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特許7280253硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、当該組成物を硬化することにより得られる硬化体、およびそれを含む電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、当該組成物を硬化することにより得られる硬化体、およびそれを含む電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20230516BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20230516BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
C08L83/07
C09D183/07
C09J183/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020522932
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 US2018057702
(87)【国際公開番号】W WO2019084397
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2017-0141368
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】パク、ユンジン
(72)【発明者】
【氏名】ユク、チュヨン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171734(JP,A)
【文献】特開2013-203794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C09D183/00-183/16
C09J183/00-183/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性ポリオルガノシロキサン組成物であって、
(A)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシC3-C20アルキルラジカル基を有し、かつ同じ分子内にヒドロシリル化反応により形成されたポリシロキサン単位およびシルアルキレン単位を有する、シロキサンベースのポリマーと、
(B)光開始剤と、を含み、
前記成分(A)が、以下の組み合わせ(i)または(ii):
(i)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシC3-C20アルキルラジカル基と、少なくとも2つのSi結合アルケニル基と、を有する、シロキサン化合物、および少なくとも2つのSi結合水素原子を有する化合物、または
(ii)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシC3-C20アルキルラジカル基と、少なくとも2つのSi結合水素原子と、を有する、シロキサン化合物、および分子内にオレフィン性C=C二重結合を含む少なくとも2つの基を有する化合物、
の間のヒドロシリル化反応によって得られるシロキサンベースのポリマーである、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、以下の構造式(I)または(II):
【化1】
により表され、式中、
Acが、(メタ)アクリロキシC3-C20アルキルラジカルを表し、
~Rが、各々独立して、置換もしくは非置換のC1-C20アルキル基、置換もしくは非置換のC6-C30アリール基、置換もしくは非置換のC3-C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換の1-20員のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換の3-30員ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の6-30員ヘテロアリール基、または置換もしくは非置換のC6-C30アリールC1-C20アルキル基を表し、
およびRが、各々独立して、各末端に置換もしくは非置換のC2-C20アルケニル基、水素、ヒドロキシ、または加水分解性官能基を含み、
が、置換もしくは非置換のC2-C20アルケニル基を表し、
各R~RおよびRが、同じであるか、または互いに異なり、
aおよびcが、各々独立して、0~10,000の整数を表し、
bおよびdが、各々独立して、1~20の整数を表す、請求項1に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項3】
前記成分(A)が、前記シロキサンベースのポリマーであり、前記構造式(I)または(II)のRおよびRが、各末端にC2-C20アルケニル基または水素原子を含む同じ基であり、
(C)(c1)少なくとも2つのSi結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサン、および(c2)オレフィン性C=C二重結合を含む少なくとも2つの基を有する化合物、から選択される少なくとも1つを含む、成分(A)に対する架橋成分と、
(D)ヒドロシリル化触媒と、をさらに含む、請求項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、前記シロキサンベースのポリマーであり、前記構造式(I)または(II)のRおよびRが、各々独立して、各末端にヒドロキシまたは加水分解性官能基を含み、前記加水分解性官能基が、以下の構造式(III)または(IV):
-X-Si(Me)(OR)3-m(III)
-X-Si(R -OSi(R-Y-Si(Me) (OR)3-m(IV)
によって表され、式中、XおよびYが、独立して、直鎖または分岐のC2-C6アルキレン基を表し、Meが、メチル基を表し、Rが、置換もしくは非置換のC1-C20アルキル基または置換もしくは非置換のC6-C30アリール基を表し、Rが、C1-C6アルキル基を表し、mが、0、1、または2を表し、
(E)加水分解性架橋剤および(F)縮合硬化触媒のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項5】
前記成分(A)が、前記シロキサンベースのポリマーであり、前記構造式(I)または(II)のRおよびRのいずれか一方が、一方の末端にC2-C20アルケニル基を含み、前記構造式(I)または(II)のRおよびRの他方が、他方の末端にヒドロキシまたは加水分解性官能基を含み、前記加水分解性官能基が、以下の構造式(III´)または(IV´):
-C-Si(OR)(III´)
-C-SiMe-OSiMe-CSi(OR)(IV´)
によって表され、式中、
Rが、置換もしくは非置換のC1-C20アルキル基、または置換もしくは非置換のC6-C30アリール基を表し、
(C)架橋成分、(D)ヒドロシリル化触媒、(E)加水分解性架橋剤、および(F)縮合硬化触媒、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項6】
(G)アクリレートモノマー、(H)シリコーン樹脂、(I)充填剤、(J)溶媒、および(K)硬化添加剤、のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させることによって得られる硬化体、および任意選択で、前記硬化体が、コーティング、封入剤、シーラント、および接着剤からなる群から選択される少なくとも1つである硬化体。
【請求項8】
請求項に記載の硬化体を含む、電子デバイス。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を使用することによる電子デバイスの製造プロセス、および任意選択で、前記硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させることにより得られる前記硬化体で前記電子デバイスを封止することを含む、製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月27日に出願された韓国特許出願第10-2017/0141368号の優先権およびすべての利点を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物、当該組成物を硬化することにより得られる硬化体、およびそれを含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオルガノシロキサン組成物は、消費者向け製品だけでなく、コーティング材料、封入剤、シーラント、接着剤、コーティング、ポッティングコンパウンドなどの産業用材料の分野でも広く使用されている。ポリオルガノシロキサン組成物は、光硬化性(UV-Vis硬化性)、熱硬化性(高温加硫、HTV)、湿気硬化性(室温加硫、RTV)、またはそれらの組み合わせの二重もしくは多重硬化として分類され得る。それらは、光硬化性、熱硬化性および/または加水分解性基を有する化合物を架橋剤および/または触媒と混合することにより生成することができる。すなわち、光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、電磁放射によって架橋を開始し、熱硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、熱によって硬化し、湿気硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、縮合反応によってケイ素骨格の特定の基を加水分解する。
【0004】
紫外線放射(UV)は、低コスト、メンテナンスの容易さ、および産業ユーザへの潜在的な危険性が低いため、最も広く使用されている種類の放射線の1つである。典型的な硬化時間ははるかに短く、熱に敏感な材料は、熱エネルギーが基材に損傷を与える可能性のあるUV放射の下で安全にコーティングおよび硬化することができる。
【0005】
いくつかのUV硬化性シリコーン系が既知である:米国特許第3,816,282号(Viventi)、同第4,052,059号(Bokermanら)、および、同第4,070,526号(Colquhoun)は、ω-メルカプトアルキル置換ポリシロキサンが、UV放射に曝されたとき、フリーラジカルプロセスでビニル官能性シロキサンと反応する組成物を記載している。しかしながら、これらの組成物は、希少なまたは高価な出発材料を必要とする場合が多く、長期信頼性が不十分であるか、または硬化生成物中に持続する(メルカプタン基に関連する)不快な臭いを発する。
【0006】
エポキシまたはアクリル官能基を有するUV硬化性シリコーン樹脂は、既知のUV硬化性系の欠点を回避しながら、それらを剥離用途に好適にさせる高度の反応性を有することが最近見出された。米国特許第4,279,717号(Eckbergら)に記載されているようなエポキシシリコーン組成物は、特定のオニウム塩光開始剤の存在下での迅速な硬化に特に有利である。1981年3月2日に出願された米国特許出願第239,297号、現在は米国特許第4,348,454号に開示されているアクリル官能性ポリマーは、様々なフリーラジカルタイプの光開始剤の存在下、UV照射下で接着剤コーティングに硬化し得る。また、光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、UV照射が直接当たる表面領域では硬化性に優れるが、影領域では硬化性が悪く、硬度が低い。
【0007】
光熱二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、熱硬化により、耐熱性、耐寒性などの良好な特性を示し得る。しかしながら、それは、硬化時に亀裂を引き起こし得、かつ、硬化時に、高い熱膨張率を有する硬化体が形成され得る。また、このような硬化体を他の部材と一体化すると、界面での剥離が発生する可能性があるという限界がある。
【0008】
米国特許第4,587,173号(Eckberg)は、別個の架橋メカニズムとして熱およびUV光を使用する二重硬化シリコーン組成物を開示している。この特許は、同じであるかまたは異なるポリシロキサン鎖上に直接ケイ素結合水素原子および直接ケイ素結合アルケニルラジカルを必要とする反応性ポリオルガノシロキサンを開示している。これらの組成物はまた、光開始剤および貴金属または貴金属含有ヒドロシリル化触媒を含有する。光開始剤の存在は、ケイ素結合水素原子とケイ素結合アルケニルラジカルの架橋を可能にする。これらの組成物は、ケイ素結合水素原子およびケイ素結合アルケニルラジカルの貴金属触媒作用により、室温または昇温で架橋することができると言われている。白金は、熱ヒドロシリル化硬化反応に使用される触媒の1つである。
【0009】
米国特許第4,603,168号(Sasakiら)は、紫外線放射と組み合わせて熱の使用を必要とするオルガノポリシロキサン組成物を硬化させる方法を開示している。そこに開示されている組成物は、シリコーン原子に直接結合している分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する。他の有機基、例えば、オルガノポリシロキサン骨格上のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アラルキル基、およびアルカリル基も存在し得る。さらに、1分子当たり少なくとも2つのオルガノ水素シロキサンまたは水素シロキサン単位を含むオルガノ水素ポリシロキサン、白金触媒、付加反応遅延剤および光開始剤も開示されている。アルケニル基は、間に有機基を介さずにシリコーン原子に直接結合しなければならない。EckbergおよびSasakiの特許も非常に薄いコーティングに限定されている。
【0010】
光湿気二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、硬化のために別個の加熱プロセスを必要とせず、UVから遮断された影領域を硬化できるという利点を有する。しかしながら、それは、湿気が大気に曝されると硬化が始まるという点で、早期硬化、短い利用可能時間、および/または短い貯蔵寿命を引き起こす可能性があるという制限がある。紫外光および湿気硬化メカニズムを使用する二重硬化シリコーン組成物は、米国特許第4,528,081号(Lienら)および同第4,699,802号(Nakosら)に開示されている。これらの特許は、基板が、直接UV光に容易にアクセスできず、これらの領域の架橋のために湿気硬化を必要とする影領域を有する電子用途におけるコンフォーマルコーティングに特に有用な組成物を開示している。通常、放射重合のために存在する光開始剤に加えて、有機チタン酸塩などの湿気硬化触媒が存在しなければならない。
【0011】
一方、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の硬化速度は、反応基(複数可)の種類および数を含む様々な要因に依存し得る。異なる基は異なる反応性を示すことが既知であり、同じタイプの硬化性基でさえ、特定のケイ素原子に結合した硬化性基の数に応じて異なる反応性を示すことがある。したがって、光、熱および/または湿気硬化において優れた特性を示すために、ポリオルガノシロキサン組成物に含有される反応基のタイプまたは数などの様々な要因を制御する研究が進行中である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
特許文献1:米国特許出願公開番号2004/0116547A1(2004年6月17日)
特許文献2:国際公開番号WO2016/141547A1(2016年9月15日)
特許文献3:米国特許第4,576,999号(1986年3月18日)
【発明の概要】
【0013】
技術的な問題
本開示の目的は、合成の容易性、低揮発性含有量、迅速な硬化性、優れた靭性、ならびに/またはコーティング材料、封入材、シーラント、および接着剤などの様々な分野での優れた光学的/物理的安定性を有する、光硬化性、光熱もしくは光湿気二重硬化性、または光熱湿気多重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することである。本開示の目的はまた、当該組成物を硬化することにより得られる硬化体、およびそれを含む電子デバイスを提供することである。
【0014】
問題の解決策
上記の技術的問題を解決するための集中的な研究の結果、本発明者らは、光硬化性、光熱もしくは光湿気二重硬化性、または光熱湿気多重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を見出し、これは、光および/または二重硬化、透過率、物理的引張りならびに伸びのうちの少なくとも1つにおいて優れた特性を有する硬化体を得ることができ、ペンダント鎖に(メタ)アクリル官能基を規則的に分布させたシロキサンベースのポリマーを含むことにより製造することができる。
【0015】
本開示の一実施形態によれば、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカル基を有し、かつ同じ分子内にヒドロシリル化反応により形成されたポリシロキサン単位およびシルアルキレン単位を有するシロキサンベースのポリマーと、(B)光開始剤と、を含む。
【0016】
本開示の別の実施形態によれば、当該成分(A)は、以下の組み合わせ(i)または(ii)の:
(i)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカル基と、少なくとも2つのSi結合アルケニル基と、を有する、シロキサン化合物、および少なくとも2つのSi結合水素原子を有する化合物。
(ii)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカル基と、少なくとも2つのSi結合水素原子と、を有するシロキサン化合物、および分子内にオレフィン性C=C二重結合を含む少なくとも2つの基を有する化合物と、の間のヒドロシリル化反応によって得られる。
【0017】
本開示の別の実施形態によれば、当該成分(A)は、以下の構造式(I)または(II):
【化1】
によって表されるシロキサンベースのポリマーであり、式中、
Acは、(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカルを表し、
~Rは、各々独立して、置換もしくは非置換の(C1-C20)アルキル基、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール基、置換もしくは非置換の(C3-C30)シクロアルキル基、置換もしくは非置換の(1~20員)のヘテロアルキル基、置換もしくは非置換の(3~30員)ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の(6~30員)ヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキル基を表し、
およびRは、各々独立して、末端に置換もしくは非置換の(C2-C20)アルケニル基、水素、ヒドロキシル、または加水分解性官能基を含み、
は、置換もしくは非置換の(C2-C20)アルケニル基を表し、
~RおよびRの各々は、同じであるか、または互いに異なり、
aおよびcは、各々独立して、0~10,000の整数を表し、
bおよびdは、各々独立して、1~20の整数を表す。
【0018】
発明の効果
本開示による硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、合成の容易さ、低揮発性含有量、優れた硬化性、優れた靭性、および/または優れた光学的/物理的安定性を有する硬化体を生成し得、したがって、本開示による硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、コーティング材料、封入剤、シーラント、および接着剤などの様々な分野で有用に適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の例示的な実施形態について詳細に説明する。例示的な実施形態は、本発明の範囲に限定されることなく、本発明を説明するために具体化される例として役立つ。
【0020】
本明細書で使用するとき、特定の定義が他に規定されていない場合、「置換」という用語は、特定の官能基の水素原子が別の原子または別の官能基、すなわち置換基で置き換えられることを意味する。別の原子または置換基は、重水素、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、イミノ基、アジド基、アミディーノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、メルカプト基(チオール基)、エステル基、エーテル基、スルホン酸基、リン酸基、(C1-C30)アルキル基、ハロ(C1-C30)アルキル基、(C2-C30)アルケニル基、(C2-C30)アルキニル基、(C1-C30)アルコキシ基、(C1-C30)アルキルチオ基、(C3-C30)シクロアルキル基、(C3-C30)シクロアルケニル基、(3~7員)ヘテロシクロアルキル基、(C6-C30)アリールオキシ基、(C6-C30)アリールチオ基、(5~30員)ヘテロアリール基、(C6-C30)アリール基、トリ(C1-C30)アルキルシリル基、トリ(C6-C30)アリールシリル基、ジ(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールシリル基、(C1-C30)アルキルジ(C6-C30)アリールシリル基、アミノ基、モノ-もしくはジ-(C1-C30)アルキルアミノ基、モノ-もしくはジ-(C6-C30)アリールアミノ基、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールアミノ基、(C1-C30)アルキルカルボニル基、(C1-C30)アルコキシカルボニル基、(C6-C30)アリールカルボニル基、ジ(C6-C30)アリールボロニル基、ジ(C1-C30)アルキルボロニル基、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリールボロニル基、(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル基、(C1-C30)アルキル(C6-C30)アリール基、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0021】
本明細書で使用するとき、特定の定義が他に提供されていない場合、「ヘテロ」という用語は、化学構造に含有されるB、N、O、S、Si、およびPから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を指す。
【0022】
本開示は、ペンダント(メタ)アクリル官能基を有するシロキサンベースのポリマーを含む硬化性組成物に関する。硬化性組成物は、ポリシロキサン単位と、オルガノポリシロキサン骨格ではなく、同じ分子内のヒドロシリル化反応によって形成されるシルアルキレン単位と、からなるシロキサンコポリマー骨格を含むことを特徴とする。また、シロキサンベースのポリマーは、(メタ)アクリル官能基が、シロキサンベースのコポリマー骨格のペンダント鎖に規則的に分布していることを特徴とする。
【0023】
本明細書で使用される場合、「硬化性」組成物という用語は、光、熱、湿気および他の要因の少なくとも1つによって硬化され得る組成物を指す。例えば、硬化性組成物は、光のみによって、光と熱の両方によって、光と湿気の両方によって、または光、熱および湿気のすべてによって硬化することができる。
【0024】
本開示の一実施形態によれば、硬化性組成物は、(メタ)アクリル官能性シロキサンセグメント(繰り返し単位)およびメチルシロキサン(またはフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン)セグメントを有するシロキサンベースのポリマー、ならびに末端にアルケニル、水素(またはアルコキシ、ヒドロキシ)官能基を含み得る。ポリマー構造は、Si結合(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカル基を有し、かつ同じ分子内でヒドロシリル化反応によって形成されるポリシロキサンユニットとシルアルキレンユニットを有する、直鎖状、樹脂状、環状、または分岐状ポリマーに限定されない。そのようなシロキサンベースのポリマーは、以下の組み合わせ(i)または(ii):
(i)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカル基と、少なくとも2つのSi結合アルケニル基と、を有する、シロキサン化合物、および少なくとも2つのSi結合水素原子を有する化合物、
(ii)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカル基と、少なくとも2つのSi結合水素原子と、を有する、シロキサン化合物、および分子内にオレフィン性C=C二重結合を含む少なくとも2つの基を有する化合物、の間のヒドロシリル化反応によって得ることができる。
【0025】
具体的には、このような成分(A)は、
(a1)少なくとも1つのSi結合(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカル基と、少なくとも2つのSi結合水素原子と、を有する(a1-1)シロキサン化合物および(a1-2)1,4-ジメチルシリルベンゼン(p-ジメチルシリルベンゼン)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、
(a2)分子末端にC=C二重結合を含むアルケニル基を有するビニル末端ジメチルシロキサンポリマーまたは他のライナーポリジオルガノシロキサン化合物と、間のヒドロシリル化反応によって得られるシロキサンベースのポリマーと、の間のヒドロシリル化反応によって得られるシロキサンベースのポリマーを含み得る。
【0026】
本開示の一実施形態によれば、硬化性組成物は、(メタ)アクリル官能性シロキサンセグメント(繰り返し単位)およびジメチルシロキサン(またはフェニルメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン)セグメント、ならびに末端にアルケニル(またはアルコキシ、ヒドロキシ)官能基を有するブロックコポリマーを含み得る。硬化性組成物は、(メタ)アクリル基のフリーラジカル機構によって硬化され得る。また、末端にアルケニル基を有する硬化性組成物は、アルケニル基のヒドロシリル化反応により硬化する場合がある。さらに、末端にアルコキシ基またはヒドロキシル基のいずれかを有する硬化性組成物は、これらの基の湿気硬化によって硬化され得る。
【0027】
本開示の第1の態様によれば、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、好ましくは、(A)以下の構造式(I)または(II)で表されるシロキサンベースのポリマー、および(B)光開始剤を含み得る。
【化2】
【0028】
本明細書では、上記式(I)または(II)で表されるシロキサンベースのポリマーは、「ポリ(シロキサン-シルアルキレン)ブロックコポリマー」と呼ぶことができる。
【0029】
構造式(I)または(II)において、Acは(メタ)アクリロキシ(C3-C20)アルキルラジカルを表す。(メタ)アクリロキシアルキルラジカルは、自己硬化性基であってよい。例えば、Acは、メタクリロキシプロピル、メタクリロキシブチル、メタクリロキシペンチル、アクリロキシプロピル、アクリロキシブチル、アクリロキシペンチルなどであってよい。
【0030】
構造式(I)または(II)において、R~Rは、各々独立して、置換もしくは非置換の(C1-C30)アルキル基、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール基、置換もしくは非置換の(C3-C30)シクロアルキル基、置換もしくは非置換の(C1-C30)ヘテロアルキル基、置換もしくは非置換の(C3-C30)ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の(C6-C30)ヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール(C1-C30)アルキル基を表す。本開示の一実施形態によれば、R~Rは、各々独立して、置換もしくは非置換の(C1-C20)アルキル基、置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール基、置換もしくは非置換(C3-C30)シクロアルキル基、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール(C1-C20)アルキル基を表し得、または非置換(C1-C10)アルキル基、または非置換(C6-C25)アリール基を表し得る。Rの各々、Rの各々、Rの各々、およびRの各々は、同じであるか、または互いに異なっていてもよい。例えば、R~Rは、非置換メチルを表してもよい。
【0031】
構造式(I)または(II)において、RおよびRは、各々独立して、置換もしくは非置換(C2-C20)アルケニル基、水素、ヒドロキシル、および加水分解性官能基の少なくとも1つを含み得る。RおよびRは、同じであってもよく、異なっていてもよい。RおよびRは、置換もしくは非置換(C2-C20)アルケニル基、または加水分解性官能基を末端に含み得る。本開示の一実施形態によれば、RおよびRは、光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供するのに好適であり得る、アルケニル基および加水分解性官能基以外の周知の置換基を含み得る。本開示の別の実施形態によれば、RおよびRのいずれか一方は、置換もしくは非置換の(C2-C20)アルケニル基、ヒドロキシル、または加水分解性官能基を含み得、それらの他方は、アルケニル基、ヒドロキシルおよび加水分解性官能基以外の周知の置換基を含み得る。本開示の別の実施形態によれば、RおよびRは、末端に少なくとも1つの非置換(C2-C20)アルケニル基を含み得る。アルケニル基末端シロキサンベースのポリマーは、光熱二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供するのに好適な場合がある。また、本開示の別の実施形態によれば、RおよびRは、末端に少なくとも1つのヒドロキシルまたは加水分解性官能基を含み得る。ヒドロキシルまたは加水分解性官能基末端シロキサンベースのポリマーは、光湿気二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供するのに好適な場合がある。さらに、本開示の別の実施形態によれば、RおよびRのいずれか一方は、非置換の(C2-C20)アルケニル基末端を含み得、それらの他方は、ヒドロキシルまたは加水分解性官能基末端を含み得、これらは、光熱湿気多重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供するために好適であり得る。本開示の別の実施形態によれば、加水分解性官能基は、(C1-C30)アルコキシの少なくとも1つを含み得、アルコキシ末端シロキサンベースのポリマーを生成し得る。例えば、RおよびRは、ビニルであってもよく、または以下の構造式IIIまたはIVによって表される:
-X-Si(Me)(OR)3-m(III)
-X-Si(R)2-OSi(R-Y-Si(Me)(OR)3-m(IV)
式中、XおよびYは、直鎖または分岐のC2-C6アルキレン基を表し、Meは、メチル基を表し、Rは、置換もしくは非置換の(C1-C20)アルキル基または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール基を表し、Rは、(C1-C6)アルキル基を表し、mは、0、1または2を表し、RおよびRは、同じであるか、または互いに異なっていてもよい。さらに、RおよびR基について、好ましい構造は以下の通りである:
-C-Si(OR)(III´)
-C-SiMe-OSiMe-CSi(OR)(IV´)
式中、Rは、置換もしくは非置換の(C1-C20)アルキル基、または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール基を表す。
【0032】
構造式(I)または(II)において、Rは、置換もしくは非置換の(C2-C20)アルケニル基を表す。本開示の一実施形態によれば、Rは、非置換の(C2-C10)アルケニル基を表すことができる。Rの各々は、同じであるか、または互いに異なっていてもよい。例えば、Rは、エチレンを表してもよい。
【0033】
構造式(I)または(II)において、aおよびcは、各々独立して、0~10,000の整数を表し、好ましくは、150~8,000の整数、より好ましくは、150~5000の整数を表す。本開示のシロキサンベースのポリマーにおいて、シロキサンブロックの長さは、それを含む硬化したポリオルガノシロキサン組成物の靭性を有するために重要であり得る。
【0034】
構造式(I)において、bは、1~10の整数を表し、好ましくは、1~6の整数、より好ましくは、1~4の整数を表す。構造式(I)において、dは、1~20の整数を表し、好ましくは、2~10の整数、より好ましくは、2~5の整数を表す。bは、メタクリル基の数であり、bを増やすと、光硬化速度が向上する。特に、シロキサンブロックの長さが長く、メタクリル基の数が少ないと、硬化性が低下する場合がある。この問題を克服するために、隣接するメタクリル基の数を増やして硬化性を改善することができる。また、少なくとも1つのアクリルシロキサン単位、好ましくは少なくとも2つのアクリルシロキサン単位をポリマー中に配置して、架橋速度ならびに硬化後の硬度および引張り特性などの物理的特性を制御することができる。
【0035】
本開示の一実施形態によれば、シロキサンベースのポリマーは、以下の通りであり得る。
【化3】
【0036】
シロキサンベースのポリマーは、末端のビニル基とSiH架橋剤との追加のヒドロシリル化反応によって熱硬化されてもよい。さらに、末端ビニル基と加水分解性物質(例えば、アルコキシ基などの加水分解性官能基を含むSiH物質)がヒドロシリル化され、末端に加水分解性官能基を有するため、シロキサンベースのポリマーが湿気硬化性となる場合がある。
【0037】
本開示の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、規則的に分布した(メタ)アクリル基を有し、これは、SiH基(またはアルケニル基)を有するメタクリレートとビニル基(またはSiH基)を有するポリシロキサンポリマーとの間のヒドロシリル化経路を介して調製され得る。(メタ)アクリル系官能基は、シロキサン骨格上に規則的に分布しているため、優れた機械的特性とUV光による効率的な硬化特性を発揮する効果がある。これまでに報告されているように、(メタ)アクリル基を含有するポリオルガノシロキサンポリマーを作製するには、下記の方法が使用されている。直鎖状分子構造の(メタ)アクリロキシアルキル基含有オルガノポリシロキサンは、通常、触媒として酸の存在下で単独でまたは(メタ)アクリロキシアルキル基を持たない別の環状オルガノポリシロキサンオリゴマーとの混合物としてケイ素原子に結合した(メタ)アクリロキシアルキル基を有する環状オルガノポリシロキサンオリゴマーの開環シロキサン転位重合反応により、その後、塩基性化合物で酸性触媒を中和することにより調製される。この酸触媒重合反応の方法には、いくつかの問題と欠点がある。例えば、酸と塩基性化合物の中和反応では、反応生成物として水の形成を必ず伴うが、(メタ)アクリロキシアルキル基含有オルガノポリシロキサン中の水は、オルガノポリシロキサン生成物中の官能基としての(メタ)アクリロキシアルキル基の有効含有量を減少させるような酸性または塩基性化合物の存在下で(メタ)アクリル酸エステル基の加水分解剤として作用する。さらに、前述のエステル基の加水分解反応は、最終的にミクロゲルの形成につながり、中和反応と他の固体物質によって形成された塩を除去するために濾過に供されると濾紙または布が詰まるため、反応生成物の濾過性が大幅に低下する。反応中に発生する環状不純物を除去するためには、加熱により揮発成分を除去する必要がある。しかしながら、(メタ)アクリル基は互いに熱反応する可能性があるため、このようなプロセスには多くの制約がある。上記の方法で調製されたポリマーは、(メタ)アクリル基がランダムに分布したランダムコポリマーであり、したがって均一または好適な機械的特性を実現することは非常に難しい。例えば、硬化後の物理特性が脆くなりやすい、すなわち、脆性が高くなる場合がある。また、(メタ)アクリル官能基がシロキサン骨格の末端に位置することは、UV光に対する硬化性が著しく低いという問題があり望ましくない。
【0038】
本開示の第2の態様によれば、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)構造式(I)または(II)によって表されるシロキサンベースのポリマーであって、式中RおよびRは、置換もしくは非置換(C2-C20)アルケニル基の少なくとも1つを含むポリマーと、(B)光開始剤と、(C)架橋成分と、(D)ヒドロシリル化触媒と、を含むことができる。本開示の一実施形態によれば、RおよびRの少なくとも1つは、末端に、非置換(C2-C20)アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、またはドデセニルを含む。本開示は、アルケニル末端シロキサンベースのポリマーを含有することにより、光熱二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。
【0039】
本開示のシロキサンベースのポリマーは、(i)(メタ)アクリル繰り返し単位のための水素含有(メタ)アクリレート中間体を調製することと、(ii)ヒドロシリル化触媒を使用することによる、ビニル末端シロキサンと中間体との間のヒドロシリル化の工程を含むことにより調製され得る。ヒドロシリル化の工程では、ペンダント(メタ)アクリル基を有するアルケニル末端または水素末端シロキサンポリマーは、1.0以下のような脂肪族不飽和有機基のモルで割った(SiH/Vi比)シロキサンベースのポリマー中のケイ素結合水素原子のモルを制御することによって得られる。このポリマーは、光硬化性組成物および/または光熱二重硬化性組成物に有用であり得る。
【0040】
本開示の第3の態様によれば、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)構造式(I)または(II)で表されるシロキサンベースのポリマーであって、式中、RおよびRは、加水分解性官能基またはヒドロキシの少なくとも1つを含み、加水分解性官能基が、以下の構造式(III)または(IV)で表される、ポリマーと、(B)光開始剤と、(E)加水分解性架橋剤と、(F)縮合硬化触媒と、を含み得る。本開示の一実施形態によれば、RおよびRの少なくとも1つは、末端に加水分解性官能基またはヒドロキシを含む。本開示は、トリアルコキシ末端シロキサンベースのポリマーを含有することにより、光湿気二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。
【0041】
-X-Si(Me)(OR)3-m(III)
-X-Si(R)2-OSi(R)2-Y-Si(Me)(OR)3-m(IV)
式中、XおよびYは、直鎖または分岐の(C2-C6)アルキレン基を表し、Meは、メチル基を表し、Rは、置換もしくは非置換の(C1-C20)アルキル基または置換もしくは非置換の(C6-C30)アリール基を表し、Rは、(C1-C6)アルキル基を表し、mは、0、1または2を表す。
【0042】
当該構造式(III)または(IV)によって表される加水分解性官能基について、好ましい基は、以下の式(III´)または(IV)によって表される。
-C-Si(OR)(III´)
-C-SiMe-OSiMe-CSi(OR)(IV´)
式中、Rは、置換もしくは非置換(C1-C20)アルキル基、または置換もしくは非置換(C6-C30)アリール基、一実施形態として、非置換(C1-C20)アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基を表す。
【0043】
本開示の一実施形態によれば、RおよびRの少なくとも1つは、末端に加水分解性官能基またはヒドロキシを含む。本開示は、トリアルコキシ末端シロキサンベースのポリマーを含有することにより、光湿気二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。
【0044】
本開示のシロキサンベースのポリマーは、(i)(メタ)アクリル繰り返し単位のための水素(またはアルケニル基)含有(メタ)アクリレート中間体を調製することと、(ii)ヒドロシリル化触媒を使用することによる、ビニル末端シロキサンと中間体との間のヒドロシリル化および(iii)さらにSiH含有アルコキシシランまたはシロキサンを使用することによるさらなるヒドロシリル化の工程を含むことにより調製され得る。これにより、ペンダント(メタ)アクリル基を含むアルコキシ末端シロキサンポリマーを得ることができる。このポリマーは、光湿気硬化性組成物に有用であり得る。米国特許出願公開第2004/0116547A1号、ならびに米国特許第4,528,081号および同第4,699,802号の以前の報告では、ポリシロキサンポリマーの末端にメタクリル基とモノおよびジアルコキシ基の両方を有する構造が報告されている。しかしながら、本開示において具体的に開示されている、側鎖にメタクリル基を有し、末端にトリアルコキシ基を有する構造は、優れた二重硬化特性を有するために非常に重要である。
【0045】
本開示の第4の態様によれば、硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(A)構造式(I)または(II)で表されるシロキサンベースのポリマーであって、RおよびRのいずれか一方が末端に置換もしくは非置換(C2-C20)アルケニル基を含み、それらの他方が加水分解性官能基または末端にヒドロキシを含み、加水分解性官能基が、構造式(III)または(IV)で表される、ポリマーと、(B)光開始剤と、(C)架橋成分、(D)ヒドロシリル化触媒、(E)加水分解性架橋剤および(F)縮合硬化触媒のうちの少なくとも1つと、を含み得る。本開示は、ビニルおよびトリアルコキシ末端のシロキサンベースのポリマーを含有することにより、光熱湿気多重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を提供することができる。
【0046】
本開示の第5の態様によれば、第1~第4の態様のうちのいずれか1つによる硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、(G)アクリレートモノマー、(H)シリコーン樹脂、(I)充填剤、(J)溶剤、および(K)硬化添加剤のうちのいずれか1つをさらに含み得る。
【0047】
本開示の第6の態様によれば、第1~第5の態様のいずれか1つによる硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させることにより得られる硬化体を提供することができる。硬化体は、本開示の一実施形態による光硬化性(または光熱二重硬化性、光湿気二重硬化性、もしくは光熱湿気多重硬化性)ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させることによって得られる。光硬化性(または光熱二重硬化性、光湿気二重硬化性、もしくは光熱湿気多重硬化性)ポリオルガノシロキサン組成物の硬化方法は、特に限定されないが、一般に、紫外線照射(または紫外線熱、紫外線湿気、紫外線熱湿気)によってポリオルガノシロキサン組成物を急速に硬化させて硬化体を形成することである。この硬化体は、硬化中に接触した基板への優れた接着性を示し得、基板から効率的に剥離され得ることによって良好な剥離を示し得る。
【0048】
硬化体は、コーティング材料、封入剤、シーラント、および接着剤からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。また、硬化体は、硬化中に亀裂を引き起こさず、迅速な硬化性、優れた靭性および/または良好な光学的/物理的安定性を有し得る。
【0049】
本開示の第7の態様によれば、第6の態様による硬化体を含む電子デバイスを提供することができる。
【0050】
電子デバイスは特に限定されず、例としては、ガラス、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、セラミック樹脂などの基板上の銀、銅、アルミニウム、金などの金属酸化膜電極または金属電極が挙げられる。電極の例としては、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ(FPD)、フラットパネルディスプレイデバイスなどの電極が挙げられる。本開示の一実施形態によるポリオルガノシロキサン組成物は、電極をコーティングするために使用されてもよい。本開示の一態様による電子デバイスは、本開示の硬化体の硬化中に接触した基板への高い接着力および基板からの高い剥離により、電子デバイスを修復および再生することができる。
【0051】
本開示の第8の態様によれば、第1態様~第5態様のいずれか1つによる硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を使用することによる電子デバイスの製造プロセスを提供することができる。
【0052】
組成物は、分注、スリットダイ、スクリーン印刷、スプレー、ロールツーロール、ディップコーティング、スピンコーティングなどによって電極、電気回路および基板にコーティングすることができ、組成物は光照射によって基板上で硬化し得る。二重硬化組成物の場合、上記のように塗布後、光が十分透過しない部分または構造があれば、熱または湿気により硬化が完了し得る。
【0053】
本開示の第9の態様によれば、第6の態様による硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化体で電子デバイスを封止することを含む電子デバイスの製造プロセスを提供することができる。
【0054】
以下、上記実施形態に係る硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の各成分について詳細に説明する。
【0055】
(B)光開始剤
本明細書では、光開始剤とは、紫外または可視光により励起されて光重合を開始する材料、または他の増感剤を用いて光重合を引き起こす材料を指す。本開示の光開始剤は、紫外または可視光領域の光を吸収し、感光性不飽和二重結合をラジカル重合する限り、光開始剤および光開始剤助剤に限定されない。本開示の光開始剤は、ポリオルガノシロキサン組成物において一般的に使用される物質であり得る。例えば、光開始剤は、アセトフェノン-、ベンゾフェノン-、チオキサントン-、ベンゾイン-、トリアジン-、オキシム-、カルバゾール-、ジケトン-、ホウ酸スルホニウム-、ジアゾ-、イミダゾール-およびビイミダゾール-ベースの化合物を含み得る。
【0056】
本開示の一実施形態によれば、光開始剤は、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどからなる群から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。例えば、光開始剤は、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンであってもよい。
【0057】
本開示の光開始剤の含有量は、必要に応じて、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の総重量に基づいて約0.01~約10重量%、または約0.1~約5重量%、または約0.1~約1重量%、または約0.2~約0.5重量%など、適切に選択され得る。上記範囲の光開始剤が実施例による光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に含まれると、露光時に光重合が十分に起こり得る。また、硬化性組成物中の上記の含有量での反応により、光学クリアランスの不良の原因となり得る光開始剤が消費されるため、透明性の低下を防止することができる。これにより、コーティング安定性を同時に満たすことができる。
【0058】
(C)架橋剤成分
本明細書では、当該成分(A)の架橋成分は、(c1)少なくとも2つのSi結合水素原子を有するオルガノ水素ポリシロキサン、または(c2)オレフィン性C=C二重結合を含む少なくとも2つの基を有する化合物、から選択される少なくとも1つを含む。成分(A)がアルケニル基を有する場合、成分(C)は、少なくとも1つの(c1)オルガノ水素ポリシロキサンを含むことが好ましい。一方、成分(A)がSi結合水素原子を有する場合、成分(C)は、オレフィン性C=C二重結合を含む少なくとも2つの基を有する少なくとも1つの(c2)化合物を含むことが好ましい。
【0059】
(c1)オルガノ水素ポリシロキサン
本明細書では、オルガノ水素ポリシロキサンは、1分子当たり少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有し、単一の水素シロキサン化合物であっても、複数の異なる水素シロキサン化合物であってもよい。水素シロキサンの構造は、直鎖状、分岐状、環状(例えば、シクロシロキサン)、または樹脂状であってよい。
【0060】
本開示の一実施形態によれば、水素シロキサンは、ジメチル水素シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ジメチル水素シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、ジメチル水素シロキシ末端ポリメチル水素シロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリメチル水素シロキサン、本質的にH(CHSiO1/2単位とS1O4/2単位、およびそれらの組み合わせからなる樹脂によって例示されるポリオルガノ水素シロキサンであってもよい。
【0061】
オルガノハロシランの加水分解および縮合などの、成分(C)としての使用に好適直鎖状、分岐状、および環状オルガノ水素ポリシロキサンを調製する方法は、当技術分野において周知である。成分(C)としての使用に好適なオルガノ水素ポリシロキサン樹脂を調製する方法もまた、米国特許第5,310,843号、同第4,370,358号、および同第4,707,531号に例示されているように周知である。
【0062】
(c2):不飽和オレフィン性基を有する化合物
本明細書では、オレフィン性C=C二重結合を含む少なくとも2つの基を有する化合物は、不飽和部分構造を含む、アルケニル基またはオレフィン性C=C二重結合を含む任意の他の反応性基を有する化合物として例示される。実質的に、そのような化合物は、分子中に(C2-C12)アルケニル基を有するビニル希釈剤、ビニルポリマー、ビニル樹脂であってよい。化合物は、ポリシロキサン骨格またはヘキサジエンのような非シリコーン有機化合物を有し得る。
【0063】
(D)ヒドロシリル化触媒
本明細書では、ヒドロシリル化触媒とは、他の化合物の不飽和C=C二重結合に付加されたある化合物のSi-H原子を伴う少なくとも2つの化合物間の付加反応であるヒドロシリル化反応の反応触媒を意味する。ヒドロシリル化触媒は、白金(Pt)、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウム金属、またはそれらの有機金属化合物、またはそれらの組み合わせから選択される白金族金属を含み得る。さらに、ヒドロシリル化触媒は、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金などの化合物、および低分子量のオルガノポリシロキサンとの化合物の複合体、またはマトリックスもしくはコアシェルタイプの構造にマイクロカプセル化された白金化合物であり得る。ヒドロシリル化触媒は、白金および低分子量オルガノポリシロキサン錯体であってよく、これは、白金および1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含んでもよく、さらに、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサンおよび/またはテトラメチルジビニルジシロキサンを含んでもよい。
【0064】
ヒドロシリル化触媒の含有量は、必要に応じて、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の総重量に基づいて約0.01~約1重量%、または約0.04~約0.5重量%、または約0.1~約0.4重量%など、適切に選択され得る。ヒドロシリル化触媒の含有量が所定の範囲の最小値を超える場合、得られる組成物は熱によって迅速に硬化することができる。また、所定の範囲の最大値を下回ると、得られる組成物の保存性が向上する場合がある。
【0065】
(E)加水分解性架橋剤
本明細書では、加水分解性架橋剤は、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ジメトキシ-3-メルカプトプロピルメチルシラン、2-(2-アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、3-(2-アセトキシエチルチオプロピル)ジメトキシメチルシラン、2-(2-アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、ジメトキシメチル-3-(3-フェノキシプロピルチオプロピル)シラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4-ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール、γ-トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、ヘキシルトリメトキシシラン、およびそれらの組み合わせによって例示される縮合反応架橋剤を指す。
【0066】
本開示の一実施形態によれば、加水分解性架橋剤は、ビニルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリメトキシシリル)オクタン、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである。本開示の別の実施形態によれば、加水分解性架橋剤は、Dynasylan VTMOの商品名でEvonikから入手可能なビニルトリメトキシシランである。
【0067】
加水分解性架橋剤の含有量は、ポリオルガノシロキサン組成物の総重量に基づいて、例えば、約0.01~約10重量%、または約1~約5重量%、または約0.1~約3重量%など、必要に応じて適切に選択され得る。本発明の一実施形態に係る光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物に上記範囲の加水分解性架橋剤が含まれると、保存安定性および機械的強度を最大化できるという利点がある。
【0068】
(F)縮合硬化触媒
本開示の縮合硬化触媒は、湿気の存在下で組成物の湿気硬化を開始する化合物を指し、湿気硬化を促進するのに有用であることが既知であるものを含む。触媒は、金属または非金属触媒を含む。本発明で有用な金属触媒の金属部分の例には、スズ、チタン、ジルコニウム、鉛、鉄、コバルト、アンチモン、マンガン、ビスマスおよび/または亜鉛化合物が含まれる。
【0069】
一実施形態では、組成物の湿気硬化を促進するのに有用なスズ化合物には、これらに限定されないが、ジネオデカン酸ジメチルスズ(FOMREZ UL-28Aの商品名でMomentive Performance Materials Inc.から入手可能)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジメトキシド、スズオクトアート、イソブチルスズトリセロエート、ジブチルスズオキシド、可溶化ジブチルスズオキシド、ジブチルスズビスジイソオクチルフタレート、ビストリプロポキシシリルジオクチルスズ、ジブチルスズビスアセチルアセトン、シリル化ジブチルスズジオキシド、カルボメトキシフェニルスズトリスウベレート、イソブチルスズトリセロエート、二酪酸ジメチルスズ、ジメチルジネオデカン酸スズ、酒石酸トリエチルスズ、ジブチルスズジベンゾエート、オレイン酸スズ、ナフテン酸スズ、ブチルスズトリ-2-エチルヘキシルヘキソエート、スズブチレート、ジオクチルスズジデシルメルカプチド、ビス(ネオデカノイルオキシ)ジオクチルスタンナン、ジメチルビス(オレオイルオキシ)スタンナン、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0070】
好ましい一実施形態では、縮合硬化触媒は、ジメチルジネオデカン酸スズ(FOMREZ UL-28の商品名でMomentive Performance Materials Inc.から入手可能)、ジオクチルスズジデシルメルカプチド(FOMREZ UL-32の商品名でMomentive Performance Materials Inc.から入手可能)、ビス(ネオデカノイルオキシ)ジオクチルスタンナン(FOMREZ UL-38の商品名でMomentive Performance Materials Inc.から入手可能)、ジメチルビス(オレオイルオキシ)スタンナン(FOMREZ UL-50の商品名でMomentive Performance Materials Inc.から入手可能)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、縮合硬化触媒は、ジメチルジネオデカン酸スズである。
【0071】
凝縮硬化触媒の含有量は、必要に応じて、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の総重量に基づいて約0.001~約10重量%、または約0.1~約0.5重量%、または約0.1~約0.3重量%など、適切に選択され得る。縮合硬化触媒の含有量が所定の範囲の最小値を超える場合、得られる組成物は、空気中の湿気により迅速に硬化することができる。また、所定の範囲の最大値を下回ると、得られる組成物の保存性が向上する場合がある。
【0072】
(G)アクリレートモノマー
本明細書では、アクリレートモノマーは、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートとイソステアリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであり得る。アクリレートモノマーの含有量は、必要に応じて、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の総重量に基づいて、約1~約50重量%、または約1~約20重量%で、適切に選択され得る。
【0073】
(H)シリコーン樹脂
本明細書では、シリコーン樹脂は、少なくとも1つのMQ樹脂を含むことができ、MQ樹脂は、MDT樹脂および/またはMDQ構造を含むことができる。MQ樹脂は、主にR SiO1/2単位およびSiO4/2単位(それぞれM単位とQ単位)からなる高分子ポリマーであり、式中Rは、官能基もしくは非官能基の置換もしくは非置換の一価ラジカルを表し、例えば、メチルまたはフェニルであり得る。本開示における「MQ樹脂」は、約20モル%以下の樹脂分子のみが平均してDおよびT単位からなることを指し、DおよびT単位はそれぞれ、R SiO2/2およびRSiO3/2単位を表す。シリコーン樹脂の含有量は、ポリオルガノシロキサン組成物の総重量に基づいて、例えば、約1~約70重量%、または約1~約60重量%、または約1~約50重量%など、必要に応じて適切に選択され得る。
【0074】
(I)充填剤
本明細書では、充填剤は、補強用充填剤、光重合阻害剤、顔料、およびそれらの組み合わせであってよい。充填剤は、本開示のポリオルガノシロキサン組成物を硬化させることにより得られる硬化体に機械的強度を付与し、基板からの剥離を改善することを目的とする。例えば、充填剤は、発煙シリカまたはアルミナ微粉末、沈降シリカまたはアルミナ微粉末、溶融シリカまたはアルミナ微粉末、焼成したシリカまたはアルミナの微粉末、発煙酸化チタン微粉末、ガラス繊維、ならびに上記微粉末をオルガノシラン、シラザン、およびシロキサンオリゴマーで表面処理して得られた疎水化微粉末を含み得る。微粉末の粒径は、必要に応じて好適に選択することができ、例えば、レーザ回折/散乱型の粒度分布を使用したアッセイによるメジアン径は、約0.01マイクロメートル~約1000マイクロメートルの範囲であり得る。充填剤の含有量は、必要に応じて、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の全重量に基づいて、約0.01~約50重量%で、適切に選択され得る。
【0075】
(J)溶媒
本明細書では、溶媒は、有機溶媒または非架橋性シリコーン溶媒を含み得る。有機溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、デシルアルコールまたはウンデシルアルコール、およびそれらの組み合わせなどのアルコールであってよい。非架橋性シリコーン溶媒は、例えば、トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリメチルフェニルシロキサン、およびそれらの組み合わせであってよい。溶媒の含有量は、必要に応じて、例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の全重量に基づいて、約0.001~約90重量%で、適切に選択され得る。
【0076】
(K)硬化添加剤
本明細書では、硬化添加剤は、水素供与体、還元剤、CO発生剤、一重項酸素スカベンジャ、およびN-ビニルアミドからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。それは、HUSAR、Branislavら、The Formulator´s Guide to Anti-Oxygen Inhibition Additives.Progress in Organic Coatings、2014、77.11:1789-1798において周知である。例えば、水素供与体は、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリベンジルアミン(Bz3N、99%、Fluka)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオン酸)(PETMP、Bruno Bock)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオン酸)(TMPMP、Bruno Bock)、亜リン酸水素ジオレイル(D253、Dover)、トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS、97%、ABCR)、トリ-n-ブチルスタンナン(Bu3SnH、97%、Aldrich)、および4-アニスアルデヒド(PAA、98%、Aldrich)から選択される少なくとも1つであってよい。例えば、還元剤は、トリフェニルホスフィン(PPh3、95%、Sigma-Aldrich)、亜リン酸トリフェニル(P(OPh)3、97%、Fluka)、トリス(トリデシル)ホスファイト(D49、Dover)、トリオクチルホスフィン(TOP、90%、Fluka)、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト(D12、Dover)、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト(D11、Dover)、ビスフェノールAホスファイト(D613、Dover)、3,9-ビス(オクタデシルオキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(BOTDBU、Sigma-Aldrich)、亜硫酸エチレン(ETS、99%、Fluka)およびジメチルアミン-ボラン複合体(Me2NH・BH3、97%、Aldrich)から選択される少なくとも1つであり得る。例えば、一重項酸素スカベンジャは、2,5-ジフェニルフラン(DPF、98%、Alfa Aesar)および9,10-ジブチルアントラセン(DBA)から選択される少なくとも1つであり得る。例えば、CO発生剤は、N-フェニルグリシン(NPG、93%、Acros)、N-メチル-N-フェニルグリシン(NMNPG)、フェニルチオ酢酸(PTAA、96%、Aldrich)、O-ベンゾイルオキシムベンズアルデヒド(POE)および1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボキシ)オキシム(PDO、Lambson)から選択される少なくとも1つであり得る。例えば、N-ビニルアミドは、N-ビニルピロリドン(NVP、98%、Merck)およびN-メチルピロリドン(NMP、Merck)から選択される少なくとも1つであり得る。硬化添加剤の含有量は、必要に応じて例えば、ポリオルガノシロキサン組成物の全重量に基づいて、約0.001~約5重量%で、適切に選択され得る。
【0077】
また、本開示の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、物理特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、接着促進剤、光増感剤、界面活性剤などの他の添加剤を一定量添加してもよい。しかしながら、添加剤は、光熱または光湿気二重硬化性組成物における熱または湿気硬化干渉の存在下で選択的に(または限定的に)使用されてもよい。
【0078】
本開示の硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、上記の成分の任意の組み合わせを含み得る。例えば、本開示のポリオルガノシロキサン組成物は、成分(A)および(B)、または成分(A)~(D)、または成分(A)、(B)、(E)および(F)、または成分(A)~(F)を反応させることにより、必要に応じて、成分(G)~(K)のうちの少なくとも1つを均一に混合することにより調製され得る。上記成分の混合方法は、従来的に既知の方法であり得、特に限定されないが、通常は単純な撹拌による均一混合であり得る。また、任意成分として無機充填剤などの固形成分が含有されている場合には、混合デバイスを用いた混合がより好ましい。このような混合デバイスは、特に限定されないが、例えば、シングルまたはツイン連続ミキサ、ツインローラ、Rossミキサ、Hobartミキサ、歯科用ミキサ、プラネタリミキサ、Mixer、Henschelミキサなどであり得る。上記の方法で調製した混合物は、防湿層下の気密容器に封止することにより、長期間保存することができる。
【0079】
以下、本開示の代表的な化合物を参照して、本開示のシロキサンベースのポリマーの調製方法および特性を詳細に説明するが、下記の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[合成例1]コポリマーA-1の調製
グラハムコンデンサおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、137.2gのSiH含有メタクリレートエステル(I)[MD´MH´、ここでD´は、メタクリルプロピル](SiH含有メタクリレートエステルは、米国特許第6417309号を参照して調製され得る)、および6,862.8gのVi末端ジメチルシロキサン(DP:139、粘度:500cP、Vi%:0.44)を入れ、混合物を撹拌機で30分間混合した。その後、白金触媒(2ppm)を添加し、徐々に反応温度を80℃に上げてヒドロシリル化反応を実施した。2時間後、ジアリルマレイン酸塩を加えて反応を停止させた。最後に、ペンダントメタクリレート基を有するビニル末端プレポリマーが得られ(粘度:7200cP、Mw:62,447、ビニル%:0.11、メタクリルプロピル%:0.88)、これは以下のコポリマーA-1に対応する。
【化4】

式中、aは、139を表し、bは、1を表し、dは、3を表し、cは、139を表す。
【0081】
[合成例2]コポリマーA-2の調製
グラハムコンデンサおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、72.5gの上記で得られたSiH含有メタクリレートエステル(I)[MD´MH´、ここでD´は、メタクリルプロピルである]、および6,862.8gのvi-末端ジメチルシロキサン(DP:290、粘度:2,100cP、Vi%:0.22)を入れ、混合物を撹拌機で30分間混合した。その後、白金触媒(2ppm)を添加し、徐々に反応温度を80℃に上げてヒドロシリル化反応を実施した。2時間後、ジアリルマレイン酸塩を加えて反応を停止させた。最後に、ペンダントメタクリレート基を有するビニル末端プレポリマーが得られ(粘度:27,210cP、MW:118,753、ビニル%:0.05、メタクリルプロピル%:0.46)、これは以下のコポリマーA-2に対応する。
【化5】


式中、aは、290を表し、bは、1を表し、dは、3を表し、cは、290を表す。
【0082】
[合成例3]コポリマーA-3の調製
グラハムコンデンサおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、111.35gの上記で得られたSiH含有メタクリレートエステル(I)[MD´nM、D´は、メタクリルプロピル、nは、2または3](SiH含有メタクリレートエステルは、US6417309を参照して調製され得る)、および6,438.65gのVi末端ジメチルシロキサン(DP:290、粘度:2,100cP、Vi%:0.22)を入れ、混合物を撹拌機で30分間混合した(SiH/Vi比:0.75)。その後、白金触媒(2ppm)を添加し、徐々に反応温度を80℃に上げてヒドロシリル化反応を実施した。2時間後、ジアリルマレイン酸塩を加えて反応を停止させた。最後に、ペンダントメタクリレート基を有するビニル末端プレポリマーが得られ(粘度:2,400cP、MW:985,253、ビニル%:0.06、メタクリルプロピル%:0.89)、これは以下のコポリマーA-3に対応する。
【化6】


式中、aは、290を表し、bは、2または3を表し、dは、3を表し、cは、290を表す。
【0083】
[合成例4]コポリマーA-4の調製
グラハムコンデンサおよび温度計を備えた500mLの4つ口フラスコに、上記の合成例1で得られた139.3gのポリオルガノシロキサンA-1、および0.67gのトリメトキシシランを入れ、混合物を撹拌機で30分間混合した。その後、白金触媒(2ppm)を添加し、徐々に反応温度を80℃に上げてヒドロシリル化反応を実施した。2時間後、ジアリルマレイン酸塩を加えて反応を停止させた。最後に、ペンダントメタクリレート基を有するトリメトキシ末端ポリオルガノシロキサンが得られ(粘度:21,954cP、MW:62,447、トリメトキシシリル%:0.36、メタクリル%:0.87)、これは、次のコポリマーA-4に対応する。
【化7】


式中、aは、139を表し、bは、1を表し、dは、3を表し、cは、139を表し、RおよびRの両方は、-C-Si(OMe)を表す。
【実施例
【0084】
以下、本発明の一実施形態による硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の特性を詳細に説明するが、下記の実施例に限定されるものではない。
【0085】
[実施例1]光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の生成
実施例1-1~1-5では、以下の表1に示す化合物を歯科用ミキサに示された重量%で添加し、室温で撹拌して光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を生成した。
【表1】
【0086】
実施例1-1~1-5で生成した各光硬化性ポリオルガノシロキサン組成物について、以下の方法で粘度、硬度、および引張りを測定し、結果を以下の表2に示した。また、メタルハライドDバルブ4000mW/cmでUV硬化を実施した。
【0087】
粘度
本明細書では、回転粘度計(HADV-III)(Brookfieldにより製造)を使用し、52#スピンドルを用いて23℃における粘度を測定した。
【0088】
透過率
本明細書では、23℃における可視領域波長(360~780nm)での透過率を、10mmの厚さの石英セルに液状材料を充填して分光光度計(Minolta Co.,Ltd.により製造CM-3600)で測定した。
【0089】
硬度
本明細書では、ASTM D 2240に従い、23℃における硬化物の00硬度を、DUROMETER HARDNESS TYPE 00(ASKERにより製造)により測定した。硬化条件に関して、UV照射4000mJ/cmによってUV硬化を実施し、80℃で1時間の加熱硬化によって熱硬化を実施し、室温で7日間保存することによって湿気硬化を実施した。
【0090】
引張り
本明細書では、JISK6301に従い、23℃における硬化物の伸び率を、Schopper引張り試験機(東洋精機製作所製)を使用して測定した。
【表2】
【0091】
[実施例2]光熱二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の生成
実施例2-1~2-4では、以下の表3に示す化合物を歯科用ミキサに示された重量%で添加し、室温で撹拌して光熱二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を生成した。
【表3】
【0092】
実施例2-1~2-4で生成した光熱二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物について、上記の実施例1に示す方法で粘度、硬度、および引張りを測定し、結果を以下の表4に示した。
【表4】
【0093】
[実施例3]光湿気二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物の生成
実施例3-1~3-2では、以下の表5に示す化合物を歯科用ミキサに示される重量%で添加し、室温で撹拌して光湿気二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を生成した。
【表5】
【0094】
実施例3-1~3-2で調製した光湿気二重硬化性ポリオルガノシロキサン組成物について、上記の実施例1に示す方法で粘度、硬度、および引張りを測定し、結果を以下の表6に示した。
【表6】
【0095】
以上の実施例から、本開示による硬化性ポリオルガノシロキサン組成物は、伸び率の観点から、硬度、引張り強度、および接着性が良好であり、その結果、本開示による硬化性ポリオルガノシロキサン組成物を硬化して得られる硬化体は、優れた光学的/物理的特性を示すことができる。
【0096】
本発明の多くの修正および他の実施形態は、前述の説明で提示された教示の利点を有する、本発明が関係する当業者に着想されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、修正および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。