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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】活性エステル組成物及び半導体封止材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20230511BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20230511BHJP
   C07C 69/80 20060101ALI20230511BHJP
   C07D 265/16 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 5/50 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08G59/40
C07C69/80 B
C07C69/80 A
C07D265/16
C08K5/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019526744
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2018021498
(87)【国際公開番号】W WO2019003820
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2017126263
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】河崎 顕人
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103965624(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244471(US,A1)
【文献】特開2014-148562(JP,A)
【文献】特表2016-536403(JP,A)
【文献】国際公開第2009/038166(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105348743(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106433124(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106700548(CN,A)
【文献】特開2003-082063(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132936(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104317(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/80
C07D 265/16
C08L 67/03
C08K 5/357
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エステル化合物(A)とベンゾオキサジン化合物(B)とを必須の成分とする活性エステル組成物と、硬化剤と、硬化促進剤とを含有する硬化性組成物であって、
前記活性エステル化合物(A)が、分子構造中に芳香族ポリエステル構造を有し、リン含有活性エステル化合物を含まないものであり、
前記活性エステル化合物(A)の150℃における溶融粘度が、0.01~50dPa・sであり、
前記硬化剤が、エポキシ樹脂であり、
前記硬化促進剤がトリフェニルホスフィンである硬化性組成物。
【請求項2】
前記活性エステル化合物(A)が、分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物である活性エステル化合物(A1)、又は、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)と芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)とのエステル化物である活性エステル化合物(A2)、又は、分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)及び分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)のエステル化物(A3)である請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記活性エステル化合物(A)100質量部に対し、前記ベンゾオキサジン化合物(B)を0.1~500質量部の範囲で含有する請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いてなる半導体封止材料。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組成物を用いてなるプリント配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性が高く、かつ、硬化物における誘電特性や耐熱性等の諸性能に優れる活性エステル組成物、その硬化物、前記組成物を用いてなる半導体封止材料及びプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や多層プリント基板等に用いられる絶縁材料の技術分野では、各種電子部材の薄型化や小型化に伴い、これらの市場動向に合わせた新たな樹脂材料の開発が求められている。例えば、信号の高速化及び高周波数化に対応して、発熱エネルギー損失を一層低減するために、硬化物における誘電率及び誘電正接が共に低いことが求められる。また、半導体の薄型化が進むに連れて部材の反りや歪みによる信頼性低下が生じやすくなるが、これを抑えるために硬化収縮率や線膨張係数が低いことも重要である。
【0003】
硬化物における誘電率や誘電正接の低い樹脂材料として、ジ(α-ナフチル)イソフタレートをエポキシ樹脂の硬化剤として用いる技術が知られている(下記特許文献1参照)。特許文献1に記載されたエポキシ樹脂組成物は、ジ(α-ナフチル)イソフタレートをエポキシ樹脂硬化剤として用いることにより、フェノールノボラック樹脂のような従来型のエポキシ樹脂硬化剤を用いた場合と比較して硬化物における誘電率や誘電正接の値は確かに低いものの、硬化性が低く、高温かつ長時間での硬化が必要であったため、工業的な利用に際して生産性の低下やエネルギーコストの面で課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-82063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、硬化性が高く、かつ、硬化物における誘電特性や耐熱性等の諸性能に優れる活性エステル組成物、その硬化物、前記組成物を用いてなる半導体封止材料及びプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、活性エステル化物と、ベンゾオキサジン化合物とを含有する組成物は、硬化性が高く、かつ、硬化物における誘電特性や耐熱性等の諸性能に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、活性エステル化合物(A)とベンゾオキサジン化合物(B)とを必須の成分とする活性エステル組成物に関する。
【0008】
本発明は更に、前記活性エステル組成物と硬化剤とを含有する硬化性組成物に関する。
【0009】
本発明は更に、前記硬化性組成物の硬化物に関する。
【0010】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いてなる半導体封止材料に関する。
【0011】
本発明は更に、前記硬化性組成物を用いてなるプリント配線基板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、硬化性が高く、かつ、硬化物における誘電特性や耐熱性等の諸性能に優れる活性エステル組成物、その硬化物、前記組成物を用いてなる半導体封止材料及びプリント配線基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の活性エステル組成物は、活性エステル化合物(A)と、ベンゾオキサジン化合物(B)とを必須の成分とすることを特徴とする。
【0014】
前記活性エステル化合物(A)は、分子構造中に芳香族ポリエステル構造を有する化合物であれば、その具体構造は問われない。また、その分子量も特に制限がなく、単分子量の化合物であってもよいし、分子量分布を有するオリゴマー或いはポリマーであってもよい。活性エステル化合物(A)の具体例としては以下(A1)~(A4)のようなものが挙げられる。なお、これらはあくまでも活性エステル化合物(A)の一例であって、本発明の活性エステル化合物(A)はこれに限定されるものではない。また、活性エステル化合物(A)は一種類を単独で用いてもよいし、2種類上を併用してもよい。
・活性エステル化合物(A1):分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)と芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)とのエステル化物
・活性エステル化合物(A2):分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)と芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)とのエステル化物
・活性エステル化合物(A3):分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)、芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)及び分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)のエステル化物
・活性エステル化合物(A4):芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)及び芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)のエステル化物
【0015】
前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)の具体例としては、フェノール或いはフェノールの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有するフェノール化合物、ナフトール或いはナフトールの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有するナフトール化合物、アントラセノール或いはアントラセノールの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有するアントラセノール化合物等が挙げられる。芳香核上の置換基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、アリルオキシ基、プロパルギル基、プロパルギルオキシ基等の不飽和基含有構造部位;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、不飽和基含有構造部位、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、不飽和基含有構造部位、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0016】
これらの中でも、誘電特性や耐熱性等の諸性能に優れる硬化物が得られることから、フェノール化合物又はナフトール化合物が好ましく、フェノール、ナフトール或いはこれらの芳香核上に脂肪族炭化水素基又はアリール基を1つ又は2つ有する化合物がより好ましい。
【0017】
前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)は、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸、トリメリット酸等のベンゼントリカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,3-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸、これらの酸ハロゲン化物、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基や前記アルコキシ基、前記不飽和基含有構造部位、前記ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。酸ハロゲン化物は、例えば、酸塩化物、酸臭化物、酸フッ化物、酸ヨウ化物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、誘電特性や耐熱性等の諸性能に優れる硬化物が得られることから、イソフタル酸やテレフタル酸等のベンゼンジカルボン酸又はその酸ハロゲン化物が好ましい。
【0018】
前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)は、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ビフェノール、ビスフェノール及びこれらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物の他、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)の一種乃至複数種を反応原料とするノボラック型樹脂や、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)の一種乃至複数種と下記構造式(x-1)~(x-5)
【0019】
【化1】
[式中hは0又は1である。Rはそれぞれ独立してアルキル基、アルコキシ基、不飽和基含有構造部位、ハロゲン原子、アリール基、アラルキル基の何れかであり、iは0又は1~4の整数である。Zはビニル基、ハロメチル基、ヒドロキシメチル基、アルキルオキシメチル基の何れかである。Yは炭素原子数1~4のアルキレン基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基の何れかである。jは1~4の整数である。]
の何れかで表される化合物(x)とを必須の反応原料とする反応生成物等が挙げられる。
【0020】
前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、誘電特性や耐熱性等の諸性能に優れる硬化物が得られることから、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)の一種乃至複数種と前記構造式(x-1)~(x-4)のいずれかで表される化合物(x)とを必須の反応原料とする反応生成物が好ましい。なお、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)と前記化合物(x)との反応は、酸触媒条件下、80~180℃程度の温度条件下で加熱撹拌する方法により行うことができる。
【0021】
前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)は、例えば、安息香酸やハロゲン化ベンゾイル、これらの芳香核上に前記アルキル基や前記アルコキシ基、前記不飽和基含有構造部位、前記ハロゲン原子等が置換した化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0022】
前記活性エステル化合物(A)は、例えば、アルカリ触媒の存在下、40~65℃程度の温度条件下で各反応原料を混合撹拌する方法により製造することができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0023】
前記アルカリ触媒は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。また、3.0~30%程度の水溶液として用いても良い。中でも、触媒能の高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
【0024】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0025】
各反応原料の反応割合は得られる活性エステル化合物(A)の所望の物性等に応じて適宜調整されるが、特に好ましくは以下の通りである。
【0026】
前記活性エステル化合物(A1)の製造において、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)と前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)との反応割合は、目的の活性エステル化合物(A1)を高収率で得られることから、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)が0.95~1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0027】
前記活性エステル化合物(A2)の製造において、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)と前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)とのエステル化物との反応割合は、目的の活性エステル化合物(A2)を高収率で得られることから、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)が有するフェノール性水酸基の合計1モルに対し、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)が0.95~1.05モルとなる割合であることが好ましい。
【0028】
前記活性エステル化合物(A3)の製造において、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)及び前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)の反応割合は、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)が有する水酸基のモル数と前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)が有する水酸基のモル数との割合が95/5~25/75となる割合であることが好ましく、90/10~70/30となる割合であることがより好ましい。また、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)と前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)とが有する水酸基の合計が0.95~1.05モルの範囲であることが好ましい。また、活性エステル化合物(A3)の製造において各成分の反応割合を適宜調整し、前記活性エステル化合物(A1)と(A3)との混合物として製造してもよい。
【0029】
前記活性エステル化合物(A4)の製造において、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)及び前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)の反応割合は、前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計と、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計との割合が95/5~25/75となる割合であることが好ましく、90/10~70/30となる割合であることがより好ましい。また、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)が有する水酸基1モルに対し、前記芳香族ポリカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a2)と前記芳香族モノカルボン酸又はその酸ハロゲン化物(a4)とが有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計が0.95~1.05の範囲であることが好ましい。また、活性エステル化合物(A4)の製造において各成分の反応割合を適宜調整し、前記活性エステル化合物(A2)と(A4)との混合物として製造してもよい。
【0030】
前記活性エステル化合物(A1)及び(A2)は、150℃における溶融粘度が0.01~5dPa・sの範囲であることが好ましい。なお、本発明において150℃における溶融粘度はASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した値である。
【0031】
前記活性エステル化合物(A3)及び(A4)は、JIS K7234に基づいて測定される軟化点が80~180℃の範囲であることが好ましく、85~160℃の範囲であることがより好ましい。
【0032】
また、前記活性エステル化合物(A)を複数種混合して用いる場合には、活性エステル化合物(A)全体としての150℃における溶融粘度が0.01~50dPa・sの範囲であることが好ましく、0.01~10dPa・sの範囲であることがより好ましい。150℃における溶融粘度はASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した値である。
【0033】
前記活エステル化合物(A1)~(A4)の中でも、硬化物における誘電特性や耐熱性に特に優れ、かつ、溶融粘度も低いことから、前記活性エステル化合物(A1)又は(A2)が好ましく、活性エステル化合物(A1)が特に好ましい。特に、活性エステル化合物(A)中の前記活性エステル化合物(A1)又は(A2)の割合が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが特に好ましい。なお、本発明において活性エステル化合物(A)中の前記活性エステル化合物(A1)及び(A2)の割合は下記条件で測定されるGPCチャート図の面積比から算出される値である。
【0034】
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8320」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0035】
前記ベンゾオキサジン化合物(B)は、分子構造中にベンゾオキサジン環構造を一つ乃至複数有する化合物であれば、その具体構造や分子量等は特に限定されず、多種多様な化合物を用いることができる。前記ベンゾオキサジン化合物(B)としては、例えば、芳香族アミン化合物(b1)、フェノール性水酸基含有化合物(b2)及びホルムアルデヒドを必須の反応原料とする反応生成物等が挙げられる。
【0036】
前記芳香族アミン化合物(b1)は、フェニルアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルアルカン、ジアミノジフェニルスルホン、これらの芳香核上に一つ乃至複数の置換基を有する化合物等が挙げられる。芳香核上の置換基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、アリルオキシ基、プロパルギル基、プロパルギルオキシ基等の不飽和基含有構造部位;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、不飽和基含有構造部位、ハロゲン原子等が置換したアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、及びこれらの芳香核上に前記アルキル基やアルコキシ基、不飽和基含有構造部位、ハロゲン原子等が置換したアラルキル基等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化性が高く、粘度と耐熱性とのバランスに優れる活性エステル組成物となることからフェニルアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、又はこれらの芳香核上に前記不飽和基含有構造部位を一つ乃至複数有する化合物が好ましい。
【0037】
前記フェノール性水酸基含有化合物(b2)は、例えば、前記分子構造中にフェノール性水酸基を一つ有する化合物(a1)や前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)として例示したもの等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化性が高く、粘度と耐熱性とのバランスに優れる活性エステル組成物となることからフェノール、ナフトール、又はこれらの芳香核上に前記不飽和基含有構造部位を一つ乃至複数有する化合物が好ましい。
【0038】
前記ベンゾオキサジン化合物(B)は、例えば、50~100℃程度の温度条件下で反応原料を混合撹拌する方法により製造することができる。反応は必要に応じて有機溶媒中で行っても良い。また、反応終了後は水洗や再沈殿等により反応生成物を精製しても良い。
【0039】
前記有機溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶媒、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上の混合溶媒としても良い。
【0040】
前記芳香族アミン化合物(b1)、前記フェノール性水酸基含有化合物(b2)及びホルムアルデヒドの反応割合は、得られるベンゾオキサジン化合物(B)の所望の物性等に応じて適宜調整されるが、特に好ましくは次の通りである。前記芳香族アミン化合物(b1)中のアミノ基1モルに対する前記フェノール性水酸基含有化合物(b2)中の水酸基のモル数が0.95~1.05の範囲であることが好ましい。また、前記芳香族アミン化合物(b2)中のアミノ基と前記フェノール性水酸基含有化合物(b2)中の水酸基との合計に対し、ホルムアルデヒドを1.95~2.05モルの範囲で用いることが好ましい。
【0041】
本発明の活性エステル組成物において、前記活性エステル化合物(A)と前記ベンゾオキサジン化合物(B)との配合割合は、所望の硬化性や硬化物の物性に応じて適宜調整されるが、特に、硬化性と硬化物物性とのバランスに優れることから、前記活性エステル化合物(A)100質量部に対し、前記ベンゾオキサジン化合物(B)を0.1~500質量部の範囲で含有することが好ましく、10~400質量部の範囲で含有することがより好ましく、10~90質量部の範囲で含有することが特に好ましい。
【0042】
本発明の硬化性組成物は、前記活性エステル組成物と硬化剤とを含有する。前記硬化剤は本発明の活性エステル組成物と反応し得る化合物であれば良く、特に限定なく様々な化合物が利用できる。硬化剤の一例としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。前記エポキシ樹脂は、例えば、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化性組成物において活性エステル組成物と硬化剤との配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。硬化剤としてエポキシ樹脂を用いる場合の配合の一例としては、エポキシ樹脂中のエポキシ基の合計1モルに対して、前記活性エステル組成物中の官能基の合計が0.7~1.5モルとなる割合であることが好ましい。なお、本発明において活性エステル組成物中の官能基とは、活性エステル組成物中のエステル結合部位とベンゾオキサジン環構造とのことを言う。また、活性エステル組成物の官能基当量は、反応原料の仕込み量から算出される値である。
【0044】
本発明の硬化性組成物は、更に硬化促進剤を含有しても良い。前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール化合物、ピリジン化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性、誘電特性、耐吸湿性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、ピリジン化合物では4-ジメチルアミノピリジン、2-フェニルイミダゾールが好ましい。これら硬化促進剤の添加量は、硬化性組成物100質量部中0.01~15質量%の範囲であることが好ましい。
【0045】
本発明の硬化性組成物は、更にその他の樹脂成分を含有しても良い。その他の樹脂成分は、例えば、前記分子構造中にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物(a3)等のフェノール性水酸基含有化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物;ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等のアミド化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の酸無水物;シアン酸エステル樹脂;ビスマレイミド樹脂;スチレン-無水マレイン酸樹脂;ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレートに代表されるアリル基含有樹脂;ポリリン酸エステルやリン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0046】
これらその他の樹脂成分の配合割合は特に限定なく、所望の硬化物性能等に応じて適宜調整することができる。配合割合の一例としては、本発明の硬化性組成物中1~50質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0047】
本発明の硬化性組成物は必要に応じて難燃剤、無機質充填材、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の各種添加剤を含有しても良い。
【0048】
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10―(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
【0049】
前記無機質充填材は、例えば、本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機質充填材は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機質充填材をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性組成物100質量部中、0.5~95質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0050】
この他、本発明の硬化性組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0051】
本発明の活性エステル組成物及びこれを用いた硬化性組成物は、硬化性が高く、誘電特性や耐熱性等の硬化物諸物性に優れる特徴を有する。この他、汎用有機溶剤への溶解性や保存安定性等、樹脂材料に求められる一般的な要求性能も十分に高いものである。したがって、半導体封止材料やプリント配線基板、レジスト材料等の電子材料用途の他、塗料や接着剤、成型品等の用途にも広く利用することができる。
【0052】
本発明の硬化性組成物を半導体封止材料用途に用いる場合、一般には無機質充填材を配合することが好ましい。半導体封止材料は、例えば、押出機、ニーダー、ロール等を用いて配合物を混合して調製することができる。得られた半導体封止材料を用いて半導体パッケージを成型する方法は、例えば、該半導体封止材料を注型或いはトランスファー成形機、射出成型機などを用いて成形し、更に50~200℃の温度条件下で2~10時間加熱する方法が挙げられ、このような方法により、成形物である半導体装置を得ることが出来る。
【0053】
本発明の硬化性組成物をプリント配線基板用途やビルドアップ接着フィルム用途に用いる場合、一般には有機溶剤を配合して希釈して用いることが好ましい。前記有機溶剤は、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。有機溶剤の種類や配合量は硬化性組成物の使用環境に応じて適宜調整できるが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、不揮発分が40~80質量%となる割合で使用することが好ましい。ビルドアップ接着フィルム用途では、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、不揮発分が30~60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0054】
また、本発明の硬化性組成物を用いてプリント配線基板を製造する方法は、例えば、硬化性組成物を補強基材に含浸し硬化させてプリプレグを得、これと銅箔とを重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。前記補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。硬化性組成物の含浸量は特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
【実施例
【0055】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。実施例中の「部」及び「%」の記載は、特に断わりのない限り質量基準である。
【0056】
本実施例において、活性エステル化合物(A)の溶融粘度は、ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定した150℃における値である。
【0057】
実施例において、活性エステル組成物(A-2)の原料フェノール化合物の数平均分子量(Mn)は下記条件のGPCにて測定した。また、活性エステル組成物(A-2)中の各成分の割合は下記条件で測定したGPCチャート図の面積比から算出した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC-8320」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)
【0058】
製造例1 活性エステル化合物(A-1)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202g、トルエン1250gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、1-ナフトール288gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.6gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル化合物(A-1)を得た。活性エステル化合物(A-1)の溶融粘度は0.6dPa・sであった。
【0059】
製造例2 活性エステル(A-2)の製造
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、攪拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド202g、トルエン1250gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。次いで、1-ナフトール247gとジシクロペンタジエン付加型フェノール化合物(下記構造式で表され、数平均分子量(Mn)から算出されるtの平均値が0.2であるもの、水酸基当量166.6g/当量)47gを仕込み、系内を減圧窒素置換しながら溶解させた。テトラブチルアンモニウムブロマイド0.6gを加え、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌を続けて反応させた。反応終了後、反応混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。残った有機層に水を加えて約15分間攪拌混合した後、混合物を静置して分液し、水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した後、デカンタ脱水で水分とトルエンを除去し、活性エステル(A-2)を得た。活性エステル(A-2)の溶融粘度は2.5dPa・sであった。また、活性エステル(A-2)中の活性エステル化合物(A1)に相当する成分の含有量はGPCチャート図の面積比から算出される値で73%であった。
【0060】
【化2】
(式中nは0又は1であり、tは0又は1以上の整数である。)
【0061】
製造例3 ベンゾオキサジン化合物(B-1)の製造
滴下ロート、温度計、攪拌装置、加熱装置、冷却還流管を取り付けた4つ口フラスコに窒素ガスを流しながら、4-プロパルギルオキシアニリン147.2g、4-プロパルギルオキシフェノール148.2gを仕込み、トルエン750gに溶解させた。94%パラホルムアルデヒド63.9gを加え、攪拌しながら80℃まで加熱し、80℃で7時間撹拌した。反応混合物を分液ロートに移して水層を除去した。そ有機層から溶媒を加熱減圧条件下で除去し、ベンゾオキサジン化合物(B-1)239gを得た。ベンゾオキサジン化合物(B-1)の溶融粘度は0.1dPa・sであった。
【0062】
この他、本願実施例及び比較例で用いた各化合物は以下の通り。
・ベンゾオキサジン化合物(B-2):四国化成工業株式会社製「ベンゾオキサジン P-d型」、下記構造式(B-2)で表される化合物
・エポキシ樹脂:DIC株式会社製「N-665-EXP-S」、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基当量202g/当量
【0063】
【化3】
【0064】
実施例1~5及び比較例1、2
下記表1に示す割合で各成分を配合し、硬化性組成物を得た。得られた硬化性組成物について、下記要領で各評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0065】
ICI粘度の測定
トリフェニルホスフィン以外の成分を混合した硬化性組成物について、ASTM D4287に準拠し、150℃での溶融粘度をICI粘度計にて測定した。
【0066】
ゲルタイムの測定
表1に示す割合で各成分を配合した後、185℃に熱したホットプレート上に硬化性組成物0.15gを載せ、スパチュラで撹拌しながらゲル状になるまでの時間を測定した。同操作を三回繰り返し、その平均値で評価した。
【0067】
ガラス転移温度(Tg)の測定
プレス機を用いて硬化性組成物を型枠へ流し込み185℃で10分間成型した。型枠から成型物を取り出し、185℃で更に5時間硬化させた。硬化後の成形物を5mm×54mm×2.4mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。
粘弾性測定装置(レオメトリック社製「固体粘弾性測定装置RSAII」)を用い、レクタンギュラーテンション法、周波数1Hz、昇温温度3℃/分の条件で、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
【0068】
線膨張係数の測定
プレス機を用いて硬化性組成物を型枠へ流し込み185℃で10分間成型した。型枠から成型物を取り出し、185℃で更に5時間硬化させた。硬化後の成形物を5mm×5mm×2.4mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。
熱機械分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製「EXSTAR6000 TMA/SS6100」)を用い、昇温速度3℃/分、測定重88.8mN、測定温度範囲-60℃~270℃の条件で、40℃から60℃の温度範囲における線膨張係数を2度測定し、2度目の測定値で評価した。
【0069】
誘電正接の測定
プレス機を用いて硬化性組成物を型枠へ流し込み185℃で10分間成型した。型枠から成型物を取り出し、185℃で更に5時間硬化させた。硬化後の成形物を1.6mm×105mm×1.6mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。
加熱真空乾燥後、23℃、湿度50%の室内に24時間保管した試験片について、JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」を用い、1GHzでの誘電正接測定値を下記基準で評価した。
A:0.010以下
B:0.010を超えて0.015以下
C:0.015を超える0.020以下
D:0.020を超える
【0070】
【表1】