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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-16
(45)【発行日】2023-05-24
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
G01N35/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021570688
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2020046582
(87)【国際公開番号】W WO2021145118
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2020004002
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(73)【特許権者】
【識別番号】501196013
【氏名又は名称】エフ・ホフマン・ラ・ロッシュ・アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN LA ROCHE AG
【住所又は居所原語表記】GRENZACHERSTRASSE 124, CH‐4070 BASEL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】水木 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】中井 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】今井 健太
(72)【発明者】
【氏名】ザイラー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エーアリヒ-ヴァインライヒ ゲルトラウト
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-96807(JP,A)
【文献】特開2015-108641(JP,A)
【文献】特開2019-203723(JP,A)
【文献】特開2008-51542(JP,A)
【文献】特開2015-68758(JP,A)
【文献】特開2016-53582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の保守作業用具を用いて保守作業が必要な複数の処理部と、
検体を分析する分析部と、
表示部と、
前記複数の処理部、前記分析部及び前記表示部を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の処理部のうちの第1処理部及び第2処理部は、前記複数の保守作業用具のうちの第1ツールを使用して保守作業が行われる処理部であり、
前記複数の処理部のうちの、検体又は試薬を分注する分注プローブを有する分注機構は、前記複数の保守作業用具のうちの第2ツールを使用して保守作業が行われる処理部であり、
前記制御部は、前記分注プローブを退避させた後、操作者が前記第1処理部及び前記第2処理部の保守作業を連続して行うように、該第1処理部及び該第2処理部の保守作業内容を、該分注プローブに連動させて前記表示部に表示させ、該第1処理部及び該第2処理部の保守作業が完了した後、前記分注プローブの上昇処理を行い、前記分注機構の保守作業内容を、前記表示部に表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記複数の保守作業用具のうちの少なくとも一つは、前記複数の処理部の清掃を行う用具であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記複数の処理部のうちの、試薬を攪拌するための攪拌棒を有する攪拌機構は、前記複数の保守作業用具のうちの第2ツールを使用して保守作業が行われる処理部であり、
前記制御部は、前記分注プローブ及び前記攪拌棒を退避させた後、該第1処理部及び該第2処理部の保守作業内容を、該分注プローブ及び該攪拌棒の動作に連動させて前記表示部に表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記処理部をカバーする装置カバーを備え、前記制御部は、前記装置カバーが開放状態のとき、前記処理部の動作を停止させるインターロック制御を行うことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、選択した前記複数の保守作業用具のうちの一つを連続して使用する前記複数の処理部の作業内容を前記表示部の一画面に表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記保守作業に用いられる前記複数の保守作業用具を前記表示部の一画面に表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項9】
請求項6に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記装置カバーが開放状態のとき、次の前記保守作業に進むべきか否かを前記操作者が判断するための表示を前記表示部に表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項1の自動分析装置において、
前記制御部は、前記複数の保守作業用具順に保守作業を行うか、前記複数の処理部順に保守作業を行うかの選択を前記操作者が行うための保守作業順序案内画面を前記表示部に表示させることを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
請求項1の自動分析装置において、
前記複数の処理部は、試薬を攪拌するためのミキサと、攪拌された前記試薬を保温するためのインキュベータを含み、前記複数の保守作業用具のうちの一つは布であり、前記保守作業は、前記ミキサ及び前記インキュベータを前記操作者が前記布を用いて行う作業であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項12】
請求項1の自動分析装置において、
前記複数の処理部は、分注プローブを有する分注機構と、攪拌棒を有し、試薬を攪拌するための攪拌棒を有する攪拌機構を含み、前記複数の保守作業用具のうちの一つは綿棒であり、前記保守作業は、前記分注プローブ及び前記攪拌棒を前記操作者が前記綿棒を用いて行う作業であることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置において、ユーザが検査装置を正しく操作するための案内技術が知られている。検査装置は複雑な保守作業を行う必要があり、保守作業時のユーザの操作ミスにより、装置に不具合が生じる場合がある。
【0003】
これに対して、特許文献1には、装置に不具合が発生した時、操作画面にその不具合に対する対処方法を表示し、ユーザの操作を支援する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-092197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、ユーザが検査装置を扱う際、操作をミスなく行うことができるよう作業操作画面にユーザの操作手順を表示し、ユーザの検査装置操作を支援している。
【0006】
しかし、画面表示のみの支援では、複雑な保守作業においてユーザの作業漏れが生じる場合があるという課題がある。
【0007】
つまり、複数の保守作業用具による複数の保守部位に対する保守作業について、ユーザの作業性の向上、作業漏れの抑制、作業時間の短縮化について、考慮されておらず、さらなる改善が必要である。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、ユーザの保守作業と装置駆動とを連動させたメンテナンス動作において、保守作業手順を保守作業用具順に進行するように操作手順を表示することにより、一連の保守動作に要する時間を削減することが可能な自動分析装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、次のように構成される。
【0010】
自動分析装置において、検体を処理する複数の処理部と、前記検体を分析する分析部と、表示部と、前記処理部、前記分析部及び前記表示部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の処理部について操作者が行う保守作業に用いられる複数の保守作業用具を前記表示部に表示させ、前記操作者が、前記表示部を介して選択した、前記複数の保守作業用具のうちの一つを連続して使用する前記複数の処理部の保守作業内容を、保守が行われる前記処理部の動作に連動させて、前記表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザの保守作業と装置駆動を連動させたメンテナンス動作において、保守作業手順を保守作業用具順に進行するように操作手順を表示することにより、一連の保守動作に要する時間を削減することが可能な自動分析装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自動分析装置の概略構成図。
図2】自動分析装置の概略側面図。
図3】自動分析装置のユーザが行う保守作業の案内プロセスを示すフローチャート。
図4】第1のツール及び第2のツールの例を示す図。
図5】保守作業順序案内画面を示す図。
図6】清掃ツール準備確認画面を示す図。
図7】保守作業継続指示要求画面を示す図。
図8】第1ツールによる清掃案内画面を示す図。
図9】第2ツールによる清掃案内画面を示す図。
図10】処理部順に清掃を行う場合の案内プロセスを示すフローチャート。
図11】部位1清掃案内画面401を示す図。
図12】部位2清掃案内画面を示す図。
図13】部位3清掃案内画面を示す図。
図14】部位4清掃案内画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための実施例について図面を用いて説明する。
【実施例
【0014】
本実施例における自動分析装置は、ユーザ(操作者)による保守作業の開始指示を受け付ける入力部と、入力部からの入力に応じて、予め定められた第1処理を行うよう制御する制御部とを備える。
【0015】
また、自動分析装置は、互いに離間して配置され、互いに異なる処理を行う、第1処理部、第2処理部及び第3処理部と、ユーザに対して、第1処理部、第2処理部及び第3処理部の保守作業の支援を行うための表示を行う表示部とを備える。
【0016】
第1処理部及び第2処理部は、第1ツール(第1保守作業用具)を用いて保守作業が行われる必要がある処理部である。
【0017】
また、第3処理部は、第2ツール(第2保守作業用具)を用いて保守作業が行われる必要がある処理部であり、表示部は、第1処理部の保守作業と第2処理部の保守作業が連続して行われるように表示を行う。
【0018】
図1は、自動分析装置の概略構成図であり、自動分析装置1の平面を示している。図2は、自動分析装置の概略側面図である。
【0019】
図1において、自動分析装置1は検体を測定する測定装置2と、制御装置3とを備える。測定装置2と制御装置3とは、信号線で接続されており、制御装置3からの制御信号により測定装置2が制御される。
【0020】
測定装置2は、試薬容器14を保管するための保冷庫15と、保冷庫15に保管された試薬容器14の試薬を攪拌するための攪拌棒を有する攪拌機構16と、攪拌された試薬容器14から分注を行うための分注プローブを有する試薬分注機構17とを備える。
【0021】
また、測定装置2は、試薬分注機構17により分注された試薬を容器内で攪拌するためのミキサ18と、攪拌後の反応容器25を保温するためのインキュベータ19とを備える。
【0022】
また、測定装置2は、検体を分析する分析部20と、検体容器21に収容された検体をインキュベータ19に配置された反応遠望容器25に分注する分注プローブを有する検体分注機構22とを備える。
【0023】
保冷庫15、攪拌機構16、試薬分注機構17及びインキュベータ19は自動分析装置1の駆動部を構成し、それぞれ制御装置3によって駆動が制御されている。
【0024】
駆動部各々は、一つのモータと位置センサを備え、位置センサにより各々の駆動部が所定の位置に在るかどうかを判別することができる。また、攪拌機構16および試薬分注機構17は、不要な際にはそれぞれ点線で示した退避位置16aおよび17aへ移動することができる。
【0025】
制御装置3は、自動分析装置1の各構成部位の処理および動作を制御する制御部31と、ユーザ(操作者)の作業要求を受け付ける入力部32と、ユーザへの操作指示を出力する表示部33と、測定装置2の状態を監視するモニタ部34と、制御部31で行った処理を記憶する記憶部35とを有する。モニタ部34は、位置センサ情報などを利用して測定装置2の状態を監視し、測定装置2が検体を測定中であるか否かをモニタする。
【0026】
制御装置3の制御部31は、中央処理部(CPU)で構成可能である。制御装置3全体を、CPUからなる制御部31、キーボードやマウスなどの入力部32、液晶ディスプレイなどの表示部33、半導体メモリなどの記憶部35などを備えたパーソナルコンピュータ(PC)を使って構成することができる。その場合、位置センサ情報などを監視するモニタ部34は、制御部31であるCPUのプログラム実行で実現しても良い。
【0027】
図2に示すように、測定装置2は、ユーザが測定装置2の駆動部に触れないようにカバーする装置カバー11と、装置カバー11の施錠機構12と、装置カバー11の開閉センサ13とを有する。自動分析装置は、装置カバー11が開放された状態(開放状態)でユーザが作業中に、装置が予期せぬ駆動をしないように、開閉センサ13が装置カバー11の開状態を検知した場合には駆動部各々のモータをオフにする(処理部の動作を停止する)インターロック制御を行うインターロック機構(図示せず)を備えている。
【0028】
このインターロック機構により、ユーザ作業の安全を確保する。このようなインターロック機構は、制御装置3の制御部31で実行されるプログラムで実現可能であり、開閉センサ13や施錠機構12もインターロック機構の一部を構成している。
【0029】
すなわち、制御部31は、自動分析装置1の駆動中はユーザが測定装置2にアクセスできないように施錠機構12をロックし、駆動完了後にユーザが測定装置2にアクセスできるようにロックを解除するようにインターロック制御を行う。
【0030】
上述した複数の処理部には、ミキサ18、インキュベータ19、試薬分注機構17、検体分注機構22、及び攪拌機構16が含まれる。
【0031】
図3は、自動分析装置1のユーザが行う保守作業の案内プロセスを示すフローチャートである。案内プロセスは、制御部31の制御により表示部33への表示動作の制御を行い、自動分析装置1が駆動してユーザの作業に備える分注プローブ退避処理(退避動作)、ユーザが第1のツールを用いて保守作業を行う処理、分注プローブ退避処理と同様に、ユーザの作業に備えるための分注プローブ上昇処理、ユーザが第2のツールを用いて保守作業を行う処理から構成される。
【0032】
図4は、第1のツール及び第2のツールの例を示す図である。図4に示すように、綿棒23及び布24を、第1のツール及び第2のツールとする例である。綿棒23及び布24のいずれを第1のツールとするか第2のツールと設定するかはユーザの任意である。綿棒23は、綿棒収容容器23bに収容され、布24は布収容容器24bに収容されている。綿棒収容容器23b及び布収容容器24bは、自動分析装置1の近辺のユーザの任意の位置に配置される。
【0033】
なお、後述する分注プローブ退避処理の前に、自動分析装置1の保守順序を、使用するツール順とするか、処理部順とするかをユーザに選択させても良い。また、必要なツールの名称を予め表示し、ユーザに準備ができているか確認を促すステップを設けてもよい。
【0034】
後述するステップS1~S5の実行後に行われるステップS6の分注プローブ退避処理では、予め定められた駆動プログラムに基づき、試薬分注機構17の分注プローブ及び検体分注機構22の分注プローブを自動分析装置1の内部に格納する。これにより、自動分析装置1上の立体障害が緩和され、ユーザは保守すべき各処理部にアクセスしやすい状態となる。
【0035】
ステップS6の分注プローブ退避処理が完了した後、ステップS7に進み、モニタ部34に、第1ツールによる清掃(保守作業)案内である案内A(後述する)が表示される。案内Aには1種のツールを使用し、異なる2か所以上の処理部を連続して保守するようにユーザに促す記述が含まれる。
【0036】
第1ツールによる清掃が完了した後、ユーザからの完了報告に基づき、分注プローブ上昇処理が実行される。分注プローブ上昇処理では、予め定められた駆動プログラムに基づき、分注プローブ退避処理とは逆の順序で、自動分析装置1の内部に格納された状態から試薬分注機構17の分注プローブ及び検体分注機構22の分注プローブを上昇させる。この処理は、次に実施する清掃箇所に分注プローブが含まれる場合に必要なのであって、以降の清掃箇所に分注プローブが含まれない場合は実施されなくても良い。
【0037】
分注プローブ上昇処理が完了し、後述するステップS8~S14が実行された後、ステップS15において、モニタ部34に第2ツールによる清掃案内である案内B(後述する)が表示される。案内Bには第1ツールとは異なるツールを使用し、かつ、案内Aで表示された処理部とは異なる処理部を保守するようユーザに促す記述が含まれる。
【0038】
第2ツールによる清掃が完了した後、ユーザからの報告に基づき、保守作業は完了となる。
【0039】
図5乃至図9は、自動分析装置1における、保守作業時の案内表示例である。これらに示したように、表示部33は入力部32を兼ね、画面上の所定の位置をタッチすることにより、各種の指示や報告を入力することができる。あるいはマウスなどの入力デバイスを用いて、クリックすることでも各種の指示や報告を入力することができる。これらの保守作業時の案内表示例を使って、実施例1をより具体的に説明する。
【0040】
図3のステップS1において、入力部32よりユーザから保守作業が要求されると作業が開始される、そして、ガイド設定であるステップS2に進み、表示部33は図5に示すように、保守作業順序案内画面201を表示する。
【0041】
保守作業順序案内画面201は、複数の清掃ツール順(保守作業用具順)に保守作業を行うか、複数の処理部順に保守作業を行うかの選択をユーザ(操作者)が行うための画面である。
【0042】
保守作業順序案内画面201には、保守作業を進行する順序に関する記述が含まれ、ユーザは保守作業順序案内画面201に表示された清掃ツール順(保守作業用具順)及び処理部順のうちのいずれかを選択する。ユーザの経験によっては処理部順を好むユーザも存在すると考えられることから、この案内を有することでフレキシビリティの高い機能を提供可能となる。ユーザは、清掃ツール順選択ボックス202及び処理部順選択ボックス203のうちの清掃ツール順選択ボックス202を有効化する場合は、図示するように、清掃ツール順選択ボックス202をチェックした後、保守作業手順指示部204にて保守作業の手順を指示する。
【0043】
次に、ステップS3において、表示部33は、図6に示すように清掃ツール準備確認画面211を表示する。清掃ツール準備確認画面211には、一連の保守作業に使用するすべてのツールの名称(図示した例では綿棒23と布24)が表示部33の一画面に表示され、ユーザに対し、必要なツールの準備に漏れがないか確認を促す。ユーザはこの案内に従い、表示部33を介して各ツールを準備した後、ツール準備完了報告を保守作業開始指示部212にて保守作業の開始を指示する。この案内があることにより、ユーザはもれなく効率的にツールを準備することが可能となる。
【0044】
次に、ステップS4において、制御部31は測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。この時、位置センサ情報などにより装置カバー11が開状態で保守作業実施不可と判断されるときは、インターロック制御を行うと共に、表示部33に図7に示す保守作業継続指示要求画面261による案内を表示し、保守作業を継続するか否かについてユーザからの指示を待つ。保守作業継続指示要求画面261による案内は、装置カバー11が開いており、装置カバー11を閉め、次の保守作業工程に進むべきか否かをユーザ(操作者)が判断するための表示である。
【0045】
保守作業を継続する場合、ユーザは装置カバー11を閉めた上で保守作業継続指示部263により継続指示を行う。制御部31は保守作業継続指示に基づき、再度測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。
【0046】
一方、保守作業を中止する場合、ユーザは保守作業中止指示部262により保守作業中止指示を行う。そして、ステップS5において、自動分析装置1はこの保守作業中止指示に基づき、作業要求をキャンセルし、作業を終了する(ステップS19)。
【0047】
装置カバー11が閉状態、かつ駆動部が動作可能な場合、ステップS6において、駆動部である試薬分注機構17の分注プローブが退避位置17aに旋回移動および下降し、検体分注機構22の分注プローブが退避位置(図示せず)に旋回移動および下降し、攪拌機構16の攪拌棒が退避位置16aに旋回移動および下降する。そして、上記分注プローブ及び攪拌機構16の攪拌棒が自動分析装置1の内部に格納される。駆動完了後、ステップS7において、制御部31は施錠機構12に開錠指示を送り、表示部33に図8に示す第1ツールによる清掃案内画面301を表示する。
【0048】
図8に示した第1ツールによる保守作業案内部302に基づき、ユーザは保守すべき箇所にアクセスするため、まず、装置カバー11を開放する(ステップS8)。次に、ステップS9において、ユーザは第1ツールである布24を手に保持し、ミキサ18の表面を拭き取る。その後、ユーザはミキサ18の清掃に使用したものと同じ布24を手に保持したまま、続けてインキュベータ19の表面を拭き取る。この場合の保守作業は、ミキサ18及びインキュベータ19をユーザ(保守作業者)が布24を用いて行う作業である。
【0049】
保守作業が終了したら、ユーザは第1ツールによる清掃完了報告(ステップS10)を行うため、装置カバー11を閉じる(ステップS11)。その後、表示部33により第1ツール保守作業完了報告部303の報告指示が入力部32に送られる。制御部31は測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。この時、位置センサ情報などにより自動分析装置1のカバー11が開状態で保守作業実施不可と判断されるときは表示部33に図7に示す案内261を表示し、保守作業を継続するか否かについてユーザからの指示を待つ(ステップS12)。保守作業を継続する場合、ユーザはカバー11を閉めた上で保守作業継続指示部263により継続指示を行う(ステップS13)。制御部31は保守作業継続指示に基づき、再度測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。一方、保守作業を中止する場合、ユーザは保守作業中止指示部262により中止指示を行う。自動分析装置1はこの保守作業中止指示に基づき、作業要求をキャンセルする(ステップS19)。
【0050】
装置カバー11が閉状態、かつ自動分析装置1の駆動部が動作可能な場合、試薬分注機構17及び検体分注機構22のそれぞれの分注プローブおよび攪拌機構16の攪拌棒は鉛直方向に上昇し、その先端が、自動分析装置1の内部から十分に露出する高さで停止する(ステップS14)。これにより、ユーザは当該部位清掃箇所へのアクセスが可能となる。駆動完了後、表示部33には次の手順として図9に示す第2ツールによる清掃案内画面311が表示される(ステップS15)。
【0051】
図9に示した第2ツールによる清掃案内画面311の第2ツールによる保守作業案内部312基づき、ユーザは、装置カバー11を開放し(ステップS16)、第1ツールである布24から第2ツールである綿棒23に持ち替え、攪拌機構16の攪拌棒の表面を拭き取る。その後、ユーザは攪拌機構16の攪拌棒の清掃に使用したものと同じ綿棒23を手に保持したまま、続けて試薬分注機構17の分注プローブの表面を拭き取る(ステップS17)。
【0052】
保守作業終了後、ユーザから第2ツール保守作業完了報告部313により完了報告が入力部32に送られ、すべての保守作業が終了となる(ステップS18、S19)。
【0053】
図8及び図9に示した第1ツールによる清掃案内画面301及び第2ツールによる清掃案内画面311は、第1ツール又は第2ツールの一つのツールにより、連続して使用する複数の処理部の保守作業内容を、表示部33が表示する一つの画面で表示している。
【0054】
以上詳述した自動分析装置1の構成、動作によって、ユーザ作業と装置駆動を連動させ、かつ保守作業を清掃ツール順とし、同じ清掃ツールを使用する処理部をまとめて保守するように表示部33に表示して案内することにより、複雑な保守作業においてもユーザの操作を簡略化させることが可能な自動分析装置を提供することができる。
【0055】
つまり、ユーザの保守作業と装置駆動を連動させたメンテナンス動作において、保守作業手順を保守作業用具順に進行するように操作手順を表示することにより、一連の保守動作に要する時間を削減することが可能な自動分析装置を実現することができる。
【0056】
次に、実施例1の優位性比較のため、ツール順ではなく、処理部順に清掃を行う場合の例の具体的手順について説明する。
【0057】
図10は、処理部順に清掃を行う場合の案内プロセスを示すフローチャートである。このとき、案内プロセスは、制御部31の制御により自動分析装置1が駆動してユーザの作業に備える分注プローブ退避処理、ユーザが第1の部位(処理部)に対し保守作業を行う処理、ユーザが第2の部位(処理部)に対し保守作業を行う処理、分注プローブ退避処理と同様に、ユーザの作業に備えるための分注プローブ上昇処理、ユーザが第3の部位(処理部)に対し保守作業を行う処理、ユーザが第4の部位(処理部)に対し保守作業を行う処理、ユーザが第1及び第2のツールを用いて保守作業を行う処理から構成される。
【0058】
図10に示したプロセスの具体的手順について、ツール順に清掃を行う場合と比較し、差分がある箇所を抽出し、説明する。
【0059】
図5に示した保守作業順序案内画面201において、ユーザは処理部順選択ボックス203を有効化した後、保守作業手順指示部204にて保守作業の手順を指示する。
【0060】
制御部31は、測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。この時、位置センサ情報などにより装置カバー11が開状態で保守作業実施不可と判断されるときは表示部33に図7に示す案内261を表示し、保守作業を継続するか否かについてユーザからの指示を待つ。保守作業を継続する場合、ユーザは装置カバー11を閉めた上で保守作業継続指示部263により継続指示を行う。制御部31は保守作業継続指示に基づき、再度、測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。一方、保守作業を中止する場合、ユーザは保守作業中止指示部262により中止指示を行う。自動分析装置1は、この保守作業中止指示に基づき、作業要求をキャンセルする。
【0061】
自動分析装置1の駆動部が動作可能な場合、駆動部である試薬分注機構17及び検体分注機構22のそれぞれの分注プローブが退避位置17a等に旋回移動および下降し、攪拌機構16の攪拌棒が退避位置16aに旋回移動および下降し、自動分析装置1の内部に格納される(ステップS21~S26)。
【0062】
分注プローブ及び攪拌機構16の攪拌棒の退避完了後、制御部31は施錠機構12に開錠指示を送り、表示部33に図11に示す部位1清掃案内画面401を表示する(ステップS27)。
【0063】
図11に示した部位1の保守作業案内部402に基づき、ユーザは保守すべき箇所にアクセスするため、まず、装置カバー11を開放する(ステップS28)。次に、ユーザは第1ツールである布24を手に保持し、ミキサ18の表面を拭き取る(ステップS29)。作業完了後、ユーザからの部位1作業完了報告403(ステップS30)に基づき、表示部33は、図12に示す部位2清掃案内画面411を表示する(ステップS31)。
【0064】
図12に示した部位2の保守作業案内部412に基づき、ユーザは第1ツールである布24を再度手に取り、インキュベータ19の表面を拭き取る(ステップS32)。
【0065】
保守作業が終了したら、ユーザは装置カバー11が閉じると、表示部33より部位2作業完了報告部413により作業完了報告が入力部32に送られる(ステップS33、S34)。制御部31は測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。この時、位置センサ情報などにより装置カバー11が開状態で保守作業実施不可と判断されるときは表示部33に図7に示す案内261を表示し、保守作業を継続するか否かについてユーザからの指示を待つ(ステップS35、S36)。
【0066】
保守作業を継続する場合、ユーザは装置カバー11を閉めた上で保守作業継続指示部263により継続指示を行う。制御部31は保守作業継続指示に基づき、再度測定装置2の状態監視をモニタ部34に要求する。
【0067】
一方、保守作業を中止する場合、ユーザは保守作業中止指示部262により中止指示を行う。自動分析装置1はこの保守作業中止指示に基づき、作業要求をキャンセルする(ステップS36、S45)。
【0068】
ステップS35において、自動分析装置1の駆動部が動作可能な場合、試薬分注機構17検体分注機構22の分注プローブおよび攪拌機構16の攪拌棒は鉛直方向に上昇し、その先端が、自動分析装置1の内部から十分に露出する高さで停止する(ステップS37)。これにより、ユーザは当該部位清掃箇所へのアクセスが可能となる。駆動完了後、表示部33には次の手順として図13に示す案内画面421が表示される(ステップS38)。
【0069】
図13に示した部位3清掃案内画面421の部位3の保守作業案内部422に基づき、ユーザは、装置カバー11を開放し、第1ツールである布24から第2ツールである綿棒23に持ち替え、攪拌機構16の攪拌棒の表面を拭き取る(ステップS39、S40)。作業完了後、ユーザからの部位3作業完了報告部423による指示に基づき、表示部33は図14に示す部位4清掃案内画面431を表示する(ステップS41、S42)。
【0070】
図14に示した部位4の保守作業案内部432に基づき、ユーザは第2ツールである綿棒23を再度手に取り、インキュベータ19の表面を拭き取る(ステップS43)。
【0071】
保守作業終了後、ユーザから部位4作業完了報告部433により作業完了報告が入力部32に送られ、すべての保守作業が終了となる(ステップS44、S45)。
【0072】
図10に示したプロセスの内容を、図3に示したツール毎にまとめたプロセスと比較した場合、部位毎に作業を行う手順では、ユーザは都度表示される案内表示に従い、部位毎に一旦手を止めてその内容を確認しながら作業を進める必要がある。
【0073】
また、ユーザにとっては対象とする部位が異なるだけで、内容としては同一と見なせる作業であったとしても、自動分析装置1は完全に別の作業として扱うため、図11図12、および図13図14に示すように、ユーザは同じような作業を終える度に都度完了報告を自動分析装置1に対して行う必要がある。
【0074】
これらの確認や作業完了報告に要する時間は長く見積もった場合でも数秒程度であり、個々のステップ単独での時間的損失はそれほど大きくない。
【0075】
しかし、先に詳述したツール毎に作業を行う手順では、一つのツールが複数の部位に共通するため、単独ではなく複数のステップ(部位ごとの清掃案内表示、清掃完了報告)をまとめて省略可能であり、作業全体に要する時間の短縮に繋がるほか、自動分析装置1からの確認や完了報告を要求される回数が減るため、ユーザが煩わしさを感じにくく、作業効率が向上可能であるというメリットがある。
【0076】
なお、上述した例においては、作業の表示や完了報告等を行う操作入力部32及び表示部33は、制御装置3に備えられる構成としたが、例えば、タブレットのような入力部32及び表示部33を備える別個の装置を用いることも可能である。
【0077】
また、上述した例においては、保守作業用具が綿棒23と布24の2つの例を示したが、3つ以上の保守作業用具を使用する場合も、本発明は適用可能である。
【0078】
また、本発明の自動分析装置は、免疫分析用及び生化学分析用のいずれにも適用可能である。
【0079】
また、試薬分注機構17及び検体分注機構の総称は分注機構とすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1・・・自動分析装置、2・・・測定装置、3・・・制御装置、11・・・装置カバー、12・・・施錠機構、13・・・開閉センサ、14・・・試薬容器、15・・・保冷庫、16・・・攪拌機構、17・・・試薬分注機構、18・・・ミキサ、19・・・インキュベータ、20・・・分析部、21・・・検体容器、22・・・検体分注機構、23・・・綿棒、23b・・・綿棒収容容器、24・・・布、24b・・・布収容容器、31・・・制御部、32・・・入力部、33・・・表示部、34・・・モニタ部、35・・・記憶部、201・・・保守作業順序案内画面、202・・・清掃ツール順選択ボックス、203・・・処理部順選択ボックス、204・・・保守動作手順指示部、211・・・清掃ツール準備確認画面、212・・・保守作業開始指示部、261・・・保守作業継続指示要求画面、262・・・保守作業中止指示部、263・・・保守作業継続指示部、301・・・第1ツールによる清掃案内画面、302・・・第1ツールによる保守作業案内部、303・・・第1ツール保守作業完了報告部、311・・・第2ツールによる清掃案内画面、312・・・第2ツールによる保守作業案内部、313・・・第2ツール保守作業完了報告部、401・・・部位1清掃案内画面、402・・・部位1の保守作業案内部、403・・・部位1作業完了報告部、411・・・部位2清掃案内画面、412・・・部位2の保守作業案内部、413・・・部位2作業完了報告部、421・・・部位3清掃案内画面、422・・・部位3の保守作業案内部、423・・・部位3作業完了報告部、431・・・部位4清掃案内画面、432・・・部位4の保守作業案内部、433・・・部位4作業完了報告部
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