IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日清食品ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/02 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G01N33/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020053554
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021152505
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 春香
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014451(JP,A)
【文献】特開2018-002695(JP,A)
【文献】特開2018-126075(JP,A)
【文献】特表平08-510125(JP,A)
【文献】特開2018-127636(JP,A)
【文献】特開平6-276946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0352139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/46
A23L5/00-5/30;29/00-29/10
C08B1/00-37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性を測定するための測定方法であって、
水の入った容器にサイリウム種皮含有組成物を所定の高さから投下する投下工程と、
投下したサイリウムを、100rpmで30秒間攪拌する攪拌工程と、
水の表面積に対する非沈降サイリウムの面積割合を算出する算出工程と、
を含む、測定方法。
【請求項2】
前記水にあらかじめ色素を加えたことを特徴とする、請求項1記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定方法に関する。より詳しくは、サイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性を測定するための測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の変化に伴い、食物繊維の摂取量が減ってきている。日本人の食事摂取基準(2015年版)における食物繊維の摂取目標量は,成人男性19g以上,成人女性17g以上と設定されている。しかし,平成29年国民健康・栄養調査では、成人1日当たりの食物繊維摂取量は男性15.2g,女性14.8gと報告されており、摂取目標量に足りていない。
【0003】
食物繊維の摂取目標量は、食物繊維の摂取不足が生活習慣病の発症に関連するという報告が多いことから設定されている。また食物繊維には、便の嵩を増やしたり、便中の水分量を増やしたりすることによる整腸作用等の効果が知られている(非特許文献1)。このため、食物繊維を強化した食品を日常の食生活に取り入れることは,食生活の乱れや食生活の欧米化、更にはストレスの増加等に伴い、便秘や下痢で悩む人にとって有益であると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Carbohydrates in human nutrition. (FAO Food and Nutrition Paper - 66) Rome, 14-18 April 1997
【0005】
食物繊維を摂取するための供給源の一つとして、サイリウム種皮が挙げられる。サイリウム種皮を摂取するには、粉末状にした種皮(サイリウム種皮末)を水に溶解させて摂取するのが一般的である。しかし、サイリウム種皮末を水に加えると継粉(ダマ)ができやすい。また、継粉の表面は水和してゲル化しているため、いったん継粉ができてしまうと継粉を破壊することも難しくなる。そのため、サイリウム種皮を水溶液中に分散させるためには、蓋つきの容器に水とサイリウム種皮末を入れて激しく振盪するか、容器内をスターラーなどで攪拌する必要があり、手軽に摂取しやすいとは言い難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、サイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性を高め、少しでも水に分散しやすくなるように造粒などの様々な工夫を施した商品も登場している。しかしながら、サイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性を測る絶対的な指標は存在しておらず、分散性の改善についてはあくまで相対的なものに過ぎない。
【0007】
本願発明は、サイリウム種皮含有組成物の水への親和性を客観的に測定するための測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本発明は、サイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性を測定するための測定方法であって、水の入った容器にサイリウム種皮含有組成物を所定の高さから投下する投下工程と、投下したサイリウム種皮含有組成物を、100rpmで30秒間攪拌する攪拌工程と、水の表面積に対する非沈降サイリウム種皮含有組成物の面積割合を算出する算出工程と、を含む、測定方法を提供する。
【0009】
かかる構成によれば、緩やかな回転速度で攪拌した後、水表面に残存する非沈降性のサイリウム種皮含有組成物面積の割合を算出することで、客観的に水への親和性を測定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水への親和性を客観的に測定することができるため、サイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性、ひいては水への分散性を改良する際の指標として使うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。
【0012】
<サイリウム種皮>
サイリウム種皮は、高度に分岐した構造を有する多糖類をその主成分とした食物繊維素材である。本発明で用いられるサイリウム種皮としては、オオバコ科の植物プランタゴオバタ(Plantago ovata)の種子から得られる種皮(ハスク)またはその粉砕物が挙げられる。ここで、サイリウム種皮またはその粉砕物としては、サイリウム、サイリウムハスク、サイリウム種皮末、サイリウムシードガム、イサゴールなど(以下、「サイリウム種皮末」という。)として市販されているものが挙げられる。本発明において、サイリウム種皮末は、いかなる粒度、グレードのものを用いても構わないが、夾雑物が少なく、純度が高いものが好ましい。
【実施例
【0013】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例に用いるガラス器具類は日本工業規格を満たすものを用いた。
【0014】
<サイリウム種皮含有組成物>
本実施形態においては、サイリウム種皮含有組成物として造粒したサイリウム種皮末を用いた。まず、サイリウム種皮末42gと粉糖15.73gを混合した。次に、混合物を流動層造粒機に入れ、水を噴霧して造粒した。これにより、サイリウム種皮含有組成物を得た。
【0015】
<水に対する親和性確認試験>
水に対する親和性の確認試験は次のようにして行った。
まず、0.01重量%濃度の青色1号色素水を用意した。次に、300mlビーカーに先ほど用意した青色色素水を180mLと、長さ3cmのスターラーバーを入れてから、ビーカーをマグネチックスターラーの上にセットした。続いて、水面から高さ8cmのところに開口部が来るよう、ステンレス製スタンドとクランプを用いて50mLチューブをセットした。チューブの開口部を上に向け、サイリウム種皮含有組成物をチューブ内に入れた。このとき、チューブ内に入れたサイリウム種皮組成物量は、サイリウム種皮由来の食物繊維含量が3.6gとなる量を加えた。開口部をアルミホイルで塞ぎ、スターラーバーを100rpmで回転させた。チューブを180度回転させ、アルミ蓋の一端がチューブに固定された状態で開封し、サイリウム種皮含有組成物をビーカー内に投下した。投下後30秒攪拌してからスターラーバーの回転を止め、平面視におけるビーカー表面をカメラで撮影した。撮影した画像を、画像解析ソフトImageJを用いてグレースケールに変換し、ビーカー表面の面積値および非沈降粉末部分の面積値を求め、ビーカー表面に占める非沈降粉末部分の割合を算出した。
【0016】
ここで、本実施形態においては青色1号色素を用いたが、色素は画像解析を行う際にサイリウム種皮との識別を容易にするために用いているに過ぎない。したがって、サイリウム種皮との識別が容易な色であれば、赤色であっても緑色であっても特に限定されない。また、色素水の温度は常温(23±2度)のものを用いた。
【0017】
ここで、100rpmの回転速度としたのは、より早い回転では緩やかな速度で回転させた場合と比較し、多くの製品が溶けやすくなるためである。逆に、まったく回転させないと粉末が水面全体に行き渡らず、正しく評価することができない。したがって、100rpmで回転させることとした。
【0018】
同一のサイリウム種皮末を使ったサイリウム種皮含有組成物について、上記試験方法を用いて測定を行った。両者の違いは、グラニュー糖を用いて造粒したか、メッシュ#100以上#200以下の粉糖を用いて造粒したかのみである。試験は5回行い、平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から明らかなように、各サンプルについては、各回似た数値となっていることから、試験方法によるバラツキはほぼないものと考えられる。したがって、両者の数値の差は、同じサイリウム種皮末を用いていることからも、改良によってどの程度水に対する親和性が改善されたかを示した数値と言える。つまり、糖を変えるだけでサイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性が改善できることを示唆している。
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、水への親和性を客観的に測定することができる。そして、サイリウム種皮含有組成物の水に対する親和性を改良する際の指標として使うことができる。