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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】複合ケーブル及び複合ハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20230516BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20230516BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20230516BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01B7/00 310
H01B7/00 301
B60T13/74 G
B60T8/171 A
B60T17/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019041212
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020145076
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-07-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
(72)【発明者】
【氏名】村山 知之
(72)【発明者】
【氏名】江島 弘高
(72)【発明者】
【氏名】二ツ森 敬浩
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-047450(JP,A)
【文献】特開2005-285738(JP,A)
【文献】特開2006-278207(JP,A)
【文献】特開2017-224434(JP,A)
【文献】特表2014-515162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
B60T 13/74
B60T 8/171
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源線と、
2本の第1絶縁電線を有する第1信号線と2本の第2絶縁電線を有する第2信号線とが撚り合わされてなる集合体と、
前記複数の電源線と前記集合体とを一括して覆うシースと、を備え、
前記2本の第1絶縁電線と前記2本の第2絶縁電線とは、前記集合体の周方向に並べて配置された状態で撚り合わされており、
前記2本の第1絶縁電線は、前記集合体の周方向に隣り合うように配置され、2つの磁気検出素子の一方に接続されており、
前記2本の第2絶縁電線は、前記集合体の周方向に隣り合うように配置され、前記2つの磁気検出素子の他方に接続されている、
複合ケーブル。
【請求項2】
前記2本の第1絶縁電線と前記2本の第2絶縁電線とは、互いに接触するように設けられており
前記複数の電源線及び前記集合体と前記シースとの間に配置され、前記複数の電源線及び前記集合体を一括して覆う押さえ巻きテープを更に備え、
前記電源線、前記集合体、及び前記押さえ巻きテープの間には、前記シースの断面形状を円形状に近づけるための介在が設けられている、
請求項1に記載の複合ケーブル。
【請求項3】
車輪の回転速度を測定するためのABSセンサのセンサ部に接続される2本の前記信号線を有し、当該2本の信号線が、隣り合って設けられている、
請求項1または2に記載の複合ケーブル。
【請求項4】
前記複数の電源線が、隣り合って設けられている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の複合ケーブル。
【請求項5】
車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ装置に接続される2本の前記電源線を有し、当該2本の前記電源線が、隣り合って設けられている、
請求項4に記載の複合ケーブル。
【請求項6】
複数の電源線、2本の第1絶縁電線を有する第1信号線と2本の第2絶縁電線を有する第2信号線とが撚り合わされてなる集合体、及び前記複数の電源線と前記集合体とを一括して覆うシースを備えた複合ケーブルと、
前記第1信号線及び前記第2信号線の端部に設けられている1つの端末部材と、を備え、
前記2本の第1絶縁電線と前記2本の第2絶縁電線とは、前記集合体の周方向に並べて配置されており、
前記2本の第1絶縁電線は、前記集合体の周方向に隣り合うように配置され、2つの磁気検出素子の一方に接続されており、
前記2本の第2絶縁電線は、前記集合体の周方向に隣り合うように配置され、前記2つの磁気検出素子の他方に接続されており、
前記複合ケーブルは、前記集合体を一括して覆う内部シースをさらに有し、
前記端末部材は、樹脂モールド体を有し、前記樹脂モールド体は、前記内部シースの端部、前記内部シースの端部から延出された前記2本の第1絶縁電線及び前記2本の第2絶縁電線、及び前記2つの磁気検出素子を覆う、
複合ハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ケーブル及び複合ハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源線と信号線とをシースで一括して覆った複合ケーブルが知られている。このような複合ケーブルとして、車両の車輪の回転速度を測定するためのABS(Anti-lock Brake System)センサに接続される1本の信号線と、車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ装置に接続される一対の電源線と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5541331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、車両においては、フェイルセーフの観点から、積極的に冗長化が行われており、ABSセンサ等のセンサ類においても、冗長化が望まれている。そのため、冗長化に対応可能な複合ケーブル及び複合ハーネスが要求されている。
【0005】
そこで、本発明は、冗長化が可能な複合ケーブル及び複合ハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電源線と、複数の信号線と、前記複数の電源線と前記複数の信号線とを一括して覆うシースと、を備え、前記複数の信号線のうち、共通の端末部材に接続される前記信号線が、隣り合って設けられている、複合ケーブルを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の電源線、複数の信号線、及び前記複数の電源線と前記複数の信号線とを一括して覆うシースを備えた複合ケーブルと、前記複数の信号線のうち2本以上の前記信号線の端部に一括して設けられている端末部材と、を備え、前記複数の信号線のうち、共通の前記端末部材に接続される前記信号線が、隣り合って設けられている、複合ハーネスを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冗長化が可能な複合ケーブル及び複合ハーネスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの長手方向に垂直な断面図、(b)は本発明の一実施の形態に係る複合ハーネスの概略構成図である。
図2】(a),(b)は、本発明の他の実施の形態に係る複合ケーブルの長手方向に垂直な断面図である。
図3】(a)は、本発明の他の実施の形態に係る複合ケーブルの長手方向に垂直な断面図、(b)は(a)の複合ケーブルを用いた複合ハーネスの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1(a)は、本実施の形態に係る複合ケーブルの長手方向に垂直な断面図であり、図1(b)は本実施の形態に係る複合ハーネスの概略構成図である。
【0012】
(複合ケーブル)
図1(a),(b)に示すように、複合ケーブル1は、複数の電源線2と、複数の信号線3と、複数の電源線2と複数の信号線3とを一括して覆うシース4と、を備えている。
【0013】
電源線2は、第1導体21と、第1導体21の外周を覆う第1絶縁体22と、を有している。第1導体21は、銅等からなる素線を複数本撚り合わせた親撚り線を複数用い、さらに複数の親撚り線を撚り合わせた複合撚り線からなる。親撚り線は、複数本の素線を集合撚りして構成され、第1導体21は、複数本の親撚り線を同心撚りして構成される。
【0014】
第1導体21として複合撚り線からなるものを用いることで、電源線2の柔軟性(可とう性)を高め、配策しやすい複合ケーブル1を実現できる。また、第1導体21として複合撚り線からなるものを用いることで、後述する信号線3との剛性の差を少なくし、電源線2と信号線3とを撚り合わせた際に、自然に捩れて蛇行してしまうような曲がり癖(以下、単に曲がり癖という)がついてしまうことを抑制できる。
【0015】
詳細は後述するが、本実施の形態では、電源線2と信号線3とを周方向に交互に配置するのではなく、周方向において2本の電源線2を隣り合わせ、また2本の信号線3を隣り合わせるように配置している。このような構成においては、特に、電源線2と信号線3の剛性の違いが大きすぎると、撚り合わせた際に大きな曲がり癖が発生してしまうおそれがある。本実施の形態のように、第1導体21を複合撚りで構成することで、電源線2と信号線3の剛性を同程度とし、電源線2と信号線3とを撚り合わせた際の曲がり癖を抑制して、直線状でどの方向にも曲げやすい複合ケーブル1を実現できる。
【0016】
電源線2の第1導体21に用いる素線としては、外径が0.08mm以上0.16mm以下のものを用いるとよい。これは、素線の外径が0.08mm未満であると、複合ケーブル1を曲げた際等に素線が断線しやすくなり、素線の外径が0.16mmを超えると、第1導体21が硬くなり、電源線2の剛性が高くなってしまうため、複合ケーブル1の配策性が低下したり、信号線3との剛性の差が大きくなって撚り合わせた際に曲がり癖が生じたりするおそれがあるためである。
【0017】
第1絶縁体22は、例えば、XLPE(架橋ポリエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)などからなる。
【0018】
本実施の形態では、電源線2は、車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ装置(不図示)に接続される電動パーキングブレーキ専用の電源線である。電動パーキングブレーキ装置に電源供給する時間は短く、また後述するABSセンサが使用されない停車時に電源供給が行われるため、電源線2は、ノイズ対策用のシールド導体を有していない。
【0019】
複合ケーブル1は、2本の電源線2を備えている。2本の電源線2は、電動パーキングブレーキ装置に接続するためのコネクタ7に接続される。つまり、2本の電源線2は、共通の1つの端末部材に接続されるものである。
【0020】
信号線3は、一対の絶縁電線31を撚り合わせた対撚線32と、対撚線32を一括して覆う内部シース33と、を有している。対撚線32を構成する絶縁電線31は、銅等からなる素線を複数本撚り合わせた第2導体31aと、第2導体31aの外周を覆う第2絶縁体31bと、を有している。第2絶縁体31bは、例えば、XLPE(架橋ポリエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)などからなる。本実施の形態では、内部シース33をウレタン樹脂で構成した。
【0021】
複合ケーブル1は、2本の信号線3を備えている。2本の信号線3は、車輪の回転速度を測定するためのABSセンサのセンサ部8に接続されるものであり、冗長化のために共通の用途で用いられるものである。つまり、2本の信号線3は、共通の1つの端末部材に接続されるものである。2本の信号線3としては、同じ構造のものが用いられる。
【0022】
複合ケーブル1では、2本の電源線2と2本の信号線3とが撚り合され、その周囲に押さえ巻きテープ5が螺旋状に巻き回されている。2本の電源線2と2本の信号線3とを撚り合わせた際の曲がり癖を抑制するために、電源線2と信号線3の外径は同等であるとよい。本実施の形態では、電源線2の外径を3mm以上4mm以下、信号線3の外径を4mm以上5mm以下とした。電源線2の外径は、信号線3の外径の60%以上140%以下、より好ましくは80%以上120%以下であるとよい。
【0023】
押さえ巻きテープ5は、例えば、紙や不織布、樹脂テープ等からなる。押さえ巻きテープ5は、電源線2と信号線3との撚りが解けてしまうことを抑制する役割と、シース4の成形時にシース4と内部シース33とが溶着されてしまうことを抑制し、端末加工時に信号線3を分離しやすくするセパレータとしての役割を果たす。また、押さえ巻きテープ5は、金属層を含むものであってもよい。この場合、押さえ巻きテープ5の金属層がシールドの役割を果たし、信号線3に外部から混入するノイズを低減することが可能になる。
【0024】
電源線2、信号線3、及び押さえ巻きテープ5の間には、介在6が設けられている。介在6としては、複合ケーブル1の長手方向に延びる糸状(繊維状)に形成されたものを用いることができる。介在6は、電源線2と信号線3と押さえ巻きテープ5との間の隙間を埋めるように配置される。これにより、複合ケーブル1の断面形状をより円形状に近づけることができる。介在6は、電源線2及び信号線3と共に撚り合されており、その周囲に押さえ巻きテープ5が巻き付けられている。介在6としては、例えば、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。
【0025】
押さえ巻きテープ5の外周には、シース4が設けられている。シース4は、例えばウレタン樹脂からなる。
【0026】
本実施の形態に係る複合ケーブル1では、複数の信号線3のうち、共通の端末部材に接続される信号線3が、隣り合って設けられている。本実施の形態では、2本の信号線3が共通の端末部材であるセンサ部8に接続されているため、この2本の信号線3が、押さえ巻きテープ5内で周方向に隣り合って設けられている。
【0027】
なお、本明細書において「隣り合って設けられている」とは、撚り合わせの際に隣に配置されていることを意味している。つまり、信号線2と他の電線(ここでは電源線3)がまとめて螺旋状に撚り合されている場合には、当該撚り合わせの中心に対する周方向において他の電線を挟まずに2本の信号線2が隣り合っているときに、2本の信号線2が「隣り合って設けられている」ことになる。また、2本の信号線2だけが撚り合されている場合も、2本の信号線2が「隣り合って設けられている」といえる。
【0028】
本実施の形態では、2本の信号線3が互いに接触するように(外表面同士が当接するように)設けられている。なお、例えば、2本の信号線3間に信号線以外の部材、例えば介在6が挟み込まれていてもよい。ただし、この場合、端末加工時に挟み込まれた介在6等を取り除く必要が生じ、端末加工時に手間がかかってしまう。
【0029】
また、複合ケーブル1では、複数の電源線2のうち、共通の端末部材に接続される電源線2が、隣り合って設けられている。本実施の形態では、2本の電源線2が共通の端末部材であるコネクタ7に接続されているため、この2本の電源線2が、押さえ巻きテープ5内で周方向に隣り合って設けられている。2本の電源線2は、互いに接触するように(外表面同士が当接するように)設けられている。
【0030】
一般的な複合ケーブルでは、断面形状を円形状に近付け、かつどの方向にも曲げやすくするために、周方向において電源線2と信号線3を交互に配置する(断面視において電源線2と信号線3とを四角形の対角位置にそれぞれ配置する)のが一般的である。しかし、この場合、端末加工時において、シース4から露出させた電源線2と信号線3とを交差させるようにして引き出す必要があるため、電源線2と信号線3のシース4からの露出長を長くする必要が生じたり、信号線3の端部に後述する樹脂モールド体82を形成する際等に作業しにくくなったりする場合がある。本実施の形態に係る複合ケーブル1のように、接続先が同じ電線(2本の電源線2、2本の信号線3)を隣り合わせて配置する構成とすることで、接続先が同じ電線をまとめて容易に引き出す(分離する)ことが可能になる。これにより、電源線2と信号線3のシース4からの露出長を短くすることが可能になり、樹脂モールド体82の形成作業等の端末加工作業も容易になる。
【0031】
(複合ハーネス)
本実施の形態に係る複合ハーネス10は、本実施の形態に係る複合ケーブル1と、複数の信号線3のうち2本以上の信号線3の端部に一括して設けられている端末部材(ここではセンサ部8)と、を備えたものである。なお、2本の信号線3の端部に設けられる端末部材はセンサ部8に限られず、例えば、複合ハーネス10と別体に設けられた部材(センサ部等)に接続されるコネクタ等であってもよい。
【0032】
上述のように、本実施の形態では、冗長化のため、2本の信号線3が1つのセンサ部8に接続されている。センサ部8は、2つの磁気検出素子81を備えており、信号線3の第2導体31aは、それぞれ対応する磁気検出素子81のリード線81aに、はんだや溶接等により電気的に接続されている。
【0033】
また、センサ部8は、樹脂モールド体82を有している。樹脂モールド体82は、2本の信号線3の内部シース33の端部、内部シース33の端部から延出された絶縁電線31、及び2つの磁気検出素子81を覆うように形成されている。2つの磁気検出素子81を樹脂モールド体82で一括して覆う構成とすることにより、冗長化した場合であっても取り扱い性を向上することが可能となる。本実施の形態では、樹脂モールド体82は、ウレタン樹脂からなる。内部シース33と樹脂モールド体82とは、樹脂モールド体82の成形時の熱により溶着され一体化されており、これにより、センサ部8内への水分の浸入が抑制されている。なお、センサ部8は、センサヘッドとも称される。
【0034】
樹脂モールド体82からの延出部において2本の信号線3同士が接触していると、当該接触している部分の内部シース33が樹脂モールド体82と十分に溶着されず、センサ部8内へ水分が浸入してしまうおそれが生じる。そこで、本実施の形態では、樹脂モールド体82からの延出部において2本の信号線3を離間させ、2本の信号線3の間に樹脂モールド体82が入り込むように構成している。このように構成することで、両信号線3の表面(内部シース33の外表面)が全周にわたって樹脂モールド8と溶着されるため、センサ部8内への水分の浸入をより抑制することが可能になる。
【0035】
図示していないが、2本の信号線3におけるセンサ部8と反対側の端部には、制御装置に接続するためのコネクタが設けられている。
【0036】
また、複合ハーネス10では、2本の電源線2は、共通のコネクタ7に接続されている。2本の電源線2を隣り合うように配置し、かつ2本の信号線3を隣り合うように配置した複合ケーブル1を用いることで、電源線2と信号線3の分離が容易となり、端末加工作業が容易になる。
【0037】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態に係る複合ケーブル1では、複数の信号線3のうち、共通の端末部材(ここではセンサ部8)に接続される信号線3が、隣り合って設けられている。複数の信号線3を用いることによって冗長化が可能になり、さらに冗長化に用いた同じ接続先(同じ用途)の信号線3を隣り合わせて配置することで、端末加工時に容易に信号線3を容易に分離することが可能となり、樹脂モールド体82の成形作業やコネクタへの接続作業等の端末加工作業が容易になる。
【0038】
(他の実施の形態)
図2(a)に示す複合ケーブル1aは、図1(a)の複合ケーブル1において、2本の信号線3を、それぞれ一対の絶縁電線31を撚り合わせた対撚線32で構成すると共に、これら2本の対撚線32をさらに撚り合わせ、撚り合された2本対撚線32を一括して覆うように内部シース33を設けたものである。複合ケーブル1aのように、2本の信号線3が撚り合されていてもよく、また、2本の信号線3が内部シース33により一括して覆われていてもよい。
【0039】
図2(b)に示す複合ケーブル1bは、2本の信号線3をそれぞれ対撚線32で構成すると共に、これら2本の対撚線32と内側介在34とを撚り合わせ、その周囲に内部シース33を設けたものである。複合ケーブル1bのように、内部シース33内にさらに内側介在34を設けた構成とすることで、内部シース33の成形時に内部シース33を構成する樹脂が信号線3(対撚線32)間に入り込むことが抑制されるため、内部シース33から2本の信号線3(対撚線32)を容易に分離することが可能になり、端末加工性がさらに向上する。内側介在34としては、上述の介在6と同様のものを用いることができる。なお、撚り合わせた2本の対撚線32及び内側介在34の周囲に押さえ巻きテープを巻き付け、その周囲に内部シース33を設けるようにしてもよい。
【0040】
複合ケーブル1a,1bでは、2本の対撚線32が近接して配置されるため、2本の対撚線32の撚りピッチを互いに異ならせ、信号線3間のクロストークを抑制することがより望ましい。さらに、撚りピッチを互いに異ならせることによって、2本の対撚線32の屈曲寿命に差が生じる。よって、例えば、撚りピッチが狭い(屈曲寿命が長い)対撚線32を主として使用し、撚りピッチが広い(屈曲寿命が短い)対撚線32を構成する絶縁電線31に断線が発生したときに複合ハーネス10の交換を促す、といった使用法も可能になる。
【0041】
図3(a)に示す複合ケーブル1cは、2本の信号線3が、それぞれ一対の絶縁電線31を有し、2本の信号線3を構成する2対(4本)の絶縁電線31が撚り合わされた集合体を一括して覆うように、内部シース33を設けたものである。つまり、複合ケーブル1cでは、撚り合された4本の絶縁電線31を一括して覆うように内部シース33が形成されている。以下、一方の信号線3を構成する絶縁電線31を第1絶縁電線311と呼称し、他方の信号線3を構成する絶縁電線31を第2絶縁電線312と呼称する。また、2本の第1絶縁電線311と2本の第2絶縁電線312とを撚り合わせその周囲に内部シース33を形成したものを、信号線複合体30と呼称する。2本の第1絶縁電線311は、2つの磁気検出素子81の一方と接続され、2本の第2絶縁電線312は、2つの磁気検出素子81の他方と接続される。
【0042】
複合ケーブル1cでは、信号線複合体30の周方向において、2本の第1絶縁電線311が隣り合うように配置され、2本の第2絶縁電線312が隣り合うように配置されている。これにより、端末加工時に第1絶縁電線311と第2絶縁電線312とを容易に分離でき、端末加工作業が容易になる。また、図3(b)に示すように、複合ケーブル1cを用いた複合ハーネス10では、樹脂モールド体82と複合ケーブル1cの溶着に要する幅を狭められるため、図1と比較してセンサ部8の小型化が可能である。
【0043】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0044】
[1]複数の電源線(2)と、複数の信号線(3)と、前記複数の電源線(2)と前記複数の信号線(3)とを一括して覆うシース(4)と、を備え、前記複数の信号線(3)のうち、共通の端末部材(8)に接続される前記信号線(3)が、隣り合って設けられている、複合ケーブル(1)。
【0045】
[2]共通の端末部材(8)に接続される前記信号線(2)が、互いに接触するように設けられている、[1]に記載の複合ケーブル(1)。
【0046】
[3]車輪の回転速度を測定するためのABSセンサのセンサ部(8)に接続される2本の前記信号線(3)を有し、当該2本の信号線(3)が、隣り合って設けられている、[1]または[2]に記載の複合ケーブル(1)。
【0047】
[4]前記複数の電源線(2)のうち、共通の端末部材(7)に接続される前記電源線(2)が、隣り合って設けられている、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1)。
【0048】
[5]車両の停車後に車輪の回転を抑止するための電動パーキングブレーキ装置に接続される2本の前記電源線(2)を有し、当該2本の前記電源線(2)が、隣り合って設けられている、[4]に記載の複合ケーブル(1)。
【0049】
[6]前記信号線(3)が、一対の絶縁電線(31)を撚り合わせた対撚線(32)と、前記対撚線(32)を一括して覆う内部シース(33)と、を有する、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1)。
【0050】
[7]前記信号線(3)が、一対の絶縁電線(31)を撚り合わせた対撚線(32)であり、撚り合わされた複数の前記対撚線(32)を一括して覆う内部シース(33)を有する、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1a,1b)。
【0051】
[8]前記信号線(3)が、一対の絶縁電線(31)を有し、複数の前記信号線(2)を構成する複数対の絶縁電線(31)が撚り合わされた集合体を一括して覆う内部シース(33)を有する、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1c)。
【0052】
[9]複数の電源線(2)、複数の信号線(3)、及び前記複数の電源線(2)と前記複数の信号線(3)とを一括して覆うシース(4)を備えた複合ケーブル(1)と、前記複数の信号線(3)のうち2本以上の前記信号線(3)の端部に一括して設けられている端末部材(8)と、を備え、前記複数の信号線(3)のうち、共通の前記端末部材(8)に接続される前記信号線(3)が、隣り合って設けられている、複合ハーネス(10)。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0054】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、電源線2が電動パーキングブレーキ専用の電源線である場合を説明したが、これに限らず、電源線2は、例えば電気機械式ブレーキ(EMB)用の電源線等であってもよい。また、上記実施の形態では、信号線3がABSセンサ用の信号線である場合を説明したが、これに限らず、信号線3は、例えば空気圧センサ用の信号線等であってもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、2本の電源線2と2本の信号線3とを備えた場合を説明したが、電源線2や信号線3の本数はこれに限定されない。例えば、ABSセンサ用の信号線3を2本、空気圧センサ用の信号線3を2本有する場合、ABSセンサ用の2本の信号線3を隣り合わせ、空気圧センサ用の2本の信号線3を隣り合わせるように構成するとよい。
【符号の説明】
【0056】
1…複合ケーブル
2…電源線
3…信号線
31…絶縁電線
32…対撚線
33…内部シース
4…シース
5…押さえ巻きテープ
6…介在
7…コネクタ(端末部材)
8…センサ部(端末部材)
10…複合ハーネス
図1
図2
図3