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特許7278738伸縮性シートの製造方法、及び、伸縮性シートの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】伸縮性シートの製造方法、及び、伸縮性シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230515BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61F13/15 355B
A61F13/15 340
A61F13/15 311Z
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018189133
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020054741
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野間 真二
(72)【発明者】
【氏名】二宮 彰秀
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/167836(WO,A1)
【文献】特開2008-104853(JP,A)
【文献】特開2008-154998(JP,A)
【文献】特開2015-198915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0076394(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1829491(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの折り返し部と、前記シートの非折り返し部との間に、糸ゴムを介在させる工程と、
回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が設けられた圧着ローラーの、前記回転方向における供給角度位置において、前記シート及び前記糸ゴムを、互いに接合されていない状態で、前記圧着ローラーに供給する工程と、
前記回転方向における接合角度位置において、前記圧着ローラーと、前記圧着ローラーに接触する圧着部とを用いて、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する複数の接合部であって、前記糸ゴムの伸縮方向の位置を規制する前記複数の接合部を形成する工程と、を有し、
前記複数の凸部は、前記回転方向に隣り合う第1の凸部及び第2の凸部を有し、
前記回転方向における前記第1の凸部が設けられた角度位置と、前記回転方向における前記第2の凸部が設けられた角度位置との角度差よりも、前記供給角度位置と前記接合角度位置との角度差の方が大きく、
前記シートの一部を所定方向の一方側に折り返して、前記折り返し部を形成し、
前記所定方向において、前記折り返し部の長さは、前記非折り返し部の長さよりも短く、
前記接合部を形成する工程において、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する第2の接合部であって、前記所定方向における前記折り返し部の前記一方側の端を跨いで且つ前記糸ゴムと重なることなく配置される前記第2の接合部を形成することを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
前記供給する工程において、前記折り返し部よりも前記非折り返し部の方が前記圧着ローラー側に位置するように、前記シートを供給することを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
折り部材を用いて、前記シートの一部を前記所定方向に折り返して、前記折り返し部を形成し、
前記折り部材の下流側部における前記シートの搬送方向に沿って、前記糸ゴムを前記シートに合流させることを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
前記非折り返し部と、前記非折り返し部の厚さ方向の一方側に重なる第2のシートとの間に、前記糸ゴムを介在させて、前記第2のシートの前記厚さ方向の前記一方側に前記折り返し部を重ねた積層体を、前記圧着ローラーに供給することを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
前記伸縮性シートが有する別の全てのシートと、前記シートとを積層した積層体を、前記圧着ローラーに供給することを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
前記回転方向における前記接合角度位置よりも上流側の押圧角度位置において、前記圧着ローラーと、前記圧着ローラーに接触するプレスローラーとを用いて、前記折り返し部、及び、前記非折り返し部を押圧する工程を有し、
前記回転方向における前記第1の凸部が設けられた角度位置と、前記回転方向における前記第2の凸部が設けられた角度位置との角度差よりも、前記供給角度位置と前記押圧角度位置との角度差の方が大きいことを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の伸縮性シートの製造方法であって、
前記押圧する工程において、前記圧着ローラーと、前記プレスローラーとを用いて、前記シートの折り返し端を押圧することを有することを特徴とする伸縮性シートの製造方法。
【請求項8】
シートの折り返し部と、前記シートの非折り返し部との間に、糸ゴムを介在させる介在部と、
回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が設けられた圧着ローラーの、前記回転方向における供給角度位置において、前記シート及び前記糸ゴムを、互いに接合されていない状態で、前記圧着ローラーに供給する供給部と、
前記回転方向における接合角度位置において、前記圧着ローラーと、前記圧着ローラーに接触する圧着部とを用いて、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する複数の接合部であって、前記糸ゴムの伸縮方向の位置を規制する前記複数の接合部を形成する接合部形成部と、を有し、
前記複数の凸部は、前記回転方向に隣り合う第1の凸部及び第2の凸部を有し、
前記回転方向における前記第1の凸部が設けられた角度位置と、前記回転方向における前記第2の凸部が設けられた角度位置との角度差よりも、前記供給角度位置と前記接合角度位置との角度差の方が大きく、
前記シートの一部を所定方向の一方側に折り返して、前記折り返し部を形成し、
前記所定方向において、前記折り返し部の長さは、前記非折り返し部の長さよりも短く、
前記接合部形成部は、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する第2の接合部であって、前記所定方向における前記折り返し部の前記一方側の端を跨いで且つ前記糸ゴムと重なることなく配置される前記第2の接合部を形成することを特徴とする伸縮性シートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性シートの製造方法、及び、伸縮性シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮性シートの製造方法として、シート間に伸長状態の糸ゴムを接着材で取り付ける方法が知られている。一方、特許文献1には、シートの折り返し部と非折り返し部との間に伸長状態の糸ゴム(ワイヤ状要素)を配したものを、一対のローラー間に通すことで、シートを押圧し、接続部を形成する方法が開示されている。一方のローラーには、ローラーの回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が形成されている。そのため、糸ゴムに対して横切るように糸ゴムの両側に、かつ、糸ゴムの伸縮方向に間欠的に、接続部が形成される。糸ゴムの両側の接続部の間に形成される狭部において、張力がなくなった状態の糸ゴムを固定でき、糸ゴムをシートに取り付けることができる。このように、接着剤を使用せずに、糸ゴムをシートに取り付けることで、接着剤の硬化に起因する糸ゴムの収縮性能の低下や、伸縮性シートの柔軟性の低下を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3212615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、折り返されたシート及び糸ゴムがローラーに巻き付けられずに、一対のローラー間に直線状に供給されている。そのため、回転軸方向における糸ゴムの位置を精度良く調整しないと、回転軸方向に並ぶ凸部の間の溝部に糸ゴムが収まっていない状態で一対のローラー間に供給され、糸ゴムが切断されてしまう。
【0005】
特に、ローラーの回転方向に間欠的に凸部が配置されている場合、糸ゴムの一部をローラーに巻き付けるとしても、その巻き付け量が小さいと、回転方向に隣り合う凸部の間、すなわち糸ゴムの両側に凸部が存在しない位置に糸ゴムが供給される場合がある。その場合、回転軸方向の糸ゴムの位置が定まりにくく、上流の糸ゴムが溝部に誘導されにくくなる。その結果、凸部上に供給された糸ゴムがそのまま一対のローラー間に供給され、糸ゴムが切断されてしまう。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、シートの折り返し部と非折り返し部の間に糸ゴムを介在させた伸縮性シートの製造において、回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が設けられた圧着ローラーと圧着部とを用いてシートの接合部を形成する際に、糸ゴムの切断を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
シートの折り返し部と、前記シートの非折り返し部との間に、糸ゴムを介在させる工程と、
回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が設けられた圧着ローラーの、前記回転方向における供給角度位置において、前記シート及び前記糸ゴムを、互いに接合されていない状態で、前記圧着ローラーに供給する工程と、
前記回転方向における接合角度位置において、前記圧着ローラーと、前記圧着ローラーに接触する圧着部とを用いて、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する複数の接合部であって、前記糸ゴムの伸縮方向の位置を規制する前記複数の接合部を形成する工程と、を有し、
前記複数の凸部は、前記回転方向に隣り合う第1の凸部及び第2の凸部を有し、
前記回転方向における前記第1の凸部が設けられた角度位置と、前記回転方向における前記第2の凸部が設けられた角度位置との角度差よりも、前記供給角度位置と前記接合角度位置との角度差の方が大きく、
前記シートの一部を所定方向の一方側に折り返して、前記折り返し部を形成し、
前記所定方向において、前記折り返し部の長さは、前記非折り返し部の長さよりも短く、
前記接合部を形成する工程において、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する第2の接合部であって、前記所定方向における前記折り返し部の前記一方側の端を跨いで且つ前記糸ゴムと重なることなく配置される前記第2の接合部を形成することを特徴とする伸縮性シートの製造方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートの折り返し部と非折り返し部の間に糸ゴムを介在させた伸縮性シートの製造において、回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が設けられた圧着ローラーと圧着部とを用いてシートの接合部を形成する際に、糸ゴムの切断を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の製造方法で製造される伸縮性シート10の平面図である。
図2図2A図1の伸縮性シート10の概略断面図であり、図2Bは変形例の伸縮性シート10の概略断面図である。
図3図3Aは伸縮性シート10を使用したパンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図であり、図3Bは展開状態且つ伸長状態のパンツ型使い捨ておむつ1の概略平面図である。
図4】第1実施形態における伸縮性シートの製造装置20の概略断面図である。
図5図5Aはアンビルローラー25とホーンローラー26の表面の説明図であり、図5Bはアンビルローラー25とホーンローラー26の最近接部の概略拡大図である。
図6図6A及び図6Bは接合部jによる糸ゴム14の取り付け方法の説明図である。
図7図7Aは伸縮性シートの製造装置20を上方から見た概略図であり、図7Bは折り部材23における工程の説明図である。
図8】第2実施形態における伸縮性シートの製造装置20の概略断面図である。
図9】第3実施形態における伸縮性シートの製造装置20の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
シートの折り返し部と、前記シートの非折り返し部との間に、糸ゴムを介在させる工程と、回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が設けられた圧着ローラーの、前記回転方向における供給角度位置において、前記シート及び前記糸ゴムを、互いに接合されていない状態で、前記圧着ローラーに供給する工程と、前記回転方向における接合角度位置において、前記圧着ローラーと、前記圧着ローラーに接触する圧着部とを用いて、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する複数の接合部であって、前記糸ゴムの伸縮方向の位置を規制する前記複数の接合部を形成する工程と、を有し、前記複数の凸部は、前記回転方向に隣り合う第1の凸部及び第2の凸部を有し、前記回転方向における前記第1の凸部が設けられた角度位置と、前記回転方向における前記第2の凸部が設けられた角度位置との角度差よりも、前記供給角度位置と前記接合角度位置との角度差の方が大きいことを特徴とする伸縮性シートの製造方法である。
【0011】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、接合部によって折り返し部を非折り返し部に留めるとともに、糸ゴムの位置を規制できる。また、糸ゴムが圧着ローラーと圧着部の間を通過する前に、糸ゴムが圧着ローラーの溝部に入り込むことができ、上流の糸ゴムを溝部に誘導しやすくなる。よって、接合部形成時の糸ゴムの切断を抑制できる。
【0012】
かかる伸縮性シートの製造方法であって、前記シートの一部を所定方向に折り返して、前記折り返し部を形成し、前記所定方向において、前記折り返し部の長さは、前記非折り返し部の長さよりも短く、前記供給する工程において、前記折り返し部よりも前記非折り返し部の方が前記圧着ローラー側に位置するように、前記シートを供給すること。
【0013】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、回転軸方向に長い非折り返し部が圧着ローラーに直接巻き付くため、シートを安定して搬送できる。よって、シートの折り返し端が綺麗に保たれた状態で接合部を形成できる。
【0014】
かかる伸縮性シートの製造方法であって、折り部材を用いて、前記シートの一部を所定方向に折り返して、前記折り返し部を形成し、前記折り部材の下流側部における前記シートの搬送方向に沿って、前記糸ゴムを前記シートに合流させること。
【0015】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、回転軸方向の糸ゴムの動きが、折り部材によって規制されてしまうことを抑制でき、糸ゴムが圧着ローラーの溝部に入り込みやすくなる。
【0016】
かかる伸縮性シートの製造方法であって、前記非折り返し部と、前記非折り返し部の厚さ方向の一方側に重なる第2のシートとの間に、前記糸ゴムを介在させて、前記第2のシートの前記厚さ方向の前記一方側に前記折り返し部を重ねた積層体を、前記圧着ローラーに供給すること。
【0017】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、伸縮性シートが有する各シート及び糸ゴムの互いの位置ずれを抑制できる。
【0018】
かかる伸縮性シートの製造方法であって、前記伸縮性シートが有する別の全てのシートと、前記シートとを積層した積層体を、前記圧着ローラーに供給すること。
【0019】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、伸縮性シートが有する各シート及び糸ゴムの互いの位置ずれを抑制できる。また、糸ゴムと、糸ゴムよりも圧着ローラー側のシートを同じタイミングで供給できるため、シートが圧着ローラーの溝部に撓み込みやすく、糸ゴムが溝部に入り込みやすい。
【0020】
かかる伸縮性シートの製造方法であって、前記回転方向における前記接合角度位置よりも上流側の押圧角度位置において、前記圧着ローラーと、前記圧着ローラーに接触するプレスローラーとを用いて、前記折り返し部、及び、前記非折り返し部を押圧する工程を有し、前記回転方向における前記第1の凸部が設けられた角度位置と、前記回転方向における前記第2の凸部が設けられた角度位置との角度差よりも、前記供給角度位置と前記押圧角度位置との角度差の方が大きいこと。
【0021】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、糸ゴムが圧着ローラーとプレスローラーの間を通過する前に、糸ゴムが圧着ローラーの溝部に入り込むことができ、上流の糸ゴムを溝部に誘導しやすくなる。よって、接合部形成時の糸ゴムの切断を抑制できる。
【0022】
かかる伸縮性シートの製造方法であって、前記押圧する工程において、前記圧着ローラーと、前記プレスローラーとを用いて、前記シートの折り返し端を押圧することを有すること。
【0023】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、シートの折り返し端が綺麗に保たれた状態で、接合部を形成できる。
【0024】
かかる伸縮性シートの製造方法であって、前記シートの一部を所定方向の一方側に折り返して、前記折り返し部を形成し、前記所定方向において、前記折り返し部の長さは、前記非折り返し部の長さよりも短く、前記接合部を形成する工程において、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する第2の接合部であって、前記所定方向における前記折り返し部の前記一方側の端を跨いで配置される前記第2の接合部を形成すること。
【0025】
このような伸縮性シートの製造方法によれば、折り返し部の端が非折り返し部にしっかりと接合され、折り返し部の剥がれを抑制できる。
【0026】
また、シートの折り返し部と、前記シートの非折り返し部との間に、糸ゴムを介在させる介在部と、回転方向及び回転軸方向に間欠的に複数の凸部が設けられた圧着ローラーの、前記回転方向における供給角度位置において、前記シート及び前記糸ゴムを、互いに接合されていない状態で、前記圧着ローラーに供給する供給部と、前記回転方向における接合角度位置において、前記圧着ローラーと、前記圧着ローラーに接触する圧着部とを用いて、前記折り返し部と前記非折り返し部とを圧着して互いに接合する複数の接合部であって、前記糸ゴムの伸縮方向の位置を規制する前記複数の接合部を形成する接合部形成部と、を有し、前記複数の凸部は、前記回転方向に隣り合う第1の凸部及び第2の凸部を有し、前記回転方向における前記第1の凸部が設けられた角度位置と、前記回転方向における前記第2の凸部が設けられた角度位置との角度差よりも、前記供給角度位置と前記接合角度位置との角度差の方が大きいことを特徴とする伸縮性シートの製造装置。
【0027】
このような伸縮性シートの製造装置によれば、接合部によって折り返し部を非折り返し部に留めるとともに、糸ゴムの位置を規制できる。また、糸ゴムが圧着ローラーと圧着部の間を通過する前に、糸ゴムが圧着ローラーの溝部に入り込むことができ、上流の糸ゴムを溝部に誘導しやすくなる。よって、接合部形成時の糸ゴムの切断を抑制できる。
【0028】
===実施形態===
<<伸縮性シート10の構成>>
図1は、本実施形態の製造方法(製造装置)で製造される伸縮性シート10の平面図である。図1は、伸縮性シート10を皺なく伸長させた状態の図である。図2Aは、図1の伸縮性シート10の概略断面図であり、図2Bは、変形例の伸縮性シート10の概略断面図である。
【0029】
伸縮性シート10は、互いに直交する伸縮方向と、厚さ方向と、幅方向とを有する。図2Aの伸縮性シート10は、厚さ方向に積層された第1シート11及び第2シート12と、複数の糸ゴム14と、複数の接合部jとを有する。そして、第1シート11の幅方向の他方側の端部が、伸縮方向に沿って幅方向の一方側に折り返されており、第2シート12の一部を覆っている。以下の説明では、第1シート11において、折り返された部位を折り返し部11Aといい、折り返されていない部位を非折り返し部11Bという。
【0030】
複数の糸ゴム14は、第1シート11と第2シート12の間において、伸縮性シート10の伸縮方向に沿わせられつつ、幅方向に間隔をあけて並んで配置されている。糸ゴム14は、伸長状態で第1シート11及び第2シート12に取り付けられている。よって、伸縮性シート10には、糸ゴム14が沿う方向に伸縮性が付与されている。糸ゴム14(糸状弾性部材)としては、糸状の天然ゴムの他、スチレン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン等の各種公知の合成ゴムを適用できる。
【0031】
複数の接合部jは、複数のシートを圧着して互いに接合するものであり、伸縮性シート10の伸縮方向及び幅方向に間欠的に配されている。また、複数の接合部jは、第1シート11と、第2シート12とに対して、糸ゴム14の伸縮方向の位置を規制する。詳しくは後述するが、幅方向において糸ゴム14の両側に対となるように形成された接合部対jPによって、その糸ゴム14の伸縮方向の位置が規制される。図1で例示する接合部jの平面形状は矩形形状であるが、接合部jの平面形状は特に限定されず、楕円形状、円形状、平行四辺形状等、任意の形状を採用できる。
【0032】
なお、本実施形態の伸縮性シートは、伸縮性シートが有する少なくとも一枚のシートの一部が、伸縮方向(糸ゴム14の長手方向)に沿って折り返されており、そのシートの折り返し部と非折り返し部との間に、糸ゴム14が介在されていればよい。図2Aでは、一部の糸ゴム14aが第2シート12を介して第1シートの折り返し部11Aと非折り返し部11Bとの間に介在されている。その他、図2Bに示すように、1枚のシート11が半分に折り返された折り返し部11Aと非折り返し部11Bとの間に、糸ゴム14が介在されていてもよい。また、図2Aに示す伸縮性シート10において、第1シート11と共に第2シート12の一部も折り返されていてもよい。また、図2A図2Bに例示する伸縮性シート10に、別の単数又は複数のシートが積層された伸縮性シートであってもよい。
【0033】
<<伸縮性シート10の使用例>>
図3Aは、伸縮性シート10を使用したパンツ型使い捨ておむつ1の概略斜視図である。図3Bは、展開状態且つ伸長状態のパンツ型使い捨ておむつ1を肌側面側から見た概略平面図である。本実施形態の製造方法(製造装置)で製造される伸縮性シート10は、例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品の部品として使用される。
【0034】
図示するパンツ型使い捨ておむつ1(以下「おむつ」ともいう)は、排泄物を吸収保持する吸収性本体2と、着用者の腹側部に当てられる腹側胴回り部3と、着用者の背側部に当てられる背側胴回り部4とを有する。図3Bの展開状態にて示されるように、吸収性本体2の長手方向一方側の端部に、腹側胴回り部3の左右方向の中央部が重なり、吸収性本体2の長手方向他方側の端部に、背側胴回り部4の左右方向の中央部が重なっている。展開状態のおむつ1が長手方向の略中央で二つ折りされ、腹側胴回り部3の左右方向の両側部と背側胴回り部4の左右方向の両側部とが溶着等で接合されることにより、おむつ1はパンツ型となる。
【0035】
腹側胴回り部3及び背側胴回り部4は、平面視略長方形状の部材であり、おむつ1の左右方向に伸縮する複数の糸ゴム5が上下方向に間隔を空けて並んで配されている。よって、腹側胴回り部3及び背側胴回り部4は、おむつ1の左右方向に伸縮可能であり、着用者の胴回りにフィットする。この腹側胴回り部3及び背側胴回り部4に、伸縮性シート10を使用できる。なお、伸縮性シート10の伸縮方向が、おむつ1の左右方向に対応し、伸縮性シート10の幅方向が、おむつ1の上下方向に対応する。
【0036】
伸縮性シート10が吸収性物品の部品として使用される場合、伸縮性シート10を構成するシートとして、柔らかいシート部材を例示できる。例えば、スパンボンド不織布やSMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等の不織布である。また、シート間に介在されるシートを、伸縮性シート10の伸縮方向に伸縮可能な伸縮性シート(伸縮性フィルムや伸縮性不織布)としてもよい。また、シート間に介在されるシートに限らず、最も非肌側に位置するシート及び最も肌側に位置するシートの少なくとも片方を、伸縮性フィルムや伸縮性不織布としてもよい。
【0037】
また、伸縮性シート10は、腹側胴回り部3及び背側胴回り部4に使用されるに限らない。例えば、使い捨ておむつが着用者の脚周りにフィットするように、おむつの左右方向における吸収性本体の両側部に設けられるレッグギャザー部に、伸縮性シート10を使用できる。レッグギャザー部は吸収性本体の長手方向に伸縮するため、吸収性本体の長手方向が伸縮性シート10の伸縮方向に対応する。
【0038】
また、テープ型の使い捨ておむつ(不図示)では、背側胴回り部から左右方向の両外側に、ファスニングテープ(フック部材)が延出している。ファスニングテープを背側胴回り部に取り付けるサイドパネルに、伸縮性シート10を使用できる。サイドパネルはおむつの左右方向に伸縮するため、おむつの左右方向が伸縮性シート10の伸縮方向に対応する。
【0039】
また、伸縮性シート10は、パンツ型やテープ型の使い捨ておむつに限らず、パッド型の使い捨ておむつや、生理用のナプキン、生理用のショーツ型ナプキン等の吸収性物品の部品としても使用可能である。また、吸収性物品に限らず、マスクや掃除用シート等にも使用できる。
【0040】
===伸縮性シートの製造装置及び製造方法===
<<第1実施形態>>
(伸縮性シートの製造装置20の構成)
図4は、第1実施形態における伸縮性シートの製造装置20の概略断面図である。図5Aは、アンビルローラー25とホーンローラー26の表面の説明図である。図5Bは、アンビルローラー25とホーンローラー26の最近接部の概略拡大図である。図6A及び図6Bは、接合部jによる糸ゴム14の取り付け方法の説明図である。図7Aは、伸縮性シートの製造装置20を上方から見た概略図であり、図7Bは、折り部材23における工程の説明図である。以下、図2Aに示す伸縮性シート10の製造装置20を例に挙げて説明する。
【0041】
伸縮性シートの製造装置20は、搬送ローラー群21と、超音波溶着装置22と、折り部材23と、排出ローラー24とを有する。伸縮性シート10は、その伸縮方向に連続した連続シートとして製造される。伸縮性シートの製造装置20において、資材が連続する方向を搬送方向とし、搬送方向に直交する方向(すなわち伸縮性シート10や資材の幅方向)をCD方向とする。
【0042】
搬送ローラー群21は、超音波溶着装置22よりも搬送方向の上流側に配置され、伸縮性シート10を構成する資材を搬送して超音波溶着装置22に供給する。具体的には、搬送ローラー群21は、第1シート11の連続体を搬送する第1搬送ローラー211と、第2シート12の連続体を搬送する第2搬送ローラー212と、糸ゴム14の連続体を複数搬送する第3搬送ローラー213とを有する。
【0043】
第1~第3搬送ローラー211~213は、不図示の駆動源(例えばモーター)によって、CD方向に沿った回転軸回りに回転する。第1~第3搬送ローラー211~213は、一対のローラーであっても、単独のローラーであってもよい。また、ベルトコンベア等で資材を超音波溶着装置22に供給してもよい。
【0044】
以下、第1シート11の連続体、第2シート12の連続体、糸ゴム14の連続体、伸縮性シート10の連続体を、単に、第1シート11、第2シート12、糸ゴム14、伸縮性シート10ともいう。
【0045】
超音波溶着装置22は、伸縮性シート10の接合部jを形成するためのものであり、対向配置されたアンビルローラー25(圧着ローラー)、及び、アンビルローラー25に接触するホーンローラー26(圧着部)を有する。アンビルローラー25及びホーンローラー26は、不図示の駆動源によって、CD方向に沿った回転軸回りに回転する。なお、アンビルローラー25及びホーンローラー26は、少なくとも間を通過する資材を介して接触可能であればよく、好ましくは資材がない状態で接触可能であるとよい。
【0046】
アンビルローラー25の外周面には、図5Aに示すように、複数の凸部251が形成されている。この凸部251が、ホーンローラー26と共に、資材を超音波溶着して接合部jを形成する。よって、伸縮性シート10における接合部jの配置パターンに対応して、凸部251が配置されている。
【0047】
ホーンローラー26の外周面は、凹凸を有さない平滑面であり、アンビルローラー25の外周面との間の間隔を拡縮する方向(すなわち間を通過する資材の厚さ方向)に振動する。振動の周波数は例えば20kHz~40kHzの所定値であり、また、振幅は例えば20ミクロン~60ミクロンの所定値である。よって、ホーンローラー26の表面は超音波振動する。かかる振動の発生は、ホーンローラー26に接続された不図示のコンバータのピエゾ素子に上記周波数の電気信号を入力すること等で行われる。
【0048】
また、第1シート11、第2シート12及び糸ゴム14は、アンビルローラー25に巻き付いた後に、アンビルローラー25とホーンローラー26の間を通過する。第1,第2シート11,12を搬送する第1,第2搬送ローラー211,212の周速値は、それぞれ、アンビルローラー25の周速値と概ね同値である。よって、第1,第2シート11,12については、概ね伸長せずに、しかも弛まない程度に張った状態でアンビルローラー25に巻き付く。
【0049】
一方、糸ゴム14を搬送する第3搬送ローラー213の周速値は、アンビルローラー25の周速値の略伸長倍率分の1の大きさである。伸長倍率とは、伸長状態の伸縮性シート10における糸ゴム14の全長E1を、自然長たる無負荷状態の全長E0の何倍まで伸ばしているかを示す倍率R(R=E1/E0)である。よって、糸ゴム14については、第3搬送ローラー213とアンビルローラー25の間を通過する間に、上記の伸長倍率まで伸長されるとともに、当該伸長状態でアンビルローラー25に巻き付く。
【0050】
折り部材23は、CD方向における第1シート11の端部を搬送方向に沿って折り返すための部材であり、図7Bに示すように、上流側支持部231と、下流側支持部232と、曲げ部233とを有する。上流側支持部231は、水平方向に搬送される第1シート11を支持する部位である。下流側支持部232は、第1シート11の搬送方向を、上下方向に対して傾斜した方向(アンビルローラー25への供給方向)に変化させつつ、第1シート11と、それに合流した第2シート12及び糸ゴム14とを支持する部位である。曲げ部233は、CD方向における第1シート11の端部を立ち上げつつ、非折り返し部11Bと重なるように折り返して、折り返し部11Aを形成する部位である。
【0051】
排出ローラー24は、製造された伸縮性シート10を下流の工程に排出するローラーである。排出ローラー24は、不図示の駆動源によって、CD方向に沿った回転軸回りに回転する。
【0052】
(伸縮性シート10の製造方法)
上記構成の製造装置20による伸縮性シート10の製造方法では、まず、第1搬送ローラー211が第1シート11を折り部材23に供給する。図7A及び図7Bに示すように、折り部材23(介在部)を用いて、第1シート11の一部をCD方向に折り返して、折り返し部11Aを形成する。一方、第2搬送ローラー212及び第3搬送ローラー213(介在部)は、折り部材23の下流側支持部232に支持される第1シート11に、第2シート12及び複数の糸ゴム14を合流させる。
【0053】
詳しくは、第1シートの折り返し部11Aと非折り返し部11Bとの間に第2シート12(の一部)が介在される。第1シートの非折り返し部11Bと第2シート12との間に複数の糸ゴム14が介在される。一部の糸ゴム14aは、第2シート12を介して、第1シートの折り返し部11Aと非折り返し部11Bとの間に介在される。
【0054】
こうして、伸縮性シート10を構成する全てのシートが糸ゴム14を介在させつつ積層された積層体100が形成される。そして、図4に示すように、積層体100は、搬送ローラー群21(供給部)により、アンビルローラー25の回転方向における供給角度位置P1において、アンビルローラー25に供給される。なお、積層体100において、第1シートの折り返し部11Aと、非折り返し部11Bと、第2シート12と、糸ゴム14は、互いに接合されていない状態とする。具体的には、第1,第2シート11,12及び糸ゴム14には接着剤が塗布されておらず、また、第1,第2シート11,12は互いに圧着されていない状態とする。
【0055】
その後、アンビルローラー25が積層体100を外周面に巻き付けながら回転し、アンビルローラー25とホーンローラー26の間に積層体100を供給する。そして、アンビルローラー25の回転方向における接合角度位置P2において、超音波溶着装置22(接合部形成部)が、第1シート11の折り返し部11Aと非折り返し部11Bと第2シート12とを超音波溶着(圧着)して互いに接合し、複数の接合部jを形成する。こうして、伸縮性シート10が製造される。
【0056】
具体的には、第1,第2シート11,12及び糸ゴム14がアンビルローラー25とホーンローラー26の間を通過する際に、第1,第2シート11,12は、アンビルローラー25の凸部251に対応する位置において、ホーンローラー26からの超音波振動を受けて溶融し、接合される。この時、糸ゴム14は、アンビルローラー25の外周面のうちCD方向に隣り合う凸部251の間の溝部252(図5A図5B参照)に位置し、超音波溶着されないものとする。
【0057】
図4では図面のわかりやすさのために、アンビルローラー25の凸部251の上に糸ゴム14が位置している。しかし、実際は溝部252に糸ゴム14が位置している。後述する同様の図面でも同じである。
【0058】
また、図2Aに示すように、第1シートの非折り返し部11Bのうち、折り返し部11Aと重なる領域では、第1シートの折り返し部11Aと非折り返し部11Bと第2シート12とが接合部jによって接合される。それ以外の領域では、第1シートの非折り返し部11Bと第2シート12とが接合部jによって接合される。
【0059】
また、前述したように、複数の接合部jは、第1シート11と、第2シート12とに対して、糸ゴム14の伸縮方向の位置を規制する役目、すなわち第1,第2シート11,12に糸ゴム14を取り付ける役目も担う。
【0060】
そのために、本実施形態では、図6Aに示すように、CD方向において、糸ゴム14の両側に位置する接合部対jPの間隔Djを、接合部jの形成時に伸長している糸ゴム14のCD方向の大きさD14と同寸又はそれよりも大きいとする。さらに、間隔Djを、自然長たる無負荷状態における糸ゴム14のCD方向の大きさよりも小さいとする。伸長状態の糸ゴム14は、自然状態の糸ゴム14の太さよりも伸長した分だけ細くなっている。よって、接合部jの形成後に糸ゴム14の連続体が切断される等して、糸ゴム14の伸長状態が緩和された際には、図6Bに示すように、搬送方向に収縮しつつCD方向に拡大しようとする糸ゴム14を、接合部対jPがCD方向から挟圧できる。これにより、糸ゴム14の伸縮方向の位置が規制され、糸ゴム14がシートに取り付けられた状態となる。
【0061】
その他、接合部対jPの間隔Djを、接合部jの形成時に伸長している糸ゴム14のCD方向の大きさD14よりも小さくしてもよい。つまり、アンビルローラー25の溝部252とホーンローラー26で囲われた空間により糸ゴム14を圧縮しながら、接合部jを形成してもよい。また、糸ゴム14の一部を、第1,第2シート11,12と共に、アンビルローラー25の凸部251とホーンローラー26で圧着してもよい。これらの場合、接合部jが形成された時点で(すなわち糸ゴム14の伸長状態が緩和される前に)、糸ゴム14の伸縮方向の位置が規制され、糸ゴム14がシートに取り付けられた状態となる。
【0062】
また、接合部jを形成する圧着ローラー及び圧着部は、超音波溶着装置22に限定されず、複数のシートを圧着して互いに接合できる装置であればよい。例えば、ヒートシール装置を用いて接合部j(熱溶着部)を形成してもよい。ヒートシール装置としては、加熱された一対のローラーであり、一方のローラーは、接合部jに対応した凸部を外周面に有するローラーであり、他方のローラーは、上記凸部を平滑な外周面で受けるローラーであるものを例示できる。
【0063】
以上のように、本実施形態の製造方法では、第1シートの折り返し部11Aと非折り返し部11Bとの間に糸ゴム14を介在させた状態で、第1シート11及び糸ゴム14をアンビルローラー25に供給し、接合部jを形成する。そうすることで、接合部jによって、第1シートの折り返し部11Aを非折り返し部11Bに留めるとともに、第1シートの折り返し部11A及び非折り返し部11Bに糸ゴム14を取り付けることができる。
【0064】
シートの一部が折り返された伸縮性シート10では、図2A等に示すように、折り返し端11Cが形成される。そのため、伸縮性シート10を吸収性物品等に使用する場合に、シートの切れ端ではなく、湾曲する折り返し端11Cを着用者の肌に接触させることができる。よって、着用者の肌を傷付けてしまうことを抑制できる。
【0065】
また、本実施形態の伸縮性シート10では、図1に示すように、幅方向において糸ゴム14の両側に接合部jが位置するとともに、伸縮方向に間欠的に接合部jが形成される。接合部jが伸縮方向に間隔をあけて配置されることで、剛性の高い接合部jの面積を小さくでき、伸縮性シート10の高剛性化を抑えることができる。
【0066】
そのために、アンビルローラー25の外周面には、回転方向(搬送方向)及び回転軸方向(CD方向)に間欠的に複数の凸部251が設けられている。アンビルローラー25の回転方向に並ぶ複数の凸部251において、回転方向に隣り合う凸部を、第1の凸部251a、及び、第2の凸部251bとする。
【0067】
そして、本実施形態の製造方法では、図4に示すように、アンビルローラー25の回転方向において、第1の凸部251aが設けられた角度位置P3と、第2の凸部251bが設けられた角度位置P4との角度差θ2よりも、積層体100の供給角度位置P1と接合角度位置P2との角度差θ1の方が大きいものとする(θ2<θ1)。
【0068】
そうすることで、供給角度位置P1と接合角度位置P2との角度差θ1がゼロよりも大きくなり、積層体100は、超音波溶着装置22に供給される前に、アンビルローラー25の外周面(曲面)に巻き付いて搬送される。
【0069】
そのため、糸ゴム14がアンビルローラー25の凸部251上に供給されたとしても、超音波溶着装置22に供給される前に、糸ゴム14はアンビルローラー25の表面上をCD方向に転がる等して、溝部252に入り込むことができる。そして、糸ゴム14が溝部252に入り込んだ状態が維持されて安定して搬送される。よって、糸ゴム14が凸部251上に位置してホーンローラー26に圧着され、糸ゴム14が切断されてしまうことを抑制できる。また、第1,第2シート11,12も、アンビルローラー25の外周面に巻き付くことで、超音波溶着装置22まで安定して搬送される。
【0070】
ただし、アンビルローラー25の外周面では、回転方向に凸部251が間欠的に並ぶ。そのため、超音波溶着装置22に供給される前に、アンビルローラー25に巻き付けられる糸ゴム14の量が小さいと(角度差θ2>θ1であると)、回転方向に隣り合う凸部251の間(図5Aの領域A)に糸ゴム14が供給される場合がある。この場合、糸ゴム14のCD方向の両側に凸部251が存在せず、糸ゴム14のCD方向の位置が定まりにくい。そのため、上流の糸ゴム14が溝部252に誘導されにくくなり、凸部251上に供給された糸ゴム14がそのまま超音波溶着装置22に供給されやすくなる。そうすると、糸ゴム14が切断されてしまう。
【0071】
これに対して、本実施形態では、回転方向に隣り合う第1の凸部251a及び第2の凸部251bがそれぞれ設けられた角度位置P3,P4の角度差θ2よりも、積層体100の供給角度位置P1と接合角度位置P2との角度差θ1の方が大きくなっている。そのため、糸ゴム14は、アンビルローラー25に供給されてから超音波溶着装置22に供給される前に、回転軸方向に並ぶ凸部251の間を通ることができ(溝部252に入り込むことができ)、上流の糸ゴム14も溝部252に誘導されやすくなる。よって、糸ゴム14が凸部251上に供給されたとしても、超音波溶着装置22に供給される前に溝部252に入り込むことができ、糸ゴム14の切断を抑制できる。
【0072】
なお、角度差θ1は、製造装置20のCD方向に直交する断面において、アンビルローラー25の回転中心と、積層体100がアンビルローラー25に接触し始める点とを繋ぐ仮想線と、アンビルローラー25の回転中心と、アンビルローラー25とホーンローラー26の接触点とを繋ぐ仮想線とで成す角度θ1ともいえる。
【0073】
同様に、角度差θ2は、製造装置20のCD方向に直交する断面において、アンビルローラー25の回転中心と、第1の凸部251aの中心とを繋ぐ仮想線と、アンビルローラー25の回転中心と、第2の凸部251bの中心とを繋ぐ仮想線とで成す角度θ2ともいえる。また、第1の凸部251a及び第2の凸部252bは、同じ糸ゴム14の位置を規制する接合部jを形成する凸部251とする、すなわちCD方向の位置が略同じである凸部251とする。
【0074】
また、本実施形態では回転方向において等間隔に凸部251が配されているが、これに限定されない。回転方向に隣り合う凸部251の間隔が一定でない場合、少なくとも最小の間隔となる凸部251がそれぞれ設けられた角度位置の角度差θ2よりもθ1の方が大きければよく、より好ましくは、最大の間隔となる凸部251がそれぞれ設けられた角度位置の角度差θ2よりもθ1の方が大きいとよい。
【0075】
また、図1に示す伸縮性シート10のように、幅方向(所定方向)における第1シートの折り返し部11Aの長さL1が、非折り返し部11Bの長さL2よりも短い場合(L1<L2)、積層体100をアンビルローラー25に供給する工程において、折り返し部11Aよりも非折り返し部11Bの方がアンビルローラー25側に位置するように、積層体100を供給することが好ましい。
【0076】
幅方向(CD方向)に長い非折り返し部11Bをアンビルローラー25に直接に巻き付けて搬送することで、積層体100がより安定して搬送される。よって、折り返し部11Aと非折り返し部11Bとの搬送方向の位置ずれによる、シートのよじれを抑制できる。また、第1シートの折り返し端11C(折り目)が綺麗に保たれた状態で搬送されて、接合部jが形成される。よって、よじれることなくシートが折り返された伸縮性シート10を製造できる。
【0077】
また、第1シートの折り返し部11Aと非折り返し部11Bとの間に糸ゴム14を介在させる工程において、図7Bに示すように、折り部材23の下流側支持部232(下流側部)における第1シート11の搬送方向に沿って、糸ゴム14を第1シート11に合流させることが好ましい。つまり、第1シート11のアンビルローラー25への供給方向に沿って、糸ゴム14を第1シート11に合流させることが好ましい。
【0078】
そうすることで、本実施形態の折り部材23のように上流側支持部231と下流側支持部232とが曲がって配置されており、折り部材23が角234を有する場合にも、糸ゴム14が折り部材23の角234に接することなく、アンビルローラー25へ供給される。そのため、糸ゴム14の動きが折り部材23によって規制されてしまうことを抑制でき、糸ゴム14は第3搬送ローラー213から繰り出されてからアンビルローラー25に供給されるまでの間、CD方向に動くことができる(ふらつくことができる)。よって、糸ゴム14は、凸部251上に供給されたとしても、溝部252に入り込むことができ、接合部jの形成時に糸ゴム14が切断されてしまうことを抑制できる。
【0079】
また、本実施形態では、図2Aに例示する伸縮性シート10を製造するために、第1シートの非折り返し部11Bと、非折り返し部11Bの厚さ方向の一方側に重なる第2シート12(第2のシート)との間に、糸ゴム14を介在させて、第2シート12の厚さ方向の一方側に第1シートの折り返し部11Aを重ねた積層体100を、アンビルローラー25に供給する。
【0080】
そのため、第1シート11と第2シート12と糸ゴム14が個別にアンビルローラー25に供給されて巻き付けられる場合に比べて、各シート及び糸ゴム14の互いのCD方向の位置ずれを抑制できる。また、本実施形態の製造方法とは異なり、例えば、一部が折り返されていない第1シート11と第2シート12の間に糸ゴム14を介在させた状態で、超音波溶着装置22により接合部jを形成した後に、第1シート11の一部を折り返し、その折り返し部11Aを接着剤で第2シート12に接合する場合に比べて、伸縮性シート10の製造工程及び製造装置を簡素化できる。また、上記のように糸ゴム14を第1,第2シート11,12に取り付ける接合部(超音波溶着部)と、第1シートの折り返し部11Aを第2シート12に留める接合部(接着剤)とが異なる場合に比べて、本実施形態の製造方法による伸縮性シート10では、接合部jの数を少なくでき、伸縮性シート10の高剛性化を抑えることができる。よって、伸縮性シート10の柔軟性を確保でき、糸ゴム14の収縮性能の低下を抑制できる。
【0081】
また、図2Aに示す伸縮性シート10に限らず、伸縮性シート10が3枚以上のシートから構成される場合にも、伸縮性シート10が有する全てのシートと糸ゴム14を積層した積層体100を、アンビルローラー25に供給することが好ましい。そうすることで、伸縮性シート10が有する全てのシートを接合部jによって接合できる。よって、層ごとにシートの接合部が異なる場合に比べて、伸縮性シート10の製造工程及び製造装置を簡素化でき、伸縮性シート10の高剛性化を抑えることができる。
【0082】
また、伸縮性シート10が有するシート及び糸ゴム14が個別にアンビルローラー25に供給されて巻き付けられる場合に比べて、積層体100を供給する方が、各シート及び糸ゴム14の互いのCD方向の位置がずれにくくなる。
【0083】
また、糸ゴム14と、糸ゴム14よりもアンビルローラー25側に位置するシート(ここでは第1シートの非折り返し部11B)とが、同じタイミングでアンビルローラー25に供給される。そのため、アンビルローラー25側に配されるシートが先にアンビルローラー25に巻き付いている場合に比べて、糸ゴム14と共にシートが溝部252内に撓み込みやすく、糸ゴム14が溝部252に入り込みやすくなる。よって、接合部jの形成時に糸ゴム14が切断されてしまうことを抑制できる。
【0084】
また、伸縮性シート10では、図2A等に示すように、シートの折り返し端11Cに糸ゴム14が配されていないことが好ましい。そうすることで、折り返し端11Cに最も近い糸ゴム14の、CD方向の両側に接合部jを形成することができ、糸ゴム14の位置をしっかりと規制できる。また、折り返し端11CからCD方向に間隔をあけて糸ゴム14が配されることで、アンビルローラー25上で糸ゴム14がCD方向に動くことができ、糸ゴム14が溝部252に入り込みやすくなる。また、折り返し端11Cに糸ゴム14が位置しないことで、折り返し端11Cをより柔らかくすることができ、縮性シート10を吸収性物品等に使用する場合に、着用者の肌を傷付けてしまうことを抑制できる。
【0085】
また、図1に示す伸縮性シート10のように、幅方向の一方側に折り返された第1シートの折り返し部11Aの長さL1が、非折り返し部11Bの長さL2よりも短い場合(L1<L2)、接合部jを形成する工程において、折り返し部11Aと非折り返し部11Bとを圧着して互いに接合する第2の接合部j2であって、幅方向(CD方向)における折り返し部11Aの一方側の端11Aaを跨いで配置される第2の接合部j2を形成することが好ましい。そうすることで、折り返し部11Aの端部がめくれることなく、非折り返し部11B及び第2シート12にしっかりと接合できる。よって、折り返し部11Aの剥がれを抑制できる。
【0086】
また、第2の接合部j2は、糸ゴム14の両側に配される接合部j(すなわち糸ゴム14の位置を規制する接合部j)とは異なることが好ましい。そうすることで、第2の接合部j2が剥がれてしまった場合にも、糸ゴム14は接合部jによってシート11,12に取り付けられた状態が維持される。よって、伸縮性シート10(糸ゴム14)の収縮性能を維持できる。
【0087】
以下、第2実施形態,第3実施形態について説明する。第2実施形態,第3実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0088】
<<第2実施形態>>
図8は、第2実施形態における伸縮性シートの製造装置20の概略断面図である。第2実施形態の製造装置20はプレスローラー28を有する。
【0089】
プレスローラー28は、ホーンローラー26よりも搬送方向の上流側において、アンビルローラー25に接触するように対向配置されたローラーである。プレスローラー28は、不図示の駆動源によって、CD方向に沿った回転軸回りに回転する。なお、アンビルローラー25及びプレスローラー28は、少なくとも間を通過する資材を介して接触可能であればよく、好ましくは資材がない状態で接触可能であるとよい。
【0090】
第2実施形態の製造装置20を用いた製造方法は、アンビルローラー25の回転方向における接合角度位置P2よりも上流側の押圧角度位置P5において、アンビルローラー25とプレスローラー28とを用いて、第1シートの折り返し部11A、非折り返し部11B、及び第2シート12を押圧する工程を有する。
【0091】
詳しくは、プレスローラー28の外周面は凹凸を有さない平滑面であり、プレスローラー28はアンビルローラー25の凸部251に接触する。よって、第1シートの折り返し部11A、非折り返し部11B,及び、第2シート12は、アンビルローラー25の凸部251に対応する位置においてプレスローラー28に押圧される。これにより、各シート11A,11B,12、及び、糸ゴム14が、アンビルローラー25にしっかりと巻き付くことができ、それぞれのCD方向の位置が固定され、安定して搬送される。
【0092】
このように製造装置20がプレスローラー28を有する場合、アンビルローラー25の回転方向に隣り合う第1の凸部251a及び第2の凸部251bがそれぞれ設けられた角度位置P3,P4の角度差θ2よりも、供給角度位置P1と押圧角度位置P5との角度差θ3の方が大きいことが好ましい(θ2<θ3)。
【0093】
そうすることで、糸ゴム14は、アンビルローラー25に供給されてからプレスローラー25を通過するまでの間に、回転軸方向に並ぶ凸部251の間を通ることができ(溝部252に入り込むことができ)、上流の糸ゴム14も溝部252に誘導されやすくなる。その後、プレスローラー28によって糸ゴム14が溝部252に入り込んだ状態が固定され、超音波溶着装置22まで安定して搬送される。よって、接合部jの形成時に糸ゴム14が切断されてしまうことを抑制できる。
【0094】
また、第1シートの折り返し端11Cが、アンビルローラー25とプレスローラー28の間を通過し、アンビルローラー25とプレスローラー28に押圧されることが好ましい。そうすることで、折り返し端11C(折り目)が綺麗に保たれた状態で、超音波溶着装置20まで搬送されて接合部jが形成される。よって、よじれることなくシートが折り返された伸縮性シート10を製造できる。
【0095】
<<第3実施形態>>
図9は、第3実施形態における伸縮性シートの製造装置20の概略断面図である。第3実施形態では、第1実施形態と超音波溶着装置22が異なる。超音波溶着装置22は一対のローラーで構成されるに限らない。例えば、図9に示すように、ホーンローラー26の代わりに、アンビルローラー25の表面に対向して配された平らな振動面27aを有する非回転のホーン27を用いてもよい。このホーン27の振動面27aがアンビルローラー25の表面との間の間隔を拡縮する方向に振動し、接合部jが形成される。
また、図示しないが、ホーンローラー26の外周面を、アンビルローラー25の凹凸に噛み合う凹凸面としてもよい。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0097】
1 パンツ型使い捨ておむつ、
2 吸収性本体、3 腹側胴回り部、4 背側胴回り部、5 糸ゴム、
10 伸縮性シート、100 積層体、
11 第1シート(シート)、
11A 折り返し部、11B 非折り返し部、11C 折り返し端、
12 第2シート(第2のシート)、14 糸ゴム、
20 伸縮性シートの製造装置、
21 搬送ローラー群(供給部,介在部)、
22 超音波溶着装置(接合部形成部)、
23 折り部材(介在部)、24 排出ローラー、
25 アンビルローラー(圧着ローラー)、
251 凸部、251a 第1の凸部、251b 第2の凸部、
252 溝部、
26 ホーンローラー(圧着部)、
27 ホーン(圧着部)、28 プレスローラー、
j 接合部、jP 接合部対、
j2 第2の接合部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9