(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】研磨液及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230516BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230516BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20230516BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
(21)【出願番号】P 2022508513
(86)(22)【出願日】2020-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2020042107
(87)【国際公開番号】W WO2022102019
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 大介
(72)【発明者】
【氏名】青木 雅子
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153678(JP,A)
【文献】特開2012-084906(JP,A)
【文献】特開2019-121641(JP,A)
【文献】特開2009-10402(JP,A)
【文献】国際公開第2019/182063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、カルボキシ基を有さない一価の酸成分と、ノニオン性ポリマーと、を含有し、
前記酸成分がスルホン酸化合物を含み、
pHが4.5以下である、研磨液。
【請求項2】
前記酸成分のpKaが4.50以下である、請求項1に記載の研磨液。
【請求項3】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、カルボキシ基を有さない一価の酸成分と、ノニオン性ポリマーと、を含有し、
前記酸成分のpKaが0~4.50であり、
pHが4.5以下である、研磨液。
【請求項4】
前記酸成分がスルホン酸化合物を含む、請求項
3に記載の研磨液。
【請求項5】
前記ノニオン性ポリマーが、グリセリン系ポリマー及びポリオキシアルキレン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記ノニオン性ポリマーがグリセリン系ポリマーとポリオキシアルキレン化合物とを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項7】
塩基成分を更に含有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項8】
前記塩基成分がピラゾール化合物を含む、請求項
7に記載の研磨液。
【請求項9】
前記砥粒がセリウム水酸化物を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項10】
pHが3.5以上である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項11】
酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面の研磨に用いられる、請求項1~
10のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項13】
前記被研磨面が酸化珪素及び窒化珪素を含む、請求項
12に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、研磨液、研磨方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の製造工程では、高密度化及び微細化のための加工技術の重要性がますます高まっている。加工技術の一つであるCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング:化学機械研磨)技術は、半導体素子の製造工程において、シャロートレンチ分離(シャロー・トレンチ・アイソレーション。以下「STI」という。)の形成、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化、プラグ又は埋め込み金属配線の形成等に必須の技術となっている。
【0003】
最も多用されている研磨液としては、例えば、砥粒として、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ(酸化珪素)粒子を含むシリカ系研磨液が挙げられる。シリカ系研磨液は、汎用性が高いことが特徴であり、砥粒含有量、pH、添加剤等を適切に選択することで、絶縁材料及び導電材料を問わず幅広い種類の材料を研磨できる。
【0004】
一方で、主に酸化珪素等の絶縁材料を対象とした研磨液として、セリウム化合物粒子を砥粒として含む研磨液の需要も拡大している。例えば、セリウム酸化物粒子を砥粒として含むセリウム酸化物系研磨液は、シリカ系研磨液よりも低い砥粒含有量でも高速に酸化珪素を研磨できる(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0005】
近年、半導体素子の製造工程では、更なる配線の微細化を達成することが求められており、研磨時に発生する研磨傷が問題となっている。すなわち、従来のセリウム酸化物系研磨液を用いて研磨を行った際に微小な研磨傷が発生しても、この研磨傷の大きさが従来の配線幅より小さいものであれば問題にならなかったが、更なる配線の微細化を達成しようとする場合には、研磨傷が微小であっても問題となってしまう。
【0006】
この問題に対し、セリウム水酸化物の粒子を用いた研磨液が検討されている(例えば、下記特許文献3~5参照)。また、セリウム水酸化物の粒子の製造方法についても検討されている(例えば、下記特許文献6及び7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-106994号公報
【文献】特開平08-022970号公報
【文献】国際公開第2002/067309号
【文献】国際公開第2012/070541号
【文献】国際公開第2012/070542号
【文献】特開2006-249129号公報
【文献】国際公開第2012/070544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の半導体素子では、微細化がますます加速し、配線幅の縮小と共に薄膜化が進んでいる。これに伴い、STIを形成するためのCMP工程等において、凹凸パターンを有する基板の凸部上に配置されたストッパの過研磨を抑制しつつ絶縁部材を研磨する必要がある。このような観点から、研磨液に対しては、ストッパ材料に対する絶縁材料の優れた研磨選択性(研磨速度比:絶縁材料の研磨速度/ストッパ材料の研磨速度)を得ることが求められており、例えば、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性(研磨速度比:酸化珪素の研磨速度/窒化珪素の研磨速度)を得ることが求められている。
【0009】
本開示の一側面は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることが可能な研磨液を提供することを目的とする。また、本開示の他の一側面は、当該研磨液を用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面は、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、カルボキシ基を有さない一価の酸成分と、ノニオン性ポリマーと、を含有し、pHが4.5以下である、研磨液に関する。
【0011】
本開示の他の一側面は、上述の研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法に関する。
【0012】
このような研磨液及び研磨方法によれば、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去することが可能であり、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一側面によれば、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることが可能な研磨液を提供することができる。また、本開示の他の一側面によれば、当該研磨液を用いた研磨方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<定義>
本明細書において、「研磨液」とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨液」という語句自体は、研磨液に含有される成分を何ら限定しない。後述するように、本実施形態に係る研磨液は砥粒(abrasive grain)を含有することができる。砥粒は、「研磨粒子」(abrasive particle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は一般的には固体粒子であって、研磨時に、砥粒が有する機械的作用、及び、砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、研磨のメカニズムは限定されない。「研磨速度(Polishing Rate)」とは、単位時間当たりに材料が除去される速度(除去速度=Removal Rate)を意味する。
【0016】
「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。数値範囲の「A以上」とは、A、及び、Aを超える範囲を意味する。数値範囲の「A以下」とは、A、及び、A未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。「膜」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0017】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒と、カルボキシ基を有さない一価の酸成分(以下、場合により「酸成分A」という)と、ノニオン性ポリマーと、を含有し、pHが4.5以下である。本実施形態に係る研磨液は、CMP研磨液として用いることができる。本実施形態に係る研磨液は、酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面(露出面)の研磨に用いることが可能であり、酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面を研磨して、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去するために用いることができる。
【0018】
本実施形態に係る研磨液によれば、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去することが可能であり、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性(研磨速度比:酸化珪素の研磨速度/窒化珪素の研磨速度)を得ることができる。本実施形態に係る研磨液によれば、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨速度比として30以上の研磨速度比を得ることができる。
【0019】
上述の効果が発現される理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察している。すなわち、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は正のゼータ電位を有する傾向があるのに対し、酸化珪素は負のゼータ電位を有する傾向があることから、砥粒と酸化珪素との静電引力によって酸化珪素の研磨が促進される。一方、研磨液のpHが4.5以下である場合、窒化珪素は正のゼータ電位を有する傾向があることから、砥粒と窒化珪素との静電反発力によって窒化珪素の研磨が抑制される。そして、研磨液のpHが4.5以下である場合において4価金属元素の水酸化物を含む砥粒が酸成分A及びノニオン性ポリマーと共存することにより、酸化珪素の研磨が顕著に促進されると共に窒化珪素の研磨が顕著に抑制される。以上の理由から、本実施形態に係る研磨液によれば、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることができる。但し、効果が発現する理由は当該内容に限定されない。
【0020】
窒化珪素に対する酸化珪素の研磨速度比は、50以上が好ましく、100以上がより好ましく、200以上が更に好ましく、400以上が特に好ましく、800以上が極めて好ましく、1500以上が非常に好ましく、2000以上がより一層好ましい。窒化珪素に対する酸化珪素の研磨速度比は、5000以下、4000以下、又は、3000以下であってよい。
【0021】
(砥粒)
砥粒は、4価金属元素の水酸化物を含む。「4価金属元素の水酸化物」とは、4価の金属イオン(M4+)と、少なくとも1つの水酸化物イオン(OH-)とを含む化合物である。4価金属元素の水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO3
-及び硫酸イオンSO4
2-)を含んでいてもよい。例えば、4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素に結合した陰イオン(例えば、硝酸イオンNO3
-及び硫酸イオンSO4
2-)を含んでいてもよい。
【0022】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒は、シリカ、セリア等からなる砥粒と比較して、絶縁材料である酸化珪素との反応性が高く、酸化珪素を高い研磨速度で研磨することができる。また、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒によれば、被研磨面に傷がつくことを抑制しやすい。4価金属元素の水酸化物を含む砥粒以外の他の砥粒としては、例えば、シリカ、アルミナ、セリア等を含む砥粒が挙げられる。また、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒として、4価金属元素の水酸化物とシリカとを含む複合粒子等を用いることもできる。
【0023】
4価金属元素の水酸化物は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、希土類金属元素の水酸化物及びジルコニウムの水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、希土類金属元素の水酸化物を含むことがより好ましい。4価をとり得る希土類金属元素としては、セリウム、プラセオジム、テルビウム等のランタノイドなどが挙げられ、中でも、絶縁材料(酸化珪素等)の研磨速度を向上させやすい観点から、ランタノイドが好ましく、セリウムがより好ましい。換言すれば、砥粒は、4価金属元素の水酸化物として、セリウム水酸化物を含むことがより好ましい。希土類金属元素の水酸化物とジルコニウムの水酸化物とを併用してもよく、希土類金属元素の水酸化物から二種以上を選択して使用することもできる。
【0024】
4価金属元素の水酸化物を含む砥粒において、4価金属元素の水酸化物の含有量は、砥粒全体(研磨液に含まれる砥粒全体)を基準として、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましい。研磨液の調製が容易であると共に研磨特性にも更に優れる観点から、砥粒が実質的に4価金属元素の水酸化物からなる(砥粒の実質的に100質量%が4価金属元素の水酸化物の粒子である)ことが最も好ましい。特に、砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量が上述の範囲であることが好ましい。
【0025】
砥粒の平均粒径は、絶縁材料(酸化珪素等)の研磨速度を向上させやすい観点から、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましく、1nm以上が更に好ましく、2nm以上が特に好ましく、3nm以上が極めて好ましく、5nm以上が非常に好ましく、10nm以上がより一層好ましく、12nm以上が更に好ましい。砥粒の平均粒径は、被研磨面に傷がつくことを更に抑制しやすい観点から、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、30nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましく、15nm以下が極めて好ましく、12nm以下が非常に好ましい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、0.1~100nmが好ましい。
【0026】
砥粒の「平均粒径」とは、研磨液中における砥粒の平均二次粒径を意味する。砥粒の平均粒径は、光回折散乱式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaMax PROを用いて測定することができる。ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaMax PROを用いた測定方法は、具体的には例えば、研磨液を12.5mm×12.5mm×45mm(高さ)の測定用セルに約0.5mL(Lは「リットル」を示す。以下同じ)入れた後、装置内にセルを設置する。測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Mean(キュムラント径)として表示される値を砥粒の平均粒径として採用できる。
【0027】
研磨液中における砥粒のゼータ電位は、下記の範囲が好ましい。砥粒のゼータ電位は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、正である(0mVを超える)ことが好ましい。ゼータ電位(ζ[mV])は、ゼータ電位測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製のDelsaNano C(装置名))を用いて測定することができる。研磨液中の砥粒のゼータ電位は、例えば、研磨液を前記ゼータ電位測定装置用の濃厚セルユニット(高濃度サンプル用のセル)に入れて測定することにより得ることができる。
【0028】
砥粒の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。砥粒の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.04質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましい。砥粒の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.08質量%以下が非常に好ましく、0.05質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、0.001~10質量%が好ましい。
【0029】
(添加剤)
本実施形態に係る研磨液は、添加剤を含有する。「添加剤」とは、砥粒及び水以外に研磨液が含有する物質を指す。
【0030】
[酸成分A]
本実施形態に係る研磨液は、カルボキシ基(-COOH)を有さない一価の酸成分Aを含有する。「カルボキシ基を有さない一価の酸成分」とは、分子内にカルボキシ基(水素原子が解離して得られるカルボキシレート基(-COO-)も包含する)を有さず、且つ、酸の価数が一価である酸成分を意味する。酸成分Aは、カルボキシ基及びカルボン酸塩基(カルボキシ基の水素原子が金属原子(ナトリウム原子、カリウム原子等)に置換された官能基)を有さない一価の酸成分であってよい。
【0031】
酸成分Aを用いることで、砥粒の凝集等を防ぎつつ、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることができる。酸成分Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、有機酸成分(有機酸及び有機酸誘導体)を含むことが好ましく、スルホン酸化合物(スルホン酸及びスルホン酸塩)及びスルフィン酸化合物(スルフィン酸及びスルフィン酸塩)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましく、スルホン酸化合物を含むことが更に好ましい。スルホン酸塩及びスルフィン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0032】
酸成分Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、アミノスルホン酸及びアミノスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種のアミノスルホン酸化合物を含むことが好ましい。アミノスルホン酸化合物は、カチオン部としてアミノ基を有し、アニオン部としてスルホン酸基又はスルホン酸塩基を有する。アミノスルホン酸化合物としては、芳香族アミノスルホン酸、脂肪族アミノスルホン酸、スルファミン酸、これらの塩等が挙げられる。
【0033】
芳香族アミノスルホン酸は、アミノ基と、スルホン酸基又はスルホン酸塩基と、を有する芳香族化合物(好ましくは芳香族炭化水素)として定義される。芳香族アミノスルホン酸としては、アミノベンゼンスルホン酸(スルファニル酸(別名:4-アミノベンゼンスルホン酸)、メタニル酸(別名:3-アミノベンゼンスルホン酸)、オルタニル酸(別名:2-アミノベンゼンスルホン酸)等)、ジアミノベンゼンスルホン酸(2,4-ジアミノベンゼンスルホン酸、3,4-ジアミノベンゼンスルホン酸等)、アミノナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0034】
脂肪族アミノスルホン酸としては、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(例えば、1-アミノエタンスルホン酸、及び、2-アミノエタンスルホン酸(別名タウリン))、アミノプロパンスルホン酸(例えば、1-アミノプロパン-2-スルホン酸、及び、2-アミノプロパン-1-スルホン酸)等が挙げられる。
【0035】
酸成分Aは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、スルファニル酸、メタニル酸、スルファミン酸及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、スルファニル酸及びスルファニル酸塩を含むことがより好ましい。
【0036】
酸成分AのpKaは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、4.50以下が好ましく、4.10以下がより好ましく、4.00以下が更に好ましく、3.80以下が特に好ましく、3.60以下が極めて好ましく、3.40以下が非常に好ましく、3.20以下がより一層好ましく、3.10以下が更に好ましい。酸成分AのpKaは、0以上、0.50以上、1.00以上、1.50以上、2.00以上、2.50以上、又は、3.00以上であってよい。「pKa」とは、解離可能酸性基の酸解離定数を意味し、当該基の平衡定数Kaの負の常用対数である。酸成分Aの「pKa」の値(25℃)は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0037】
酸成分Aの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。酸成分Aの含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.015質量%以上が特に好ましく、0.02質量%以上が極めて好ましい。酸成分Aの含有量は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましく、0.09質量%以下が極めて好ましく、0.08質量%以下が非常に好ましく、0.07質量%以下がより一層好ましく、0.06質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が特に好ましく、0.04質量%以下が極めて好ましく、0.03質量%以下が非常に好ましく、0.02質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、酸成分Aの含有量は、0.001~1質量%が好ましい。酸成分Aの含有量は、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、又は、0.1質量%以上であってよい。酸成分Aの含有量は、0.015質量%以下、又は、0.01質量%以下であってよい。同様の観点から、スルホン酸化合物の含有量は、研磨液の全質量を基準として、これらの数値範囲を満たすことが好ましい。
【0038】
研磨液に含まれる酸成分における酸成分Aの含有量(基準:酸成分の全質量)、研磨液に含まれる酸成分におけるスルホン酸化合物の含有量(基準:酸成分の全質量)、及び/又は、酸成分Aにおけるスルホン酸化合物の含有量(基準:酸成分Aの全質量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が極めて好ましい。研磨液に含まれる酸成分が実質的に酸成分Aからなる(研磨液に含まれる酸成分の実質的に100質量%が酸成分Aである)態様であってよい。研磨液に含まれる酸成分が実質的にスルホン酸化合物からなる(研磨液に含まれる酸成分の実質的に100質量%がスルホン酸化合物である)態様であってよい。酸成分Aが実質的にスルホン酸化合物からなる(酸成分Aの実質的に100質量%がスルホン酸化合物である)態様であってよい。
【0039】
砥粒の含有量に対する酸成分Aの含有量の質量比率(酸成分Aの含有量/砥粒の含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。質量比率は、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が更に好ましく、1.8以下が特に好ましく、1.6以下が極めて好ましく、1.5以下が非常に好ましく、1.4以下がより一層好ましく、1.2以下が更に好ましく、1以下が特に好ましく、0.8以下が極めて好ましい。質量比率は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.2以上が特に好ましく、0.3以上が極めて好ましく、0.4以上が非常に好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.01~5が好ましい。質量比率は、0.5以下、又は、0.4以下であってよい。質量比率は、0.5以上、0.8以上、1以上、1.2以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.8以上、又は、2以上であってよい。同様の観点から、スルホン酸化合物の含有量の質量比率は、砥粒の含有量に対して、これらの質量比率を満たすことが好ましい。
【0040】
[ノニオン性ポリマー]
本実施形態に係る研磨液は、ノニオン性ポリマー(非イオン性ポリマー)を含有する。「ノニオン性ポリマー」とは、陽イオン基、及び、陽イオン基にイオン化され得る基、並びに、陰イオン基、及び、陰イオンにイオン化され得る基を主鎖又は側鎖に有さないポリマーである。陽イオン基としては、アミノ基、イミノ基、シアノ基等が挙げられ、陰イオン基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。ノニオン性ポリマーは、同一種の構造単位(繰り返し単位)を複数有する。ノニオン性ポリマーを用いることで、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得ることができる。
【0041】
ノニオン性ポリマーとしては、グリセリン系ポリマー、ポリオキシアルキレン化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0042】
グリセリン系ポリマーとしては、ポリグリセリン、ポリグリセリン誘導体等が挙げられる。ポリグリセリン誘導体としては、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
【0043】
ポリオキシアルキレン化合物は、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物である。ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン誘導体等が挙げられる。
【0044】
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0045】
ポリオキシアルキレン誘導体としては、ポリアルキレングリコールに置換基を導入した化合物、有機化合物にポリアルキレンオキシドを付加した化合物等が挙げられる。置換基としては、アルキルエーテル基、アルキルフェニルエーテル基、フェニルエーテル基、スチレン化フェニルエーテル基、脂肪酸エステル基、グリコールエステル基等が挙げられる。ポリオキシアルキレン誘導体としては、芳香族ポリオキシアルキレン化合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0046】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、芳香環を有する置換基をポリオキシアルキレン鎖に導入した化合物である。芳香環は、ポリオキシアルキレン鎖に直接結合していてもよく、直接結合していなくてもよい。芳香環は、単環であってもよく、多環であってもよい。芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、芳香環を有する置換基を介して複数のポリオキシアルキレン鎖が結合する構造を有していてもよい。ポリオキシアルキレン鎖は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、及び、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン鎖からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0047】
芳香環が芳香族ポリオキシアルキレン化合物の末端に位置する場合、芳香環を有する置換基としては、アリール基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等の単環芳香族基;ナフチル基等の多環芳香族などが挙げられ、これらの芳香族基は置換基を更に有していてもよい。芳香族基に導入される置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、スチレン基、芳香族基等が挙げられ、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、アルキル基又はスチレン基が好ましい。
【0048】
芳香環が芳香族ポリオキシアルキレン化合物の主鎖中に位置する場合、芳香環を有する置換基としては、アリーレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等の単環芳香族基;ナフチレン基等の多環芳香族などが挙げられ、これらの芳香族基は置換基を更に有していてもよい。芳香族基に導入される置換基としては、アルキル基、ビニル基、アリル基、アルケニル基、アルキニル基、スチレン基、芳香族基等が挙げられる。
【0049】
芳香族ポリオキシアルキレン化合物は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記一般式(I)で表される化合物、及び、下記一般式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
R11-O-(R12-O)m-H …(I)
[式(I)中、R11は、置換基を有していてもよいアリール基を表し、R12は、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキレン基を表し、mは、10以上の整数を表す。]
H-(O-R23)n1-O-R21-R25-R22-O-(R24-O)n2-H …(II)
[式(II)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、R23、R24及びR25は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキレン基を表し、n1及びn2は、それぞれ独立に15以上の整数を表す。]
【0050】
式(I)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記条件の少なくとも一つを満たすことが好ましい。
・R11としては、芳香環を有する置換基として例示した上述のアリール基が好ましく、スチレン基又はアルキル基が置換基として導入されたフェニル基がより好ましく、スチレン基が置換基として複数(例えば2つ)導入されたフェニル基が更に好ましい。
・R12としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
・mは、15以上が好ましく、30以上がより好ましい。
・mは、20000以下が好ましく、10000以下がより好ましく、5000以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましい。
【0051】
式(I)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンベンジルエーテル等が挙げられる。式(I)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物の具定例としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルプロペニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルエーテル等が挙げられる。
【0052】
式(II)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリオキシアルキレンビスフェノールエーテル等が挙げられる。式(II)で表される芳香族ポリオキシアルキレン化合物の具体例としては、2,2-ビス(4-ポリオキシエチレンオキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0053】
ノニオン性ポリマーは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、グリセリン系ポリマー及びポリオキシアルキレン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、グリセリン系ポリマーとポリオキシアルキレン化合物とを含むことが好ましい。ポリオキシアルキレン化合物は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、芳香族ポリオキシアルキレン化合物を含むことが好ましく、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル及びポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましく、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル及びポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが更に好ましい。
【0054】
本実施形態に係る研磨液は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の重量平均分子量を有するノニオン性ポリマーを含有することが好ましい。ノニオン性ポリマーの重量平均分子量は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更に好ましく、500以上が特に好ましく、600以上が極めて好ましく、700以上が非常に好ましく、750以上がより一層好ましい。ノニオン性ポリマーの重量平均分子量は、100000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましく、5000以下が特に好ましく、3000以下が特に好ましく、1000以下が極めて好ましく、800以下が非常に好ましく、750以下がより一層好ましい。これらの観点から、ノニオン性ポリマーの重量平均分子量は、100~100000が好ましい。
【0055】
ノニオン性ポリマーの重量平均分子量は、例えば、標準ポリスチレンの検量線を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により下記の条件で測定することができる。
使用機器:日立L-6000型[株式会社日立製作所製]
カラム:ゲルパックGL-R420+ゲルパックGL-R430+ゲルパックGL-R440[日立化成株式会社製 商品名、計3本]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/分
検出器:L-3300RI[株式会社日立製作所製]
【0056】
ノニオン性ポリマーの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。ノニオン性ポリマーの含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.008質量%以上が更に好ましく、0.01質量%以上が特に好ましく、0.03質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましく、0.08質量%以上がより一層好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.3質量%以上が特に好ましく、0.4質量%以上が極めて好ましく、0.5質量%以上が非常に好ましく、0.51質量%以上がより一層好ましい。ノニオン性ポリマーの含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.8質量%以下が特に好ましく、0.7質量%以下が極めて好ましく、0.6質量%以下が非常に好ましく、0.55質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、ノニオン性ポリマーの含有量は、0.001~10質量%が好ましい。ノニオン性ポリマーの含有量は、0.51質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、又は、0.01質量%以下であってよい。
【0057】
グリセリン系ポリマーの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。グリセリン系ポリマーの含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.008質量%以上が更に好ましく、0.01質量%以上が特に好ましく、0.03質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましく、0.08質量%以上がより一層好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.3質量%以上が特に好ましく、0.4質量%以上が極めて好ましく、0.5質量%以上が非常に好ましい。グリセリン系ポリマーの含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.8質量%以下が特に好ましく、0.7質量%以下が極めて好ましく、0.6質量%以下が非常に好ましく、0.5質量%以下がより一層好ましい。これらの観点から、グリセリン系ポリマーの含有量は、0.001~10質量%が好ましい。
【0058】
ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.008質量%以上が更に好ましく、0.01質量%以上が特に好ましい。ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以下が特に好ましく、0.03質量%以下が極めて好ましく、0.01質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、0.001~1質量%が好ましい。
【0059】
ノニオン性ポリマーがグリセリン系ポリマーを含む場合、ノニオン性ポリマーにおけるグリセリン系ポリマーの含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、ノニオン性ポリマーの全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が極めて好ましく、98質量%以上が非常に好ましい。グリセリン系ポリマーの含有量は、99質量%以上であってもよい。ノニオン性ポリマーが実質的にグリセリン系ポリマーからなる(ノニオン性ポリマーの実質的に100質量%がグリセリン系ポリマーである)態様であってよい。
【0060】
ノニオン性ポリマーがポリオキシアルキレン化合物を含む場合、ノニオン性ポリマーにおけるポリオキシアルキレン化合物の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、ノニオン性ポリマーの全質量を基準として、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、1.5質量%以上が特に好ましく、1.9質量%以上が極めて好ましい。ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、95質量%以上、98質量%以上、又は、99質量%以上であってもよい。ノニオン性ポリマーが実質的にポリオキシアルキレン化合物からなる(ノニオン性ポリマーの実質的に100質量%がポリオキシアルキレン化合物である)態様であってよい。ポリオキシアルキレン化合物の含有量は、50質量%以下、50質量%未満、30質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は、2質量%以下であってよい。
【0061】
ノニオン性ポリマーがグリセリン系ポリマー及びポリオキシアルキレン化合物を含む場合、ポリオキシアルキレン化合物の含有量に対するグリセリン系ポリマーの含有量の質量比率(グリセリン系ポリマーの含有量/ポリオキシアルキレン化合物の含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲が好ましい。質量比率は、1以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましく、20以上が特に好ましく、30以上が極めて好ましく、40以上が非常に好ましく、50以上がより一層好ましい。質量比率は、200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましく、80以下が特に好ましく、60以下が極めて好ましく、50以下が非常に好ましい。これらの観点から、質量比率は、1~200が好ましい。
【0062】
砥粒の含有量に対するノニオン性ポリマーの含有量の質量比率(ノニオン性ポリマーの含有量/砥粒の含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。質量比率は、50以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、15以下が特に好ましく、12以下が極めて好ましく、11以下が非常に好ましい。質量比率は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、1以上が特に好ましく、5以上が極めて好ましく、10以上が非常に好ましく、10.2以上がより一層好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.1~50が好ましい。
【0063】
酸成分Aの含有量に対するノニオン性ポリマーの含有量の質量比率(ノニオン性ポリマーの含有量/酸成分Aの含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲であることが好ましい。質量比率は、100以下が好ましく、80以下がより好ましく、50以下が更に好ましく、40以下が特に好ましく、30以下が極めて好ましく、26以下が非常に好ましい。質量比率は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上が更に好ましく、0.5以上が特に好ましく、1以上が極めて好ましく、5以上が非常に好ましく、6以上がより一層好ましく、7以上が更に好ましく、8以上が特に好ましく、10以上が極めて好ましく、15以上が非常に好ましく、20以上がより一層好ましく、25以上が更に好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.01~100が好ましい。
【0064】
[塩基成分]
本実施形態に係る研磨液は、塩基成分を含有してよい。酸成分Aを含有する研磨液が塩基成分を更に含有することでpH緩衝効果が得られる傾向があるため、研磨液のpHが安定化しやすいことから、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい。塩基成分としては、アミノ基を有する化合物(複素環式アミン、アルキルアミン等)、アンモニア、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。両性化合物に関しては、当該化合物の等電点(pI)が4.5を超える場合、当該化合物を塩基成分として扱うものとする。等電点が4.5を超える化合物としては、グリシン等が挙げられる。塩基成分は、研磨液のpHが更に安定化しやすい観点から、アミノ基を有する化合物を含むことが好ましく、複素環式アミンを含むことがより好ましい。
【0065】
複素環式アミンは、少なくとも1つの複素環を有するアミンである。複素環式アミンとしては、ピロリジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、テトラジン環等を有する化合物などが挙げられる。塩基成分は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、ピラゾール化合物(ピラゾール環を有する化合物)を含むことが好ましく、ジメチルピラゾールを含むことがより好ましく、3,5-ジアルキルピラゾールを含むことが更に好ましい。
【0066】
塩基成分の含有量は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として下記の範囲であることが好ましい。塩基成分の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.008質量%以上が特に好ましく、0.01質量%以上が極めて好ましく、0.03質量%以上が非常に好ましく、0.05質量%以上がより一層好ましい。塩基成分の含有量は、1質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が特に好ましく、0.2質量%以下が極めて好ましく、0.1質量%以下が非常に好ましく、0.08質量%以下がより一層好ましく、0.05質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、塩基成分の含有量は、0.001~1質量%が好ましい。本実施形態に係る研磨液は、塩基成分を含有していなくてもよい(塩基成分の含有量が実質的に0質量%であってよい)。
【0067】
本実施形態に係る研磨液が酸成分A及び塩基成分を含有する場合、酸成分Aの含有量に対する塩基成分の含有量の質量比率(塩基成分の含有量/酸成分Aの含有量)は、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、下記の範囲が好ましい。質量比率は、0.1以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.5以上が更に好ましく、0.6以上が特に好ましく、0.7以上が極めて好ましく、1以上が非常に好ましく、1.25以上がより一層好ましく、1.5以上が更に好ましく、2以上が特に好ましく、2.5以上が極めて好ましい。質量比率は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、4以下が特に好ましく、3以下が極めて好ましく、2.5以下が非常に好ましい。これらの観点から、質量比率は、0.1~10が好ましい。
【0068】
[その他の添加剤]
本実施形態に係る研磨液は、任意の添加剤(上述の酸成分A、ノニオン性ポリマー又は塩基成分に該当する化合物を除く)を含有してよい。任意の添加剤としては、酸化剤(過酸化水素等)、アルコール(トリエチロールエタン、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等)、酸成分A以外の酸成分(カルボキシ基を有する酸成分、二価以上の酸成分等)などが挙げられる。本実施形態に係る研磨液は、カルボキシ基を有する酸成分を含有していなくてよく(研磨液の全質量を基準として、カルボキシ基を有する酸成分の含有量が実質的に0質量%であってよく)、二価以上の酸成分を含有していなくてよい(研磨液の全質量を基準として、二価以上の酸成分の含有量が実質的に0質量%であってよい)。
【0069】
(水)
本実施形態に係る研磨液は、水を含有することができる。水としては、脱イオン水、超純水等が挙げられる。水の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよい。
【0070】
(pH)
本実施形態に係る研磨液のpHは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得る観点から、4.5以下である。研磨液のpHは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、4.4以下が好ましい。研磨液のpHは、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性を得やすい観点から、1.0以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.5以上が特に好ましく、3.0以上が極めて好ましく、3.5以上が非常に好ましく、3.6以上がより一層好ましく、3.7以上が更に好ましく、3.8以上が特に好ましく、4.0以上が極めて好ましく、4.1以上が非常に好ましく、4.2以上がより一層好ましく、4.4以上が更に好ましい。これらの観点から、研磨液のpHは、1.0~4.5が好ましい。研磨液のpHは、4.2以下、4.1以下、4.0以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、又は、3.4以下であってよい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0071】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd.)製Model D-51)を用いて測定することができる。例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)、中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)及びホウ酸塩pH緩衝液(pH:9.18)を標準緩衝液として用いてpHメータを3点校正した後、pHメータの電極を研磨液に入れて、3分間以上経過して安定した後の値を測定する。標準緩衝液及び研磨液の液温は、共に25℃とする。
【0072】
本実施形態に係る研磨液は、4価金属元素の水酸化物を含む砥粒、酸成分A、及び、ノニオン性ポリマーを少なくとも含む一液式研磨液として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して上述の研磨液となるように上述の研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒及び水を少なくとも含む。添加液は、例えば、酸成分A、ノニオン性ポリマー及び水を少なくとも含む。塩基成分、その他の添加剤等は、スラリ及び添加液のうち添加液に含まれることが好ましい。上述の研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0073】
上述の研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が作製される。一液式研磨液は、水の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、水の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に水で希釈して用いられてもよい。
【0074】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法は、本実施形態に係る研磨液を用いて被研磨面を研磨する研磨工程を備える。研磨工程では、被研磨面の被研磨材料を研磨して除去する。被研磨面は、酸化珪素及び窒化珪素を含んでよい。すなわち、被研磨面は、酸化珪素からなる被研磨部、及び、窒化珪素からなる被研磨部を有してよい。研磨工程は、本実施形態に係る研磨液を用いて、酸化珪素及び窒化珪素を含む被研磨面を研磨して、窒化珪素に対して酸化珪素を選択的に除去する工程であってよい。研磨工程において用いる研磨液としては、上述の一液式研磨液であってもよく、上述の研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液であってもよい。
【0075】
研磨工程では、例えば、基体の被研磨面を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、上述の研磨液を被研磨面と研磨パッドとの間に供給し、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨面を研磨する。
【0076】
研磨対象である基体としては、被研磨基板等が挙げられる。被研磨基板としては、例えば、半導体製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基体が挙げられる。被研磨基板の被研磨部は、酸化珪素及び窒化珪素を含んでよい。被研磨部は、膜状(被研磨膜)であってよく、酸化珪素膜、窒化珪素膜等であってよい。
【0077】
本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。ホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてあってもよい。研磨装置としては、例えば、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:Reflexionを使用できる。
【0078】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル-エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4-メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本開示を更に詳しく説明する。但し、本開示の技術思想を逸脱しない限り、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。例えば、研磨液の材料の種類及びその配合比率は、本実施例に記載の種類及び比率以外の種類及び比率でも差し支えなく、研磨対象の組成及び構造も、本実施例に記載の組成及び構造以外の組成及び構造でも差し支えない。
【0080】
<砥粒の準備>
350gのCe(NH4)2(NO3)650質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:CAN50液)を7825gの純水と混合して溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液、1.47mol/L)を5mL/分の混合速度で滴下して、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。セリウム水酸化物の合成は、温度25℃、撹拌速度400min-1で行った。撹拌は、羽根部全長5cmの3枚羽根ピッチパドルを用いて行った。
【0081】
得られた沈殿物(セリウム水酸化物を含む沈殿物)を遠心分離(4000min-1、5分間)した後に、デカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。固液分離により得られた粒子10gと、水990gと、を混合した後、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、セリウム水酸化物を含む砥粒を含有するセリウム水酸化物スラリ(砥粒の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0082】
<平均粒径の測定>
ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5を用いてセリウム水酸化物スラリにおける砥粒(セリウム水酸化物を含む砥粒)の平均粒径を測定したところ、3nmであった。測定方法は下記のとおりである。まず、1.0質量%の砥粒を含む測定サンプル(セリウム水酸化物スラリ、水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れ、N5内にセルを設置した。N5ソフトの測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行った。
【0083】
<砥粒の構造分析>
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、真空乾燥して砥粒を単離した後に、純水で充分に洗浄して試料を得た。得られた試料について、FT-IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオン(OH-)に基づくピークの他に、硝酸イオン(NO3
-)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N-XPS)測定を行ったところ、NH4
+に基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、セリウム水酸化物スラリに含まれる砥粒は、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。また、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを有する粒子が砥粒の少なくとも一部に含有されることから、砥粒がセリウム水酸化物を含むことが確認された。これらの結果より、セリウムの水酸化物が、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを含むことが確認された。
【0084】
<CMP研磨液の調製>
(実施例1)
スルファニル酸1質量%、ポリグリセリン[ノニオン性ポリマー、阪本薬品工業株式会社製、商品名:ポリグリセリン#750、重量平均分子量:750、平均重合度10]5質量%、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル[ノニオン性ポリマー、花王株式会社製、商品名:エマルゲンA-500、重量平均分子量:3000]0.1質量%、3,5-ジメチルピラゾール0.5質量%及び水(残部)を含有する添加液100gと、水850gと、上述のセリウム水酸化物スラリ50gとを混合することにより、セリウム水酸化物を含む砥粒を0.05質量%、スルファニル酸を0.1質量%、ポリグリセリンを0.5質量%、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルを0.01質量%、3,5-ジメチルピラゾールを0.05質量%含有するCMP研磨液を調製した。
【0085】
(実施例2~16及び比較例1~10)
酸成分、ノニオン性ポリマー及び塩基成分の種類並びに含有量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、表1及び表2に示す組成を有するCMP研磨液を調製した。
【0086】
(比較例11~12)
酸成分、ノニオン性ポリマー及び塩基成分の種類並びに含有量を変更すると共に、その他の成分X1又はX2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、表2に示す組成を有するCMP研磨液を調製した。
【0087】
表中の酸成分A1~A5、ノニオン性ポリマーP1~P4、塩基成分B1~B2、及び、その他の成分X1~X2は以下のとおりである。ノニオン性ポリマー及び他の成分の混合物である商品を用いた場合には、ノニオン性ポリマーが表1及び表2の含有量を満たすように調整した。
【0088】
[酸成分]
A1:スルファニル酸(pKa:3.01)
A2:メタニル酸(pKa:3.81)
A3:スルファミン酸(pKa:0.99)
A4:酢酸(pKa:4.76)
A5:ビスメチロールプロピオン酸(pKa:4.16)
【0089】
[ノニオン性ポリマー]
P1:ポリグリセリン(阪本薬品工業株式会社製、商品名:ポリグリセリン#750、重量平均分子量:750、平均重合度:10)
P2:ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製、商品名:エマルゲンA-500、重量平均分子量:3000)
P3:ポリグリセリン(株式会社ダイセル製、商品名:PGL XPW、重量平均分子量:3000、平均重合度:40)
P4:ポリグリセリン(阪本薬品工業株式会社製、商品名:ポリグリセリン#310、重量平均分子量:310、平均重合度:4)
【0090】
[塩基成分]
B1:3,5-ジメチルピラゾール
B2:グリシン
【0091】
[その他の成分]
X1:トリエチロールエタン
X2:3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール
【0092】
酸成分のpKaは以下の方法により測定した。標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18(25℃))を用いてガラス比較電極(平沼産業株式会社製、商品名:GR-501B)を3点校正した。ガラス比較電極及び自動滴定装置(平沼産業株式会社製、商品名:COM-2500)を用いて、0.05mol/Lの酸成分の水溶液に対して1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を滴下して中和滴定を行い、pH滴定曲線(X軸:累積滴下体積、Y軸:pH)及び電位変化量曲線(X軸:累積滴下体積、Y軸:電位変化量(ΔE))を得た。中和の終点(当量点)付近の電位変化量(ΔE)が最大となるときの累積滴下体積を終点体積として得た後、終点体積の半分(1/2累積滴下体積)のときのpHを酸成分のpKaとして得た。1/2累積滴下体積が測定点の間に位置する場合は、測定点間を線形近似して算出した。
【0093】
<評価>
(CMP研磨液のpH)
CMP研磨液のpHを以下の条件により測定した。結果を表1及び表2に示す。
測定温度:25℃
測定装置:株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd.)製Model D-51
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃);ホウ酸塩pH緩衝液、pH:9.18(25℃))を用いて3点校正した後、電極をCMP研磨液に入れて、3分間以上経過して安定した後のpHを上述の測定装置により測定した。
【0094】
(CMP研磨液中における砥粒のゼータ電位)
ベックマン・コールター株式会社製のDelsaNano C(装置名)を用いて実施例のCMP研磨液中における砥粒のゼータ電位を確認したところ、正のゼータ電位であることが確認された。
【0095】
(砥粒の粒径)
実施例1~16及び比較例1~12のCMP研磨液中の砥粒(セリウム水酸化物を含む砥粒)の平均粒径を下記の条件で測定したところ、12nmであった。
測定温度:25℃
測定装置:ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaMax PRO
測定方法:CMP研磨液を12.5mm×12.5mm×45mm(高さ)の測定用セル(ディスポーサブルマイクロキュベット)に約0.5mL入れた後、DelsaMax PROにセルを設置した。測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Mean(キュムラント径)として表示される値を読み取った。
【0096】
(研磨速度)
上述のCMP研磨液を用いて下記ブランケットウエハを下記CMP研磨条件で研磨した。
【0097】
[ブランケットウエハ]
厚さ1000nmの酸化珪素膜をシリコン基板(直径:300mm)上に有するブランケットウエハ
厚さ250nmの窒化珪素膜をシリコン基板(直径:300mm)上に有するブランケットウエハ
【0098】
[CMP研磨条件]
研磨装置:Reflexion(APPLIED MATERIALS社製)
CMP研磨液流量:200mL/分
被研磨基板:上述のブランケットウエハ
研磨パッド:独立気泡を有する発泡ポリウレタン樹脂(ROHM AND HAAS ELECTRONIC MATERIALS CMP INC.製、型番IC1010)
研磨圧力:13.8kPa(2.0psi)
被研磨基板と研磨定盤との相対速度:100.5m/分
研磨時間:60秒間
ウエハの洗浄:CMP処理後、超音波を印加しながら水で洗浄を行った後、スピンドライヤで乾燥させた。
【0099】
[研磨速度及び研磨速度比の算出]
フィルメトリクス株式会社製の光干渉式膜厚測定装置(装置名:F80)を用いて、研磨前後の被研磨膜(酸化珪素膜及び窒化珪素膜)の膜厚を65点測定した。膜厚の65点の測定は、ウエハの中心を含む直線上において、ウエハの中心を基準として、149mm、148mm、147mm及び145mmの位置と、145mmから-145mmまでの間の5mm毎の位置(140mm、135mm、…、-135mm、-140mm)と、-145mm、-147mm、-148mm及び-149mmの位置とで行った(ウエハの中心を基準として、プラスの距離とは反対側の距離をマイナスで表記)。65点の膜厚の平均値を用いて膜厚の変化量を算出した。膜厚の変化量と研磨時間とに基づき、下記式により被研磨材料の研磨速度(酸化珪素の研磨速度RO及び窒化珪素の研磨速度RN)を算出した。また、窒化珪素の研磨速度RNに対する酸化珪素の研磨速度ROの研磨速度比(RO/RN)を算出した。結果を表1及び表2に示す。
研磨速度[nm/min]=(研磨前の膜厚[nm]-研磨後の膜厚[nm])/研磨時間[min]
【0100】
【0101】
【0102】
実施例では、窒化珪素の研磨速度RNに対する酸化珪素の研磨速度ROの研磨速度比(RO/RN)が30以上であり、窒化珪素に対する酸化珪素の優れた研磨選択性が得られることが確認された。