IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧

<>
  • 特許-予測装置及びプログラム 図1
  • 特許-予測装置及びプログラム 図2
  • 特許-予測装置及びプログラム 図3
  • 特許-予測装置及びプログラム 図4
  • 特許-予測装置及びプログラム 図5
  • 特許-予測装置及びプログラム 図6
  • 特許-予測装置及びプログラム 図7
  • 特許-予測装置及びプログラム 図8
  • 特許-予測装置及びプログラム 図9
  • 特許-予測装置及びプログラム 図10
  • 特許-予測装置及びプログラム 図11
  • 特許-予測装置及びプログラム 図12
  • 特許-予測装置及びプログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】予測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/593 20140101AFI20230515BHJP
   H04N 19/105 20140101ALI20230515BHJP
   H04N 19/159 20140101ALI20230515BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20230515BHJP
   H04N 19/82 20140101ALI20230515BHJP
【FI】
H04N19/593
H04N19/105
H04N19/159
H04N19/176
H04N19/82
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021164113
(22)【出願日】2021-10-05
(62)【分割の表示】P 2016097486の分割
【原出願日】2016-05-13
(65)【公開番号】P2022017254
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 敦郎
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】特許第6956471(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 19/00-19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像対象ブロックをイントラ予測により予測する予測装置であって、
イントラ予測モードを用いて、平滑化処理を施した参照画素からイントラ予測により予測画像を生成する第1生成部と、
前記イントラ予測モードに基づいて、前記平滑化処理を用いずに参照画素から合成用画像を生成する第2生成部と、
前記予測画像と前記合成用画像との重み付き合成処理を行う重み付き合成部と、を具備し、
前記重み付き合成部は、
前記イントラ予測モードが水平方向のモードよりも小さい場合であって、且つ、前記参照画素の位置が、前記対象ブロックの左側に隣接する画素ラインに含まれる位置のみであるという条件が満たされた場合には、所定の重み係数を決定する処理を行い、当該条件が満たされない場合には、当該処理と異なる処理を行い、
前記イントラ予測モードが垂直方向のモードよりも大きい場合であって、且つ、前記参照画素の位置が、前記対象ブロックの上側に隣接する画素ラインに含まれる位置のみであるという条件が満たされた場合には、所定の重み係数を決定する処理を行い、当該条件が満たされない場合には、当該処理と異なる処理を行うことを特徴とする予測装置。
【請求項2】
コンピュータを、請求項1に記載の予測装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化装置、復号装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)に代表される動画像(映像)符号化方式では、フレーム間の時間的相関を利用したインター予測及びフレーム内の空間的相関を利用したイントラ予測の2種類の予測を切り替えながら予測を行って残差信号を生成した後、直交変換処理やループフィルタ処理やエントロピー符号化処理を行い得られたストリームを出力するように構成されている。
【0003】
HEVCにおけるイントラ予測では、Planar予測やDC予測や方向予測の計35種類のイントラ予測モードが用意されており、エンコーダで決定されたイントラ予測モードに従って、隣接する復号済み参照画素を用いてイントラ予測を行うように構成されている。以下、特に記載が無い場合には、「参照画素」という記載は、復号済み参照画素を示すものとする。
【0004】
ここで、HEVCにおけるイントラ予測では、フレーム内で最も左上に位置する符号化対象ブロック(以下、「CU:Coding Unit」と呼ぶ)等、隣接する参照画素が存在しないCUでは、規定した値(10ビットの動画像であれば「512」)を埋める処理により、予測画像を生成する際に用いる参照画素を作り出すように構成されている。
【0005】
また、従来のHEVCでは、符号化処理が、左上からラスタースキャン順に行われるために、参照画素が復号済みでない場合がある。このような場合には、最も近い復号済み参照画素を0次外挿した値を用いて予測画像を生成するように構成されている。
【0006】
とりわけ、従来のHEVCにおけるイントラ予測では、ラスタースキャン順による符号化処理により、CUの左下側や右上側に位置する参照画素が復号済みでない場合が多く、このような場合に、復号済みでない参照画素が存在する方向からの方向予測を行うと予測精度が低下し、符号化効率が低減してしまうという問題点があった。
【0007】
かかる問題点を解決するために、イントラ予測において、CU内に存在する複数の変換ブロック(以下、「TU:Transform Unit」と呼ぶ)に対する符号化処理順として、ラスタースキャン順(例えば、Z型)の他、U型やX型等の符号化順に自由度を持たせることによって予測精度の向上を図る技術が知られている(非特許文献1参照)。
【0008】
また、HEVCで用いられているイントラ予測は、空間的に隣接する上側又は左側の参照画素を利用した予測であり、参照画素に近い位置の予測画素の精度が高く、参照画素から遠い位置の予測画素の精度が低くなる傾向にある。
【0009】
したがって、CU/TUのサイズが小さい場合には、イントラ予測の精度は高い傾向にあるが、CU/TUのサイズが大きくなるにつれて、参照画素から遠い位置にある予測画素の割合が増え、予測画像全体の予測精度が低下する。また、CU/TUのサイズが大きくなるにつれて、参照画素に含まれるブロック歪み等の符号化劣化が予測画像に伝搬する可能性が高くなる。
【0010】
そこで、従来のHEVCでは、CU/TUのサイズやイントラ予測モードの方向に応じて、参照画素に平滑化フィルタを適用した上で予測画像を生成するように構成されている。
【0011】
一般的に、予測画像のうち、参照画素に近い位置の予測画素は、予測すべき原画像の有する真値に近くなりやすく、予測精度が高くなる傾向にある一方、参照画素から遠い位置の予測画素は、予測すべき原画像の有する真値から外れやすく、予測精度が低くなる傾向にあるため、HEVCのように、平滑化された復号済み参照画素を用いたイントラ予測の方が、予測精度が高くなる傾向にある。
【0012】
そこで、非特許文献2では、予測精度を高めるために、平滑化処理を施す前の参照画素により生成された予測画像(非平滑予測画像)及び平滑化処理を施した後の参照画素により生成された予測画像(平滑予測画像)を生成し、イントラ予測モードの方向及びCU/TUのサイズに応じて予め規定された重み係数を用いて非平滑予測画像及び平滑予測画像を合成することで、より精度の高い予測画像を生成する手法を提案している。
【0013】
以下、図12及び図13に、かかる重み係数の一例について示す。
【0014】
図12(a)及び図12(b)は、HEVCにおけるイントラ予測モードが2である場合の重み係数の分布の一例を示し、図13(a)及び図13(b)は、HEVCにおけるイントラ予測モードが18である場合の重み係数の分布の一例を示す。
【0015】
また、図12(a)及び図13(a)は、平滑化前参照画素を用いた予測画像(すなわち、非平滑予測画像)における重み係数の一例を示し、図12(b)及び図13(b)は、平滑化後参照画素を用いた予測画像(すなわち、平滑予測画像)における重み係数の一例を示す。
【0016】
なお、図12及び図13において、黒い部分の重み係数は「0」であり、白い部分の重み係数は「1」である。
【0017】
図12及び図13に示すように、参照画素に近い位置にある予測画素においては、非平滑予測画像の比重が高くなり、参照画素から遠い位置にある予測画素においては、平滑予測画像の比重が高くなる。
【0018】
非特許文献2の手法では、イントラ予測モード及びCU/TUのサイズに応じて重み係数の分布を予め規定し、符号化対象のCU/TUのサイズやイントラ予測モードに応じて重み係数を切り替えて適用するように規定されている。
【0019】
なお、本明細書の図において、イントラ予測モードの方向(予測方向)を示す矢印は、
HEVC規格書における記載と同様に、イントラ予測の対象の画素から参照画素に向かうものとする(以下同様)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】望月等、「平均値座標に基づいた適用イントラ予測方式」、情報処理学会研究報告、vol、2012-AVM-77、No.12
【文献】A.Said、X.Zhao、J.Chen、M.Karczewicz、W.-J.Chien、F.Zhou、「Position dependent intra prediction combination」、MPEG doc. m37502及びITU-T SG16 Doc. COM16-C1016、2015年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述のように、非特許文献2の手法では、イントラ予測に用いる参照画素の位置を考慮しておらず、イントラ予測に用いる参照画素の位置に右側や下側を含む場合(すなわち、右側や下側の隣接する参照画素を用いて予測画像を生成する場合)であっても、イントラ予測モード及びCU/TUのサイズに応じて重み係数を決定してしまう。
【0022】
すなわち、非特許文献2の手法では、参照画素に近い位置においては、非平滑予測画像の方が、予測精度が高く、参照画素から遠い位置においては、平滑予測画像の方が、予測精度が高いにも関わらず、イントラ予測に用いる参照画素の位置によらずに、重み係数を決定してしまうため、予測精度が低下してしまい、符号化性能が低下してしまうという問題点があった。
【0023】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、予測画像を生成する際に非平滑予測画像及び平滑予測画像を適切に合成することで予測精度の低下を防ぐことができる符号化装置、復号装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の第1の特徴は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して符号化するように構成されている符号化装置であって、イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するように構成されているイントラ予測部を具備しており、前記イントラ予測部は、参照画素に対して平滑化処理を施すことなく前記イントラ予測モードを用いて非平滑予測画像を生成するように構成されている非平滑イントラ予測部と、前記参照画素に対して平滑化処理を施した後に前記イントラ予測モードを用いて平滑予測画像を生成するように構成されている平滑イントラ予測部と、前記イントラ予測モード及び前記参照画素の位置に応じて重み係数を決定するように構成されている重み係数決定部と、前記重み係数を用いて、前記非平滑予測画像及び前記平滑予測画像を合成して前記予測画像を生成するように構成されている予測画像生成部とを具備することを要旨とする。
【0025】
本発明の第2の特徴は、動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して復号するように構成されている復号装置であって、イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するように構成されているイントラ予測部を具備しており、前記イントラ予測部は、参照画素に対して平滑化処理を施すことなく前記イントラ予測モードを用いて非平滑予測画像を生成するように構成されている非平滑イントラ予測部と、前記参照画素に対して平滑化処理を施した後に前記イントラ予測モードを用いて平滑予測画像を生成するように構成されている平滑イントラ予測部と、前記イントラ予測モード及び前記参照画素の位置に応じて重み係数を決定するように構成されている重み係数決定部と、前記重み係数を用いて、前記非平滑予測画像及び前記平滑予測画像を合成して前記予測画像を生
成するように構成されている予測画像生成部とを具備することを要旨とする。
【0026】
本発明の第3の特徴は、コンピュータを、上述の第1の特徴に記載の符号化装置として機能させるためのプログラムであることを要旨とする。
【0027】
本発明の第4の特徴は、コンピュータを、上述の第2の特徴に記載の復号装置として機能させるためのプログラムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、予測画像を生成する際に非平滑予測画像及び平滑予測画像を適切に合成することで予測精度の低下を防ぐことができる符号化装置、復号装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、第1の実施形態に係る符号化装置1の機能ブロックの一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る符号化装置1のイントラ予測部14aの機能ブロックの一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態において用いられるイントラ予測モードの方向の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態における予測画像の生成方法の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態における予測画像の生成方法の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る符号化装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第1の実施形態に係る符号化装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第1の実施形態に係る符号化装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、第1の実施形態に係る符号化装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第1の実施形態に係る復号装置3の機能ブロックの一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態に係る復号装置3のイントラ予測部33aの機能ブロックの一例を示す図である。
図12図12は、従来技術について説明するための図である。
図13図13は、従来技術について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1の実施形態)
以下、図1図11を参照して、本発明の第1の実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3について説明する。
【0031】
ここで、本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3は、HEVC等の動画像符号化方式におけるイントラ予測に対応するように構成されている。なお、本実施形態に係る符号化装置1及び復号装置3は、イントラ予測を行う動画像符号化方式であれば、任意の動画像符号化方式に対応することができるように構成されている。
【0032】
本実施形態に係る符号化装置1は、動画像を構成するフレーム単位の原画像をCUに分割して符号化するように構成されている。また、本実施形態に係る符号化装置1は、CUを複数のTUに分割することができるように構成されていてもよい。以下、本実施形態で
は、CUを複数のTUに分割するケースを例に挙げて説明するが、本発明は、CUを複数のTUに分割しないケースであって、当該CUの参照画素の位置が下側や右側を含む場合にも適用可能である。
【0033】
なお、本実施形態では、フレーム内で最も左上に位置するCU等、隣接する復号済み参照画素が存在しない符号化対象のCUでは、規定した値(10ビットの動画像であれば「512」)を埋める処理により、予測画像を生成する際に用いる参照画素を作り出すように構成されているため、符号化対象のCUの左側に隣接する画素について全て参照画素とすることができるものとする。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る符号化装置1は、イントラ予測モード決定部11と、TU分割決定部12と、符号化順制御部13と、逐次局部復号画像生成部14と、メモリ15と、エントロピー符号化部16とを具備している。
【0035】
イントラ予測モード決定部11は、CUに適用する最適なイントラ予測モードを決定するように構成されている。
【0036】
TU分割決定部12は、CUを複数のTUに分割するか否かについて決定するように構成されている。なお、本実施形態では、CUを複数のTUに分割する方法として、4分割のケースを例に挙げて説明しているが、CUを複数のTUに分割する際の分割数や分割形状については、かかるケースに制限されるものではない。
【0037】
符号化順制御部13は、イントラ予測モード(例えば、イントラ予測モードの方向)に基づいてCU内のTUの符号化順を決定するように構成されている。
【0038】
例えば、符号化順制御部13は、TU分割決定部12によってCUを複数のTUに分割することが決定された場合に、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モードの方向が右上から左下に向かう方向(図3に示すイントラ予測モード2~9)である場合(すなわち、左下から右上に向かって方向予測が行われる場合)に、CU内のTUの符号化順として、従来のラスタースキャン順でなく、CU内の左下のTU→CU内の右下のTU→CU内の左上のTU→CU内の右上のTUという符号化順、或いは、CU内の左下のTU→CU内の左上のTU→CU内の右下のTU→CU内の右上のTUという符号化順のうち、予め規定した符号化順を採用するように構成されていてもよい。
【0039】
逐次局部復号画像生成部14は、符号化順制御部13によって決定された符号化順及びCUのTUへの分割方法に基づいて局部復号画像(TUごとの復号画像)を生成するように構成されている。
【0040】
具体的には、逐次局部復号画像生成部14は、TU分割決定部12によってCUを複数のTUに分割することが決定された場合に、符号化順制御部13により決定された符号化順に従って、逐次、局部復号画像を生成するように構成されている。
【0041】
図1に示すように、逐次局部復号画像生成部14は、イントラ予測部14aと、残差信号生成部14bと、直交変換・量子化部14cと、逆量子化部・逆直交変換部14dと、局部復号画像生成部14eとを具備している。
【0042】
イントラ予測部14aは、イントラ予測モード決定部11により決定されたイントラ予測モードを用いて予測画像を生成するように構成されている。すなわち、イントラ予測部14aは、かかるイントラ予測モードに応じて予測画像を生成する際に用いる参照画素の位置を決定し、かかる参照画素を用いて予測画像を生成するように構成されている。
【0043】
さらに、イントラ予測部14aは、符号化順制御部13によって決定された符号化順で、予測画像を生成するように構成されていてもよい。
【0044】
図2に示すように、イントラ予測部14aは、非平滑イントラ予測部14a1と、平滑イントラ予測部14a2と、重み係数決定部14a3と、予測画像生成部14a4とを具備している。
【0045】
非平滑イントラ予測部14a1は、参照画素に対して平滑化処理を施すことなくイントラ予測モードを用いて非平滑予測画像を生成するように構成されている。
【0046】
平滑イントラ予測部14a2は、参照画素に対して平滑化処理を施した後にイントラ予測モードを用いて平滑予測画像を生成するように構成されている。
【0047】
重み係数決定部14a3は、イントラ予測モード及び参照画素の位置に応じて重み係数を決定するように構成されている。
【0048】
図3に、本実施形態において用いられるイントラ予測モードの一例について示す。図3に示すように、本実施形態では、イントラ予測モード2~9は、カテゴリAに分類され、イントラ予測モード10~26は、カテゴリBに分類され、イントラ予測モード27~34は、カテゴリCに分類されるものとする。
【0049】
ここで、重み係数決定部14a3は、参照画素の位置として下側及び右側の少なくとも一方が含まれている場合、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を変換した係数を、重み係数として決定するように構成されていてもよい。
【0050】
具体的には、重み係数決定部14a3は、参照画素の位置として下側及び右側が含まれていない場合、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を用いるように決定するように構成されていてもよい。
【0051】
すなわち、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードがカテゴリBに属している場合、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を用いるように決定するように構成されていてもよい。
【0052】
例えば、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードが18である場合、図13(a)及び(b)に示す重み係数の分布を用いるように構成されていてもよい。ここで、非平滑予測画像に対して適用する重み係数の分布を「α」とすると、平滑予測画像に対して適用する重み係数の分布は「1-α」となる。
【0053】
或いは、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードがカテゴリAに属している場合で、且つ、参照画素の位置として下側が含まれていない場合(左側の隣接する参照画素のみを用いて予測画像を生成する場合)、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を用いるように決定するように構成されていてもよい。
【0054】
例えば、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードが2であり、参照画素の位置として下側が含まれていない場合、図12(a)及び(b)に示す重み係数の分布を用いるように構成されていてもよい。ここで、非平滑予測画像に対して適用する重み係数の分布を「α」とすると、平滑予測画像に対して適用する重み係数の分布は「1-α」となる。
【0055】
或いは、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードがカテゴリCに属している場合で、且つ、参照画素の位置として右側が含まれていない場合、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を用いるように決定するように構成されていてもよい。
【0056】
一方、重み係数決定部14a3は、参照画素の位置として下側が含まれている場合(下側の隣接する参照画素を用いて予測画像を生成する場合)、イントラ予測モードの方向を垂直方向に反転した方向に応じて予め規定される重み係数を垂直方向に反転した係数を、かかる重み係数として決定するように構成されていてもよい。
【0057】
例えば、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードがカテゴリAに属している場合で、且つ、参照画素の位置として左側及び下側が含まれている場合(左側及び下側の隣接する参照画素を用いて予測画像を生成する場合)、イントラ予測モードの方向を垂直方向に反転した方向に応じて予め規定される重み係数を垂直方向に反転した係数を、かかる重み係数として決定するように構成されていてもよい。
【0058】
ここで、「イントラ予測モードの方向を垂直方向に反転する」とは、図3の例では、イントラ予測モード2~9の方向とイントラ予測モード18~11の方向との間でそれぞれ変換することを意味する、すなわち、イントラ予測モード10の方向を基準にして各イントラ予測モードの方向を線対称な位置関係にあるイントラ予測モードの方向に変換することを意味する。
【0059】
図4(a)及び図4(b)は、イントラ予測モードが2である場合で且つ参照画素の位置として左側及び下側が含まれている場合の重み係数の分布の一例を示し、図5(a)及び図5(b)は、イントラ予測モードが18である場合の重み係数の分布の例を示す。
【0060】
また、図4(a)及び図5(a)は、平滑化前参照画素を用いた予測画像(すなわち、非平滑予測画像)における重み係数の一例を示し、図4(b)及び図5(b)は、平滑化後参照画素を用いた予測画像(すなわち、平滑予測画像)における重み係数の一例を示す。
【0061】
なお、図4及び図5において、黒い部分の重み係数は「0」であり、白い部分の重み係数は「1」である。
【0062】
ここで、「重み係数を垂直方向に反転する」とは、図4及び図5に示す重み係数の分布を垂直方向Vに反転することによって各参照画素に対応する重み係数を変換することを意味する。
【0063】
例えば、図4(a)に示す重み係数の分布を垂直方向Vに反転すると図5(b)に示す重み係数の分布となり、図4(b)に示す重み係数の分布を垂直方向Vに反転すると図5(a)に示す重み係数の分布となる。
【0064】
すなわち、イントラ予測モードが2である場合で且つ参照画素の位置として左側及び下側が含まれている場合の重み係数の分布を垂直方向に反転すると、イントラ予測モードが18である場合の重み係数の分布となる。
【0065】
換言すると、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードが2であり、参照画素の位置として左側及び下側が含まれている場合、図12(a)及び(b)に示す重み係数の分布を用いる代わりに、図5に示すイントラ予測モードが18である場合の重み係数の分布を垂直方向に反転した重み係数の分布(図4に示す重み係数の分布)を用いるように構
成されている。
【0066】
また、「重み係数を垂直方向に反転する」とは、以下の(式1)及び(式2)に示すように、重み係数の分布をαとα’との間で変換することを意味する。
【0067】
【数1】
【0068】
ここで、α及びα’の各要素である「α11」~「αmn」が各参照画素に対応する重み係数を示す。
【0069】
さらに、重み係数決定部14a3は、参照画素の位置として右側が含まれている場合(右側の隣接する参照画素を用いて予測画像を生成する場合)、イントラ予測モードの方向を水平方向に反転した方向に応じて予め規定される重み係数を水平方向に反転した係数を、かかる重み係数として決定するように構成されていてもよい。
【0070】
例えば、重み係数決定部14a3は、イントラ予測モードがカテゴリCに属している場合で、且つ、参照画素の位置として上側及び右側が含まれている場合(上側及び右側の隣接する参照画素を用いて予測画像を生成する場合)、イントラ予測モードの方向を水平方向に反転した方向に応じて予め規定される重み係数を水平方向に反転した係数を、かかる重み係数として決定するように構成されていてもよい。
【0071】
ここで、「イントラ予測モードの方向を水平方向に反転する」とは、図3の例では、イントラ予測モード18~25の方向とイントラ予測モード34~27の方向との間でそれぞれ変換することを意味する、すなわち、イントラ予測モード26の方向を基準にして各イントラ予測モードの方向を線対称な位置関係にあるイントラ予測モードの方向に変換することを意味する。
【0072】
また、「重み係数を水平方向に反転する」とは、図4及び図5に示す重み係数の分布を垂直方向Hに反転することによって各参照画素に対応する重み係数を変換することを意味する。
【0073】
或いは、「重み係数を水平方向に反転する」とは、以下の(式3)及び(式4)に示すように、重み係数の分布をαとα’’との間で変換することを意味する。
【0074】
【数2】
【0075】
ここで、α及びα’’の各要素である「α11」~「αmn」が各参照画素に対応する重み係数を示す。
【0076】
予測画像生成部14a4は、重み係数決定部14a3によって決定された重み係数を用いて、非平滑予測画像及び平滑予測画像を合成して予測画像を生成するように構成されている。
【0077】
残差信号生成部14bは、イントラ予測部14aによって生成された予測画像と原画像との差分により残差信号を生成するように構成されている。
【0078】
直交変換・量子化部14cは、残差信号生成部14bによって生成された残差信号に対して直交変換処理及び量子化処理を施し、量子化された変換係数を生成するように構成されている。
【0079】
逆量子化部・逆直交変換部14dは、直交変換・量子化部14cによって生成された量子化された変換係数に対して、再び逆量子化処理及び逆直交変換処理を施して残差信号を生成するように構成されている。
【0080】
局部復号画像生成部14eは、逆量子化部・逆直交変換部14dによって生成された残差信号に対してイントラ予測部14aによって生成された予測画像を加えることで局部復号画像を生成するように構成されている。
【0081】
メモリ15は、逐次局部復号画像生成部14によって生成された局部復号画像を参照画像として利用可能に保持するように構成されている。
【0082】
エントロピー符号化部16は、イントラ予測モード決定部11によって決定されたイントラ予測モード等を含むフラグ情報や量子化された変換係数に対してエントロピー符号化処理を施してストリーム出力するように構成されている。
【0083】
図6図9に、本実施形態に係る符号化装置1において予測画像を生成する動作の一例について説明するためのフローチャートについて示す。
【0084】
図6に示すように、ステップS101において、CUを複数のTUに分割される場合に
は、本動作は、ステップS102に進む。一方、ステップS101において、CUを複数のTUに分割されない場合には、本動作は、ステップS104に進む。
【0085】
ステップS102において、イントラ予測モードがカテゴリAに属している場合には、本動作は、図7に進み、イントラ予測モードがカテゴリAに属していない場合には、本動作は、ステップS103に進む。
【0086】
ステップS103において、イントラ予測モードがカテゴリBに属している場合には、本動作は、図8に進み、イントラ予測モードがカテゴリBに属していない場合(すなわち、イントラ予測モードがカテゴリCに属している場合)には、本動作は、図9に進む。
【0087】
ステップS104において、符号化装置1は、左側及び上側の参照画素を用いて予測画像を生成する。
【0088】
図7に示すように、ステップS201において、参照画素の位置として左側及び下側が含まれている場合には、本動作は、ステップS202に進み、参照画素の位置として下側が含まれていない場合には、本動作は、ステップS204に進む。
【0089】
ステップS202において、符号化装置1は、イントラ予測モードの方向を垂直方向に反転した方向に応じて予め規定される重み係数を算出する。
【0090】
ステップS203において、符号化装置1は、算出した重み係数を垂直方向に反転した重み係数を用いて予測画像を生成する。
【0091】
ステップS204において、符号化装置1は、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を算出する。
【0092】
ステップS205において、符号化装置1は、算出した重み係数を用いて予測画像を生成する。
【0093】
図8に示すように、ステップS301において、符号化装置1は、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を算出する。
【0094】
ステップS302において、符号化装置1は、算出した重み係数を用いて予測画像を生成する。
【0095】
図9に示すように、ステップS401において、参照画素の位置として上側及び右側が含まれている場合には、本動作は、ステップS402に進み、参照画素の位置として右側が含まれていない場合には、本動作は、ステップS404に進む。
【0096】
ステップS402において、符号化装置1は、イントラ予測モードの方向を水平方向に反転した方向に応じて予め規定される重み係数を算出する。
【0097】
ステップS403において、符号化装置1は、算出した重み係数を水平方向に反転した重み係数を用いて予測画像を生成する。
【0098】
ステップS404において、符号化装置1は、イントラ予測モードの方向に応じて予め規定される重み係数を算出する。
【0099】
ステップS405において、符号化装置1は、算出した重み係数を用いて予測画像を生
成する。
【0100】
本実施形態に係る符号化装置1によれば、イントラ予測モードやCU/TUのサイズだけでなく参照画素の位置を考慮して重み係数を決定することができるので、予測画像を生成する際に非平滑予測画像及び平滑予測画像を適切に合成することで予測精度の低下を防ぐことができる。
【0101】
例えば、図4に示すように、イントラ予測モード2を用いて予測画像を生成する場合、参照画素に近い左側及び下側に位置する予測画素については、非平滑予測画像の予測精度が高くなると考えられる一方、参照画素から遠い右上に位置する予測画素については、平滑予測画像の予測精度が高くなると考えられる。
【0102】
したがって、本実施形態に係る符号化装置1によれば、参照画素の位置として左側及び右側が含まれている場合には、図12に示す重み係数の分布を用いる代わりに、図4に示す重み係数の分布を用いることで、予測精度を向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態に係る復号装置3は、動画像を構成するフレーム単位の原画像をCUに分割して復号するように構成されている。また、本実施形態に係る復号装置3は、本実施形態に係る符号化装置1と同様に、CUを複数のTUに分割することができるように構成されている。
【0104】
図10に示すように、本実施形態に係る復号装置3は、エントロピー復号部31と、復号順制御部32と、逐次復号画像生成部33と、メモリ34とを具備している。
【0105】
エントロピー復号部31は、符号化装置1から出力されたストリームに対してエントロピー復号処理を施すことによって、符号化装置1から出力されたストリームから、変換係数やフラグ情報等を復号するように構成されている。ここで、変換係数は、符号化装置1によって、フレーム単位の原画像をCUに分割して符号化された信号として得られた量子化された変換係数である。
【0106】
復号順制御部32は、イントラ予測モードに基づいてCU内のTUの復号順を決定するように構成されている。
【0107】
具体的には、復号順制御部32は、エントロピー復号部31によって出力されたTU分割が行われた否か(CUが複数のTUに分割されているか否か)について示すフラグ及びイントラ予測モードの方向に応じて、CU内のTUの復号順を決定するように構成されている。
【0108】
例えば、復号順制御部32は、符号化順制御部13と同様に、CUが複数のTUに分割されている場合で、且つ、イントラ予測モードの方向が右上から左下に向かう方向(すなわち、左下から右上に向かって方向予測が行われる場合)である場合、CU内の左下のTU→CU内の右下のTU→CU内の左上のTU→CU内の右上のTUという復号順、或いは、CU内の左下のTU→CU内の左上のTU→CU内の右下のTU→CU内の右上のTUという復号順のうち、予め規定した復号順で、復号処理を行うように構成されていてもよい。
【0109】
逐次復号画像生成部33は、復号順制御部32によって決定された復号順及びCUのTUへの分割方法に基づいてTUごとの復号画像を生成するように構成されている。
【0110】
具体的には、逐次復号画像生成部33は、CUが複数のTUに分割されている場合に、
復号順制御部32によって決定された復号順に従って、エントロピー復号部31によって出力された量子化された変換係数に対して、逐次、イントラ予測や逆量子化処理や逆直交変換処理を行うことによって、復号画像を生成するように構成されている。
【0111】
図10に示すように、逐次復号画像生成部33は、イントラ予測部33aと、逆量子化・逆変換部33bと、復号画像生成部33cとを具備している。
【0112】
イントラ予測部33aは、復号順制御部32によって決定した復号順に従って、エントロピー復号部31によって出力されたイントラ予測モードを用いて、予測画像を生成するように構成されていてもよい。
【0113】
図11に示すように、イントラ予測部33aは、非平滑イントラ予測部33a1と、平滑イントラ予測部33a2と、重み係数決定部33a3と、予測画像生成部33a4とを具備している。
【0114】
非平滑イントラ予測部33a1は、非平滑イントラ予測部14a1と同様に、参照画素に対して平滑化処理を施すことなくイントラ予測モードを用いて非平滑予測画像を生成するように構成されている。
【0115】
平滑イントラ予測部33a2は、平滑イントラ予測部14a2と同様に、参照画素に対して平滑化処理を施した後にイントラ予測モードを用いて平滑予測画像を生成するように構成されている。
【0116】
重み係数決定部33a3は、重み係数決定部14a3と同様に、イントラ予測モード及び参照画素の位置に応じて重み係数を決定するように構成されている。
【0117】
予測画像生成部33a4は、予測画像生成部14a4と同様に、重み係数決定部14a3によって決定された重み係数を用いて、非平滑予測画像及び平滑予測画像を合成して予測画像を生成するように構成されている。
【0118】
逆量子化・逆変換部33bは、エントロピー復号部31によって出力された量子化された変換係数に対して逆量子化処理及び逆変換処理(例えば、逆直交変換処理)を施すことによって、残差信号を生成するように構成されている。
【0119】
復号画像生成部33cは、イントラ予測部33aによって生成された予測画像と逆量子化・逆変換部33bによって生成された残差信号とを加えることで復号画像を生成するように構成されている。
【0120】
メモリ34は、逐次復号画像生成部33によって生成された復号画像を、イントラ予測及びインター予測のための参照画像として利用可能に保持するように構成されている。
【0121】
なお、本実施形態に係る復号装置3において予測画像を生成する動作は、図6図9に示す本実施形態に係る符号化装置1において予測画像を生成する動作と同一であるため、説明を省略する。
【0122】
本実施形態に係る復号装置3によれば、イントラ予測モードやCU/TUのサイズだけでなく参照画素の位置を考慮して重み係数を決定することができるので、予測画像を生成する際に非平滑予測画像及び平滑予測画像を適切に合成することで予測精度の低下を防ぐことができる。
【0123】
(その他の実施形態)
上述のように、本発明について、上述した実施形態によって説明したが、かかる実施形態における開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。かかる開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0124】
また、上述の実施形態では特に触れていないが、上述の符号化装置1及び復号装置3によって行われる各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、かかるプログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、かかるプログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、かかるプログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0125】
或いは、上述の符号化装置1及び復号装置3内の少なくとも一部の機能を実現するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されてもよい。
【符号の説明】
【0126】
1…符号化装置
11…イントラ予測モード決定部
12…TU分割決定部
13…符号化順制御部
14…逐次局部復号画像生成部
14a…イントラ予測部
14a1…非平滑イントラ予測部
14a2…平滑イントラ予測部
14a3…重み係数決定部
14a4…予測画像生成部
14b…残差信号生成部
14c…直交変換・量子化部
14d…逆量子化部・逆直交変換部
14e…局部復号画像生成部
15…メモリ
16…エントロピー符号化部
3…復号装置
31…エントロピー復号部
32…復号順制御部
33…逐次復号画像生成部
33a…イントラ予測部
33a1…非平滑イントラ予測部
33a2…平滑イントラ予測部
33a3…重み係数決定部
33a4…予測画像生成部
33b…逆量子化・逆変換部
33c…復号画像生成部
34…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13