(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】飛灰処理装置および飛灰処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20230516BHJP
B09B 101/30 20220101ALN20230516BHJP
【FI】
B09B3/70 ZAB
B09B101:30
(21)【出願番号】P 2019090984
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 直明
(72)【発明者】
【氏名】韓 田野
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-337550(JP,A)
【文献】特開2004-216209(JP,A)
【文献】特開2016-049481(JP,A)
【文献】特開2011-136275(JP,A)
【文献】特開2006-090779(JP,A)
【文献】特開2003-290742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛灰を貯留し供給する飛灰供給部と、
飛灰処理剤を貯留し供給する飛灰処理剤供給部と、
前記飛灰供給部から飛灰を供給するとともに、前記飛灰処理剤供給部から飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するための飛灰処理部と、
前記飛灰処理剤の添加を、前記飛灰処理剤供給部に指示する飛灰処理剤添加管理部と、
を備える飛灰処理装置であって、
前記飛灰処理剤添加管理部は、
飛灰を採取する処理前飛灰採取部と、
処理前飛灰分析部と、
前記飛灰処理部で処理した飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部と、
を有し、
前記処理前飛灰分析部は、前記処理前飛灰採取部で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤が、前記適正添加量範囲内で前記飛灰処理部に添加されるように前記飛灰処理剤供給部に指示し、
前記処理後飛灰分析部は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定
し、
前記処理後飛灰分析部での埋め立て処分の可否は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、前記飛灰処理部への前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲内にあるか否かで判定する、飛灰処理装置。
【請求項2】
飛灰を貯留し供給する飛灰供給部と、
飛灰処理剤を貯留し供給する飛灰処理剤供給部と、
前記飛灰供給部から飛灰を供給するとともに、前記飛灰処理剤供給部から飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するための飛灰処理部と、
前記飛灰処理剤の添加を、前記飛灰処理剤供給部に指示する飛灰処理剤添加管理部と、
を備える飛灰処理装置であって、
前記飛灰処理剤添加管理部は、
飛灰を採取する処理前飛灰採取部と、
前記飛灰処理部で処理する前の飛灰の性状を計測する処理前飛灰分析部と、
前記飛灰処理部で処理した後の飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部と、
を有し、
前記処理前飛灰分析部は、前記処理前飛灰採取部で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤が、前記適正添加量範囲内で前記飛灰処理部に添加されるように前記飛灰処理剤供給部に指示し、
前記処理後飛灰分析部は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、前記飛灰処理部への前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲外であって、過不足が生じていると判定した場合にのみ、前記飛灰処理部への前記飛灰処理剤の添加量を増減させて、前記飛灰処理剤の添加量が前記適正添加量範囲内になるように、前記飛灰処理剤供給部への指示を変更する、飛灰処理装置。
【請求項3】
飛灰に対し飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するため飛灰処理方法であって、
前記飛灰処理剤の添加前の飛灰を採取し、採取した該飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤を、前記適正添加量範囲内で添加する処理前飛灰分析工程と、
前記飛灰処理剤の添加後の飛灰を採取し、処理状態を計測する処理後飛灰分析工程と、
処理後飛灰分析工程での飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する適正処理判定工程と、を
含み、
前記適正処理判定工程での埋め立て処分の可否は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲内にあるか否かで判定する、飛灰処理方法。
【請求項4】
飛灰に対し飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するため飛灰処理方法であって、
前記飛灰処理剤の添加前の飛灰を採取し、採取した該飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤を、前記適正添加量範囲内で添加する処理前飛灰分析工程と、
前記飛灰処理剤の添加後の飛灰を採取し、処理状態を計測する処理後飛灰分析工程と、
処理後飛灰分析工程での飛灰の処理状態の計測結果に基づいて
、前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲外である場合、飛灰を処理するのに過不足が生じていると判定する適正処理判定工程と、
過不足が生じていると判定した場合にのみ、前記飛灰処理剤の添加量を増減させて、前記飛灰処理剤の添加量が前記適正添加量範囲内になるように、前記飛灰処理剤の添加量を変更する飛灰処理剤添加量変更工程と、を含む飛灰処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛灰処理装置および飛灰処理方法に関し、特に、飛灰を処理するに際し飛灰の適正な処理を阻害するトラブルが発生した場合であっても、より高い信頼性をもって飛灰中の重金属を不溶化できる飛灰の処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を焼却して発生する排ガスは、塩化水素や硫黄酸化物を含む酸性ガスである。従来、このような排ガスは、消石灰や重曹等の排ガス処理剤で処理し、その後、固形物である飛灰をバグフィルター等の集塵機で除塵した後、煙突から排出している。
【0003】
一方で、集塵機で回収された飛灰には、通常、鉛、カドミウム、ヒ素、セレン、クロムなどの重金属が含まれている。そのため、飛灰は、廃棄物処理法により特別管理一般廃棄物に指定されており、重金属が溶出しないように固定化(無害化)処理を施した後、埋め立てなどにより処分することが義務づけられている。
【0004】
飛灰に含まれる重金属を固定するための飛灰処理剤としては、例えば、特許文献1には、リン酸系化合物、二酸化ケイ素系化合物、鉄含有化合物や、塩酸、硫酸、硝酸等の酸性中和剤等の無機系重金属固定剤が開示されている。
【0005】
このような飛灰処理剤は、飛灰処理のバッチごとまたは特定の飛灰量ごとに一定量を添加する場合があるが、この場合、飛灰の灰性状によって、飛灰を処理するのに最適な飛灰処理剤の量は変動するため、一定量の飛灰処理剤の添加は、特定の飛灰量の処理であっても、飛灰を無害化処理するのに過剰であるため、環境面やコスト面で非効率的であった。このため、近年では、飛灰の適正処理や処理剤使用量の削減の観点から、処理前に飛灰の一部を採取して分析し、必要な処理剤の添加量を見積もって、その量の処理剤を添加する方法が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献2には、飛灰処理剤としてキレート剤を用いるとともに、飛灰の一部を採取し、その飛灰とキレート剤とを混合して得られた水溶液の吸光度を測定し、その吸光度に基づき飛灰に添加する飛灰処理剤としての重金属固定剤の量を決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-159269号公報
【文献】特開2016-49481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の処理方法では、処理する飛灰の性状に対応させて飛灰処理剤の添加量を見積もるため、飛灰処理剤を一定量添加する場合と比べて過不足を少なくして、飛灰処理剤の添加量をある程度までは正確に見積もることができる。実際に飛灰の処理を行う場合には、例えば、飛灰処理剤の最小添加量を見積もった後、安全係数などを考慮して、飛灰処理剤の最小必要量に一定割合を加えた量を適正添加量として添加し、飛灰処理剤の不足を防止している。しかしながら、本発明者らは、このような方法では、例えば、飛灰処理装置の不具合や故障が発生して、飛灰や飛灰処理剤の供給量が指示と異なって供給されたり、あるいは、供給される飛灰の性状が大きく変化したりしたときなどでは、飛灰処理剤の添加量に過不足が生じる場合があることを見出した。そして、飛灰処理剤の添加量が適正添加量よりも多い場合には、飛灰処理剤のコストが増加し、また、特許文献2のように飛灰処理剤としてキレート剤を用いる場合には、飛灰中に有機物である飛灰処理剤が残留して、処理した飛灰を管理型埋立て処分場に処分した際に、溶け出た残留キレート剤が浸出水処理工程において、硝化阻害やCOD負荷上昇の問題が生じる。一方で、飛灰処理剤の添加量が適正添加量よりも少ない場合には、飛灰中に未固定の重金属が残留し、その結果として、重金属の溶出が廃棄物処理法に定める特別管理廃棄物の判定基準を超える可能性がある。このため、飛灰処理剤により処理した後の飛灰を埋め立て処分したときの負荷をより低減するため、飛灰の処理方法については、更なる改良の余地があった。
【0009】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、飛灰を処理するに際し、飛灰の性状などの処理条件の違いによって、飛灰を適正処理するのに必要な飛灰処理剤の適正な添加量が変動した場合であっても、効率的に飛灰中の重金属を固定化して、飛灰処理剤により処理した後の飛灰を埋め立て処分したときの環境への負荷を、より一層低減することができる、飛灰の処理装置および処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以上の目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、飛灰を貯留し供給する飛灰供給部と、飛灰処理剤を貯留し供給する飛灰処理剤供給部と、前記飛灰供給部から飛灰を供給するとともに、飛灰処理剤供給部から飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するための飛灰処理部と、飛灰処理剤の添加を、飛灰処理剤供給部に指示する飛灰処理剤添加管理部と、を備える飛灰処理装置において、飛灰処理剤添加管理部は、飛灰を採取する処理前飛灰採取部と、飛灰処理部で処理する前の飛灰の性状を計測する処理前飛灰分析部と、飛灰処理部で処理した後の飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部と、を有し、処理前飛灰分析部は、処理前飛灰採取部で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤が、適正添加量範囲内で飛灰処理部に添加されるように前記飛灰処理剤供給部に指示し、処理後飛灰分析部は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定することにより、飛灰を処理するに際し、飛灰の性状などの処理条件の違いによって、飛灰を適正処理するのに必要な飛灰処理剤の適正な添加量が変動した場合であっても、飛灰処理剤により処理した後の飛灰を埋め立てるに際して、環境への負荷をより低減して重金属を固定化できる飛灰の処理装置および処理方法を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
(1)飛灰を貯留し供給する飛灰供給部と、飛灰処理剤を貯留し供給する飛灰処理剤供給部と、前記飛灰供給部から飛灰を供給するとともに、前記飛灰処理剤供給部から飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するための飛灰処理部と、前記飛灰処理剤の添加を、前記飛灰処理剤供給部に指示する飛灰処理剤添加管理部と、を備える飛灰処理装置であって、前記飛灰処理剤添加管理部は、飛灰を採取する処理前飛灰採取部と、処理前飛灰分析部と、前記飛灰処理部で処理した飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部と、を有し、前記処理前飛灰分析部は、前記処理前飛灰採取部で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤が、前記適正添加量範囲内で前記飛灰処理部に添加されるように前記飛灰処理剤供給部に指示し、前記処理後飛灰分析部は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する、飛灰処理装置。
【0012】
(2)前記処理後飛灰分析部での埋め立て処分の可否は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、前記飛灰処理部への前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲内にあるか否かで判定するは、前記処理した飛灰の処理状態を計測した結果に基づいて、前記飛灰処理剤の過不足、実際の添加量を算出し、前記実際の添加量が、前記適正添加量範囲内に属するか否かを判定することによって処理した飛灰の処理状態の埋め立て処分の可否を判定する、上記(1)に記載の飛灰処理装置。
【0013】
(3)飛灰を貯留し供給する飛灰供給部と、飛灰処理剤を貯留し供給する飛灰処理剤供給部と、前記飛灰供給部から飛灰を供給するとともに、前記飛灰処理剤供給部から飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するための飛灰処理部と、前記飛灰処理剤の添加を、前記飛灰処理剤供給部に指示する飛灰処理剤添加管理部と、を備える飛灰処理装置であって、前記飛灰処理剤添加管理部は、飛灰を採取する処理前飛灰採取部と、前記飛灰処理部で処理する前の飛灰の性状を計測する処理前飛灰分析部と、前記飛灰処理部で処理した後の飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部と、を有し、前記処理前飛灰分析部は、前記処理前飛灰採取部で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤が、前記適正添加量範囲内で前記飛灰処理部に添加されるように前記飛灰処理剤供給部に指示し、前記処理後飛灰分析部は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、前記飛灰処理部への前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲外であって、過不足が生じていると判定した場合にのみ、前記飛灰処理部への前記飛灰処理剤の添加量を増減させて、前記飛灰処理剤の添加量が前記適正添加量範囲内になるように、前記飛灰処理剤供給部への指示を変更する、飛灰処理装置。
【0014】
(4)飛灰に対し飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するため飛灰処理方法であって、
前記飛灰処理剤の添加前の飛灰を採取し、採取した該飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤を、前記適正添加量範囲内で添加する処理前飛灰分析工程と、前記飛灰処理剤の添加後の飛灰を採取し、処理状態を計測する処理後飛灰分析工程と、処理後飛灰分析工程での飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する適正処理判定工程と、を含む飛灰処理方法。
【0015】
(5)前記適正処理判定工程での埋め立て処分の可否は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲内にあるか否かで判定する、上記(4)に記載の飛灰処理方法。
【0016】
(6)飛灰に対し飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するため飛灰処理方法であって、前記飛灰処理剤の添加前の飛灰を採取し、採取した該飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、前記飛灰処理剤を、前記適正添加量範囲内で添加する処理前飛灰分析工程と、前記飛灰処理剤の添加後の飛灰を採取し、処理状態を計測する処理後飛灰分析工程と、処理後飛灰分析工程での飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、前記飛灰処理部への前記飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した前記飛灰処理剤の実際の添加量が、前記適正添加量範囲外である場合、飛灰を処理するのに過不足が生じていると判定する適正処理判定工程と、過不足が生じていると判定した場合にのみ、前記飛灰処理剤の添加量を増減させて、前記飛灰処理剤の添加量が前記適正添加量範囲内になるように、前記飛灰処理剤の添加量を変更する飛灰処理剤添加量変更工程と、を含む飛灰処理方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、飛灰を処理するに際し、飛灰の性状などの処理条件の違いによって、飛灰を適正処理するのに必要な飛灰処理剤の適正な添加量が変動した場合であっても、効率的に飛灰中の重金属を固定化して、飛灰処理剤により処理した後の飛灰を埋め立て処分したときの環境への負荷を、より一層低減することができる飛灰の処理装置および処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る飛灰処理装置の構築例の概略フロー図を示したものである。
【
図2】従来技術に係る飛灰処理装置の構築例の概略フロー図を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
<第1の態様の飛灰処理装置>
図1は、本実施形態に係る飛灰処理装置の構築例の概略フロー図を示したものである。なお、
図1において、各ブロックを繋ぐ線のうち、実線は物の流れ、一点鎖線は情報の流れを表している。
【0021】
すなわち、飛灰処理装置1は、主として、飛灰を貯留し供給する飛灰供給部11と、飛灰処理剤を貯留し供給する飛灰処理剤供給部12と、飛灰供給部11から飛灰を供給するとともに、飛灰処理剤供給部12から飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するための飛灰処理部13と、飛灰処理部13への飛灰処理剤の添加を、飛灰処理剤供給部12に指示する飛灰処理剤添加管理部14と、を備える装置である。また、飛灰処理装置1は、これら以外に任意で、過去に処理した飛灰の性状や添加条件などの対応関係を記憶するデータ記憶部15、飛灰と飛灰処理剤とを混合するための水を貯留し供給する水供給部16を備える。
【0022】
飛灰処理剤添加管理部14は、飛灰を採取する処理前飛灰採取部141と、処理前飛灰採取部141で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤が適正添加量範囲内で飛灰処理部に添加されるように飛灰処理剤供給部に指示する処理前飛灰分析部142と、飛灰処理部13で処理した飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部143と、を有する。そして、このうち、処理後飛灰分析部143は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する。
【0023】
このように、飛灰処理剤添加管理部14が、処理前飛灰採取部141で採取した飛灰の性状を分析し、その性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、処理前飛灰分析部142で、飛灰処理剤が適正添加量範囲内で飛灰処理部に添加されるように飛灰処理剤供給部12に指示し、この指示を受けた飛灰処理剤供給部12がそのような量で飛灰処理剤を飛灰処理部13に添加することにより、飛灰処理剤を一定量添加する場合と比べて処理剤の過不足を比較的少なくして、飛灰を処理することができる。
【0024】
図2は、特許文献2に例示される従来技術に係る飛灰処理装置の構築例の概略フロー図を示したものである。この飛灰処理装置2は、本発明と同様に、飛灰処理剤が添加される前の飛灰の性状を分析し、その性状に基づいて飛灰処理剤を添加する構成を採用したものであって、主として、飛灰を貯留し供給する飛灰供給部21と、飛灰処理剤を貯留し供給する飛灰処理剤供給部22と、飛灰供給部21から飛灰を供給するとともに、飛灰処理剤供給部22から飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するための飛灰処理部23と、飛灰処理部23への飛灰処理剤の添加を、飛灰処理剤供給部22に指示する飛灰処理剤添加管理部24と、過去に処理した飛灰の性状や添加条件などの対応関係を記憶するデータ記憶部25と、飛灰と飛灰処理剤とを混合するための水を貯留し供給する水供給部26と、を備える。そして、飛灰処理剤添加管理部24は、飛灰を採取する処理前飛灰採取部241と、処理前飛灰採取部241で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤が適正添加量範囲内で飛灰処理部に添加されるように飛灰処理剤供給部に指示する処理前飛灰分析部242とを有している。
【0025】
実際に従来技術に係る飛灰処理装置2を用いて飛灰の処理を行う場合には、例えば飛灰処理剤の最小添加量を見積もった後、安全係数などを考慮して、飛灰処理剤の最小必要量に一定割合を加えた量を適正添加量として添加し、飛灰処理剤の不足を防止している。
【0026】
しかしながら、例えば処理する飛灰の性状のばらつきが大きかったり、飛灰処理装置2の飛灰供給部21や飛灰処理剤供給部22に不具合や故障が生じて意図した量の飛灰や飛灰処理剤が添加されなかったり、長期保存などによって飛灰処理剤が化学的に劣化して、実際に添加した量と、その中に含まれる有効成分たる飛灰処理剤の量との間に相違が生じたりするなどして、飛灰を適切に処理することができず、飛灰処理剤が最適添加量に比べて過不足が生じることがある。特に、最適添加量に比べて不足して飛灰処理剤が添加された場合、上述したように、飛灰中に未固定の重金属が残留し、これを埋め立てた場合には、環境中に重金属が流出する可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態の飛灰処理装置1では、処理後飛灰分析部143が、飛灰処理部13で処理した飛灰の処理状態を計測し、その処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する。このようにして、処理後飛灰分析部143において、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定することにより、最適な添加量の飛灰処理剤で飛灰を処理しながらも、例えば処理する飛灰の性状のばらつきが大きかったり、飛灰処理装置1の飛灰供給部11や飛灰処理剤供給部12に不具合や故障が生じて意図した量の飛灰や飛灰処理剤が添加されなかったり、長期保存などによって飛灰処理剤が化学的に劣化して、実際に添加した量と、その中に含まれる有効成分たる飛灰処理剤の量との間に相違が生じたりするなどしたとしても、飛灰を安定的に処理することができ、重金属の環境への溶出を抑制することができる。以下、本実施形態の飛灰処理装置1を構成する各部について、それぞれ具体的に説明する。
【0028】
[飛灰供給部]
飛灰供給部11は、飛灰を貯留し供給するものである。飛灰供給部11としては、特に限定されないが、例えば飛灰を貯留するためのタンクと、一定量の飛灰を定量して排出可能な定量フィーダーなどを組み合わせて用いることができる。
【0029】
飛灰供給部11は、少なくとも、飛灰を供給可能な状態で飛灰処理部13に接続されている。また、飛灰処理剤供給部12は、飛灰処理剤添加管理部14(特に、処理前飛灰分析部142および処理後飛灰分析部143)と、それらから少なくとも指示を受信可能な状態で接続されており、飛灰処理剤添加管理部14により添加量の制御をしてもよい(指示の経路については図示せず)。
【0030】
飛灰供給部11は、飛灰供給量測定部111を備えることができる。このように飛灰供給部111を設けることにより、指示したとおりの飛灰が飛灰処理部13に添加されたか確認することができる。飛灰供給量測定部111は、飛灰処理部13に供給された飛灰の量を測定するものであれば特に限定されないが、具体的には、飛灰供給部11と飛灰処理部13の間に設けた流量計、質量計や、飛灰を貯留するためのタンクに設けた質量計、レベル計などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。異なる機器を2種以上用いることにより、より正確な測定を行うことができる。
【0031】
[飛灰処理剤供給部]
飛灰処理剤供給部12は、飛灰処理剤を貯留し供給するものである。飛灰処理剤供給部12としては、特に限定されないが、例えば飛灰処理剤を貯留するためのタンクと、一定量の飛灰処理剤を定量して排出可能な定量フィーダーなどを組み合わせて用いることができる。
【0032】
飛灰処理剤供給部12は、少なくとも、飛灰処理剤を供給可能な状態で飛灰処理部13に接続されている。また、飛灰処理剤供給部12は、飛灰処理剤添加管理部14(特に、処理前飛灰分析部142および処理後飛灰分析部143)と、それらから少なくとも指示を受信可能な状態で接続されている。
【0033】
また、飛灰処理剤供給部12は、飛灰処理剤供給量測定部121を備えることができる。このように飛灰処理剤供給部121を設けることにより、指示したとおりの飛灰処理剤が飛灰処理部13に添加されたか確認することができる。飛灰処理剤供給量測定部121は、飛灰処理部13に供給された飛灰処理剤の量を測定するものであれば特に限定されないが、具体的には、飛灰処理剤供給部12と飛灰処理部13の間に設けた流量計、質量計や、飛灰処理剤を貯留するためのタンクに設けた質量計、レベル計などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。異なる機器を2種以上用いることにより、より正確な測定を行うことができる。
【0034】
(飛灰処理剤)
飛灰処理剤としては、重金属を不溶化(固定化)し得るものであれば特に限定されず、例えば有機系飛灰処理剤や無機系飛灰処理剤を用いることができる。
【0035】
有機系飛灰処理剤としては、特に限定されないが、例えばキレート剤など、重金属と好適に反応し、重金属を好適に不溶化できる点で、ジチオカルバミン酸系キレート剤を用いることが好ましく、ジチオカルバミン酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、シクロアルキルジチオカルバミン酸塩、ピペラジンジチオカルバミン酸塩、テトラエチレンペンタミンジチオカルバミン酸塩、ポリアミンのジチオカルバミン酸塩を用いることがより好ましい。有機系飛灰処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
なお、上述したジチオカルバミン酸系キレート剤は、ジチオカルバミン酸基の硫黄元素が鉛等の重金属イオンに配位結合することにより電荷が中和されて不溶性となる。
【0037】
無機系飛灰処理剤としては、特に限定されないが、リン酸系化合物、二酸化ケイ素系化合物、硫酸アルミニウム、鉄含有化合物や、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。
【0038】
このうち、リン酸系化合物は、灰中のカルシウムと難溶性の鉱物であるヒドロキシアパタイトを形成するとともに重金属を結晶構造中に取り込み不溶化する。二酸化ケイ素化合物は、灰中のカルシウムと難溶性の鉱物である珪酸カルシウムを形成するとともに重金属を結晶構造中に取り込み不溶化する。硫酸アルミニウムは、灰中のカルシウムと難溶性の鉱物であるエトリンガイトを形成するとともに重金属を結晶構造中に取り込み不溶化する。還元性の二価鉄塩は、六価クロムを不溶性の三価クロムに還元し水酸化物として重金属を不溶化する。塩酸、硫酸、硝酸などの酸は、重金属の不溶化に適したアルカリ度に調整する不溶化助剤である。
【0039】
[飛灰処理部]
飛灰処理部13は、飛灰供給部11から供給された飛灰に対して、飛灰処理剤供給部12から添加された飛灰処理剤を混合して、飛灰を処理するための反応場である。すなわち、飛灰処理部13は、混合するためのものであり、例えば混練機を用いることができる。飛灰処理部13はバッチ式(回分式)で処理するものあっても、連続式で処理するものであってもよい。なお、バッチ式の方が、処理精度は高くなる。また、飛灰処理部13は、これらから供給された飛灰、飛灰処理剤および水を混合するための、撹拌羽根などの混合手段を備える。
【0040】
上述したとおり、飛灰には、通常、鉛、カドミウム、ヒ素、セレン、クロムなどの重金属が含まれているため、飛灰の埋め立て等に先立って、飛灰中に含有する重金属を固定化する必要がある。そこで、飛灰処理部13では、飛灰と飛灰処理剤を混合して反応させることによって、重金属を不溶化する。
【0041】
飛灰処理部13は、飛灰供給部11から飛灰を供給可能な状態でその飛灰供給部11と接続されており、また飛灰処理剤供給部12から飛灰処理剤を供給可能な状態でその飛灰処理剤供給部12と接続されており、さらに水供給部16から水を供給可能な状態でその水供給部16とも接続されている。
【0042】
なお、飛灰処理部13で重金属の不溶化(固定化)を施す対象たる飛灰としては、その発生源や含有成分について特に限定されるものではなく、各種の廃棄物の焼却により生成した飛灰を用いることができる。
【0043】
上述したとおり、飛灰の処理量は特に限定されず、処理すべき飛灰の量や処理時間、反応器の容量などを考慮して適宜設計することができる。
【0044】
なお、飛灰処理部13もしくは処理後飛灰分析部143、または飛灰処理部13および処理後飛灰分析部143の間には、飛灰処理部13で処理された飛灰について含水率を測定する、処理後飛灰含水量測定部を備えることができる(図示せず)。この処理後飛灰含水量測定部により測定された飛灰含水率に基づき飛灰に対する水の添加量などを調整してもよい。処理後飛灰含水量測定部は、飛灰処理剤による処理後の飛灰に含まれる含水量を測定するものであれば特に限定されないが、具体的には、電気抵抗や電気容量等を用いて直接測定できる装置や、処理後の飛灰をサンプリングし蒸発乾固前後の重量を測定する装置や、処理後の飛灰をサンプリングし熱重量測定(TG測定)する装置などを用いることができる。このようにして処理後飛灰含水量測定部により測定された、処理後の飛灰中の含水量は、データ記憶部15に送信されて記憶されてもよい。
【0045】
[飛灰処理剤添加管理部]
飛灰処理剤添加管理部14は、飛灰処理部13への飛灰処理剤の添加を、飛灰処理剤供給部12に指示するものである。この飛灰処理剤添加管理部14は、飛灰を採取する処理前飛灰採取部141と、処理前飛灰採取部141で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤が適正添加量範囲内で飛灰処理部13に添加されるように飛灰処理剤供給部12に指示する処理前飛灰分析部142と、飛灰処理部13で処理した飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部143と、を有する。そして、処理後飛灰分析部143は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する。なお、処理前飛灰採取部141は、
図1では、飛灰供給部11と飛灰処理部13との間に配置されているが、その配置場所は、飛灰供給部11や飛灰処理部13に設けてもよく、また、図示しないが飛灰供給部11の前段に設けてもよい。
【0046】
処理前飛灰採取部141における飛灰の採取の頻度は特に限定されず、連続的又は間隙的(例えば、1時間に1回、数時間に1回、1日に1回など)に行うことができる。
【0047】
処理前飛灰分析部142は、処理前飛灰採取部141で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤が適正添加量範囲内で飛灰処理部13に添加されるように飛灰処理剤供給部12に指示する。
【0048】
例えば、処理前飛灰分析部142において、飛灰処理剤としてキレート剤を用いる場合について、処理前飛灰分析部142の具体的な操作を説明する。飛灰を採取して、水に十分に浸漬させて(例えば、水1Lに対し、飛灰0.5~10g)、飛灰中の水溶性成分を溶解させた後、その水に過剰量のキレート剤を添加し、遊離のキレート剤の量を、吸光度などにより測定する。遊離のキレート剤の量を吸光度のピークから算出し、添加したキレート剤の総量から遊離のキレート剤の量を差し引いた値を、採取して試験に供した飛灰の質量で除して、単位質量あたりの飛灰に対するキレート剤の最小必要量を求めることができる。適正添加量範囲は、例えば、下限値はこの最小必要量とし、上限値は、安全率・経済性および環境負荷低減から総合的に判断して決定される安全係数を最小必要量に掛けた値と、最小必要量の和とする。
【0049】
なお、キレート剤の必要量は、飛灰に含まれる可溶性の重金属の量に比例するが、活性炭等の共存成分の影響も受け得る。したがって、飛灰にキレート剤を段階的に添加して反応させ、溶出試験によって重金属が溶出しなくなる量を、最小溶出防止量として実験的に求める。あらかじめ試験して求めたこの最小溶出防止量と、上記最小必要量との関係を係数として算出し、この係数を用いて補正することによって、最小必要量から最小溶出防止量を求めることができ、この値を最適添加量範囲の下限値としてもよい。
【0050】
また、安全係数は、例えば、事前に算出した、最小必要量と最小溶出防止量の誤差範囲や装置の処理誤差(具体的には、飛灰の供給量誤差、薬剤の供給量誤差、飛灰と薬剤の混合の均一性の誤差など)から適正処理を保つために必要な量、経済性および環境負荷への影響から余裕を持たせるのに必要な量、環境負荷監視、処理した飛灰を管理型埋め立て処分場に処分した際に、浸出水中に溶け出る余剰キレート剤が浸出水処理するに際し、硝化阻害やCOD負荷上昇の問題が起きない余剰量の上限を考慮して、算出する。
【0051】
なお、キレート剤として上述したジチオカルバミン酸は、300nm付近の紫外線領域に特異的な吸収を持っており、この波長の吸光度を検出することにより、濃度を測定することができる。ただし、飛灰には多種の夾雑物が含まれており、この夾雑物が吸光度に影響を及ぼし得るものである。したがって、このジチオカルバミン酸と反応して着色する試薬を加えることで、夾雑物の影響を排除し、より正確なキレート剤濃度を測定することができる。
【0052】
また、処理前飛灰分析部142において、飛灰処理剤として無機系飛灰処理剤を用いる場合について、処理前飛灰分析部142の具体的な操作を説明する。飛灰の水溶性成分が溶解した水溶液におけるpHと、固定化の対象である重金属イオンの溶解度との関係から、その重金属イオンの最大濃度が、埋め立て地における溶出基準を下回るためのpH範囲を求める。そして、処理対象である飛灰を水に浸漬させて得た水溶液が、上記pH範囲となる無機系飛灰処理剤添加量を求める。なお、基本的には、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(環境庁告示13号)にしたがって、飛灰と水を重量体積比10パーセント(海面埋め立ての場合は固形分として3パーセント)となる割合で混合し、6時間振とうして得た水溶液を用いるが、例えば、水:飛灰=10超:1~2000:1(質量比)の範囲で測定を行い、水:飛灰=10:1(質量比)で混合した場合の状態を予想してもよい。
【0053】
例えば、処理対象の重金属イオンが鉛である場合、pHが9.3で最も溶解度が低くなるため、pH=9.3を中心として、鉛が溶解できる最大の濃度が、溶出基準を下回る範囲を求める。なお、飛灰中の可溶性鉛が多いほど、溶液中の平衡濃度が高くなるため、この範囲は狭くなることが予想される。
【0054】
なお、飛灰中には多成分が共存し計算が難しいことから、処理対象である飛灰を用いてアルカリ度(または酸・アルカリ添加量)を変化させて、それに対応する重金属の溶出量を求め、アルカリ度(または酸・アルカリ添加量)と、重金属の溶出量との関係を実験的に求めて適正な範囲を決定してもよい。
【0055】
処理後飛灰分析部143は、飛灰処理部13で処理した飛灰の処理状態を計測し、その計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する。
【0056】
処理後飛灰分析部143において分析する飛灰の採取の頻度は特に限定されず、連続的又は間隙的(例えば、1時間に1回、数時間に1回、1日に1回)に行うことができる。なお、処理後飛灰分析部143において分析する飛灰(処理後の飛灰)の採取の頻度は、上述した処理前飛灰採取部141における飛灰(処理前の飛灰)の採取の頻度と一致していても、一致していなくてもよい。いずれの採取の頻度も一致しており、かつ処理前後の飛灰が対応するように採取する(例えば、バッチ式であれば同ロット、連続式であればタイミングを合わせる)のが好ましい。ただし、処理前の飛灰の性状が概ね一定である場合や、飛灰処理剤による処理が均一に行われる場合には、必ずしも頻度を一致させたり、処理前後の飛灰が対応するように時期を合わせたりする必要はない。また、処理前の飛灰の性状が大きい場合などには、処理前飛灰採取部141における飛灰(処理前の飛灰)の採取の頻度および処理後飛灰分析部143において分析する飛灰(処理後の飛灰)の採取の頻度頻度を増やすとよい。また、処理前飛灰採取部141における飛灰(処理前の飛灰)の採取の時期および処理後飛灰分析部143において分析する飛灰(処理後の飛灰)の採取の時期の間隔は短いほど好ましい。
【0057】
飛灰の処理状態の計測方法としては、飛灰中から溶出する重金属量が特定できる手段であれば特に限定されず、例えば、処理後飛灰分析部143で処理した後の飛灰を採取して、水に十分に浸漬して、飛灰中の水溶性成分を溶解させた後、その水に含まれる重金属量を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析測定などの手法により、分析すればよい。
【0058】
また、例えば、飛灰処理剤として、キレート剤を用いる場合について、処理後飛灰分析部143の具体的な操作を説明する。飛灰処理部13で処理した後の飛灰を、処理後飛灰分析部143で採取して、水に十分に浸漬して、飛灰中の水溶性成分を溶解させた後、その水にキレート剤を添加せずに、遊離のキレート剤の量を、吸光度などにより測定する。遊離のキレート剤が存在する状態では、ほぼ全ての重金属がキレート剤により固定されるため、遊離キレート剤の量が存在するか否かにより、ほぼ全ての重金属が固定化されているか否かを知ることもできる。
【0059】
また、飛灰処理剤として、キレート剤を用いる場合において、別の手段としては、処理後飛灰分析部143で処理した後の飛灰を採取して、水に十分に浸漬させて、飛灰中の水溶性成分を溶解させた後、その水にキレート剤を添加し、遊離のキレート剤の量を、吸光度などにより測定する。遊離のキレート剤の量が、採取した飛灰に添加したキレート剤の量と等しければ、適正な量のキレート剤が添加されていると判断する。一方で、遊離のキレート剤の量が、採取した飛灰に添加したキレート剤よりも多ければ、飛灰処理部13において余剰のキレート剤が添加されているといえる。また、遊離のキレート剤の量が、採取した飛灰に添加したキレート剤よりも少なければ、処理後の飛灰であるにも関わらず、さらにキレート剤が飛灰に消費されているため、飛灰処理剤が不足しているといえる。
【0060】
以上のようにして、飛灰処理剤を用いて処理した後の飛灰中から溶出し得る重金属を確認でき、その重金属の量などの測定結果により、重金属が固定されていることを確認して、埋め立て処分の可否を判断することができる。
【0061】
また、処理後飛灰分析部143での埋め立て処分の可否は、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、飛灰処理部13への飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、適正添加量範囲内にあるか否かで判定することもできる。ここで、「実際の添加量」とは、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて算出される値であり、必ずしも飛灰処理剤供給部12から飛灰処理部13に供給された値と一致しない。この「実際の添加量」は、例えば、飛灰処理剤としてキレート剤を用いる場合には、上述したようにして遊離キレート剤の量を算出して余剰量のキレート剤を算出することができる。一方、遊離キレート剤が微量しか検出されない場合や全く検出されない場合には、重金属の処理の程度が不足しているので、飛灰を水に十分に浸漬して、飛灰中の水溶性成分を溶解させた後、その水に遊離キレート剤が発生する程度の十分な量のキレート剤を添加し、遊離のキレート剤の量を、吸光度などにより測定する。このようにして算出した過不足するキレート剤の量を算出する。そして、処理前飛灰分析部142が飛灰処理剤供給部12に指示した量との量的関係(例えば比例関係)などから、実際の添加量を算出する。
【0062】
また、飛灰処理剤として、キレート剤を用いる場合において、別の手段としては、処理後飛灰分析部143で処理した後の飛灰を採取して、水に十分に浸漬させて、飛灰中の水溶性成分を溶解させた後、その水にキレート剤を添加し、遊離のキレート剤の量を、吸光度などにより測定する。遊離のキレート剤の量が、採取した飛灰に添加したキレート剤の量と等しければ、適正な量のキレート剤が添加されていると判断する。一方で、遊離のキレート剤の量が、採取した飛灰に添加したキレート剤よりも多ければ、飛灰処理部13において余剰のキレート剤が添加されているといえる。また、遊離のキレート剤の量が、採取した飛灰に添加したキレート剤よりも少なければ、処理後の飛灰であるにも関わらず、さらにキレート剤が飛灰に消費されているため、飛灰処理剤が不足しているといえる。この余剰の添加量または不足した添加量と、処理前飛灰分析部142が飛灰処理剤供給部12に指示した量との量的関係(例えば比例関係)などから、実際の添加量を算出してもよい。
【0063】
また、飛灰処理剤としてリン酸系化合物を用いる場合には、一定量の飛灰を水に十分に浸漬して、飛灰中の水溶性成分を溶解させた後、その水のpHを測定し、そのpH値およびあらかじめ用意したpHと飛灰処理剤の添加量との検量線から、飛灰処理剤の実際の添加量を算出することもできる。
【0064】
そして、以上のようにして算出した実際の添加量が、処理前飛灰分析部142にて算出した適正添加量範囲内にあれば、重金属の適正な固定化処理がなされており、埋め立て処理が可能と判定し、一方で、算出した実際の添加量が、適正添加量範囲外であれば、重金属の適正な固定化処理がなされておらず、埋め立て処理できないため、再処理が必要であると判定する。
【0065】
[データ記憶部]
データ記憶部15は、過去に処理した飛灰の性状や添加条件などの対応関係を記憶するものであり、過去の飛灰処理の記録をデータベース化するものである。データ記憶部15は、各種記憶媒体であってよい。
【0066】
データ記憶部15は、処理前飛灰分析部142、処理後飛灰分析部143、飛灰供給量測定部111、飛灰処理剤供給量測定部121、水供給量測定部161および処理後飛灰含水量測定部から、各種のデータを少なくとも受信可能な状態で接続されている。
【0067】
データ記憶部15に記憶されるデータは、特に限定されないが、例えば、処理前飛灰分析部142において算出した飛灰処理剤の適正添加量範囲、飛灰供給量測定部111において測定した飛灰の供給量、飛灰処理剤供給量測定部121において測定した飛灰処理剤の供給量、水供給量測定部161において測定した水の供給量、処理後飛灰含水量測定部において測定した処理対象である飛灰の含水量などが挙げられ、これらの対応関係をデータベース化して記憶しておく。
【0068】
[水供給部]
水供給部16は、水を貯留し供給するものである。水供給部16としては、特に限定されないが、例えば水を貯留するためのタンクと、一定量の水を定量して排出可能な定量フィーダーなどを組み合わせて用いることができる。
【0069】
水供給部16は、少なくとも、水を供給可能な状態で飛灰処理部13に接続されている。
【0070】
また、水供給部16は、水供給量測定部161を備えることができる。このように水供給量測定部161を設けることにより、指示したとおりの水が飛灰処理部13に添加されたかを確認することができる。水供給量測定部161は、飛灰処理部13に供給された水の量を測定するものであれば特に限定されないが、具体的には、水供給部16と飛灰処理部13の間に設けた流量計、質量計や、水を貯留するためのタンクに設けた質量計、レベル計などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。異なる機器を2種以上用いることにより、より正確な測定を行うことができる。
【0071】
<第1の態様の飛灰処理方法>
第1の態様の飛灰処理方法は、例えば上述した第1の態様の飛灰処理装置を用いて行うことができるものである。この飛灰処理方法は、飛灰に対し飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するため飛灰処理方法であって、飛灰処理剤の添加前の飛灰を採取し、採取した該飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤を、適正添加量範囲内で添加する処理前飛灰分析工程と、飛灰処理剤の添加後の飛灰を採取し、処理状態を計測する処理後飛灰分析工程と、処理後飛灰分析工程での飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、埋め立て処分の可否を判定する適正処理判定工程と、を含む方法である。具体的に、
図1に示す飛灰処理装置1を用いて、この飛灰処理方法を行う流れについて説明する。ただし、この飛灰処理方法は、全ての工程について
図1に示すような飛灰処理装置1を用いて自動化して行うこともできるし、一部または全ての工程または操作について手動で行うこともできる。
【0072】
[前準備]
飛灰処理装置1を実際に稼働して、飛灰を処理する前に、測定や分析を行う、処理前飛灰分析部142、処理後飛灰分析部143、飛灰供給量測定部111、飛灰処理剤供給量測定部121、水供給量測定部161および処理後飛灰含水量測定部について、正常な測定や分析を行えるかを確認することが好ましい。
【0073】
また、飛灰処理部13において、飛灰と飛灰処理剤が均一に混合できるか確認することが好ましい。飛灰処理部13の老朽化や飛灰中の異物の混入により、飛灰と飛灰処理剤が均一に混ざらないこともある。そこで、飛灰と飛灰処理剤の混合性を確認するために、飛灰処理剤に指標物質(例えば、塩化リチウム水溶液などのリチウム水溶液)を添加し混合して得られた飛灰を数回採取し、指標物質の濃度を分析してそのばらつきを確認することで、飛灰処理部13による飛灰と飛灰処理剤の混合性を確認することができる。そして、混合性が良好でなければ、水供給部16からの水量を調整したり、混合速度や混合時間を調整したりすることを検討する。なお、リチウムを使用するのは、通常のごみ焼却後の飛灰からは検出されにくく、かつ環境への影響も少ないためである。
【0074】
このようにして、前準備を行い、飛灰と飛灰処理剤の混合性を確認し、混合性のよい条件で飛灰の処理を行うことにより、飛灰処理剤が適切に混合されずに、飛灰処理剤の濃度に偏りが生じ、処理後飛灰分析部143のサンプリングが適正に行われないことを抑止することができる。
【0075】
[飛灰処理]
(処理前飛灰分析工程)
飛灰処理装置1を稼働するに際し、処理前飛灰分析部142は、飛灰処理添加前の飛灰の一部を採取し、採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤を適正添加量範囲内で添加するよう、飛灰処理剤供給部12に指示する。
【0076】
なお、飛灰が活性炭を含む場合には、処理基準値を求める工程分析法(13号溶出試験)に比べて最小添加量が少なく検出されるので、この知見に基づき適正添加量範囲を補正してもよい。
【0077】
ここで、飛灰処理部13には、飛灰供給部11より飛灰が供給されている。上述したように、処理前飛灰分析部142から飛灰処理剤の添加量について指示を受けた飛灰処理剤供給部12では、その量だけ飛灰処理剤を添加して十分に混練して混合する。この際、必要に応じて、水供給部16から飛灰処理部13に水を添加して、混練しやすくしてもよい。
【0078】
(処理後飛灰分析工程)
そして、所定の時間、飛灰処理剤と混練して処理された後の飛灰について、その一部を処理後飛灰分析部143によって採取し、その処理状態を計測する。
【0079】
(適正処理判定工程)
次いで、処理後飛灰分析部143は、この計測の結果に基づいて、埋め立ての可否を判断する。
【0080】
埋め立て処分の可否の判定は、上述したことと同様にして行うことができ、一例としては、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、適正添加量範囲内にあるか否かで判定する。
【0081】
以上のような飛灰処理方法は、バッチ式(回分式)または連続式のいずれで行うこともできる。バッチ式で処理を行う場合には、1バッチの開始前に処理前飛灰分析部142により飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定する。一方で、連続式で行う場合には、連続的または定期的に処理前飛灰分析部142により飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定する。連続式で行う場合の飛灰の採取の頻度は、飛灰の性状の変化の度合いやその変化の速さを調べて、あらかじめ最適な頻度を確認しておくことが好ましい。
【0082】
また、バッチ式で処理を行う場合には、1バッチの終了ごとに処理後飛灰分析部143により飛灰処理剤の実際の添加量を算出する。一方で、連続式で処理を行う場合には、連続的または定期的に処理後飛灰分析部143により飛灰処理剤の実際の添加量を算出して確認を行う。処理後飛灰分析部143により実際の添加量を算出するための、飛灰の採取時期は、混合が安定した後であることが好ましい。
【0083】
以上のような処理によって、環境への重金属の溶出を防止して、飛灰処理剤の量を過剰の添加をせず適正な量で処理しながら、より安定的な飛灰処理を行うことができる。
【0084】
なお、リアルタイムで処理の傾向を確認することにより、万が一の処理不良に迅速に対応することができる。
【0085】
万が一の処理不良に備えて、処理不良や処理能の低下が確認された場合、アラームなどを備えてもよい。
【0086】
処理不良が起こった場合、判定不良の原因を特定し、必要な対処を行う。具体的に、処理不要の原因は、処理(混合)精度の低下、各計測機器または分析機器の精度低下、飛灰の性状変化、飛灰処理剤添加と添加後の飛灰の性状の測定のタイミングのズレなどに分けて分析する。
【0087】
そして、処理(混合)精度の低下の場合には、加湿水量の調整を行う。それでも改善されない場合は撹拌羽根の劣化などの処理(混合)装置の不良と考えられるため処理(混合)装置のメンテナンスを行う。
【0088】
各計測機器または分析機器の精度低下の場合には、各種メンテナンス、修理、新品への交換などを行う。
【0089】
飛灰の性状変化の場合には、実際の必要量と処理前飛灰分析部での測定結果との乖離度を調べて処理前飛灰分析部での適正添加率算出式の補正(例えば、乖離度を補正係数化して、補正係数を積算するなど)を行う。
【0090】
飛灰処理剤の添加前と添加後にそれぞれ採取飛灰処理部で処理した飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部と、を有飛灰の性状の計測は、両者の計測間隔をできるだけ短くすることが、飛灰処理剤の添加量をより正確に制御できることから、そのように飛灰処理装置を構成することが好ましい。
【0091】
[維持管理]
処理前飛灰分析部142、処理後飛灰分析部143、飛灰供給量測定部111、飛灰処理剤供給量測定部121、水供給量測定部161および処理後飛灰含水量測定部など、分析機器、測定機器をモニタリングして常に適正な処理を維持できている確認することが好ましい。また、飛灰に硬質の異物が混入した場合、飛灰処理部13の負荷が上昇することがある。このような飛灰処理部13の負荷を、例えば、撹拌羽根が受ける圧力などから検知して、運転状態や、飛灰と飛灰処理剤との混合状態を確認することができる。
【0092】
維持管理にあたっては、定期的にそれぞれの分析に用いる検量線(例えば、吸光度の検量線)などを更新することが好ましい。また、定期的に測定機器のセンサー感度を確認することが好ましい。さらに、処理に使用する水(水供給部16の水)の水質についても定期的に確認することが好ましい。
【0093】
また、使用する飛灰処理剤や、飛灰処理装置1内の各種フィルターも定期的に交換することが好ましい。飛灰処理装置1の動作確認も定期的に行うことが好ましい。
【0094】
また、処理前後の飛灰についても定期的に採取して、公定分析し、処理前飛灰分析部142および処理後飛灰分析部143の測定値とクロスチェックすることが好ましい。
【0095】
<第2の態様の飛灰処理装置>
本発明に係る第2の態様の飛灰処理装置は、上述した第1の態様の飛灰処理装置1とは同様な構成を有するものの、主として処理後飛灰分析部143の動作が異なる。したがって、第2の態様の飛灰処理装置も、その構成のフロー図は、
図1で表される構成と同様であるため、以下、
図1を適宜参照して説明する。なお、第1の態様の飛灰処理装置と共通する構成(飛灰供給部11、飛灰処理剤供給部12、飛灰処理部13、飛灰処理剤添加管理部14のうち処理前飛灰採取部141および処理前飛灰分析部142ならびに水供給部16)についてはその説明を省略する。
【0096】
[飛灰処理剤添加管理部]
飛灰処理剤添加管理部14は、飛灰処理部13への飛灰処理剤の添加を、飛灰処理剤供給部12に指示するものである。この飛灰処理剤添加管理部14は、飛灰を採取する処理前飛灰採取部141と、処理前飛灰採取部141で採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤が適正添加量範囲内で飛灰処理部13に添加されるように飛灰処理剤供給部12に指示する処理前飛灰分析部142と、飛灰処理部13で処理した飛灰の処理状態を計測する処理後飛灰分析部143と、を有する。
【0097】
そして、第2の態様の飛灰処理装置においては、上述したとおり、このうち処理後飛灰分析部143は、第1の態様の飛灰処理装置とその動作が異なり、具体的に、処理した飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、飛灰処理部13への飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、適正添加量範囲外であって、過不足が生じていると判定した場合にのみ、飛灰処理部13への飛灰処理剤の添加量を増減させて、飛灰処理剤の添加量が適正添加量範囲内になるように、飛灰処理剤供給部12への指示を変更するものである。
【0098】
実際の添加量の算出方法については上述した方法と同様にして行うことができる。
【0099】
このようにして算出した実際の添加量が、処理前飛灰分析部142で設定した適正添加量範囲外である場合に、過不足が生じていると判断し、飛灰処理剤供給部12へ飛灰処理剤の添加量を変更するよう指示する。具体的に、実際の添加量が適正添加量範囲も多い場合には、過剰に添加を行っていると判定し、添加量を減らすよう指示し、実際の添加量が適正添加量範囲も少ない場合には、添加量に不足があると判定し、添加量を増やすよう指示する。
【0100】
<第2の態様の飛灰処理方法>
第2の態様の飛灰処理方法は、例えば上述した第2の態様の飛灰処理装置を用いて行うことができるものである。この第2の態様の飛灰処理方法は、飛灰に対し飛灰処理剤を添加して、飛灰を処理するため飛灰処理方法であって、飛灰処理剤の添加前の飛灰を採取し、採取した飛灰の性状に基づいて、飛灰処理に必要な飛灰処理剤の適正添加量範囲を設定し、飛灰処理剤を、適正添加量範囲内で添加する処理前飛灰分析工程と、飛灰処理剤の添加後の飛灰を採取し、処理状態を計測する処理後飛灰分析工程と、処理後飛灰分析工程での飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、飛灰処理部への飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、適正添加量範囲外である場合、飛灰を処理するのに過不足が生じていると判定する適正処理判定工程と、過不足が生じていると判定した場合にのみ、飛灰処理剤の添加量を増減させて、飛灰処理剤の添加量が適正添加量範囲内になるように、飛灰処理剤の添加量を変更する飛灰処理剤添加量変更工程と、を含む方法である。なお、この飛灰処理方法も、全ての工程について
図1に示すような飛灰処理装置1を用いて自動化して行うこともできるし、一部または全ての工程または操作について手動で行うこともできる。
【0101】
この飛灰処理方法は、上述した第1の態様の飛灰処理方法と比較して、適正処理判定工程の具体的な操作が異なるとともに、さらに飛灰処理剤添加量変更工程を有する点も異なる。以下、この2つの工程について、具体的に説明する。
【0102】
(適正処理判定工程)
適正処理判定工程は、処理後飛灰分析工程での飛灰の処理状態の計測結果に基づいて、飛灰処理部13への飛灰処理剤の実際の添加量を算出し、算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、適正添加量範囲外である場合、飛灰を処理するのに過不足が生じていると判定する工程である。
【0103】
すなわち、処理後飛灰分析部143により算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、処理前飛灰分析部142により設定した飛灰処理剤の適正添加量範囲内である場合には、適正に処理が行えており、このようにして処理された飛灰は、埋め立て処分が可能であると判定される。
【0104】
これに対し、処理後飛灰分析部143により算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、処理前飛灰分析部142により設定した飛灰処理剤の適正添加量範囲より多い場合、飛灰は十分に処理されているから、埋め立て処分が可能である。ただし、余剰の飛灰処理剤の添加は、コストを増加させる原因となるし、飛灰処理剤としてキレート剤などの有機系飛灰処理剤を用いる場合には、飛灰の処理に必要な有機系処理剤の添加量よりも余剰に添加していると、その余剰添加量の分だけ、COD排出量が多くなる。このため、飛灰処理剤の余剰な添加量を減らして、実際の添加量が適正添加量範囲内になるように、飛灰処理剤供給部12に対する飛灰処理剤の添加量の指示を変更する必要がある。
【0105】
また、処理後飛灰分析部143により算出した飛灰処理剤の実際の添加量が、処理前飛灰分析部142により設定した飛灰処理剤の適正添加量範囲より少ない場合、飛灰は十分に処理されていないから、埋め立て処分することができない。かかる場合には、処理後の飛灰は、再処理するための装置系に送られ、そこで処理される。
【0106】
このような飛灰処理方法によれば、灰を処理するに際し、飛灰の性状などの違いによって、飛灰を処理するのに必要な飛灰処理剤の適正な添加量が変動した場合であっても、正しい適正添加量に補正することができ、飛灰処理剤を過剰添加することによる処理コストの上昇や、処理した飛灰を埋立て処分した際のCOD負荷の問題が生じるのを有効に防止することができ、より高い信頼性をもって飛灰中の重金属を不溶化することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 飛灰処理装置
11 飛灰供給部
111 飛灰供給量測定部
12 飛灰処理剤供給部
121 飛灰処理剤供給量測定部
13 飛灰処理部
14 飛灰処理剤添加管理部
141 処理前飛灰採取部
142 処理前飛灰分析部
143 処理後飛灰分析部
15 データ記憶部
16 水供給部
161 水供給量測定部
2 飛灰処理装置
21 飛灰供給部
211 飛灰供給量測定部
22 飛灰処理剤供給部
221 飛灰処理剤供給量測定部
23 飛灰処理部
24 飛灰処理剤添加管理部
241 処理前飛灰採取部
242 処理前飛灰分析部
25 データ記憶部
26 水供給部
261 水供給量測定部