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]にチオール基が残存していると、残存しているチオール基が(メタ)アクリロイル基とマイケル付加反応をするので、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]が高分子量化するおそれがある。このため、保存安定性が悪くなったり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して塗布が困難になるなど取り扱いが難しくなったり、また一定の硬度を有する硬化塗膜が得られ難くなることから、全てのチオール基が(メタ)アクリロイル基と反応し残存していないことが好ましい。
【0067】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]は、ジメチルアミノエタノール、ジブチルアミン、ジエチルメチルアミン等のアミン触媒の存在下で、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)と上記多官能チオール系化合物(B)とを反応させることにより製造することができる。
反応温度は、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃であり、反応時間は好ましくは3~30時間、より好ましくは5~20時間である。
アミン触媒は、一括で反応系に存在させてもよいが、分割して反応系に添加することが好ましい。
反応に際しては、酢酸エチル等の希釈溶剤を用いることが好ましく、希釈溶剤中における固形分は40~80重量%にするのが好ましい。
【0068】
付加反応に際しての反応系におけるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)と多官能チオール系化合物(B)との重量比率は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A):多官能チオール系化合物(B)の重量比率で99.9:0.1~70:30が好ましく、99.5:0.5~80:20がより好ましく、99:1~85:15が更に好ましい。
なお、上記重量比率におけるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の重量には、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)に含有されている未反応モノマーの重量も含まれる。
【0069】
付加反応が終了した後の反応系には、目的のウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の他に、未反応のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、未反応の多官能チオール系化合物(B)、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)に含まれていた未反応モノマー等、これら未反応物と多官能チオール系化合物(B)との反応物等も含有される。
【0070】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]のエチレン性不飽和基数は、4~12mmol/gが好ましく、5~10mmol/gがより好ましく、6~9.5mmol/gが更に好ましい。エチレン性不飽和基数が大きすぎると、硬化塗膜がカールし易くなる傾向があり、小さすぎると硬化塗膜に十分な硬度を付与できなくなる傾向がある。
なお、チオール基濃度の測定はヨージメトリー法の定量による。
【0071】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の重量平均分子量としては、1,500~50,000が好ましく、1,700~40,000がより好ましく、2,000~30,000が更に好ましい。かかる重量平均分子量が大きすぎると高粘度となり取り扱いにくくなり、一定の硬度を有する硬化塗膜が得られ難くなる傾向があり、小さすぎると、得られる硬化塗膜のカール性が強くなり屈曲性に劣る傾向がある。
なお、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の重量平均分子量の測定は、上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の重量平均分子量の測定と同様の方法による。
【0072】
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下「樹脂組成物」と略すことがある。)中のウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の含有量は、好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。
【0073】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]および(A)以外のウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有していてもよく、またこれらウレタン(メタ)アクリレート系化合物以外のエチレン性不飽和モノマーを含有していてもよい。
【0074】
かかるエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能モノマー、二官能モノマー、三官能以上の多官能モノマーが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0075】
かかる単官能モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリルレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンスピロ-2-(1,3-ジオキソラン-4-イル)-メチル(メタ)アクリレート、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ポリオキシエチレン第2級アルキルエーテルアクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0076】
かかる二官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等が挙げられる。
【0077】
かかる三官能以上のモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化15グリセリントリアクリレート等が挙げられる。
【0078】
また、アクリル酸のミカエル付加物あるいは2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも併用可能であり、かかるアクリル酸のミカエル付加物としては、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸トリマー、(メタ)アクリル酸テトラマー等が挙げられる。
上記2-アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、特定の置換基をもつカルボン酸であり、例えば、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、その他オリゴエステルアクリレート等を挙げることができる。
【0079】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物以外のエチレン性不飽和モノマーの含有量としては、樹脂組成物中に含まれる全硬化成分中、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは40重量%以下である。
【0080】
本発明の樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、アクリル樹脂、表面調整剤、レベリング剤、重合禁止剤等を含有していてもよく、更にはフィラー、染料、顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤、シリカ、水分散または溶剤分散されたシリカ、ジルコニウム化合物、防腐剤等を含有していてもよい。
【0081】
上記光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-N,N-ジメチル-N-[2-(1-オキソ-2-プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(o-ベンゾイルオキシム)]等のオキシムエステル類等が挙げられる。
なお、これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0082】
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンを用いることが好ましい。
【0083】
また、これらの助剤として、例えば、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0084】
光重合開始剤の含有量としては、樹脂組成物中に含まれる硬化成分100重量部に対して、0.1~20重量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~10重量部、更に好ましくは1~10重量部である。光重合開始剤の含有量が少なすぎると、硬化不良となり膜形成がなされにくい傾向があり、多すぎると硬化塗膜の黄変の原因となり、着色の問題が起こりやすい傾向がある。
【0085】
前記表面調整剤としては、例えば、セルロース樹脂やアルキッド樹脂等を挙げることができる。かかるセルロース樹脂は、塗膜の表面平滑性を向上させる作用が有り、アルキッド樹脂は、塗布時の造膜性を付与する作用を有するものである。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0086】
前記レベリング剤としては、塗液の基材への濡れ性付与作用、表面張力の低下作用を有するものであれば、公知一般のレベリング剤を用いることができ、例えば、シリコーン変性樹脂、フッ素変性樹脂、アルキル変性の樹脂等を用いることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0087】
前記重合禁止剤としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の合成時に使用したものと同様のものを用いることができ、例えば、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、トルキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、ハイドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-t-ブチルハイドロキノン等のキノン類;4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチルクレゾール等の芳香族類;p-t-ブチルカテコール等を挙げることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0088】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、塗工時の粘度を適正なものにするために、希釈のための有機溶剤を使用することも好ましい。かかる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
【0089】
2種以上を併用する場合は、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類と、メチルエチルケトン等のケトン類やメタノール等のアルコール類との組み合わせ、メチルエチルケトン等のケトン類と、メタノール等のアルコール類との組み合わせ、メタノール等のアルコール類の中から選ばれた2種以上の組み合わせが塗膜外観の点で好ましい。
【0090】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を製造するにあたり、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]と、必要に応じて配合されるその他成分との混合方法については、特に限定されるものではなく、種々の方法を採用することができる。
【0091】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の保存安定性は、60℃で30日間保管を継続した場合の粘度上昇率が20%未満であることが好ましく、より好ましくは10%未満である。保存安定性が低いと取扱い性が変化し、実使用においても塗膜物性が安定しないことから好ましくない。
なお、粘度の測定法はB型粘度計による。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、各種基材へのトップコート剤やアンカーコート剤など、塗膜形成用の硬化性樹脂組成物として有効に用いられる。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、硬化塗膜に硬度と屈曲性が要求される用途に有用であり、例えば、高屈曲性が要求されるフレキシブルディスプレイ等の光学用部材の表面コート剤や、硬化塗膜に耐クラック性が要求される打ち抜き加工用等のコート剤、インモールド成型用のコート剤として、特に有用である。
以下、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有してなるコート剤について説明する。
【0093】
〔コート剤〕
本発明のコート剤は、基材に塗工した後(有機溶剤で希釈した組成物を塗工した場合には、さらに乾燥させた後)、活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。
【0094】
本発明のコート剤を塗工する対象である基材としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン系樹脂等やそれらの成型品(フィルム、シート、カップ等)等のプラスチック基材、それらの複合基材、またはガラス繊維や無機物を混合した前記材料の複合基材等、金属(アルミニウム、銅、鉄、SUS、亜鉛、マグネシウム、これらの合金等であり、金属蒸着膜等の金属膜を含む。)や、ガラス等の基材上にプライマー層を設けた基材等が挙げられる。
【0095】
コート剤の塗工方法としては、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、ロール、スピン、スクリーン印刷、インクジェット印刷等のようなウェットコート法が挙げられ、通常は常温の条件下で基材に塗工することができる。
【0096】
また、本発明のコート剤は、上記有機溶剤を用いて、固形分濃度が、通常3~80重量%、好ましくは5~60重量%になるように希釈して、塗工することが好ましい。
【0097】
上記有機溶剤による希釈を行なった際の塗工後の乾燥条件としては、温度が、通常40~120℃、好ましくは50~100℃で、乾燥時間が、通常1~20分、好ましくは2~10分であればよい。
【0098】
基材上に塗工されたコート剤を硬化させる際に使用する活性エネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行う場合は、光重合開始剤を用いなくても硬化し得る。
【0099】
紫外線照射により硬化させる際には、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いて、通常30~3000mJ/cm2(好ましくは100~1500mJ/cm2)の紫外線を照射することができる。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
【0100】
塗工膜厚(硬化後の膜厚)としては、通常、活性エネルギー線硬化性の塗膜として光重合開始剤が均一に反応するべく活性エネルギー線透過を鑑みると、1~1000μmであり、好ましくは2~500μmであり、特に好ましくは3~100μmである。
【0101】
硬化後の塗工膜の硬度は、2H以上であることが好ましく、3H以上であることがより好ましい。なお、塗工膜の硬度は、鉛筆硬度であり、易接着PETフィルム上に塗工した硬化塗膜について、JIS K-5600-5-4に準じて試験を行なうことに測定される。
【0102】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、高い硬度が得られ、かつ屈曲性に非常に優れ、さらにカールがし難い硬化塗膜を形成することができるため、特にコート剤として有用であり、また、塗料、インク等としても有用である。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。また、水酸基価、重量平均分子量および粘度の測定は、上記に記載の方法に従って行なった。
【0104】
以下に示すウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)および多官能チオール系化合物(B)を用いて、実施例および比較例のウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を調製した。
【0105】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)
〔製造例1:ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート6.6g(0.03モル)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(水酸基価48mgKOH/g)93.4g、重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチルクレゾール0.06g、反応触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを仕込み、60℃で反応させ、残存イソシアネート基が0.1%以下となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)を含有する組成物を得た。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)の重量平均分子量は1,600であった。
【0106】
多官能チオール系化合物(B)
脂肪族系多官能チオール系化合物(B-1)DPMP(SC有機化学社製、チオール基濃度7.7mmol/g)
脂肪族系多官能チオール系化合物(B-2)TMMP(SC有機化学社製、チオール基濃度7.5mmol/g)
芳香族系多官能チオール系化合物(B-3)TMT(三協化成社製;ジスネットF、チオール基濃度16.9mmol/g)
芳香族系多官能チオール系化合物(B-4)PXDT(SC有機化学社製、チオール基濃度11.7mmol/g)
【0107】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]
〔製造例2:ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-1]〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、上記製造例1で得られたウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)47.5g、多官能チオール系化合物としてDPMP(B-1)2.5g、酢酸エチル50.0g、およびジメチルアミノエタノールを混合し、60℃で20時間反応させた。
ジメチルアミノエタノールは初期、3時間後、13時間後の3分割で合計400ppmとなるように添加し、ヨージメトリー法でチオール残存量を滴定し、反応率が100%となったことを確認し反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-1]を含有する組成物を得た。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-1]の重量平均分子量は7,900であった。
【0108】
<実施例1>
〔活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造〕
上記製造例2で得られたウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-1]を含有する組成物に、酢酸エチルを用いて硬化成分が50%となるように希釈し、光重合開始剤として、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光重合開始剤(IGM社製、「オムニラッド184」)を硬化成分100部に対して4部配合し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を得た。
【0109】
<実施例2~5>
製造例2と同様にして、表1に記載の組成にてウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I-2]~[I-5]を製造し、さらに実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を製造した。なお、脂肪族系多官能チオール系化合物(B-3)TMTを用いた実施例4については、実施例1にてウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]の製造および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の製造の際に用いた酢酸エチルに代えてテトラヒドロフランを用いた。
【0110】
<比較例1>
炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)を用いた以外は実施例1と同様にして、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を製造した。
【0111】
<比較例2>
炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A-1)に5%の脂肪族系多官能チオール系化合物(B-1)を硬化成分が50%となるように酢酸エチルを用いて希釈した以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を製造した。
【0112】
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物について、保存安定性の評価、および下記のとおり硬化塗膜を形成し、硬化塗膜の硬度、屈曲性、硬化収縮を評価した。評価結果は表1に記載のとおりである。
【0113】
〔硬化塗膜の硬度〕
上記で得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、易接着PETフィルム(東洋紡(株)製、「A4300」、サイズ15cm×15cm、厚み125μm)基板上にバーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、60℃で3分間乾燥した後、高圧水銀灯ランプ80W、1灯を用いて、18cmの高さから5.1m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量450mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した。
易接着PETフィルム上に塗工した上記硬化塗膜について、JIS K-5600-5-4に準じて試験を行い、鉛筆硬度を測定した。
鉛筆硬度が2H以上のものを合格(〇)とし、2H未満のものを不合格(×)とした。
【0114】
〔硬化塗膜の屈曲性〕
上記の硬度評価と同様にして硬化塗膜を形成し、易接着PETフィルム上に塗工した硬化塗膜について、JIS K 5600-5-1に準じて、円筒形マンドレル屈曲試験機を用いて屈曲性の評価を行った。評価用硬化塗膜を、塗膜面が外側になるように試験棒に巻き付けた際に、割れまたは剥がれが生じる最大の径(整数値、mm)を測定した。値が小さいほど屈曲性の高い塗膜であることを意味する。
割れまたは剥がれが生じる最大の径が10mm以下のものを合格(〇)とし、10mmを超えるものを不合格(×)とした。
【0115】
〔硬化収縮〕(カール法)
100μm のPETフィルム上に塗工した上記硬化塗膜(膜厚5μm )を10cm角に切り出し、四隅の跳ね上がり高さの平均値(mm)をカール値として測定した。値が小さいほどカールが小さく、カールしにくい塗膜であることを意味する。
高さの平均値が13mm以下のものを合格(〇)とし、13mmを超えるものを不合格(×)とした。
【0116】
〔保存安定性〕
作成した組成物を酢酸エチルで樹脂分50%となるように希釈したものを、60℃の環境下で保管し、樹脂性状の変化を観察した。
なお、保管後からゲル化するまでの日数を調べたが、保管7日後においてもゲル化しない場合に「>7」と表記した。保管7日後においてもゲル化しない場合を合格(〇)とし、7日以下でゲル化したので不合格(×)とした。
【0117】
【0118】
上記評価結果より、炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有する樹脂組成物から得られた実施例1~5の硬化塗膜は、硬度が高く、硬化収縮が小さく、更に屈曲性に優れ、保存安定性も満足するものであった。
一方、炭素-硫黄結合を有するウレタン(メタ)アクリレート系化合物[I]を含有せず、炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を含有する樹脂組成物から得られた比較例1の硬化塗膜は、硬度は実施例の硬化塗膜と同等であるものの、硬化収縮が大きく、屈曲性も実施例に劣るものであった。
また、炭素-硫黄結合を有しないウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)と多官能チオール化合物(B)を混合したのみである比較例2の硬化塗膜は、硬度は実施例の硬化塗膜と同等であるものの、保存安定性が悪く、また硬化収縮が大きく、屈曲性も実施例に劣るものであった。