(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/472 20060101AFI20230512BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230512BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20230512BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20230512BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20230512BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A61F13/472 200
A61F13/15 140
A61F13/539
A61F13/56 110
A61F13/15 220
A61F13/536
A61F13/533
(21)【出願番号】P 2020542350
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009496
(87)【国際公開番号】W WO2020179878
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019041042
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】山本 なるみ
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】渡子 直紀
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3213494(JP,U)
【文献】登録実用新案第3218754(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/472
A61F 13/15
A61F 13/539
A61F 13/56
A61F 13/536
A61F 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向および幅方向を有するとともに、吸収体を有する吸収部と、前記前後方向において前記吸収部の前方側に隣接する機能部と、前記吸収部の前記幅方向における両端部がそれぞれ前記幅方向の外方側に延出してなる一対のフラップ部とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、平面視にて、
前記一対のフラップ部の各々の前後方向中央部を通るフラップ部中央軸線から前記吸収性物品の前方側端部まで延在し、且つ、15cm以上の前後方向長さを有する前方側領域と、
前記前方側領域において前記フラップ部中央軸線から前方側に13cm離れた位置を起点として更に前方側に延在し、且つ、着用時に着用者の下腹部に対向する下腹部対応領域と、を有しており、
前記下腹部対応領域は、平面視にて前記機能部と重複し、且つ、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有していない、
前記吸収性物品。
【請求項2】
前記前方側領域は、前記下腹部対応領域以外の部分において、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有し、
前記折軸は、前記吸収体と厚さ方向に重なっている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記機能部は、所定の機能性部材を含む、請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収部は、前記吸収体と前記機能性部材とが厚さ方向に重なる重複部を有する、請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記重複部は、前記幅方向に延在する幅広エンボス部を有する、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品は、厚さ方向において前記吸収体および前記機能性部材の各々よりも肌対向面側に位置する表面シートを有し、
前記吸収体および前記機能性部材の各々は、前記表面シートと接合されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記機能性部材は、所定の機能を有する機能剤成分と、油状成分とを含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記機能性部材は、機能剤成分として温感剤を含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記下腹部対応領域は、非肌対向面に着衣固定用の粘着部を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生理用ナプキン等の吸収性物品においては、吸収性能や良好な着用感などの基本的機能に加えて所定の付加的機能を有する吸収性物品が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、着用者の下腹部に対応する長手方向の前方側に、温感剤等の機能剤を含む機能層を備えた吸収性物品が開示されている。この特許文献1に開示された吸収性物品によれば、着用者の下腹部に上記機能層による所定の機能(例えば、温感)を付与することができるため、着用者の生理痛を緩和するなどの効果が期待できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された吸収性物品は、当該吸収性物品を前後方向に折り畳んで個包装体を形成するための幅方向折軸が上記機能層(機能部)と重なっているため、吸収性物品を着用する際(すなわち、吸収性物品が着用者の身体形状に沿って前後方向に湾曲するように変形する際)に、上記幅方向折軸に沿って形成される折り皺によって、着用者の肌と吸収性物品の肌対向面との間に隙間が生じやすく、上記機能層による機能を着用者の下腹部に十分に付与できない虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、機能部の機能を着用者の下腹部に十分に付与することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、前後方向および幅方向を有するとともに、吸収体を有する吸収部と、前記前後方向において前記吸収部の前方側に隣接する機能部と、前記吸収部の前記幅方向における両端部がそれぞれ前記幅方向の外方側に延出してなる一対のフラップ部とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、平面視にて、
前記一対のフラップ部の各々の前後方向中央部を通るフラップ部中央軸線から前記吸収性物品の前方側端部まで延在し、且つ、15cm以上の前後方向長さを有する前方側領域と、
前記前方側領域において前記フラップ部中央軸線から前方側に13cm離れた位置を起点として更に前方側に延在し、且つ、着用時に着用者の下腹部に対向する下腹部対応領域と、を有しており、
前記下腹部対応領域は、平面視にて前記機能部と重複し、且つ、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有していない、前記吸収性物品である。
【0008】
本態様1の吸収性物品は、前後方向長さの長い前方側領域を有していて、さらに、その前方側領域内の下腹部対応領域が、平面視にて上記機能部と重複し且つ吸収性物品を前後方向に折り畳むための折軸を有していないため、上記下腹部対応領域において従来のような折り皺が形成されにくくなり、上記前方側領域によって着用者の下腹部を的確に覆いつつ上記下腹部対応領域を着用者の肌に隙間なく密着させることができる。これにより、本態様の吸収性物品は、上記下腹部対応領域と重複する上記機能部の機能を、着用者の下腹部に十分に付与することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1の吸収性物品において、前記前方側領域は、前記下腹部対応領域以外の部分において前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有し、前記折軸は、前記吸収体と厚さ方向に重なっている。
本態様の吸収性物品は、下腹部対応領域以外の部分の前方側領域に、吸収性物品を前後方向に折り畳むための折軸を有していることによって、吸収性物品をコンパクトに折り畳めるようにしつつ、かかる折軸が相対的に剛性の高い(厚みの厚い)吸収体と厚さ方向に重なっていることで、上記折軸に沿った折り癖が形成されにくくなっている。これにより、本態様の吸収性物品は、より確実に上記下腹部対応領域と重複する機能部を着用者の肌に密着させることができる、すなわち上記機能部の機能をより確実に着用者の下腹部に付与することができる。
【0010】
本発明の更に別の態様(態様3)では、上記態様1または2の吸収性物品において、前記機能部は、所定の機能性部材を含む。
本態様の吸収性物品は、上記機能部が所定の機能性部材を含むものであるため、当該機能性部材によって各種要求特性等に応じた任意の機能を発現させることができる。
【0011】
本発明の更に別の態様(態様4)では、上記態様3の吸収性物品において、前記吸収部は、前記吸収体と前記機能性部材とが厚さ方向に重なる重複部を有する。
本態様の吸収性物品は、吸収部が上述の重複部を有している、すなわち機能部の機能性部材が機能部と吸収部との境界部分を超えて吸収部まで延在しているため、機能部と吸収部との間に継ぎ目が形成されず、当該継ぎ目を起点とする上記前方側領域の不本意な折れ曲がりを抑制することができる。これにより、本態様の吸収性物品は、更に確実に上記下腹部対応領域と重複する機能部を着用者の肌に密着させることができる。
【0012】
本発明の更に別の態様(態様5)では、上記態様4の吸収性物品において、前記重複部は、前記幅方向に延在する幅広エンボス部を有する。
本態様の吸収性物品は、幅広エンボス部によって機能性部材が吸収体に強固に固定されるため、吸収性物品の着用中に機能性部材がヨレにくく、上記前方側領域の不本意な折れ曲がりを抑制することができる。これにより、本態様の吸収性物品は、より確実に上記下腹部対応領域と重複する機能部を着用者の肌に密着させることができる。
【0013】
本発明の更に別の態様(態様6)では、上記態様3~5のいずれかの吸収性物品において、前記吸収性物品は、厚さ方向において前記吸収体および前記機能性部材の各々よりも肌対向面側に位置する表面シートを有し、前記吸収体および前記機能性部材の各々は、前記表面シートと接合されている。
本態様の吸収性物品は、吸収体および機能性部材の各々が表面シートと接合されているため、吸収性物品を着用する際に、当該吸収性物品が着用者の身体形状に沿って前後方向に湾曲するように変形しても、吸収体および機能性部材の位置ずれ等に起因する前方側領域の不本意な折れ曲がりを生じにくくし、さらに、吸収体と機能性部材との境界部分が表面シートで覆われていることによって、当該境界部分において着用者の肌との間に隙間を生じにくくすることができる。
【0014】
本発明の更に別の態様(態様7)では、上記態様3~6のいずれかの吸収性物品において、前記機能性部材は、所定の機能を有する機能剤成分と、油状成分とを含む。
本態様の吸収性物品は、機能性部材が機能剤成分とともに、油状成分を含んでいるため、当該油状成分によって、機能性部材および当該機能性部材が含まれる機能部に折り癖を付きにくくすることができる。
【0015】
本発明の更に別の態様(態様8)では、上記態様3~7のいずれかの吸収性物品において、前記機能性部材は、機能剤成分として温感剤を含む。
本態様の吸収性物品は、機能性部材が機能剤成分として温感剤を含んでいるため、着用者の下腹部に対して十分な温感作用を付与することができ、生理痛などの諸症状の緩和に寄与することができる。
【0016】
本発明の更に別の態様(態様9)では、上記態様1~8のいずれかの吸収性物品において、前記下腹部対応領域は、非肌対向面に着衣固定用の粘着部を有する。
本態様の吸収性物品は、下腹部対応領域の非肌対向面に着衣固定用の粘着部を有していることで、上記下腹部対応領域を着用者の着衣(例えば、下着等)に的確に粘着固定してから吸収性物品を着用することができるため、より的確に上記下腹部対応領域と重複する機能部を着用者の肌に密着させることができる。
【0017】
本発明の更に別の態様(態様10)は、前後方向および幅方向を有するとともに、吸収体を有する吸収部と、前記前後方向において前記吸収部の前方側に隣接する機能部とを有する吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、平面視にて、
前記吸収部と前記機能部の境界部よりも前方側には、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有していない、前記吸収性物品である。
【0018】
本態様10の吸収性物品は、前記吸収部と前記機能部の境界部よりも前方側には、前記吸収性物品を前記前後方向に折り畳むための折軸を有していないため、上記境界部よりも前方側の領域において従来のような折り皺が形成されにくくなり、当該領域によって着用者の下腹部を的確に覆いつつ着用者の肌に隙間なく密着させることができる。これにより、本態様の吸収性物品は、上記機能部の機能を、着用者に十分に付与することができる。
【0019】
本発明の更に別の態様(態様11)では、上記態様10の吸収性物品において、前記機能部は、所定の機能性部材を含み、
前記吸収部は、前記吸収体と前記機能性部材とが厚さ方向に重なる重複部を有し、
前記重複部は、前記幅方向に延在する幅広エンボス部を有する。
本態様の吸収性物品は、幅広エンボス部によって機能性部材が吸収体に強固に固定されるため、吸収性物品の着用中に機能性部材がヨレにくく、上記前方側領域の不本意な折れ曲がりを抑制することができる。これにより、本態様の吸収性物品は、より確実に上記機能部を着用者の肌に密着させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、機能部の機能を着用者の下腹部に十分に付与することができる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1を、展開した状態で表面シート2側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
【
図2】
図2は、生理用ナプキン1を、展開した状態で裏面シート3側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
【
図3】
図3は、生理用ナプキン1の、前後方向D
Lに延びる中央軸線C
Lに沿った断面の端面図である。
【
図4】
図4は、生理用ナプキン1を折り畳んでなる個包装体10の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態に係る生理用ナプキン1’を、展開した状態で表面シート2側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、吸収性物品等)を、垂直方向の上方側から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0023】
(各種定義)
本明細書では、「吸収性物品の前後方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に近位側となる前後方向の一方側」を、「吸収性物品の前方側」といい、「吸収性物品の前後方向において、着用者が吸収性物品を着用した際に着用者の腹部に対して相対的に遠位側(すなわち、着用者の背部に対して相対的に近位側)となる他方側」を、「吸収性物品の後方側」という。
さらに、本明細書では、「縦長の対象物の幅方向の中央部に位置し且つ前後方向に延びる軸線」を「前後方向の中央軸線CL」という。
また、本明細書では、「縦長の対象物の前後方向において、当該前後方向の中央部に対して相対的に近位側」を「前後方向の内方側」といい、「縦長の対象物の前後方向において、当該前後方向の中央部に対して相対的に遠位側」を「前後方向の外方側」という。同様に、「縦長の対象物の幅方向において、当該幅方向の中央部に対して相対的に近位側」を「幅方向の内方側」といい、「縦長の対象物の幅方向において、当該幅方向の中央部に対して相対的に遠位側」を「幅方向の外方側」という。
そして、本明細書では、特に断りのない限り、展開した状態の吸収性物品の厚さ方向において、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側に位置する表面」を「肌対向面」といい、「吸収性物品の着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側に位置する表面」を「非肌対向面」という。
【0024】
<吸収性物品>
本発明の一実施形態に係る生理用ナプキン1(本発明における「吸収性物品」の一例である。)は、
図1に示すように、平面視にて、前後方向D
Lおよび幅方向D
Wを有する縦長の外形形状を有しており、さらに、前後方向D
Lの後方側D
Bに位置する吸収部30において、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部および他方側端部(すなわち、両端部)の各々が幅方向D
Wの外方側に向かって略台形状に延出してなる、一対のフラップ部6、6を有している。なお、一対のフラップ部6、6は、ヒップフラップではなく、ウイングである。
【0025】
なお、本発明において、吸収性物品の外形形状は、このような態様に限定されず、前後方向および幅方向を有する長形状のものであれば、各種用途等に応じた任意の縦長の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形など)を採用することができる。
【0026】
そして、上述の生理用ナプキン1では、
図1に示すように、上記一対のフラップ部6、6の各々の前後方向中央部を通るフラップ部中央軸線C
Wから生理用ナプキン1の前方側端部まで延在し、且つ、15cm以上の前後方向長さを有する前方側領域A
Fと、上記フラップ部中央軸線C
Wから生理用ナプキン1の後方側端部まで延在する後方側領域A
Bと、を有していて、さらに、前方側領域A
Fは、上記フラップ部中央軸線C
Wから前方側に13cm離れた位置L
13を起点として更に前方側D
Fに延在し、且つ、着用時に着用者の下腹部に対向する下腹部対応領域A
Hを有している。
なお、この下腹部対応領域A
Hは、着用者の下腹部、特に、着用者の子宮およびその近傍部分に対向するように、フラップ部中央軸線C
Wから前方側に13cm離れた位置L
13を起点として更に前方側D
Fに延在する領域として区画されており、前後方向D
Lにおいて上記吸収部30の前方側D
Fに隣接するとともに所定の機能性部材21を含む機能部20と平面視にて重複している。
【0027】
生理用ナプキン1は、
図3に示すように、厚さ方向D
Tにおいて、生理用ナプキン1の肌対向面S
Fを形成する液透過性の表面シート2と;生理用ナプキン1の非肌対向面S
Bを形成する液不透過性の裏面シート3と;これら両シートの間に位置する吸水性の吸収体4と;上記前方側領域A
F内の前方側D
Fに位置し且つ下腹部対応領域A
Hと平面視にて重複する機能部20において、表面シート2と裏面シート3の間に位置し且つ機能剤成分として温感剤を含む機能性部材21とを、主な構成部材として備えている。
【0028】
さらに、生理用ナプキン1は、
図1に示すように、幅方向D
Wの両端部においてそれぞれ前後方向D
Lに延在する一対のサイドシート5、5を備えていて、さらに、
図2に示すように、裏面シート3の非肌対向面S
Bにおいて吸収体4と厚さ方向D
Tに重複し且つ上記前方側領域A
Fから後方側領域A
Bに跨って前後方向D
Lに延在するように複数本の帯状の形態で配置された着衣固定用粘着部7と;一対のフラップ部6、6の各々の非肌対向面S
Bにおいて前後方向D
Lに延びる帯状の形態で配置された一対のフラップ部固定用粘着部71、71と;上記下腹部対応領域A
Hと重複する機能部20の非肌対向面S
Bにおいて幅方向D
Wの両端部に配置された、着衣固定用の一対の前方側粘着部72、72とを、構成部材として備えている。
【0029】
また、生理用ナプキン1は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の最も前方側D
Fに位置する前方側端部を通るように幅方向D
Wに延びる前方端仮想線LE
1と、生理用ナプキン1の最も後方側D
Bに位置する後方側端部を通るように幅方向D
Wに延びる後方端仮想線LE
2と、を有していて、さらに、これら前方端仮想線LE
1および後方端仮想線LE
2の間には、上記前方側領域A
F内の下腹部対応領域A
Hと重複するように配置され且つ着用者に温感を与える上記機能性部材21を含む機能部20と、当該機能部20の後方側D
Bに隣接し、着用者から排出された経血等の液状排泄物を吸収する吸収体4を含む吸収部30と、を有している。
【0030】
なお、上述の機能部20と吸収部30とは、所定の機能を発揮し且つ吸収性が低い部分(すなわち、吸収体4を有していない部分)と、吸収性の高い部分(すなわち、吸収体4を有する部分)とを生理用ナプキン1の前後方向DLに区分した領域である。
したがって、本発明の吸収性物品においては、機能部は、上述の生理用ナプキン1のような機能性部材21を有していなくてもよい。例えば、機能部は、表面シートと裏面シートによって構成されていてもよく、そのような構成でも、着用者の下腹部を保温する機能を発揮することができる。
【0031】
さらに、上記吸収部30は、前後方向DLにおいて吸収部30の略中央部に位置するとともに、上記一対のフラップ部6、6と幅方向DWに重複し(すなわち、上記フラップ部中央軸線CWと重複し)、生理用ナプキン1の着用時に着用者の排泄口に対向する排泄口対応領域と;当該排泄口対応領域の前方側DFに隣接する前方側吸収部と;当該排泄口対応領域の後方側DBに隣接する後方側吸収部との、3つの領域に区分することができる。
【0032】
そして、上述の生理用ナプキン1では、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1を幅方向D
Wに三つ折りするための、前後方向D
Lに延びる前後方向第1折軸LW
1および前後方向第2折軸LW
2と;生理用ナプキン1を前後方向D
Lに三つ折りするための、幅方向D
Wに延びる幅方向第1折軸LL
1および幅方向第2折軸LL
2とを有している。生理用ナプキン1は、これらの各折軸によって、肌対向面S
Fが内側となるように前後方向D
Lおよび幅方向D
Wのそれぞれに三つ折りに折り畳まれて、
図4に示すような個包装体10を形成することができる。
すなわち、
図1に示すような展開した状態の生理用ナプキン1を、前後方向D
Lに延びる前後方向第1折軸LW
1および前後方向第2折軸LW
2の各々において、肌対向面S
Fが内側となるように幅方向D
Wに三つ折りに折り畳んだ後、幅方向D
Wに延びる幅方向第1折軸LL
1および幅方向第2折軸LL
2の各々において、肌対向面S
Fが内側となるように前後方向D
Lに三つ折りに折り畳むことによって、
図4に示すような個包装体10を形成することができる。
なお、生理用ナプキン1を折り畳むにあたっては、生理用ナプキン1を、非肌対向面S
Bに貼付された包装材11とともに折り畳み、さらに、折り畳んだ後は、包装材11の外表面において当該包装材11の端部に配置されたリードテープ12によって、折り畳まれた包装材11の開放端部を封止して、包装状態を維持する。
【0033】
そして、上述の生理用ナプキン1は、
図1に示すように、上記前方側領域A
F内の下腹部対応領域A
Hには、生理用ナプキン1を前後方向D
Lに折り畳むための幅方向折軸を有していない。
このように、生理用ナプキン1は、その前方側領域A
F内の下腹部対応領域A
Hが、上述の機能部20と重複し且つ生理用ナプキン1を前後方向D
Lに折り畳むための幅方向折軸を有していないため、上記下腹部対応領域A
Hにおいて従来のような折り皺を形成しにくくすることができる。これにより、生理用ナプキン1は、15cm以上の前後方向長さを有する前方側領域A
Fによって着用者の下腹部を的確に覆いつつ、上記下腹部対応領域A
Hを着用者の肌に隙間なく密着させることができるため、上記下腹部対応領域A
Hと重複する上記機能部20の機能を、着用者の下腹部に十分に付与することができる。
【0034】
なお、前後方向折軸(すなわち、前後方向第1折軸LW1および前後方向第2折軸LW2)は、幅方向折軸と異なり、生理用ナプキン1を着用する際(すなわち、生理用ナプキン1が着用者の身体形状に沿って前後方向DLに湾曲するように変形する際)に、着用者の肌と吸収性物品の肌対向面との間に隙間を生じにくい。
【0035】
また、上述の生理用ナプキン1では、上記前方側領域A
Fは、
図1に示すように、下腹部対応領域A
H以外の部分において生理用ナプキン1を前後方向D
Lに折り畳むための幅方向第1折軸LL
1を有していて、当該幅方向第1折軸LL
1は、吸収体4と厚さ方向D
Tに重なっている。このように、下腹部対応領域A
H以外の部分の前方側領域A
Fに、幅方向第1折軸LL
1を有していることによって、生理用ナプキン1をコンパクトに折り畳めるようにしつつ、かかる幅方向第1折軸LL
1が相対的に剛性の高い(厚みの厚い)吸収体4と厚さ方向D
Tに重なっていることで、上記幅方向第1折軸LL
1に沿った折り癖が形成されにくくなっている。これにより、生理用ナプキン1は、より確実に上記下腹部対応領域A
Hと重複する機能部20を着用者の肌に密着させることができる、すなわち上記機能部20の機能をより確実に着用者の下腹部に付与することができる。
【0036】
なお、
図1~
図3に示すように、機能部20には、吸収部30の吸収体4がこれら領域の境界部分を超えて延在していないが、吸収部30には、機能部20の機能性部材21がこれら領域の境界部分を超えて延在しており、さらに、吸収部30における機能部20との隣接部分には、相対的に肌対向面側に位置する吸収体4と、相対的に非肌対向面側に位置する機能性部材21とが厚さ方向D
Tに重なる重複部40を有している。このような形態で吸収体4と機能性部材21が重なっているため、重複部40は、着用者から排出された液状排泄物を吸収する作用を主な作用として備えている。
このように、生理用ナプキン1は、吸収部30が上述の重複部40を有している、すなわち機能部20の機能性部材21が機能部20と吸収部30との境界部分を超えて吸収部30まで延在しているため、機能部20と吸収部30との間に継ぎ目が形成されず、当該継ぎ目を起点とする上記前方側領域A
Fの不本意な折れ曲がりを抑制することができる。これにより、生理用ナプキン1は、更に確実に上記下腹部対応領域A
Hと重複する機能部20を着用者の肌に密着させることができる。
【0037】
なお、生理用ナプキン1は、着用する際に、生理用ナプキン1の非肌対向面SBを、着衣固定用粘着部7および一対の前方側粘着部72、72を介して着用者の着衣(例えば、下着等)の内面に貼り付けた後、一対のフラップ部6、6をそれぞれ着衣の外面側に折り返しつつ一対のフラップ部固定用粘着部71、71を介して着衣の外面に貼り付けることにより、着用者の着衣に固定される。
【0038】
以下、本発明の吸収性物品の各種構成部材について、上述の生理用ナプキン1を用いて更に詳細に説明する。
【0039】
[表面シート]
生理用ナプキン1において、表面シート2は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の前後方向D
Lの前方側端部から後方側端部にわたって延在するとともに、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部から他方側端部にわたって延在する縦長の外形形状を有している。かかる表面シート2は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌面に当接し得る接触面(すなわち、生理用ナプキン1の肌対向面S
F)を形成する、液透過性のシート状部材によって形成されている。
【0040】
このような液透過性のシート状部材としては、吸収性物品の表面シートとして用い得る諸特性(例えば、液透過性や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の各種不織布や多孔樹脂フィルムなどを用いることができる。さらに、シート状部材の構造も特に制限されず、平坦な無孔のシート状構造のほか、例えば、複数の開口部を有する平坦なシート状構造や凹凸構造などの種々のシート状構造を採用することができる。
【0041】
なお、表面シートとして不織布を用いる場合、その構成繊維の種類は、特に制限されず、例えば、セルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維(例えば、親水化処理を施したオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等)などの親水性繊維が挙げられる。これらの繊維は単独で用いても、2種類以上の繊維を併用してもよい。
【0042】
また、上述の生理用ナプキン1では、厚さ方向DTにおいて吸収体4および機能性部材21の各々よりも肌対向面側に位置する表面シート2が、吸収体4および機能性部材21の各々と接合されている。このように、吸収体4および機能性部材21の各々が表面シート2と接合されていると、生理用ナプキン1を着用する際に、当該生理用ナプキン1が着用者の身体形状に沿って前後方向DLに湾曲するように変形しても、吸収体4および機能性部材21の位置ずれ等に起因する前方側領域AFの不本意な折れ曲がりを生じにくくし、さらに、吸収体4と機能性部材21との境界部分が表面シート2で覆われていることによって、当該境界部分において着用者の肌との間に隙間を生じにくくすることができる。
【0043】
本発明において、表面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の液透過性や肌触り、柔軟性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0044】
[吸収体]
上述の生理用ナプキン1において、吸収体4は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の排泄口対応領域の略中央部を中心にして、前後方向D
Lおよび幅方向D
Wの広範囲に延在するとともに、前後方向D
Lの両端部がそれぞれ前後方向D
Lの外方側に向かって円弧を描くように突出した縦長の外形形状を有している。かかる吸収体4は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて表面シート2と裏面シート3の間に配置されて、表面シート2を透過してきた経血等の液状排泄物を吸収して保持し得る、所定の吸水性及び液保持性を備えた吸水性部材によって形成されている。
【0045】
このような吸水性部材は、着用者から排出される経血等の液状排泄物を吸収して保持し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の任意の吸水性部材を採用することができる。そのような吸水性部材の例としては、任意の吸水性材料によって構成される少なくとも一つの吸収コアを、ティッシュ等の親水性のコアラップシートで覆ったものなどが挙げられる。ここで、吸収コアを構成する吸水性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマーからなる粒状物;およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0046】
本発明において、吸収体の外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の吸収性能や柔軟性、強度等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0047】
[裏面シート]
上述の生理用ナプキン1において、裏面シート3は、
図2に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の前後方向D
Lの前方側端部から後方側端部にわたって延在するとともに、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの一方側端部から他方側端部にわたって延在する縦長の外形形状を有している。かかる裏面シート3は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて非肌対向面側の位置に配置されて、着用者の肌面に対する非接触面(すなわち、生理用ナプキン1の非肌対向面S
B)を形成する、液不透過性のシート状部材によって形成されている。
【0048】
このような液不透過性のシート状部材としては、少なくとも着用者から排出される液状排泄物の透過を防止し得る程度の液不透過性を有するものであれば特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂繊維(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、芯鞘型等の各種複合繊維など)によって形成された疎水性不織布;ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成された疎水性樹脂フィルム;該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;SMS不織布等の積層不織布などを用いることができる。さらに、シート状部材の構造も特に制限されず、平坦な無孔のシート状構造のほか、例えば、所定の液不透過性を保持しつつ通気性を確保するための複数の開口部を備えた平坦なシート状構造や凹凸構造などの種々のシート状構造を採用することができる。
【0049】
本発明において、裏面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の防漏性能や通気性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0050】
[サイドシート]
上述の生理用ナプキン1において、一対のサイドシート5、5は、
図1に示すように、平面視にて、生理用ナプキン1の幅方向D
Wの両端部においてそれぞれ前後方向D
Lに延在する、一対の帯状のシート状部材によって形成されている。かかる一対のサイドシート5、5は、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて肌対向面側の位置に配置されて、上記表面シート2とともに生理用ナプキン1の肌対向面S
Fを形成している。
【0051】
さらに、一対のサイドシート5、5の各々は、幅方向DWの外方側の端部が裏面シート3の肌対向面に接合されて固定端部を形成している一方、幅方向DWの内方側の端部が表面シート2などのいずれの構成部材とも接合されておらず、自由端部を形成している。これにより、一対のサイドシート5、5は、生理用ナプキン1の着用時に幅方向DWの内方側の端部(自由端部)が起立して、着用者から排出される液状排泄物の漏洩を防止するための防漏壁部を形成することができる。
【0052】
サイドシートに用いられる帯状のシート状部材としては、吸収性物品のサイドシートとして用い得る諸特性(例えば、液不透過性(防漏性)や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、上記裏面シートと同様の液不透過性のシート状部材(すなわち、疎水性不織布や疎水性樹脂フィルムなどのシート状部材)を帯状に裁断したものなどを用いることができる。
【0053】
本発明において、サイドシートの外形形状や各種寸法、坪量等は、所望の防漏性や肌触り、柔軟性等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0054】
なお、本発明において、上記一対のサイドシートを備えることは必須の構成要件でないため、吸収性物品の形態等によっては、必ずしもこのようなサイドシートを有していなくてもよい。
【0055】
[機能性部材]
上述の生理用ナプキン1において、機能性部材21は、
図1に示すように、平面視にて、上記前方側領域A
F内の前方側D
Fに位置する下腹部対応領域A
Hと重複し、且つ、前後方向D
Lおよび幅方向D
Wの広範囲にわたって延在する所定の外形形状を有している。かかる機能性部材21は、
図3に示すように、生理用ナプキン1の厚さ方向D
Tにおいて表面シート2と裏面シート3の間に配置されて、着用者に所定の作用(温感作用)をもたらす機能剤成分としての温感剤を含むシート状部材によって形成されている。
【0056】
機能性部材21を形成するシート状部材は、機能剤成分としての温感剤と、当該温感剤を保持し得る基材とによって構成されている。
なお、本発明において、機能性部材を形成するシート状部材は、例えば、液体状または固体状(ペースト状、粉体状等を含む。)の機能剤成分と、当該機能剤成分を保持し得る構造を備えた基材(例えば、布帛等)とを少なくとも含むものが挙げられる。
【0057】
上記機能剤成分を保持し得る基材としては、液体状または固体状の機能剤成分を保持し得るものであれば特に制限されず、例えば、布帛(例えば、エアレイド等の不織布、織布、編布等)や多孔質樹脂シート(例えば、スポンジシート等)などが挙げられる。かかる基材は、機能性部材用の基材として単独で用いられるものでなくてもよく、他の構成部材(例えば、表面シートや裏面シート、中間シート、コアラップシート等)と兼用されていてもよい。すなわち、表面シートを機能性部材の基材として兼用し、当該表面シートの非肌対向面に機能剤成分(例えば、温感剤)を塗工することによって上記機能性部材を構成してもよく、また、表面シートの非肌対向面側に位置する中間シートやコアラップシート(ティッシュ)を機能性部材の基材として兼用し、これらのシートに機能剤成分を含ませることによって上記機能性部材を構成してもよい。
また、機能性部材の基材は、複数種類のシートを併用してもよく、例えば、上述の表面シートと、中間シートと、コアラップシートとを、同時に基材として用いてもよい。
なお、機能剤成分自体が所定の保形性等を有していて、機能剤成分単独で吸収性物品の所定の位置に配置され且つ所定の機能を発揮し得るような場合は、機能性部材は、基材を有していなくてもよい。
【0058】
また、上述の生理用ナプキン1において、機能剤成分として用いられる温感剤は、それ自体が発熱せずに着用者の皮膚の温熱知覚受容器を刺激することにより、着用者に温感を知覚させる温感成分を含むものである。
なお、生理用ナプキン1においては、温感剤は、平面視にて、機能性部材21の略全体に含まれているが、所定の温感機能を発揮し得るのであれば一部分(例えば、中央部のみ等)に含まれていてもよい。
【0059】
また、上述のとおり、生理用ナプキン1は、機能性部材21が表面シート2よりも非肌対向面側に配置されているが、機能性部材21の温感剤が、生理用ナプキン1の着用時において溶出または揮発等により表面シート2を透過して着用者の下腹部の肌に接触することができるため、かかる温感剤の温感成分が皮膚の温熱知覚受容器を刺激することにより、着用者の下腹部に温感を付与することができる。このようにして着用者の下腹部、すなわち着用者の子宮に近い部分を温めることで、着用者の生理痛を緩和したり、月経前症候群や冷え性、更年期障害などの諸症状を軽減したりすることに寄与することができる。
【0060】
なお、機能性部材21を配置する厚さ方向DTの位置は、生理用ナプキン1の着用時に温感剤が着用者の肌に接触し得る位置であれば特に制限されないが、着用者の肌への接触のしやすさの点から、肌対向面SFに近い位置であることが好ましい。
【0061】
上記温感剤に含まれる温感成分としては、着用者の安心感などの点から、植物由来の化合物であることが好ましく、例えば、カプサイシン類、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル等)、ショウガエキス、ジンジャーオイルなどが挙げられる。これらの化合物の中でも、皮膚への刺激性の点から、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体、ショウガエキス、ジンジャーオイルなどを用いることが好ましい。なお、これらの化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0062】
また、上記温感剤を塗工などにより基材に適用する際は、温感成分とともに当該温感成分を溶解ないし分散し得る溶媒成分を用いることができ、そのような溶媒成分としては、例えば、親油性溶媒や親水性溶媒などが挙げられる。
上記親油性溶媒としては、例えば、天然油(例えば、トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油など)や炭化水素(例えば、パラフィン等)などの油脂が挙げられる。一方、上記親水性溶媒としては、例えば、水やアルコールなどが挙げられ、さらに、アルコールとしては、例えば、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等)、高級アルコール(例えば、カプリルアルコール、ラウリルアルコール等)などが挙げられる。
これらの溶媒の中でも、揮発性を制御しやすいという点で、油脂などの親油性溶媒またはアルコールを用いることが好ましく、さらに、吸収性物品の吸収性能を維持しやすいという点から、油脂などの親油性溶媒を用いることがより好ましい。
なお、このような溶媒は、基材に適用した後に、溶媒が固化した状態または揮発した状態で適用対象部位に留まっていてもよい。
【0063】
また、上記温感剤における温感成分の濃度は、温感効果の点から、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、更に好ましくは5~15質量%である。
【0064】
本発明において、機能性部材の機能剤成分は、上記温感剤に限定されず、所望の作用に応じた任意の機能剤成分を採用することができる。そのような機能剤成分としては、例えば、冷感剤や発熱剤、薬剤(例えば、皮膚収斂剤、抗炎症剤、抗菌剤、pH調整剤、保湿剤、消臭剤、漢方薬等)などが挙げられる。これらの機能剤成分は、例えば、平面視にて、機能性部材の一部の部分に1種類の機能剤成分(例えば、温感剤)を配置し、他の部分に別の種類の機能剤成分(例えば、冷感剤)を配置する形態で、併用してもよい。
また、機能剤成分は、吸収性物品の使用前に揮発したり、他の領域へ移動したりすることを防止するために、水崩壊性の保護材(例えば、マイクロカプセル等)に内包されていてもよい。例えば、機能剤成分を内容したマイクロカプセルは、液体(例えば、経血、尿、汗等)に接触すると崩壊し、機能剤成分を外部へ放出することができる。このようにして放出された機能剤成分は、着用者の体温等によって気化したり、着用者の肌に接触したりすることで、着用者に対して所定の機能を発揮することができる。
なお、マイクロカプセルの素材としては、特に限定されないが、例えば、単糖類(例えば、ブドウ糖等)、二糖類(例えば、ショ糖等)、多糖類(例えば、デキストリン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、水溶性でんぷん等)などの糖類;ゼラチン;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの水溶性ポリマーが挙げられる。マイクロカプセルは、例えば、水にマイクロカプセルの素材を溶解させて水溶液を形成し、当該水溶液に機能剤成分及び界面活性剤を混合して、その水溶液をスプレーしながら減圧乾燥することにより製造することができる。なお、マイクロカプセルは市販されており、例えば、Symrise社から市販されている、INCAP(商標)等が挙げられる。
【0065】
本発明において、上記機能剤成分として用い得る冷感剤は、それ自体が冷却せずに着用者の皮膚の冷感知覚受容器を刺激することにより、着用者に冷感を知覚させる冷感成分を含むものである。上記冷感成分としては、例えば、メントール(例えば、l-メントール等);メントール誘導体(例えば、乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル等);サリチル酸メチル;ミントやユーカリ等の植物由来の精油などが挙げられる。なお、冷感剤を塗工などにより基材に適用する際に用い得る溶媒成分は、上記温感剤と同様のものを用いることができる。
【0066】
また、上記冷感剤における冷感成分の濃度は、冷感効果の点から、好ましくは5~90質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、更に好ましくは30~70質量%である。
【0067】
本発明において、上記機能剤成分として用い得る発熱剤は、それ自体が発熱することで着用者の皮膚を温める作用を有するものであり、例えば、鉄粉等の金属粉の酸化熱、酸またはアルカリの中和熱、無機塩の水和熱などの化学エネルギーを利用するものが挙げられる。なお、発熱剤は、溶媒成分または分散媒体に溶解または分散させて用いてもよい。
【0068】
本発明において、上記機能剤成分として用い得る薬剤は、着用者の皮膚に所定の薬理作用をもたらすものであり、例えば、皮膚収斂剤、抗炎症剤、抗菌剤、pH調整剤、保湿剤などが挙げられる。
上記皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛や硫酸アルミニウム、タンニン酸、油溶性ポリフェノール(例えば、オオバクエキス、オトギリソウエキス、カモミラエキス、シラカバエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス等)などの収斂成分を含むものが挙げられる。
上記抗炎症剤としては、例えば、天然由来の抗炎症成分(例えば、ボタンエキス、オトギリソウエキス、カモミラエキス、ヨモギエキス、シソエキス等)や合成抗炎症成分(例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等)などの抗炎症成分を含むものが挙げられる。
上記抗菌剤としては、例えば、天然由来の抗菌成分(例えば、オウバクエキス、オリーブ葉エキス、カモミラエキス、クマザサエキス、サンショウエキス、シソエキス、ドクダミエキス、ホップエキス、ユーカリエキス、ヨモギエキス等)や合成抗菌成分(例えば、エチルヘキシルグリセリン等)などの抗菌成分を含むものが挙げられる。
上記pH調整剤としては、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等の肌を弱酸性に保つための弱酸性成分を含むものが挙げられる。
上記保湿剤としては、例えば、多価アルコール類(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビット等)、尿素、エモリエント成分(例えば、ワセリン等)などの保湿成分を含むものが挙げられる。
【0069】
本発明において、機能性部材における機能剤成分の含有量(坪量)は、機能剤成分の種類や機能性部材の配置位置などに応じた所定の含有量を採用することができる。例えば、機能剤成分として温感剤または冷感剤を採用し、かつ、機能性部材を上述の生理用ナプキン1と同様の形態で配置する場合には、機能剤成分は、温感剤または冷感剤に含まれる温感成分または冷感成分の坪量が、好ましくは0.001~30g/m2、より好ましくは0.01~20g/m2、更に好ましくは0.1~10g/m2となるような坪量で、機能性部材に含有させることができる。
【0070】
そして、本発明の吸収性物品では、上記機能性部材は、所定の機能を有する機能剤成分と、油状成分とを含むものが好ましい。機能性部材が機能剤成分とともに、油状成分を含んでいると、当該油状成分によって、機能性部材および当該機能性部材が含まれる機能部に折り癖を付きにくくすることができる。
なお、油状成分としては、上述の親油性溶媒で例示した天然油や炭化水素などの油脂と同様のものが挙げられる。
【0071】
本発明において、機能性部材の外形形状や各種寸法、坪量等は、機能剤成分の種類や配置形態等に応じた任意の外形形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0072】
なお、本発明において、このような機能性部材を備えることは必須の構成要件でないため、吸収性物品の上記機能部が所定の機能を発揮し且つ吸収性が低い部分として区分し得る場合は、必ずしもこのような機能性部材を備えていなくてもよい。ただし、吸収性物品の上記機能部がこのような機能性部材を備えていると、当該機能性部材によって各種要求特性等に応じた任意の機能を発現させることができるという利点がある。
【0073】
[粘着部]
上述の生理用ナプキン1は、
図2に示すように、裏面シート3の非肌対向面S
Bにおいて複数の粘着部、すなわち着衣固定用粘着部7、一対のフラップ部固定用粘着部71、71および一対の前方側粘着部72、72を備えており、これらの粘着部は、それぞれ上述の所定の形態で配置された粘着剤によって形成されている。
【0074】
このような粘着部に用いられる粘着剤としては、当分野において公知の任意の粘着剤を採用することができ、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のスチレン系コポリマーを主体とした感圧型粘着剤などが挙げられる。
【0075】
なお、上述の生理用ナプキン1では、着衣固定用の上記一対の前方側粘着部72、72が、下腹部対応領域AHの非肌対向面SBに配置されている。このように下腹部対応領域AHの非肌対向面SBに着衣固定用の粘着部を有していると、下腹部対応領域AHを着用者の着衣に的確に粘着固定してから生理用ナプキン1を着用することができるため、より的確に上記下腹部対応領域AHと重複する機能部20を着用者の肌に密着させることができる。
【0076】
本発明において、各種粘着部の配置形態や外形形状、各種寸法等は、着衣への固定のしやすさなどを考慮した任意の配置形態や外形形状、各種寸法等を採用することができる。
【0077】
なお、本発明において、上記粘着部を備えることは必須の構成要件でないため、吸収性物品の形態等によっては、必ずしもこのような粘着部を備えていなくてもよい。
【0078】
また、本発明の吸収性物品は、上述の一実施形態の構成に限定されず、例えば、本発明の別の実施形態では、吸収性物品は、吸収部と機能部の境界部よりも前方側において、吸収性物品を前後方向に折り畳むための折軸を有しないように構成されていてもよい。
ここで、
図5は、本発明の別の実施形態に係る生理用ナプキン1’を、展開した状態で表面シート2側から厚さ方向D
Tに見た平面図である。なお、この別の実施形態においては、上述の実施形態と異なる構成以外の構成は基本的に上述の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
この別の実施形態に係る生理用ナプキン1’は、
図5に示すように、平面視にて、前後方向D
Lおよび幅方向D
Wを有する縦長の外形形状を有しており、さらに、前後方向D
Lの後方側D
Bに位置する吸収部30において、生理用ナプキン1’の幅方向D
Wの一方側端部および他方側端部(すなわち、両端部)の各々が幅方向D
Wの外方側に向かって略台形状に延出してなる、一対のフラップ部6、6(すなわち、ウィング)を有している。
なお、かかる生理用ナプキン1’においても、所定の機能性部材21を含む機能部20と、当該機能部20の後方側D
Bに隣接し、着用者から排出された経血等の液状排泄物を吸収する吸収体4を含む吸収部30と、を有している。
【0080】
そして、この生理用ナプキン1’においては、吸収部30と機能部20の境界部LBよりも前方側DFには、生理用ナプキン1’を前後方向DLに折り畳むための折軸を有していない。
このように、吸収部30と機能部20の境界部LBよりも前方側DFに生理用ナプキン1’を前後方向DLに折り畳むための折軸を有していないと、上記境界部LBよりも前方側DFの領域において従来のような折り皺が形成されにくくなり、当該領域によって着用者の下腹部を的確に覆いつつ着用者の肌に隙間なく密着させることができる。これにより、生理用ナプキン1’は、上記機能部20の機能を、着用者に十分に付与することができる。
【0081】
なお、吸収部30と機能部20の境界部L
Bは、
図5に示すように、吸収体4を有している部分と吸収体4を有していない部分との境界線のうち、最も前方側D
Fに位置する部分である。
【0082】
また、生理用ナプキン1’においても、吸収部30は、吸収体4と機能性部材21とが厚さ方向DTに重なる重複部40を有しており、当該重複部40は、幅方向DWに延在する幅広エンボス部EWを有している。
生理用ナプキン1’は、このような幅広エンボス部EWを有していることによって機能性部材21が吸収体4に強固に固定されるため、生理用ナプキン1’の着用中に機能性部材21がヨレにくく、上記前方側領域AFの不本意な折れ曲がりを抑制することができる。これにより、生理用ナプキン1’は、より確実に上記機能部20を着用者の肌に密着させることができる。
【0083】
なお、幅広エンボス部EWは、加熱又は非加熱の任意の圧搾加工手段を用いて、生理用ナプキン1’を厚さ方向DTに圧搾することによって形成することができる。
【0084】
本発明の吸収性物品は、上述の実施形態の生理用ナプキンに限定されず、パンティーライナー、失禁パッド、母乳パッド、使い捨ておむつなどの様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述した実施形態等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【符号の説明】
【0085】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
5 サイドシート
6 フラップ部
7 着衣固定用粘着部
71 フラップ部固定用粘着部
72 前方側粘着部
20 機能部
21 機能性部材
30 吸収部
40 重複部
AF 前方側領域
AB 後方側領域
AH 下腹部対応領域
CW フラップ部中央軸線