(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-12
(45)【発行日】2023-05-22
(54)【発明の名称】燃料電池セル、燃料電池システム、燃料電池セル製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1286 20160101AFI20230515BHJP
H01M 8/1213 20160101ALI20230515BHJP
H01M 8/1226 20160101ALI20230515BHJP
H01M 8/124 20160101ALI20230515BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20230515BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20230515BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230515BHJP
【FI】
H01M8/1286
H01M8/1213
H01M8/1226
H01M8/124
H01M4/86 T
H01M4/86 U
H01M4/88 T
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/12 102Z
(21)【出願番号】P 2021554503
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043686
(87)【国際公開番号】W WO2021090441
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹子 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 憲之
(72)【発明者】
【氏名】安齋 由美子
(72)【発明者】
【氏名】右高 園子
(72)【発明者】
【氏名】横山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 有俊
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 徹
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-059496(JP,A)
【文献】特開2018-174117(JP,A)
【文献】特開2013-033617(JP,A)
【文献】特開2004-158313(JP,A)
【文献】特開2001-236970(JP,A)
【文献】特開2003-123773(JP,A)
【文献】特開2002-222659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/12
H01M 8/02
H01M 8/24
H01M 4/86
H01M 4/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルであって、
開口部を有する支持基板、
前記支持基板上に配置され前記開口部を覆う第1電極層、
前記第1電極層上に配置され1000nm以下の厚さを有する固体電解質層、
前記固体電解質層上に配置された第2電極層、
を備え、
前記第1電極層のうち前記開口部を覆う部分の少なくとも一部は、多孔質構造を有し、
前記第1電極層のうち前記開口部を覆う部分以外の少なくとも一部は非多孔質構造を有し、
前記多孔質構造は金属の酸化物によって構成されているとともに、前記非多孔質構造は同じ金属の非酸化物によって構成されているか、
または、
前記多孔質構造は金属の非酸化物によって構成されているとともに、前記非多孔質構造は同じ金属の酸化物によって構成されている
ことを特徴とする燃料電池セル。
【請求項2】
前記多孔質構造は、前記第1電極層の膜厚方向に沿って複数の空孔を有するとともに、前記第1電極層の面内方向に沿って複数の空孔を有する
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記第1電極層は、
多孔質の白金層、多孔質のニッケル層、多孔質のコバルト層、多孔質のチタン層、多孔質の鉄層、多孔質のパラジウム層、多孔質のイリジウム層、多孔質のルテニウム層、多孔質の金層、
のうち少なくともいずれかによって形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記第1電極層は、白金と卑金属の混合材料または白金と貴金属の混合材料によって形成されており、
前記第1電極層のうち前記卑金属によって形成されている部分および前記第1電極層のうち前記貴金属によって形成されている部分は、前記多孔質構造を形成する空孔を有しており、
前記卑金属は、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、のうち少なくともいずれかであり、
前記貴金属は、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、金、のうち少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項5】
前記第1電極層は、白金層と金属層と前記多孔質構造を有し、
前記多孔質構造は、前記開口部を覆う領域に形成されており、
前記多孔質構造は、白金と前記金属の酸化物の混合材料によって形成されており、
前記金属は、チタン、コバルト、ニッケル、鉄、ジルコニウム、セリウム、のうち少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項6】
前記第1電極層は、白金と金属の混合材料によって形成されており、
前記多孔質構造は、前記開口部を覆う領域に形成されており、
前記多孔質構造は、白金と前記金属の酸化物の混合材料によって形成されており、
前記金属は、チタン、コバルト、ニッケル、鉄、ジルコニウム、セリウム、のうち少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項7】
前記燃料電池セルはさらに、前記支持基板と前記固体電解質層との間に配置された絶縁層を備え、
前記開口部は、前記絶縁層によって複数の区画に区分されている
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項8】
前記燃料電池セルはさらに、前記第1電極層と接した配線を備え、
前記開口部は、前記配線によって複数の区画に区分されている
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項9】
前記支持基板は、空孔を有する多孔質基板であり、
前記多孔質基板は、多孔質金属基板、多孔質セラミック基板、多孔質半導体基板、のうち少なくともいずれかを用いて形成されており、
前記開口部は、前記空孔によって形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項10】
前記第2電極層は、多孔質構造を有し、
前記燃料電池セルはさらに、前記第2電極層のうち前記固体電解質層と接していない側の面上に配置された配線を備える
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項11】
前記固体電解質層の膜厚は、前記第1電極層の膜厚よりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池セル。
【請求項12】
請求項1記載の燃料電池セル、
前記燃料電池セルに対してガスを供給する供給口、
前記ガスを排出する排出口、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項13】
燃料電池セルを製造する方法であって、
支持基板上に第1電極層を形成する工程、
前記第1電極層上に1000nm以下の固体電解質層を成膜する工程、
前記固体電解質層上に第2電極層を形成する工程、
前記固体電解質層を形成した後、前記第1電極層の下表面に開口部を形成することによって前記第1電極層の下表面を露出させる工程、
酸化雰囲気内または還元雰囲気内で熱処理することによって前記開口部で下表面が露出している領域の前記第1電極層を多孔質化し、下表面が露出していない領域の前記第1電極層は多孔質化せずそのまま残す工程、
を有する
ことを特徴とする燃料電池セル製造方法。
【請求項14】
前記第1電極層を形成する工程においては、
白金酸化物、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化チタン、酸化鉄、酸化パラジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化金、のうち少なくともいずれかを含む材料を成膜することによって前記第1電極層を形成し、
または、
白金と酸化ニッケルの混合物、白金と酸化コバルトの混合物、白金と酸化チタンの混合物、白金と酸化鉄の混合物、白金と酸化パラジウムの混合物、白金と酸化イリジウムの混合物、白金と酸化ルテニウムの混合物、白金と酸化金の混合物、のうち少なくともいずれかを含む材料を成膜することによって前記第1電極層を形成し、
前記
第1電極層を多孔質化する工程においては、
前記第1電極層を還元雰囲気内で熱処理して前記第1電極層内の酸化物を還元させることにより、前記
第1電極層を多孔質化する
ことを特徴とする請求項13記載の燃料電池セル製造方法。
【請求項15】
前記第1電極層を形成する工程においては、
白金層とチタン層、白金層とコバルト層、白金層とニッケル層、白金層と鉄層、白金層とジルコニウム層、白金層とセリウム層、のうち少なくともいずれかを成膜することによって前記第1電極層を形成し、
または、
白金とチタンの混合材料、白金とコバルトの混合材料、白金とニッケルの混合材料、白金と鉄の混合材料、白金とジルコニウムの混合材料、白金とセリウムの混合材料、のうち少なくともいずれかを成膜することによって前記第1電極層を形成し、
前記
第1電極層を多孔質化する工程においては、
前記第1電極層を酸化雰囲気内で熱処理して前記第1電極層内の金属を酸化させることにより、前記
第1電極層を多孔質化する
ことを特徴とする請求項13記載の燃料電池セル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質層を成膜プロセスによって形成する固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2003-59496号公報(特許文献1)、Journal of Power Sources 194(2009)119-129(非特許文献1)がある。
【0003】
非特許文献1は、薄膜成膜プロセスによって燃料電池膜のアノード層、固体電解質層、カソード層を形成するセル技術について記載している。固体電解質を薄膜化することにより、イオン伝導度を向上し発電効率を向上することができる。固体電解質のイオン伝導度は活性化型の温度依存性を示す。したがって、イオン伝導度は高温で大きく、低温では小さい。固体電解質の薄膜化により、低温でも充分大きなイオン伝導度が得られ、実用的な発電効率が実現できる。固体電解質層としては、例えばイットリアなどをドーピングしたジルコニアであるYSZ(Yttria Stabilized Zirconia)が用いられることが多い。化学的安定性に優れていて、燃料電池の内部リーク電流の原因となる電子、ホールによる電流が少ないという長所があるためである。アノード層、カソード層として多孔質の電極を使用することにより、ガス、電極、固体電解質が互いに接する三相界面を増加させることができ、電極界面で生じる分極抵抗による電力損失を抑制することができる。
【0004】
多孔質の下部電極形成には課題がある。多孔質の下部電極上に固体電解質層を成膜すると、下地となる下部電極の凹凸の影響を受けて固体電解質層には、平均膜厚と比較して薄い箇所が生じる。上述の三相界面を形成するために、多孔質の下部電極層の空孔部は膜厚方向に貫通しているので、下部電極表面の凹凸は下部電極層の膜厚程度である。したがって、特に下部電極の膜厚程度、典型的には1マイクロメートル以下に固体電解質層を薄膜化すると、平均膜厚よりも極端に薄い箇所が形成される。固体電解質層の上層に上部電極層を形成した際に、固体電解質層の薄い箇所を介して上下の電極間でショートする確率が急増する。上下電極間でショートが生じると、燃料電池の動作時に電力を外部に取り出して利用することができなくなる。
【0005】
非特許文献1は、基板上に形成した平坦な絶縁膜上に固体電解質層を形成した後、固体電解質層の下部の基板と絶縁膜を除去し、基板の裏面側から多孔質の下部電極層を成膜する技術を開示している。多孔質の下部電極上へ固体電解質層を形成する場合、充分な厚さの固体電解質層を形成することにより、上下電極間のショートを回避できるが、固体電解質層が厚いとイオン伝導度が低くなり内部抵抗が増大するので、電力損失の増加、つまり出力電力の低下が生じる。
【0006】
特許文献1は、不純物を混入させた下部電極層上に固体電解質層を形成した後に、混入させた不純物を高温の酸化雰囲気、プラズマ処理、薬液処理などによって除去することにより、下部電極層を多孔質にする技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Journal of Power Sources 194(2009)119-129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非特許文献1に記載されているように下部電極を基板の裏面から成膜することにより、下部電極層の多孔質化と固体電解質層の薄膜化は両立できるが、後述するように下部電極側の開口率が低下するので出力電力が低下する。したがって、基板の固体電解質層が形成される側に下部電極層を多孔質で形成する必要がある。
【0010】
特許文献1の方法は、下部電極を成膜した後に固体電解質層を形成し、その後で下部電極層を高温の熱処理、プラズマ処理、薬液処理で多孔質化している。固体電解質層の成膜時には問題は生じないが、1000℃での熱処理など固体電解質層にとって過酷なプロセス処理が必要となるので、固体電解質層を1マイクロメートル以下に薄膜化した場合は特に、固体電解質層が薄くなるほど不良が生じる確率が増加する。薄膜固体電解質、アノード層、カソード層など燃料電池の構成部品に悪影響を及ぼさない方法で電極を多孔質化する必要がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、三相界面を形成できるように下部電極層を多孔質化し、なおかつ固体電解質層を1マイクロメートル以下に薄膜化することにより、固体酸化物形燃料電池の出力電力を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る燃料電池セルは、支持基板に形成された開口部を覆う位置に第1電極層を備えるとともに、1000nm以下の厚さを有する固体電解質層を備え、前記第1電極層のうち前記開口部を覆う領域の少なくとも一部は多孔質である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る燃料電池セルによれば、発電効率が高く、低温で動作可能な固体酸化物形燃料電池を提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】薄膜化した固体電解質層を備える燃料電池セルの一般的な構造を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る薄膜プロセス型SOFCを用いた燃料電池モジュールの構成例を示す概略図である。
【
図3】遮蔽板Partitionを燃料電池Fuel Cell側から見た図である。
【
図4】燃料電池セルを遮蔽板Partitionの裏側から見た図である。
【
図5】実施形態1に係る燃料電池セル1の構成例を示す概略図である。
【
図6】
図5に示す多孔質の下部電極層20を形成する方法の1例について説明する図である。
【
図7】
図5に示す多孔質の下部電極層20を形成する方法の1例について説明する図である。
【
図8】下部電極材料の第3のバリエーションを示す図である。
【
図9】下部電極材料の第3のバリエーションを示す図である。
【
図10A】従来技術における燃料電池セルにおける良品率と、本実施形態1に係る燃料電池セル1における良品率の、固体電解質膜厚に対する依存性を示す。
【
図10B】実施形態1に係る燃料電池セル1における有効セル面積と、基板の裏面側から多孔質電極を成膜する従来技術における有効セル面積を比較した図である。
【
図11B】従来技術におけるガス供給経路を説明する図である。
【
図12】実施形態2における燃料電池セルの1例を示す。
【
図13】実施形態2における燃料電池セルの1例を示す。
【
図14】実施形態2における燃料電池セルの1例を示す。
【
図15】実施形態3に係る燃料電池セル1の1例を示す。
【
図16A】実施形態3に係る燃料電池セル1の製造プロセスの一部を示す。
【
図16B】実施形態3に係る燃料電池セル1の製造プロセスの一部を示す。
【
図16C】実施形態3に係る燃料電池セル1の製造プロセスの一部を示す。
【
図18A】実施形態4に係る燃料電池セル1の構成例を示す。
【
図18B】配線11上に多孔質の上部電極層10を形成した例である。
【
図19】実施形態5に係る燃料電池システムの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、複数の類似の部材(部位)が存在する場合には、総称の符号に記号を追加し個別または特定の部位を示す場合がある。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0016】
以下の実施の形態においては、説明上の方向として、X方向、Y方向、およびZ方向を用いる。X方向とY方向とは互いに直交し、水平面を構成する方向であり、Z方向は水平面に対して鉛直の方向である。
【0017】
実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0018】
断面図および平面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。また、断面図と平面図が対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0019】
<薄膜プロセス型燃料電池による発電効率の向上および動作温度の低温化>
図1は、薄膜化した固体電解質層を備える燃料電池セルの一般的な構造を示す図である。発電効率を上げて低温動作を実現するためには、燃料電池用膜電極接合体を構成する固体電解質層を薄膜化する必要があり、それには成膜プロセスで固体電解質層を形成する薄膜プロセス型燃料電池が最適である。アノード電極層、固体電解質層、カソード電極層を全て薄膜化すると、燃料電池用膜電極接合体の機械的強度が弱くなるが、
図1のように基板支持によって補うことができる。基板には例えばシリコン、セラミック、ガラス、金属などを用いることができる。
図1では、基板2上に形成された絶縁膜3の上に固体電解質層100が形成され、その上に上部電極層10が形成されている。さらに基板に形成された開口部50を介して基板2の裏面側から下部電極層20が形成されている。上部電極層10、下部電極層20は多孔質で形成することができる。
【0020】
<実施の形態1:燃料電池の構成>
図2は、本発明の実施形態1に係る薄膜プロセス型SOFC(Solid OxideFuel Cell)を用いた燃料電池モジュールの構成例を示す概略図である。モジュール内のガス流路は、燃料ガスの流路と酸素ガスを含む気体(例えば空気、以下同様)の流路に分離されている。燃料ガスの流路は、Fuel intake、Fuel chamber、Fuel exhaustを含む。空気の流路は、Air intake、Air chamber、Air exhaustを含む。燃料ガスと空気はモジュール内で混ざらないように
図2の遮蔽板Partitionで遮蔽されている。燃料電池セルFuel Cellのアノード電極とカソード電極からはConnectorによって配線が引き出されていて外部負荷External loadに接続される。
【0021】
図3は、遮蔽板Partitionを燃料電池Fuel Cell側から見た図である。燃料電池セルFuel Cellは遮蔽板Partition上に搭載されている。燃料電池セルは1つでもよいが一般には複数個が並べられる。
【0022】
図4は、燃料電池セルを遮蔽板Partitionの裏側から見た図である。遮蔽板Partitionには各々の燃料電池セルFuel Cellごとに穴Holeが形成されていて、燃料電池セルFuel Cellに燃料ガスチャンバFuel Chamberから燃料ガスが供給されるようになっている。
【0023】
図5は、本実施形態1に係る燃料電池セル1の構成例を示す概略図である。燃料電池セル1は、
図2~4に示す燃料電池セルFuel Cellに対応する。シリコン基板2の上表面に絶縁膜3が形成されている。絶縁膜3は例えば、シリコン酸化膜、またはシリコン窒化膜で形成することができる。シリコン基板2の中央部には開口部50が形成されている。シリコン基板2の上層に絶縁膜3を介して下部電極層20が形成されている。下部電極層20は例えば白金で形成することができる。燃料電池セル1が完成した状態においては、下部電極層20を構成する金属は多孔質化されている。下部電極層20に配線を接続するために
図5のように下部電極層20の一部の表面を露出させる。
【0024】
下部電極層20の上層には固体電解質層100となるイットリアをドープしたジルコニア薄膜が形成されている。イットリアのドープ量は例えば3%、あるいは8%とすることができる。固体電解質層100は開口部50を完全に覆うように形成されている。固体電解質層100の膜厚は、本実施形態1の技術を用いることにより、例えば1000nm以下とすることができる。YSZは燃料電池セル1の内部リーク電流となる電子電流やホール電流が高温でも極めて少ないので、固体電解質層100を100nm以下に薄膜化することも可能である。
【0025】
固体電解質層100の上層に上部電極層10が形成されている。上部電極層10は例えば多孔質の白金で形成することができる。
【0026】
以上のように、薄膜プロセス型の燃料電池セル1は、下層から下部電極層20(白金)、固体電解質層100(多結晶YSZ)、上部電極層10(白金)で構成された膜電極接合体を備える。下部電極層20側に例えば水素を含む燃料ガスを供給し、上部電極層10側に例えば空気などの酸化ガスを供給する。供給する2種類のガスは互いに混合しないように、下部電極層20側と上部電極層10側の間はシールする。
【0027】
<実施の形態1:下部電極の形成方法>
図6~
図7は、
図5に示す多孔質の下部電極層20を形成する方法の1例について説明する図である。まずシリコン基板2上にシリコン窒化膜3を形成し、開口部50となる部分のシリコン基板2を除去した下地を用意する。シリコン基板2の上表面のシリコン窒化膜3の上に、下部電極層20となる酸化白金(PtO
2)を例えばスパッタ法を用いて形成する(
図6)。厚さは例えば100ナノメートルとする。成膜直後の酸化白金層は多孔質化されていない。次に固体電解質層100を1マイクロメートル以下の膜厚、例えば100ナノメートルの厚さで形成する。次に上部電極層10となる酸化白金(PtO
2)を例えばスパッタ法を用いて形成する。厚さは例えば100ナノメートルとする。成膜直後の酸化白金層は多孔質化されていない(
図7)。
【0028】
次に、開口部50のシリコン窒化膜3を例えばドライエッチングで除去した後、空気中で500℃程度で熱処理する。熱処理によって酸化白金は還元されて体積収縮し、多孔質の白金となる。このように、下部電極層20を多孔質化することにより、
図5の構造とすることができる。
【0029】
上記の説明では、上部電極層10は下部電極層20と同じ材料を用いて、同じ方法で多孔質化したが、上部電極層10は固体電解質層100の上層に形成するので成膜時に凹凸があっても問題は生じない。つまり成膜時に多孔質化してもよい。
【0030】
図6~
図7の説明では、開口部50の領域のシリコン基板2を下部電極層20となる酸化白金層の形成前に除去したが、下部電極層20となる酸化白金層の形成後に開口部50の領域のシリコン基板2を除去してもよい。また酸化白金を白金に変化させる還元熱処理を開口部50のシリコン窒化膜3を除去した後に実施したが、酸化白金を白金に変化させる還元熱処理を実施した後に開口部50のシリコン窒化膜3を除去してもよい。
【0031】
<実施の形態1:下部電極材料のバリエーション>
上記の説明では下部電極層20を多孔質の白金で形成したが、別の材料を用いることもできる。また、用いる製造プロセスは大きく分けて、金属酸化物の還元処理による体積収縮を利用して多孔質化させる方法と、逆に金属の酸化処理による体積膨張を利用して多孔質化させる方法がある。
【0032】
第1のバリエーションは、下部電極層20を酸化ニッケルの状態で成膜し、固体電解質層100を形成した後に、500℃程度で還元処理することにより、酸化ニッケルをニッケルに変化させ多孔質化した構造である。酸化ニッケル層は成膜時には多孔質ではなく、固体電解質層100を形成した後の還元処理によって多孔質化する。還元処理は上部電極層10を形成する前に実施することもできるし、上部電極層10を形成した後に実施することもできる。第1のバリエーションでは酸化ニッケルの代わりに酸化コバルト、酸化チタン、酸化鉄など他の金属酸化物を用いることもできる。酸化ニッケルの代わりに、例えば酸化パラジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化金、などの貴金属を用いることもできる。
【0033】
第2のバリエーションは、下部電極層20を酸化ニッケルと白金の混合物の状態で成膜し、固体電解質層100を形成した後に、500℃程度で還元処理することにより、混合物中の酸化ニッケルをニッケルに変化させ多孔質化した構造である。酸化ニッケルと白金の混合物層は成膜時には多孔質ではなく、固体電解質層100を形成した後の還元処理によって多孔質化する。還元処理は上部電極層10を形成する前に実施することもできるし、上部電極層10を形成した後に実施することもできる。第2のバリエーションでは酸化ニッケルの代わりに酸化コバルト、酸化チタン、酸化鉄など他の金属酸化物と白金との混合物層を用いることもできる。酸化ニッケルの代わりに、例えば酸化パラジウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化金、などの貴金属の酸化物と白金との混合物層を用いることもできる。
【0034】
図8~
図9は、第3のバリエーションを示す図である。第3のバリエーションは、下部電極層20を白金層と金属チタン層の積層で形成し、固体電解質層100を形成した後に、500℃程度で酸化処理することにより、白金層と金属チタン層の積層膜中の金属チタンを酸化チタンに変化させ多孔質化した構造である。白金を下層に成膜した後、金属チタンを成膜し、その上に固体電解質層100を形成する(
図8)。金属チタンが酸化する際に体積膨張し白金の粒界に侵入することにより、白金間にスペースが形成され多孔質化する。開口部50のシリコン窒化膜3を除去してから酸化処理することにより、開口部50とその縁の部分で選択的に多孔質化が進む(
図9)。白金層と金属チタン層の積層膜は成膜時には多孔質ではなく、固体電解質層100を形成した後の酸化処理によって多孔質化する。酸化処理は上部電極層10を形成する前に実施することもできるし、上部電極層10を形成した後に実施することもできる。第3のバリエーションでは金属チタンの代わりに金属コバルト、金属ニッケル、金属鉄、金属ジルコニウム、金属セリウムなど他の金属と白金との積層膜を用いることもできる。金属チタンと同様に酸化処理の際に金属酸化物となって体積膨張し白金の粒界に侵入することで白金間にスペースが形成され多孔質化する。
【0035】
第4のバリエーションは、下部電極層20を白金と金属チタンの混合物層で形成し、固体電解質層100を形成した後に、500℃程度で酸化処理することにより、白金と金属チタンの混合物層中の金属チタンを酸化チタンに変化させ多孔質化した構造である。金属チタンが酸化する際に体積膨張し白金間にスペースが形成され多孔質化する。白金と金属チタンの混合物層は成膜時には多孔質ではなく、固体電解質層100を形成した後の酸化処理によって多孔質化する。酸化処理は上部電極層10を形成する前に実施することもできるし、上部電極層10を形成した後に実施することもできる。第3のバリエーションでは金属チタンの代わりに金属コバルト、金属ニッケル、金属鉄、金属ジルコニウム、金属セリウムなど他の金属と白金との積層膜を用いることもできる。金属チタンと同様に酸化処理の際に金属酸化物となって体積膨張し白金間にスペースが形成され多孔質化する。
【0036】
第1~第4のバリエーションでは、上部電極層10は下部電極層20と同じ材料を用いることもできるし、異なる材料を用いることもできる。上部電極層10は下部電極層20と同様に多孔質化されていない状態で成膜し、成膜後の熱処理で多孔質化することもできるし、多孔質化された状態で成膜してもよい。
【0037】
<実施の形態1:効果>
図10Aは、従来技術における燃料電池セルにおける良品率と、本実施形態1に係る燃料電池セル1における良品率の、固体電解質膜厚に対する依存性を示す。
図10Aに示すように、本実施形態1の技術により固体電解質膜の薄膜化が可能になる。
【0038】
図10Bは、本実施形態1に係る燃料電池セル1における有効セル面積と、基板の裏面側から多孔質電極を成膜する従来技術における有効セル面積を比較した図である。開口部50の面積は同じとしている。
図10Bに示すように、本実施形態1の技術を用いることで有効セル面積を増加させることができる。
【0039】
図11Aは、本実施形態1の効果を説明する図である。本実施形態1の構造では基板2の表面側のシリコン窒化膜3の上に多孔質な下部電極層20が形成されているので、下部電極層20側から供給される水素は多孔質な下部電極層20をX方向とY方向に伝わって固体電解質層100に供給される。そのため開口部50の面積の範囲を超えた領域も発電に寄与する。その結果、本実施形態1の構造では有効セル面積は開口部50の面積よりも大きくなる。このように開口部の面積を超える有効面積が得られるのは、本実施形態1で形成する多孔質の下部電極層20の空孔部がZ方向(下部電極層20の膜厚方向)だけではなく、X方向とY方向(下部電極層20の膜面内方向)にも延伸しているからである。
【0040】
図11Bは、従来技術におけるガス供給経路を説明する図である。従来技術の場合には固体電解質層が基板2の表面側のシリコン窒化膜3の上に形成されている。そのため、多孔質な下部電極層20の内部を拡散する水素は開口部50の面積の範囲でしか固体電解質層に供給されない。むしろ開口部50の縁の部分で下部電極層20が厚膜化すると有効面積は開口部50の面積よりも小さくなる。
【0041】
以上の説明においては、水素を下部電極側、酸素を上部電極側に供給する場合について説明したが、酸素を下部電極側、水素を上部電極側に供給する場合でも下部電極側のガス供給される面積に同様に違いが生じるので、本実施形態1の有効セル面積は従来技術と比較して大きい。
【0042】
以上説明したように、本実施形態1に係る燃料電池セル1は、基板2の表面側に多孔質の下部電極を形成する従来技術と比較すると良品率を向上することができ、基板2の裏面側から多孔質の下部電極を形成する従来技術と比較すると有効セル面積を増加させることができる。
【0043】
<実施の形態2>
実施形態1では、
図5に示したように基板2に1つの開口部50を形成したが、開口部を複数に分割して形成することもできる。実際、アノード層、固体電解質層、カソード層の3層を全て薄膜で形成すると、これらの積層膜の機械的強度は弱いので大面積の開口部1つを形成するのは困難になる。
【0044】
そこで非特許文献1に記載されているように、例えば、(a)各々の開口部を小面積にして複数の開口部を基板2に形成する方法、(b)基板2に大きな開口部50を形成し開口部50の内部では基板2と絶縁膜3を全て除去するのではなくグリッド状に残存させる方法、(c)基板2に大きな開口部50を形成し開口部50の内部では下部電極層20の下面に集電用の電極配線をグリッド状に残存させる方法、を用いることができる。
【0045】
このように複数の開口部50を形成する場合にも多孔質の下部電極層20は有用である。シリコン基板2上に絶縁膜を形成し、その上に実施形態1と同様に下部電極層20を酸化白金(またはバリエーション1~4で記載した材料)で形成する。下部電極層20は成膜時には多孔質化されていないのは実施形態1と同様である。
【0046】
固体電解質層100を下部電極層20の上層に形成した後に、複数の開口部を形成し、還元雰囲気または酸化雰囲気で熱処理を実施して実施形態1の場合と同様に下部電極層20を多孔質化する。
【0047】
図12は、本実施形態2における燃料電池セルの1例を示す。下部電極層20と固体電解質層100は複数の開口部51に渡って連続的に形成しておくことができる。
図12においては複数の開口部51が形成されている。実施形態1と同様に下部電極層20に配線を接続するために
図12のように下部電極層20の一部の表面を露出させる。
【0048】
図13は、本実施形態2における燃料電池セルの1例を示す。開口部50の内部でシリコン窒化膜3を一部除去して小さな開口部51を複数形成することもできる。
図13では開口部51間はシリコン窒化膜3だけで区切られているが、シリコン基板2をシリコン窒化膜の下部に一部残しても良い。
図12と同様に下部電極層20に配線を接続するために
図13でも下部電極層20の一部の表面を露出させる。
【0049】
図14は、本実施形態2における燃料電池セルの1例を示す。
図12と
図13においては隣接する開口部51間のシリコン窒化膜3とシリコン基板2は燃料電池膜を支持する役割しかなかったが、
図14のようにシリコン窒化膜3の代わりに下部電極層20の下表面に下部電極配線21を形成することにより、集電電極の役割と燃料電池膜支持の両方の役割を持たせることができる。
【0050】
本実施形態2も、実施形態1と同様に、固体電解質層100を薄膜化した場合に従来技術と比較して高い良品率を維持することができる。実施形態1と比較して開口部の面積が小さいので、縁の部分の影響が相対的に強まる。したがって、基板2の裏面から多孔質下部電極を成膜する従来技術と比較した有効セル面積の増加の割合は大きくなる。
【0051】
<実施の形態3>
実施形態1と2においては、開口部50と51の両方あるいはどちらか一方を基板2の裏面側から形成したが、多孔質基板を用いると、開口部がもともと基板に形成されているので開口部の形成を不要にすることができる。多孔質基板は例えば、ニッケルやSUSなどの金属、シリコンなどの半導体、アルミナ、ガラスなどの絶縁体のものを用いることができる。
【0052】
図15は、本実施形態3に係る燃料電池セル1の1例を示す。下部電極層20が多孔質基板2の表面に形成され、その上層に固体電解質層100と上部電極層10が形成されている。多孔質基板2を絶縁体で形成する場合には、下部電極層20と配線を接続するために下部電極層20の一部を露出させる。多孔質基板2に金属を用いる場合は、下部電極層20と外部へつながる配線を基板2を介して電気的に接続することができるので、下部電極層20の上表面側の露出部は不要である。
【0053】
図16A~
図16Cは、本実施形態3に係る燃料電池セル1の製造プロセスの一部を示す。
図15の下部電極層20は実施形態1~2と同様に、完成時には多孔質だが固体電解質層100の成膜時には多孔質化されていない。多孔質基板2は表面に凹凸があるが、下部電極層20を例えば酸化白金の状態で多孔質基板2の孔径よりも厚く成膜することにより、表面の凹凸を非常に小さくすることができる(
図16A)。次に、固体電解質層100を1マイクロメートル以下の膜厚、例えば100ナノメートル成膜する。次に上部電極層10を多孔質白金で成膜する(
図16B)。次に500℃程度の温度でアニールすると、実施形態1~2と同様に下部電極層20の酸化白金が還元されて体積収縮し多孔質白金に変化する(
図16C)。
【0054】
図16A~
図16Cでは、下部電極層20を酸化白金で成膜した後に固体電解質層100を形成し、酸化白金を還元して多孔質白金層としたが、実施形態1で記載したバリエーション1~4の材料を用いることももちろん可能である。実施形態1~2と同様に、上部電極層10の材料は下部電極層20と同じにすることもできるし別の材料を用いることもできる。
【0055】
図17は、多孔質基板2の作用を説明する図である。本実施形態3の構造においては、基板2の表面に多孔質な下部電極層20が形成されている。下部電極層20側から供給される水素は多孔質な下部電極層20をX方向とY方向に伝わって固体電解質層100に供給される。これにより、多孔質基板2の孔面積の範囲を超えた領域も発電に寄与する。その結果、本実施形態3における有効セル面積は多孔質基板2の孔面積の総和よりも大きくすることができる。このような有効面積の増加が得られるのは、下部電極層20の空孔部がZ方向(下部電極層20の膜厚方向)だけではなく、X方向とY方向(下部電極層20の膜面内方向)にも延伸しているからである。
【0056】
本実施形態3も実施形態1~2と同様に、固体電解質層100を薄膜化した場合に従来技術と比較して高い良品率を維持することができる。以上の説明においては水素を下部電極層20側に供給し、酸素を上部電極層10側に供給する場合について説明したが、酸素を下部電極層20側に供給し、水素を上部電極層10側に供給する場合においても同様の効果が得られる。
【0057】
<実施の形態4>
図18Aは、本発明の実施形態4に係る燃料電池セル1の構成例を示す。
図14においては多孔質の下部電極層20に対して電極配線21を用いた。セル面積が大きくなると、多孔質の下部電極層20の面積も大きくなり、面内抵抗がその面積増加にともなって増加するので、下部電極層20から直接集電すると電圧降下による電力損失が大きくなる。そのような場合に下部電極層20よりも抵抗の小さい配線21を介して集電するのが有用である。このことは、下部電極層20だけでなく上部電極層10についても同様である。そこで
図18Aにおいては、上部電極層10の上面に集電用の配線11を設けた。
【0058】
図14のように配線21を用いる場合、下部電極層20の電力損失は回避できる。さらに上部電極層10の上層に配線11を形成することにより、上部電極層10についても電力損失を抑制できる。このとき、多孔質の上部電極層10は配線11と固体電解質層100の間に形成することが望ましい(
図18A)。これにより、酸素ガスが配線11の下部に多孔質の上部電極層10を介して拡散するので、配線11で覆われた部分も発電に寄与することができる。
【0059】
図18Bは、配線11上に多孔質の上部電極層10を形成した例である。
図18Bの構成においても上部電極層10による電力損失を抑制できるが、発電に寄与する面積は
図18Aと比較して小さい。
【0060】
以上の説明においては、水素を下部電極層20側に供給し、酸素を上部電極層10側に供給する場合について説明したが、酸素を下部電極層20側に供給し、水素を上部電極層10側に供給する場合においても、
図18Aで説明したものと同様の効果が得られる。
【0061】
<実施の形態5>
図2とは異なり、燃料電池セル1の全体に対して、例えば水素を含む燃料ガスと空気などの酸素を含むガスの混合ガスを供給してもよい。この場合、下部電極層20と上部電極層10には同じ混合ガスが供給されるが、電極の形状が異なるので電位差が生じ発電する。下部電極層20と上部電極層10との間で電極材料を変えることにより、起電力を増大させることができる。
【0062】
このような燃料電池をシングルチャンバ型燃料電池と呼ぶ。シングルチャンバ型燃料電池は、燃料ガスを含むガスの系統と、酸素などの酸化剤を含むガスの系統を分離してシールする必要がないので構造が簡単になりシステムコストを低減できるという長所がある。本発明の実施形態5では、燃料電池セル1を含む燃料電池システムを、シングルチャンバ型とした構成例を説明する。
【0063】
図19は、本実施形態5に係る燃料電池システムの構成例である。モジュール内に導入するガスは酸素と燃料ガスの混合ガスであり、混合ガスはMix gas intake、Chamber、Exhaustに沿って流れる。燃料電池セルFuel Cellのアノード電極とカソード電極からはConnectorによって配線が引き出されていて外部の負荷External loadに接続される。燃料電池セルFuel Cellは支持基板Board上に搭載されている。燃料電池セルは1つでもよいが一般には複数個が並べられる。
図19のFuel Cellには実施形態1~4の燃料電池セル1を用いることができる。
【0064】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 燃料電池セル
2 基板
3 絶縁膜
10 上部電極層
20 下部電極層
11 集電配線
12 集電配線
50 開口部
51 開口部
100 固体電解質層