(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】多孔性高分子金属錯体の賦形体
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20230515BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230515BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B01J20/26 A
B01J20/30
B01D53/04
(21)【出願番号】P 2019067364
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「PCPナノ空間による分子制御科学と応用展開」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【氏名又は名称】小林 良博
(72)【発明者】
【氏名】上代 洋
(72)【発明者】
【氏名】永井 徹
(72)【発明者】
【氏名】野呂 真一郎
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
B01D 53/02-53/12
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性多孔性高分子金属錯体および柔軟性樹脂を含む多孔性高分子金属錯体の賦形体であって、
前記柔軟性樹脂が、
カルボキシル基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基、置換または非置換の、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基から成る群より選ばれるヘテロ原子含有の官能基を有するメタクリル酸エステルであるモノマーA、炭素数がC2~C6の直鎖を有するメタクリル酸エステルであるモノマーB、炭素数がC4~C10の直鎖を有するメタクリル酸エステルであるモノマーCから成る共重合体であり、
前記共重合体が、数平均分子量:5000~150000、Tg:5℃~55℃を有し、
(モノマーCの炭素数)-(モノマーBの炭素数)が2以上であり、
モノマーBとモノマーCの構成比が2:8~8:2であり、
全モノマー量に対するモノマーAの量が2~35モル%である
ことを特徴とする多孔性高分子金属錯体の賦形体。
【請求項2】
前記モノマーAがグリシジルメタクリレートまたは1-ビニルイミダゾールから選ばれ、前記モノマーBがメタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-プロピル、またはメタクリル酸-n-ブチルから選ばれ、前記モノマーCがメタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸-イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、またはメタクリル酸-n-オクチルから選ばれる請求項1に記載の賦形体。
【請求項3】
前記柔軟性多孔性高分子金属錯体に含有される金属イオンが銅イオンである、請求項1
または2に記載の賦形体。
【請求項4】
前記柔軟性多孔性高分子金属錯体が、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体、二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体、および三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体から選ばれる請求項1
または2に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
【請求項5】
前記一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体が、式:[G(H)
2(I)](式中、Gは遷移金属イオン、Hは第一配位子、Iは第二配位子である)、またはG
2(J)
3(L3)
4(式中Gは遷移金属イオン、Jは配位子、L3は1価の対イオンである)である、請求項
4に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
【請求項6】
前記二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体が、カゴメ型と総称される式:[GH](式中、Gは遷移金属イオン、Hは配位子を表す)、またはELMと総称される式:[GHX
2](式中、Gは遷移金属イオン、Hは4,4-ビピリジル類、Xは1価の対イオンを表す)である、請求項
4に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
【請求項7】
前記三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体が、MILまたはDUTと総称される多孔性高分子金属錯体である、請求項
4に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体を含むガス吸着材。
【請求項9】
請求項
8に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
【請求項10】
請求項
8に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔性高分子金属錯体の賦形体、および触媒、ガス吸着材等としての利用ならびにこれを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性高分子金属錯体(多孔配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)ともいう)は、金属イオンと配位子からなる、ナノレベルの細孔を有する固体材料(多孔体)で、2000年以降、主として大学を中心に一般化し、近年、実用化検討が活発化している。PCPの様な多孔体は、ゼオライト、活性炭等が知られており、いずれも細孔内にガスを吸着する特質を生かし、ガスの貯蔵、分離材料として広く実用化されている。
【0003】
固体吸着材を実用規模でガス分離に用いる際には、圧力スイング法(Pressure Swing Adsorption)(以下、単に「PSAシステム」と略記する)が利用される事が多い。この方法は、吸着塔に吸着材を充填した後、ガスの加圧、減圧を繰り返すプロセスである。固体吸着材が粉末である場合は、加圧、減圧に伴い、充填密度の変化による圧損の発生、粉末の装置内飛散によるバルブ類の動作不良などが生じる。このため、固体吸着材をペレット化して賦形体として使用するのが通常である。ペレット化の為には、成形助剤(バインダー)を利用する方法、成形助剤を利用せずにそのまま成形する方法のどちらも用いられる。吸着材の特性に合わせて、成形方法を開発することは非常に重要である。
【0004】
多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと配位子から合成される錯体の一種であり、多孔性を有する事から、既存の多孔体と同様にガス分離材料として利用が可能である。中でも、ゲート型PCPと呼ばれるPCPは、ガスの吸脱着に伴い、材料構造が変化し、材料の体積が増大する特徴がある。合成時にPCPは微粉末として得られるため、PSA法を適用するためには成形体に加工する必要があるが、イオン性物質であるPCPを劣化させず、かつ、ガスの吸脱着に伴うPCPの体積変化に適応できる賦形方法の開発は重要である。
【0005】
ペレット化の為に用いるバインダーとしては、樹脂や、糖類等が利用されるが、いずれの場合も、バインダーの添加量分だけ実質的な吸着材の量が減って、吸着量が減少する問題、バインダーと吸着材の相互作用による吸着材の劣化等の問題がある。またバインダーを用いる成形法、バインダー無しでの直接成形法のどちらにも、成形体の強度不足による粉化の問題がある。活性炭、ゼオライト等のすでに長年工業的に利用されてきている既知材料であっても、成型方法の課題は残っている。
【0006】
多孔性高分子金属錯体の一部には、ガスの吸脱着に伴い、多孔性高分子金属錯体の構造が変化する「柔軟性多孔性高分子金属錯体」が存在する。このような柔軟性多孔性高分子金属錯体の多くは、ガス吸着量が、圧力に対して非線形的に応答するゲート型の吸脱着を示す。これらの柔軟性多孔性高分子金属錯体は、ガスの吸脱着に関して構造変化があるため、バインダーを使用しない賦形体または構造変化に追随できないバインダーを用いた賦形体は、ガス吸着の後に賦形体の崩壊、粉化が生じる。賦形体の崩壊、粉化が生じると、PSAシステムの配管、電磁弁等の閉塞、動作不良が生じるため、柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形化には、柔軟性を有する樹脂をバインダーとして使用する事が提案されている。(特許文献1、非特許文献1参照)
【0007】
上述したように、ゲート型PCPは、硬質な樹脂や糖類等を利用して成形加工しても、ガスの吸脱着に伴う体積変化から成形体にストレスがかかり、クラック、粉化する問題がある。PCPと樹脂のコンポジット材料は種々報告されているが、PCPの吸着特性を低下させずに、PCPの体積変化が有っても粉化させない様なバインダーは知られていない。非特許文献1の記載でも、賦形前のガス吸着量が300mL/gであり、賦形体のポリビニルアルコールの含有量が15%であることから、賦形体のガス吸着量は255mL/gあるべきであるが、観測値は200mL/gに過ぎず、この賦形化により2割近く、ガス吸着性が低下している。また、この文献の、アルミニウムイオンとテレフタル酸から合成される三次元ネットワークを有するMIL-53(Al)と標記される多孔性高分子金属錯体は、柔軟性を有するとあるが、文献の
図4に示された等温線はI型であった。これは、典型的な柔軟性多孔性高分子金属錯体が示す、ゲート型の等温線を示していないため、ゲート型の柔軟性多孔性高分子金属錯体に適用可能かどうかは不明である。また、ガス吸脱着後の形態維持性も不明である。
【0008】
一般論として、バインダー樹脂として、柔軟性樹脂(Tgが低い樹脂)を用いれば、ガスの吸脱着に伴う体積変化に追随出来る可能性があるが、柔軟性が高い樹脂は、成形機への付着等の問題があり、成形加工が困難となる。ゲート型PCPを柔軟性樹脂で成形した例も報告されているが、樹脂の物性と吸着特性、成形体の強度の相関に関する言及はなく、ゲート型PCPの適切なバインダーは知られていない。
【0009】
本明細書にいうゲート型多孔性高分子金属錯体とは、ゲート型の等温線(ゲート現象)を示す材料である。ゲート型等温線とは、主として構造変化により、
図1に示すような変曲点を示す吸着およびまたは脱着等温線を意味する。ゲート型多孔性高分子錯体の等温線は、
図1に示すように、吸着開始ゲート圧力、吸着完了ゲート圧力、ゲート吸着量、脱着開始ゲート圧力、脱着完了ゲート圧力、ゲート脱着量で定義される。
【0010】
特許文献1には、PCPの金属イオンと配位可能な官能基を有し、この官能基によりPCPと架橋するポリマーを用いる柔軟性PCPの賦形化が開示されている。ここでは、ポリマー鎖における隣接する2つの架橋点の間の分子量をPCPの動きに追随するように選択して、PCP・ポリマー複合体の形状維持を図っているが、対象となるPCPは特定されていない。また、この特許文献1には、吸着時に体積が膨張し、物質の脱着時に体積が収縮することが記載されているが、その膨張の程度は明らかでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Vosら(2009). Microporous and mesoporous mater, 120, 221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、賦形体の崩壊、粉化が起こりにくい多孔性高分子金属錯体の賦形体を提供する。また本発明は、ガス吸着材として優れた特性を有し、構造が大きく経変化する柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形体を提供する。また本発明は、ガス吸着材として優れた特性を有する、柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形体を提供する。さらに、本発明は、前記賦形体を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を併せて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、特定の柔軟性樹脂を適切量、特定の多孔性高分子金属錯体と複合化させることで、賦形体の崩壊、粉化が生じにくい賦形体を製造出来る事を見いだし、本発明を完成するに到ったものである。
また、柔軟性多孔性高分子金属錯体のガス吸着特性を低下させず、使用時に賦形体の崩壊・粉化が生じない柔軟性樹脂の特性と多孔性高分子金属錯体の特性の相関を明らかにすることで本発明に至ったものである。
【0015】
かくして、本発明によれば、下記を提供する:
(1) 柔軟性多孔性高分子金属錯体および柔軟性樹脂を含む多孔性高分子金属錯体の賦形体であって、
前記柔軟性樹脂が、ヘテロ原子含有の官能基を有するメタクリル酸エステルであるモノマーA、炭素数がC2~C6の直鎖を有するメタクリル酸エステルであるモノマーB、炭素数がC4~C10の直鎖を有するメタクリル酸エステルであるモノマーCから成る共重合体であり、
前記共重合体が、数平均分子量:5000~150000、Tg:5℃~55℃を有し、
(モノマーCの炭素数)-(モノマーBの炭素数)が2以上であり、
モノマーBとモノマーCの構成比が2:8~8:2であり、
全モノマー量に対するモノマーAの量が2~35モル%である
ことを特徴とする多孔性高分子金属錯体の賦形体。
(2) 前記柔軟性多孔性高分子金属錯体に含有される金属イオンが銅イオンである、前記(1)に記載の賦形体。
(3) 前記柔軟性多孔性高分子金属錯体が、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体、二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体、および三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体から選ばれる前記(1)に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
(4) 前記一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体が、式:[G(H)2(I)](式中、Gは遷移金属イオン、Hは第一配位子、Iは第二配位子である)、またはG2(J)3(L3)4(式中Gは遷移金属イオン、Jは配位子、L3は1価の対イオンである)である、前記(3)に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
(5) 前記二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体が、カゴメ型と総称される式:[GH](式中、Gは遷移金属イオン、Hは配位子を表す)、またはELMと総称される式:[GHX2](式中、Gは遷移金属イオン、Hは4,4-ビピリジル類、Xは1価の対イオンを表す)である、前記(3)に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
(6) 前記三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体が、MILまたはDUTと総称される多孔性高分子金属錯体である、前記(3)に記載の多孔性高分子金属錯体の賦形体。
(7) 前記(1)~(6)のいずれか1つに記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
(8) 前記(7)に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
(9) 前記(7)に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
【発明の効果】
【0016】
柔軟性樹脂を用いた本発明の多孔性高分子金属錯体の賦形体は、安定な賦形体を形成するため、触媒反応に利用する事ができる。または、本発明の多孔性高分子金属錯体の賦形体は、多量のガスを吸着、放出し、かつ、ガスの選択的吸着を行うことができる。また本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体からなるガス吸着材料を用いて、内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を製造することができる。
【0017】
さらに、本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体を用いて、加水分解、重合反応等を触媒する事もできる。
また、本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体を用いて、あるいは本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体に導電材料をドープしてなる導電性材料を形成することができる。
さらにまた、本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体を用いて、あるいは本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体に導電材料をドープして、センサーを形成することができる。
【0018】
本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体は、また例えば、圧力スイング吸着方式(Pressure Swing Adsorption)(以下、単に「PSA方式」と略記する)のガス分離装置として使用すれば、非常に効率良くガスを分離することができる。また、圧力変化に要する時間を短縮でき、省エネルギーにも寄与することができる。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与しうるため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減でき、結局、最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
【0019】
本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体の他の用途としては、ガス貯蔵装置が挙げられる。本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体を含むガス吸着材をガス貯蔵装置(業務用ガスタンク、民生用ガスタンク、車両用燃料タンクなど)に適用した場合には、搬送中や保存中の圧力を劇的に低減させることが可能である。搬送時や保存中のガス圧力を減少させ得ることに起因する効果としては、ガス貯蔵装置の形状自由度の向上がまず挙げられる。従来のガス貯蔵装置においては、保存中の圧力を維持しなくてはガス吸着量を高く維持できない。しかしながら、本発明のガス貯蔵装置においては、圧力を低下させても充分なガス吸着量を維持できる。
【0020】
本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体を含むガス吸着材を、ガス分離装置やガス貯蔵装置に適用する場合における、容器形状や容器材質、ガスバルブの種類などに関しては、特別の装置を用いなくてもよく、従来、ガス分離装置やガス貯蔵装置に用いられているものを用いることが可能である。ただし、各種装置の改良を排除するものではなく、いかなる装置を用いたとしても、本発明の多孔性高分子金属錯体賦形体を用いている限りにおいて、本発明の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に用いる多孔性高分子錯体から成る吸着材の各ゲート圧力を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に用いる多孔性高分子金属錯体は、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属イオンと、多座配位子からなる多孔性高分子金属錯体である。
【0023】
本発明の柔軟性多孔性高分子金属錯体とは、ガス吸着、脱着に際し、構造が経変化する多孔性高分子金属錯体を意味する。構造の変化は、粉末X線回折測定等で確認する事ができる。
【0024】
本発明に用いる柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形体を含む吸着材は、
図1に表す吸着等温線を示す。活性炭、ゼオライト等の既存材料およびほとんどの多孔性高分子錯体が、上に凸、または直線に近い吸着等温線を示すのに対し、ゲート型のガス吸着とは、一定のガス圧を超えたところで急激にガス吸着量が増加する現象および、脱着に関しては一定のガス圧以下で急激にガス吸着量が減少する現象である。これは、本発明の多孔性高分子金属錯体の構造に柔軟性があり、ガスの吸着によってよりガスを吸いやすい構造に構造が変化し(吸着の場合)、或いはガスを一定量放出することによりガスを吸いにくい構造に構造が変化し(脱着の場合)、この結果、ガス吸着量が急激に変化する現象と考えられている。
【0025】
柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体の例として、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体、例えば、一次元鎖がかみ合い構造をしている多孔性高分子金属錯体を例示することできる。具体的には、北川らの、Angew, Chem. Int. Ed. (2003) 428に記載されている、式:[Cu(dhbc)2(4,4’-bpy)]H2Oで表される化合物1a、Rosseinskyらの、J. Am. Chem. Soc. (2001) 10001に記載の化合物Ni2(4,4’-bipyridine)3(NO3)4を例示することができる。本願発明では、かみ合い構造をしている多孔性高分子金属錯体を例示しているが、必ずしもかみ合い構造は必須ではない。一次元の鎖の間に、多数の水素結合などの結合が存在しない場合は、鎖間の相互作用が弱まり、多孔性高分子金属錯体が柔軟性を示す事が知られている。
【0026】
一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体の例として、式:[G(H)2(I)](式中、Gは遷移金属イオン、Hは第一配位子、Iは第二配位子である)、またはG2(J)3(L3)4(式中Gは遷移金属イオン、Jは配位子、L3は1価の対イオンである)である、多孔性高分子金属錯体を用いることができる。
【0027】
柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体の例として、二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体を例示することができる。
二次元積層型の多孔性高分子金属錯体とは、多孔性高分子金属錯体のネットワーク構造が2次元層状構造を有しており、この構造がファンデルワールス力、水素結合等の弱い相互作用で積層する事で形成されている多孔性高分子金属錯体である。三次元型の柔軟性多孔性高分子金属錯体と比して、特定の方向(層間が広がる方向)にのみ体積膨張が生じるため、賦形体への負荷がかかりやすい。
【0028】
具体的には、4,4’-ビピリジン(bpy)を配位子とする四角格子の積層体である、下式で表されるELM(Elastic Layer-structured metal organic frameworks)類が例示できる。またELM類の一覧は、上代らの、Int. J. Mol. Sci. 2010, 3803に例示されている、ELM-11,ELM-12,ELM-12/3,ELM-13,ELM-22,ELM-31等が挙げられる。
【0029】
[GHX2]
(式中、Gは遷移金属イオン、Hは4,4-ビピリジル類、Xは1価の対イオンを表す)
【0030】
また別の二次元ネットワークの積層型の柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体の例として、カゴメ型多孔性高分子金属錯体を例示することができる。
【0031】
カゴメ型多孔性高分子金属錯体は、以下の式で表される。
[GH]
(式中、式中、Gは遷移金属イオン、Hは配位子を表す)
【0032】
カゴメ型多孔性高分子金属錯体は、例えば、以下の文献にて開示されている。
特開2012-228667号公報には、一般式:{M(OOC-R-COO}2
〔式中、MはCu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Mo2+、Cr2+から選択される2価の金属イオンであり、Rは2個のCOOH基がメタ位の位置関係にある2価の芳香族基を示す。〕で表される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
【0033】
Satoら、Science, (2014) 167には、銅イオンと、アジド基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
【0034】
Zaworotkoら、Chem. Commun. (2004) 2534には、銅イオンと、ベンジルオキシ基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
【0035】
Zaworotkoら、Angew. Chem. Int. Ed. (2001), 2111には、亜鉛イオンまたは銅イオンとイソフタル酸から構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。尚、pyで表記されているピリジンは、金属イオンに弱く配位しているだけであり、吸着測定の前処理で除去される為、ネットワーク構造は一般的なカゴメ構造と見なすことが出来る。
【0036】
Zaworotkoら、Cryst. Growth Des. (2003) 513には、銅イオンと、イソフタル酸イオンまたはエトキシ基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
【0037】
特開2012-045533号公報には、一般式:[Cu2(ピリジン-3,5-ジカルボキシラート)2]nで表されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
【0038】
米国特許出願公開2002/120165号公報の[0022]には、
図2に記載の配位子から合成される一般式:(MA)
n(式中、Mは任意の金属、Aは二官能価のカルボキシラートを表す)で表されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
二次元ネットワークの積層型の例として、カゴメ型およびELMと総称される多孔性高分子金属錯体を例示したが、柔軟性を有する二次元ネットワークの積層型多孔性高分子金属錯体はこれらに限定される物では無い。例示された、カゴメ型およびELMの様に、層の間に、多数の水素結合などの結合が存在しない場合は、層間の相互作用が弱まり、多孔性高分子金属錯体が柔軟性を示す事が知られている。
【0039】
また、柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体の例として、三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体が例示できる。
【0040】
柔軟性を有する三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体の具体例としては、Fuchsら、Angew. Chem. Int. Ed. (2009), 8314等に記載のMILと通称される鉄やアルミニウム等の2価または3価の金属イオンとテレフタル酸類から合成される一群の多孔性高分子金属錯体が挙げられる。
【0041】
また、別の三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体の具体例は、以下の文献にて開示されている。Kaskelら、Phys. Chem. Chem. Phys. (2015) 17471に記載のDUTと総称されるニッケル等の2価遷移金属、ナフタレンジカルボン酸、1,8-ジアザビシクロオクタン(DABCO)等から合成されるNi2(2,6-ndc)2dabcoで表される、多孔性高分子金属錯体が挙げられる。また、北川ら、Chem. Soc. Rev. (2005) 109には、銅イオンと二価のカルボン酸であるpzdc、dpyg配位子から合成される、また銅イオンとピリジン型窒素を二個含有する配位子であるpymoから合成される、またはクロム(III)イオンとテレフタル酸であるBDC配位子から合成される、化合物番号9,10,11で表される多孔性高分子金属錯体が記載されている。北川ら、J. Solid State Chem. (2005) 2420には、[Cu2(pzdc)2(bpy)]で示される化合物名CPL-2で表される柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体が記載されている。
三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体の例として、MILまたはDUTと総称される多孔性高分子金属錯体を例示したが、柔軟性を有する三次元ネットワークの積層型多孔性高分子金属錯体はこれらに限定される物では無い。例示された、MILまたはDUTの様に、配位子がテレフタル酸の様にある程度の長さがある剛直な配位子で形成されているネットワークの場合、金属イオン周りの配位構造の角度が変化する事で、多孔性高分子金属錯体が柔軟性を示す事が知られている。
【0042】
本発明の多孔性高分子金属錯体の賦形体においては、種々の金属イオンを含有する高分子金属錯体が利用可能であるが、銅イオンを含有する高分子金属錯体の場合に、特に良好な賦形体の形態維持性が発現される。
【0043】
本発明で用いられる柔軟性樹脂は、以下に示すモノマーA,B,Cから構成される三元共重合体であって、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0044】
【0045】
モノマーAは、多孔性高分子金属錯体親和モノマーであり、ヘテロ原子含有の官能基を有するメタクリル酸エステルである。モノマーBは、柔軟性モノマーであり、炭素数がC2~C6の直鎖を有するメタクリル酸エステルである。モノマーCは、柔軟性モノマーであり、炭素数がC4~C10の直鎖を有するメタクリル酸エステルである。
【0046】
上記三元共重合体から成る本発明で用いられる柔軟性樹脂は、数平均分子量が5000~150000、Tgが5℃~55℃である。
(モノマーCの炭素数)-(モノマーBの炭素数)≧2であり、モノマーBとモノマーCの構成比は2:8~8:2であり、モノマーA/(モノマーB+モノマーC)(モル比)は、0.05~0.67である。
【0047】
多孔性高分子金属錯体親和モノマーAの官能基としては、ヘテロ原子含有の官能基が広く例示できるが、多孔性高分子金属錯体の配位子と相互作用を有する官能基であることが好ましい。ここでいう「相互作用」とは、水素結合、ファンデルワールス力、アクリル酸のカルボニル基やイミダゾール基の窒素原子と金属イオンの配位結合等の分子間に働く相互作用をいう。本発明に用いる柔軟性多孔性高分子金属錯体は、これらの相互作用によって賦形体を形成していると考えられる。
【0048】
多孔性高分子金属錯体の配位子が、ピリジル型やイミダゾリル型のアルカリ型の配位子である場合は、官能基として、カルボキシル基、エポキシ基、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシル基等が挙げられる。特に配位子がピリジル型である場合は、ピリジル基との反応性が高い点で、官能基としてエポキシ基が挙げられる。具体的なモノマーAとしてはグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0049】
多孔性高分子金属錯体の配位子が、カルボン酸、スルホン酸、りん酸等の酸型の配位子である場合は、官能基として、置換または非置換の、アミノ基、ピリジル基、イミダゾリル基、もしくはヒドロキシル基が挙げられる。中でも配位子との相互作用が高い点でイミダゾリル基が挙げられる。具体的なモノマーとしては1-ビニルイミダゾールが挙げられる。
【0050】
柔軟性モノマーBとしては、炭素数がC2~C6の直鎖を有するメタクリル酸エステルが好ましい。具体的には、メタクリル酸エチル、メタクリル酸-n-プロピル、メタクリル酸-n-ブチル等が例示できる。炭素数がC2~C6の直鎖を有するモノマーを使用する事で、ポリマーの主鎖同士のパッキングが悪くなり、結晶性が低下することで、ポリマーに柔軟性が生じると考えられる。
【0051】
柔軟性モノマーCとしては、炭素数がC4~C10の直鎖を有するメタクリル酸エステルが好ましい。具体的には、メタクリル酸-n-ブチル等、メタクリル酸-イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸-n-オクチル等が例示できる。炭素数がC4~C10の直鎖を有するモノマーを使用する事で、ポリマーの主鎖同士のパッキングが悪くなり、結晶性が低下することで、ポリマーに柔軟性が生じると考えられる。
【0052】
本発明に用いる柔軟性樹脂は、上記三種のモノマーの共重合体であり、数平均分子量が5000~150000、Tgが5℃~55℃である。また、(モノマーCの炭素数)-(モノマーBの炭素数)≧2、モノマーBとモノマーCの構成比が2:8~8:2であり、モノマーA/(モノマーB+モノマーC)(モル比)が、0.05~0.67である。
【0053】
重合度が高くなりすぎると、ポリマー鎖のエンタングルが増え、多孔性高分子金属錯体のミクロ的な変形に追随できなくなる。また重合度が低すぎると、タック性が出てきて、装置への付着等が生じ好ましくない。このため好ましくは数平均分子量が5000~150000、特に好ましくは10000~90000である。また同じ理由で、重合度の指標としてTgが挙げられるが、好ましくは、5℃~55℃、特に好ましくは10℃~40℃である。
【0054】
本発明の柔軟性樹脂は、柔軟性モノマーとして異なるモノマーを2種含有することを特徴とする。単なる柔軟性付与であれば、柔軟性モノマー1種で良いが、本発明では、ガス吸着材としての利用で有り、柔軟性多孔性高分子金属錯体の構造変化に樹脂の変形が追随できることが重要である。一般に樹脂の柔軟性は、重合度、Tg等のバルク物性で議論されるが、本発明では、重要なのは、柔軟性多孔性高分子金属錯体のミクロな柔軟性を妨げない事であるため、柔軟性多孔性高分子金属錯体と樹脂との界面でのミクロ領域の柔軟性が重要である。このようなミクロ界面での柔軟性を測定する指標は確立していないが、まずは、樹脂のマクロ的な柔軟性を担保する意味で上記の数平均分子量、Tgが重要である。
【0055】
さらに重要なのは、二種類の柔軟性付与モノマーB,Cの構成比である。これは、二種類の柔軟性付与モノマーを混合使用する事で、ミクロドメインが生じ、すなわち樹脂内にミクロの意味での不均一性が生じ、これが柔軟性多孔性高分子金属錯体と樹脂との界面でのミクロ領域の柔軟性向上に役立っていると推定される。
【0056】
このようなミクロ的な柔軟性を付与出来る二種モノマーの特徴は、(モノマーCの炭素数)-(モノマーBの炭素数)≧2となることである。2未満の場合は、二種モノマーの相溶性が高くなる為、ミクロ領域の柔軟性向上効果が低下する。この値が、2以上の場合は、二種モノマーの相溶性が低下するために、ミクロ相分離構造が生じると考えられ、界面部分での結晶性の低下等の要因により、柔軟性が向上すると考えられる。
また、モノマーBの炭素数はC2~C6が好ましい。C1であると柔軟性付与が不十分であり、C7以上の場合、モノマーCとの差が小さくなりすぎ、賦形体の形態維持性が低下する。モノマーCの炭素数はC4~C10が好ましい。C3以下であるとモノマーBとの差が小さくなり、賦形体の形態維持性が低下する。C10超の場合、タック性が生じて、バインダー樹脂として使用しにくくなる。
【0057】
モノマーBとモノマーCの構成比(合成時のモル比)は好ましくは2:8~8:2、より好ましくは3:7~7:3である。モノマーBが20%未満の場合、80%超の場合、二種類のモノマーを混合する効果が小さくなり、賦形体の形態維持性が低下する。
【0058】
本発明に用いる柔軟性樹脂と柔軟性多孔性高分子金属錯体を混合し、賦形体を調製する。柔軟性樹脂と柔軟性多孔性高分子金属錯体の混合比は、好ましくは5:95~40:60(質量比)、より好ましくは10:90~55:45である。柔軟性樹脂の量が少ない場合は、柔軟性多孔性高分子金属錯体との相互作用が小さく、柔軟性多孔性高分子金属錯体と柔軟性樹脂バインダーがなじまず、賦形体の形態維持性が低下する。バインダー量が多すぎる場合は、賦形体の形態維持性は向上しない一方、賦形体実質的な吸着材含有量が低下することに伴う、吸着量の低下が生じるため好ましくない。
【0059】
賦形方法としては、柔軟性樹脂と柔軟性多孔性高分子金属錯体のそれぞれの粉末を混合し、打錠、押し出し、造粒等、既存の賦形法にて賦形する方法が挙げられる。
【0060】
また別の方法として、柔軟性樹脂と柔軟性多孔性高分子金属錯体のそれぞれの粉末に溶媒を加え、混合スラリーまたは粘土様物を作製した後、打錠、押し出し、造粒等で賦形する方法も挙げられる。
【0061】
ここで用いることができる溶媒としては、柔軟性多孔性高分子金属錯体の特性を低下しない溶媒が選ばれ、よって柔軟性多孔性高分子金属錯体の種類に依存するが、たとえば、水、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、THF等のエーテル類およびこれらの混合溶媒が使用可能である。
【0062】
賦形体の中の柔軟性多孔性高分子金属錯体の含有率は、40%以上95%未満が好ましい。40%未満ではバインダーが多すぎ、ガス吸着量が低下する。95%以上ではバインダーが少なく、賦形性が低下する。
【0063】
得られる賦形体は、柔軟性樹脂と柔軟性多孔性高分子金属錯体に加えて、湿式造粒の為のバインダーであるポリビニルピロリドン、非ドロキシプロピルセルロース等や、滑沢材であるタルク、グラファイト等の添加物を含んでもよい。
【実施例】
【0064】
実施例で用いた化合物について説明する。
モノマーA、モノマーB、モノマーCのメタクリル酸系モノマーは、東京化成工業から購入し、重合禁止剤をのぞく等の処置は行わず、そのまま使用した。2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル等の重合開始剤は和光純薬から購入し、そのまま使用した。酢酸ブチル、ヘキサン、アセトン等の溶媒は和光純薬から特級グレードを購入し、モレキュラーシーブ4Aにて脱水してから使用した。
【0065】
合成した共重合体の数平均分子量の分析は、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いた。カラムサイズは、8.0mmID×300mmLのGPCKF-805Lカラムを使用した。
【0066】
実施例、比較例で使用した、柔軟性多孔性高分子金属錯体は、以下の評価結果と一緒に表1、2に示す。
【0067】
評価方法
賦形体の形態維持性は、目視にて確認を行い、次の基準で判断した。
◎:賦形体の形態がほとんど変化しないもの
○:賦形体の一部にわずかだが変形や割れが生じているもの
△:賦形体の多くににわずかだが変形や割れが生じているもの
×:原型を止める粒子がほとんど存在しないもの
【0068】
賦形体の粉化の評価は、ガス吸着測定後目視にて確認を行い、次の基準で判断した。
◎:賦形体の形態がほとんど変化しないもの
○:賦形体の一部にわずかだが変形や割れが生じているもの
△:賦形体の多くににわずかだが変形や割れが生じているもの
×:原型を止める粒子がほとんど存在しないもの
【0069】
ガス吸着材の吸着性を、BET自動吸着装置(日本ベル株式会社製ベルミニII)を用いて評価した。
ガス吸着特性の評価は、式:(賦形後のガス吸着量)×100/(賦形前のガス吸着量)を用いて計算し、次の基準で判断した。
○:80以上
△:40以上80未満
×:40未満
賦形後のガス吸着量は、賦形体に含まれている多孔性高分子金属錯体の質量に換算した値である。
【0070】
実施例1
大気下、1-ビニルイミダゾール1.88g(20mmol)、メタクリル酸ブチル7.11g(50mmol)およびメタクリル酸ヘキシル5.12g(30mmol)を脱水酢酸ブチル70mLに溶解させ、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)46.1mg(0.2mmol)の脱水酢酸ブチル溶液80mLを加えた。続いて、この溶液を室温で撹拌しながら脱気と窒素ガス置換を繰り返し行った後、窒素ガスの雰囲気下、室温で1時間撹拌した。その後溶液を353Kで4時間加熱し、さらに368Kで16時間加熱した。反応後の溶液を濃縮し、再沈殿・凍結乾燥処理により、目的物の樹脂6.62g(収率47%)を得た。得られた樹脂のTgは20.9℃であった。数平均分子量Mnは27425であった。
【0071】
本樹脂と特許第5646789号公報の実施例77に記載されているように、硝酸銅3水和物0.02ミリモルを溶解した水(2mL)と、5-(N,N-ジメチルアミノ)イソフタル酸0.02ミリモルおよび水酸化リチウム0.04ミリモルを溶解した水(2mL)とをゆっくりと積層し、72時間静置して得た。このカゴメ型柔軟性多孔性高分子金属錯体(置換基がC3F7)の化合物Aを20:80の質量比でドライブレンドし、乾燥させて粉末を得た。本粉末を直径12ミリのダイスに入れ、圧力3MPa/スクエアセンチで1分間加圧して厚さ1.8ミリの錠剤を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0072】
比較例1~2
実施例1と同様に、ただしモノマーA、B、Cの種類、モノマー比を変更して賦形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0073】
【0074】