(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-11
(45)【発行日】2023-05-19
(54)【発明の名称】基板ホルダ及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/06 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
C25D17/06 A
(21)【出願番号】P 2023521042
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2022048546
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 岳
(72)【発明者】
【氏名】尾形 奨一郎
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002423(JP,A)
【文献】特開2017-034088(JP,A)
【文献】特表2012-522391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板ホルダであって、
第1保持材と、
前記第1保持材と共に基板を挟み込んで保持するための第2保持材と、
前記第1保持材と前記第2保持材との一方に設けられ係合部材と、
前記第1保持材と前記第2保持材との他方に固定される被係合部材と、
を備え、
前記係合部材は、マグネットを有し、前記マグネットに働く磁力によって、前記係合部材と前記被係合部材とが係合して前記第1保持材と前記第2保持材が互いに固定されるロック位置と、前記係合部材と前記被係合部材との係合が解除されて前記第1保持材と前記第2保持材との固定が解除されるアンロック位置と、の間を移動可能に構成されている、
基板ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板ホルダであって、
シール部材をさらに備え、
第1保持材及び第2保持材が前記基板を保持するときに、第1保持材、第2保持材及びシール部材が、密閉空間を形成するように構成され、
前記係合部材及び前記被係合部材が、前記密閉空間の内部に設けられている、
基板ホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の基板ホルダであって、
前記シール部材は、
前記第1保持材又は前記第2保持材と、前記基板と、に接触するように構成された内側シールと、
前記第1保持材と前記第2保持材とに接触するように構成された外側シールと、を備える、
基板ホルダ。
【請求項4】
請求項3に記載の基板ホルダであって、
前記外側シールは、前記第2保持材に面する前記第1保持材の面の外側端部、又は、前記第1保持材に面する前記第2保持材の面の外側端部に接触するように配置されている、
基板ホルダ。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の基板ホルダであって、
前記内側シールは、前記基板に面する前記第1保持材の面の内側端部、又は、前記基板に面する前記第2保持材の面の内側端部に接触するように配置されている、
基板ホルダ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板ホルダであって、
前記係合部材は、回転軸を中心に回転可能に構成されたフックであり、
前記被係合部材は、前記フックの回転によって前記フックが係合するように構成されたクローを有し、
前記係合部材がロック位置にあるときには、前記フックが前記クローに係合し、
前記係合部材がアンロック位置にあるときには、前記フックが前記クローに係合していない、
基板ホルダ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の基板ホルダであって、
前記係合部材を前記ロック位置へ向かう方向へ付勢するための付勢部材を備える、
基板ホルダ。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の基板ホルダであって、
前記係合部材は、棒状部を有し、
前記係合部材は、前記第2保持材に対し前記基板ホルダの開閉方向と垂直な垂直方向に移動可能であるが前記開閉方向の移動が規制されるように、前記第2保持材に取付けられ、
前記被係合部材は、前記棒状部に接触することにより前記開閉方向への前記棒状部の移動を規制するための規制壁を有し、前記第1保持材に固定され、
前記係合部材がロック位置にあるときには、前記規制壁が前記開閉方向への前記棒状部の移動を規制し、
前記係合部材がアンロック位置にあるときには、前記規制壁が前記開閉方向への前記棒状部の移動を規制しない、
基板ホルダ。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の基板ホルダであって、
前記係合部材は、第1接触部を有し、
前記被係合部材は、第1被接触部を有し、
前記基板ホルダは、第1配線及び第2配線を有し、
前記第1配線は、前記第1接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、
前記第2配線は、前記第1被接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、
前記係合部材がロック位置にあるときに、前記第1接触部は、前記第1被接触部と電気的に接続されるように構成され、
前記係合部材がロック位置に位置していないときに、前記第1接触部は、前記第1被接触部と電気的に接続されないように構成される、
基板ホルダ。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項又は請求項9に記載の基板ホルダであって、
前記係合部材は、第2接触部を有し、
前記被係合部材は、第2被接触部を有し、
前記基板ホルダは、第3配線及び第4配線を有し、
前記第3配線は、前記第2接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、
前記第4配線は、前記第2被接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、
前記係合部材がアンロック位置にあるときに、前記第2接触部は、前記第2被接触部と電気的に接続されるように構成され、
前記係合部材がアンロック位置に位置していないときに、前記第2接触部は、前記第2被接触部と電気的に接続されないように構成される、
基板ホルダ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の基板ホルダと、
前記基板ホルダの前記マグネットに磁力を作用させて前記ロック位置と前記アンロック位置との間で移動させるための開閉装置と、
を備える、基板処理装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の基板ホルダと、
前記基板にめっき処理を行うためのめっきモジュールと、
を備える、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板ホルダ及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にめっきを施すための基板処理装置では、基板を保持するための基板ホルダが使用されることがある。このような基板ホルダの一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1には、その
図2A及び
図2Bに示されるように、フロントフレームと、リアフレームと、フロントフレームとリアフレームとをクランプするためのクランパと、を備える基板ホルダが開示されている。この基板ホルダでは、フレーム間に基板を挟むときに、クランパが、フロントフレームとリアフレームとをクランプし、フロントフレーム及びリアフレームが互いに対し固定される。
【0003】
特許文献1の基板ホルダでは、クランパが表面に露出している。このため、この基板ホルダが、めっき液等の処理液に浸漬され、処理液から取り出されると、クランパに処理液が付着し、消耗品である処理液が処理槽から持ち出されてしまう。特に、クランパは多くの凹凸が形成された細かい部品から構成されているため、クランパに付着して、処理槽から持ち出される処理液は比較的多くなる。さらに、洗浄時には、クランパを構成する部品の細かい部分に付着した処理液を洗い流すことも困難である。
【0004】
そこで、クランパに処理液が付着しないような基板ホルダが求められる。そのような基板ホルダが、特許文献2に開示されている。特許文献2には、その
図5Bに示されるように、第1保持部材と、第2保持部材と、基板ホルダの内部に封止された空間を形成するように構成されるシール部材と、ピンと、ピンと係合するリングと、リングを周方向に移動させるように構成される移動機構と、を有する基板ホルダが開示されている。この基板ホルダでは、ピンとリングとを互いに係合することで第1保持部材と第2保持部材が互いに固定される。そして、ピン及びリングは封止された空間の内部に設けられている。このため、ピン及びリングは、基板ホルダがめっき液に浸漬されたときでもめっき液と接触しない。その結果、第1保持部材と第2保持部材とを互いに固定するための機構により、めっき液がめっき槽から持ち出されることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6971922号公報
【文献】特開2020-2389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献2に開示される基板ホルダでは、第1保持部材及び第2保持部材が互いに固定されるために、リングを周方向に移動させるための移動機構が必要となる。特許文献2では、この移動機構としてロッド部材が開示されている。ロッド部材は、基板ホルダの外部から基板ホルダの内部空間まで延在するように構成されている。このため、特許文献2の基板ホルダでは、ロッド部材を配置するために、基板ホルダの外部と基板ホルダの内部空間とを接続する通路が必要となる。その結果、この通路を配置するスペースが考慮された設計が必要となり、基板ホルダの設計の自由度が低下してしまう。さらに特許文献2で開示される基板ホルダは保持対象の基板形状が円形であることを前提としており、基板形状が矩形である場合には構造が複雑になり実現困難である。
【0007】
これに対し、第1保持部材と第2保持部材を互いに固定するための機構が非接触で操作できるように構成されていれば、基板ホルダの外部と基板ホルダの内部空間とを接続する通路が不要となり、上記の課題を解決できる。このため、第1保持部材と第2保持部材を互いに固定するための機構が非接触で操作できるように構成された基板ホルダが求められる。
【0008】
そこで、本開示は、第1保持材(第1保持部材)と第2保持材(第2保持部材)を互いに固定するための機構が非接触で操作できるように構成された基板ホルダ及び基板処理装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る基板ホルダは、基板ホルダであって、第1保持材と、前記第1保持材と共に基板を挟み込んで保持するための第2保持材と、前記第1保持材と前記第2保持材との一方に設けられ係合部材と、前記第1保持材と前記第2保持材との他方に固定される被係合部材と、を備え、前記係合部材は、マグネットを有し、前記マグネットに働く磁力によって、前記係合部材と前記被係合部材とが係合して前記第1保持材と前記第2保持材が互いに固定されるロック位置と、前記係合部材と前記被係合部材との係合が解除されて前記第1保持材と前記第2保持材との固定が解除されるアンロック位置と、の間を移動可能に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る基板処理装置の全体配置図である。
【
図2】
図1の基板処理装置で使用される基板ホルダを模式的に示す正面図である。
【
図5】
図2の基板ホルダ及び開閉装置を示す構造図である。
【
図6】第1保持材と第2保持材とが離間したときの
図2の基板ホルダの断面図である。
【
図7】シール部材の位置を示すための
図2の基板ホルダの正面図である。
【
図8B】比較形態に係る基板ホルダの断面図である。
【
図9B】比較形態に係る基板ホルダの断面図である。
【
図10】フックがロック位置にある場合の
図2の基板ホルダの断面図である。
【
図11】フックがアンロック位置にある場合の
図2の基板ホルダの断面図である。
【
図12】
図2の基板ホルダの内部の配線構成を示す図である。
【
図13】
図2の基板ホルダと別の実施形態の係る基板ホルダの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0012】
<基板処理装置100>
図1は、本発開示の一実施形態にかかる基板ホルダ200が使用される基板処理装置100の全体配置図である。基板処理装置100は、一例として、基板Wにめっき処理をするためのめっき装置である。なお、後述する基板ホルダ200,400は、基板処理装置100で使用されるが、基板処理装置100以外の基板処理装置で使用されてもよい。本開示において、基板処理装置とは、基板Wに対し何らかの処理を行う装置を意味する。
図1を参照すると、この基板処理装置100は、基板ホルダ200(
図2参照)に基板Wをロードし又は基板ホルダ200から基板Wをアンロードするロード/アンロード部110と、基板Wを処理する処理部120と、洗浄部150aとに大きく分けられる。処理部120は、さらに、基板Wの前処理及び後処理を行う前処理・後処理部120Aと、基板Wにめっき処理を行うめっき処理部120Bとを含む。なお、この基板処理装置100で処理する基板Wは、角形基板、円形基板等を含む。また、角形基板は、矩形等の多角形のガラス基板、液晶基板、プリント基板及びその他の多角形のめっき対象物を含む。円形基板は、半導体ウェハ、ガラス基板及びその他の円形のめっき対象物を含む。
【0013】
ロード/アンロード部110は、2台のカセットテーブル125と、ロード/アンロードステーション129とを有する。カセットテーブル125は、半導体ウェハ、ガラス基板、液晶基板、プリント基板等の基板を収納したカセット125aを搭載できるように構成される。ロード/アンロードステーション129では、基板Wが既知の方法で基板ホルダ200に着脱される。また、ロード/アンロードステーション129の近傍(例えば下方)には基板ホルダ200を収容するためのストッカ130が設けられる。カセットテーブル125とロード/アンロードステーション129との間には、基板Wを搬送するための搬送ロボット127が配置される。搬送ロボット127は、走行機構128により走行可能に構成され、カセットテーブル125とロード/アンロードステーション129との間で基板Wを搬送する。
【0014】
洗浄部150aは、めっき処理後の基板Wを洗浄して乾燥させる洗浄装置150を有する。搬送ロボット127は、めっき処理後の基板Wを洗浄装置150に搬送し、洗浄された基板Wを洗浄装置150から取り出すように構成される。
【0015】
前処理・後処理部120Aは、プリウェットモジュール132と、プリソークモジュール133と、第1リンスモジュール134と、ブローモジュール135と、第2リンスモジュール136と、を有する。プリウェットモジュール132では、基板Wが純水に浸漬される。プリソークモジュール133では、基板Wの表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。第1リンスモジュール134では、プリソーク後の基板Wが基板ホルダ200と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブローモジュール135では、洗浄後の基板Wの液切りが行われる。第2リンスモジュール136では、めっき後の基板Wが基板ホルダ200と共に洗浄液で洗浄される。プリウェットモジュール132、プリソークモジュール133、第1リンスモジュール134、ブローモジュール135及び第2リンスモジュール136は、この順に配置されている。なお、この基板処理装置100の前処理・後処理部120Aの構成は一例であり、基板処理装置100の前処理・後処理部120Aの構成は限定されず、他の構成を採用することが可能である。
【0016】
めっき処理部120Bは、基板Wにめっき処理を行うためのめっきモジュール160を備える。めっきモジュール160は、オーバーフロー槽162を備えた複数のめっき槽161を有する。各めっき槽161は、内部に保持しためっき液中に基板Wを浸漬させて基板Wの表面に銅めっき等のめっきを行う。ここで、めっき液の種類は、特に限られることはなく、用途に応じて様々なめっき液が用いられる。また、プリウェットモジュール132、プリソークモジュール133、第1リンスモジュール134、ブローモジュール135、第2リンスモジュール136及びめっきモジュール160は、基板W又は基板ホルダ200に上述の処理を行うために、基板ホルダ200を収納するための処理槽を有している。本開示では、基板ホルダ200を収納できる槽のことを処理槽と呼ぶ。なお、めっき槽161は、処理槽の一例である。
【0017】
再度、
図1を参照すると、基板処理装置100は、例えばリニアモータ方式を採用した基板ホルダ200を搬送するための基板ホルダ搬送装置140をさらに備える。基板ホルダ搬送装置140は、レール141と、搬送装置142とを備える。搬送装置142は、レール141上を走行する。搬送装置142は、ロード/アンロードステーション129と、プリウェットモジュール132と、プリソークモジュール133と、第1リンスモジュール134と、ブローモジュール135と、第2リンスモジュール136と、めっき槽161との間で、基板ホルダ200を搬送する機能を有する。
【0018】
基板処理装置100は、上述した各部を制御するように構成された制御システム175を有する。制御システム175は、所定のプログラムを格納したメモリ175Bと、メモリ175Bのプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)175Aと、CPU175Aからの指令に基づいて基板処理装置100の各部の制御を行う制御部175Cとを有する。制御部175Cは、例えば、搬送ロボット127の搬送制御、ロード/アンロードステーション129における基板Wの基板ホルダ200への着脱制御、搬送装置142の搬送制御、各めっき槽161におけるめっき電流及びめっき時間の制御、並びに、各めっき槽161に配置されるアノードマスク(図示せず)の開口径及びレギュレーションプレート(図示せず)の開口径の制御等を行うことができる。また、制御システム175は、基板処理装置100及びその他の関連装置を統括制御する図示しない上位制御システムと通信可能に構成され、上位制御システムが有するデータベースとの間でデータのやり取りをすることができる。ここで、メモリ175Bを構成する記憶媒体は、各種の設定データやめっき処理プログラム等の各種のプログラムを格納している。記憶媒体としては、コンピュータで読み取り可能なROMやRAMなどのメモリや、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROMやフレキシブルディスクなどのディスク状記憶媒体などの公知のものが使用され得る。
【0019】
<基板ホルダ200>
次に、
図2から
図4を参照して、基板ホルダ200のより詳細な構成を説明する。
図2は、基板ホルダ200を模式的に示す正面図である。
図3は、基板ホルダ200の断面斜視図である。
図4は、
図3のA部拡大図である。基板ホルダ200は、基板Wを保持すためのホルダである。
図2では、基板ホルダ200は、一例として、四角形状を有している基板Wを保持する。しかしながら、基板ホルダ200は、この構成に限定されず、丸い形状等の他の形状を有する基板Wを保持してもよい。
【0020】
図2から
図4に示されるように、基板ホルダ200は、一例として、矩形平板状の第1保持材202と、第1保持材202と共に基板Wを挟み込んで保持するように構成された矩形平板状の第2保持材204(
図3及び4参照)と、を備える。別言すると、基板ホルダ200は、第1保持材202と第2保持材204との間に基板Wを挟み込んで保持できるように構成されている。また、第1保持材202及び第2保持材204は、一例として、チタンから構成される。
【0021】
また、第1保持材202と第2保持材204には、それぞれ開口214,216が形成されている(
図3及び
図4参照)。これにより、基板ホルダ200は、基板Wをそれぞれの開口214,216から露出させることができる。その結果、基板処理装置100は、開口214,216から露出している基板Wの表面に対し、めっき処理等の各種の処理を行うことができる。なお、本開示に係る別の実施形態では、第1保持材202のみに開口214が形成されていて、基板Wは、第1保持材202の開口214のみから露出していてもよい。また、開口214,216の形状は、基板Wの形状に対応している。例えば、
図2の基板ホルダ200では、開口214,216は角形である。しかし、本開示に係る別の実施形態では、開口214,216は丸形等の別の形状であってもよい。
【0022】
また、
図2に示されるように、基板ホルダ200は、一例として、その上部に一対のハンドル206を備える。一対のハンドル206の間には、2つの開口207が形成されている。搬送装置142(
図1参照)は、基板ホルダ200の開口207を把持して、鉛直姿勢の基板ホルダ200を各処理槽へ搬送する。なお、鉛直姿勢とは、ハンドル206が上に来て、基板Wの板面が鉛直方向に延びるときの姿勢である。また、基板ホルダ200が搬送されて、基板ホルダ200に保持された基板Wが各処理槽内で処理されるとき、ハンドル206は各処理槽のハンドル受け部材(図示省略)の上に配置される。このため、基板処理装置100では、基板ホルダ200が鉛直姿勢で支持された状態で、基板Wの表面に処理が施される。
【0023】
また、基板ホルダ200は、一例として、外部接点208(
図2参照)、バスバー210(
図4参照)及び電気接点212(
図4参照)を備える。外部接点208は、ハンドル206上に設けられ、図示されていない電気配線やバスバーにより、バスバー210に電気的に接続されている。バスバー210は、後述する密閉空間900の内部に配置され、電気接点212と電気的に接続されている。さらに、電気接点212は、基板ホルダ200によって保持される基板Wの外周部と接触するように構成されている。基板処理装置100では、基板ホルダ200がめっき槽161に搬送させると、外部接点208が、めっき槽161のハンドル受け部材に設けられた電気接点(図示省略)に接触して、外部電源から外部接点208に電流が供給される。そして、電流は、バスバー210及び電気接点212を介して基板Wの表面に供給され、基板Wにめっきが施される。
【0024】
図2を参照すると、基板ホルダ200は、一例として、複数のクランパ220(
図2の例では16個)を備える。複数のクランパ220は、基板Wを囲むように開口214,216の周りに設けられている。クランパ220は、第1保持材202及び第2保持材204を互いに対し固定する機能を有している。なお、クランパ220は、基板ホルダ200の内部に設けられているため、
図2、
図7及び
図12では、クランパ220は破線によって示されている。以下にクランパ220の詳細な構成について説明する。
図4を参照すると、クランパ220は、一例として、被係合部材230と、係合部材組立体240とを備える。
【0025】
被係合部材230は、略直方体形状を有する薄板状の部材である。被係合部材230は、第1保持材202に形成されている凹部203に嵌って、第1保持材202に固定されている。また、被係合部材230は、クロー232を有する。クロー232は、係合部材組立体240に向かって延び、その先端は曲げられている。別言すると、クロー232は、後述するフック246の回転によってフック246の係合部252が係合するように構成されている。
【0026】
係合部材組立体240は、被係合部材230に面するように、第2保持材204に固定される。より詳細には、係合部材組立体240は、フックベース242と、回転軸244と、フック(係合部材の一例)246とを備える。フックベース242は、略直方体形状を有する薄板状の部材であり、回転軸244を支持するように構成される。フックベース242は、第2保持材204に形成されている凹部205に嵌って、第2保持材204に固定されている。フックベース242は、一例として、ステンレスから構成される。回転軸244は、フック246に設けられた軸孔248に挿入され、フック246を回転可能に支持する。すなわち、フック246は、回転軸244を中心に回転可能に構成されている。回転軸244は、基板Wの板面が延びる向きに延びる。回転軸244は、一例として、ステンレスから構成される。フック246は、L字状の形状を有し、一方の端部にレバー250を有し、他方の端部に係合部252を有する。係合部252は被係合部材230に向かって延び、係合部252の先端は曲げられてクロー232に係合可能に構成されている。レバー250は、回転軸244の延びる方向と垂直な方向に延びる。
【0027】
また、フック246は、回転することにより、ロック位置(
図4に示される位置)と、アンロック位置(
図5に示される位置)との間を移動可能に構成されている。そして、フック246がロック位置にあるときは、フック246の係合部252と被係合部材230のクロー232とが係合して第1保持材202と第2保持材204が互いに固定される。他方、フック246がアンロック位置にあるときは、フック246の係合部252と被係合部材230のクロー232との係合が解除されて第1保持材202と第2保持材204との固定が解除される。別言すると、基板ホルダ200では、フック246がロック位置に移動することにより、第1保持材202と第2保持材204が互いに固定され、フック246がアンロック位置に移動することにより、第1保持材202と第2保持材204との固定が解除される。
【0028】
また、フック246は、マグネット254を有する。マグネット254は、フック246のレバー250に取付けられている。これにより、フック246は、マグネット254に磁力が働くことによって、回転軸244を中心に回転する。つまり、フック246は、マグネット254に働く磁力によって、ロック位置と、アンロック位置との間を移動できる。さらに、回転軸244の中心と、回転軸244の中心から最も遠いマグネット254の位置との間の長さLは、より長い方が好ましい。なぜなら、長さLがより長い方が、てこの原理によって、より小さい磁力でフック246が移動できるからである。長さLは、10mm以上が好ましい。
【0029】
上述したように、基板ホルダ200では、被係合部材230は第1保持材202に固定され、係合部材組立体240は第2保持材204に固定されている。しかしながら、基板ホルダ200はこのような構成を有していなくてもよい。本開示に係る別の実施形態では、被係合部材230は第2保持材204に固定され、係合部材組立体240は第1保持材202に固定されてもよい。
【0030】
また、係合部材組立体240は、一例として、付勢部材256を備える(
図4参照)。付勢部材256は、フック246をロック位置へ向かう方向へ付勢する機能を有する。より詳細には、付勢部材256は、ねじりバネである。付勢部材256の付勢力がフック246に働くことにより、磁力がフック246のマグネット254に作用しない限り、フック246がロック位置に位置する。別言すると、付勢部材256は、フック246の係合を維持するようにフック246に力を加えることにより、フック246がクロー232から外れてしまうことを防止することができる。
【0031】
図5は、基板ホルダ200及び開閉装置180を示す構造図である。
図5を参照すると、基板処理装置100は、一例として、開閉装置180を備える。開閉装置180は、一例として、ロード/アンロードステーション129(
図1参照)に設けられる。また、開閉装置180は、第2保持材204を介して、第1保持材202の反対側に位置するように設けられる。開閉装置180は、フック246のマグネット254に磁力を作用させてロック位置とアンロック位置との間で移動させる機能を有する。より詳細には、開閉装置180は、フック246のマグネット254に磁力を働かせるためのマグネット182と、アクチュエータ184と、を備える。アクチュエータ184は、一例として、リニアアクチュエータであり、第1の位置(
図5に示される位置)と、第1位置よりもマグネット182から遠い第2位置との間でマグネット182を移動させる機能を有する。マグネット182は、フック246のマグネット254に対し斥力を働かせられるように構成されている。アクチュエータ184が、マグネット182を第2位置から第1位置に移動させると、フック246のマグネット254に働く斥力が強まる。これにより、フック246のマグネット254に働く斥力が付勢部材256の付勢力を上回り、フック246がロック位置からアンロック位置に移動する。その結果、クランパ220による第1保持材202と第2保持材204の固定が解除される。他方、アクチュエータ184が、マグネット182を第1位置から第2位置に移動させると、フック246のマグネット254に働く斥力が弱まる。これにより、付勢部材256の付勢力がマグネット254に働く斥力を上回り、フック246がアンロック位置からロック位置に移動する。その結果、クランパ220は、第1保持材202と第2保持材204を互いに対し固定する。このように、基板ホルダ200では、フック246が磁力で操作される。別言すると、基板ホルダ200は、フック246が非接触で操作できるように構成されている。なお、開閉装置180は、フック246のマグネット254に磁力を作用させてロック位置とアンロック位置との間で移動させることができるならば、上記以外の構成を有していてもよい。
【0032】
さらに、基板Wが基板ホルダ200から取り外される場合には、クランパ220の固定が解除された状態で、第1保持材202が開閉方向902へ移動させられる(
図6参照)。これにより、第1保持材202が第2保持材204から離間し、第1保持材202及び第2保持材204が挟持していた基板Wが取り外し可能となる。なお、本開示では、基板ホルダ200の開閉方向902とは、基板ホルダ200が基板Wを開放又は挟持するときに、第1保持材202及び第2保持材204が近接又は離間する方向を意味する。
【0033】
再度
図4を参照すると、基板ホルダ200は、外側シール272と、2つの内側シール274a,274bと、を備える。なお、外側シール272及び2つの内側シール274a,274bは、シール部材270に含まれる。外側シール272は、第1保持材202又は第2保持材204に取付けられていて、第1保持材202と第2保持材204とに接触するように構成されている。このため、外側シール272は、第1保持材202と第2保持材204との間をシールする機能を有する。また、内側シール274aは、第1保持材202に取付けられていて、第1保持材202と基板Wとに接触するように構成されている。このため、内側シール274aは、第1保持材202と基板Wとの間をシールする機能を有する。さらに、内側シール274bは、第2保持材204に取付けられていて、第2保持材204と基板Wとに接触するように構成されている。このため、内側シール274bは、第2保持材204と基板Wとの間をシールする機能を有する。
【0034】
次に、
図7を参照する。
図7は、シール部材270の位置を示すための基板ホルダ200の正面図である。なお、
図7では、外側シール272と、2つの内側シール274a,274bは第1保持材202の裏側に隠れているため、破線でそれらの位置が示されている。また、
図7では、内側シール274a及び内側シール274bは互いに重なり合って見えるため、単一の破線で示されている。
図7に示されるように、外側シール272及び内側シール274a,274bは、共に略リング状に形成される。内側シール274a,274bは、基板Wの周縁部に沿って、開口214,216を囲むように設けられる。外側シール272は、外側シール272と内側シール274a,274bとの間に複数のクランパ220が位置するように、内側シール274a,274bよりも外側に設けられる。
【0035】
また、基板ホルダ200では、第1保持材202及び第2保持材204が基板Wを保持するときに、第1保持材202、第2保持材204、外側シール272及び2つの内側シール274a,274bが、密閉空間900を形成するように構成されている(
図4参照)。そして、フック246及び被係合部材230が、密閉空間900の内部に設けられている。このため、基板W及び基板ホルダ200が、めっき液等の処理液に浸漬されるときに、フック246及び被係合部材230が処理液と接触しない。その結果、処理液が、フック246又は被係合部材230に付着して、処理槽から持ち出されてしまうことが防止される。さらに、処理液がフック246及び被係合部材230に付着しないため、基板ホルダ200の洗浄時に、フック246及び被係合部材230から処理液を洗い流す必要がない。
【0036】
次いで、
図8Aを参照する。
図8Aは、
図7のB-B断面図である。
図8Aを参照すると、外側シール272は、第2保持材204に面する第1保持材202の面288の外側端部282に接触するように配置されている。さらに、外側シール272は、第1保持材202に面する第2保持材204の面290の外側端部284に接触するように配置されている。外側シール272がこのように配置されることによる効果を
図8Bに示される比較形態に係る基板ホルダ800と比較して説明する。
【0037】
図8Bは、比較形態に係る基板ホルダ800の断面図であり、B-B断面に相当する部分を示している。基板ホルダ800では、外側シール872が、第2保持材804に面する第1保持材802の面888の外側端部882、及び、第1保持材802に面する第2保持材804の面890の外側端部884に接触するように配置されていない。この場合、処理液に接触する部分に、外側シール872、第1保持材802の面888及び第2保持材804の面890に囲まれる領域886が形成される。このように三方を囲まれる領域886には液体が溜まりやすい。このため、基板ホルダ800が処理槽から引き上げられたときに、この領域886に処理液が溜まり、より多くの処理液が処理槽から持ち出される虞がある。
【0038】
これに対し、
図8Aに示される基板ホルダ200の場合、外側シール272が、第1保持材202の面288の外側端部282、又は、第2保持材204の面290の外側端部284に接触するように配置されている。このため、基板ホルダ800の領域886に相当する部分が、基板ホルダ200に形成されない。したがって、基板ホルダ200は、処理槽から持ち出される処理液の量を減少させることができる。
【0039】
次いで、
図9Aを参照する。
図9Aは、
図7のC-C断面図である。
図9Aを参照すると、内側シール274aは、基板Wに面する第1保持材202の面291の内側端部293に接触するように配置されている。さらに、内側シール274bは、基板Wに面する第2保持材204の面292の内側端部294に接触するように配置されている。内側シール274a,274bがこのように配置されることによる効果を
図9Bに示される比較形態に係る基板ホルダ800と比較して説明する。
【0040】
図9Bは、比較形態に係る基板ホルダ800の断面図であり、C-C断面に相当する部分を示している。基板ホルダ800では、内側シール874aは、基板Wに面する第1保持材802の面891の内側端部893に接触するように配置されていない。この場合、処理液に接触する部分に、内側シール874a、第1保持材802の面891及び基板Wに囲まれる領域895が形成される。領域895は三方を囲まれているため、液体が溜まりやすい。また、内側シール874bは、基板Wに面する第2保持材804の面892の内側端部894に接触するように配置されていない。この場合、処理液に接触する部分に、内側シール874b、第2保持材804の面892及び基板Wに囲まれる領域896が形成される。領域896は三方を囲まれているため、液体が溜まりやすい。このため、基板ホルダ800が処理槽から引き上げられたときに、領域895,896に処理液が溜まり、より多くの処理液が処理槽から持ち出される虞がある。
【0041】
これに対し、
図9Aに示される基板ホルダ200では、内側シール274aは内側端部293に接触するように配置され、内側シール274bは内側端部294に接触するように配置されている。このため、基板ホルダ800の領域895,896に相当する部分が、基板ホルダ200に形成されない。したがって、基板ホルダ200は、処理槽から持ち出される処理液の量を減少させることができる。
【0042】
次いで、
図10から
図12を参照して、フック246の位置確認用の機構について説明する。
図10は、フック246がロック位置にある場合の基板ホルダ200の断面図である。
図11は、フック246がアンロック位置にある場合の基板ホルダ200の断面図である。
図12は、基板ホルダ200の内部の配線構成を示す図である。なお、
図10では、第3配線320線及び第4配線330が省略され、
図11では、第1配線300及び第2配線310が省略されている。
【0043】
図10及び
図11を参照すると、基板ホルダ200は、第1配線300(
図10参照)と、第2配線310(
図10参照)と、第3配線320(
図11参照)と、第4配線330(
図11参照)とを有する。フック246は、第1接触部258と、第2接触部260と、絶縁部262と、を有する。第1接触部258及び第2接触部260は、一例として、ステンレスから構成される。絶縁部262は、第1接触部258と第2接触部260の間を電気的に絶縁する。より詳細には、絶縁部262は、一例として、PEEK等の樹脂から構成される。被係合部材230は、第1被接触部234と、第2被接触部236と、絶縁部238と、を有する。第1被接触部234及び第2被接触部236は、一例として、ステンレスから構成される。絶縁部238は、第1被接触部234と第2被接触部236の間を電気的に絶縁する。より詳細には、絶縁部238は、一例として、PEEK等の樹脂から構成される。
【0044】
第1配線300は、第1接触部258と電気的に接続される第1端部302(
図10参照)と、基板ホルダ200の外部に露出する第2端部304(
図12参照)とを有する。第2配線310は、第1被接触部234と電気的に接続される第1端部312(
図10参照)と、基板ホルダ200の外部に露出する第2端部314(
図12参照)とを有する。第3配線320は、第2接触部260と電気的に接続される第1端部322(
図11参照)と、基板ホルダ200の外部に露出する第2端部324(
図12参照)とを有する。第4配線330は、第2被接触部236と電気的に接続される第1端部332(
図11参照)と、基板ホルダ200の外部に露出する第2端部334(
図12参照)とを有する。
【0045】
また、
図10に示されるように、フック246がロック位置にあるときには、第1接触部258は、第1被接触部234と接触して電気的に接続されるように構成されている。他方、
図11に示されるように、フック246がロック位置に位置していないときには、第1接触部258は、第1被接触部234と接触せず且つ電気的にも接続されないように構成されている。基板ホルダ200はこのような構成を有するため、フック246がロック位置にあるときにのみ、第1配線300の第2端部304は、第1配線300、第1接触部258、第1被接触部234及び第2配線310を介して、第2配線310の第2端部314に電気的に接続される。このため、第1配線300の第2端部304と第2配線310の第2端部314との間が導通すれば、フック246がロック位置あることが保証される。つまり、作業者は、第1配線300の第2端部304と第2配線310の第2端部314との間で導通確認を行うことで、フック246がロック位置にあるか否かを確認できる。別言すると、作業者は、導通確認によって、クランパ220が第1保持材202と第2保持材204を固定しているか否かを確認できる。
【0046】
また、
図11に示されるように、フック246がアンロック位置にあるときに、第2接触部260は、第2被接触部236と接触して電気的に接続されるように構成されている。他方、
図10に示されるように、フック246がアンロック位置に位置していないときに、第2接触部260は、第2被接触部236と接触せず且つ電気的に接続されないように構成されている。基板ホルダ200はこのような構成を有するため、フック246がアンロック位置にあるときにのみ、第3配線320の第2端部324は、第3配線320、第2接触部260、第2被接触部236及び第4配線330を介して、第4配線330の第2端部334に電気的に接続される。このため、第3配線320の第2端部324と第4配線330の第2端部334との間が導通すれば、フック246がアンロック位置あることが保証される。つまり、作業者は、第3配線320の第2端部324と第4配線330の第2端部334との間で導通確認を行うことで、フック246がアンロック位置にあるか否かを確認できる。別言すると、作業者は、導通確認によって、クランパ220の固定が解除されているか否かを確認できる。
【0047】
さらに、基板処理装置100は、ロード/アンロードステーション129に、
図12に示されるような検知器102を備えてもよい。検知器102は、第1配線300の第2端部304と第2配線310の第2端部314との間の導通確認、及び、第3配線320の第2端部324と第4配線330の第2端部334との間の導通確認、を行う機能を有する。これにより、基板処理装置100は、検知器102を用いて、クランパ220が第1保持材202と第2保持材204を固定していること、及び、クランパ220の固定が解除されていることを検知できる。
【0048】
<基板ホルダ400>
図13は、基板ホルダ200と別の実施形態の係る基板ホルダ400の断面図である。
図14は、
図13のD-D断面図である。
図13及び14を参照して、基板ホルダ400の構成を以下に説明する。なお、基板ホルダ400は、その一部に基板ホルダ200と共通の構成を有している。このため、基板ホルダ400に関し、基板ホルダ200と異なる部分を中心に説明し、共通の構成については、図に同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
図13を参照すると、基板ホルダ400は、一例として、基板ホルダ200が備えるクランパ220の代わりに、クランパ420を備える。クランパ420は、被係合部材430及び係合部材446を備える。
【0050】
被係合部材430は、薄板を曲げて形成された部材である。そして、被係合部材430は、第1保持材202に固定されている2つの端部434a,434bと、規制壁432と、第1壁436と、第2壁438とを備える。端部434a,434b、規制壁432、第1壁436及び第2壁438は、一例として、平板形状を有する。そして、第1壁436は、端部434aと規制壁432とを接続し、端部434a及び規制壁432と直交している。第2壁438は、端部434bと規制壁432とを接続し、端部434b及び規制壁432と直交している。また、規制壁432は、基板ホルダ200の開閉方向902と垂直な平面上を延びている。また、別の見方をすると、規制壁432は、基板Wの板面と平行な平面上を延びている。
【0051】
係合部材446は、第2保持材204に設けられている。より詳細には、係合部材446は、第2保持材204に対し垂直方向904の移動が可能であるが第2保持材204に対し開閉方向902の移動が規制されるように、第2保持材204に取付けられている(
図14参照)。そして、係合部材446は、垂直方向904に移動することで、ロック位置(
図15Aに示される位置)と、アンロック位置(
図15Bに示される位置)との間を移動することができる。また、係合部材446は、マグネット454を有する。これにより、係合部材446は、マグネット454に磁力が働くことによって、ロック位置と、アンロック位置との間を移動できる。なお、垂直方向904は、開閉方向902と垂直な方向を意味する。
【0052】
また、係合部材446は、棒状部452を有する。そして、係合部材446がロック位置(
図15Aに示される位置)にあるときには、規制壁432が棒状部452に接触して第1保持材202に対する棒状部452の開閉方向902の移動を規制するように、棒状部452及び規制壁432が構成されている。他方、係合部材446がアンロック位置(
図15Bに示される位置)にあるときには、規制壁432が第1保持材202に対する棒状部452の開閉方向902の移動を規制しないように、棒状部452及び規制壁432が構成されている。
【0053】
次いで、
図15A及び
図15Bを参照する。
図15Aは、基板ホルダ400及び開閉装置190を示す構造図であり、係合部材446がロック位置にある場合を示している。
図15Bは、基板ホルダ400及び開閉装置190を示す構造図であり、係合部材446がアンロック位置にある場合を示している。基板処理装置100が基板ホルダ400を用いて基板Wに処理をする場合、基板処理装置100は、
図5の開閉装置180の代わりに、
図15A及び
図15Bに示される開閉装置190を備えてもよい。開閉装置190は、第2保持材204を介して、第1保持材202の反対側に位置するように設けられる。そして開閉装置190は、係合部材446のマグネット454に磁力を作用させてロック位置とアンロック位置との間で移動させる機能を有する。より詳細には、開閉装置190は、係合部材446のマグネット454に磁力を働かせるためのマグネット192と、アクチュエータ194と、を備える。アクチュエータ194は、一例として、リニアアクチュエータであり、第1の位置と第2位置との間でマグネット192を移動させる機能を有する。第1の位置は、係合部材446がロック位置にあるときにマグネット192がマグネット454と第2保持材204を挟んで向き合うことができるようなマグネット192の位置(
図15Aに示される位置)である。他方、第2の位置は、係合部材446がアンロック位置にあるときにマグネット192がマグネット454と第2保持材204を挟んで向き合うことができるようなマグネット192の位置(
図15Bに示される位置)である。
【0054】
アクチュエータ194がマグネット192を第1位置(
図15Aに示される位置)から第2位置(
図15Bに示される位置)に移動させると、マグネット454がマグネット192の引力に引かれ、係合部材446がロック位置からアンロック位置に移動する。その結果、クランパ420による第1保持材202と第2保持材204の固定が解除される。他方、アクチュエータ194が、マグネット192を第2位置(
図15Bに示される位置)から第1位置(
図15Aに示される位置)に移動させると、マグネット454がマグネット192の引力に引かれ、係合部材446がアンロック位置からロック位置に移動する。その結果、クランパ420は、第1保持材202と第2保持材204を互いに対し固定する。このように、基板ホルダ400では、係合部材446が磁力で操作される。別言すると、基板ホルダ400は、係合部材446が非接触で操作できるように構成されている。なお、開閉装置190は、係合部材446のマグネット454に磁力を作用させてロック位置とアンロック位置との間で移動させることができるならば、上記以外の構成を有していてもよい。
【0055】
[付記]
上記の実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0056】
(付記1)
付記1に係る基板ホルダは、基板ホルダであって、第1保持材と、前記第1保持材と共に基板を挟み込んで保持するための第2保持材と、前記第1保持材と前記第2保持材との一方に設けられ係合部材と、前記第1保持材と前記第2保持材との他方に固定される被係合部材と、を備え、前記係合部材は、マグネットを有し、前記マグネットに働く磁力によって、前記係合部材と前記被係合部材とが係合して前記第1保持材と前記第2保持材が互いに固定されるロック位置と、前記係合部材と前記被係合部材との係合が解除されて前記第1保持材と前記第2保持材との固定が解除されるアンロック位置と、の間を移動可能に構成されている。
【0057】
付記1に係る基板ホルダでは、マグネットに磁力が働くことによって、係合部材がロック位置とアンロック位置との間を移動する。この移動に対応して、第1保持材と第2保持材が互いに固定され、又は、第1保持材と第2保持材の固定が解除される。すなわち、付記1に係る基板ホルダは、係合部材が非接触で操作できるように構成されている。
【0058】
(付記2)
付記2に係る基板ホルダは、付記1に記載の基板ホルダであって、シール部材をさらに備え、第1保持材及び第2保持材が前記基板を保持するときに、第1保持材、第2保持材及びシール部材が、密閉空間を形成するように構成され、前記係合部材及び前記被係合部材が、前記密閉空間の内部に設けられている。
【0059】
付記2に係る基板ホルダでは、基板及び基板ホルダが、めっき液等の処理液に浸漬されるときに、係合部材及び被係合部材が処理液と接触しない。このため、処理液が、係合部材又は被係合部材に付着して、処理槽から持ち出されてしまうことが防止される。さらに、処理液が係合部材及び被係合部材に付着しないため、係合部材及び被係合部材から処理液を洗い流す必要がない。
【0060】
(付記3)
付記3に係る基板ホルダは、付記2に記載の基板ホルダであって、前記シール部材は、前記第1保持材又は前記第2保持材と、前記基板と、に接触するように構成された内側シールと、前記第1保持材と前記第2保持材とに接触するように構成された外側シールと、を備える。
【0061】
付記3に係る基板ホルダは、内側シールによって、第1保持材又は第2保持材と基板との間をシールすることができる。さらに、この基板ホルダは、外側シールによって、第1保持材と第2保持材との間をシールすることができる。
【0062】
(付記4)
付記4に係る基板ホルダは、付記3に記載の基板ホルダであって、前記外側シールは、前記第2保持材に面する前記第1保持材の面の外側端部、又は、前記第1保持材に面する前記第2保持材の面の外側端部に接触するように配置されている。
【0063】
外側シールが、第1保持材の面の外側端部、又は、第2保持材の面の外側端部に接触するように配置されている場合、処理液に接触する部分に、外側シール、第1保持材の面及び第2保持材の面に囲まれる領域が形成されない。このため、付記4に係る基板ホルダは、このような領域を有さないため、処理槽から持ち出される処理液の量を減少させることができる。
【0064】
(付記5)
付記5に係る基板ホルダは、付記3又は4に記載の基板ホルダであって、前記内側シールは、前記基板に面する前記第1保持材の面の内側端部、又は、前記基板に面する前記第2保持材の面の内側端部に接触するように配置されている。
【0065】
内側シールが、基板に面する第1保持材の面の内側端部、又は、基板に面する第2保持材の面の内側端部に接触するように配置されている場合、処理液に接触する部分に、内側シールと、第1保持材の面又は第2保持材の面と、基板とに囲まれる領域が形成されない。このため、付記5に係る基板ホルダは、このような領域を有さないため、処理槽から持ち出される処理液の量を減少させることができる。
【0066】
(付記6)
付記6に係る基板ホルダは、付記1から5のいずれか1つに記載の基板ホルダであって、前記係合部材は、回転軸を中心に回転可能に構成されたフックであり、前記被係合部材は、前記フックの回転によって前記フックが係合するように構成されたクローを有し、前記係合部材がロック位置にあるときには、前記フックが前記クローに係合し、前記係合部材がアンロック位置にあるときには、前記フックが前記クローに係合していない。
【0067】
付記6に係る基板ホルダによれば、フックがクローに係合することにより、第1保持材と第2保持材が互いに固定される。また、フックのクローへの係合が解除されることで、第1保持材と第2保持材の固定が解除される。
【0068】
(付記7)
付記7に係る基板ホルダは、付記1から6のいずれか1つに記載の基板ホルダであって、前記係合部材を前記ロック位置へ向かう方向へ付勢するための付勢部材を備える。
【0069】
付記7に係る基板ホルダでは、磁力が係合部材のマグネットに作用しない限り、係合部材がロック位置にある。
【0070】
(付記8)
付記8に係る基板ホルダは、付記1から5のいずれか1つに記載の基板ホルダであって、前記係合部材は、棒状部を有し、前記係合部材は、前記第2保持材に対し前記基板ホルダの開閉方向と垂直な垂直方向に移動可能であるが前記開閉方向の移動が規制されるように、前記第2保持材に取付けられ、前記被係合部材は、前記棒状部に接触することにより前記開閉方向への前記棒状部の移動を規制するための規制壁を有し、前記第1保持材に固定され、前記係合部材がロック位置にあるときには、前記規制壁が前記開閉方向への前記棒状部の移動を規制し、前記係合部材がアンロック位置にあるときには、前記規制壁が前記開閉方向への前記棒状部の移動を規制しない。
【0071】
(付記9)
付記9に係る基板ホルダは、付記1から8のいずれか1つに記載の基板ホルダであって、前記係合部材は、第1接触部を有し、前記被係合部材は、第1被接触部を有し、前記基板ホルダは、第1配線及び第2配線を有し、前記第1配線は、前記第1接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、前記第2配線は、前記第1被接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、前記係合部材がロック位置にあるときに、前記第1接触部は、前記第1被接触部と電気的に接続されるように構成され、前記係合部材がロック位置に位置していないときに、前記第1接触部は、前記第1被接触部と電気的に接続されないように構成される。
【0072】
付記9に係る基板ホルダによれば、係合部材がロック位置にあるときには、第1配線の第2端部と第2配線の第2端部とが、複数の部材を介して電気的に接続される。このため、第1配線の第2端部と第2配線の第2端部との間が導通すれば、係合部材がロック位置あることが保証される。つまり、作業者は、第1配線の第2端部と第2配線の第2端部との間で導通確認を行うことで、係合部材がロック位置にあるか否かを確認できる。
【0073】
(付記10)
付記10に係る基板ホルダは、付記1から9のいずれか1つに記載の基板ホルダであって、前記係合部材は、第2接触部を有し、前記被係合部材は、第2被接触部を有し、前記基板ホルダは、第3配線及び第4配線を有し、前記第3配線は、前記第2接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、前記第4配線は、前記第2被接触部と電気的に接続される第1端部と、前記基板ホルダの外部に露出する第2端部とを有し、前記係合部材がアンロック位置にあるときに、前記第2接触部は、前記第2被接触部と電気的に接続されるように構成され、前記係合部材がアンロック位置に位置していないときに、前記第2接触部は、前記第2被接触部と電気的に接続されないように構成される。
【0074】
付記10に係る基板ホルダによれば、係合部材がアンロック位置にあるときには、第3配線の第2端部と第4配線の第2端部とが、複数の部材を介して電気的に接続される。このため、第3配線の第2端部と第4配線の第2端部との間が導通すれば、係合部材がアンロック位置あることが保証される。つまり、作業者は、第3配線の第2端部と第4配線の第2端部との間で導通確認を行うことで、係合部材がアンロック位置にあるか否かを確認できる。
【0075】
(付記11)
付記11に係る基板処理装置は、付記1から10のいずれか1つに記載の基板ホルダと、前記基板ホルダの前記マグネットに磁力を作用させて前記ロック位置と前記アンロック位置との間で移動させるための開閉装置と、を備える。
【0076】
付記11に係る基板処理装置では、開閉装置が、基板ホルダの係合部材をロック位置とアンロック位置との間で移動させることができる。
【0077】
(付記12)
付記12に係る基板処理装置は、付記1から10のいずれか1つに記載の基板ホルダと、前記基板にめっき処理を行うためのめっきモジュールと、を備える。
【0078】
付記12に係る基板処理装置は、基板ホルダが保持している基板にめっき処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
100:基板処理装置
102:検知器
160:めっきモジュール
180,190:開閉装置
200:基板ホルダ
202:第1保持材
204:第2保持材
220;クランパ
230:被係合部材
232:クロー
234:第1被接触部
236:第2被接触部
240:係合部材組立体
246:フック
254:マグネット
256:付勢部材
258:第1接触部
260:第2接触部
270:シール部材
272:外側シール
274a,274b:内側シール
282,284:外側端部
293,294:内側端部
300:第1配線
310:第2配線
320:第3配線
330:第4配線
400:基板ホルダ
420:クランパ
430:被係合部材
432:規制壁
446:係合部材
452:棒状部
454:マグネット
900:密閉空間
902:開閉方向
904:垂直方向
W:基板
【要約】
本開示は、第1保持材と第2保持材を互いに固定するための機構が非接触で操作できるように構成された基板ホルダを提供する。
本開示に係る基板ホルダは、第1保持材と、第1保持材と共に基板を挟み込んで保持するための第2保持材と、第1保持材と第2保持材との一方に設けられ係合部材と、第1保持材と第2保持材との他方に固定される被係合部材と、を備え、係合部材は、マグネットを有し、マグネットに働く磁力によって、係合部材と被係合部材とが係合して第1保持材と第2保持材が互いに固定されるロック位置と、係合部材と被係合部材との係合が解除されて第1保持材と第2保持材との固定が解除されるアンロック位置と、の間を移動可能に構成されている。