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特許7278541静電チャックシステム、成膜装置、吸着方法、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】静電チャックシステム、成膜装置、吸着方法、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230515BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20230515BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20230515BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230515BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C14/50 A
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018221716
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2019216230
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0066582
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593075418
【氏名又は名称】株式会社アオイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏倉 一史
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
(72)【発明者】
【氏名】細谷 映之
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516294(JP,A)
【文献】特開平06-204325(JP,A)
【文献】特開2007-251083(JP,A)
【文献】特開2005-116849(JP,A)
【文献】特開2014-065959(JP,A)
【文献】特開2017-155338(JP,A)
【文献】特表2016-539489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/50
C23C 14/04
H10K 50/00
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吸着体を吸着するための静電チャックシステムであって、
電極部を含む静電チャックと、
前記静電チャックの前記電極部に電位差を印加するための電位差印加部と、
前記電位差印加部による電位差の印加を制御するための電位差制御部とを含み、
前記電位差制御部は、第1被吸着体を前記静電チャックに吸着させるための第1電位差、前記第1被吸着体を前記静電チャックに吸着させた状態に維持させるための前記第1電位差よりも小さい第2電位差、及び前記静電チャックに前記第1被吸着体を介して、第2被吸着体を吸着するための第3電位差が前記電極部に順次に印加されるように制御し、
前記第3電位差は、前記第2電位差よりも大きく、かつ、前記第1電位差より小さく、
前記第2電位差を印加してから前記第3電位差を印加するまでの間に、前記第1被吸着体を吸着している前記静電チャックと前記第2被吸着体とを近づけることを特徴とする静電チャックシステム。
【請求項2】
前記電位差制御部は、前記第3電位差の印加以後に、第4電位差が前記電極部に印加されるように制御することを特徴とする請求項1に記載の静電チャックシステム。
【請求項3】
前記第4電位差は、前記第3電位差よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の静電チャックシステム。
【請求項4】
前記第4電位差は、前記第2電位差以上であることを特徴とする請求項又は請求項に記載の静電チャックシステム。
【請求項5】
前記電極部は、前記静電チャックの第1辺に沿って分割された複数のサブ電極部を含むことを特徴とする請求項1~請求項の何れか一項に記載の静電チャックシステム。
【請求項6】
前記電位差制御部は、前記複数のサブ電極部のうち、前記静電チャックの一端のサブ電極部から前記第1辺に沿って前記静電チャックの他端のサブ電極部に向かって順次に、前記第1電位差が印加されるように制御することを特徴とする請求項に記載の静電チャックシステム。
【請求項7】
前記電位差制御部は、前記複数のサブ電極部のうち、前記静電チャックの一端のサブ電極部から前記第1辺に沿って前記静電チャックの他端のサブ電極部に向かって順次に、前記第3電位差が印加されるように制御することを特徴とする請求項又は請求項に記載の静電チャックシステム。
【請求項8】
前記電極部は、第1極性の電位が印加される櫛形状の第1電極と、前記第1極性と反対極性の電位が印加される櫛形状の第2電極とを含み、櫛形状の前記第1電極の各櫛歯部と櫛形状の前記第2電極の各櫛歯部とは交互に配置されることを特徴とする請求項1~請求項の何れか一項に記載の静電チャックシステム。
【請求項9】
基板にマスクを介して成膜を行うための成膜装置であって、
第1被吸着体である基板と第2被吸着体であるマスクを吸着するための静電チャックシステムを含み、
前記静電チャックシステムは、請求項1~請求項の何れか一項に記載の静電チャックシステムであることを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
被吸着体を吸着するための吸着方法であって、
静電チャックの電極部に第1電位差を印加して第1被吸着体を静電チャックに吸着する第1工程と、
前記第1工程の後に、前記電極部に前記第1電位差よりも小さく、前記第1被吸着体を前記静電チャックに吸着させた状態に維持させるための第2電位差を印加する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記電極部に前記第2電位差よりも大きく、かつ、第1電位差より小さい第3電位差を印加して、前記静電チャックに前記第1被吸着体を介して第2被吸着体を吸着する第3工程と
前記第2電位差を印加してから前記第3電位差を印加するまでの間に、前記第1被吸着体を吸着している前記静電チャックと前記第2被吸着体とを近づける段階と、を含むことを特徴とする吸着方法。
【請求項11】
前記第2被吸着体を吸着する工程以後に、前記第3電位差よりも小さい第4電位差を前記電極部に印加する工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の吸着方法。
【請求項12】
前記第4電位差は前記第2電位差以上であることを特徴とする請求項11に記載の吸着方法。
【請求項13】
前記第1被吸着体を吸着する工程において、前記静電チャックの第1辺に沿って分割された複数のサブ電極部のうち、前記静電チャックの一端のサブ電極部から前記第1辺に沿って前記静電チャックの他端のサブ電極部に向かって順次に、前記第1電位差が印加されることを特徴とする請求項10~請求項12の何れか一項に記載の吸着方法。
【請求項14】
前記第2被吸着体を吸着する工程において、前記静電チャックの第1辺に沿って分割された複数のサブ電極部のうち、前記静電チャックの一端のサブ電極部から前記第1辺に沿って前記静電チャックの他端のサブ電極部に向かって順次に、前記第3電位差が印加されることを特徴とする請求項10~請求項13の何れか一項に記載の吸着方法。
【請求項15】
基板にマスクを介して蒸着材料を成膜する成膜方法であって、
請求項10~請求項14の何れか一項に記載の吸着方法によって前記静電チャックに前記基板と前記マスクが吸着した状態で、蒸着材料を蒸発させ、前記マスクを介して前記基板に前記蒸着材料を成膜する工程とを含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項16】
請求項15の成膜方法を用いて、電子デバイスを製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置の製造においては、成膜装置の蒸発源から蒸発した蒸着材料を、画素パターンが形成されたマスクを介して、基板に蒸着させることで、有機物層や金属層が形成される。
【0003】
上向蒸着方式の成膜装置において、蒸発源は成膜装置の真空容器の下部に設けられ、基板は真空容器の上部に配置され、基板の下面に蒸着される。このような上向蒸着方式の成膜装置の真空容器内において、基板はその下面が基板ホルダによって保持されるが、基板の自重による基板の撓みが、蒸着精度を落とす要因となっている。
【0004】
基板の自重による撓みを低減するための方法として、静電チャックを使う技術が検討されている。すなわち、基板ホルダの支持部の上部に静電チャックを設け、静電チャックを基板の上面に近接又は接触させた状態で静電チャックに吸着電位差を印加する。このようにして、基板の表面に反対極性の電荷を誘導することで、基板の中央部が静電チャックの静電引力によって引っ張られるようにして、基板の撓みを低減することができる。
【0005】
特許文献1(特表2016-539489号公報)では、静電チャックにより基板を保持した状態でマスクを吸着する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2016-539489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基板やマスク等の被吸着体を良好に静電チャックに吸着することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様による静電チャックシステムは、被吸着体を吸着するための静電チャックシステムであって、電極部を含む静電チャックと、前記静電チャックの前記電極部に電位差を印加するための電位差印加部と、前記電位差印加部による電位差の印加を制御するための電位差制御部とを含み、前記電位差制御部は、第1被吸着体を前記静電チャックに吸着させるための第1電位差、前記第1被吸着体を前記静電チャックに吸着させた状態に維持させるための前記第1電位差よりも小さい第2電位差、及び前記静電チャックに前記第1被吸着体を介して、第2被吸着体を吸着するための第3電位差が前記電極部に順次に印加されるように制御し、前記第3電位差は、前記第2電位差より大きく、かつ、前記第1電位差より小さく、前記第2電位差を印加してから前記第3電位差を印加するまでの間に、前記第1被吸着体を吸着している前記静電チャックと前記第2被吸着体とを近づけることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様による成膜装置は、基板にマスクを介して成膜を行うための成膜装置であって、第1被吸着体である基板と第2被吸着体であるマスクを吸着するための静電チャックシステムを含み、前記静電チャックシステムは本発明の第1態様による静電チャックシステムであることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3態様による吸着方法は、被吸着体を吸着するための吸着方法であって、静電チャックの電極部に第1電位差を印加して第1被吸着体を静電チャックに吸着する工程と、前記電極部に前記第1電位差よりも小さく、前記第1被吸着体を前記静電チャックに吸着させた状態に維持させるための第2電位差を印加する工程と、前記電極部に前記第2電位差よりも大きく、かつ、第1電位差より小さい第3電位差を印加して、前記静電チャックに前記第1被吸着体を介して前記第2被吸着体を吸着する工程と、前記第2電位差を印加してから前記第3電位差を印加するまでの間に、前記第1被吸着体を吸着している前記静電チャックと前記第2被吸着体とを近づける段階と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4態様による成膜方法は、基板にマスクを介して蒸着材料を成膜する方法であって、本発明の第3態様による吸着方法によって前記静電チャックに前記基板と前記マスクが吸着した状態で、蒸着材料を蒸発させ、前記マスクを介して前記基板に前記蒸着材
料を成膜する工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の第5態様による電子デバイスの製造方法は、本発明の第4態様による成膜方法を用いて電子デバイスを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板やマスク等の被吸着体を良好に静電チャックに吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、電子デバイスの製造装置の一部の模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による成膜装置の模式図である。
図3A図3Aは、本発明の一実施形態による静電チャックシステムの概念図である。
図3B図3Bは、本発明の一実施形態による静電チャックシステムの模式図である。
図3C図3Cは、本発明の一実施形態による静電チャックシステムの模式図である。
図4A図4Aは、基板及びマスクの静電チャックへの吸着、保持のシーケンスを示す模式図である。
図4B図4Bは、基板及びマスクの静電チャックへの吸着、保持のシーケンスを示す模式図である。
図4C図4Cは、基板及びマスクの静電チャックへの吸着、保持のシーケンスを示す模式図である。
図4D図4Dは、基板及びマスクの静電チャックへの吸着、保持のシーケンスを示す模式図である。
図5図5は、静電チャックに印加される電位差の変化を示すグラフである。
図6図6は、電子デバイスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する
装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択してもよく、また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもよい。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置においては、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL表示素子を形成しているので、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0017】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【0018】
図1の製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、4.5世代の基板(約700mm×900mm)や6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に、有機EL素子の形成のための成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルに製作する。
【0019】
電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置1の間を繋ぐ中継装置とを含む。
【0020】
クラスタ装置1は、基板Sに対する処理(例えば、成膜)を行う複数の成膜装置11と、使用前後のマスクを収納する複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13を具備する。
【0021】
搬送室13内には、複数の成膜装置11の間で基板Sを搬送し、成膜装置11とマスクストック装置12との間でマスクを搬送する搬送ロボット14が設置される。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板Sを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0022】
成膜装置11(蒸着装置とも呼ぶ)では、蒸発源に収納された蒸着材料がヒータによって加熱されて蒸発し、マスクを介して基板上に蒸着される。搬送ロボット14との基板Sの受け渡し、基板Sとマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板Sの固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって行われる。
【0023】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0024】
クラスタ装置1には、基板Sの流れ方向において上流側からの基板Sを当該クラスタ装置1に伝達するパス室15と、当該クラスタ装置1で成膜処理が完了した基板Sを下流側の他のクラスタ装置1に伝えるためのバッファー室16が連結される。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Sを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Sを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11b)から受け取って、下流側に連結されたバッファー室16に搬送する。
【0025】
バッファー室16とパス室15との間には、基板の向きを変える旋回室17が設置される。旋回室17には、バッファー室16から基板Sを受け取って基板Sを180°回転さ
せ、パス室15に搬送するための搬送ロボット18が設けられる。これにより、上流側のクラスタ装置1と下流側のクラスタ装置1で基板Sの向きが同一となり、基板処理が容易になる。
【0026】
パス室15、バッファー室16、旋回室17は、2つのクラスタ装置1の間を連結する、いわゆる中継装置であり、クラスタ装置1の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、パス室15、バッファー室16、旋回室17のうち少なくとも1つを含む。
【0027】
成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13、バッファー室16、旋回室17などは、有機EL表示パネルの製造の過程で、高真空状態に維持される。パス室15は、通常低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもよい。
【0028】
本実施例では、図1を参照して、電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバーを有してもよく、これらの装置やチャンバー間の配置が変わってもよい。
【0029】
以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
<成膜装置>
図2は、成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板Sが水平面(XY平面)と平行となるように固定された場合、基板Sの短手方向(短辺に平行な方向)をX方向、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向とする。また、Z軸まわりの回転角をθで表す。
【0030】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21と、真空容器21の内部に設けられる、基板支持ユニット22と、マスク支持ユニット23と、静電チャック24と、蒸発源25とを含む。
【0031】
基板支持ユニット22は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14が搬送して来る基板Sを受取り保持する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。
【0032】
基板支持ユニット22の下方には、マスク支持ユニット23が設けられる。マスク支持ユニット23は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14が搬送して来るマスクMを受取り保持する手段であり、マスクホルダとも呼ばれる。
【0033】
マスクMは、基板S上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンを有し、マスク支持ユニット23の上に載置される。特に、スマートフォン用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは、微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも呼ぶ。
【0034】
基板支持ユニット22の上方には、基板Sを静電引力によって吸着し固定するための静電チャック24が設けられる。静電チャック24は、誘電体(例えば、セラミック材質)マトリックス内に金属電極などの電気回路が埋設された構造を有する。金属電極にプラス(+)及びマイナス(-)の電位が印加されると、誘電体マトリックスを通じて基板Sなどの被吸着体に金属電極と反対極性の分極電荷が誘導され、これらの間の静電引力によって基板Sが静電チャック24に吸着固定される。静電チャック24は、一つのプレートで形成されてもよく、複数のサブプレートを有するように形成されてもよい。また、一つのプレートで形成される場合にも、その内部に複数の電気回路を含み、一つのプレート内で位置によって静電引力が異なるように制御してもよい。
【0035】
本実施形態では後述のように、成膜前に静電チャック24で基板S(第1被吸着体)だ
けでなく、マスクM(第2被吸着体)も吸着し保持する。その後、静電チャック24で基板S(第1被吸着体)とマスクM(第2被吸着体)を保持した状態で、成膜を行う。
【0036】
本実施例では、静電チャック24の鉛直方向の下側に配置される基板S(第1被吸着体)を静電チャックに吸着及び保持し、その後、基板S(第1被吸着体)を中心に静電チャック24と反対側に配置されるマスクM(第2被吸着体)を、基板S(第1被吸着体)越しに静電チャック24に吸着し保持する。
【0037】
図2には図示していないが、静電チャック24の吸着面とは反対側に基板Sの温度上昇を抑える冷却機構(例えば、冷却板)を設けることで、有機材料の変質や劣化を抑制する構成としてもよい。
【0038】
また、図2に図示していないが、静電チャック24は、マグネット板を兼ねていてもよい。マグネット板は、磁力によってマスクMを引き付けることで、成膜時の基板SとマスクMの密着性を高める部材である。
【0039】
蒸発源25は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸発源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸発源25は、点(point)蒸
発源や線形(linear)蒸発源など、用途に従って多様な構成を有することができる。
【0040】
図2に図示していないが、成膜装置11は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0041】
真空容器21の上部外側(大気側)には、基板Zアクチュエータ26、マスクZアクチュエータ27、静電チャックZアクチュエータ28、位置調整機構29などが設けられる。これらのアクチュエータと位置調整機構は、例えば、モータとボールねじ、或いはモータとリニアガイドなどで構成される。基板Zアクチュエータ26は、基板支持ユニット22を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。マスクZアクチュエータ27は、マスク支持ユニット23を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。静電チャックZアクチュエータ28は、静電チャック24を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。
【0042】
位置調整機構29は、静電チャック24のアライメントのための駆動手段である。位置調整機構29は、静電チャック24全体を基板支持ユニット22及びマスク支持ユニット23に対して、X方向移動、Y方向移動、θ回転させる。なお、本実施形態では、静電チャック24をX、Y、θ方向に位置調整することで、基板SとマスクMの両者の位置を調整するアライメントを行ってもよい。
【0043】
真空容器21の外側上面には、上述した駆動機構の他に、真空容器21の上面に設けられた透明窓を介して、基板S及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラ20を設置してもよい。本実施例においては、アライメント用カメラ20は、矩形の基板S、マスクM及び静電チャック24の対角線に対応する位置または、矩形の4つのコーナー部に対応する位置に設置してもよい。
【0044】
本実施形態の成膜装置11に設置されるアライメント用カメラ20は、基板SとマスクMとの相対的な位置を高精度で調整するのに使われるファインアライメント用カメラであり、その視野角は狭いが高解像度を持つカメラである。成膜装置11は、アライメント用カメラ20として、ファインアライメント用カメラの他に相対的に視野角が広くて低解像度であるラフアライメント用カメラを有してもよい。
【0045】
尚、位置調整機構29は、アライメント用カメラ20によって取得した基板S(第1被吸着体)及びマスクM(第2被吸着体)の位置情報に基づいて、基板S(第1被吸着体)とマスクM(第2被吸着体)を相対的に移動させて位置調整するアライメントを行う。
【0046】
成膜装置11は、制御部(不図示)を具備する。制御部は、基板Sの搬送及びアライメント、蒸発源の制御、成膜の制御などの機能を有する。制御部は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成可能である。この
場合、制御部の機能はメモリーまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(Programmable Logic Controller)を使用してもよい。または、制御部の機能の一部または全部をASICやF
PGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0047】
<静電チャックシステム>
図3A図3Cを参照して本実施形態による静電チャックシステム30について説明する。図3Aは、本実施形態の静電チャックシステム30の概念的なブロック図であり、図3Bは静電チャック24の模式的な断面図であり、図3Cは静電チャック24の模式的な平面図である。
【0048】
本実施形態の静電チャックシステム30は、図3Aに示すように、静電チャック24と、電位差印加部31と、電位差制御部32とを含む。
【0049】
電位差印加部31は、静電チャック24の電極部に静電引力を発生させるための電位差を印加する。このように、電位差印加部31は、所望の電位(電位差)が形成されるように電圧を印加する。
【0050】
電位差制御部32は、成膜装置11の成膜工程の進行に応じて、電位差印加部31から電極部に加えられる電位差の大きさ、電位差の印加開始時点、電位差の維持時間、電位差の印加順番などを制御する。電位差制御部32は、例えば、静電チャック24の電極部に含まれる複数のサブ電極部241~249への電位差印加をサブ電極部別に独立的に制御することができる。本実施形態では、電位差制御部32が成膜装置11の制御部とは別途設けられているが、本発明はこれに限定されず、成膜装置11の制御部に統合されてもよい。
【0051】
静電チャック24は、基板Sとの間で静電吸着力を発生させる電極部を含み、電極部は、複数のサブ電極部241~249を含むことができる。例えば、本実施形態の静電チャック24は、図3Aに示すように、静電チャック24の長手方向(Y方向)および/また
は、静電チャック24の短手方向(X方向)に沿って、分割された複数のサブ電極部241~249を含む。したがって、電極部は、静電チャック24が有する複数の辺のうちの一辺(第1辺)に沿って分割された複数のサブ電極部241~249を含んでもよい。
【0052】
サブ電極部241~249のそれぞれは、静電吸着力を発生させるためにプラス(第1極性)及びマイナス(第2極性)の電位が印加される電極対33を含む。例えば、それぞれの電極対33は、プラス電位が印加される第1電極331と、マイナス電位が印加される第2電極332とを含む。
【0053】
第1電極331及び第2電極332は、図3Cに図示したように、それぞれ櫛形状を有する。例えば、第1電極331及び第2電極332は、それぞれ複数の櫛歯部と、複数の
櫛歯部に連結される基部とを含む。各電極331、332の基部は櫛歯部に電位を供給し、複数の櫛歯部は、基板Sとの間で静電吸着力を生じさせる。一つのサブ電極部において、第1電極331の各櫛歯部は、第2電極332の各櫛歯部と対向するように、交互に配置される。
【0054】
第1電極331及び第2電極332に印加される電位に対応して被吸着体である基板Sが静電誘導あるいは誘電分極により帯電して静電チャック24に吸着されるが、第1電極331の櫛歯部及び第2電極332の櫛歯部を細く、かつ間隔を狭くすることで絶縁体である基板Sに対しても十分に強い吸着力を発生させることができる。
【0055】
つまり、第1電極331の櫛歯部及び第2電極332の櫛歯部によって大きな不均一な電界を形成し、これによるグラジエント力によって絶縁性基板を強く吸着することができる。櫛歯部の間隔が狭いほど電界強度の勾配が大きくなり、吸着力も大きくなる。櫛歯部間の電界の勾配が大きいため、絶縁破壊が生じないように、静電チャック24の電極部が埋設される誘電体マトリックスとしては高抵抗材料を用いることが望ましい。
【0056】
本実施例においては、静電チャック24のサブ電極部241~249の各電極331、332が櫛形状を有すると説明したが、本発明はそれに限定されず、基板Sとの間で静電引力を発生させることができる限り、多様な形状を持つことができる。
【0057】
本実施形態の静電チャック24は、複数のサブ電極部に対応する複数の吸着部を有する。例えば、本実施例の静電チャック24は、図3Cに図示したように、9つのサブ電極部241~249に対応する9つの吸着部を有するが、これに限定されず、基板Sの吸着をより精緻に制御するため、他の個数の吸着部を有してもよい。
【0058】
吸着部は、静電チャック24の長手方向(Y軸方向)及び短手方向(X軸方向)に分割されるように設けられるが、これに限定されず、静電チャック24の長手方向または短手方向だけに分割されてもよい。複数の吸着部は、物理的に一つのプレートが複数の電極部を持つことで構成されてもよく、物理的に分割された複数のプレートそれぞれが一つまたはそれ以上の電極部を持つことで構成されてもよい。例えば、図3Cに示した実施例において、複数の吸着部のそれぞれが複数のサブ電極部のそれぞれに対応するように構成されてもよく、一つの吸着部が複数のサブ電極部を含むように構成されてもよい。
【0059】
つまり、電位差制御部32によるサブ電極部241~249への電位差の印加を制御することで、後述するように、基板Sの吸着進行方向(X方向)と交差する方向(Y方向)に配置された3つのサブ電極部241、244、247によって一つの吸着部を成すようにすることができる。すなわち、3つのサブ電極部241、244、247のそれぞれは、独立的に電位差制御が可能であるが、これら3つのサブ電極部241、244、247に同時に電位差が印加されるように制御することで、これら3つのサブ電極部241、244、247が一つの吸着部として機能するようにすることができる。複数の吸着部のそれぞれが独立的に基板Sの吸着を行うことができる限り、その具体的な物理的構造及び電気回路的構造を変更してもよい。
【0060】
<静電チャックシステムによる吸着方法及び電位差の制御>
以下、図4A図4D及び図5を参照して、静電チャック24に基板S及びマスクMを吸着する工程及び電位差の制御について説明する。
【0061】
図4Aは、静電チャック24に基板Sを吸着する工程を図示する。
本実施形態においては、図4Aに示したように、基板Sが静電チャック24の下面の全面に同時に吸着されるのではなく、静電チャック24の第1辺(短辺)に沿って静電チャ
ック24の一端から他端に向かって順次に吸着が進行する。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、静電チャック24の対角線上の一つの角からこれと対向する他の角に向かって基板の吸着が進行してもよい。
【0062】
静電チャック24の第1辺に沿って基板Sが順次に吸着されるようにするために、複数のサブ電極部241~249に基板Sの吸着のための第1電位差を印加する順番を制御してもよく、複数のサブ電極部241~249に同時に第1電位差を印加するが、基板Sを支持する基板支持ユニット22の支持部の構造や支持力を異ならせてもよい。例えば、電位差制御部32は、複数のサブ電極部241~249のうち、静電チャック24の一端のサブ電極部241から静電チャック24の第1辺に沿って静電チャック24の他端のサブ電極部249に向かって順次に、第1電位差が印加されるように制御してもよい。
【0063】
図4Aは、静電チャック24の複数のサブ電極部241~249に印加される電位差の制御によって、基板Sを静電チャック24に順次に吸着させる実施形態を示す。ここでは、静電チャック24の長辺方向(Y方向)に沿って配置される3つのサブ電極部241、244、247が第1吸着部41を成し、静電チャック24の中央部の3つのサブ電極部242、245、248が第2吸着部42を成し、残り3つのサブ電極部243、246、249が第3吸着部43を成すことを前提に説明する。
【0064】
まず、図4Aに示したように、成膜装置11の真空容器21内に基板Sが搬入され、基板支持ユニット22の支持部に載置される。
【0065】
続いて、静電チャック24が下降し、基板支持ユニット22の支持部上に載置された基板Sに向かって移動する。
【0066】
静電チャック24が基板Sに十分に近接または接触すると、電位差制御部32は、静電チャック24の第1辺(短手)に沿って第1吸着部41から第3吸着部43に向かって順次に第1電位差(ΔV1)が印加されるように制御する。
【0067】
つまり、図4Aに示したように、第1吸着部41に先に第1電位差が印加され、次いで、第2吸着部42に第1電位差が印加され、最終的に第3吸着部43に第1電位差が印加されるように制御する。
【0068】
第1電位差(ΔV1)は、基板Sを静電チャック24に確実に吸着させるために十分な大きさの電位差に設定される。
【0069】
これにより、基板Sの静電チャック24への吸着が、基板Sの第1吸着部41に対応する側から基板Sの中央部を経て、第3吸着部43側に向かって進行し(すなわち、X方向に基板Sの吸着が進行し)、基板Sは、基板Sの中央部にしわ(撓み)が残らずに、平らな状態で静電チャック24に吸着される。これにより、静電チャック24に吸着された基板Sの撓みが低減される。
【0070】
本実施形態においては、静電チャック24が基板Sに十分に近接或いは接触した状態で第1電位差(ΔV1)を印加する場合の一例を説明したが、静電チャック24が基板Sに向かって下降を始める前に、或いは、下降の途中に第1電位差(ΔV1)を印加してもよい。
【0071】
基板Sの静電チャック24への吸着工程が完了した後の所定の時点で、電位差制御部32は、図4Bに示したように、静電チャック24の電極部に印加される電位差を、第1電位差(ΔV1)から第1電位差(ΔV1)よりも小さい第2電位差(ΔV2)に下げる。
【0072】
第2電位差(ΔV2)は、基板Sを静電チャック24に吸着された状態に維持するための吸着維持電位差であり、基板Sを静電チャック24に吸着させる際に印加した第1電位差(ΔV1)よりも小さい電位差である。静電チャック24に印加される電位差が第2電位差(ΔV2)に下がると、これに対応して基板Sに誘導される分極電荷量も、図4Bに示したように、第1電位差(ΔV1)が加えられた場合に比べて減少するが、基板Sが一旦第1電位差(ΔV1)によって静電チャック24に吸着された以後は、第1電位差(ΔV1)よりも小さい第2電位差(ΔV2)を印加しても基板Sの吸着状態を維持することができる。
【0073】
このように、静電チャック24の電極部に印加される電位差を第2電位差(ΔV2)に下げることで、基板Sを静電チャック24から分離するのにかかる時間を短縮することができる。
【0074】
つまり、静電チャック24から基板Sを分離しようとする時、静電チャック24の電極部に加えられる電位差をゼロ(0)にしても、直ちに静電チャック24と基板Sとの間の静電引力が消えるのではなく、静電チャック24と基板Sとの界面に誘導された電荷が消えるのに相当な時間(場合によっては、数分程度)がかかる。特に、静電チャック24に基板Sを吸着させる際は、通常、その吸着を確実にするために、静電チャック24に基板Sを吸着させるのに必要な最小静電引力(Fth)よりも十分に大きい静電引力が作用するように第1電位差(例えば、図5に示したΔVmax)を設定するが、このような第1電位差から基板Sの分離が可能な状態になるまでは相当な時間がかかる。
【0075】
本実施例では、このような静電チャック24からの基板Sの分離にかかる時間により全体的な工程時間(Tact)が増加してしまうことを防止するために、基板Sが静電チャック24に吸着した後に、所定の時点で、静電チャック24に印加される電位差を第2電位差に下げる。
【0076】
図4Bに示した実施例では、静電チャック24の第1吸着部41~第3吸着部43に印加される電位差を同時に第2電位差に下げることと示したが、本発明はこれに限定されず、吸着部別に第2電位差に下げる時点や印加される第2電位差の大きさがそれぞれ異なるようにしてもよい。例えば、第1吸着部41から第3吸着部43に向かって順次に第2電位差に下げてもよい。
【0077】
このように、静電チャック24の電極部に印加される電位差が第2電位差に下がった後、静電チャック24に吸着した基板Sとマスク支持ユニット23上に載置されたマスクMの相対的位置を調整(アライメント)する。本実施例では、静電チャック24の電極部に印加される電位差が第2電位差に下がった後に基板SとマスクMと間の相対的な位置調整(アライメント)を行う場合の一例を説明したが、本発明はこれに限定されず、静電チャック24の電極部に第1電位差が印加されている状態でアライメント工程を行ってもよい。
【0078】
続いて、図4Cに図示したように、静電チャック24の電極部に第3電位差(ΔV3)を印加することで、基板Sを介してマスクMを吸着させる。つまり、静電チャック24に吸着した基板Sの下面にマスクMを吸着させる。
【0079】
このため、まず、基板Sが吸着した静電チャック24を静電チャックZアクチュエータ28によりマスクMに向かって下降させる。
【0080】
静電チャック24に吸着した基板Sの下面がマスクMに十分に近接又は接触すれば、電
位差制御部32は、電位差印加部31が静電チャック24の電極部に第3電位差(ΔV3)を印加するように制御する。
【0081】
第3電位差(ΔV3)は、第2電位差(ΔV2)よりも大きく、基板S越しにマスクMが静電誘導によって帯電できる程度の大きさであることが好ましい。これによって、マスクMを基板S越しに静電チャック24に吸着することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、第3電位差(ΔV3)は、第2電位差(ΔV2)と同じ大きさを有してもよい。第3電位差(ΔV3)が第2電位差(ΔV2)と同じ大きさを有しても、前述した通り、静電チャック24の下降によって静電チャック24または基板SとマスクMとの間の相対的な距離が縮まるので、静電チャック24の電極部に印加される電位差の大きさを大きくしなくても、基板Sに静電誘導された分極電荷によってマスクMにも静電誘導を起こせることができ、マスクMを基板S越しに静電チャック24に吸着できる程度の吸着力が得られる。
【0082】
第3電位差(ΔV3)は、第1電位差(ΔV1)よりも小さくしてもよく、工程時間(Tact)の短縮を考慮して第1電位差(ΔV1)と同等な程度の大きさにしてもよい。例えば、第3電位差(ΔV3)は、第1電位差(ΔV1)以下であってもよい。
【0083】
図4Cに図示したマスク吸着工程では、マスクMにしわが残らずに、マスクMを基板Sの下面に吸着できるように、電位差制御部32は、第3電位差(ΔV3)を静電チャック24全体にわたって同時に印加するのではなく、静電チャック24の第1辺に沿って第1吸着部41から第3吸着部43に向かって順次に印加する。
【0084】
つまり、図4Cに示したように、第1吸着部41に先に第3電位差が印加され、次いで、第2吸着部42に第3電位差が印加され、第3吸着部43には最終的に第3電位差が加えられるように制御する。第1電位差の印加と同様に、例えば、電位差制御部32は、複数のサブ電極部241~249のうち、静電チャック24の一端のサブ電極部241から静電チャック24の第1辺に沿って静電チャック24の他端のサブ電極部249に向かって順次に、第3電位差が印加されるように制御してもよい。
【0085】
これにより、マスクMの静電チャック24への吸着は、マスクMの第1吸着部41に対応する側からマスクMの中央部を経て、第3吸着部43側に向かって、進行し(すなわち、X方向にマスクMの吸着が進行し)、マスクMは、マスクMの中央部にしわが残ることなく、平らな状態で静電チャック24に吸着される。したがって、静電チャック24に吸着されたマスクMの撓みが低減される。
【0086】
本実施形態においては、静電チャック24がマスクMに近接或いは接触した状態で第3電位差(ΔV3)を印加する場合の一例を説明したが、静電チャック24がマスクMに向かって下降を始める前に、或いは、下降の途中に第3電位差(ΔV3)を印加してもよい。
【0087】
マスクMの静電チャック24への吸着工程が完了した後の所定の時点で、電位差制御部32は、図4Dに示したように、静電チャック24の電極部に印加される電位差を、第3電位差(ΔV3)から第3電位差(ΔV3)よりも小さい第4電位差(ΔV4)に下げる。
【0088】
第4電位差(ΔV4)は、静電チャック24に基板S越しに吸着されたマスクMの吸着状態を維持するための吸着維持電位差であり、マスクMを静電チャック24に吸着させる時の第3電位差(ΔV3)よりも小さい電位差である。静電チャック24に印加される電位差が第4電位差(ΔV4)に下がると、これに対応してマスクMに誘導される分極電荷
量も、図4Dに示したように、第3電位差(ΔV3)が加えられた場合に比べて減少するが、マスクMが一旦第3電位差(ΔV3)によって静電チャック24に吸着された以後は、第3電位差(ΔV3)よりも小さい第4電位差(ΔV4)を印加してもマスクMの吸着状態を維持することができる。
【0089】
このように、静電チャック24の電極部に印加される電位差を第4電位差(ΔV4)に下げることで、基板Sを静電チャック24から分離するのにかかる時間を減らすことができる。
【0090】
つまり、静電チャック24からマスクMを分離しようとする時、静電チャック24の電極部に加えられる電位差をゼロ(0)にしても、直ちに静電チャック24とマスクMとの間の静電引力が消えるのではなく、基板SとマスクMとの界面に誘導された電荷が消えるのに相当な時間(場合によっては、数分程度)がかかる。特に、静電チャック24にマスクMを吸着させる際は、通常、その吸着を確実にし、吸着にかかる時間を短縮するために、十分に大きい電位差を印加するが、このような第3電位差からマスクの分離が可能な状態になるまでは相当な時間がかかる。
【0091】
本実施例では、このような静電チャック24からのマスクMの分離にかかる時間により全体的な工程時間(Tact)が増加してしまうことを防止するために、マスクMが静電チャック24に吸着した後に、所定の時点で、静電チャック24に印加される電位差を第4電位差に下げる。
【0092】
図4Dに図示した実施例では、静電チャック24の第1吸着部41~第3吸着部43に印加される電位差を同時に第4電位差に下げることにしたが、本発明はこれに限定されず、吸着部別に第4電位差に下げる時点や印加される第4電位差の大きさがそれぞれ異なるようにしてもよい。例えば、第1吸着部41から第3吸着部43に向かって順次に第4電位差に下げてもよい。
【0093】
このようにして、マスクMが基板S越しに静電チャック24に吸着した状態で、蒸発源25から蒸発された蒸着材料がマスクMを介して基板Sに成膜される成膜工程が行われる。本実施例では、静電チャック24による静電吸着力でマスクMを保持する場合の一例を説明したが、本発明はこれに限定されず、静電チャック24の上部に設置されたマグネット板によって金属製のマスクMに磁力を印加することで、より確実にマスクMを基板Sに密着させることができる。
【0094】
以下、図5を参照して、静電チャック24により基板SおよびマスクMを吸着して保持する過程において、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に印加される電位差の制御について説明する。
【0095】
まず、基板Sを静電チャック24に吸着させるために、所定の時点(t1)で静電チャック24の電極部またはサブ電極部に第1電位差(ΔV1)を印加する。
【0096】
第1電位差(ΔV1)は、基板Sを静電チャック24に吸着させるのに十分な静電吸着力が得られる大きさを有し、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に第1電位差が印加されてから基板Sに分極電荷が発生するまでかかる時間を短縮させるために可能な限り大きい電位差であることが好ましい。例えば、電位差印加部31によって印加可能な最大電位差(ΔVmax)を印加してもよい。
【0097】
続いて、印加された第1電位差によって基板Sに分極電荷が誘導され、基板Sが静電チャック24に十分な静電吸着力で吸着した後(t=t2)に、静電チャック24の電極部
またはサブ電極部に印加される電位差を第2電位差(ΔV2)に下げる。第2電位差(ΔV2)は、基板Sが静電チャック24に吸着した状態を維持できる最も低い電位差(ΔVmin)であればよい。
【0098】
続いて、マスクMを基板S越しに静電チャック24に吸着させるために、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に印加される電位差を第3電位差(ΔV3)に上げる(t=t3)。第3電位差(ΔV3)は、マスクMを基板S越しに静電チャック24に吸着させるための電位差であるので、第2電位差(ΔV2)以上の大きさを有することが好ましく、工程時間を考慮して電位差印加部31が印加できる最大電位差(ΔVmax)であることがより好ましい。
【0099】
本実施形態では、成膜工程後に基板SおよびマスクMを静電チャック24から分離するのにかかる時間を短縮するために、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に印加される電位差を第3電位差(ΔV3)に維持せず、より小さい第4電位差(ΔV4)に下げる(t=t4)。ただし、マスクMが基板S越しに静電チャック24に吸着した状態を維持するために、第4電位差(ΔV4)は、基板Sのみが静電チャック24に吸着された状態を維持するのに必要な第2電位差(ΔV2)以上の電位差であることが好ましい。
【0100】
成膜工程が完了した後(t5)に、マスクMを静電チャック24から分離するために、まず、静電チャック24の電極部に印加される電位差を、基板Sのみの吸着状態が維持可能な電位差(ΔVmin)に下げる(第5電位差)。
【0101】
これによって、マスク(M)が分離した後、静電チャック24の電極部に印加される電位差をゼロ(0)に下げるか(すなわち、オフにするか)、反対極性の電位差を印加する(t=t6)。これにより、基板Sに誘導された分極電荷が除去されて、基板Sが静電チャック24から分離できる。
【0102】
基板SとマスクMを静電チャック24から分離するための他の実施例では、成膜工程が完了した後に、第5電位差に下げる段階を省いて、基板SとマスクMを同時に静電チャック24から分離する。このために、電位差印加部31をオフにするか、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に反対極性の電位差を印加する。これにより、基板SとマスクMは同時に静電チャック24から分離され、以後、別途の機構を使用して基板SとマスクMを分離する。
【0103】
<成膜プロセス>
以下、本実施形態による静電チャックの電位差制御を採用した成膜方法について説明する。
【0104】
真空容器21内のマスク支持ユニット23にマスクMが載置された状態で、搬送室13の搬送ロボット14によって成膜装置11の真空容器21内に基板Sが搬入される。
【0105】
真空容器21内に進入した搬送ロボット14のハンドが下降し、基板Sを基板支持ユニット22の支持部上に載置する。
【0106】
続いて、静電チャック24が基板Sに向かって下降し、基板Sに十分に近接或いは接触した後に、静電チャック24に第1電位差(ΔV1)を印加し、基板Sを吸着する。
【0107】
本発明の一実施形態においては、基板Sを静電チャック24から分離するのに必要な時間を最大限に確保するため、基板Sの静電チャック24への吸着が完了した後に、静電チャック24に加えられる電位差を第1電位差(ΔV1)から第2電位差(ΔV2)に下げ
る。静電チャック24に加えられる電位差を第2電位差(ΔV2)に下げても、第1電位差(ΔV1)によって基板Sに誘導された分極電荷が放電されるまでに時間がかかるため、以降の工程で静電チャック24による基板Sへの吸着力を維持することができる。
【0108】
静電チャック24に基板Sが吸着された状態で、基板SのマスクMに対する相対的な位置ずれを計測するため、基板SをマスクMに向かって下降させる。本発明の他の実施形態においては、静電チャック24に吸着された基板Sの下降の過程で基板Sが静電チャック24から脱落することを確実に防止するために、基板Sの下降の過程が完了した後(つまり、後述するアライメント工程が開始する直前)に、静電チャック24に加える電位差を第2電位差(ΔV2)に下げる。
【0109】
基板Sが計測位置まで下降すると、アライメント用カメラ20で基板SとマスクMに形成されたアライメントマークを撮影して、基板SとマスクMの相対的な位置ずれを計測する。本発明の他の実施形態では、基板SとマスクMの相対的位置の計測工程の精度をより高めるために、アライメントのための計測工程が完了した後(アライメント工程中)に、静電チャック24に加えられる電位差を第2電位差に下げる。つまり、静電チャック24に基板Sを第1電位差(ΔV1)によって強く吸着させた状態(基板Sをより平らに維持した状態)での基板SとマスクMのアライメントマークを撮影することにより、計測工程の精度を上げることができる。
【0110】
計測の結果、基板SのマスクMに対する相対的位置ずれが閾値を超えることが判明すれば、静電チャック24に吸着された状態の基板Sを水平方向(XYθ方向)に移動させて、基板SをマスクMに対して、位置調整(アライメント)する。本発明の他の実施形態においては、このような位置調整の工程が完了した後に、静電チャック24に加えられる電位差を第2電位差(ΔV2)に下げる。これによって、アライメント工程全体(相対的な位置計測や位置調整)にわたって精度をより高めることができる。
【0111】
アライメント工程の後、マスクMを基板S越しに静電チャック24に吸着させる。このため、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に第2電位差以上の大きさを有する第3電位差(ΔV3)を印加する。
【0112】
このようなマスクMの吸着工程が完了した後、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に印加される電位差を、静電チャック24に基板SとマスクMが吸着された状態を維持することができる電位差である、第4電位差に下げる。これにより、成膜工程の完了後に基板SおよびマスクMを静電チャック24から分離するのにかかる時間を短縮することができる。
【0113】
続いて、蒸発源25のシャッタを開け、蒸着材料をマスクMを介して基板Sに蒸着させる。
【0114】
所望の厚さの蒸着材料を基板Sに蒸着した後、静電チャック24の電極部またはサブ電極部に印加される電位差を第5電位差に下げてマスクMを分離し、静電チャック24に基板Sのみが吸着した状態で、静電チャックZアクチュエータ28により、基板Sを上昇させる。
【0115】
続いて、搬送ロボット14のハンドが成膜装置11の真空容器21内に進入し、静電チャック24の電極部或いはサブ電極部にゼロ(0)または逆極性の電位差が印加され(t6)、静電チャック24が基板Sから分離されて上昇する。その後、蒸着が完了した基板Sを搬送ロボット14によって真空容器21から搬出する。
【0116】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0117】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図6(a)は有機EL表示装置60の全体図、図6(b)は1画素の断面構造を表している。
【0118】
図6(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0119】
図6(b)は、図6(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、陽極64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、陰極68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に相当する。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と陰極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、陽極64と陰極68とが異物によってショートするのを防ぐために、複数の陽極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0120】
図6(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、陽極64と正孔輸送層65との間には陽極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、陰極68と電子輸送層67の間にも電子注入層を形成することができる。
【0121】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および陽極64が形成された基板63を準備する。
【0122】
陽極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、陽極64が形成された部分に開口部が形成されるようにパターニングして絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0123】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持ユニット及び静電チャックにて基板63を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の陽極
64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0124】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板支持ユニット及び静電チャックにて保持する。基板63とマスクとのアライメントを行い、基板63をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0125】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0126】
電子輸送層67まで形成された基板63を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて陰極68を成膜する。
【0127】
本発明によると、基板とマスクを静電チャック24に吸着させた後、所定の時点で静電チャック24に印加する電位差をあらかじめ下げておくことによって、基板及び/又はマ
スクを静電チャック24から分離するのにかかる時間を短縮し、工程時間を減らすことができる。
【0128】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0129】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本実施例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0130】
上記実施例は本発明の一例を示したものでしかなく、本発明は上記実施例の構成に限定されず、その技術思想の範囲内で適宜変形してもよい。
【符号の説明】
【0131】
1:クラスタ装置
11:成膜装置
12:マスクストック装置
13:搬送室
14:搬送ロボット
20:アライメント用カメラ
21:真空容器
22:基板支持ユニット
23:マスク支持ユニット
24:静電チャック
25:蒸発源
28:静電チャックZアクチュエータ
29:位置調整機構
30:静電チャックシステム
31:電位差印加部
32:電位差制御部
33:電極対
41~43:第1吸着部~第3吸着部
241~249:サブ電極部
331:第1電極
332:第2電極
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6