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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】三次元映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/10 20200101AFI20230511BHJP
   G03B 35/16 20210101ALI20230511BHJP
   H04N 13/307 20180101ALI20230511BHJP
   H04N 13/398 20180101ALI20230511BHJP
【FI】
G02B30/10
G03B35/16
H04N13/307
H04N13/398
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019173766
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021051176
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】岡市 直人
(72)【発明者】
【氏名】河北 真宏
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-078776(JP,A)
【文献】特開2006-189833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0050452(US,A1)
【文献】特開2019-039940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0182174(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60
G03B 35/16
H04N 13/307,13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテグラル方式の三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、
視点位置をずらした要素画像群を、要素画像の表示位置を同じにした二次元映像として予め定めた周期で表示する二次元映像表示手段と、
前記周期で前記要素画像群の光の偏光を2つの偏光状態に切り替える偏光切替手段と、
前記偏光切替手段の光の入射側または出射側のいずれかに配置した、前記要素画像群の個々の要素画像の表示位置に対応する位置に要素レンズを配列したレンズアレイと、
前記周期で偏光状態が切り替えられた要素画像群の光の出射方向を、前記偏光状態に応じて回折により異なる方向に平行移動させる偏光回折手段と、
を備えることを特徴とする三次元映像表示装置。
【請求項2】
前記要素画像群は、前記周期で前記レンズアレイのレンズピッチの1/2の所定方向のずれに対応した映像であって、前記偏光回折手段は、前記周期で前記所定方向に前記レンズピッチの±1/4ずらして前記要素画像群の光を平行移動させることを特徴とする請求項1に記載の三次元映像表示装置。
【請求項3】
前記偏光回折手段は、一組の偏光回折素子を対向して配置し、一方の偏光回折素子で+1次光として回折させた光を他方の偏光回折素子で-1次光として回折させ、一方の偏光回折素子で-1次光として回折させた光を他方の偏光回折素子で+1次光として回折させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の三次元映像表示装置。
【請求項4】
前記偏光回折手段は、前記一組の偏光回折素子を多段に配置し、各組の偏光回折素子の間に、前記周期で前記要素画像群の光の偏光状態を切り替える第2偏光切替手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の三次元映像表示装置。
【請求項5】
インテグラル方式の三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、
1/2画素斜め方向にずらした要素画像群を、要素画像の表示位置を同じにした二次元映像として予め定めた周期で表示する二次元映像表示手段と、
前記周期で前記要素画像群の光の偏光を2つの偏光状態に切り替える偏光切替手段と、
前記偏光切替手段の光の出射側に配置した、前記要素画像群の個々の要素画像の表示位置に対応する位置に要素レンズを配列したレンズアレイと、
前記周期で偏光状態が切り替えられた要素画像群の光の出射方向を、前記偏光状態に応じて回折により±1/4画素斜め方向に平行移動させる偏光回折手段と、
を備えることを特徴とする三次元映像表示装置。
【請求項6】
前記偏光切替手段は、前記要素画像群の光の偏光状態を前記周期で右回り円偏光または左回り円偏光に切り替え、
前記偏光回折手段は、前記偏光状態に応じて、前記要素画像群の光の回折させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の三次元映像表示装置。
【請求項7】
前記偏光切替手段は、前記要素画像群の光の偏光状態を前記周期で水平偏光または垂直偏光に切り替え、
前記偏光回折手段は、前記偏光状態に応じて、前記要素画像群の光の回折させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の三次元映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元映像を表示する三次元映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3Dメガネを用いた二眼式をはじめとして、多様な三次元映像表示方法が提案されている。特に、インテグラル方式をはじめとした空間像再生型の三次元映像表示方式は、水平方向および垂直方向の視差を再現できる利点がある。この方式は、多方面に光線を再生するため、非常に多くの映像情報が必要になる。
特に、インテグラル方式の場合、三次元映像の画素数は、レンズアレイの要素レンズの数に相当する。そのため、三次元映像の解像度を向上させるには、レンズアレイを微細化する必要がある。
【0003】
しかし、要素レンズのレンズピッチを細かくすると、レンズによる回折の影響が大きくなってしまうとともに、レンズアレイの背面から表示する要素画像の画素サイズも同時に微細化する必要がある。そのため、レンズアレイの微細化には限度がある。
そこで、従来は、三次元映像の高解像度化のために、三次元映像の一部分を表示するインテグラル方式のディスプレイを複数台組み合わせて表示する方式が提案されている(特許文献1参照)。この方式は、複数台のディスプレイが表示する要素画像群を拡大結合させることで、三次元映像の高解像度化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-151202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方式は、三次元映像を高解像度化するために、複数のディスプレイを組み合わせるため、装置全体の規模が大きくなってしまう。そこで、三次元映像を高解像度化する新たな手法が望まれていた。
本発明は、このような要望に鑑みてなされたものであり、レンズアレイの要素レンズごとに時系列に異なる要素画像を表示することで、インテグラル方式で表示する三次元映像の解像度を高めることが可能な三次元映像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る三次元映像表示装置は、インテグラル方式の三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、視点位置をずらした要素画像群を、要素画像の表示位置を同じにした二次元映像として予め定めた周期で表示する二次元映像表示手段と、前記周期で前記要素画像群の光の偏光を2つの偏光状態に切り替える偏光切替手段と、前記偏光切替手段の光の入射側または出射側のいずれかに配置した、前記要素画像群の個々の要素画像の表示位置に対応する位置に要素レンズを配列したレンズアレイと、前記周期で偏光状態が切り替えられた要素画像群の光の出射方向を、前記偏光状態に応じて回折により異なる方向に平行移動させる偏光回折手段と、を備える構成とした。
【0007】
かかる構成において、三次元映像表示装置は、二次元映像表示手段によって、視点位置をずらした要素画像群を、要素画像の表示位置を同じにした二次元映像として予め定めた周期、例えば、フレーム間隔で表示する。この要素画像群は、インテグラル方式で三次元映像を表示するための複数の要素画像を二次元配列した画像である。
そして、三次元映像表示装置は、偏光切替手段によって、要素画像群を表示する周期で、要素画像群の光の偏光を2つの偏光状態に切り替える。
【0008】
また、三次元映像表示装置は、偏光切替手段の光の入射側または出射側のいずれかに配置し、要素画像群の個々の要素画像の表示位置に対応する位置に要素レンズを配列したレンズアレイによって、要素画像群を被写体の再生光に変換する。なお、この再生光は、周期的に偏光状態が異なっている。
そして、三次元映像表示装置は、偏光回折手段によって、予め定めた周期で偏光状態が切り替えられた要素画像群の光の出射方向を、偏光状態に応じて回折により異なる方向に平行移動させる。
これによって、三次元映像表示装置は、三次元映像の被写体を、レンズアレイのレンズ数を増加させて再生される被写体光として視認させることができ、三次元映像を高解像度化することができる。
例えば、三次元映像表示装置は、要素画像群を、予め定めた周期でレンズアレイのレンズピッチの1/2斜め方向のずれに対応した映像とし、偏光回折手段によって、その周期でレンズピッチの±1/4だけずらして要素画像群の光を平行移動させればよい。
【0009】
また、前記課題を解決するため、本発明に係る三次元映像表示装置は、インテグラル方式の三次元映像を表示する三次元映像表示装置であって、1/2画素斜め方向にずらした要素画像群を、要素画像の表示位置を同じにした二次元映像として予め定めた周期で表示する二次元映像表示手段と、前記周期で前記要素画像群の光の偏光を2つの偏光状態に切り替える偏光切替手段と、前記偏光切替手段の光の出射側に配置した、前記要素画像群の個々の要素画像の表示位置に対応する位置に要素レンズを配列したレンズアレイと、前記周期で偏光状態が切り替えられた要素画像群の光の出射方向を、前記偏光状態に応じて回折により±1/4画素斜め方向に平行移動させる偏光回折手段と、を備える構成とした。
【0010】
かかる構成によって、三次元映像表示装置は、三次元映像の被写体を、要素画像の画素数を増加させた要素画像群で再生される被写体光として視認させることができ、三次元映像を高解像度化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、視点位置の異なる要素画像群を、同じ表示位置で時系列に切り替えて表示することができる。そのため、本発明は、要素画像群を表示する表示装置を大型化することなく、三次元映像を高解像度化して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置の構成を示す平面図である。
図3】二次元映像表示手段が表示する要素画像群を説明するための説明図であって、(a)は奇数フレーム、(b)は偶数フレームの画像を示す。
図4】偏光切替手段による偏光状態を切り替える例を説明するための説明図であって、(a)は右回り円偏光の生成、(b)は左回り円偏光の生成を示す。
図5】円形状の要素レンズで構成したレンズアレイの構成例を示す正面図である。
図6】偏光回折素子の光線の回折を示す図であって、(a)は入射する光が右回り円偏光の場合、(b)は入射する光が左回り円偏光の場合を示す。
図7】一組の偏光回折素子による偏光状態と回折方向との関係を説明するための説明図であって、(a)は入射する光が右回り円偏光の場合、(b)は入射する光が左回り円偏光の場合を示す。
図8】偏光回折素子の回折ピッチとシフト量との関係を説明するための説明図である。
図9】要素レンズの中心位置と、シフトした中心位置との関係を説明するための説明図である。
図10】本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置において、三次元映像を高解像度化する効果を説明するための説明図である。
図11】本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置の動作を示すフローチャートである。
図12】本発明の変形例に係る三次元映像表示装置の構成を示す平面図である。
図13】要素レンズの中心位置と、シフトした中心位置との関係を説明するための説明図である。
図14】要素レンズの中心位置と、2段階光線をシフトした位置との距離を説明するための説明図である。
図15】レンズアレイの構成例を示す正面図であって、(a)は正方形形状の要素レンズで構成した図、(b)は六角形の要素レンズをハニカム構造で構成した図、(c)は横長の長方形形状の要素レンズで構成した図である。
図16】色収差の補正手法を説明するための説明図であって、(a)は色収差が発生する仕組みを示す図、(b)は色収差の補正手法を示す図である。
図17】本発明の他の変形例に係る三次元映像表示装置の構成を示す平面図である。
図18】本発明の他の変形例に係る三次元映像表示装置で表示する要素画像群を説明するための説明図である。
図19】本発明の他の変形例に係る三次元映像表示装置において、三次元映像を高解像度化する効果を説明するための説明図である。
図20】本発明の他の変形例に係る三次元映像表示装置において、要素画像の高解像度化を説明するための説明図であって、(a)は要素画像の画素の光線経路を示し、(b)は観察者から見た画素の視認位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
≪三次元映像表示装置の構成≫
まず、図1図2を参照して、本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置1の構成について説明する。
【0014】
三次元映像表示装置1は、観察者Mに対して、インテグラル方式による三次元映像Tを視認させる映像を表示するものである。
図1に示すように、三次元映像表示装置1は、二次元映像表示手段10と、偏光切替手段11と、レンズアレイ12と、偏光回折手段13と、を備える。
【0015】
二次元映像表示手段10は、視点位置をずらした要素画像群を、要素画像の表示位置を同じにした二次元映像として予め定めた周期で表示するものである。
この要素画像群は、インテグラル方式の要素画像Iを二次元配列した画像である。また、要素画像群は、時系列において、予め定めた周期、例えば、フレーム周期で視点位置が異なる。
【0016】
図3に示すように、二次元映像表示手段10が表示する要素画像群は、視点位置の異なる要素画像を、垂直方向(y方向)にm個(m≧2)、水平方向(x方向)にn個(n≧2)ずつ二次元配列した画像である。
また、二次元映像表示手段10は、時系列にさらに視点位置の異なる要素画像群を表示する。具体的には、二次元映像表示手段10は、図3(a)に示す奇数フレームFOで表示する要素画像群(FO0,0~FOm-1,n-1)と、図3(b)に示す偶数フレームFEで表示する要素画像群(FE0,0~FEm-1,n-1)とは、垂直方向および水平方向にそれぞれ視点位置が要素画像の1/2相当分ずれた画像を表示する。
例えば、偶数フレームFEの要素画像FE0,1は、奇数フレームFOの要素画像FO0,0,FO0,1,FO1,0,FO1,1の中間の画像である。
このように、二次元映像表示手段10は、時系列で視点位置の異なる要素画像群において、配列位置が同じ要素画像を同じ表示位置に表示する。
【0017】
この二次元映像表示手段10は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ等の直視型ディスプレイで構成することができる。また、拡散投射するプロジェクタ等も、レンズと組み合わせることで、二次元映像表示手段10として構成することができる。
【0018】
偏光切替手段11は、二次元映像表示手段10の要素画像群を表示する周期で、要素画像群の光の偏光を2つの偏光状態に切り替えるものである。
偏光切替手段11は、偏光切替素子110と、切替制御手段111と、λ/4波長板112と、を備える。
【0019】
偏光切替素子110は、二次元映像表示手段10が表示する要素画像群の偏光を電気的に切り替えるものである。偏光切替素子110は、二次元映像表示手段10の前面に配置され、二次元映像表示手段10が出射する光の偏光を、切替制御手段111の制御により切り替える。
偏光切替素子110には、例えば、液晶偏光ローテータ等を用いることができる。
この偏光切替素子110は、切替制御手段111の電圧制御によって、平常時は水平偏光の光をそのまま透過させ、電圧印加時は水平偏光の光を垂直偏光に変換する。
偏光切替素子110によって偏光が変換された光は、λ/4波長板112に照射される。
なお、二次元映像表示手段10が表示する映像(要素画像群)として、一方向に偏光していない映像を用いる場合は、二次元映像表示手段10と偏光切替素子110との間に偏光子を挿入して、一方向に偏光した光に変換すればよい。
【0020】
切替制御手段111は、二次元映像表示手段10が表示する映像のフレームに同期して、時間分割で偏光切替素子110の偏光切替状態を電圧制御により切り替えるものである。なお、切替制御手段111は、垂直ブランキング期間で偏光切替の制御を行う。
例えば、切替制御手段111は、奇数フレームでは偏光切替素子110への電圧の印加を行わず(偏光切替スイッチS1:OFF)、偶数フレームにおいて偏光切替素子110への電圧の印加を行う(偏光切替スイッチS1:ON)。
これによって、切替制御手段111は、偏光切替素子110に照射される光を、フレームごとに、水平偏光または垂直偏光に切り替えることができる。
【0021】
λ/4波長板112は、入射光に対して1/4波長の位相差を生じさせて、直線偏光を円偏光に変換するものである。ここでは、λ/4波長板112は、光学軸に対して45°傾けて水平偏光を入射するように配置する。
これによって、λ/4波長板112は、入射した直線偏光である水平偏光を、右回り円偏光に変換する。また、λ/4波長板112は、入射した直線偏光である垂直偏光を、左回り円偏光に変換する。
【0022】
すなわち、図4(a)に示すように、切替制御手段111で偏光切替素子110への電圧の印加を行わない場合(偏光切替スイッチS1:OFF)、要素画像群の光(水平偏光)は、偏光切替素子110をそのまま透過し、λ/4波長板112によって右回り円偏光に変換される。また、図4(b)に示すように、切替制御手段111で偏光切替素子110への電圧の印加を行う場合(偏光切替スイッチS1:ON)、要素画像群の光(水平偏光)は、偏光切替素子110によって垂直偏光に変換され、λ/4波長板112によって、左回り円偏光に変換される。
このように、偏光切替素子110、切替制御手段111およびλ/4波長板112は、光の偏光を時系列に切り替える偏光切替手段11として機能する。
λ/4波長板112は、偏光切替素子110で切り替えられた偏光(右回り円偏光、左回り円偏光)の要素画像群の光を、レンズアレイ12に照射する。
【0023】
レンズアレイ12は、要素画像群の個々の要素画像の表示位置に対応する位置に要素レンズ120を二次元配列したものである。例えば、図5に示すように、レンズアレイ12は、円形状の要素レンズ120を、水平方向および垂直方向に予め定めた間隔で配列したものである。なお、要素レンズ120の位置は、二次元映像表示手段10が表示する個々の要素画像Iの位置に対応する。
【0024】
レンズアレイ12(要素レンズ120)は、二次元映像表示手段10の表示面から、要素レンズ120の焦点距離だけ離間して配置される。
要素レンズ120は、要素画像Iの光を平行光に変換し、被写体から発せられる光(被写体光)を再現するものである。例えば、要素レンズ120は、単レンズである微小な凸レンズで構成することができる。
このように、レンズアレイ12の個々の要素レンズ120によって、要素画像Iの各画素の光が平行光となることで、観察者Mは、要素レンズ120ごとに、要素画像の1画素を観察することができる。
レンズアレイ12は、要素画像Iの各画素の光を平行光として、偏光回折手段13に照射する。
【0025】
偏光回折手段13は、レンズアレイ12から入射した要素画像群の光(被写体光)の出射方向を、偏光状態に応じて回折により異なる方向に平行移動させるものである。偏光回折手段13は、2つの偏光回折素子130a,130bを備える。なお、偏光回折素子130a,130bは、少なくともレンズアレイ12全体を覆う大きさである。
【0026】
偏光回折素子130a,130bは、右回り円偏光または左回り円偏光の入射光を、偏光状態に応じて、異なる方向に±1次光として回折させるものである。
例えば、偏光回折素子130a,130bは、図6(a)に示すように、右回り円偏光の光を垂直に入射した場合、入射光を予め設計した回折角φの方向に左回り円偏光に変換し、+1次光として回折させる。また、偏光回折素子130a,130bは、図6(b)に示すように、左回り円偏光の光を垂直に入射した場合、入射光を予め設計した回折角φの方向に右回り円偏光に変換し、-1次光として回折させる。
なお、円偏光の偏光状態に応じて、回折方向を変える偏光回折素子130a,130bには、公知の素子を用いればよい。例えば、特開2008-233539号公報、特開2016-136165号公報、特開2006-106726号公報等で開示されている偏光回折素子を用いることができる。
【0027】
偏光回折素子130aは、レンズアレイ12から入射した光を、偏光状態に応じて回折することで、偏光回折素子130bの異なる位置に+1次光または-1次光として出射するとともに、偏光状態を切り替えるものである。
偏光回折素子130bは、偏光回折素子130aと同じ向きで平行に離間して配置され、偏光回折素子130aで回折された光を、偏光状態に応じて、偏光回折素子130aに入射した光の方向に戻すとともに、偏光状態を切り替えるものである。
観察者Mは、この偏光回折素子130bによって回折された光を観察することになる。
【0028】
偏光回折素子130a,130bは、レンズアレイ12から入射した光の偏光状態に応じて、要素画像Iの表示位置を、x軸およびy軸の正または負の方向にそれぞれ要素レンズのレンズピッチの1/4だけずらした位置に表示するように光を回折する。
図2では、偏光回折素子130a,130bによって、レンズアレイ12から入射した光が、x軸方向の要素レンズ120のピッチDxに対して、x軸の正負の方向にそれぞれ時系列にDx/4だけずれた光となる例を示している。
【0029】
ここで、図7図9を参照して、偏光回折素子130a,130bの位置関係について説明する。
偏光回折素子130a,130bによる各要素画像の光線のシフト量は、偏光回折素子130a,130bの回折格子溝のピッチ(回折ピッチ)および傾き角と、偏光回折素子130a,130bの距離とによって特定することができる。なお、ここでは、偏光回折素子130a,130bに物理的に形成された溝のピッチを回折ピッチとして説明するが、回折に周期性を有する素子であれば、その周期が回折ピッチである。
入射光の波長をλとし、図8に示すように、偏光回折素子130aの回折ピッチをpとしたとき、図7に示すように、1次光の回折角φは、以下の式(1)で表すことができる。
【0030】
【数1】
【0031】
また、図7に示すように、偏光回折素子130aと偏光回折素子130bとの距離をL1としたとき、回折のシフト量dは、以下の式(2)で表すことができる。
【0032】
【数2】
【0033】
すなわち、偏光回折素子130aと偏光回折素子130bとの距離をL1としたとき、図7(a)に示すように、偏光回折素子130aに垂直に入射した右回り円偏光は、左回り円偏光に変換され、+1次光として進行方向を変えて、シフト量dだけシフトした後、偏光回折素子130bに照射される。また、偏光回折素子130bに垂直に入射した左回り円偏光は、右回り円偏光に変換され、-1次光として、偏光回折素子130aに入射した進行方向と同じ方向に回折される。
【0034】
また、図7(b)に示すように、偏光回折素子130aに垂直に入射した左回り円偏光は、右回り円偏光に変換され、-1次光として進行方向を変えて、シフト量dだけシフトした後、偏光回折素子130bに照射される。また、偏光回折素子130bに垂直に入射した右回り円偏光は、左回り円偏光に変換され、+1次光として、偏光回折素子130aに入射した進行方向と同じ方向に回折される。
【0035】
ここで、図9を参照して、光線のシフト量dについてさらに説明する。図9は、要素レンズ120の中心位置(×印)と、本来、要素レンズ120の中心位置C(×印)に垂直に照射する光が回折されることでシフトした位置C(●印)およびC(○印)とをxy平面上に示す図である。
位置C(●印)は、奇数フレームFOにおいてシフトされる位置に対応する。また、位置C(○印)の位置は、偶数フレームFEにおいてシフトされる位置に対応する。
奇数フレームFOと偶数フレームFEの要素映像を、均一の光線密度で視認するには、水平方向の要素レンズ120のピッチをDx、垂直方向の要素レンズ120のピッチをDyとしたとき、中心位置Cに対して、水平方向に±Dx/4、垂直方向に±Dy/4だけずれた位置に、光線をシフトさせることが望ましい。
【0036】
具体的には、Dx=Dy=1mmとした場合、水平軸からの傾き角θ=45°、シフト量d=(√2)×Dx/4≒0.35mmとすればよい。
この場合、式(1)、式(2)から、以下の式(3)の関係を満たすように、偏光回折素子130a,130bの回折ピッチpと、偏光回折素子130aと偏光回折素子130bとの距離L1を定めればよい。
【0037】
【数3】
【0038】
例えば、波長λ=550nm(予め定めた基準色〔例えば、緑色〕の波長)、回折ピッチp=2.5μmとしたとき、距離L1=1.55mmとすればよい。
以上説明したように三次元映像表示装置1を構成することで、三次元映像表示装置1は、時系列に要素画像群の位置を変えて表示することができる。これによって、三次元映像表示装置1は、要素レンズ120の数に対して、要素画像Iの数を倍にすることができ、三次元映像Tの解像度を向上させることができる。
【0039】
この効果を、模式的に図10を参照して説明する。
図10に示すように、三次元映像表示装置1は、時系列に要素画像群の切り替えと光線の回折方向の切り替えとを行うことで、観察者Mが個々の要素レンズ120のレンズ中心を介して観察する要素画像Iの画素を切り替えることができる。これによって、三次元映像表示装置1は、物理的な1つの要素レンズ120に対して、偏光回折素子130bに仮想的な2つの要素レンズ120vを形成することができる。これは、要素レンズ120の数が倍になったことに相当し、三次元映像Tの解像度が向上することになる。
【0040】
≪三次元映像表示装置の動作≫
次に、図11を参照(構成については適宜図1図2参照)して、本発明の実施形態に係る三次元映像表示装置1の動作について説明する。
ステップS1において、切替制御手段111は、偏光切替素子110の偏光切替の状態を、要素画像群のフレームごとに制御する。この切替制御手段111は、要素画像群のフレームが奇数フレームであれば、偏光切替素子110への電圧印加を行わないことで、偏光切替素子110を、水平偏光をそのまま通過させる状態に切り替える。また、切替制御手段111は、要素画像群のフレームが偶数フレームであれば、偏光切替素子110への電圧印加を行うことで、偏光切替素子110を、水平偏光を垂直偏光とする状態に切り替える。
【0041】
ステップS2において、二次元映像表示手段10は、要素画像群をフレームごとに表示する。
ステップS3において、偏光切替素子110は、ステップS1で制御された偏光状態に応じて、要素画像群の直線偏光を水平偏光または垂直偏光に切り替える。
ステップS4において、λ/4波長板112は、ステップS3で切り替えられえた直線偏光を円偏光に変換する。このλ/4波長板112は、照射された要素画像群が水平偏光であれば右回り円偏光に変換し、垂直偏光であれば左回り円偏光に変換する。
【0042】
ステップS5において、レンズアレイ12の要素レンズ120は、ステップS4で変換された円偏光の拡散光を平行光とし、被写体光を再現する。
ステップS6において、偏光回折手段13は、ステップS5で再現された被写体光を、偏光に応じた回折方向にシフトさせる。ここでは、偏光回折手段13の偏光回折素子13aは、被写体光の偏光状態に応じて、入射光を+1次光または-1次光として出射する。そして、偏光回折手段13の偏光回折素子130bは、偏光回折素子130aで回折された被写体光をもとの出射方向に戻す。このように、偏光回折手段13は、2枚の偏光回折素子130a,130bによって、被写体光の偏光状態に応じて、要素画像の画素ごとの光を異なる位置にシフト(平行移動)させる。
【0043】
そして、二次元映像表示手段10が要素画像群を表示する間(ステップS7でNo)、三次元映像表示装置1は、ステップS1に戻って動作を継続する。
一方、二次元映像表示手段10による要素画像群の表示が終了した段階で(ステップS7でYes)、三次元映像表示装置1は動作を終了する。
以上の動作によって、三次元映像表示装置1は、観察者Mに対して、解像度の高い三次元映像Tを視認させることができる。
【0044】
≪変形例の三次元映像表示装置の構成≫
次に、図12を参照して、本発明の変形例に係る三次元映像表示装置1Bの構成について説明する。
三次元映像表示装置1Bは、観察者に対して、インテグラル方式による三次元映像を視認させる映像を表示するものである。
図2で説明した三次元映像表示装置1は、要素画像の画素の光線を時系列に2つの方向にシフトさせることで、2倍の要素画像を表示するものであった。
三次元映像表示装置1Bは、要素画像の画素の光線を時系列に4つの方向にシフトさせることで、4倍の要素画像を表示するものである。
【0045】
図12に示すように、三次元映像表示装置1Bは、二次元映像表示手段10と、偏光切替手段11と、レンズアレイ12と、偏光回折手段13Bと、を備える。なお、二次元映像表示手段10、偏光切替手段11およびレンズアレイ12は、図2で説明した三次元映像表示装置1と同じ構成であるため、説明を省略する。また、図12では、光線として、要素画像Iに対応する要素レンズ120の光軸だけを図示している。
【0046】
偏光回折手段13Bは、レンズアレイ12から入射した光(被写体光)を偏光状態に応じて回折するものである。
偏光回折手段13Bは、二組の偏光回折素子130a,130bおよび偏光回折素子131a,131bと、偏光切替素子132と、切替制御手段133と、を備える。
【0047】
偏光回折素子130a,130bは、図2で説明した素子と同じものであるため、説明を省略する。なお、ここで、1組の偏光回折素子130a,130bで、1段階目の光線のシフトを行い、1組の偏光回折素子131a,131bで、2段階目の光線のシフトを行う。ここでは、偏光回折素子130a,130bでシフトされた光軸の光線をC,Cで示している。また、光軸Cの光が偏光回折素子131a,131bでシフトされた光線をC11,C12で示し、光軸Cの光が偏光回折素子131a,131bでシフトされた光線をC21,C22で示している。
【0048】
偏光切替素子(第2偏光切替手段)132は、入射光の偏光を電気的に切り替えるものである。偏光切替素子132は、1組目の偏光回折素子130a,130bと、2組目の偏光回折素子131a,131bとの間に配置され、偏光回折素子130bから入射する光の偏光を切替制御手段133の制御により切り替える。
偏光切替素子132には、例えば、液晶偏光ローテータ等を用いることができる。
この偏光切替素子132は、切替制御手段133の電圧制御によって、平常時は円偏光の光をそのまま透過させ、電圧印加時は右回り円偏光の光を左回り円偏光に変換し、左回り円偏光の光を右回り円偏光に変換する。
偏光切替素子132によって偏光が変換された光は、後段の偏光回折素子131aに照射される。
【0049】
切替制御手段(第2偏光切替手段)133は、二次元映像表示手段10が表示する映像のフレームに同期して、時間分割で偏光切替素子132の偏光切替状態を電圧制御により切り替えるものである。なお、切替制御手段133は、垂直ブランキング期間で偏光切替の制御を行う。
これによって、偏光回折手段13Bは、要素レンズ120の光軸を、時系列に光軸C11,C12,C21,C22の4つにシフトさせることができる。
この場合、図13に示すように、レンズアレイ12を正面視したとき、仮想的な要素レンズが均一に配置されているように、要素レンズ120の中心位置Cに対して、フレームごとに光線を斜め(水平軸から45度)にシフトした光軸の位置C11,C12,C21,C22を仮想の要素レンズの中心位置とすることが望ましい。
【0050】
そして、要素レンズ120のピッチを1mmとした場合、図14に示すように、要素レンズ120の中心位置Cと、偏光回折素子130a,130bで1段目にシフトされる光軸の位置C,Cとの距離(シフト量)ΔSを0.35mmとする。また、位置C(C)と、偏光回折素子131a,131bで2段目にシフトされる光軸の位置C11,C12(C21,C22)との距離(シフト量)ΔSを0.18mmとする。
このように、光線をシフトさせるには、前記式(1),式(2)により、図12に示した偏光回折素子130a,130bの距離L1を1.55mm、偏光回折素子131a,131bの距離L2を0.78mmとすればよい。
【0051】
なお、このように、偏光状態によって、光線を4つにシフトさせるには、偏光切替素子110と偏光切替素子132とで、偏光切替スイッチS1,S2を切り替える必要がある。
例えば、以下の表1の偏光切替スイッチの状態に示すように、F4n(nは0以上の整数;以下同じ)フレームにおいては、偏光切替スイッチS1をOFF、偏光切替スイッチS2をOFFにする。また、F4n+1フレームにおいては、偏光切替スイッチS1をOFF、偏光切替スイッチS2をONにする。また、F4n+2フレームにおいては、偏光切替スイッチS1をON、偏光切替スイッチS2をOFFにする。また、F4n+3フレームにおいては、偏光切替スイッチS1をON、偏光切替スイッチS2をONにする。
【0052】
【表1】
【0053】
なお、二次元映像表示手段10は、この偏光切替スイッチに同期して、視点位置をずらした4つの要素画像群を時系列に同じ表示位置に二次元映像として表示すればよい。この場合、それぞれの要素画像群は、要素レンズ120の1/8ピッチだけずらした画像とする。
これによって、偏光回折手段13Bを備えた三次元映像表示装置1Bは、視点位置の異なる要素画像群を、4つのフレームF4n,F4n+1,F4n+2,F4n+3で、順次、光線をシフトさせて表示することで要素画像の数を増加させて、三次元映像を表示することができる。
そして、三次元映像表示装置1Bは、三次元映像表示装置1よりもさらに解像度を向上させた三次元映像を観察者に視認させることができる。
なお、ここでは、光線を2段階シフトさせる例を示したが、この段数は、3段以上であっても構わない。
【0054】
この三次元映像表示装置1Bの動作は、図11で説明した三次元映像表示装置1の動作において、偏光を切り替えるタイミングが異なるだけであるため、説明を省略する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。以下、種々の変形例について説明する。
【0055】
(レンズアレイの要素レンズについて)
三次元映像表示装置1,1Bは、レンズアレイ12として、図5に示した円形状の要素レンズ120を水平方向および垂直方向に配列したものを用いた。しかし、レンズアレイ12の要素レンズの120の形状は、必ずしも円形状である必要はない。
例えば、図15(a)に示すように、正方形形状の要素レンズ120Bを水平方向および垂直方向に配列したレンズアレイ12Bを用いてもよい。
また、例えば、図15(b)に示すように、六角形形状の要素レンズ120Cを配列したハニカム構造のレンズアレイ12Cを用いてもよい。
また、例えば、図15(c)に示すように、横長の長方形形状の要素レンズ120Dを水平方向および垂直方向に配列したレンズアレイ12Dを用いてもよい。これによって、水平方向の三次元映像の品質を高めることができる。
なお、二次元映像表示手段10は、要素レンズ120,120B,120C,120Dに対向する位置に要素画像を表示することはいうまでもない。
【0056】
(色収差について)
図2に示した偏光回折手段13を用いた場合、前記式(1),式(2)に示したように、要素画像Iの光線の回折のシフト量dには、波長依存性がある。そのため、表示する三次元映像Tに色収差が発生する。
例えば、偏光回折素子130a,130bの回折ピッチp=2.5μm、偏光回折素子130aと偏光回折素子130bとの距離L1=1.55mmの場合、可視領域を360~830nmとすると、光線は回折方向に0.32mm広がる。この程度の拡がりであれば、視覚上問題はない。しかし、このような色収差が発生する場合、表示する三次元映像Tにも、配色パターン等によって、色収差による色にじみが発生する場合がある。そのため、二次元映像表示手段10が表示する要素画像群は、予め色収差を補正しておくことが好ましい。
【0057】
例えば、図16(a)に示すように、要素画像Iのある画素pxのRGBの光が、偏光回折手段13によって回折された場合、RGBのそれぞれの波長に応じて回折する量が異なる。
この場合、画素の光が、偏光回折素子13bの同じ位置から出射するようにすればよい。すなわち、要素画像Iのある色(例えば、G)を基準として、要素画像Iの他の色の表示位置をシフトさせればよい。
具体的には、図16(b)に示すように、画素pxのG光を偏光回折手段13によってEだけシフトさせる。このシフト量Eは、以下の式(4)で表される。
【0058】
【数4】
【0059】
ここで、pは偏光回折素子130a,130bの回折ピッチ、L1は偏光回折素子130aと偏光回折素子130bとの距離、λは基準波長(例えば、G光の波長;550nm)である。
そして、他の色(例えば、R,B)については、基準波長の色を含んだ画素(ここでは、px)から、以下の式(5)に示すΔEだけシフトした画素(pxr,pxb)の色として表示する。なお、λは基準波長以外の色(R,B)の波長を示す。
【0060】
【数5】
【0061】
これによって、三次元映像表示装置1は、色収差の発生を抑えて、観察者に三次元映像を視認させることができる。
なお、図12で説明した三次元映像表示装置1Bにおいては、2段階のシフトを行うが、表示する要素画像群について、2段階のシフトに伴い発生する色収差を予め補正しておくことが好ましい。
【0062】
(偏光回折素子の種類について)
ここでは、三次元映像表示装置1,1Bは、偏光回折手段13,13Bとして、右回り円偏光または左回り円偏光の入射光を、偏光状態に応じて、±1次光として回折させるとともに、円偏光の向き(右回りまたは左回り)を変える偏光回折素子を用いた。
しかし、偏光回折手段13,13Bには、垂直偏光または水平偏光の入射光を、偏光状態に応じて、±1次光として回折させるとともに、直線偏光の向き(垂直または水平)を変える偏光回折素子を用いてもよい。
この場合、三次元映像表示装置1,1Bは、構成から、λ/4波長板112を省略することができる。
【0063】
なお、このように、垂直偏光または水平偏光の入射光を、偏光状態に応じて、±1次光として回折させる偏光回折素子は、特開2008-233539号公報や以下の参考文献1に開示されている既知の偏光回折素子を用いればよい。
(参考文献1:http://optik.nagaokaut.ac.jp/azo_dye_doped.html)
【0064】
(偏光回折素子の大きさ、形状について)
ここでは、三次元映像表示装置1,1Bは、偏光回折手段13,13Bとして、レンズアレイ12全体を覆う大きさの偏光回折素子130a,130b,131a,131bを用いた。
しかし、偏光回折手段13,13Bは、1つの素子として構成する必要はなく、要素画像の大きさに対応した小面積の偏光回折素子を二次元配列して構成してもよい。このように、小面積の偏光回折素子を二次元配列する場合、タイリングのつなぎ目の影響を抑えるため、密に配列することが好ましい。
また、偏光回折素子は、レンズアレイ12全体を覆うことができれば、矩形、円形等、任意の形状でよい。
【0065】
(レンズアレイの配置について)
ここでは、レンズアレイ12を、偏光切替手段11と偏光回折手段13との間に備える構成とした。しかし、レンズアレイは、二次元映像表示手段10の表示面から、要素レンズ120の焦点距離だけ離間していれば、二次元映像表示手段10と偏光切替手段11との間に備えても構わない。また、レンズアレイ12は、それぞれの要素レンズ120を、平凸レンズとし、平面側を偏光回折手段13の偏光回折素子130aの光の入射側または出射側に接するように構成してもよい。
【0066】
(奥行き再現性の向上について)
三次元映像表示装置1は、要素レンズ120の1/4ピッチ(三次元映像表示装置1Bの場合は、1/8ピッチ)だけずれた要素画像群を時系列に表示することで、仮想的に要素レンズの数を増やして、三次元映像を高解像度化した。
しかし、仮想的に要素画像の画素数を増やすことで、三次元映像を高解像度化することとしてもよい。
この場合、図17に示すように、三次元映像表示装置1(図2)と同様の構成で、レンズアレイ12を、偏光回折手段13よりも光の出射側(観察者M側)に配置し、三次元映像表示装置1Cとして構成すればよい。
そして、三次元映像表示装置1Cの二次元映像表示手段10は、例えば、図18に示す水平画素数2W×垂直画素数2Hの要素画像Iに対して、〇印で示す奇数行偶数列の画素を抽出した水平画素数W×垂直画素数Hの要素画像Iで構成された要素画像群を奇数フレームとして表示する。また、二次元映像表示手段10は、要素画像Iに対して、×印で示す偶数行奇数列の画素を抽出した水平画素数W×垂直画素数Hの要素画像Iで構成された要素画像群を偶数フレームとして表示する。
すなわち、二次元映像表示手段10は、1/2画素斜め方向にずらした要素画像群を、要素画像の表示位置を同じにした二次元映像として予め定めた周期、例えば、フレーム周期で表示する。
また、三次元映像表示装置1Cの偏光回折手段13は、要素画像Iの光線のシフト量を、要素画像Iの画素の±1/4画素斜め方向にずらした量とする。
【0067】
時系列に要素画像群の切り替えと光線の回折方向の切り替えとを行うことで、三次元映像表示装置1Cは、図19に示すように、観察者Mが個々の要素レンズ120のレンズ中心を介して観察する要素画像Iの画素を切り替えることができる。これによって、三次元映像表示装置1Cは、1つの要素レンズ120で、2W×2H画素の要素画像として、観察者Mに視認させることができる。これは、要素画像の解像度が水平方向および垂直方向に倍になったことに相当し、三次元映像Tの解像度が向上することになる。
【0068】
三次元映像表示装置1Cにより、解像度が倍となる状態を、図20を参照して、要素画像を拡大して説明する。
図20(a)は、要素画像Iの各画素(px,px,…)の光が、要素レンズ120のレンズ中心を通過する経路を示している。例えば、画素pxの光は、偏光回折素子130a,130bで時系列に回折され、光線L11,L12となる。同様に、画素pxの光は、光線L21,L22となる。
逆に、要素レンズ120のレンズ中心を通過した光(光線L11,L12,L21,L22等)を観察者が視認した場合、図20(b)に示すように、観察者は、光線L11,L12,L21,L22等を逆方向に延長(図20中、一点鎖線、二点鎖線)した画素位置を観察することになる。すなわち、本来、要素画像Iの画素ピッチpに対し、偏光回折素子130a,130bを介在させることで、画素ピッチは、仮想的にvpg(=p/2)となる。これによって、要素画像の解像度が倍になる。
このように、要素画像を高解像度化することで、三次元映像表示装置1Cは、三次元映像の奥行き再現性を高めることができる。
【符号の説明】
【0069】
1,1B,1C 三次元映像表示装置
10 二次元映像表示手段
11 偏光切替手段
110 偏光切替素子
111 切替制御手段
112 λ/4波長板
12 レンズアレイ
120 要素レンズ
13,13B 偏光回折手段
130a,130b 偏光回折素子
131a,131b 偏光回折素子
132 偏光切替素子(第2偏光切替手段)
133 切替制御手段(第2偏光切替手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20