(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】静電チャックおよび反応チャンバ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230515BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01L21/68 R
C23C14/34 K
(21)【出願番号】P 2021517467
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2019106684
(87)【国際公開番号】W WO2020073779
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】201811183845.3
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201821648321.2
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510182294
【氏名又は名称】北京北方華創微電子装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING NAURA MICROELECTRONICS EQUIPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.8 Wenchang Avenue Beijing Economic-Technological Development Area, Beijing 100176, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 其▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】史 全宇
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-299288(JP,A)
【文献】特開平07-130830(JP,A)
【文献】特開2006-165475(JP,A)
【文献】特開2010-199107(JP,A)
【文献】特表2014-534614(JP,A)
【文献】特表2011-529272(JP,A)
【文献】特開2001-068538(JP,A)
【文献】特表2009-512193(JP,A)
【文献】特開平09-213781(JP,A)
【文献】米国特許第6138745(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱層と、前記断熱層のボトムに配置された加熱体とを包含する静電チャックであって、さらに:
前記加熱体の下側に、前記加熱体から間隔が開けられて配置された、冷却液を移送するべく構成された冷却パイプラインと;
前記加熱体および前記冷却パイプラインのそれぞれと接続され、前記加熱体から前記冷却パイプラインへ熱を伝達するべく構成された壁部と、
を包含し、
ここで、前記壁部は、前記加熱体と前記冷却パイプラインとの間に配置され
る垂直部と、リング形状かつ前記リング形状の半径方向に延びる薄板状の伝熱プレート
と、を含み、
前記伝熱プレートは、
軸方向の厚さが
前記半径方向の長さより
も小さく、
前記壁部は、さらに、リング形状のコネクタを含み、それにおいて、前記リング形状のコネクタは、前記加熱体のボトムに接続され、前記冷却パイプラインの周囲を囲んで配置され、
前記伝熱プレートの
前記半径方向における内側端部の上面は前記冷却パイプラインと接触し、前記伝熱プレートの前記半径方向における外側端部の上面は前記リング形状の
前記コネクタ
と接触している、静電チャック。
【請求項2】
前記伝熱プレートの前記軸方向の
前記厚さおよび前記半径方向の
前記長さ、および/または前記伝熱プレートの前記内
側端部の前記上面が前記冷却パイプラインと接触する接触面積および前記外
側端部の前記上面が前記リング形状の
前記コネクタ
と接触する接触面積が、前記伝熱プレートの熱消散効率をコントロールするべく
下記式(1)を満たすように設定される、請求項1に記載の静電チャック。
式(1) Q=λ(T1-T2)tA/δ
ここで、Qは前記伝熱プレートによって伝達される1秒当たりの熱量を示し、λは前記伝熱プレートの熱伝導率を示し、T1-T2は前記リング形状の前記コネクタと前記冷却パイプラインの間における温度差を示し、tは伝熱時間を示し、Aは前記伝熱プレートの前記内側端部の前記上面と前記冷却パイプラインとが接触する接触面積および前記伝熱プレートの前記外側端部の前記上面が前記リング形状の前記コネクタと接触する接触面積を示し、δは前記伝熱プレートの前記軸方向の前記厚さを示す。
【請求項3】
前記伝熱プレートの熱消散効率は、10Wから500Wまでの範囲である、請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記伝熱プレートと前記冷却パイプラインは、溶接によって接続される、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記壁部は、さらに、
前記冷却パイプラインと接触し、前記加熱体の前記ボトムと対向して、前記加熱体によって熱放射態様で放射された熱を吸収して前記熱を前記冷却パイプラインへ伝達するべく構成された吸熱アッセンブリ、を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記吸熱アッセンブリは、
前記冷却パイプラインと固定的に接続された吸熱プレートと、前記吸熱プレートの表面に配置された前記加熱体と対向する複数の吸熱シートと、を含む、請求項5に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記複数の吸熱シートは、異なる直径を伴った複数のリング構造の構造体を含み、前記複数のリング構造の構造体は、同心に配置される、請求項6に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記冷却パイプラインは、前記吸熱プレートの軸周りに配置される、請求項6に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記冷却パイプラインと前記加熱体の間の垂直距離は、2mmから30mmまでの範囲である、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記冷却パイプラインと前記加熱体の間の前記垂直距離は、5mmである、請求項9に記載の静電チャック。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の静電チャックを包含する反応チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、概して半導体製造の分野に、より詳しくは、静電チャックおよび反応チャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、半導体製造の分野において、アルミニウム(Al)薄膜の形成のために物理蒸着(以下、PVDと呼ぶ)テクノロジが広く使用されている。しかしながら、Al薄膜形成のプロセスでは、一般的に存在する問題として、チャンバ内における不純物の存在に起因して、棘状または角張ったウィスカ欠陥の生成を生じさせる薄膜材料の異常成長が生じ得る。ウィスカ欠陥のサイズが充分に大きいときには、製品収率に影響が及ぶことがある。したがって、Al膜の堆積の間における不純物生成のコントロールは、ウィスカ欠陥の生成をコントロールする重要な方法であり、かつその方策である。
【0003】
Al薄膜の堆積、ウェファの固定、支持、または移送、および温度コントロールの実現にPVD装置が使用されるとき、ウェファを担持するためのベースとして、一般に高温静電チャックが使用される。現在の静電チャックは、ウェファの温度をコントロールするための温度コントロール・デバイスを含む。その温度コントロール・デバイスは、ウェファを担持するための断熱層と、断熱層に熱を提供するための加熱体と、加熱体を冷却するための冷却パイプを含む。
【0004】
既存の温度コントロール・デバイスは、実際的な応用において以下のような問題を必然的に有する。すなわち、加熱体が冷却パイプラインと直接接触していることから、冷却パイプラインへの冷却水の導入が非プロセス時間の間にのみ可能であり、高温プロセスの間における導入は不可能であるか、もしくは冷却パイプライン内の水が沸騰することになる。しかしながら、プロセスの間における冷却パイプラインの故障は、生成された熱が遅れることなく効果的に排出されることが不可能になることから、加熱体の温度の漸進的な上昇をもたらしかねない。その結果、ウィスカ欠陥が増加し、製品収率が深刻な影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この開示には、既存のテクノロジの技術的な問題の1つを少なくとも解決することが意図されている。この開示は、加熱体に対する安定した温度コントロールを実現し、ウィスカ欠陥を効果的に減らし、かつ製品収率を向上させることが可能な静電チャックおよび反応チャンバを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示の実施態様は、この開示の意図された目的を実現するための静電チャックを提供する。静電チャックは、断熱層と、その断熱層のボトムに配置された加熱体とを含む。前記静電チャックは、さらに、
前記加熱体の下側に、前記加熱体から間隔が開けられて配置された、冷却液を移送するべく構成された冷却パイプラインと;
前記加熱体および前記冷却パイプラインのそれぞれと接続された、前記加熱体から前記冷却パイプラインへ熱を伝達するべく構成された薄壁構造と、
を含む。
【0007】
オプションにおいては、前記薄壁構造が、薄壁形状の伝熱プレートを含む。
【0008】
オプションにおいては、前記薄壁構造が、さらに、リング形状のコネクタを含む。前記リング形状のコネクタは、前記加熱体のボトムに接続され、前記冷却パイプラインの周囲を囲んで配置される。
前記伝熱プレートは、リング形状であり、前記伝熱プレートの内壁および外壁は、前記冷却パイプラインおよび前記リング形状のコネクタと、それぞれ接触している。
【0009】
オプションにおいては、前記伝熱プレートの軸方向の厚さおよび半径方向の長さ、および/または前記伝熱プレートの前記内壁および前記外壁が前記冷却パイプおよび前記リング形状のコネクタとそれぞれ接触する接触面積が、前記伝熱プレートの熱消散効率をコントロールするべく設定される。
【0010】
オプションにおいては、前記伝熱プレートの熱消散効率が、10Wから500Wまでの範囲である。
【0011】
オプションにおいては、前記伝熱プレートと前記冷却パイプラインが、溶接によって接続される。
【0012】
オプションにおいては、前記薄壁構造が、さらに、
前記冷却パイプラインと接触し、前記加熱体の前記ボトムと対向して、前記加熱体によって熱放射態様で放射された熱を吸収して前記熱を前記冷却パイプラインへ伝達するべく構成された吸熱アッセンブリ、
を含む。
【0013】
オプションにおいては、前記吸熱アッセンブリが、前記冷却パイプラインと固定的に接続された吸熱プレートを含む。複数の吸熱シートが、前記吸熱プレートの表面に、前記加熱体と対向して配置されている。
【0014】
オプションにおいては、前記複数の吸熱シートが、異なる直径を伴った複数のリング構造を含む。前記複数のリング構造は、同心に配置される。
【0015】
オプションにおいては、前記冷却パイプラインが、前記吸熱プレートの軸周りに配置される。
【0016】
オプションにおいては、前記冷却パイプラインと前記加熱体の間の垂直距離が、2mmから30mmまでの範囲である。
【0017】
オプションにおいては、前記冷却パイプラインと前記加熱体の間の前記垂直距離が、5mmである。
【0018】
別の技術的解決策として、この開示はさらに、この開示によって提供される静電チャックを含む反応チャンバを提供する。
【0019】
この開示は、以下に示す有益な効果を有する。
【0020】
この開示によって提供される静電チャックは、冷却パイプラインおよび薄壁構造を使用して、プロセスの間にわたる加熱体の熱消散を実現できる。加熱体から間隔を開けて冷却パイプラインを配置することによって、高温プロセスの間における冷却パイプライン内に導入される冷却液の沸騰を回避できる。したがって、ウィスカ欠陥が効果的に低減されるプロセスの間における正常な使用について、冷却パイプラインを保証することができる。その結果、製品収率を向上させ得る。
【0021】
この開示によって提供される反応チャンバは、この開示によって提供される静電チャックを使用することによって、プロセスの間にわたる加熱体のための安定した温度コントロールを実現し得る。この反応チャンバは、プロセスの間にわたり、加熱体のための安定した温度コントロールを実現し、ウィスカ欠陥を効果的に低減し得る。その結果、製品収率を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】既存の静電チャックの温度コントロール・デバイスの概略の構造図である。
【
図2】既存のテクノロジにおける加熱体温度とウィスカ欠陥の増加傾向を示した概略のグラフである。
【
図3】この開示の第1の実施態様に従った静電チャックの温度コントロール・デバイスの概略の構造図である。
【
図4】この開示の第2の実施態様に従った静電チャックの温度コントロール・デバイスの概略の構造図である。
【
図5】この開示の第2の実施態様に従った熱吸収アッセンブリの概略の上面図である。
【
図6】この開示の第2の実施態様に従った静電チャックの概略の熱フロー図である。
【
図7】この開示の第2の実施態様に従った加熱体温度とウィスカ欠陥の増加の傾向を示した概略のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この分野における当業者が、この開示の技術的解決策をより良好に理解するために、この開示によって提供される静電チャックおよび反応チャンバを、次に、添付図面との関連から詳細に説明する。
【0024】
図1は、既存の静電チャックの温度コントロール・デバイスの概略の構造図である。
図1に示されているとおり、この温度コントロール・デバイスは、静電チャックの断熱層のボトムに配置され、かつ熱を提供するべく構成された加熱体1と、加熱体1のボトムに配置され、かつ加熱体1を冷却するべく構成された冷却パイプライン2とを含む。
【0025】
アルミニウム(Al)薄膜の堆積プロセスの実施にPVD装置が使用されるとき、Al薄膜の堆積プロセスのプロセス温度は、通常、270℃である。プロセスの間にターゲットからスパッタリングされるターゲット材料は、高いエネルギを担持していることがあり得る。ターゲット材料がウェファ上に堆積されるとき、ウェファの温度が上昇する可能性がある。ウェファの熱を、静電チャックのボトムにある加熱体1へ、静電チャックを通じて伝達することができ、それが加熱体1の温度を上昇させる。しかしながら、加熱体1が冷却パイプ2と直接接触していることから、冷却パイプ2への冷却水の導入は、非プロセス時間の間においてのみ可能であり、高温プロセスの間における冷却パイプ2への冷却水の導入は不可能であるか、もしくは冷却パイプ2内の水が沸騰する可能性がある。しかしながら、プロセスの間における冷却パイプ2の故障は、生成された熱が遅れることなく効果的に排出され得ないために、加熱体1の温度の漸進的な上昇をもたらしかねない。
図2は、既存のテクノロジにおける加熱体の温度上昇とウィスカ欠陥の増加傾向の概略を示している。
図2に示されているとおり、加熱体1の温度が上昇するとき、ウィスカ欠陥が増加し、それが製品収率に深刻な影響を及ぼす。
【0026】
上に述べられている問題を解決するために、この開示は、断熱層を含む静電チャックを提供する。その断熱層は、処理されるべきワークピースの担持に使用され得る。断熱層内には直流(DC)電極を配置することができ、それを、ワークピースとDC電極の間に静電引力を発生させて、処理されるべきワークピースを固定するべく構成することが可能である。いくつかの実施態様においては、断熱層が、セラミック材料(たとえば、Al2O3)から作られる。
【0027】
第1の実施態様
図3を参照すると、この開示の実施態様によって提供される静電チャックは、断熱層(図示せず)および断熱層のボトムに配置される加熱体3を含んでおり、また、冷却パイプライン5および薄壁構造も含んでいる。冷却パイプライン5は、加熱体3の下側に配置され、加熱体3からは間隔が開けられている。すなわち、冷却パイプライン5および加熱体3は、完全に非接触である。薄壁構造は、加熱体3および冷却パイプライン5に接続されており、プロセスの間における加熱体3からの熱を消散させ、かつ冷却パイプライン5へ熱を伝達するべく構成されている。プロセスの間においては、薄壁構造が、事実上、加熱体3からの熱を冷却パイプ5へ、適時的かつ効果的に伝達し得る。それに加えて、冷却機能を実現することが可能な冷却水またはそのほかの冷却液を、冷却パイプ5内へ、最終的に加熱体3からの熱を消散させるべく導入できる。冷却パイプライン5が、加熱体3から間隔を開けて配置されていることから、(1つ以上の)高温プロセスの間における、冷却パイプライン5内へ導入された冷却液の沸騰を回避できる。したがって、プロセスの間にわたって冷却パイプライン5が正常に使用されることを保証できる。その結果、ウィスカ欠陥が効果的に低減され、製品収率を向上させ得る。
【0028】
いくつかの実施態様においては、冷却パイプライン5は、加熱体3の周囲を囲んで配置されて冷却の一様性を向上させ得る。
【0029】
いくつかの実施態様においては、薄壁構造が、リング形状のコネクタ4および薄壁形状の伝熱プレート6を含む。リング形状のコネクタ4は、加熱体3のボトムに接続されており、かつ冷却パイプライン5の周囲を囲んで配置されている。
【0030】
伝熱プレート6は、リング形状であり、伝熱プレート6の内壁および外壁は、冷却パイプ5およびリング形状のコネクタ4と、それぞれ接触している。加熱体3からの熱は、リング形状のコネクタ4を通じて伝熱プレート6へ伝達され、また、伝熱プレート6を通じて冷却パイプライン5へ伝達される。伝熱プレートは、薄壁形状であり、このことは、伝熱プレートの軸方向の厚さが、半径方向の長さよりはるかに小さいことを意味する。
【0031】
伝熱プレート6の薄壁特性によれば、伝熱プレート6がリング形状のコネクタ4を通じて加熱体3と接触できるとしてさえも、伝熱プレート6の熱消散効率が高くなりすぎないようにできる。したがって、冷却パイプライン5の冷却液の沸騰をさらに回避することができる。それに加えて、伝熱プレート6の薄壁特性によれば、伝熱プレート6の構造およびサイズは、伝熱速度を正確にコントロールできるように、平板熱伝達原理の式に従って設計され得る。したがって、最適熱消散効率を獲得するべく、プロセスの間における加熱体3のための安定した温度コントロールが実現され得る。
【0032】
具体的には、上に述べられている平板熱伝達原理の式は、次のとおりである:
Q=λ(T1-T2)tA/δ
これにおいて、Qは、伝熱プレート6によって伝達される秒当たりの熱量を示し、かつJの単位を有し、λは、伝熱プレート6の熱伝導率を示し、かつW/(M・K)の単位を有し、T1-T2は、リング形状のコネクタ4と冷却パイプライン5の間における温度差を示し、かつKの単位を有し、tは、伝熱時間を示し、かつ秒の単位を有し、Aは、接触面積を示し、かつm2の単位を有し、δは、伝熱プレート6の厚さを示し、かつmの単位を有する。
【0033】
たとえば、伝熱プレート6がリング形状のコネクタ4と接触しているところの温度T1は、約250℃であり、伝熱プレート6が冷却パイプライン5と接触しているところの温度T2は、約40℃であり、伝熱プレート6の厚さは、0.2mm、かつ接触面積は、1.256E-4m2である。上のパラメータを平板熱伝達原理の式に代入することによって、秒当たり伝熱プレートによって伝達される熱量Qが計算され、約52Jを得る。すなわち、この動作条件の下における伝熱プレート6の熱消散効率は、52Wである。
【0034】
上記の原理に基づき、伝熱プレート6のサイズおよび接触面積を変更することによって、熱消散効率を10Wから500Wの範囲内においてコントロールすることが可能である。
【0035】
上に述べられている平板熱伝達原理の式によれば、伝熱プレート6の軸方向の厚さおよび半径方向の長さ、および/または伝熱プレート6の内および外壁が、冷却パイプ5およびリング形状のコネクタ4とそれぞれ接触している接触面積を設定することによって、伝熱プレートの熱消散効率がコントロールされ得る。
【0036】
いくつかの実施態様においては、伝熱プレート6と冷却パイプライン5を、溶接によって接続することができる。それに加えて、伝熱プレート6とリング形状のコネクタ4もまた溶接によって接続するか、または互いに単純に取り付けることが可能である。
【0037】
いくつかの実施態様においては、リング形状のコネクタ4をベローズに接続して、チャンバの真空シールを達成できる。具体的に述べれば、リング形状のコネクタ4は、伝熱リングも含み得る。その伝熱リングの上側端部が加熱体3のボトムに接続されており、その伝熱リングの下側端部が、リング形状の突出部を含んでいる。リング形状の突出部は、伝熱リングの内壁に関して突出しており、伝熱プレート6と接触している。それに加えて、上側フランジがベローズのトップに配置され、リング形状の突出部によりシールされ、かつそれと接続される。下側フランジがベローズのボトムに配置され、反応チャンバのボトム・チャンバ壁によりシールされ、かつそれと接続される。それに加えて、スルーホールが、ボトムのチャンバ壁に設けられている。このスルーホールは、ベローズの内側に位置する。昇降シャフトが、チャンバの外側からチャンバの内側へ、スルーホールを通って垂直上向きに延びている。この昇降シャフトには、ベローズの内側でスリーブが被着される。昇降シャフトの上側端部は、上側フランジに接続されており、昇降シャフトの下側端部は、駆動源に接続されている。その駆動源によって昇降シャフトが駆動されて、静電チャックを駆動して上下動させる。したがって、チャンバのシールが確保され得る。
【0038】
いくつかの実施態様においては、リング形状のコネクタ4のリング形状の突出部と上に述べられている上側フランジをシールし、溶接によって接続することができる。そのシール方法は、高い真空と粒状度が求められる高温チャンバに適用することが可能である。
【0039】
いくつかの実施態様においては、冷却パイプライン5と加熱体3の間の距離が、2mmから30mmまでの範囲であり、好ましくは5mmである。その範囲内においては、高温動作の間における冷却パイプライン5内に導入される冷却液の沸騰が回避され得て、加熱体3からの熱を、遅れることなく効果的に消散させ得る。
【0040】
いくつかの実施態様においては、伝熱プレート6が、リング形状のコネクタ4を通じて加熱体3の冷却を実現できるが、この開示が、これに限定されることはない。実際的な応用においては、リング形状のコネクタ4を省略することもできる。伝熱プレート6は、加熱体3および冷却パイプライン5に接続することができる。したがって、伝熱プレート6が、加熱体3からの熱を冷却パイプライン5へ伝達することもできる。それに加えて、伝熱プレート6の薄壁特性の助けを借りて、伝熱プレート6が加熱体3と直接接触している場合でさえ、冷却パイプ5内の冷却液の沸騰を生じさせることは可能でない。それにより、プロセスの間における加熱体3の冷却を実現できる。
【0041】
注意する必要があるが、いくつかの実施態様においては、薄壁構造が、薄壁形状の伝熱プレート6を含む。しかしながら、この開示が、これに限定されることはない。実際的な応用においては、薄壁構造は、それが冷却パイプライン5内の冷却液が沸騰しないことを確保する一方、加熱体3の熱消散を実現することが可能である限りにおいて、任意のそのほかの構造も含み得る。
【0042】
第2の実施態様
図4を参照すると、この開示の実施態様によって提供される静電チャックが、第1の実施態様に基づいてなされた改良を含む。具体的に述べれば、この静電チャックもまた、断熱層、断熱層のボトムに配置された加熱体3、冷却パイプライン5、リング形状のコネクタ4、および伝熱プレート6を含んでいる。これらの構成要素の構造および機能は、第1の実施態様の中で詳細に説明されていることから、ここでは説明しない。
【0043】
いくつかの実施態様においては、その静電チャックが、さらに吸熱アッセンブリを含む。吸熱アッセンブリは、冷却パイプライン5と接触しており、かつ加熱体のボトムと対向して配置されている。吸熱アッセンブリは、加熱体3によって熱放射態様で放射される熱を吸収し、その熱を冷却パイプライン5へ伝達するべく構成される。
【0044】
吸熱アッセンブリの助けを借りて、加熱体3の熱消散が、特に、加熱体3の中心エリアの熱消散がさらに増加され得る。したがって、中心エリアの熱消散レートは、加熱体3の中心エリアと縁エリアの間における温度差を補償するように、縁エリアの熱消散レートより速くすることができる(プロセスの間における中心エリアの温度上昇は、より深刻である)。その結果、加熱体3の温度の一様性が向上され、また処理されるべきワークピースの温度の一様性が向上され得る。
【0045】
いくつかの実施態様においては、吸熱アッセンブリが吸熱プレート7を含む。吸熱プレート7は、冷却パイプライン5と固定的に接続されている。それに加えて、複数の吸熱シート8が吸熱プレート7の表面に配置され、加熱体3と対向している。加熱体4からの熱は、熱放射および空気の熱対流を通じて吸熱シート8に伝わり、吸熱プレート7を通じて冷却パイプライン5に伝わり得る。
【0046】
いくつかの実施態様においては、
図5に示されているとおり、複数の吸熱シート8は、内径が異なる複数のリング構造を含む。複数のリング構造は、同心に配置される。その結果、加熱体3の冷却の一様性が向上され、加熱体3の温度の一様性がさらに向上され得る。
【0047】
当然のことながら、実際的な応用においては、具体的なニーズに応じて吸熱シートのサイズ(高さ、厚さ、間隔、分布位置等を含む)を設計することが可能である。
【0048】
いくつかの実施態様においては、伝熱の一様性を向上させるために、冷却パイプライン5が、吸熱プレート7の軸周りに配置される。
【0049】
それに加えて、中心孔71が吸熱プレート7に配置されており、静電チャックへの、またはそこからのDC電極または加熱電極の配線がなされるべく構成されている。
【0050】
以下においては、PVDプロセスを例にとり、この開示の実施態様によって提供される静電チャックの熱フロー分布について詳細に説明する。
図6を参照するが、PVDプロセスが実施されるとき、ターゲット9がプラズマ照射されて金属イオンが生成される。金属イオンは、ターゲット9からウェファ11の表面へ移動し、特定の量のエネルギを運ぶ。そのエネルギは、金属イオンがウェファ11と接触した後に熱に変換され、それがウェファ11へ伝達され得る。このとき、ウェファ11の中心エリアがより多くのエネルギを獲得し、ウェファ11の縁エリアがより少ないエネルギしか獲得できないことはあり得る。ウェファ11は、そのエネルギを静電チャックの断熱層12へ伝達できる。断熱層12は、そのエネルギを加熱体3へ伝達できる。加熱体3からの熱は、同時に2つの経路を通って冷却パイプライン5へ伝達され、冷却パイプライン5内の冷却液を通じて消散され得る。第1の経路は、リング形状のコネクタ4を通じて伝熱プレート6へ熱を伝導し、その後、冷却パイプ5へ伝達できる経路である。第2の経路は、熱放射および空気の熱対流を通じて吸熱シート8および吸熱プレート7へ熱を伝達し、その後、冷却パイプライン5へ伝達できる経路である。
【0051】
図7に示されているとおり、この開示の実施態様によって提供される静電チャックを使用することによって、プロセスの間にわたって、加熱体3の温度が基本的に一定に維持される。熱平衡が実現される。したがって、ウィスカ欠陥が効果的に低減され得る。
【0052】
別の技術的解決策として、この開示は、反応チャンバも提供する。その反応チャンバは、この開示の実施態様によって提供される静電チャックを含む。
【0053】
具体的に述べれば、いくつかの実施態様においては、
図6に示されているとおり、反応チャンバ10がPVDチャンバを含む。ターゲットは、反応チャンバ10内に配置される。静電チャックは、ターゲット9の下方に配置される。静電チャックは、ウェファ11を担持するべく構成された断熱層12を含む。断熱層12は、圧力リング13によって加熱体3に固定され得る。
【0054】
リング形状のコネクタ4が、加熱体3のボトムに接続され、冷却パイプライン5の周囲を囲んで配置される。いくつかの実施態様においては、リング形状のコネクタ4が、チャンバの真空シールを実現するべく構成されたベローズ15に接続される。具体的に述べれば、リング形状のコネクタ4は、伝熱リングを含み得る。その伝熱リングの上側端部は、加熱体3のボトムに接続されており、その伝熱リングの下側端部にはリング形状の突出部が配置されている。リング形状の突出部は、伝熱リングの内壁に関して突出しており、伝熱プレート6と接触している。それに加えて、上側フランジがベローズ15のトップに配置され、リング形状の突出部によりシールされ、かつそれと接続される。下側フランジがベローズ15のボトムに配置され、反応チャンバのボトム・チャンバ壁にシールされて接続されているか、または反応チャンバ10の外側まで延び、昇降シャフト(図示せず)にシールされて接続されている。それに加えて、スルーホールが、ボトムのチャンバ壁に設けられている。このスルーホールは、ベローズ15の内側に位置する。昇降シャフトは、チャンバの外側からチャンバの内側へ、スルーホールを通って垂直上向きに延びている。この昇降シャフトには、ベローズ15の内側でスリーブが被着される。昇降シャフトの上側端部は、上側フランジと接続される。昇降シャフトの下側端部は、駆動源と接続される。その駆動源によって昇降シャフトが駆動されて、静電チャックを駆動して上下動させる。したがって、チャンバのシールが確保され得る。
【0055】
この開示によって提供される反応チャンバは、上に述べられている、この開示によって提供される静電チャックを使用することによって、プロセスの間にわたる加熱体の安定した温度コントロールを実現できる。したがって、ウィスカ欠陥が効果的に低減されるだけでなく、最適温度効率も獲得することが可能である。
【0056】
上記の実施態様が単に、この開示の原理の例証に使用された例示的な実施態様に過ぎず、この開示がそれに限定さないことは理解可能である。この分野の当業者は、この開示の精神および本質からの逸脱を伴うことなしに多様な修正や改良を行い得る。それらの修正および改良もまた、この開示の範囲内である。
【符号の説明】
【0057】
1 加熱体
2 冷却パイプ、冷却パイプライン
3 加熱体
4 リング形状のコネクタ
5 冷却パイプ、冷却パイプライン
6 伝熱プレート
7 吸熱プレート
8 吸熱シート
9 ターゲット
10 反応チャンバ
11 ウェファ
12 断熱層
13 圧力リング
15 ベローズ
71 中心孔