(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ラテックス接着剤組成物、接着体およびウエットスーツ
(51)【国際特許分類】
C09J 111/02 20060101AFI20230516BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20230516BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20230516BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20230516BHJP
B63C 11/04 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C09J111/02
C09J175/04
B32B5/24
B32B5/32
B63C11/04 A
(21)【出願番号】P 2019146284
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018156315
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】喜多 求
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-27024(JP,A)
【文献】特開2004-67915(JP,A)
【文献】特開2002-60711(JP,A)
【文献】特開2001-288448(JP,A)
【文献】特開2001-89727(JP,A)
【文献】特表2007-530751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 111/02
C09J 175/04
B32B 5/24
B32B 5/32
B63C 11/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリクロロプレンゴムラテックス(A)100重量部に対し、ポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)を3~8重量部含有するラテックス接着剤組成物。
【請求項2】
ポリクロロプレンゴムラテックス(A)中のポリクロロプレンゴムが、クロロプレン単量体と、カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体より選ばれる1種以上の単量体との共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のラテックス接着剤組成物。
【請求項3】
ポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)がポリエーテルポリオール(b1)と有機ジイソシアネート(b2)のアロファネート体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラテックス接着剤組成物。
【請求項4】
有機ジイソシアネート(b2)がヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項3に記載のラテックス接着剤組成物。
【請求項5】
発泡体同士又は発泡体とテキスタイルが、請求項1~4のいずれかに記載のラテックス接着剤組成物で接着された接着体。
【請求項6】
発泡体の素材が、ポリクロロプレンゴムであることを特徴とする請求項5の記載の接着体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の接着体からなるウエットスーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロロプレンゴムを含むラテックス接着剤組成物、更に詳しくは発泡体同士或いは発泡体とテキスタイルとの接着において、優れた接着強度と柔軟性を両立させることが可能なラテックス接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエットスーツ、サポーター、スポーツシューズの中敷き、衝撃吸収剤等の製造において、被着体として各種の発泡体が用いられている。従来、これらの接着において、ポリクロロプレンゴム等をベースとした溶剤系接着剤が用いられてきた。しかしながら、これらの接着剤に使用される有機溶剤の揮散が、作業者の健康障害、あるいは作業場の火災等を引き起こす原因となっており、このような心配のないラテックス系接着剤が切望されて来た。
【0003】
一方、従来のポリクロロプレンゴムラテックスは、接着強度が不十分であるという問題があった。この問題を解決する方法として、例えば発泡体との接着において、ポリクロロプレンラテックスを主成分とし、架橋剤としてポリイソシアネートを含む接着剤やその接着方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしポリイソシアネートにより接着剤被膜が硬化することで、接着強度が向上する反面接着後の発泡体の柔軟性を損なうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-104028号公報
【文献】特開2003-27024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のポリクロロプレンゴムラテックス系接着剤では十分な接着強度が得られない、もしくは、柔軟性が低下してしまうスポーツグッズやウエットスーツ用の素材となる発泡体同士、あるいは発泡体とテキスタイルの接着において、良好な接着強度と柔軟性を有するラテックス接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物をポリクロロプレンゴムラテックスに混合させることで、ポリクロロプレンゴムラテックスを主成分としてなる接着剤組成物と発泡体との接着強度向上が可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち本発明は、ポリクロロプレンゴムラテックス(A)100重量部に対し、ポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)を3~8重量部含有するラテックス接着剤組成物である。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明のラテックス接着剤組成物は、ポリクロロプレンゴムラテックス(A)100重量部に対し、ポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)を3~8重量部含有する。
【0010】
ポリクロロプレンゴムラテックス(A)は各種製品が市販されており、クロロプレン単量体の単独重合体を含むラテックス、クロロプレン単量体と、カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体より選ばれる1種以上の単量体との共重合体のラテックス等が存在する。カルボキシル基含有単量体としてアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、水酸基含有単量体としてはアクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0011】
ポリクロロプレンラテックスは特に限定されるものではないが、ポリクロロプレンゴムは低温化で結晶化により硬くなるため、1種以上の単量体との共重合体を含むポリクロロプレンゴムラテックスが好ましい。
【0012】
本発明のポリクロロプレンゴムラテックス(A)を主成分とする接着剤組成物は、十分な接着強度と柔軟性を両立するために、ポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)を含む事が必要である。
【0013】
本発明で用いられるポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)は、ポリエーテルオール(b1)と有機ジイソシアネート(b2)のアロファネート体であることが好ましく、更には、任意にメトキシポリエチレングリコールを含んでいてもよい。更には、乳化剤等で保護をしていない非水分散型であることが好ましい。
【0014】
ポリエーテルオール(b1)は、いわゆる高分子ポリオールと呼ばれるもので、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンポリオールが好ましく、接着体の柔軟性と接着強度を考慮すると、特にポリテトラメチレンポリオールが好ましい。ポリエーテルオール(b1)の平均官能基数は2以上、数平均分子量は200~3,000のものが好ましい。
【0015】
有機ジイソシアネート(b2)としては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらはいずれも単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。本発明においては、接着体の柔軟性と接着強度を考慮すると、脂肪族ジイソシアネートと脂環族ジイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0016】
アロファネート化触媒は、カルボン酸ジルコニウム塩を用いる。カルボン酸ジルコニウム塩を用いることにより、助触媒等を使用することなく、実質的に着色のないアロファネート変性ポリイソシアネートが比較的容易に得られる。ここで使用されるカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ(4.4.0)デカン-2-カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、ナフテン酸等の上記したカルボン酸の混合物、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類が挙げられる。これらのカルボン酸ジルコニウム塩は、単独あるいは2種以上の混合物のいずれの形態で用いてもよい。本発明で好ましいアロファネート化触媒は、炭素数10以下のモノカルボン酸ジルコニウム塩が好ましい。
【0017】
次に具体的な製造手順について説明する。
【0018】
製造手順は、以下の工程からなる。
第一工程:ポリエーテルポリオール(b1)と有機ジイソシアネート(b2)をアロファネート化触媒の存在下で反応させる工程。
第二工程:触媒毒を添加して、アロファネート化反応を停止する工程。
第三工程:遊離の有機ジイソシアネートを除去する工程。
【0019】
第一工程は、ウレタン化反応とアロファネート化反応からなる。具体的な手順は、ポリエーテルポリオール(b1)及び有機ジイソシアネート(b2)をイソシアネート基を水酸基に対して過剰となる量を仕込んで、20~100℃でウレタン化反応させた後、70~150℃にてアロファネート化触媒の存在下でウレタン基が実質的に存在しなくなるまでアロファネート化反応させる、という手順である。
【0020】
ここで「イソシアネート基を水酸基に対して過剰となる量」とは、原料仕込みの際、イソシアネート基を水酸基に対して過剰となるという意味であり、イソシアネート基と水酸基のモル比がイソシアネート基/水酸基=8以上が好ましく、10~50が特に好ましい。
【0021】
ウレタン化反応の反応温度は20~120℃であり、好ましくは50~100℃である。なお、ウレタン化反応の際、公知のいわゆるウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。
【0022】
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無や種類、反応温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1~5時間である。
【0023】
ウレタン化反応が終了したら、アロファネート化反応を行う。アロファネート化反応は、前述のアロファネート化触媒を添加し、反応温度を70~150℃、好ましくは80~130℃にして行う。反応温度が低すぎる場合は、アロファネート基があまり生成せず、得られるポリイソシアネートの平均官能基数が低下することになる。このようなポリイソシアネートを硬化剤に用いると、接着物性が不十分となりやすい。反応温度が高すぎる場合は、得られるポリイソシアネートを不必要に加熱することになり、ポリイソシアネートが着色する原因になることがある。なお、ポリイソシアネートの平均官能基数とは、1分子中に存在するイソシアネート基の平均数である。
【0024】
なお、本発明においては、ウレタン化反応とアロファネート化反応を同時に行うこともできる。この場合は、ポリエーテルポリオール(b1)及び有機ジイソシアネート(b2)をイソシアネート基を水酸基に対して過剰となる量を仕込んで、70~150℃にてアロファネート化触媒の存在下でウレタン化反応及びアロファネート化反応を同時に行う。
【0025】
アロファネート化触媒の使用量はその種類により異なるが、上記(b1)と(b2)の総和量に対して、0.0005~1質量%が好ましく、0.001~0.1質量%がより好ましい。触媒使用量が0.0005質量%未満の場合は、反応が遅くなって長時間を要し、熱履歴による着色が起こる場合がある。一方触媒使用量が1質量%を超える場合は、反応制御が難しなり、副反応である二量化反応(ウレトジオン化反応)や三量化反応(イソシアヌレート化反応)が起こる場合があり、また得られたポリイソシアネートを硬化剤として用いた場合、弾性が失われる等の問題が生じることがある。
【0026】
反応時間は、触媒の種類や添加量、反応温度により異なるが、通常10時間以内が好ましく、特に好ましくは1~5時間である。
【0027】
なお、このとき必要に応じて有機溶剤を用いることができる。この有機溶剤としては、n-ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系有機溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系有機溶剤、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶剤等が挙げられる。前記溶剤は1種又は2種以上使用することができる。
【0028】
第二工程は、アロファネート化反応後、触媒毒を添加してアロファネート化反応を停止させる工程である。触媒毒の添加時期は、アロファネート化反応後であれば特に制限はないが、第三工程における、遊離の有機ジイソシアネートを除去する方法に薄膜蒸留を行う場合は、アロファネート反応後かつ薄膜蒸留前に触媒毒の添加を行うのが好ましい。これは、薄膜蒸留時の熱により、副反応が起こるのを防止するためである。
【0029】
この触媒毒としては、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸及びこれらのエステル類、アシルハライド等公知の物が挙げられる。
【0030】
触媒毒の添加量はその種類や触媒の種類により異なるが、触媒の0.5~2当量となる量が好ましく、0.8~1.5当量が特に好ましい。触媒毒が少なすぎる場合は、得られるポリイソシアネートの貯蔵安定性が低下しやすい。多すぎる場合は、得られるポリイソシアネートが着色する場合がある。
【0031】
第三工程は、遊離の有機ジイソシアネート(b2)を除去する工程である。本発明においては、基本的にはアロファネート化反応後の生成物には、遊離の有機ジイソシアネートが存在している。この遊離の有機ジイソシアネートは、臭気や経時変化した場合に濁りの原因となるため、遊離の有機ジイソシアネート含有量が1質量%以下となるまで未反応の有機ジイソシアネート(b2)を除去するのが好ましい。
【0032】
遊離の有機ジイソシアネートを除去する方法としては、蒸留、再沈、抽出等公知の方法が挙げられ、蒸留法、特に薄膜蒸留法を使用すると、溶剤等を用いる必要がないので好ましい。また、好ましい薄膜蒸留の条件としては、圧力:0.1kPa以下、温度:100~200℃であり、特に好ましい条件は圧力:0.05kPa以下、温度:120~180℃である。
【0033】
本発明の接着剤組成物はポリクロロプレンゴム100重量部に対しポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)を3~8重量部含有する。ポリイソシアネート化合物の含有量が3重量部未満では接着物性が低下し、8重量部を超えると被着体の柔軟性が低下する。
【0034】
接着剤組成物の粘度は、各種増粘剤、例えば、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、疎水化セルロース、会合型ノニオン界面活性剤等の水溶性ポリマー、及びカルボキシル基含有ポリマーから構成されるアルカリ可溶型の増粘剤、ヘクトライト等のシリケート化合物等の配合により所望の粘度に調整できる。また必要に応じて、ロジンエス
テル、テルペンフェノール、石油樹脂、クマロン樹脂等の粘着付与樹脂、老化防止剤、防腐剤、凍結防止剤、造膜助剤、可塑剤、pH調整剤等を適宜配合しても良い。
【0035】
本発明の接着剤組成物は、スポーツグッズやウエットスーツ用等の素材となる発泡体同士、又は発泡体とテキスタイルの接着に用いられる。
【0036】
発泡体の素材としては、ポリクロロプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、およびそれらの混合物を成型し発泡したものを挙げることができる。なかでも、ウエットスーツ用の発泡体としては、柔軟性に優れたポリクロロプレンゴムが使用される。
【0037】
テキスタイルとしては、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維や、綿・絹等の天然繊維の不織布などがあるが、ウエットスーツ用としては撥水効果をもたせたジャージが用いられる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の接着剤組成物は、発泡体同士、または発泡体とテキスタイルとの接着強度に優れ、その接着体は優れた柔軟性を維持する。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
なお、合成例・実施例における「%」は「質量%」を意味し、常温剥離強度、柔軟性は以下の方法で測定・評価した。
<接着状態の確認>
接着した試料を恒温室において23℃×1日間養生後、25mm×150mmの裁断機で打ち抜き、試験片を作製した。発泡体とテキスタイルを手によって剥離し、その際の剥離状態を観察した。
【0041】
剥離状態は、以下のように判断した。
【0042】
(良) 材料破壊(材破)>凝集破壊(凝集)>界面破壊(界面) (劣)
<常温剥離強度の測定および剥離状態の確認>
接着した試料を恒温室において23℃×1日間養生後、25mm×150mmの裁断機で打ち抜き、試験片を作製した。テンシロン型引張り試験機を用いて、発泡体とテキスタイルを引張り速度20mm/minにて引っ張り、剥離強度およびその際の剥離状態を観察した。
【0043】
剥離状態は、以下のように判断した。
【0044】
(良) 材料破壊(材破)>凝集破壊(凝集)>界面破壊(界面) (劣)
<耐トルエン性の測定>
接着した試料を恒温室において23℃×7日間養生後、試料にトルエンを滴下しながらテンシロン型引張り試験機による常温剥離試験を実施し、剥離状態を観察した。材料破壊しない場合は剥離強度を測定した。
【0045】
剥離状態は、以下のように判断した。
【0046】
(良) 材料破壊(材破)>凝集破壊(凝集)>界面破壊(界面) (劣)
<柔軟性の測定>
接着した試料を恒温室において23℃×7日間養生後、25mm×150mmの裁断機で打ち抜き、試験片を作製した。テンシロン型引張り試験機に試験片の両端を取り付け、引張り速度100mm/minの条件で23℃における60%伸長時の引張応力を測定した。
また、同様に接着剤を塗布していないスポンジ片と、撥水性ナイロンジャージの60%引張応力を測定し、その差を接着剤引張応力として評価した。
[アロファネート型ポリイソシアネート化合物(B)の製造]
合成例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを890g、数平均分子量が250のポリテトラメチレングリコール(製品名:TERATHANE250)を110g、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT-IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2-エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT-IR及び13C-NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行って、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートを薄膜蒸留にて除去し、イソシアネート含量が16.5%のポリエーテル変性アロファネート型イソシアネート化合物(NCO-1)を得た。
【0047】
合成例2
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量1Lの反応器に、合成例1で得たNCO-1を900g、数平均分子量が400のメトキシポリエチレングリコールを100g仕込み、80℃で4時間反応させて、イソシアネート含量は13.7%のポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物(NCO-2)を得た。
【0048】
合成例3、4
合成例2と同様にして、表1に示す原料を用いてポリエーテル変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物の製造を行った。
【0049】
【0050】
合成比較例1
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量1Lの反応器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを950g、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを50g、90℃で2時間ウレタン化反応を行った。反応生成物をFT-IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次に、2-エチルヘキサン酸ジルコニウムを0.36g仕込み、90℃にて3時間アロファネート化反応させた。反応生成物をFT-IR及び13C-NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.1g仕込み、50℃で1時間停止反応を行って、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートを薄膜蒸留にて除去し、イソシアネート含量が19.4%のグリコール変性アロファネート型イソシアネート化合物(NCO-5)を得た。
【0051】
合成比較例2、3
合成例2と同様にして、表2に示す原料を用いてグリコール変性アロファネート型ポリイソシアネート化合物の製造を行った。
【0052】
【0053】
実施例1
ポリクロロプレンゴムラテックス(東ソー(株)製クロロプレン・メタクリル酸共重合体、商品名:スカイプレンGFL-890)100重量部、アロファネート型イソシアネート化合物NCO-1を5重量部、及び会合型粘度調節剤((株)アデカ製、商品名:アデカノールUH-438)2.5重量部をホモミキサーにより均一に混合し接着剤組成物を作製した。接着剤をCR製スポンジ片に約50~100g/m2(wet)塗布し、撥水性ナイロンジャージを皺が生じないように重ね、100℃のオーブン中で1分間プレス乾燥した後、更に5分間乾燥した。作製した試料の組成および評価結果を表3に示す。
【0054】
【0055】
剥離試験ではスポンジ材破が主で常温剥離強度は高かった。また、耐トルエン性も良好で剥離強度は高い反面試験片の引張応力は低く柔軟性は良好な結果であった。
【0056】
実施例2、3
混合するアロファネート型イソシアネート化合物NCO-1の重量を表3に示す量に変更した以外は実施例1に従い接着剤組成物を作製し、評価を行った。剥離試験ではスポンジ材破が主で常温剥離強度は高く、耐トルエン性も良好。柔軟性も良好な結果であった。
【0057】
実施例4、5、6
混合するアロファネート型イソシアネート化合物をNCO-2、NCO-3およびNCO-4に変更した以外は実施例1に従い接着剤組成物を作製し、評価を行った。剥離試験ではスポンジ材破が主で常温剥離強度は高く、耐トルエン性も良好。柔軟性も良好な結果であった。
【0058】
比較例1
混合するアロファネート型イソシアネート化合物NCO-1の重量を表4に示す量に変更した以外は実施例1に従い接着剤組成物を作製し、評価を行った。柔軟性は良好であったが、剥離試験ではスポンジ界面で剥離常温剥離強度および耐トルエン性が劣った。
【0059】
【0060】
比較例2
混合するアロファネート型イソシアネート化合物NCO-1の重量を表4に示す量に変更した以外は実施例1に従い接着剤組成物を作製し、評価を行った。接着強度および耐トルエン性は良好であったが、接着剤の引張応力が高く柔軟性が劣った。
【0061】
比較例3
混合するアロファネート型イソシアネート化合物をNCO-5に変更した以外は実施例1に従い接着剤組成物を作製し、評価を行った。接着強度および耐トルエン性は良好であったが、接着剤の引張応力が高く柔軟性が劣った。
【0062】
比較例4、5
混合するアロファネート型イソシアネート化合物をNCO-6およびNCO-7に変更した以外は実施例1に従い接着剤組成物を作製し、評価を行った。接着強度は良好であったが、耐トルエン性が低く、接着剤の引張応力が高く柔軟性が劣った。