(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ヨーク一体型ボンド磁石の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20230516BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F7/02 A
H01F7/02 E
(21)【出願番号】P 2018182473
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】岡島 弘
(72)【発明者】
【氏名】増澤 正宏
(72)【発明者】
【氏名】栗山 義彦
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-106354(JP,A)
【文献】実開昭64-025716(JP,U)
【文献】特開2017-173035(JP,A)
【文献】特開平08-023668(JP,A)
【文献】特開2018-125517(JP,A)
【文献】実開昭60-147980(JP,U)
【文献】特開2007-187484(JP,A)
【文献】特開2007-271506(JP,A)
【文献】特開2018-037620(JP,A)
【文献】米国特許第6423264(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/02、41/02
H02K 29/00-29/14
G01D 5/00-5/252、5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、
前記成形装置は、円筒状のダイと、上側金型と、下側金型とを備えており、
前記上側金型は、外側から順に円筒状の第1上パンチ、円筒状の第2上パンチ、及び円柱状の上コアを備えた三重構成をなし、
前記下側金型は、外側から順に円筒状の第1下パンチ、円筒状の第2下パンチ、円筒状の第3下パンチ、及び円柱状の下コアを備えた四重構成をなしており、
前記ダイと前記第2下パンチとの間に磁性粉末及び樹脂の混合物を充填する工程と、
外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成され、該突条の複数箇所に切り欠きが形成されており、該切り欠きの断面形状が矩形状またはあり溝状である有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記上コアと前記第3下パンチとで挟持する工程と、
前記混合物を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、
作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記混合物の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記混合物及び前記ヨークを一体化する工程と
を有することを特徴とするヨーク一体型ボンド磁石の製造方法。
【請求項2】
有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、
前記成形装置は、円筒状のダイと、上側金型と、下側金型とを備えており、
前記上側金型は、外側から順に円筒状の第1上パンチ、円筒状の第2上パンチ、及び円柱状の上コアを備えた三重構成をなし、
前記下側金型は、外側から順に円筒状の第1下パンチ、円筒状の第2下パンチ、円筒状の第3下パンチ、及び円柱状の下コアを備えた四重構成をなしており、
前記ダイと前記第2下パンチとの間に磁性粉末を充填する工程と、
外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成され、該突条の複数箇所に切り欠きが形成されており、該切り欠きの断面形状が矩形状またはあり溝状である有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記上コアと前記第3下パンチとで挟持する工程と、
前記磁性粉末を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、
作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記磁性粉末の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記磁性粉末及び前記ヨークを一体化する工程と、
加圧含侵法により、嫌気性樹脂を前記成形体に浸み込ませる工程と
を有することを特徴とするヨーク一体型ボンド磁石の製造方法。
【請求項3】
有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、
前記成形装置は、円筒状のダイと、上側金型と、下側金型とを備えており、
前記上側金型は、外側から順に円筒状の第1上パンチ、円筒状の第2上パンチ、及び円柱状の上コアを備えた三重構成をなし、
前記下側金型は、外側から順に円筒状の第1下パンチ、円筒状の第2下パンチ、円筒状の第3下パンチ、及び円柱状の下コアを備えた四重構成をなしており、
前記ダイと前記第2下パンチとの間に磁性粉末及び樹脂の混合物を充填する工程と、
外周面に、周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部と軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部とが形成されており、前記第1溝部及び第2溝部の断面形状が矩形状またはあり溝状である有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記上コアと前記第3下パンチとで挟持する工程と、
前記混合物を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、
作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記混合物の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記混合物及び前記ヨークを一体化する工程と
を有することを特徴とするヨーク一体型ボンド磁石の製造方法。
【請求項4】
有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、
前記成形装置は、円筒状のダイと、上側金型と、下側金型とを備えており、
前記上側金型は、外側から順に円筒状の第1上パンチ、円筒状の第2上パンチ、及び円柱状の上コアを備えた三重構成をなし、
前記下側金型は、外側から順に円筒状の第1下パンチ、円筒状の第2下パンチ、円筒状の第3下パンチ、及び円柱状の下コアを備えた四重構成をなしており、
前記ダイと前記第2下パンチとの間に磁性粉末を充填する工程と、
外周面に、周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部と軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部とが形成されており、前記第1溝部及び第2溝部の断面形状が矩形状またはあり溝状である有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記上コアと前記第3下パンチとで挟持する工程と、
前記磁性粉末を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、
作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記磁性粉末の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記磁性粉末及び前記ヨークを一体化する工程と、
加圧含侵法により、嫌気性樹脂を前記成形体に浸み込ませる工程と
を有することを特徴とするヨーク一体型ボンド磁石の製造方法。
【請求項5】
前記上コアの下端部の形状は前記ヨークの内部形状に倣っており、前記上コアの下端の突起が前記ヨークの底部に形成された孔に嵌められて、前記ヨークが前記上コアと前記第3下パンチとで挟持されることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のヨーク一体型ボンド磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ状のヨークをボンド磁石と一体化させてなるヨーク一体型ボンド磁石、及び、成形装置を用いて該ヨーク一体型ボンド磁石を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粉末と、該磁性粉末の結合剤としての樹脂とを固化成形してなるボンド磁石は、焼結磁石に比べて、寸法精度が高く、形状自由度が高いという利点がある。このような円筒状のボンド磁石を有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面に一体的に設けてなるヨーク一体型ボンド磁石は、電子機器、カメラ、自動車などにおける各種モータに利用されている。
【0003】
このようなヨーク一体型ボンド磁石及びその製造方法が、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1では、凹部が設けられたカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的にモールド成形されている。特許文献2では、カップ状のヨークの外縁部に鍔部が環状に立設され、鍔部の外周にボンド磁石が一体的に設けられている。これらの特許文献1及び2では何れも射出成形にて、ヨークへのボンド磁石の形成がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭60-147980号公報
【文献】特開平8-23668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヨーク一体型ボンド磁石にあっては、ボンド磁石とカップ状のヨークとの結合強度が低下して、ボンド磁石がヨークから分離するおそれがある。ボンド磁石がヨークから分離した場合、ボンド磁石がヨークの軸長方向に移動したり、ボンド磁石がヨークに対して相対的に回転したりするという不具合が発生する。よって、ヨーク一体型ボンド磁石におけるボンド磁石及びヨークの結合強度の向上が課題となっている。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ボンド磁石とカップ状のヨークとの結合強度が高いヨーク一体型ボンド磁石、及び、このヨーク一体型ボンド磁石を圧縮成形にて製造するヨーク一体型ボンド磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヨーク一体型ボンド磁石は、有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石において、前記ヨークの外周面に、前記ヨークの周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成され、該突条の複数箇所に切り欠きが形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、ヨークの外周面に、周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成されている。よって、軸長方向におけるボンド磁石及びヨークの結合強度は高く、ボンド磁石がヨークの軸長方向に移動するような不具合は生じない。また、突条の複数箇所に切り欠きが形成されている。よって、周方向におけるボンド磁石及びヨークの結合強度は高く、ボンド磁石がヨークに対して相対的に回転するような不具合は生じない。
【0009】
本発明に係るヨーク一体型ボンド磁石は、有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石において、前記ヨークの外周面に、前記ヨークの周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部が形成され、前記ヨークの外周面に、前記ヨークの軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、ヨークの外周面に、周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部が形成されている。よって、軸長方向におけるボンド磁石及びヨークの結合強度は高く、ボンド磁石がヨークの軸長方向に移動するような不具合は生じない。また、ヨークの外周面に、軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部が形成されている。よって、周方向におけるボンド磁石及びヨークの結合強度は高く、ボンド磁石がヨークに対して相対的に回転するような不具合は生じない。
【0011】
本発明に係るヨーク一体型ボンド磁石は、有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石において、前記ヨークの側部に、前記ヨークの径方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、ヨークの側部に、径方向に貫通する貫通孔が形成されている。よって、ボンド磁石及びヨークの結合強度は高く、ボンド磁石がヨークの軸長方向に移動したり、ボンド磁石がヨークに対して相対的に回転したりするような不具合は生じない。
【0013】
本発明に係るヨーク一体型ボンド磁石の製造方法は、有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成され、該突条の複数箇所に切り欠きが形成されている有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記成形装置に配置する工程と、前記成形装置内にて、磁性粉末及び樹脂の混合物を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記混合物の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記混合物及び前記ヨークを一体化する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、磁性粉末及び樹脂の混合物と、外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成され、突条の複数箇所に切り欠きが形成されているヨークとを圧縮成形して作製した成形体を成形装置から抜き出す際に生じる混合物のヨークに対するスプリングバックにより発生する応力を利用して、混合物及びヨークを一体化する。よって、簡単な製造工程にて、ボンド磁石及びヨークの結合強度が高いヨーク一体型ボンド磁石を製造する。
【0015】
本発明に係るヨーク一体型ボンド磁石の製造方法は、有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成され、該突条の複数箇所に切り欠きが形成されている有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記成形装置に配置する工程と、前記成形装置内にて、磁性粉末を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記磁性粉末の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記磁性粉末及び前記ヨークを一体化する工程と、加圧含侵法により、嫌気性樹脂を前記成形体に浸み込ませる工程とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、磁性粉末と、外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する突条が形成され、突条の複数箇所に切り欠きが形成されているヨークとを圧縮成形して作製した成形体を成形装置から抜き出す際に生じる磁性粉末のヨークに対するスプリングバックにより発生する応力を利用して、磁性粉末及びヨークを一体化する。よって、簡単な製造工程にて、ボンド磁石及びヨークの結合強度が高いヨーク一体型ボンド磁石を製造する。また、嫌気性樹脂を成形体に浸み込ませた後に、空気に触れた余分な嫌気性樹脂は洗浄などで容易に除去できるため、高い強度を有した状態で磁性粉末の充填率を高くしたヨーク一体型ボンド磁石を製造する。
【0017】
本発明に係るヨーク一体型ボンド磁石の製造方法は、有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、外周面に、周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部と軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部とが形成されている有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記成形装置に配置する工程と、前記成形装置内にて、磁性粉末及び樹脂の混合物を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記混合物の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記混合物及び前記ヨークを一体化する工程とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、磁性粉末及び樹脂の混合物と、外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部及び軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部が形成されているヨークとを圧縮成形して作製した成形体を成形装置から抜き出す際に生じる混合物のヨークに対するスプリングバックにより発生する応力を利用して、混合物及びヨークを一体化する。よって、簡単な製造工程にて、ボンド磁石及びヨークの結合強度が高いヨーク一体型ボンド磁石を製造する。
【0019】
本発明に係るヨーク一体型ボンド磁石の製造方法は、有底円筒形をなすカップ状のヨークの外周面にボンド磁石が一体的に設けられているヨーク一体型ボンド磁石を、成形装置を用いて製造する方法において、外周面に、周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部と軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部とが形成されている有底円筒形をなすカップ状のヨークを、前記成形装置に配置する工程と、前記成形装置内にて、磁性粉末を前記ヨークと圧縮成形して成形体を作製する工程と、作製した成形体を前記成形装置から抜き出す際に生じる前記磁性粉末の前記ヨークに対するスプリングバックを利用して、前記磁性粉末及び前記ヨークを一体化する工程と、加圧含侵法により、嫌気性樹脂を前記成形体に浸み込ませる工程とを有することを特徴とする。
【0020】
本発明にあっては、磁性粉末と、外周面に周方向の全域または一部域に亘って延在する第1溝部及び軸長方向に亘って延在する複数の第2溝部が形成されているヨークとを圧縮成形して作製した成形体を成形装置から抜き出す際に生じる磁性粉末のヨークに対するスプリングバックにより発生する応力を利用して、磁性粉末及びヨークを一体化する。よって、簡単な製造工程にて、ボンド磁石及びヨークの結合強度が高いヨーク一体型ボンド磁石を製造する。また、嫌気性樹脂を成形体に浸み込ませた後に、空気に触れた余分な嫌気性樹脂は洗浄などで容易に除去できるため、高い強度を有した状態で磁性粉末の充填率を高くしたヨーク一体型ボンド磁石を製造する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のヨーク一体型ボンド磁石によれば、ボンド磁石とヨークとの結合強度が高くて、ボンド磁石がヨークの軸長方向に移動するような不具合、または、ボンド磁石がヨークに対して相対的に回転するような不具合の発生を抑止することができる。また、本発明のヨーク一体型ボンド磁石の製造方法によれば、成形体を成形装置から抜き出す際のスプリングバックを利用してボンド磁石及びヨークを一体化するため、ボンド磁石及びヨーク間の強固な結合がなされたヨーク一体型ボンド磁石を簡単に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ヨーク一体型ボンド磁石を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石におけるヨークを示す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石の製造方法の工程手順を示す断面図である。
【
図5】第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石の製造方法の工程手順を示す断面図である。
【
図6】第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石の製造方法の工程手順を示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石の製造方法の工程手順を示す断面図である。
【
図9】ヨーク一体型ボンド磁石の製造方法における成形体の上側金型及び下側金型の内/外での形状を示す断面図である。
【
図10】第2の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石を示す断面図である。
【
図11】第2の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石におけるヨークを示す斜視図である。
【
図12】第3の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、ヨーク一体型ボンド磁石を示す斜視図である。ヨーク一体型ボンド磁石1は、有底円筒形をなすカップ状のヨーク2と円筒状のボンド磁石3とを一体化して構成されている。ヨーク2の形状の違いにより、本発明のヨーク一体型ボンド磁石1には、第1の実施形態と後述する第2の実施形態及び第3の実施形態とが存在する。
【0025】
図2は、第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1を示す断面図であり、
図3は、第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1におけるヨーク2を示す斜視図である。カップ状のヨーク2は、有底円筒形をなしており、その外周面(外側面)2aに円筒状のボンド磁石3が一体的に設けられている。
【0026】
ヨーク2にあって、例えば、外径、内径、側面の厚さ、全体の長さ、中空部の長さ、底部2bの厚さはそれぞれ、34mm、29mm、2.5mm、13.5mm、11mm、2.5mmである。そして、例えば、ボンド磁石3の長さ、外径、内径はそれぞれ、11mm、40mm、34mmである(
図2参照)。
【0027】
ヨーク2の軸長方向中央の外周面2aには、周方向全域に亘って延在する1つの突条2cが形成されている。この突条2cには、ヨーク2の周方向で4等配する態様にて、4つの切り欠き2dが形成されている。例えば、突条2cの幅、高さはそれぞれ、2mm、1mmであり、各切り欠き2dの長さ、深さはそれぞれ、6mm、0.5mmである。また、ヨーク2の底部2bの中央には、円形の位置決め孔2eが形成されている。
【0028】
なお、上記したヨーク2の各部分の寸法及びボンド磁石3の寸法は一例であり、それらの各寸法は、必要な仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
ヨーク2の材料としては、鉄材(鍛造品、板材のプレス成型品)、珪素鋼、磁性ステンレス鋼などを使用でき、樹脂または樹脂と金属粉末や合金粉末との複合材料を用いてもよい。
【0030】
ボンド磁石3は、磁性粉末と樹脂との混合物(磁性組成物)から形成される。磁性粉末として、希土類系磁性粉末、フェライト磁性粉末などを使用することができる。希土類系磁性粉末としては、R-T-B系磁性粉末(Rは少なくとも一種の希土類元素であってNd、Prのいずれか一方を必ず含む、TはFeまたはFeとCo、Bは硼素であって一部をC(炭素)で置換できる)、R-T-N系磁性粉末(Rは少なくとも一種の希土類元素であってSmを必ず含む、Tは鉄族元素、Nは窒素である)などが挙げられる。R-T-B系磁性粉末の形状は、好ましくは扁平形状(例えば、粉末粒子の形状アスペクト比=短径/長径が0.3以下)である。扁平形状を有するR-T-B系磁性粉末を用いることにより、材料(磁性粉末及び樹脂の混合物)の圧縮成形の際に、磁性粉末が積層し易くなる。また、成形時に磁性粉末間に空隙または樹脂溜まりができ難くなり、高密充填が可能となる。R-T-B系磁性粉末の平均粒子径は、好ましくは20μm以上300μm以下であり、より好ましくは40μm以上250μm以下である。ここで、平均粒子径は体積分布の算術平均径であり、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定する。
【0031】
一方、ボンド磁石3に使用する樹脂は、一般的なボンド磁石に用いられる熱硬化性樹脂であって、好ましい樹脂として、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
【0032】
ボンド磁石3の密度は5.8~6.2g/cm3 である。本発明のヨーク一体型ボンド磁石1では、後述するように圧縮成形にて製造するので、射出成形にて製造されるヨーク一体型ボンド磁石(通常、密度は5.0~5.5g/cm3 程度)に比べて、密度が高いため(単位体積あたりの磁性粉末の量が多いため)、優れた磁気特性を期待できる。
【0033】
以下、上述したヨーク一体型ボンド磁石1を圧縮成形にて製造する方法について説明する。
図4-
図7は、第1の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1の製造方法の工程手順を示す断面図である。
【0034】
図4Aは、製造工程において使用する成形装置の成形動作の開始位置(以下「定位置」という)を示している。この成形装置は、円筒状のダイ10と、上側金型20と、下側金型30とを備えている。
【0035】
上側金型20は、ダイ10の内径にほぼ等しい外径を有する長尺円筒状の第1上パンチ21と、第1上パンチ21の内径にほぼ等しい外径を有する長尺円筒状の第2上パンチ22と、第2上パンチ22の内径にほぼ等しい直径を有する長尺円柱状の上コア23とを備えた三重構成であり、ダイ10内を上方向から挿通可能である。上コア23の下端は、ヨーク2の内部形状に倣った形状をなしている。第1上パンチ21はダイ10内を上下方向に挿通可能であって、第2上パンチ22は第1上パンチ21内を上下方向に挿通可能であり、上コア23は第2上パンチ22内を上下方向に挿通可能である。第1上パンチ21の移動(上昇/下降)と、第2上パンチ22の移動(上昇/下降)と、上コア23の移動(上昇/下降)とは、互いに独立して行える。
【0036】
下側金型30は、ダイ10の内径にほぼ等しい外径を有する長尺円筒状の第1下パンチ31と、第1下パンチ31の内径にほぼ等しい外径を有する長尺円筒状の第2下パンチ32と、第2下パンチ32の内径にほぼ等しい外径を有する長尺円筒状の第3下パンチ33と、第3下パンチ33の内径にほぼ等しい直径を有する長尺円柱状の下コア34とを備えた四重構成であり、ダイ10内を下方向から挿通可能である。第1下パンチ31はダイ10内を上下方向に挿通可能であって、第2下パンチ32は第1下パンチ31内を上下方向に挿通可能であり、第3下パンチ33は第2下パンチ32内を上下方向に挿通可能であり、下コア34は第3下パンチ33内を上下方向に挿通可能である。第1下パンチ31の移動(上昇/下降)と、第2下パンチ32の移動(上昇/下降)と、第3下パンチ33の移動(上昇/下降)と、下コア34の移動(上昇/下降)とは、互いに独立して行える。
【0037】
まず、
図4Bに示す如く、第1下パンチ31を下降させて第2下パンチ32とダイ10との間に形成した空間41内に、ボンド磁石3の材料42(磁性粉末及び熱硬化性樹脂の混合物)を充填する。このときの下降距離d(空間41の深さ)は、製造されるヨーク一体型ボンド磁石1におけるボンド磁石3の長さと、後述する圧縮成形工程での材料42の圧縮率とを考慮して決定される。
【0038】
次に、
図4Cに示す如く、下コア34を下降させた後に、予め準備しておいた
図3に示すようなヨーク2を、その底部2bが第3下パンチ33に載置するように、成形装置内に配置する。ここで、ヨーク2の底部2bに形成された位置決め孔2eが、ヨーク2を正規の位置に置くための位置決め用要素として機能する。
【0039】
次いで、
図5Aに示す如く、第1上パンチ21、第2上パンチ22及び上コア23を下降させて、上コア23にてヨーク2を固定する。
【0040】
次に、
図5Bに示す如く、第2下パンチ32及び第3下パンチ33を下降させるとともに、第1上パンチ21、第2上パンチ22及び上コア23を下降させて、ヨーク2をダイ10内まで移送し、材料42をヨーク2の外周面に接触させる。
【0041】
次いで、
図5Cに示す如く、第2下パンチ32及び第2上パンチ22を下降させて、材料42とヨーク2との接触領域を調整する。
【0042】
次に、
図6Aに示す如く、第1上パンチ21を下降させるとともに、第1下パンチ31を上昇させる。ここで、第1上パンチ21と第2上パンチ22とで材料42に接する面の高さ位置が同じになるように、第1上パンチ21の下降量を調整する。また、第1下パンチ31と第2下パンチ32とで材料42に接する面の高さ位置が同じになるように、第1下パンチ31の上昇量を調整する。この結果、ヨーク2及び材料42は、上側金型20と下側金型30とで封止された状態となる。
【0043】
次いで、
図6Bに示す如く、第1上パンチ21及び第2上パンチ22と第1下パンチ31及び第2下パンチ32とにより材料42を、下方向と上方向との2方向から加圧して、ヨーク2及び材料42を一体化して成形する。
【0044】
次に、
図6Cに示す如く、第1上パンチ21及び第2上パンチ22と第1下パンチ31及び第2下パンチ32とでボンド磁石(材料42の圧縮体)を挟持するとともに、上コア23と第3下パンチ33とでヨーク2を挟持しながら、第1上パンチ21、第2上パンチ22、上コア23、第1下パンチ31、第2下パンチ32及び第3下パンチ33を上昇させる。この結果、第1下パンチ31及び第2下パンチ32の上端位置がダイ10の上端位置と一致して、ボンド磁石はダイ10の外部に位置する。
【0045】
次いで、
図7Aに示す如く、第1上パンチ21、第2上パンチ22及び上コア23を更に上昇させて定位置まで戻す。
【0046】
次に、
図7Bに示す如く、第3下パンチ33及び下コア34を上昇させて定位置まで戻す。この結果、第3下パンチ33及び下コア34の上端位置がダイ10の上端位置と一致して、成形体43はダイ10の外部に位置する。その後、成形体43をダイ10から取り出して、成形処理を終了する。
【0047】
取り出された成形体43は、樹脂が硬化されていないので、取り出した成形体43に対して、例えば200℃で1時間の熱処理を施し、樹脂を硬化させる。これにより、所望の密度、形状を有するヨーク一体型ボンド磁石1が得られる。
【0048】
上述した実施の形態では、ボンド磁石3が磁性粉末及び熱硬化性樹脂との混合物(コンパウンド)にて構成されていることとしたが、ボンド磁石3が磁性粉末と嫌気性樹脂とを含有するように構成されてもよい。この場合のヨーク一体型ボンド磁石1の製造手順について、以下に簡単に説明する。
【0049】
上述したような
図4-
図7に示した手順にて、磁性粉末をヨーク2に一体的に圧縮成形してなる成形体を作製する。ここで、
図4Bに示す工程にて、空間41に充填する材料42として、磁性粉末及び熱硬化性樹脂の混合物に代えて、例えばR-T-N系の磁性粉末を用いることだけが異なるだけであって、他の手順は上述した手順と同様であるので、その説明は省略する。
【0050】
圧縮成形後の成形体に対して、含侵法を用いて、低粘度の嫌気性樹脂を浸み込ませて放置する。放置後、余分な嫌気性樹脂を洗浄にて除去する。ここで、嫌気性を有するため、内部及び表層部の嫌気性樹脂のみが硬化するので、それ以外の空気に触れた余分な嫌気性樹脂は洗浄にて容易かつ迅速に除去できる。次いで、嫌気性樹脂を含侵させた成形体に、150~180℃程度の熱処理を施して、嫌気性樹脂を完全に硬化させ、磁性粉末及び嫌気性樹脂を含むボンド磁石3を有するヨーク一体型ボンド磁石1を製造する。含侵は、減圧法、加圧法等公知の方法を適用すればよい。
【0051】
このような磁性粉末及び嫌気性樹脂を含む構成では、磁性粉末の充填率が高くて強度のばらつきが少ないヨーク一体型ボンド磁石1を提供でき、磁気特性の向上を図ることができる。
【0052】
上述したヨーク一体型ボンド磁石1の製造手順にあって、磁性粉末と熱硬化性樹脂との混合物、または、磁性粉末のみである材料42に、潤滑剤を添加するようにしてもよい。このような潤滑剤を加えることにより、材料42とダイ10との摩擦が和らげられて、成形装置の長寿命化を図れる。
【0053】
以下、上述したヨーク一体型ボンド磁石1におけるボンド磁石3とヨーク2との結合強度について説明する。
【0054】
前述したように、ヨーク2の外周面2aには、周方向全域に亘って延在する1つの突条2cが形成され、この突条2cには、ヨーク2の周方向で4等配する態様にて、4つの切り欠き2dが形成されている。
【0055】
スプリングバックにより発生する応力により、突条2cにて材料42とヨーク2との強力な結合が実現されるため、軸長方向におけるボンド磁石3及びヨーク2の結合強度は高くなり、ヨーク一体型ボンド磁石1にあって、ボンド磁石3がヨーク2の軸長方向に移動するような不具合は生じない。このように、突条2cの形成が、スラスト荷重対策となっている。
【0056】
図8は、切り欠き2dの断面形状の例を示す図である。
図8にあって、Aは断面が矩形状をなす例を示し、Bは底側が表面側より幅が広い例(あり溝状)を示し、Cは底側が表面側より幅が狭い例(テーパ状)を示している。
【0057】
図9は、上述したヨーク一体型ボンド磁石1の製造方法における成形体43の上側金型20及び下側金型30内/外での形状を示す断面図であり、
図9Aは金型内での形状、
図9Bは金型外での形状を示している。切り欠き2dの断面形状は、
図8Aに示すような矩形状である。
【0058】
成形体43が金型から取り外される際に、磁性粉末及び樹脂の混合物である材料42のヨーク2に対するスプリングバックにより発生する応力(
図9Bの矢符参照)により、切り欠き2dにて材料42とヨーク2との強力な結合が実現される。この結果、周方向におけるボンド磁石3及びヨーク2の結合強度は高くなり、ヨーク一体型ボンド磁石1にあって、ボンド磁石3がヨーク2に対して相対的に回転するような不具合は生じない。このように、切り欠き2dの形成が、スリップトルク対策となっている。
【0059】
切り欠き2dの断面形状が、上述のような矩形状(
図8A参照)ではなく、
図8Bに示すようなあり溝状である場合にも、スプリングバックによる上記と同様の作用によって、ヨーク一体型ボンド磁石1にあって、周方向におけるボンド磁石3とヨーク2との高い結合強度を実現することが可能である。これに対して、切り欠き2dの断面形状が、
図8Cに示すようなテーパ状である場合には、スプリングバックによる材料42からの応力がヨーク2に十分に加えられずに材料42側に逃げてしまうので、ボンド磁石3とヨーク2との高い結合強度は期待できない。以上のことから、切り欠き2dの断面形状は、
図8Aに示すような矩形状または
図8Bに示すようなあり溝状が好ましく、
図8Cに示すようなテーパ状は不適である。
【0060】
なお、上述した第1の実施形態では、突条2cがヨーク2の周方向の全域に亘って延在することとしたが、これに限らず、ヨーク2の周方向の一部域に亘って突条2cが形成されていてもよい。また、1つの突条2cが形成されていることとしたが、これに限らず、複数の突条2cをヨーク2の周方向の全域または一部域に亘って延在させるようにしてもよい。
【0061】
上述した第1の実施形態では、突条2cの4箇所に切り欠き2dを形成することとしたが、切り欠き2dの形成個数は4個に限らない。
【0062】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1を示す断面図であり、
図11は、第2の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1におけるヨーク2を示す斜視図である。
【0063】
カップ状のヨーク2は、第1の実施形態と同様に全体として有底円筒形をなしており、その外周面(外側面)2aに円筒状のボンド磁石3が一体的に設けられている。ヨーク2の全体形状は、第1の実施形態と同様であり、例えば、外径、内径、側面の厚さ、全体の長さ、中空部の長さ、底部2bの厚さはそれぞれ、34mm、29mm、2.5mm、13.5mm、11mm、2.5mmであり、例えば、ボンド磁石3の長さ、外径、内径はそれぞれ、11mm、40mm、34mmである(
図10参照)。また、底部2bの中央には、位置決め孔2eが形成されている。
【0064】
第2の実施形態では、ヨーク2の軸長方向中央の外周面2aに、周方向全域に亘って延在する1つの第1溝部2fが形成されている。また、ヨーク2の軸長方向中央の外周面2aには、周方向で4等配する態様で、軸長方向に亘って延在する4つの第2溝部2gが形成されている。第1溝部2fは、4つの第2溝部2g夫々と交差する。例えば、第1溝部2fの幅、深さはそれぞれ、2mm、0.5mmであり、各第2溝部2gの長さ、幅、深さはそれぞれ、6mm、2mm、0.5mmである。なお、上記したヨーク2の各部分の寸法及びボンド磁石3の寸法は一例であり、それらの各寸法は、必要な仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0065】
第1溝部2f及び第2溝部2gの断面形状は、第1の実施形態の切り欠き2dと同様に、
図8Aに示すような矩形状または
図8Bに示すようなあり溝状が好ましく、
図8Cに示すようなテーパ状は不適である。
【0066】
ヨーク2及びボンド磁石3の材料は、前述した第1の実施形態と同じである。また、ボンド磁石3の密度も、第1の実施形態と同じく、5.8~6.2g/cm3 である。
【0067】
第2の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1にあっては、ヨーク2の外周面2aに、周方向全域に亘って延在する1つの第1溝部2fが形成されている。よって、第1溝部2fにより、軸長方向におけるボンド磁石3及びヨーク2の結合強度が高くなるため、ヨーク一体型ボンド磁石1にあって、ボンド磁石3がヨーク2の軸長方向に移動するような不具合は生じない。このように、第2の実施形態では、第1溝部2fの形成がスラスト荷重対策となっている。
【0068】
また、第2の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1にあっては、ヨーク2の外周面2aに、軸長方向に亘って延在する4つの第2溝部2gが形成されている。よって、周方向におけるボンド磁石3及びヨーク2の結合強度が高くなるため、ヨーク一体型ボンド磁石1にあって、ボンド磁石3がヨーク2に対して相対的に回転するような不具合は生じない。このように、第2の実施形態では、第2溝部2gの形成が、スリップトルク対策となっている。
【0069】
第2の実施形態によるヨーク一体型ボンド磁石1を製造する手順は、前述した第1の実施形態によるヨーク一体型ボンド磁石1を製造する手順と同様であるので、その説明は省略する。
【0070】
なお、第1溝部2fがヨーク2の周方向の全域に亘って延在することとしたが、これに限らず、ヨーク2の周方向の一部域に亘って第1溝部2fが形成されていてもよい。また、1つの第1溝部2fが形成されていることとしたが、これに限らず、複数の第1溝部2fをヨーク2の周方向に亘って延在させるようにしてもよい。
【0071】
また、ヨーク2の外周面2aの4箇所に第2溝部2gを形成することとしたが、これに限らず、周方向の2箇所、3箇所、または5箇所以上に、軸長方向に亘って延在する第2溝部2gを形成するようにしてもよい。
【0072】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1を示す断面図である。第3の実施形態のヨーク一体型ボンド磁石1におけるヨーク2の全体形状は、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に有底円筒状であるが、第3の実施形態では、突条2c及び切り欠き2d、第1溝部2f及び第2溝部2gに代えて、周方向で180度離隔する位置で側部を径方向に貫通する2つの貫通孔2hが、ヨーク2に形成されている。例えば、各貫通孔2hの断面は直径2mmの円形であり、各貫通孔2hの長さは2.5mmである。
【0073】
ヨーク2及びボンド磁石3の材料は、前述した第1の実施形態と同じであり、また、ボンド磁石3の密度も、第1の実施形態と同じく、5.8~6.2g/cm3 である。
【0074】
第3の実施形態では、ヨーク2の側部に貫通孔2hを形成しているため、ボンド磁石3及びヨーク2の結合強度は高くなり、ボンド磁石3がヨーク2の軸長方向に移動したり、ボンド磁石3がヨーク2に対して相対的に回転したりするような不具合を防止できる。
【0075】
第3の実施形態によるヨーク一体型ボンド磁石1を製造する手順は、前述した第1の実施形態によるヨーク一体型ボンド磁石1を製造する手順と同様であるので、その説明は省略する。
【0076】
なお、ヨーク2に形成する貫通孔2hは1対とは限らず、複数対であってもよい。また、貫通孔2hの断面形状は、円形に限らず、矩形であってもよい。
【0077】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
1 ヨーク一体型ボンド磁石
2 ヨーク
2a 外周面
2b 底部
2c 突条
2d 切り欠き
2e 位置決め孔
2f 第1溝部
2g 第2溝部
2h 貫通孔
3 ボンド磁石
10 ダイ
20 上側金型
30 下側金型
42 材料
43 成形体