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特許7280330ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、それを含む正極、及びリチウム二次電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-15
(45)【発行日】2023-05-23
(54)【発明の名称】ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、それを含む正極、及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230516BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230516BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021177765
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2022074126
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143865
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】張 錠洙
(72)【発明者】
【氏名】宋 在▲ヒョク▼
(72)【発明者】
【氏名】申 東旭
(72)【発明者】
【氏名】沈 載賀
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/122497(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/155989(WO,A1)
【文献】特開2020-072092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含むニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、
前記二次粒子は、i)粒子サイズが14μm以上であり、アルミニウム(Al)を含む大粒二次粒子、及びii)粒子サイズが5μm以下であり、マンガン(Mn)を含む小粒二次粒子を含み、
前記大粒二次粒子においてリチウムを除いた金属の総モル数(total moles of metal excluding lithium)を基準にして前記大粒二次粒子のマンガン含量が、前記小粒二次粒子においてリチウムを除いた金属の総モル数を基準にして小粒二次粒子のマンガン含量に比べて少なく、大粒二次粒子の表面にマンガン(Mn)が含まれ、小粒二次粒子の表面にアルミニウム(Al)が含まれ
前記大粒二次粒子は、マンガンを含まないか、あるいは前記大粒二次粒子において、マンガン含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準にして、0.01ないし0.5モル%である、ニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項2】
前記小粒二次粒子において、マンガン含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準にして、0.5ないし5モル%である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項3】
前記大粒二次粒子の大きさは、14ないし20μmである、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項4】
前記小粒二次粒子の大きさは、1ないし5μmである、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項5】
前記ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、ニッケル含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準にして、60モル%以上である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項6】
前記アルミニウム(Al)を含む大粒二次粒子において、表面のマンガン含量が、大粒二次粒子のリチウムを除いた金属を基準にして、0.01ないし0.2モル%である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項7】
前記マンガンを含む小粒二次粒子において、表面のアルミニウム含量が、小粒二次粒子のリチウムを除いた金属を基準にして、0.01ないし0.2モル%である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項8】
前記大粒二次粒子の含量は、大粒二次粒子と小粒二次粒子との総含量100重量部を基準にし、30ないし90重量部である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項9】
前記アルミニウムを含む大粒二次粒子は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物:
[化学式1]
Li(Ni1-x-y-zCoAl)O2±α1
前記化学式1で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなるグループのうちから選択される元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦(1-x-y-z)<1、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦z<0.4、0≦α1≦0.1である。
【請求項10】
前記マンガンを含む小粒二次粒子は、下記化学式2で表される化合物である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物:
[化学式2]
Li(Ni1-x-y-zCoMn)O2±α1
前記化学式2で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなるグループのうちから選択される元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦(1-x-y-z)<1、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦z<0.4、0≦α1≦0.1である。
【請求項11】
前記アルミニウムを含む大粒二次粒子において、アルミニウム含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準にして、0.5ないし5モル%である、請求項1に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物。
【請求項12】
14μm以上の大きさを有し、アルミニウムを含む大粒前駆体と、5μm以下の大きさを有し、マンガンを含む小粒前駆体と、リチウム前駆体と、を混合し、前駆体混合物を得る段階と、
前記前駆体混合物を熱処理する段階と、を含み、
請求項1ないし11のうちのいずれか1項に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物を製造する、ニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項13】
前記熱処理が600ないし900℃で実施される、請求項12に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項14】
前記大粒前駆体は、マンガンを含まないか、あるいは前記大粒前駆体において、マンガン含量は、大粒前駆体の金属の総モルを基準として、0.01ないし0.5モル%であり、
前記小粒前駆体において、マンガン含量は、小粒前駆体の金属の総モルを基準として、0.5ないし5モル%である、請求項12に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項15】
前記大粒前駆体において、アルミニウム含量は、大粒前駆体の金属の総モルを基準として、0.5ないし5モル%である、請求項12に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項16】
前記リチウム前駆体は、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、フルオロ化リチウム、炭酸リチウム、またはその混合物である、請求項12に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法。
【請求項17】
請求項1ないし11のうちのいずれか1項に記載のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極。
【請求項18】
請求項17に記載の正極、負極、及びそれらの間に介在された電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、それを含む正極、及び前記正極を採用したリチウム二次電池に係わる。
【背景技術】
【0002】
携帯用電子機器、通信機器などの発展により、高エネルギー密度のリチウム二次電池に対する開発の必要性が高い。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質として、リチウム金属複合酸化物を利用する場合、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを混合すれば、プレス時にも、活物質崩れが抑制され、優秀な性能を示すことができ、高密度の極板を製造することができ、高エネルギー密度のリチウム二次電池を製造することができる。
【0004】
前記リチウム金属複合酸化物の製造工程において、熱処理を進めることができるが、特に、そのうち、金属元素の一部にニッケルを使用するニッケル系リチウム金属複合酸化物の場合、適切な熱処理を介し、性能が向上されうる。
【0005】
ところで、前記大粒二次粒子と前記小粒二次粒子は、特性が異なり、それらを同時に熱処理する場合、該小粒二次粒子または該大粒二次粒子が過焼成されたり、焼成が不完全になったりして性能が低下してしまう。従って、該大粒二次粒子と該小粒二次粒子とを別途に熱処理した後、熱処理された混合物を熱処理する段階を経ることになる。そのように、何回かの熱処理工程を経るので、正極活物質の製造工程が複雑であり、製造コストが上昇し、それに対する改善が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ニッケル系リチウム金属複合酸化物及びその製造方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記正極を採用し、寿命特性が改善されたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面により、
一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含むニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、前記二次粒子は、i)粒子サイズが14μm以上であり、アルミニウム(Al)を含む大粒二次粒子、及びii)粒子サイズが5μm以下であり、マンガン(Mn)を含む小粒二次粒子を含み、
前記大粒二次粒子においてリチウムを除いた金属の総モル数(total moles of metal excluding lithium)を基準にして前記大粒二次粒子のマンガン含量が、前記小粒二次粒子においてリチウムを除いた金属の総モル数を基準にして前記小粒二次粒子のマンガン含量に比べて少なく、該大粒二次粒子の表面にマンガン(Mn)が含まれ、該小粒二次粒子の表面にアルミニウム(Al)が含まれるニッケル系リチウム金属複合酸化物が提供される。
【0010】
他の側面により、14μm以上の大きさを有し、アルミニウムを含む大粒ニッケル系金属水酸化物と、5μm以下の大きさを有し、マンガンを含む小粒ニッケル系金属水酸化物と、リチウム前駆体とを混合し、前駆体混合物を得る段階と、
前記前駆体混合物を熱処理する段階と、を含み、前述のリチウム金属複合酸化物を製造する、ニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法が提供される。
【0011】
さらに他の側面により、前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極が提供される。
【0012】
さらに他の側面により、正極、負極、及びそれらの間に介在された電解質を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のニッケル系リチウム金属複合酸化物は、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを同時に熱処理して製造されうる。従って、熱処理段階の回数を減らすことができ、製造コストが低減される。そのようなニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極を利用すれば、容量、寿命及び高温保存特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS:time-of-flight secondary ion mass spectrometry)分析結果を示したイメージである。
図1B】実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したイメージである。
図1C】実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したイメージである。
図1D】実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したイメージである。
図1E】実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したイメージである。
図2A】比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したのである。
図2B】比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したのである。
図2C】比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したのである。
図2D】比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したのである。
図2E】比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析結果を示したのである。
図3】一具現例によるリチウム二次電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、例示的な具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物、その製造方法、それを含む正極、及びリチウム二次電池について、さらに詳細に説明する。
【0016】
一次粒子の凝集体を含む二次粒子を含むニッケル系リチウム金属複合酸化物であり、前記二次粒子は、i)粒子サイズが14μm以上であり、アルミニウム(Al)を含む大粒二次粒子、及びii)粒子サイズが5μm以下であり、マンガン(Mn)を含む小粒二次粒子を含み、前記大粒二次粒子のマンガン含量が、前記小粒二次粒子のマンガン含量に比べて少なく、該大粒二次粒子の表面にマンガン(Mn)が含まれ、該小粒二次粒子の表面にアルミニウム(Al)が含まれるニッケル系リチウム金属複合酸化物が提供される。
【0017】
容量特性にすぐれるリチウム二次電池用ニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造のために、大粒ニッケル系リチウム金属水酸化物、小粒ニッケル系リチウム金属水酸化物及びリチウム前駆体を熱処理して製造することが一般的である。
【0018】
大粒ニッケル系リチウム金属水酸化物と小粒ニッケル系リチウム金属水酸化物は、それぞれの各前駆体特性が異なり、別途に個別的に、一次熱処理する過程を経た後、それら前駆体とリチウム前駆体とを混合し、二次熱処理を進めることで、目的とするニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。そのように、ニッケル系リチウム金属複合酸化物を得るのに、3回の熱処理工程を経ることになり、製造コストが高く、製造工程が複雑であり、それに対する改善が必要である。
【0019】
前述の問題点を解決するために、大粒ニッケル系リチウム金属水酸化物と小粒ニッケル系リチウム金属水酸化物とを同時に熱処理する方法が試された。しかしながら、該方法によって同時熱処理するとき、大粒ニッケル系リチウム金属水酸化物に合わせて熱処理温度を高めれば、小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物形成が困難になる。同時熱処理時、もし熱処理温度を小粒ニッケル系リチウム金属水酸化物に合わせて低くして実施すれば、大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物の熱処理が十分ではなく、それを利用して製造されたリチウム二次電池の特性が悪化する。
【0020】
高容量正極活物質製造のために、前記大粒ニッケル系リチウム金属水酸化物及び前記小粒ニッケル系リチウム金属水酸化物として、ニッケル含量が多い化合物を利用する。そのように、ニッケル含量が多く、互いに異なる粒子サイズを有するニッケル系リチウム金属水酸化物を同時に熱処理すれば、そこから得られたニッケル系リチウム金属複合酸化物の一次粒子の大きさが異なることになる。それにより、大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物と小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物との粒子強度が互いに異なることになり、それを含む電極を圧延する過程において、二次粒子の離散が生じる。その結果、電極圧延時、活物質の崩れ現象が生じる。
【0021】
本発明者らは、前述の問題点を事前に防止するために、大粒小粒の前駆体の組成を異ならせ、同時に熱処理を進めながら、同一最適温度において、一次粒子サイズが制御されたニッケル系リチウム金属複合酸化物を製造することで、前記ニッケル系リチウム金属複合酸化物の粒子強度が向上され、電極圧延工程において、活物質崩れ現象を効果的に抑制することができることを見出した。また、該ニッケル系リチウム金属複合酸化物は、構造的安定性にすぐれ、容量特性にすぐれる。
【0022】
大粒二次粒子である大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物は、マンガンを含まないか、あるいは大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、マンガン含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準として、0.01ないし0.5モル%である。そして、小粒二次粒子である小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物のマンガン含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準として、0.5モル%ないし5モル%である。そのような組成のリチウム金属複合酸化物は、高容量を具現しながらも、小粒二次粒子のマンガン成分と、残留リチウムとの副反応を抑制することができる。
【0023】
大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物は、アルミニウムを含む。アルミニウムの含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準として、0.5ないし5モル%、例えば、1ないし3モル%である。小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、マンガン含量は、リチウムを除いた金属の総モルを基準として、0.5ないし5モル%、例えば、1ないし3モル%である。前述のアルミニウム含量及びマンガン含量の範囲を有するならば、構造的安定性にすぐれ、エネルギー密度にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。ニッケル系リチウム金属複合酸化物に含有された大粒二次粒子と小粒二次粒子のアルミニウム含量、マンガン含量及びその差は、ニッケル系リチウム金属複合酸化物製造時に利用される大粒前駆体、小粒前駆体のアルミニウム含量、マンガン含量及びその差と実質的に同一に維持されうる。
【0024】
大粒前駆体及び小粒前駆体は、例えば、ニッケル系金属複合水酸化物またはニッケル系金属複合酸化物である。
【0025】
該大粒二次粒子は、平均粒径1μm以下、例えば、0.1ないし1μmの大きさを有する一次粒子が集まり、14μm以上の平均粒径を有する二次粒子を形成したものであり、該小粒二次粒子は、平均粒径1μm以下、例えば、0.1ないし1μmの大きさを有する一次粒子が集まり、5μm以下の平均粒径を有する二次粒子を形成したものである。
【0026】
該大粒前駆体と該小粒前駆体のマンガン含量は、前述のように、前述の大粒二次粒子である大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物、及び小粒二次粒子である小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物のマンガン含量と同一である。該大粒前駆体と該小粒前駆体のマンガン含量が、前記範囲であるとき、大粒前駆体と小粒前駆体とを同時に熱処理する場合、構造的安定性にすぐれ、エネルギー密度にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。
【0027】
大粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物と小粒ニッケル系リチウム金属複合酸化物において、ニッケル含量は、互いに同一であり、例えば、60モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、80ないし99モル%、85ないし95モル%、あるいは88ないし90モル%である。ニッケル系リチウム金属複合酸化物に含有された大粒二次粒子と小粒二次粒子のニッケル含量及びその差は、大粒前駆体と小粒前駆体のニッケル含量及びその差と同一に維持されうる。
【0028】
大粒前駆体の粒子サイズは、12μmないし20μm、例えば、14ないし18μmである。そして、小粒前駆体の粒子サイズは、2μmないし5μm、例えば、3ないし4μmである。
【0029】
大粒前駆体の含量は、大粒前駆体と小粒前駆体の総含量100重量部を基準にし、30ないし90重量部、50ないし90重量部、60ないし90重量部、70ないし90重量部、または70ないし80重量部である。そして、本発明のニッケル系リチウム金属複合酸化物において、大粒二次粒子の含量は、大粒二次粒子と小粒二次粒子の総含量100重量部を基準にし、30ないし90重量部、50ないし90重量部、60ないし90重量部、70ないし90重量部、または70ないし80重量部である。大粒二次粒子と小粒二次粒子との混合比が前記範囲であるとき、それらを得るための大粒前駆体と小粒前駆体とを同時に熱処理することで、構造的安定性にすぐれ、エネルギー密度にすぐれるニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。
【0030】
本明細書において、用語「大きさ」は、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、またはその前駆体の粒子が球形である場合には、粒径を示す。そして、前記粒子が球形ではない場合には、大きさは、長軸長を示す。前記粒径は、例えば、平均粒径であり、前記長軸長は、例えば、平均長軸長である。平均粒径及び平均長軸長は、それぞれ測定された粒径及び測定された長軸長の平均値を示す。
【0031】
平均粒径は、PSD(particle size distribution)測定機器を利用して測定するか、あるいはSEM(scanning electron microscope)などを介して測定可能である。長軸長は、SEMなどを介して測定することができる。例えば、平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した平均粒径であり、SEMイメージを用いて約10-30個粒子の粒径の平均値として計算することができる。例えば、粒子径は、中間粒子サイズ(median particle size)またはD50粒子サイズでもある。D50粒度は、粒度の体積分布において粒子の50%がさらに大きい粒子サイズを有し、粒子サイズの体積分布において粒子の50%がさらに小さい粒子サイズを有することを示す。粒子が球形である場合、粒子の「平均粒子径」という用語は、中央値直径(D50)でもある。本明細書において「D50」は、最小サイズから最大サイズ順に整列された累積粒子分布に対して体積50%に該当する粒子径を意味する。分布は、最小粒子サイズから最大粒子サイズ順に累積されうる。曲線において総粒子数が100%であるとき、最小粒子から50%に該当する粒子径の値を意味する。
【0032】
一具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物は、14μm以上の大きさを有し、アルミニウムを含む大粒前駆体と、5μm以下の大きさを有し、マンガンを含む小粒前駆体と、リチウム前駆体とを混合し、前駆体混合物を得る段階、及び前記前駆体混合物を熱処理する段階を含んで製造することができる。
【0033】
該大粒前駆体は、マンガンを含まないか、あるいは該大粒前駆体におけるマンガン含量は、大粒前駆体の金属の総モルを基準にして、0.5モル%以下、例えば、0モル%、または0.01モル%ないし0.5モル%である。一具現例によれば、該大粒前駆体において、マンガンが含有されていない。
【0034】
該小粒前駆体におけるマンガン含量は、小粒前駆体の金属の総モルを基準にして、0.5ないし5モル%、または1ないし3モル%である。
【0035】
該大粒前駆体におけるアルミニウム含量は、大粒前駆体の金属の総モルを基準にして、0.5ないし5モル%、または1ないし3モル%である。
【0036】
前記熱処理は、600ないし900℃、650ないし850℃、例えば、680ないし760℃で実施される。
【0037】
前記アルミニウムを含む大粒二次粒子は、下記化学式1で表される化合物である。
【0038】
[化学式1]
Li(Ni1-x-y-zCoAl)O2±α1
【0039】
前記化学式1で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなるグループのうちから選択される元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.6≦(1-x-y-z)<0.4、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦z<1、0≦α1≦0.1である。
【0040】
化学式1で、0.8≦(1-x-y-z)<1である。
【0041】
化学式1でyは、例えば、0.001ないし0.3、0.003ないし0.2、0.005ないし0.05、または0.01ないし0.03である。
【0042】
マンガンを含む小粒二次粒子は、下記化学式2で表される化合物である。
【0043】
[化学式2]
Li(Ni1-x-y-zCoMn)O2±α1
【0044】
前記化学式2で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなるグループのうちから選択される元素であり、
0.95≦a≦1.1、0.3≦(1-x-y-z)<1、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦z<0.4、0≦α1≦0.1である。
【0045】
化学式2でyは、例えば、0.001ないし0.3、0.003ないし0.2、0.005ないし0.05、または0.01ないし0.03である。
【0046】
該大粒二次粒子は、下記化学式3で表される化合物でもある。
【0047】
[化学式3]
Li(Ni1-x-yCoAl)O2±α1
【0048】
前記化学式3で、0.95≦a≦1.1、0.3≦(1-x-y)<1、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦α1≦0.1である。
【0049】
化学式3で、(1-x-y)は、例えば、0.80ないし0.98であり、xは、0.01ないし0.1であり、yは、例えば、0.001ないし0.3、0.005ないし0.05、または0.01ないし0.03である。
【0050】
該小粒二次粒子は、下記化学式4で表される化合物でもある。
【0051】
[化学式4]
Li(Ni1-x-yCoMn)O2±α1
【0052】
前記化学式4で、0.95≦a≦1.1、0.3≦(1-x-y)<1、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦z<0.4、0≦α1≦0.1である。
【0053】
化学式4で、(1-x-y)は、例えば、0.80ないし0.98であり、xは、0.01ないし0.1であり、yは、例えば、0.01ないし0.110、0.005ないし0.05、または0.01ないし0.03である。
【0054】
以下、一具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0055】
大粒前駆体、小粒前駆体及びリチウム前駆体を混合し、前駆体混合物を得て、それを熱処理し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。
【0056】
該大粒前駆体の粒子サイズは、14μm以上、例えば、12ないし18μmであり、小粒二次粒子である該小粒前駆体の粒子サイズは、5μm以下、例えば、2ないし5μmである。
【0057】
該大粒前駆体は、下記化学式5で表される化合物でもある。
【0058】
[化学式5]
(Ni1-x-y-zCoAl)(OH)
【0059】
前記化学式5で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなるグループのうちから選択される元素であり、
0.6≦(1-x-y-z)<1、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦z<0.4である。
【0060】
化学式5で、0.8≦(1-x-y-z)<1である。
【0061】
yは、例えば、0.001ないし0.3、0.005ないし0.1、0.005ないし0.05、または0.01ないし0.03である。
【0062】
前記小粒前駆体は、下記化学式6で表される化合物でもある。
【0063】
[化学式6]
(Ni1-x-y-zCoMn)(OH)
【0064】
前記化学式6で、Mは、ボロン(B)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)からなるグループのうちから選択される元素であり、
0.6≦(1-x-y-z)<1、0<x<0.4、0<y<0.4、0≦z<0.4である。
【0065】
yは、例えば、0.001ないし0.3、0.005ないし0.1、0.005ないし0.05、または0.01ないし0.03である。
【0066】
前記化学式5及び6で、ニッケル含量は、60ないし98モル%、例えば、80ないし96モル%である。
【0067】
前記大粒前駆体は、例えば、Ni0.92Co0.05Al0.03(OH)、Ni0.94Co0.03Al0.03(OH)、Ni0.88Co0.06Al0.06(OH)、Ni0.96Co0.02Al0.02(OH)、Ni0.91Co0.07Al0.02(OH)、Ni0.90Co0.07Al0.03(OH)、Ni0.93Co0.04Al0.03(OH)、Ni0.8Co0.15Al0.05(OH)2、Ni0.75Co0.20Al0.05(OH)、Ni0.9Co0.09Al0.01(OH)などである。そして、該小粒前駆体は、例えば、Ni0.92Co0.05Mn0.03(OH)、Ni0.94Co0.03Mn0.03(OH)、Ni0.88Co0.06Mn0.06(OH)、Ni0.96Co0.02Mn0.02(OH)、Ni0.91Co0.07Mn0.02(OH)、Ni0.90Co0.07Mn0.03(OH)、Ni0.93Co0.04Mn0.03(OH)、Ni0.8Co0.15Mn0.05(OH)2、Ni0.75Co0.20Mn0.05(OH)、Ni0.9Co0.09Mn0.01(OH)、またはその組み合わせ物である。
【0068】
本明細書において、大粒前駆体及び小粒前駆体の組成は、大粒及び小粒のニッケル系金属複合酸化物の組成に対応するように制御される。リチウム前駆体としては、例えば、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム(LiOH・nHO)(nは、1ないし5の数)、フルオロ化リチウム、炭酸リチウム、またはその混合物を使用する。
【0069】
該リチウム前駆体の含量は、大粒前駆体及び小粒前駆体の遷移金属総量に対するリチウム前駆体のリチウムのモル比が0.95ないし1.1、例えば、0.99ないし1.06になるように制御される。前記大粒前駆体及び前記小粒前駆体の遷移金属は、化学式2において、Ni、Co、Mn及びMを合わせた金属を言う。
【0070】
リチウム前駆体の含量が、前記範囲であるとき、リチウムの欠乏が生じ、陽イオン混合(cation mixing)、結晶性が低下し、粒成長が困難になる問題点なしに、電気化学的特性にすぐれる活物質を得ることができる。
【0071】
リチウム前駆体、大粒前駆体及び小粒前駆体の含量は、前記化学式1のニッケル系リチウム金属複合酸化物を製造することができるように、化学量論的に調節される。
【0072】
前記混合は、乾式混合でもあり、ミキサなどを利用して実施することもできる。
【0073】
前記熱処理は、酸化性ガス雰囲気下で実施される。前記酸化性ガス雰囲気は、酸素または空気のような酸化性ガスを利用し、例えば、前記酸化性ガスは、酸素または空気10ないし20体積%と、不活性ガス80ないし90体積%とからなる。
【0074】
該熱処理は、リチウム前駆体、大粒前駆体及び小粒前駆体の反応が進められる温度であって、緻密化温度以下の範囲で実施することが適切である。ここで、該緻密化温度は、結晶化が十分になされ、活物質が充電容量を具現することができる温度を意味する。該熱処理は、600℃ないし900℃、650℃ないし850℃、例えば、680℃ないし760℃で実施される。該熱処理が前記範囲であるとき、粒子形状成長が過度に進められ、容量及び効率のような電気化学的特性が急激に低下してしまう問題点がなく、また、粒子形状成長が不足して結晶性に劣り、構造内部に入り込んだり飛び散ったりするリチウム量が減りつつ、正極活物質表面に残留リチウム含量が多くなる問題点がなく、優秀な性能を有する正極活物質を得ることができる。
【0075】
該熱処理時間は、低温熱処理温度などによって可変的であるが、例えば、3ないし10時間実施する。
【0076】
該大粒前駆体及び該小粒前駆体の混合重量比は、9:1ないし3:7、または9:1ないし7:3である。
【0077】
前記大粒二次粒子である大粒前駆体、前記小粒二次粒子である小粒前駆体は、一般的な方法によって製造可能である。例えば、前記大粒前駆体及び前記小粒前駆体は、前駆体の乾燥工程だけ変化させて製造可能である。
【0078】
該大粒前駆体の場合、180ないし200℃の温度、例えば、190ないし200℃で乾燥させ、該小粒前駆体の場合には、乾燥温度を、205ないし220℃、または210ないし215℃の温度に変化させる。
【0079】
該リチウム前駆体は、炭酸リチウム(LiCO)、水酸化リチウム、フルオロ化リチウムなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用することができるリチウム前駆体であるならば、いずれも可能である。
【0080】
該大粒前駆体、該小粒前駆体及び該リチウム前駆体を混合し、前駆体混合物に錯化剤及びpH調節剤を付加して混合する。
【0081】
該錯化剤の例としては、アンモニウムイオン供給源としてアンモニア水を利用し、pH調節剤の例としては、水酸化ナトリウム溶液などを利用する。
【0082】
前記結果物のpHは、pH調節剤の含量を調節することで、11ないし13の範囲で制御する。
【0083】
前記結果物から沈殿物を得て、それを、純水を利用して洗浄し、それに対して二次熱処理を実施すれば、ニッケル系リチウム金属複合酸化物を得ることができる。
【0084】
前述の製造方法によって得られたニッケル系リチウム金属複合酸化物に対して飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS:time-of-flight secondary ion mass spectrometry)を行うことで、ニッケル系リチウム金属複合酸化物の形態、構造及び組成を確認することができる。大粒二次粒子の表面にマンガンが存在し、小粒二次粒子の表面にアルミニウムが存在することを間接的に確認することができる。
【0085】
飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)装置は、二次イオン質量分析(SIMS)装置に、質量分析計であるTOFを装着したものである。具体的には、二次イオン質量分析(SIMS)装置は、一次イオンを分析物質の表面に衝突させたときに放出されるイオン(陽イオンあるいは陰イオン)を分析し、化学的成分と表面構造とを得ることができる装置である。なお、TOF質量分析計は、高いイオン通過率を有し、質量を有した全てのイオンを同時に測定する優秀な質量分解能を有した装置であり、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)装置は、分析的に有用な分子の二次イオンを形成し、直接に分子に係わる情報を得ることができ、分子だけではなく、元素に対しても感度が高く、微細に焦点が合わせられたイオンビームにより、高い空間分解能を有する。
【0086】
アルミニウム(Al)を含む大粒二次粒子の表面のマンガン含量が、アルミニウム(Al)を含む大粒二次粒子のリチウムを除いた金属の含量を基準にして、0.01ないし0.2モル%であり、マンガンを含む小粒二次粒子の表面におけるアルミニウム含量は、マンガンを含む小粒二次粒子のリチウムを除いた金属の含量を基準にして、0.01ないし0.2モル%である。そのような組成を有するニッケル系リチウム金属複合酸化物を利用すれば、高温保存特性が改善されたリチウム二次電池を製造することができる。
【0087】
本発明のニッケル系リチウム金属複合酸化物の大粒二次粒子としては、例えば、LiNi0.9Co0.09Al0.01、LiNi0.90Co0.07Al0.03、Li1.05Ni0.9Co0.09Al0.01、Li1.05Ni0.90Co0.07Al0.03などを挙げることができ、小粒二次粒子は、例えば、LiNi0.9Co0.09Mn0.01、LiNi0.90Co0.07Mn0.03、Li1.05Ni0.9Co0.09Mn0.01、Li1.05Ni0.90Co0.07Mn0.03などを有することができる。
【0088】
一具現例による正極の合剤密度は、4.0g/cc以上、4.1g/cc以上、4.0ないし4.2g/cc、または4.15ないし4.2g/ccである。そして、前記正極の空隙率は5ないし40%である。合剤密度は、集電体以外の正極成分(すなわち、活物質、導電材、バインダなど)の重量を正極の体積で割って測定した。
本明細書において、正極の気孔度は、正極の全体体積に対して気孔が占める体積を比率で示したものである。
正極の孔隙率(気孔度)は、数式1によって計算される。
<数1>
P={A-(B/T)}/AX100
数式1で、Pは、正極気孔度を示し、Aは、正極における正極活物質層の実際体積を示し、Bは、正極内活物質の重量、Tは、正極における正極集電体を除いた正極活物質の真密度を示す。真密度は、文献(リチウム二次電池の原理及び応用-朴チョンギ著、文献参照)に開示されたところを利用する。
【0089】
前記ニッケル系リチウム金属複合酸化物の比表面積は、0.2ないし0.4m/g、または0.25ないし0.35m/gである。正極活物質の比表面積は、BET法によって測定したものであり、具体的には、BEL Japan社のBEL SORP-mino IIを利用し、液体窒素温度下(77K)における窒素ガス吸着量から算出したものである。
【0090】
前述のニッケル系リチウム金属複合酸化物を利用すれば、低温特性、率特性、及び高電圧におけるガス発生量の減少により、信頼性及び安全性が確保されたリチウム二次電池を製造することができる。
【0091】
一具現例による大粒前駆体及び小粒前駆体は、一般的な製造方法によって得ることができる。
【0092】
該大粒前駆体及び該小粒前駆体は、例えば、ニッケル前駆体、及び他の遷移金属の前駆体を共沈させて製造されうる。例えば、前記大粒前駆体及び前記小粒前駆体は、ニッケル、コバルト、及び他の金属を含む水酸化物または酸化物でもある。前記大粒前駆体は、Ni前駆体、Co前駆体及びAl前駆体を第1溶媒と混合して製造されうる。そして、小粒前駆体は、Ni前駆体、Co前駆体及びMn前駆体を第1溶媒と混合して製造されうる。
【0093】
前記大粒前駆体及び前記小粒前駆体はそれぞれ、ニッケル前駆体、コバルト前駆体、 アルミニウム前駆体、マンガン前駆体を、第1溶媒に混合して製造することができる。該ニッケル前駆体、該コバルト前駆体及び該マンガン前駆体は、当該技術分野で使用することができる物質であるならば、いずれも可能である。
【0094】
ニッケル前駆体としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルなどを使用する。そして、前記コバルト前駆体としては、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルトなどを使用し、前記マンガン前駆体としては、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガンなどを利用する。アルミニウム前駆体として、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどが用いられる。大粒前駆体の製造時に、ニッケル前駆体、コバルト前駆体及びアルミニウム前駆体の含量は、化学式1の化合物が得られるように、化学量論的に制御される。
【0095】
前記ニッケル前駆体、前記コバルト前駆体及び前記マンガン前駆体の含量は、前記化学式2の化合物を得ることができるように、化学量論的に制御される。前記大粒前駆体及び小粒前駆体の製造時、M前駆体がさらに付け加えられる。
【0096】
共沈反応時、溶媒としては、水、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを使用する。
【0097】
他の具現例による正極は、前述の正極活物質を含む。
【0098】
前記正極は、集電体と、前記集電体上に配された一具現例による正極活物質を含む正極活物質層と、を含む。
【0099】
前記正極は、例えば、前記正極活物質及びバインダを含む正極活物質組成物が、一定形状に成形されるか、あるいは前記正極活物質組成物が、アルミ箔のような集電体に塗布される方法によっても製造される。
【0100】
具体的には、前記正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。前記正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされ、正極板が製造される。代案としては、前記正極活物質組成物が別途の支持体にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、正極板が製造されうる。前記正極は、前述のところで列挙された形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態でもある。
【0101】
該正極は、当該技術分野で公知の一般的な正極活物質を追加して含んでもよい。
【0102】
前述の一般的な正極活物質として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物及びリチウムマンガン酸化物からなる群のうちから選択された1以上を含んでもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で利用可能な全ての正極活物質が追加して使用されうる。
【0103】
以下、一具現例によるニッケル系リチウム金属複合酸化物を含む正極、負極、リチウム塩含有非水電解質及びセパレータを有するリチウム二次電池の製造方法を記述する。
【0104】
正極及び負極は、集電体上に、正極活物質層形成用組成物及び負極活物質層形成用組成物をそれぞれ塗布して乾燥させ、正極活物質層及び負極活物質層を形成して作製される。
【0105】
前記正極活物質形成用組成物は、正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合して製造されるが、前記正極活物質として、一具現例による正極活物質を利用する。
【0106】
正極バインダは、正極活物質粒子間の付着、及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を行う。具体的な例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン・ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはそれらの多様な共重合体などを挙げることができ、それらうち、1種単独、または2種以上の混合物が使用されうる。
【0107】
前記導電材としては、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックのようなカーボン系物質;炭素ナノチューブ、炭素ファイバや金属ファイバのような導電性ファイバ;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末のような金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムのような導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体のような導電性素材などが使用されうる。
【0108】
前記導電材の含量は、正極活物質100重量部を基準にし、1ないし10重量部、または1ないし5重量部を使用する。該導電材の含量が、前記範囲であるとき、最終的に得られた電極の導電度特性にすぐれる。
【0109】
前記溶媒の非制限的な例として、N-メチルピロリドンなどを使用し、該溶媒の含量は、正極活物質100重量部を基準にし、20ないし200重量部を使用する。該溶媒の含量が、前記範囲であるとき、正極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0110】
前記正極集電体は、3ないし500μmの厚みであり、当該電池に化学的変化を誘発せずに、高い導電性を有するものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面がカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理されたものなどが使用されうる。該集電体は、その表面に微細な凹凸を形成し、正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体のような多様な形態が可能である。
【0111】
それと別途に、負極活物質、バインダ及び溶媒を混合し、負極活物質層形成用組成物を準備する。
【0112】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵したり放出したりすることができる物質が使用される。前記負極活物質の非制限的な例として、黒鉛・炭素のような炭素系材料、リチウム金属やその合金、シリコンオキサイド系物質などを使用することができる。本発明の一具現例によれば、シリコンオキサイドを使用する。
【0113】
負極バインダは、非制限的な例として、ポリフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン・プロピレン・ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸、及びそれらの水素をLi、NaまたはCaなどで置換した高分子、または多様な共重合体のような多様な種類のバインダ高分子でもある。
【0114】
前記負極活物質層は、導電材をさらに含んでもよい。前記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のような黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックのようなカーボンブラック;炭素ファイバや金属ファイバのような導電性ファイバ;炭素ナノチューブのような導電性チューブ;フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムのような導電性ウィスカ;酸化チタンのような導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体のような導電性素材などが使用されうる。前記導電材は、望ましくは、カーボンブラックでもあり、さらに具体的には、数十nmの平均粒径を有するカーボンブラックでもある。
【0115】
該導電材は、負極活物質層の総重量100重量部を基準にし、0.01重量部ないし10重量部、0.01重量部ないし5重量部、または0.1重量部ないし2重量部でもある。
【0116】
前記負極活物質層形成用組成物は、増粘剤をさらに含んでもよい。前記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、澱粉、再生セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールのうちの少なくともいずれか一つを使用することができ、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)を使用することができる。
【0117】
前記溶媒の含量は、負極活物質の総重量100重量部を基準にし、100ないし300重量部を使用する。該溶媒の含量が、前記範囲であるとき、負極活物質層を形成するための作業が容易である。
【0118】
前記負極集電体は、一般的に、3ないし500μm厚に作られる。そのような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、熱処理炭素、銅やステンレススチールの表面がカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理されたもの、アルミニウム・カドミウム合金などが使用されうる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成し、負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体のような多様な形態でも使用されうる。
【0119】
前記過程によって作製された正極と負極との間に、セパレータを介在させる。
【0120】
前記セパレータは、気孔径が0.01~10μmであり、厚みは、一般的に5~30μmであるものを使用する。具体的な例として、ポリプロピレン、ポリエチレンのようなオレフィン系ポリマー、またはガラスファイバによって作られたシートや、不織布などが使用される。電解質として、ポリマーなどの固体電解質が使用される場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることもできる。
【0121】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解液とリチウム塩とからなっている。該非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用される。
【0122】
前記非水電解液としては、非制限的な例を挙げれば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、N,N-ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルのような非陽子性有機溶媒が使用されうる。
【0123】
前記有機固体電解質としては、非制限的な例を挙げれば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデンなどが使用されうる。
【0124】
前記無機固体電解質としては、非制限的な例を挙げれば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSのようなLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などが使用されうる。
【0125】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解されやすい物質であり、非制限的な例を挙げれば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、(FSONLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボキシル酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウムイミドなどが使用されうる。
【0126】
図3は、一具現例によるリチウム二次電池の代表的な構造を概略的に図示した断面図である。
【0127】
図3を参照すれば、リチウム二次電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られたり折り畳まれたりした電極組立体が、電池ケース5に収容される。電池形状により、正極と負極との間にセパレータが配され、相互に積層された電池構造体が形成されうる。次に、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6に密封され、リチウム二次電池1が完成される。前記電池ケース5は、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、前記リチウム二次電池1は、大型薄膜型電池でもある。前記リチウム二次電池は、リチウムイオン電池でもある。前記電池構造体がパウチに収容された後、有機電解液に含浸されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、そのような電池パックは、高容量及び高出力が要求される全ての機器にも使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などにも使用される。
【0128】
また、前記リチウム二次電池は、高温において、保存安定性、寿命特性及び高率の特性にすぐれるので、電気車両にも使用される。例えば、プラグインハイブリッド車(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)のようなハイブリッド車にも使用される。
【0129】
以下の実施例及び比較例を介し、本発明についてさらに詳細に説明されるが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0130】
(大粒ニッケル系金属水酸化物及び小粒ニッケル系金属水酸化物の製造)
製造例1:大粒ニッケル系金属水酸化物の製造
後述する共浸法によって実施し、大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.90Co0.07Al0.03(OH))を得た。
【0131】
反応器にアンモニア水を付加し、大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.90Co0.07Al0.03(OH))を得ることができるようにニッケル系金属水酸化物の原料物質を化学量論的に制御しながら添加した水酸化ナトリウムを利用して、反応器の混合物のpHを調節した。次に、撹拌しながら、所望サイズになるまで反応させた後、原料溶液の投入を中止して乾燥させる過程を経て目的物を得た。該製造過程を具体的に記述すれば、次の通りである。
【0132】
ニッケル系金属水酸化物の原料物質として、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸コバルト(CoSO・7HO)及び硫酸アルミニウム(Al(SO・HO)を、90:7:3モル比になるように、溶媒である蒸留水に溶かし、混合溶液を準備した。錯化合物形成のために、アンモニア水(NHOH)希釈液と、沈澱剤としての水酸化ナトリウム(NaOH)を準備した。その後、金属原料混合溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウムをそれぞれ反応器内部に投入した。反応器内部のpHを維持するために、水酸化ナトリウムが投入された。反応器内のpHを11.3に調節した。次に、撹拌しながら、約20時間反応を実施した後、原料溶液の投入を中止した。
【0133】
反応器内のスラリー溶液を濾過し、高純度の蒸留水で洗浄した後、190℃の熱風オーブンで24時間乾燥させ、粒子サイズが約18μmである大粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.90Co0.07Al0.03(OH))粉末を得た。
【0134】
製造例2:小粒ニッケル系金属水酸化物の製造
小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.90Co0.07Mn0.03(OH))を得ることができるように、硫酸アルミニウム(Al(SO・HO)の代わりに、硫酸マンガン(MnSO・6HO)が使用され、硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸コバルト(CoSO・7HO)及び硫酸マンガン(MnSO・HO)含量が化学量論的に制御され、前駆体乾燥時、190℃の熱風オーブンで24時間乾燥する工程の代わりに、210℃の熱風オーブンで24時間乾燥させる工程に変化されたことを除いては、製造例1と同一過程によって実施し、約3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物(Ni0.90Co0.07Mn0.03(OH))粉末を得た。
【0135】
(ニッケル系リチウム金属複合酸化物、それを含む正極、及びリチウム二次電池の製造)
実施例1
製造例1によって得た18μmである大粒ニッケル系金属水酸化物と、製造例2によって得た3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物とを、80:20の混合重量比で混合し、ニッケル系金属水酸化物混合物を得た。
【0136】
前記ニッケル系金属水酸化物混合物と無水水酸化リチウム(LiOH)とを、ヘンチェルミキサを使用して乾式で混合し、酸素雰囲気で、約720℃で10時間熱処理を施し、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。ここで、ニッケル系金属水酸化物混合物と無水水酸化リチウムとの混合時、リチウムとリチウムを除いた金属の混合モル比は、1:1.05モル比であり、該遷移金属は、ニッケル系金属水酸化物に含有された遷移金属の総和を言う。
【0137】
前記大粒二次粒子の平均粒径は、18μmであり、前記小粒二次粒子の平均粒径は、3μmであり、該大粒二次粒子と該小粒二次粒子との混合重量比は、80:20であり、該大粒二次粒子と該小粒二次粒子とにおいて、マンガン含量差は、3モル%である。
【0138】
平均粒径が18μmである大粒二次粒子であるLiNi0.90Co0.07Al0.03(NCA)(粒子A)、平均粒径が約3μmである小粒二次粒子のLiNi0.90Co0.07Mn0.03(NCM)(粒子B)を混合し、正極活物質として準備した。粒子Aと粒子Bとの混合重量比は、80:20である。
【0139】
前記正極活物質、炭素導電材(Super P)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)バインダ溶液を添加し、それを混合し、活物質スラリーを製造した。前記活物質スラリーにおいて、活物質:導電材:バインダの混合重量比は、96:2:2である。前記スラリーを、厚膜コーティング器を使用し、厚み12μmのアルミニウム集電体上にローディングレベル(loading level)が36mg/cmになるようにコーティングし、120℃で1時間以上乾燥させた後、圧延して正極を製造した。
【0140】
負極活物質である黒鉛粉末(Japan Carbon)を、1:1混合重量比のスチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)との混合物と混合し、負極活物質スラリーを準備した。該負極活物質スラリーにおいて、黒鉛粉末と、スチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)との混合物の混合重量比は、98:2である。
【0141】
準備した負極活物質スラリーを、厚みが8μmである銅ホイル集電体に、19.5mg/cmレベルでコーティングした。コーティングが完了した極板を、100℃で1時間以上乾燥させた後で圧延し、合剤密度が1.66g/cmである負極を製造した。
【0142】
前記正極及び前記負極を使用し、セパレータとして、ポリエチレンセパレータ(STAR20、Asahi)を使用し、電解質としては、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)(3:3:4体積比)混合溶媒に1.15M LiPFが溶解されたものを使用し、2,000mAh容量を有するリチウム二次電池を製造した。
【0143】
実施例2
大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造時、熱処理温度が約720℃から700℃に変化されたことを除いては、実施例1と同一に実施し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、それを含む正極、及びリチウム二次電池を製造した。
【0144】
実施例3
大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造時、熱処理温度が約720℃から740℃に変化されたことを除いては、実施例1と同一に実施し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、それを含む正極、及びリチウム二次電池を製造した。
【0145】
実施例4
正極活物質を準備する過程において、粒子Aと粒子Bとの混合重量比が80:20の代わりに70:30に変化されたことを除いては、実施例1と同一に実施し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、それを含む正極、及びリチウム二次電池を製造した。
【0146】
実施例5
大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物の製造時、熱処理温度が720℃の代わりに740℃に変化され、正極活物質を準備する過程において、粒子Aと粒子Bとの混合重量比が80:20の代わりに70:30に変化されたことを除いては、実施例1と同一に実施し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、それを含む正極、及びリチウム二次電池を製造した。
【0147】
実施例6ないし9
下記表1に示されているように、大粒二次粒子と小粒二次粒子の平均粒径を変化させたことを除いては、実施例1と同一に実施し、ニッケル系リチウム金属複合酸化物、それを含む正極、及びリチウム二次電池を製造した。
【0148】
【表1】
【0149】
比較例1
製造例1によって得た18μmである大粒ニッケル系金属水酸化物を酸素雰囲気において、約720℃で10時間一次熱処理を施し、大粒二次粒子であるニッケル系リチウム金属複合酸化物(NCA)を得た。
【0150】
それと別途に、製造例2によって得た3μmである小粒ニッケル系金属水酸化物を酸素雰囲気において、約740℃で10時間二次熱処理を施し、小粒二次粒子であるニッケル系リチウム金属複合酸化物(NCM)を得た。
【0151】
前記NCAと前記NCMとを、80:20の混合重量比で、ヘンチェルミキサを使用して乾式で混合し、酸素雰囲気において、約700℃で10時間三次熱処理を施し、大粒二次粒子と小粒二次粒子とを含むニッケル系リチウム金属複合酸化物を得た。前記大粒二次粒子の平均粒径は、18μmであり、前記小粒二次粒子の平均粒径は、3μmであり、該大粒二次粒子と該小粒二次粒子との混合重量比は、80:20であり、該大粒二次粒子と該小粒二次粒子とにおいて、マンガン含量差は、3モル%である。
【0152】
実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物の代わりに、比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物を利用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0153】
比較例2
平均粒径が18μmである大粒二次粒子であるLiNi0.90Co0.07Al0.03(NCA)(粒子A)の代わりに、大粒二次粒子であるLiNi0.85Co0.14Mn0.01(NCM)を使用し、平均粒径が約3μmである小粒二次粒子であるLiNi0.90Co0.07Mn0.03(NCM)の代わりに、小粒二次粒子であるLiNi0.9Co0.09Al0.01(NCM)を使用したことを除いては、実施例1と同一に実施し、リチウム二次電池を製造した。
【0154】
評価例1:飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)
実施例1及び比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)(Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry、ドイツ ION-TOF Co., Product Name: ION-TOF IV)評価を実施した。飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)分析時、ION-TOF社のTOF.SIMS-5を利用した。
【0155】
評価結果を、図1Aないし図1E図2Aないし図2Eに示した。図1Aないし図1Eは、実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対する飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)の分析結果を示したものであり、図1Bないし図1Eは、それぞれリチウム、ニッケル、マンガン及びアルミニウムのマッピング結果を示したものである。図2Aないし図2Eは、比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物に対するものであり、図2Bないし図2Eは、それぞれリチウム、ニッケル、マンガン及びアルミニウムのマッピング結果を示したものである。
【0156】
比較例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物は、図2Dに示されているように、大粒二次粒子位置(丸表示領域)において、Mn検出が観察されておらず、図2Eから分かるように、小粒二次粒子位置において、Alが検出されていない一方、実施例1のニッケル系リチウム金属複合酸化物においては、図1Dから分かるように、大粒二次粒子位置領域(丸表示領域)において、Mnが検出され、図1Eにおいて、小粒二次粒子位置(丸表示領域)においてAlが検出されている。
【0157】
評価例2:効率及び寿命特性
実施例1ないし5、及び比較例1によって作製されたリチウム二次電池において、充放電特性などを、充放電器(製造社:TOYO、モデル:TOYO-3100)で評価した。
【0158】
寿命評価は、各電池に対し、1Cの電流で、4.3Vに達するまで定電流充電した後、0.05Cの電流に達するまで定電圧充電を施した。充電が完了したセルは、約10分間の休止期間を経た後、1Cの電流で、電圧が3Vに至るまで定電流放電を施すサイクルを50回反復的に実施して評価した。
【0159】
容量維持率(CRR:capacity retention ratio)は、下記数式1で計算され、充放電効率は、下記数式2から計算され、該容量維持率及び該充放電効率特性の一部を調査し、下記表2に示した。
【0160】
[数式1]
容量維持率[%]=[50回目サイクルの放電容量/最初サイクルの放電容量]×100
【0161】
[数式2]
充放電効率=[最初サイクルの平均動作電圧/最初サイクルの平均動作電圧]X100
【0162】
【表2】
【0163】
表2を参照すれば、実施例1ないし5によって製造されたリチウム二次電池は、優秀な充電容量及び効率を示した。
【0164】
比較例1のリチウム二次電池は、表2から分かるように、充放電効率及び容量維持率にすぐれるが、正極は、大粒と小粒とを別途工程によって焼成し、3回焼成を経て得たニッケル系リチウム金属複合酸化物を利用しており、前記ニッケル系リチウム金属複合酸化物は、3回の焼成工程を必ず経なければならないため、製造コスト及び時間が多くかかり、該方法を実際に適用し難い。
【0165】
以上において、図面及び実施例を参照し、一具現例が説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有した者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
【符号の説明】
【0166】
1 リチウム二次電池
2 負極
3 正極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 キャップアセンブリ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3