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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】表面性状測定装置のパラメータ校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20230517BHJP
   G01B 5/20 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
G01B5/00 P
G01B5/20 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019138771
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021650
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 義幸
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-215360(JP,A)
【文献】特開2004-333312(JP,A)
【文献】特開2004-286457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
G01B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に接触するスタイラスと、
前記スタイラスが設けられ、回転軸により回動自在に支持されたアームと、
前記アームの回動に伴う前記スタイラスの第1方向の変位量を検出する変位量検出器と、
前記スタイラスが前記第1方向に直交する第2方向に前記被測定物を走査するように、前記スタイラスを前記被測定物に対して相対移動させる相対移動機構と、
前記被測定物に対する前記スタイラスの相対移動量を検出する移動量検出器と、
前記変位量および前記相対移動量に基づいた測定データを取得する測定部と、を備える表面性状測定装置を用いて、前記アームの長さに対応するパラメータLおよび前記スタイラスの長さに対応するパラメータHの少なくとも一方を校正するパラメータ校正方法であって、
前記第1方向および前記第2方向の各方向に変化する球面の一部形状を有する規定面を走査することにより前記測定データを取得する測定工程と、
前記パラメータLおよび前記パラメータHに基づいて前記測定データを補正することにより補正済データを取得する補正工程と、
前記補正済データの真円度を算出し、算出された前記真円度が所定値以下であるか否かを判定する判定工程と、
前記真円度が所定値より大きいと判定された場合、前記パラメータLおよび前記パラメータHの少なくとも一方を増加または減少させる調整工程と、
前記補正済データを2次元グラフにプロットするプロット工程と、を含み、
前記補正工程、前記判定工程および前記調整工程を、前記判定工程において前記真円度が所定値以下であると判定されるまで繰り返し実施し、
前記2次元グラフの縦軸および横軸は、極座標で表される前記補正済データの各値に対応し、
前記調整工程は、前記2次元グラフにおいて前記補正済データが示すパターン形状に基づいて、前記パラメータLおよび前記パラメータHの少なくとも一方を増加または減少させる
ことを特徴とする表面性状測定装置のパラメータ校正方法。
【請求項2】
被測定物に接触するスタイラスと、
前記スタイラスが設けられ、回転軸により回動自在に支持されたアームと、
前記アームの回動に伴う前記スタイラスの第1方向の変位量を検出する変位量検出器と、
前記スタイラスが前記第1方向に直交する第2方向に前記被測定物を走査するように、前記スタイラスを前記被測定物に対して相対移動させる相対移動機構と、
前記被測定物に対する前記スタイラスの相対移動量を検出する移動量検出器と、
前記変位量および前記相対移動量に基づいた測定データを取得する測定部と、を備える表面性状測定装置を用いて、前記アームの長さに対応するパラメータLを校正するパラメータ校正方法であって、
前記第1方向および前記第2方向の各方向に変化する平面形状を有する規定面を走査することにより前記測定データを取得する測定工程と、
前記パラメータLに基づいて前記測定データを補正することにより補正済データを取得する補正工程と、
前記補正済データの真直度を算出し、算出された前記真直度が所定値以下であるか否かを判定する判定工程と、
記真直度が所定値より大きいと判定された場合、前記パラメータLを増加または減少させる調整工程と、
前記補正済データを2次元グラフにプロットするプロット工程と、を含み、
前記補正工程、前記判定工程および前記調整工程を、前記判定工程において前記真直度が所定値以下であると判定されるまで繰り返し実施し、
前記調整工程は、前記2次元グラフにおいて前記補正済データが示すパターン形状に基づいて、前記パラメータLを増加または減少させる
ことを特徴とする表面性状測定装置のパラメータ校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定装置のパラメータ校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の表面を倣い走査することで被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置が知られている。この表面性状測定装置は、被測定物に接触するスタイラスと、スタイラスを上下方向に変位可能に支持するアームと、スタイラスの変位量を検出する変位量検出器と、被測定物に対してスタイラスを測定方向に相対移動させる移動機構と、スタイラスの相対移動量を検出する移動量検出器とを備えている。そして、被測定物の表面を倣い走査する際のスタイラスの変位量および相対移動量が測定データとして取得される。
【0003】
上述の表面性状測定装置では、スタイラスの円弧運動に起因する測定誤差が生じるため、測定データの当該測定誤差を低減させる補正が行われる。例えば、特許文献1には、変位量検出器のゲイン係数(パラメータg)、アーム長(パラメータL)およびスタイラス長(パラメータH)を各パラメータとして用いた補正方法が開示されている。
【0004】
上述の補正を適切に行うためには、各パラメータを校正することが重要である。例えば、上述の特許文献1には、所定の校正治具を測定した測定結果に基づいて各パラメータを校正する一括校正法が開示されている。この一括校正法では、既知の高さを有する段差部の測定結果に基づいてパラメータgを校正し、真球形状の一部を有する半球部の測定結果に基づいてパラメータHを校正する。このような校正方法によれば、パラメータgおよびパラメータHを独立して校正できるため、各パラメータの従属性による不確かさがなく、多種多様な測定に対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-286457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の一括校正法には、以下の問題が存在する。
第1に、従来の一括校正法では、半球部の測定データを代入した評価式を収束させることによってパラメータHの値を求めるが、当該評価式を収束させるためには、半球部をある程度広い範囲で測定した測定データを準備することが必要である。しかし、半球部の測定範囲が広くなるとアームが当該半球部に干渉し易くなり、校正のための十分な測定データを準備することが難しい。
第2に、従来の一括校正法では、パラメータLの校正を行うことができず、パラメータLを公称値に固定したまま使用している。このため、表面性状測定装置を製造する際、パラメータLの公称値を値付けするための煩雑な作業が必要になり、製造コストが増加する。また、パラメータLを公称値に固定することで補正精度が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上述の問題の少なくとも1つを解決するものであり、スタイラス長またはアーム長に対応する各パラメータの少なくとも一方を容易に校正できる表面性状測定装置のパラメータ校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被測定物に接触するスタイラスと、前記スタイラスが設けられ、回転軸により回動自在に支持されたアームと、前記アームの回動に伴う前記スタイラスの第1方向の変位量を検出する変位量検出器と、前記スタイラスが前記第1方向に直交する第2方向に前記被測定物を走査するように、前記スタイラスを前記被測定物に対して相対移動させる相対移動機構と、前記被測定物に対する前記スタイラスの相対移動量を検出する移動量検出器と、前記変位量および前記相対移動量に基づいた測定データを取得する測定部と、を備える表面性状測定装置を用いて、前記アームの長さに対応するパラメータLおよび前記スタイラスの長さに対応するパラメータHの少なくとも一方を校正するパラメータ校正方法であって、前記第1方向および前記第2方向の各方向に変化する平面形状または球面の一部形状を有する規定面を走査することにより前記測定データを取得する測定工程と、前記パラメータLおよび前記パラメータHに基づいて前記測定データを補正することにより補正済データを取得する補正工程と、前記補正済データの真円度または真直度を算出し、算出された前記真円度または前記真直度が所定値以下であるか否かを判定する判定工程と、前記真円度または前記真直度が所定値より大きいと判定された場合、前記パラメータLおよび前記パラメータHの少なくとも一方を増加または減少させる調整工程と、を含み、前記補正工程、前記判定工程および前記調整工程を、前記判定工程において前記真円度または前記真直度が所定値以下であると判定されるまで繰り返し実施することを特徴とする。
【0009】
このような本発明によれば、規定面を走査して得られる1回分の測定データを利用して、パラメータLおよびパラメータHが適正な値になるまで、パラメータL,Hの少なくとも一方を調整することにより、パラメータL,Hの少なくとも一方が校正される。この本発明では、測定動作が1回で済むため、パラメータL,Hを容易に校正することができる。
また、本発明では、パラメータHを校正するために、規定面を走査して得られる測定データを利用するが、従来技術においてパラメータHを校正するための測定範囲ほど広い測定範囲を必要としない。このため、規定面が球面の一部形状を有する場合であっても、アームが規定面に干渉することなく、パラメータHを校正するための十分な測定データを得ることができる。
また、本発明では、従来技術では実施できなかったパラメータLの校正を実施することができる。このため、表面性状測定装置を製造する際、パラメータLの公称値を値付けする必要がなく、製造コストを削減することができる。また、パラメータLを固定せずに適宜校正することで、補正精度を向上させることができる。
よって、本発明本実施形態のパラメータ校正方法によれば、パラメータL,Hの少なくとも一方を容易に校正することができる。
【0010】
本発明のパラメータ校正方法は、前記補正済データを2次元グラフにプロットするプロット工程をさらに含み、前記調整工程は、前記2次元グラフにおいて前記補正済データが示すパターン形状に基づいて、前記パラメータLおよび前記パラメータHの少なくとも一方を増加または減少させることが好ましい。
この本発明では、2次元校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状が、パラメータL,Hの影響を受けるため、当該パターン形状に基づいて、パラメータL,Hの増減方向や調整量など判断できる。このような方法によれば、パラメータL,Hを無作為に調整する場合に比べて、パラメータL,Hの調整にかかる時間を短縮することができる。
【0011】
本発明のパラメータ校正方法において、前記規定面は、前記球面の一部形状を有しており、前記2次元グラフの縦軸および横軸は、極座標で表される前記補正済データの各値に対応することが好ましい。
このような本発明によれば、2次元グラフにおいて補正済データが示すパターン形状は、パラメータL,Hが正常範囲にある場合に平坦な直線状になる。このため、当該パターン形状を確認しながらパラメータL,Hを調整することで、パラメータL,Hを正常値に合わせることが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る表面性状測定装置を示す模式図。
図2】前記第1実施形態の検出ユニットを示す模式図。
図3】前記第1実施形態の制御部を示すブロック図。
図4】前記第1実施形態の測定誤差を説明するための模式図。
図5】前記第1実施形態のパラメータL,Hを説明するための模式図。
図6】前記第1実施形態で使用する校正具を示す斜視図。
図7】前記第1実施形態の校正処理を説明するためのフローチャート。
図8】前記第1実施形態の校正処理の一部処理を説明するためのフローチャート
図9】前記第1実施形態のパラメータL,Hと第1校正用グラフとの関係を示す図。
図10図9の第1校正用グラフの縦軸のレンジを拡大した図。
図11】本発明の第2実施形態で使用するプリズム部を示す模式図。
図12】前記第2実施形態の校正処理を説明するためのフローチャート。
図13】前記第2実施形態の補正済データが示すパターン形状を説明する図。
図14】前記第2実施形態の補正済データが示すパターン形状を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本実施形態の表面性状測定装置1は、被測定物の表面を倣い走査することで被測定物の表面性状を測定するものであり、被測定物がセットされる装置本体10および装置本体10を制御する制御部40などを備えている。なお、図1には、被測定物の例であるワークWを示している。
【0014】
(装置本体)
本実施形態の装置本体10は、従来と略同様の構成を有している。以下、図1および図2を参照して、装置本体10の構成について簡単に説明する。なお、本実施形態では、装置本体10の上下方向をZ軸方向(第1方向)とし、Z軸に直交する一方向をX軸方向(第2方向)とし、Z軸方向およびX軸方向にそれぞれ直交する方向をY軸方向とする。
【0015】
図1に示すように、装置本体10は、ベース11と、ベース11上に設置されたステージ12と、検出ユニット20と、ステージ12と検出ユニット20とを互いに相対移動させる相対移動機構30と、を備えている。
【0016】
相対移動機構30は、ベース11の上面に立設されたコラム31と、コラム31に支持されたスライダ32と、コラム31に対してスライダ32をZ軸方向へ昇降させるZ軸駆動機構33と、スライダ32に対して検出ユニット20をX軸方向に移動させるX軸駆動機構34と、を備える。
Z軸駆動機構33およびX軸駆動機構34は、それぞれ、送りねじ機構などのアクチュエータによって構成される。また、X軸駆動機構34は、X軸方向における検出ユニット20の移動量を検出するための移動量検出器341を有している。移動量検出器341は、例えば、光電式、静電容量式または磁気式のエンコーダなどである。
【0017】
図2に示すように、検出ユニット20は、X軸駆動機構34により吊り下げ支持されたブラケット22と、ブラケット22に設けられた回転軸23により回動自在に支持されたアーム24と、アーム24の先端部241に設けられたスタイラス26と、スタイラス26のZ軸方向の変位量を検出する変位量検出器27とを備える。
スタイラス26は、アーム24の先端部241から下側に突出しており、当該スタイラス26の先端に設けられて被測定物に接触する測定子261を有している。測定子261は、例えば極小の球形状を有している。
変位量検出器27は、例えばエンコーダであり、アーム24の基端部242(先端部241の反対側の部位)と一体に移動する電極271と、当該電極のZ軸方向の変位を検出するスケール272とを有する。
【0018】
本実施形態の装置本体10では、スタイラス26が被測定物に接触した状態でX軸駆動機構34が検出ユニット20をX軸方向に移動させると、スタイラス26は被測定物の表面高さに従ってZ軸方向に変位しながら被測定物をX軸方向に倣い走査する。この走査中、移動量検出器341は、検出ユニット20のX軸方向への移動量(被測定物に対するスタイラス26の相対移動量)を検出し、検出信号を制御部40に出力する。また、変位量検出器27は、スタイラス26のZ軸方向の変位量を検出し、検出信号を制御部40に出力する。
【0019】
(制御部)
図3を参照して制御部40について説明する。制御部40は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータにより構成されており、メモリ等により構成される記憶部41と、CPU(Central Processing Unit)等により構成された演算部42と、演算部42により処理された情報を表示部50に表示させる表示制御部43と、操作部60からの入力情報を受け付ける入力受付部44と、を備えている。また、演算部42は、記憶部41に記憶されたプログラムを読み込み実行することで、移動制御部421、測定部422、補正部423および校正部424として機能する。
【0020】
移動制御部421は、相対移動機構30を駆動制御することにより、ステージ12に対する検出ユニット20の相対移動を制御する。
測定部422は、移動量検出器341および変位量検出器27からそれぞれ入力される検出信号に基づいて、X軸方向に所定ピッチの測定データ(Xm,Zm)を取得する。
補正部423は、記憶部41に記憶された各種パラメータに基づいて、測定データの補正を行う。なお、以下では、補正された測定データを補正済データと称する場合がある。
校正部424は、記憶部41に記憶されたパラメータの校正処理を行う。
なお、制御部40には、表示部50および操作部60などが接続されている。表示部50は、任意の形態のディスプレイであり、操作部60は、例えばキーボードやジョイスティックなどである。
【0021】
(測定データの補正)
図4に示すように、本実施形態における測定データ(Xm,Zm)には、スタイラス26の円弧運動に起因する誤差が含まれる。このため、補正部423は、所定のパラメータを用いて、スタイラス26の円弧運動に起因する測定誤差を取り除くための演算処理を行う。これにより、補正済データ(Xr,Zr)が算出される。
測定データの補正方法は、例えば特開2004-286457号公報に開示される方法を参照可能である。
具体的には、補正後の測定データ(Xr,Zr)は、測定データ(Xm,Zm)およびパラメータL,H,gに基づいて、以下の数式1により算出される。
【数1】
【0022】
ここで、パラメータLは、アーム24の長さに対応する値であり、パラメータHは、スタイラス26の長さに対応する値であり、パラメータgは、変位量検出器27のゲイン係数である。
【0023】
パラメータL,Hは、図5に示すように規定される。
なお、図5では、回転軸23を通るアーム24の中心軸線を基線Aとし、基線AがX軸方向に平行に配置されている場合において測定子261を通りZ軸方向に平行である線(スタイラス26の中心軸線)を基線Bとしている。また、基線Aと基線Bとの交点を基点Pとしている。
このような図5において、パラメータLは、アーム24の長さに対応する値であり、アーム24を支持する回転軸23の中心軸Cから基点Pまでの距離として規定される。パラメータHは、スタイラス26の長さに対応する値であり、基点Pから測定子261の中心までの距離として規定される。
【0024】
(校正具)
本実施形態では、図6に示すように、従来の一括校正法で使用される校正具100を測定することによって、各パラメータL,H,gの校正を行う。この校正具100は、基台部101と、基台部101に対して既知の高さhを有する段差部102と、半球部103と、半球部103よりも小径の球体部104とを有する。
ここで、半球部103は、球面の一部形状に相当し、かつ、Z軸方向およびX軸方向の各方向に変化する規定面に相当する球面103Aを有している。
【0025】
本実施形態では、段差部102の高さhの測定結果を利用してパラメータgを校正し、半球部103の球面103Aの測定結果を利用してパラメータL(本発明のパラメータL)およびパラメータH(本発明のパラメータH)を校正する。
なお、本実施形態では説明を省略しているが、球体部104の測定データに基づいて測定子261の半径(パラメータr)を校正してもよい。
【0026】
(校正方法)
本実施形態のパラメータL,H,gの校正方法について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。
なお、記憶部41には、パラメータL,H,gについて、初期値(例えば設計値)または前回校正による校正値が記憶されているものとする。
【0027】
事前準備として、ユーザは、ステージ12上に校正具100をセッティングし、表面性状測定装置1の校正処理を開始させる。
まず、移動制御部421は、スタイラス26が段差部102および基台部101の各上面ならびに半球部103の球面103Aを、X軸方向に順に走査するようにX軸駆動機構34を制御する。測定部422は、変位量検出器27および移動量検出器341から入力される各信号に基づいて、走査中の測定子261の座標(Xm,Zm)をX軸方向に所定のピッチで取得する。これにより、測定データが取得される(ステップS1)。
なお、半球部103の測定範囲は、半球部103の頂点に対してX軸方向の一方側の範囲(例えば中心角45°の範囲)であることが好ましい。
【0028】
次に、補正部423は、パラメータL,H,gに基づいて測定データの補正を行い(ステップS2)、校正部424は、段差部102および基台部101の各上面の補正済データに基づいて、パラメータgを校正する(ステップS3)。
具体的には、段差部102の上面を測定したときのZ座標Zrと基台部101の上面を測定したときのZ座標Zrとの差を算出し、当該差が段差部102の高さhに等しくなるパラメータgを算出し、記憶部41に記憶されたパラメータgの値を算出された値に更新する。
【0029】
次に、補正部423は、パラメータL,H,g(パラメータgはステップS3で校正された値)に基づいて測定データの補正を行う(ステップS4)。そして、校正部424は、球面103Aの補正済データに基づいて真円度を算出し、算出された真円度が所定値t1以下であるか否かを判定する(ステップS5)。
ここで、所定値t1は、予め設定された任意の値であり、例えば、後述する第1校正用グラフにおける補正済データのパターン形状が正常範囲になる場合の上限値に設定される。
【0030】
校正部424は、算出された真円度が所定値t1より大きいと判定した場合(ステップS5;Noの場合)、パラメータL,Hの一方を増加または減少させる調整処理を行う(ステップS6)。ステップS6について、図8のフローを参照して、以下に具体的に説明する。
【0031】
まず、校正部424は、球面103Aの補正済データを極座標展開する。具体的には、(Xr,Zr)で表される直交座標の補正済データを、(θ,r)で表される極座標の補正済データに変換し、当該補正済データを所定の2次元グラフ(以下、第1校正用グラフ)にプロットする(ステップS7;プロット工程)。ここで、第1校正用グラフの横軸は、補正済データのθ値に対応し、第1校正用グラフの縦軸は、補正済データのr値に対応する。なお、本実施形態におけるθ値およびr値は、補正済データに対して最小自乗的に円を当てはめたときの残差として算出される。
このステップS7において、表示制御部43は、校正部424により作成された第1校正用グラフを表示部50に表示させる。
【0032】
次に、ユーザは、表示部50に表示された第1校正用グラフを確認し、補正済データが示すパターン形状に基づいて、パラメータL,Hの一方を調整する(ステップS8~S15)。
ここで、第1校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状は、パラメータL,Hの影響を受ける。当該パターン形状とパラメータL,Hの関係を図9および図10に示す。図9は、パラメータL,Hの値が適正範囲か否かによって場合分けした第1校正用グラフを示しており、図10では、図9のうちの一部の第1校正用グラフについて、縦軸のレンジを拡大して示している。
【0033】
図9に示すように、パラメータHが正常範囲から外れている場合、第1校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状は、S字状または逆S字状になる。具体的には、パラメータHの値が正常範囲よりも大きい場合、当該パターン形状はS字状になり、パラメータHの値が正常範囲よりも小さい場合、当該パターン形状は逆S字状になる。
【0034】
また、図10に示すように、パラメータHが正常範囲である場合、第1校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状は、パラメータLが正常範囲である場合と、パラメータLが正常範囲から外れている場合とで異なる形状を示す。
本実施形態では、測定範囲のうち半球部103の頂点からより離れた領域(図10中の符号Dで示す領域)において、当該パターン形状は、パラメータLの値が正常範囲よりも大きい場合に右肩下がりになり、パラメータLの値が正常範囲よりも小さい場合に右肩上がりになる。
【0035】
従って、ユーザは、第1校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状が上述のいずれの場合に該当するかを判断し、当該判断結果に基づいてパラメータL,Hの一方を調整する。
例えば、ユーザは、パターン形状が平坦ではなく(ステップS8;NO)、正S字状であると判断した場合(ステップS9;YES)、操作部60を介してパラメータHを増加方向に調整する(ステップS10)。
また、ユーザは、パターン形状が平坦ではなく(ステップS8;NO)、逆S字状であると判断した場合(ステップS9;NO)、操作部60を介してパラメータHを減少方向に調整する(ステップS11)。
【0036】
パターン形状が一見して平坦である場合(ステップS8;YES)、ユーザは、操作部60を介して、校正グラフのr軸のレンジを拡大する(ステップS12)。
そして、ユーザは、測定範囲の所定領域において補正済データが示すパターン形状が右肩下がりであると判断した場合(ステップS13;YES)、操作部60を介してパラメータLを減少方向に調整する。一方、当該パターン形状が右肩上がりであると判断した場合(ステップS13;NO)、操作部60を介してパラメータLを増加方向に調整する。
【0037】
上述のステップS10,S11,S14,S15における各パラメータL,Hの調整幅は、予め定められた所定値であってもよい。また、ステップS6を繰り返し行う間、パターン形状の入れ替わりが生じた場合には、調整幅を減少させてもよい。あるいは、パターン形状が、平坦な形状から大きく変化しているほど、調整幅を大きくしてもよい。
校正部424は、上述のステップS10,S11,S14,S15のいずれか実施された場合、記憶部41のパラメータLまたはパラメータHを調整後の値に更新する。以上によりステップS6が終了する。
【0038】
上述のステップS6の終了後、図7に示すステップS2に戻り、ステップS2~S5を再び実施する。そして、ステップS5でNoの場合には、ステップS6を再び実施する。
すなわち、本実施形態の校正方法では、真円度が所定値t1以下になるまで、ステップS2~S6を繰り返し実施する。
【0039】
真円度が所定値t1以下である場合(ステップS5;Yesの場合)、校正部424は、記憶部41に記憶されたパラメータL,Hは正常範囲内であると判断する。すなわち、パラメータL,Hが校正されたと判断し、フローを終了する。
【0040】
なお、上述では説明を省略しているが、校正具100の球体部104を走査した測定データに基づいて、測定子261の半径(パラメータr)の値を校正してもよい。パラメータrの校正方法は、従来技術と同様の方法により実施できる。
【0041】
〔第1実施形態の効果〕
本実施形態のパラメータ校正方法は、半球部103の球面103A(規定面)を走査し、測定データを取得する測定工程(ステップS1)と、パラメータL,Hに基づいて測定データを補正することにより補正済データを取得する補正工程(ステップS4)と、補正済データの真円度を算出し、当該真円度が所定値t1以下であるか否かを判定する判定工程(ステップS5)と、真円度が所定値t1より大きいと判定された場合、パラメータL,Hの少なくとも一方を増減させる調整工程(ステップS6)と、を含み、補正工程、判定工程および調整工程を、真円度が所定値t1以下であると判定されるまで繰り返し実施する。
【0042】
本実施形態のパラメータ校正方法では、半球部103の球面103Aを走査して得られる1回分の測定データを利用して、パラメータL,Hが適正な値になるまで、パラメータL,Hを調整する。すなわち、測定動作が1回で済むため、パラメータL,Hを容易に校正することができる。
また、本実施形態では、従来技術と同様に、半球部103の球面103Aを走査して得られる測定データを利用するが、従来技術においてパラメータHを校正するための測定範囲ほど広い測定範囲を必要としない。このため、アーム24が半球部103に干渉することなく、パラメータHを校正するための十分な測定データを得ることができる。
また、本実施形態では、従来技術では実施できなかったパラメータLの校正を実施することができる。このため、表面性状測定装置1を製造する際、パラメータLの公称値を値付けする必要がなく、製造コストを削減することができる。また、パラメータLを固定せずに適宜校正することで、補正精度を向上させることができる。
なお、パラメータgについては、従来と同様の校正具100を利用することで、従来技術と同様に校正することができる。
よって、本実施形態のパラメータ校正方法によれば、従来の一括校正法の利点を損なわずに、パラメータL,Hを容易に校正することができる。
【0043】
本実施形態のパラメータ校正方法は、球面103Aの補正済データを第1校正用グラフにプロットするプロット工程(ステップS7)をさらに含み、調整工程は、第1校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状に基づいて、パラメータL,Hの少なくとも一方を調整する。
この本実施形態では、第1校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状が、パラメータL,Hの影響を受けるため、当該パターン形状に基づいて、パラメータL,Hの増減方向や調整量などを判断できる。このような方法によれば、パラメータL,Hを無作為に調整する場合に比べて、パラメータL,Hの調整にかかる時間を短縮することができる。
【0044】
本実施形態のパラメータ校正方法において、第1校正用グラフの縦軸および横軸は、極座標で表される補正済データのr値およびθ値に対応する。
このような方法によれば、第1校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状は、パラメータL,Hが正常範囲にある場合に平坦な直線状になる。このため、当該パターン形状を確認しながらパラメータL,Hを調整することで、パラメータL,Hを正常値に合わせることが容易になる。
なお、本実施形態では、補正済データのθ値およびr値は、補正済データに対して最小自乗的に円を当てはめたときの残差として算出される。このため、球面103Aの半径などは未知であってもよい。
【0045】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、使用する校正具およびパラメータL,Hの校正方法が異なること以外、第1実施形態と略同様である。
【0046】
(校正具)
第2実施形態の校正具は、第1実施形態の校正具100の構成(基台部101、段差部102、半球部103)に加えて、図11に示すようなプリズム部105を有している。
このプリズム部105は、互いに角度を挟んで配置された第1面105Aおよび第2面105Bを有している。第2実施形態では、第1面105Aおよび第2面105Bが、それぞれ、本発明の規定面に相当する。具体的には、第1面105Aおよび第2面105Bは、それぞれ、Z軸方向およびX軸方向の各方向に変化する平面形状を有している。なお、第1面105Aおよび第2面105Bは、Z軸方向およびY軸方向に平行な仮想面に対して対称関係を有する。
【0047】
(校正方法)
第2実施形態のパラメータg,L,Hの校正方法について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。
なお、記憶部41には、パラメータg,L,Hについて、初期値(例えば設計値)または前回校正による校正値が記憶されているものとする。
【0048】
ユーザは、事前準備としてステージ12上に校正具100およびプリズム部105をセッティングし、表面性状測定装置1の校正処理を開始させる。
まず、移動制御部421は、スタイラス26が校正具100(段差部102、基台部101、半球部103および球体部104)ならびにプリズム部105をそれぞれX軸方向に走査するようにX軸駆動機構34を制御する。測定部422は、変位量検出器27および移動量検出器341から入力される各信号に基づいて、走査中の測定子261の座標(Xm,Zm)をX軸方向に所定のピッチで取得する。これにより、校正具100の測定データおよびプリズム部105の測定データが取得される(ステップS21,S22)。
なお、ステップS22において、プリズム部105は、図11に示すように、第1面105Aおよび第2面105Bをそれぞれ走査される。
【0049】
次に、第1実施形態と同様、補正部423は、パラメータL,H,gに基づいて測定データの補正を行い(ステップS23)、校正部424は、段差部102および基台部101の各補正済データに基づいて、パラメータgを校正する(ステップS24)。
【0050】
次に、補正部423は、パラメータL,H,g(パラメータgはステップS24で校正された値)に基づいて測定データの補正を行い(ステップS25)、校正部424は、半球部103および球体部104の各補正済データに基づいて、パラメータH,rを校正する(ステップS26)。
ここで、パラメータH,rを校正する方法は、第1実施形態とは異なり、従来技術と同様の方法を採用する。具体的な方法については、例えば特開2004-286457を参照できる。パラメータH,rは、校正後の値に更新される。
【0051】
次に、補正部423は、パラメータL,H,g(パラメータHはステップS26で校正された値)に基づいて、プリズム部105の測定データを補正する(ステップS27)。そして、校正部424は、プリズム部105の補正済データに基づいて真直度を算出し、算出された真円度が所定値t2以下であるか否かを判定する(ステップS28)。
ここで、真直度は、プリズム部105のうち、第1面105Aの補正済データに基づいて算出されてもよいし、第2面105Bの補正済データに基づいて算出されてもよい。あるいは、第1面105Aに対応する真直度と第2面105Bに対応する真直度との平均値を算出し、この平均値を所定値t2と比較してもよい。
所定値t2は、予め設定された任意の値であり、例えば、後述する第2校正用グラフにおける補正済データのパターン形状が正常範囲になる場合の上限値に設定される。
【0052】
次に、校正部424は、算出された真直度が所定値t2より大きいと判定した場合(ステップS28;NOの場合)、パラメータLを増加または減少させる調整処理を行う(ステップS29)
【0053】
以下、ステップS29について具体的に説明する。
まず、校正部424は、プリズム部105の第1面105Aおよび第2面105Bの補正済データを所定の2次元グラフ(以下、第2校正用グラフ)にプロットする。ここで、第2校正用グラフの横軸は、補正済データのXr値に対応し、第2校正用グラフの縦軸は、補正済データのZr値に対応する。また、表示制御部43は、校正部424により作成された第2校正用グラフを表示部50に表示させる。
【0054】
次に、ユーザは、表示部50に表示された第2校正用グラフを確認し、補正済データが示すパターン形状に基づいて、パラメータLを調整する。
ここで、第2校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状は、パラメータLの影響を受ける。第1面105Aおよび第2面105Bに対するパターン形状の関係を図13および図14に示す。
パラメータLが正常範囲よりも小さい場合、図13に示すように膨らんだパターン形状Sとなる。一方、パラメータLが正常範囲よりも大きい場合、図14に示すように、図13に示す場合とは逆方向に膨らんだパターン形状Sとなる。
なお、いずれの場合も、第1面105Aに対応するパターン形状と、第2面105Bに対応するパターン形状とは、同じ側に向かって膨らみを有する。
【0055】
従って、ユーザは、第2校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状が上述のいずれの場合に該当するかを判断し、当該判断結果に基づいてパラメータLを調整する。
例えば、ユーザは、パターン形状が図13に示すような膨らみを有すると判断した場合、パラメータLを増加方向に調整する。一方、ユーザは、パターン形状が図14に示すような膨らみを有すると判断した場合、パラメータLを減少方向に調整する。
パラメータLの調整幅は、予め定められた所定値であってもよい。また、校正処理のフローチャートを繰り返す際中、パターン形状の膨らむ方向が入れ替わってしまった場合には、調整幅を減少させてもよい。あるいは、パターン形状の膨らみが大きい場合には調整幅を大きくし、当該パターン形状の膨らみが小さい場合には調整幅を小さくしてもよい。
【0056】
ステップS29の後、ステップS23に戻り、ステップS23~S28を再び実施する。そして、ステップS28でNoの場合には、ステップS29を再び実施する。これにより、真直度が所定値t2以下になるまで、ステップS23~S29を繰り返し実施する。
真直度が所定値t2以下である場合(ステップS28;Yesの場合)、校正部424は、パラメータLの値は正常範囲内であると判断する。すなわち、パラメータLが校正されたと判断し、フローを終了する。
【0057】
なお、第2実施形態では、第1面105Aに対応するパターン形状と、第2面105Bに対応するパターン形状との間で、パターン形状の膨らむ方向が互いに逆になる場合がある。このような場合、パラメータLの調整を継続することができないため、過去のパラメータLのうち、補正済データの真直度が最も小さくなるパラメータLの値を最新のパラメータLの値として記憶してもよい。
【0058】
〔第2実施形態の効果〕
第2実施形態のパラメータ校正方法では、プリズム部105の第1面105Aおよび第2面105Bを走査することにより測定データを取得する測定工程(ステップS22)と、パラメータL,Hに基づいて測定データを補正することにより補正済データを取得する補正工程(ステップS27)と、補正済データの真直度を算出し、当該真直度が所定値t2以下であるか否かを判定する判定ステップ(ステップS28)と、真直度が所定値t2より大きいと判定された場合、パラメータLを増加または減少させる調整工程(ステップS29)と、を含み、補正工程、判定工程および調整工程は、真直度が所定値t2以下であると判定されるまで繰り返し実施される。
【0059】
このような第2実施形態では、プリズム部105の第1面105Aおよび第2面105Bを走査して得られる1回分の測定データを利用して、パラメータLが適正な範囲になるまで、パラメータLを調整する。すなわち、測定動作が1回で済むため、パラメータLを容易に校正することができる。
また、第2実施形態では、第1実施形態と同様、従来技術では実施できなかったパラメータLの校正を実施することができる。このため、表面性状測定装置1を製造する際、パラメータLの公称値を値付けする必要がなく、製造コストを削減することができる。また、パラメータLを固定せずに適宜校正することで、補正精度を向上させることができる。
なお、パラメータH,gについては、従来と同様の校正具100を利用することで、従来技術と同様に校正することができる。
よって、第2実施形態のパラメータ校正方法によれば、従来の一括校正法の利点を損なわずに、パラメータLを容易に校正することができる。
【0060】
〔変形例〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
【0061】
本発明のパラメータ校正方法は、上向スタイラスおよび下向スタイラスの少なくとも一方を有する表面性状測定装置に適用可能である。例えば、上下測定タイプの表面性状測定装置では、上向スタイラスおよび下向スタイラスのそれぞれに対応する2種のパラメータHを設定すればよい。
なお、上下測定タイプの表面性状測定装置では、一般に、上向スタイラスおよび下向スタイラスの各寸法が短いため、前記第1実施形態による効果がより発揮される。
【0062】
前記各実施形態では、ユーザが、表示部50に表示された第1校正用グラフまたは第2校正用グラフを確認し、パラメータL,Hの調整を手動で行っているが、本発明はこれに限られない。例えば、演算部42が、第1校正用グラフまたは第2校正用グラフにおいて補正済データが示すパターン形状を解析する解析部として機能する場合、当該解析部が、前記各実施形態における調整工程を実施してもよい。
【0063】
前記各実施形態では、第1校正用グラフまたは第2校正用グラフに基づいて、パラメータL,Hを調整しているが、本発明はこれに限られない。すなわち、パラメータL,Hの調整方法は、第1校正用グラフまたは第2校正用グラフに基づく方法に限られず、例えば、パラメータHまたはパラメータLを所定値ずつ増加または減少させる毎に真円度または真直度を確認する方法であってもよい。
また、前記実施形態では、パラメータL,Hの両方を校正しているが、いずれか一方が正常範囲である場合には、他方を校正するものであればよい。
【0064】
前記第1実施形態では、半球部103の測定データに基づいてパラメータL,Hを校正しているが、球体部104の球面を走査した測定データに基づいて、パラメータL,Hを校正してもよい。
また、前記第1実施形態では、第1校正用グラフの横軸および縦軸は、極座標で表される補正済データのθ値およびr値にそれぞれ対応するが、直交座標であらわされるXr値およびZr値を対応させてもよい。
【0065】
前記第2実施形態では、プリズム部105の第1面105Aおよび第2面105Bをそれぞれ基準面として走査しているが、本発明はこれに限られず、第1面105Aおよび第2面105Bのいずれか一方を走査した測定データに基づいて、パラメータLの調整を行ってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…表面性状測定装置、10…装置本体、11…ベース、12…ステージ、20…検出ユニット、22…ブラケット、23…回転軸、24…アーム、26…スタイラス、261…測定子、27…変位量検出器、30…相対移動機構、31…コラム、32…スライダ、33…Z軸駆動機構、34…X軸駆動機構、341…移動量検出器、40…制御部、41…記憶部、42…演算部、421…移動制御部、422…測定部、423…補正部、424…校正部、43…表示制御部、44…入力受付部、50…表示部、60…操作部、100…校正具、101…基台部、102…段差部、103…半球部、103A…球面、104…球体部、105…プリズム部、105A…第1面、105B…第2面。
図1
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図6
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