(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】検査方法、シリコンウェーハの製造方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230511BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20230511BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/66 J
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2019207717
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 純久
(72)【発明者】
【氏名】多久島 義幸
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-147316(JP,A)
【文献】特開2005-64515(JP,A)
【文献】特開2006-156740(JP,A)
【文献】特開2013-235892(JP,A)
【文献】特開昭63-188951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/66
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明の材料によって形成された容器に、互いに平行に、かつ、各々の中心軸が一致するように等間隔に整列されて収納された複数のウェーハの検査方法であって、
前記容器は、平坦な第1の上面部を有する第1の容器、または、段差が形成された第2の上面部を有する第2の容器であり、
前記検査方法は、
検査対象の容器の種類を判別する容器判別工程と、
前記容器の上側において前記ウェーハの主面と平行な方向から前記容器を通して前記複数のウェーハ全体を撮影する第一撮影工程と、
前記容器の上側において前記ウェーハの主面と平行な方向に対して傾斜した方向から前記容器を通して前記ウェーハを撮影する第二撮影工程と
、
前記第一撮影工程および前記第二撮影工程で撮影された画像を用いて前記容器内の前記複数のウェーハの位置を検査する検査工程と、を有
し、
前記第一撮影工程、前記第二撮影工程、または、前記検査工程は、前記容器判別工程における判別結果に応じた状態で行われることを特徴とする検査方法。
【請求項2】
前記容器は、前記第1の容器、または、互いに異なる位置に段差が形成された第2の上面部を有する複数種類の前記第2の容器であり、
前記第二撮影工程は、前記検査対象の容器が前記複数種類の第2の容器のうちいずれか1つである場合、前記第2の容器の種類に応じて前記ウェーハの撮影位置・角度を変更して撮影することを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記検査工程では、前記第一撮影工程および前記第二撮影工程で撮影された画像を用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記検査対象の容器が前記第1の容器の場合、前記第二撮影工程を行わずに、前記検査工程では、前記第一撮影工程で撮影された画像のみを用いて前記第1の容器内の前記複数のウェーハの位置を検査し、
前記検査対象の容器が前記第2の容器の場合、前記検査工程では、前記第一撮影工程および前記第二撮影工程で撮影された画像を用いて前記第2の容器内の前記複数のウェーハの位置を検査することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査方法。
【請求項5】
前記検査工程では、
前記検査対象の容器が前記第1の容器の場合、前記第一撮影工程で撮影された画像のみを用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査し、
前記検査対象の容器が前記第2の容器の場合、前記第一撮影工程および前記第二撮影工程で撮影された画像を用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査することを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記第一撮影工程において、赤外線カメラを用いて撮影を行うとともに、前記容器を通して前記赤外線カメラの反対側から前記赤外線カメラに向かって赤外線を照射することを特徴とする請求項1
から請求項5のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の検査方法を用いて前記容器内の前記複数のウェーハを検査することを含むシリコンウェーハの製造方法。
【請求項8】
透明または半透明の材料によって形成された容器に、互いに平行に、かつ、各々の中心軸が一致するように等間隔に整列されて収納された複数のウェーハの検査装置であって、
前記容器は、平坦な第1の上面部を有する第1の容器、または、段差が形成された第2の上面部を有する第2の容器であり、
前記検査装置は、
検査対象の容器の種類を判別する接触センサと、
前記容器の上側において前記ウェーハの主面と平行な方向から前記容器を通して前記複数のウェーハ全体を撮影するメインカメラと、
前記容器の上側において前記ウェーハの主面と平行な方向に対して傾斜した方向から前記容器を通して前記ウェーハを撮影するサブカメラと、
前記メインカメラおよび前記サブカメラによって撮影された画像を用いて前記容器内の前記複数のウェーハの位置を検査する解析装置と、
前記接触センサにおける判別結果に応じた状態で、前記メインカメラ、前記サブカメラ、または、前記検査装置に関する処理を行う処理部と、を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
前記容器は、前記第1の容器、または、互いに異なる位置に段差が形成された第2の上面部を有する複数種類の前記第2の容器であり、
前記処理部は、前記検査対象の容器が前記複数種類の第2の容器のうちいずれか1つである場合、前記第2の容器の種類に応じて前記サブカメラによる前記ウェーハ
の撮影位置・角度を変更する位置決め装置を備えることを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記解析装置は、前記メインカメラおよび前記サブカメラで撮影された画像を用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査する機能を有することを特徴とする請求項
8または請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記メインカメラおよび前記サブカメラを制御する装置制御部と、前記解析装置とにより構成され、
前記検査対象の容器が前記第1の容器の場合、前記装置制御部が、前記ウェーハを撮像するように前記メインカメラのみを制御した後、前記解析装置が、前記メインカメラによって撮影された画像のみを用いて前記第1の容器内の前記複数のウェーハの位置を検査し、
前記検査対象の容器が前記第2の容器の場合、前記装置制御部が、前記ウェーハを撮像するように前記メインカメラおよび前記サブカメラを制御した後、前記解析装置が、前記メインカメラおよび前記サブカメラによって撮影された画像を用いて前記第2の容器内の前記複数のウェーハの位置を検査することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の検査装置。
【請求項12】
前記解析装置は、
前記検査対象の容器が前記第1の容器の場合、前記メインカメラによって撮影された画像のみを用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査し、
前記検査対象の容器が前記第2の容器の場合、前記メインカメラおよび前記サブカメラによって撮影された画像を用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査することを特徴とする請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
前記容器は、前記複数のウェーハを各々の中心軸が水平となるように収納し、
前記サブカメラは、その光軸が前記複数のウェーハの主面に対して40°~80°傾斜するように配置されている請求項8から請求項12のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項14】
前記メインカメラは、赤外線カメラであり、
前記検査装置は、前記容器を通して前記メインカメラの反対側から前記メインカメラに向かって赤外線を照射する赤外照明を有することを特徴とする請求項
8から請求項
13のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に収納された複数のウェーハの検査を行う検査方法、シリコンウェーハの製造方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、シリコンウェーハなどのウェーハは、異物やパターン欠陥を検出する検査などを経て専用の出荷容器に収納される。この際、複数のウェーハは、整列された状態で出荷容器に収納される。
【0003】
次いで、ウェーハが収納された容器におけるウェーハの枚数確認やウェーハの位置ずれなどの最終的な検査が行われる。関連する技術として、特許文献1には、ウェーハが収納される前の容器の清浄度を検査することができる検査装置が記載されている。
【0004】
また、ウェーハの位置についてセンサを用いて自動的に検査を行う技術として、特許文献2には、距離センサなどを用いて、工場内の工程間の搬送容器に設けられている収納段に収納されているウェーハの位置ずれを検査することができる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-99691号公報
【文献】特開2001-210699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ウェーハを収納する容器は、出荷先によって異なる場合がある。容器の形状や容器を形成する材料は様々である。例えば、容器の一部に凹凸があると、一部のウェーハの位置ずれを検知できないなどの不具合が発生することがある。
これに対し、特許文献1に記載の検査装置は、様々な形状の容器の清浄は可能であるが、そもそも容器内の複数のウェーハの枚数確認や位置ずれを検査する機能を有していない。また、特許文献2に記載の検査装置は、出荷容器に収納されたウェーハを検査するものではなく、移動不可の収納室に収納されたウェーハを検査するものであり、様々な形状の容器に対応させることを意図したものではない。
【0007】
本発明は、容器の形状に依らず、容器内の複数のウェーハの位置を検査することができる検査方法、シリコンウェーハの製造方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の検査方法は、透明または半透明の材料によって形成された容器に、互いに平行に、かつ、各々の中心軸が一致するように等間隔に整列されて収納された複数のウェーハの検査方法であって、前記ウェーハの主面と平行な方向から前記容器を通して前記複数のウェーハ全体を撮影する第一撮影工程と、前記ウェーハの主面と平行な方向に対して傾斜した方向から前記容器を通して前記ウェーハを撮影する第二撮影工程と、を有し、前記第一撮影工程および前記第二撮影工程で撮影された画像を用いて前記容器内の前記複数のウェーハの位置を検査する検査工程と、を有することを特徴とする検査方法。
【0009】
上記検査方法において、前記検査工程では、前記第一撮影工程および前記第二撮影工程で撮影された画像を用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査してもよい。
【0010】
上記検査方法において、前記第一撮影工程において、赤外線カメラを用いて撮影を行うとともに、前記容器を通して前記赤外線カメラの反対側から前記赤外線カメラに向かって赤外線を照射してよい。
【0011】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記いずれの検査方法を用いて前記容器内の前記複数のウェーハを検査することを含む。
【0012】
本発明の検査装置は、透明または半透明の材料によって形成された容器に、互いに平行に、かつ、各々の中心軸が一致するように等間隔に整列されて収納された複数のウェーハの検査装置であって、前記ウェーハの主面と平行な方向から前記容器を通して前記複数のウェーハ全体を撮影するメインカメラと、前記ウェーハの主面と平行な方向に対して傾斜した方向から前記容器を通して前記ウェーハを撮影するサブカメラと、前記メインカメラおよび前記サブカメラによって撮影された画像を用いて前記容器内の前記複数のウェーハの位置を検査する解析装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記検査装置において、前記解析装置は、前記メインカメラおよび前記サブカメラで撮影された画像を用いて前記複数のウェーハの枚数をカウントするとともに、前記複数のウェーハの位置ずれを検査する機能を有してよい。
【0014】
上記検査装置において、前記メインカメラは、赤外線カメラであり、前記検査装置は、前記容器を通して前記メインカメラの反対側から前記メインカメラに向かって赤外線を照射する赤外照明を有してよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器の一部に凹凸があり、当該凹凸により複数のウェーハの一部がメインカメラによって撮影できない場合においても、メインカメラによって撮影できないウェーハをサブカメラにより撮影することによって、容器内の複数のウェーハの位置を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の第1の容器の分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の第2の容器の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態の第2の容器の蓋体の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の検査装置の断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の検査装置のシステム構成図である。
【
図6】ウェーハが収納された第2の容器の要部断面図であって、カメラとの位置関係を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態の検査方法について説明するフローチャートである。
【
図8】メインカメラによって撮影された画像の一例である。
【
図9】サブカメラによって撮影された画像の一例である。
【
図10】本発明の実施形態のシリコンウェーハの製造方法について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の検査装置は、例えばチョクラルスキー法を用いて製造されたシリコンウェーハなどのウェーハの出荷検査に係り、異物やパターン欠陥などの有無を検出する検査を終え、容器(出荷容器)に収納された複数のウェーハを検査する装置である。
各々のウェーハは、円盤状をなし、容器内に互いに平行に、かつ、各々の中心軸が一致するように等間隔に整列されて収納されている。
ここで、ウェーハは、シリコンウェーハに限ることはなく、ゲルマニウムウェーハなどのウェーハであってよい。すなわち、本発明の検査装置は、例えば円柱状のインゴットを薄くスライスした円盤状の板であるウェーハであれば、検査対象とすることができる。
【0018】
複数のウェーハを収納する容器は透明または半透明の材料によって形成されている。容器は、外側から複数のウェーハの外周縁が視認できるように形成されている。容器が外部からウェーハの外周縁が視認できるように形成されていることによって、検査装置によって、ウェーハの枚数および複数のウェーハの位置ずれ(隣り合うウェーハ同士の間隔の不一致)の検査を可能としている。
【0019】
ここで、容器の形状は、出荷先によって異なる場合がある。
例えば、一の容器は、半透明のプラスチックによって形成されている。容器が半透明のプラスチックによって形成されている場合は、収納されているウェーハの視認性が悪くなる。
他の容器は、上部に突起が形成されている場合もある。当該突起は、例えば、容器同士を上下方向に重ねた際に、容器同士の位置合わせに使用される。容器の上部に突起が形成されている場合は、突起により特定のウェーハの視認性が悪くなる。
【0020】
本発明の検査装置は、容器の材料、形状を問わず、容器に収納された複数のウェーハの位置の検査を可能としている。
【0021】
ここで、使用が想定される容器50のうち、異なる形態の二つの容器(第1の容器50A、第2の容器50B)について詳細に説明する。
まず、第1の容器50Aについて
図1を参照して説明する。
図1は、第1の容器50Aの分解斜視図である。
図1に示されるように、第1の容器50Aは、図示しない複数のウェーハを整列させて収納する整列スロット57が形成されているカセット56と、カセット56を収納する容器本体51と、容器本体51に対して着脱可能な蓋体53と、カセット56内のウェーハを保持して緩衝するウェーハ押さえ部58と、を有する。
容器本体51と蓋体53とは、半透明のプラスチックによって形成されている。半透明とは、例えば乳白色、シボ加工された形態、すりガラス状の形態であり、半透明のプラスチックの反対側にある物体は曇って見える。
【0022】
カセット56の整列スロット57に保持されることによって、収納された各々のウェーハは互いに平行に配置され、各々のウェーハの中心軸が一致し、各々のウェーハの中心軸が水平(容器50の底面と平行)となるように整列する。換言すれば、整列スロット57は、容器に収納された複数のウェーハが、互いに平行に、かつ、各々の中心軸が一致するように等間隔に整列するように形成されている。
【0023】
蓋体53は、容器本体51の上部を密閉する部材である。
蓋体53は、略四角形状をなす上面部54と、上面部54の縁部から突出する側面部55と、を有する。
蓋体53と容器本体51とは、蓋体53の側面部55と容器本体51の上部の周縁部とが係合するように形成されている。第1の容器50Aの上面部54は、平坦となるように形成されている。
【0024】
次に、第2の容器50Bについて
図2、
図3を参照して説明する。以下の説明においては、第1の容器50Aとの相違点について説明する。
図2は、第2の容器50Bの分解斜視図である。
第1の容器50Aにおいては、容器本体51と蓋体53とが半透明のプラスチックによって形成されているのに対し、第2の容器50Bにおいては、容器本体51Bと蓋体53Bとは、透明のプラスチックによって形成されている。
図2に示されるように、蓋体53Bの上面部54Bは、上面部54Bの上面に形成された2つの突起59を有している。各々の突起59は、収納されたウェーハと平行な方向(ウェーハの配列方向と直交する方向)に延び、互いに平行となるように、形成されている。
【0025】
図3に示されるように、上面部54Bと突起59とは一体に形成されている。突起59の断面形状は、台形状をなしている。
【0026】
第1の容器50Aおよび第2の容器50Bは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)その他各種エラストマーに代表される合成樹脂を、これらの樹脂材料を、それぞれの部材の所望の形状に射出成形することにより得ることができる。
なお、容器50の構成は、複数のウェーハを、互いに平行に、かつ、各々の中心軸が一致するように等間隔に整列することができれば、上記した構成に限ることはなく、適宜変更することができる。
【0027】
次に、検査装置1について説明する。
図4に示すように、検査装置1は、筐体2と、容器50を搬送する容器搬送装置3と、容器50を撮影する撮影装置4と、制御装置5と、を備えている。
検査装置1は、容器50を自動的に筐体2内に取り込み、カメラ12,13(撮影装置4)を用いて容器50内の複数のウェーハWを撮影し、撮影で得られた画像を解析することによって、ウェーハWの位置を検査する機能を有する。
【0028】
筐体2は、フレーム7と、フレーム7の周囲を覆うカバー8から構成され、検査装置1を構成する撮影装置4、制御装置5などを収容する。筐体2は、箱型をなし、その全体を覆うカバー8によって筐体2の内部は暗室となっている。筐体2は、複数のウェーハWが収納された容器50を筐体2の内部に搬送するための開口部9を有している。
【0029】
容器搬送装置3は、筐体2の外部の載置位置P0に載置された容器50を筐体2の内部に搬送させたり、筐体2の内部で撮影を終えた容器50を筐体2の外部に搬送させたりする装置である。
容器搬送装置3は、筐体2の開口部9を介して容器50を筐体2の内外に搬送するベルトコンベア10と、筐体2の開口部9を開閉するシャッター11と、を有している。シャッター11が閉状態となることによって、筐体2の内部を暗室とすることができる。
ベルトコンベア10は、複数本のベルトを有している。複数本のベルトは、
図4の紙面と直交する方向に互いに所定の間隔を介して離間している。
【0030】
容器搬送装置3は、容器50を載置位置P0と、第1の撮影位置P1と、第2の撮影位置P2との間で移動させることができる。載置位置P0は、筐体2の外部であり、作業者が検査対象の容器50を載置する位置である。
第1の撮影位置P1および第2の撮影位置P2は、筐体の内部である。容器搬送装置3は、制御装置5と電気的に接続されている。
【0031】
撮影装置4は、筐体2の内部に移動された容器50(複数のウェーハW)を撮影する装置である。
撮影装置4は、第1の撮影位置P1に配置された容器50を撮影するメインカメラ12と、第2の撮影位置P2に配置された容器50を撮影するサブカメラ13と、容器50を介してメインカメラ12の反対側からメインカメラ12に向かって赤外線を照射する赤外照明14と、を有する。赤外照明14から照射される赤外線の波長は、容器50を透過する波長である約700nmから1mmとすることが好ましい。
【0032】
メインカメラ12およびサブカメラ13は、赤外線センサを使用したデジタルカメラである。すなわち、メインカメラ12およびサブカメラ13は、赤外線を受光し電気信号に変換する機能を有する。
【0033】
メインカメラ12は、上方から容器50内の複数のウェーハW全体を撮影するカメラである。メインカメラ12は、容器50の蓋体53を通して複数のウェーハWを撮影する。メインカメラ12は、ウェーハWの主面と平行な方向から複数のウェーハW全体を撮影する。メインカメラ12と容器50との距離は、メインカメラ12によって容器50の全体が撮影できる距離に設定されている。メインカメラ12によって撮影された画像は、制御装置5に送信される。
【0034】
赤外照明14は、メインカメラ12の下方、かつ、ベルトコンベア10の下方から第1の撮影位置P1に配置された容器50に対して、赤外線を照射する照明である。赤外線は、ベルトコンベア10を構成する複数のベルト間を通過し、容器50を介してメインカメラ12に達する。
【0035】
サブカメラ13は、メインカメラ12とは異なる方向から容器50内のウェーハWを容器50を通して撮影し、メインカメラ12では、撮影に支障がある特定のウェーハWs(
図6参照)を撮影するカメラである。サブカメラ13は、ウェーハWの主面と平行な方向に対して傾斜した方向からウェーハWを撮影する。
具体的には、サブカメラ13は、突起59直下の特定のウェーハWsを撮影するために、光軸が鉛直線に対して好ましくは40°~80°傾斜しており、さらに好ましくは50°~70°傾斜している。
【0036】
検査装置1は、容器50を判別するための複数の接触センサ(図示せず)を有する。接触センサは、載置位置P0に設けられている。
【0037】
次に、検査装置1の制御装置5について説明する。
図5に示されるように、制御装置5は、容器搬送装置3や撮影装置4を制御する装置制御部16と、撮影された画像を解析する解析部17と、を有する。
【0038】
装置制御部16は、撮影装置4を構成するカメラ12,13、赤外照明14、および容器搬送装置3を構成するベルトコンベア10、シャッター11と電気的に接続され、これらを制御する装置である。
【0039】
解析部17は、解析処理を行う解析処理部18(解析装置)と、解析処理部18によって得られた結果を出力する出力部19(ディスプレイ)と、を有する。装置制御部16と解析処理部18とは、電気的に接続されており、カメラ12,13によって撮影された画像などが装置制御部16から解析処理部18に送信され、容器50の種類などの検査条件が解析処理部18から装置制御部16に送信される。
【0040】
解析処理部18は、接触センサのON/OFFなどに基づいて容器50の種類を判別する機能を有する。
解析処理部18は、画像処理プログラムに従ってカメラ12,13によって撮影された画像を解析処理する。画像処理プログラムは、撮影された画像からウェーハWの枚数をカウントする機能を有する。
具体的には、画像処理プログラムは、容器50に付されたラベルからロット情報を取得し、ロット情報に基づくウェーハWの枚数と、撮影された画像からカウントされたウェーハWの枚数とが一致しているか否かを判断する。
ロット情報は、記憶装置に記憶されていてもよいし、コンピュータネットワーク網を介して入手できる形でもよい。
また、画像処理プログラムは、撮影された画像からウェーハWの位置ずれを検査する機能を有する。
【0041】
また、画像処理プログラムは、サブカメラ13によって撮影された画像に基づいて、特定のウェーハWsと、特定のウェーハWsと隣り合うウェーハとの間隔に問題がないか判断する機能を有する。
【0042】
次に、サブカメラ13の配置設定について説明する。
図6は、ウェーハWが収納された第2の容器50Bの要部断面図であって、カメラ12,13との位置関係を説明する図である。
図6に示されるように、第2の容器50Bを使用する場合、すなわち、蓋体53に突起59(段差)ある容器を使用する場合、メインカメラ12によって上方から撮影する際に、特定のウェーハWsが突起59によって映りにくくなる。
【0043】
サブカメラ13は、このようにメインカメラ12によって撮影する際に支障があるウェーハを撮影するためのカメラであり、突起59の存在により明瞭に撮影できない特定のウェーハWsの位置に基づいて配置が設定される。作業者は、サブカメラ13を特定のウェーハWsおよび特定のウェーハWsに隣り合う前後のウェーハWを撮影可能な位置に配置する。突起59に邪魔されるウェーハWが複数ある場合、対応する数のサブカメラ13を設置する。
【0044】
サブカメラ13の位置や角度は変更することができる。これにより、ウェーハWが突起59の位置が異なる容器50に収容されることにより、撮影した画像中でウェーハWと突起59とが干渉する場合においても、サブカメラ13の位置・角度を変更して対応することができる。すなわち、サブカメラ13によって撮影される特定のウェーハWsは、必要に応じて変更することができる。
サブカメラ13の位置を決めやすくするために、容器50とサブカメラ13の位置・角度の相関表を、検査装置1の内部に表示してもよい。この相関表を後述する表示部に表示させてもよい。また、位置決め装置を併設して、容易にサブカメラ13の位置・角度を変更できるようにしてもよい。
【0045】
次に、本実施形態の検査装置による検査方法について説明する。
図7に示されるように、本実施形態の検査方法は、容器50内のウェーハWの位置を検査する方法であり、容器判別工程S81と、第一撮影工程S82と、第二撮影工程S83と、解析工程S84と、表示工程S85と、判定工程S86と、確認工程S87と、を有する。
【0046】
容器判別工程S81は、接触センサのON/OFFに基づいて容器50の種類を判別する工程である。容器判別工程S81では、解析処理部18が接触センサのON/OFFを取得し、この情報に基づき、容器50が第1の容器50Aか第2の容器50Bかを判別する。
本実施形態では、接触センサを用いて容器50の判別を行うが、カメラによって撮影された画像を判別材料に加えてもよいし、カメラによって撮影された画像のみによって容器50の種類を判別してもよい。
【0047】
第一撮影工程S82は、ウェーハWの主面と平行な方向から容器50を通して容器50に収納された複数のウェーハW全体を撮影する工程である。
第一撮影工程S82では、装置制御部16は、容器50が第1の撮影位置P1に移動するように、容器搬送装置3を制御し、複数のウェーハW全体が撮影されるようにメインカメラ12および赤外照明14を制御する。
【0048】
第二撮影工程S83は、ウェーハWの主面と平行な方向に対して傾斜した方向から容器50を通して特定のウェーハWsを撮影する工程である。
第二撮影工程S83では、装置制御部16は、容器50が第2の撮影位置P2に移動するように、容器搬送装置3を制御し、特定のウェーハWsが撮影されるように、サブカメラ13を制御する。
なお、容器判別工程S81において、容器50が第1の容器50Aであると判別された場合、容器に突起がないため、サブカメラ13による撮影を省略することができる。
【0049】
解析工程S84では、解析処理部18は、カメラ12,13によって撮影された画像に基づいてウェーハWの枚数をカウントするとともに、ウェーハWの位置ずれを検査する。
容器が第2の容器50Bである場合、メインカメラ12によって撮影された画像は
図8のような画像となり、サブカメラ13によって撮影された画像は
図9のような画像となる。
図8および
図9に示されるように、カメラ12,13によって撮影された画像では、ウェーハWの周縁部が画像処理に適した直線状に表示される。
【0050】
図8に示されるように、一部のウェーハW(特定のウェーハWs)は、突起59により不鮮明となるため、解析処理部18は、メインカメラ12の画像から、特定のウェーハWs以外のウェーハWの枚数をカウントするとともに、特定のウェーハWs以外のウェーハWの位置ずれの有無を検査する。
図8に示す画像では、カウントされたウェーハWに番号が付されている。また、画像に基づいて、9の番号が付されたウェーハWに位置ずれが生じていると判断する。
【0051】
次いで、解析処理部18は、サブカメラ13によって撮影された画像に基づいて、特定のウェーハWsの枚数をカウントするとともに、特定のウェーハWsの位置ずれを確認する。
図9に示す画像では、特定のウェーハWsがカウントされ、特定のウェーハWsの前後のウェーハWとの関係から、位置ずれがないと判断する。
【0052】
表示工程S85では、制御装置5は、カウントされたウェーハWの枚数およびウェーハWの位置ずれの有無を出力部19に表示する。
図8、
図9に示した例では、出力部19には、ウェーハWの枚数と、仮に位置ずれが生じている場合は、その旨が表示される。
判定工程S86では、作業者は、表示された情報に基づいて、ウェーハWの位置ずれが無いか否かを判定する。ウェーハWに問題がない場合は、検査を終了する。
ウェーハWの位置ずれが生じている場合は、確認工程S87として、作業者は、容器50を開けてウェーハWに傷などがないかウェーハWの表面の状態を確認する。この際、傷などがなければ、位置ずれを修正した上で容器50に収納し直し、再度容器50内のウェーハWを検査する。検査後、位置ずれなどの問題がなければ、検査を終了する。
【0053】
次に、本実施形態の検査方法を含むシリコンウェーハの製造方法について説明する。
シリコンウェーハの製造方法は、チョクラルスキー法を用いてシリコンウェーハを製造し、上記検査方法で容器50内の複数のウェーハWの位置を検査した後、出荷までを行う方法である。
【0054】
図10に示されるように、シリコンウェーハの製造方法は、引き上げ工程S1と、ブロック加工工程S2と、スライス工程S3と、研磨工程S4と、洗浄工程S5と、ウェーハ最終検査工程S6と、容器収納工程S7と、容器内ウェーハ検査工程S8と、包装工程S9と、梱包・出荷工程S10と、を有する。
【0055】
引き上げ工程S1は、チョクラルスキー法を用いてシリコン融液からシリコン単結晶を引き上げる工程である。これにより、円柱状の単結晶インゴットが得られる。
ブロック加工工程S2は、単結晶インゴットをブロックに加工する工程である。ブロック加工工程S2では、単結晶インゴットの外周研削を行い、結晶方位に応じてノッチ加工を行った後、例えばバンドソーにより、単結晶インゴットを複数のブロックに切断する。
【0056】
スライス工程S3では、内周刃切断機やワイヤーソーにより、ブロックが例えば厚さ1mm程度の複数のシリコンウェーハにスライスされる。
研磨工程S4では、ウェーハ両面が平行になるように、例えばアルミナ研磨材などで粗研磨(ラッピング)を行い、必要に応じてエッチングなどを施した後、ウェーハ表面の凹凸をなくし、平坦度の高い鏡面仕上げを行うため、例えばコロイダルシリカ液などを用いて研磨(ポリッシング)を行う。
洗浄工程S5では、各々のシリコンウェーハに対して、例えばアルカリ性溶液などによる洗浄が行われる。
【0057】
ウェーハ最終検査工程S6は、ウェーハ表面検査装置などを用いて、シリコンウェーハ上に存在する表面パーティクルや、傷などを検査する工程である。
容器収納工程S7は、ウェーハ最終検査工程S6にて良品とされたウェーハを選別し、容器にウェーハを収納する工程である。ウェーハは、装置により自動的に収納されてもよいし、手動で収納されてもよい。また、この際、容器には、ウェーハ識別用にロット情報などが記載されたラベルが貼り付けられる。容器収納工程S7では、最終的に、容器50が蓋体53によって閉じられる。
【0058】
次いで、容器内ウェーハ検査工程S8として、上記した容器50内のウェーハWの位置を検査する方法を行う。容器内ウェーハ検査工程S8は、容器収納工程S7の後に行われる。容器内ウェーハ検査工程S8は、蓋体53が開けられることなく行われるため、容器50内の清浄度を保つことができる。
包装工程S9は、出荷容器を包装する工程である。包装工程S9では、容器50を例えば透明プラスチックフィルムによる包装と、アルミニウムを含有する不透明なフィルムとの二重包装とすることが好ましい。
梱包・出荷工程S10は、包装された容器を段ボールなどの梱包材に収納し、出荷する工程である。
【0059】
上記実施形態によれば、容器50の一部に突起59(凹凸)があり、突起59により複数のウェーハWの一部がメインカメラ12によって撮影できない場合においても、メインカメラ12によって撮影できない特定のウェーハWsをサブカメラ13により撮影することによって、複数のウェーハWの枚数をカウントするとともに、複数のウェーハWの位置ずれを検知することができる。
【0060】
また、メインカメラ12は、赤外線カメラであり、メインカメラ12に向かって赤外線を照射する赤外照明14を設けたことによって、容器50を形成する材料が半透明の材料によって形成されている場合においても、得られる画像の検査精度を向上させることができる。
すなわち、メインカメラとして容器50を透過する波長である赤外線カメラを用いることによって、容器50がウェーハWを視認される様に形成されていない場合であっても、ウェーハWの検査を行うことができる。
【0061】
なお、上記説明では、容器50として2種類の容器50A,50Bを挙げているが、これに限らず、より多くの容器の種類に対応させてもよい。
また、例えば、下方から撮影するカメラを追加するなどして、検査精度を高めてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…検査装置、2…筐体、3…容器搬送装置、4…撮影装置、5…制御装置、7…フレーム、8…カバー、9…開口部、10…ベルトコンベア、11…シャッター、12…メインカメラ、13…サブカメラ、14…赤外照明、16…装置制御部、17…解析部、18…解析処理部、19…出力部、50…容器、50A…第1の容器、50B…第2の容器、51…容器本体、53…蓋体、54…上面部、54B…上面部、55…側面部、57…整列スロット、58…ウェーハ押さえ部、59…突起、P0…載置位置、P1…第1の撮影位置、P2…第2の撮影位置、W…ウェーハ、Ws…ウェーハ。