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特許7279369ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂及びそれを含む樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂及びそれを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20230516BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20230516BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/41
C08K5/42
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019007535
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020117569
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本多 勇太
(72)【発明者】
【氏名】磯田 茂紀
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-025316(JP,A)
【文献】特開平10-316704(JP,A)
【文献】特開昭57-195133(JP,A)
【文献】特開昭55-018451(JP,A)
【文献】特開2014-129471(JP,A)
【文献】特開2014-152271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 5/41
C08K 5/42
C08L 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル系樹脂に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸金属塩及びソルビタン系界面活性剤を含有するポリ塩化ビニル系ペースト樹脂であって、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩及びラウリル硫酸金属塩の総含有量が0.4~1.0重量部、ソルビタン系界面活性剤の含有量が0.1~0.5重量部であり、ラウリル硫酸金属塩が0.2~0.5重量部であることを特徴とするポリ塩化ビニル系ペースト樹脂。
【請求項2】
ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩がドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩であり、ラウリル硫酸金属塩がラウリル硫酸アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1に記載のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂に、少なくとも可塑剤、充填剤及び顔料を含んでなることを特徴とするポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。
【請求項4】
壁紙用であることを特徴とする請求項3に記載のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。
【請求項5】
可塑剤がフタル酸ジイソノニル、充填剤が炭酸カルシウム、顔料が酸化チタンであり、壁紙用であることを特徴とする請求項3に記載のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂及びそれを含むポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物に関するものであり、さらに詳細には、酸化チタン等に代表される顔料を配合するペースト樹脂組成物とした際にその粘度が低く加工性に優れると共に、顔料成分の分離抑制効果に優れ、安定性にも優れるポリ塩化ビニル系ペースト樹脂及びそれを含むポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、可塑剤と安定剤、必要に応じ充填剤、発泡剤、沈降抑制剤等の添加剤を加えて混練し、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物(以下、ペースト塩ビゾルと称する場合もある)として加工が行なわれている。このようなペースト塩ビゾルは常温で流動性を示すため、その流動性を利用したコーティング成型、ディップ成型、スラッシュ成型等の成型法に適しており、壁紙、床材、玩具、手袋、自動車のアンダーコート等、幅広い用途で使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-238621号公報
【文献】特開2006-63102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2等に提案されている従来のペースト塩ビゾルにおいては、酸化チタン等に代表される顔料を配合した場合、時間の経過とともに、顔料が分離し、その安定性に劣るという課題が発生していた。一方で、顔料等の分離抑制のためにはペースト塩ビゾルの粘度を高粘度とする対策もあるが、高粘度とした場合、流動性に劣り加工性に課題を発生する場合がある。
【0005】
そのため、ペースト塩ビゾルの低粘度、流動性及び加工性を維持したまま酸化チタン等に代表される顔料の分離を抑制した安定なペースト塩ビゾルの提供が求められている。
【0006】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化チタン等に代表される顔料を含有した際にも安定なペースト塩ビゾルを提供することが可能なポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を特定の量で含有するポリ塩化ビニル系ペースト樹脂が、顔料を含むペースト塩ビゾルとした際にもその安定性に優れるものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸金属塩及びソルビタン系界面活性剤を含有するポリ塩化ビニル系ペースト樹脂であって、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩及びラウリル硫酸金属塩の総含有量が0.4~1.0重量部、ソルビタン系界面活性剤の含有量が0.1~0.5重量部であることを特徴とするポリ塩化ビニル系ペースト樹脂及びそれを含んでなることを特徴とするポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物に関するものである。
【0009】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0010】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対して、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸金属塩及びソルビタン系界面活性剤を含有するものであり、これらドデシルベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸金属塩及びソルビタン系界面活性剤のそれぞれを組み合わせて含有することにより、酸化チタン等に代表される顔料を配合した際にもその分離抑制効果に優れるものとなるとともに、壁紙用等として優れた粘度特性を有するものとなるものである。なお、一般的にポリ塩化ビニル系ペースト樹脂とは、可塑剤等を配合した際に流動性を有するペースト塩ビゾルとしてペースト加工に供されるポリ塩化ビニル系樹脂を称するものである。その製造方法としては、例えば、塩化ビニル系単量体を乳化重合法、ミクロ懸濁重合法、シード乳化重合法、シードミクロ懸濁重合法等の重合法により得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスを乾燥し、粉状又は粒状のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得る方法を挙げることができる。
【0011】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩及びラウリル硫酸金属塩の総含有量が0.4~1.0重量部であり、好ましくは0.5~0.9重量部である。ここで、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸金属塩がどちらか単独である場合、又は総含有量が0.4重量部未満である場合、可塑剤、顔料等と配合しポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物とした際に顔料の分離が見られ、その安定性に劣るものとなる。一方、総含有量が1.0重量部を超える場合、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物とした際の粘度が高いものとなり、その加工性に劣るものとなる。
【0012】
該ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩としては、その範疇に属するものであればよく、例えばドデシルベンゼンスルホン酸リチウム,ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム,ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム,ドデシルベンゼンスルホン酸亜鉛等のドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ土類金属塩、等を挙げることができ、中でもドデシルベンゼンスルホン酸リチウム,ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0013】
また、該ラウリル硫酸金属塩としては、その範疇に属するものであればよく、例えばラウリル硫酸リチウム,ラウリル硫酸カリウム,ラウリル硫酸ナトリウム等のラウリル硫酸アルカリ金属塩、ラウリル硫酸カルシウム,ラウリル硫酸マグネシウム,ラウリル硫酸亜鉛等のラウリル硫酸アルカリ土類金属塩、等を挙げることができ、中でもラウリル硫酸リチウム,ラウリル硫酸カリウム,ラウリル硫酸ナトリウム等のラウリル硫酸アルカリ金属塩であることが好ましい。
【0014】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ソルビタン系界面活性剤の含有量が0.1~0.5重量部であり、好ましくは0.2~0.4重量部である。ソルビタン系界面活性剤の含有量が0.1重量部未満である場合、顔料、可塑剤等と配合しポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物とした際に顔料の分離が見られ、その安定性に劣るものとなる。一方、0.5重量部を超える場合、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物とした際の粘度が高く加工性に劣るものとなる。
【0015】
該ソルビタン系界面活性剤としては、例えばソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、具体例としてはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。
【0016】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂の製造方法としては、本発明の範疇に属するポリ塩化ビニル系ペースト樹脂の製造が可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば上述したように一般的にポリ塩化ビニル系ペースト樹脂の製造方法として知られている塩化ビニル系単量体の乳化重合法、ミクロ懸濁重合法、シード乳化重合法、シードミクロ懸濁重合法等の重合法により得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスを噴霧乾燥等の乾燥法により、粉状又は粒状のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂とする方法等を挙げることができる。その際、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸金属塩及びソルビタン系界面活性剤は、それぞれ独立して重合開始前、重合中、重合終了後のいずれの段階にて添加してもよく、これらを含有するポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスとすることができる。また、塩化ビニル系単量体としては、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体との混合物を挙げることができ、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル類等の不飽和カルボン酸エステル類:ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0017】
そして、重合反応により得られたドデシルベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸金属塩及びソルビタン系界面活性剤を含有するポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスからポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を回収する方法としては、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂が回収できる限りにおいていかなる方法を用いてもよく、その中でも、特に効率よく該ラテックスから水分を除去しポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を回収することができることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。この際の噴霧乾燥に使用する乾燥機としては、一般的に使用されているものでよく、例えば「SPRAY DAYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、George godwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種のスプレー乾燥機があげられる。そして、乾燥条件である乾燥温度としては、例えば乾燥機入口温度で80~200℃、乾燥機出口温度で40~70℃、好ましくは45~65℃を挙げることができる。
【0018】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、可塑剤、充填剤、顔料、安定剤、発泡剤、発泡助剤、加工助剤等を含有するポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物、即ちペースト塩ビゾルとして壁紙、シート、シーラント、玩具、床材、手袋、アンダーボディコート剤等の各種用途に用いることができ、該ペースト塩ビゾルは、各種添加剤の分離抑制効果、粘度安定性に優れ、優れた保存安定性と加工性を有するものとなる。その際の可塑剤としては、例えばフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル類;トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル等のトリメリット酸エステル類;リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル等のリン酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート等の安息香酸エステル;その他ポリエステル系可塑剤やセバシン酸エステル、マゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、エポキシ化植物油等を挙げることができる。充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラス繊維、ガラスフレーク、珪藻土等を挙げることができる。顔料としては、酸化チタン、硫化亜鉛、カーボンブラック、弁柄、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、群青、コバルトブルー、チタンイエロー、鉛丹、鉛黄、柑青、クロム黄、バリウム黄、コバルト黄、コバルト緑等を挙げることができる。安定剤としては、例えば、エポキシ系安定剤、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤等が挙げられる。また、市販のカルシウム-亜鉛系、バリウム-亜鉛系等の複合安定剤を使用することもできる。発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アミド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の無機系発泡剤;イソシアネート化合物、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;セミカルバジド化合物、アジ化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;トリアゾール化合物等の有機系発泡剤が挙げられる。発泡剤助剤としては、例えば亜鉛華(酸化亜鉛)等の分解促進剤を挙げることができる。加工助剤としては、例えばナフテン系油、アマニ油等の炭化水素溶剤等を挙げることができる。
【0019】
さらに、通常添加される添加剤、例えば酸化防止剤、難燃剤、希釈剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加してもよく、またそれらの配合量も一般に使用される範囲で差し支えない。
【0020】
そして、本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、特に顔料分離抑制に優れ壁紙用として優れた特性を発現することから、例えばポリ塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル50重量部、炭酸カルシウム100重量部、酸化チタン15重量部、バリウム/亜鉛複合系熱安定剤3重量部、加熱分解型発泡剤4重量部及びナフテン系炭化水素溶剤10重量部を配合したポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、該ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物をB8H型粘度計、ローターNo.5にて回転数20rpmで測定した粘度が3000~7000mPa・sとなるものが好ましく、特に4000~6000mPa・sとなるものが好ましい。
【0021】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物とした際に粘度が低く安定したものとなると共に、酸化チタンに代表される顔料の分離抑制効果に優れることから、壁紙、シーラント、床材、玩具、手袋、アンダーボディコート剤等の各種用途に適したものとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、粘度が低く加工性に優れると共に、顔料等の分離抑制効果にも優れるポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を提供することが可能となることから各種用途への展開が期待できるものである。
【実施例
【0023】
以下に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0024】
以下に実施例より得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂の評価方法を示す。
【0025】
<ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の調製方法>
ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂100重量部、フタル酸ジイソノニル50重量部(株式会社ジェイプラス製)、炭酸カルシウム((商品名)NN#500 日東粉化工業株式会社製)100重量部、酸化チタン((商品名)JR600A テイカ株式会社製)15重量部、バリウム/亜鉛複合系熱安定剤((商品名)FL-103N アデカ株式会社製)3重量部、加熱分解型発泡剤((商品名)ユニフォームAZウルトラ#1050-I 大塚化学株式会社製)4重量部及びナフテン系炭化水素溶剤((商品名)Exxsol D40 東燃ゼネラル石油株式会社製)10重量部を混練し、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製した。
【0026】
<酸化チタン分離性の評価>
ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物150mlを、150mlのポリプロピレン製ディスポカップに入れ、分離状態(2時間後、24時間後)をディスポカップの上部から目視で評価した。評価基準として、ディスポカップの上部から目視して分離した酸化チタンがなければ4点、分離した酸化チタンが上底部の1/4の程度の面積ならば3点、1/2の程度ならば2点、3/4の程度ならば1点とした。3点以下(分離が観察される)のものを不可とした。
【0027】
<粘度の評価>
ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物150mlを、150mLのポリプロピレン製カップに入れ、B8H型粘度計(東京計器社製)ローターNo.5を用いて、回転数20rpmの条件で粘度を評価した。粘度が7000mPa・s以下のものを低粘度で加工性に優れると判断した。
【0028】
合成例1(重合開始剤等含有シードラテックスの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル6kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、ホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて、重合を進めた。45℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧より0.2MPa圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、重合開始剤等含有シードラテックスを調製した。
【0029】
実施例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水325kg、塩化ビニル単量体を400kg、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1000ppm(単量体100重量部に対して)、硫酸銅を1ppm仕込み、合成例1で得られた重合開始剤等含有シードラテックス40kgを加え、この反応混合物の温度を66℃に上げて重合を開始した。重合転化率が90%となったところで重合を終了した。重合開始してから重合終了までの間、0.2重量%アスコルビン酸水溶液、ラウリル硫酸ナトリウム3500ppm、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3500ppmを連続的に添加した。未反応の塩化ビニル単量体を回収してポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスとした後、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを3000ppm添加し、スプレードライヤーにて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0030】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.35重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.35重量部及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート0.3重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート3000ppmの代わりに、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート3000ppmをポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスに添加した以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0032】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.35重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.35重量部及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート0.3重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0033】
実施例3
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート3000ppmの代わりに、ソルビタンモノラウレート3000ppmをポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスに添加した以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0034】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.35重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.35重量部及びソルビタンモノラウレート0.3重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0035】
実施例4
重合開始してから重合終了までの間、ラウリル硫酸ナトリウム3500ppm、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3500ppmを連続的に添加する代わりに、ラウリル硫酸ナトリウム2000ppm、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5000ppmを連続的に添加すること以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0036】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2重量部及びソルビタンモノラウレート0.3重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0037】
実施例5
重合開始してから重合終了までの間、ラウリル硫酸ナトリウム3500ppm、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3500ppmを連続的に添加する代わりに、ラウリル硫酸ナトリウム5000ppm、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4000ppmを連続的に添加すること以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0038】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5重量部及びソルビタンモノラウレート0.3重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
実施例6
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート3000ppmの代わりに、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート4000ppmをポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスに添加した以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0040】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.35重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.35重量部及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート0.4重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
比較例1
ラウリル硫酸ナトリウム3500ppmを添加せず、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量を7000ppmとし重合開始から終了までの間、連続的に添加した以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0043】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7重量部及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート0.3重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は酸化チタンの分離が生じやすいものであった。
【0044】
比較例2
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート3000ppmの代わりに、ポリオキシアルキルモノアルキルエーテル3000ppmをポリ塩化ビニル系ペースト樹脂ラテックスに添加した以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0045】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.35重量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.35重量部及びポリオキシアルキルモノアルキルエーテル0.3重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は酸化チタンの分離が生じやすいものであった。
【0046】
比較例3
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート3000ppm添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を得た。
【0047】
得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.35重量部及びラウリル硫酸ナトリウム0.35重量部を含有するものであった。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂を用いてポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製し、物性を評価した。その結果を表2に示す。得られたポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物は粘度が高く、加工性に劣るものであった。
【0048】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により得られるポリ塩化ビニル系ペースト樹脂は、酸化チタンに代表される顔料、可塑剤を含有し調製したポリ塩化ビニル系ペースト樹脂組成物の粘度特性、顔料の分離抑制に優れ、特に壁紙用として優れた粘度特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。