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特許7281285濃度制御装置、及び、ゼロ点調整方法、濃度制御装置用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】濃度制御装置、及び、ゼロ点調整方法、濃度制御装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/448 20060101AFI20230518BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230518BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20230518BHJP
   G01N 21/61 20060101ALI20230518BHJP
   G05D 21/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/31 B
C23C16/52
G01N21/61
G05D21/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019012447
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020117795
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】志水 徹
(72)【発明者】
【氏名】南 雅和
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145458(JP,A)
【文献】特開2018-150572(JP,A)
【文献】特開2010-109303(JP,A)
【文献】特開2017-066511(JP,A)
【文献】特開2003-077782(JP,A)
【文献】特開2013-249511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0097127(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
B01J 4/00 - 7/02
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
G01N 21/61
G05D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを供給するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置であって、
前記濃度制御装置が、
前記導出流路を流れるガスを制御する制御バルブと、
前記導出流路に設けられ、当該導出流路に流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、
前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、
前記ガス供給流路から供給されるその他のガスの流量に基づいて、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスが前記その他のガスに置換された時点である基準時点を判定する基準時点判定部と、
基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整部と、を備えた濃度制御装置。
【請求項2】
前記気化器が、前記タンクに前記その他のガスであるキャリアガスを導入する導入流路をさらに備え、
前記ガス供給流路が、前記タンクを迂回して前記導入流路と前記導出流路との間を接続するバイパス流路であり、
前記基準時点判定部が、前記測定部に存在するガスが前記バイパス流路を介して供給されるキャリアガスに置換された時点を基準時点として判定するように構成されている請求項1記載の濃度制御装置。
【請求項3】
前記ガス供給流路が、前記導流路にその他のガスである希釈ガスを導入する希釈ガス流路であり、
前記基準時点判定部が、前記測定部に存在するガスが希釈ガスに置換された時点を基準時点として判定するように構成されている請求項1に記載の濃度制御装置。
【請求項4】
前記濃度制御装置が、
前記基準時点判定部が、前記ガス供給流路から前記導出流路に対してその他のガスが供給される供給点から前記濃度測定機構までの容積と、前記ガス供給流路から供給されるその他のガスの流量と、に基づいて基準時点を判定するように構成された請求項1乃至3いずれかに記載の濃度制御装置。
【請求項5】
前記容積が、前記導出流路を形成するパイプ内の第1容積と、前記パイプ内からガスが流入し、前記濃度測定機構により濃度が測定されるセルの第2容積と、からなり、
前記基準時点判定部が、第1容積のガスがその他のガスで置換される時間である第1時間と、第2容積のガスがその他のガスで置換される時間である第2時間と、を用いて基準時点を判定するように構成された請求項4記載の濃度制御装置。
【請求項6】
前記基準時点判定部が、その他のガスの累積流量の示す体積が前記第1容積となるまでの時間を前記第1時間として算出する請求項5記載の濃度制御装置。
【請求項7】
前記基準時点判定部が、下記の材料ガスの残留率の予測式に基づいて前記セルのガスがその他のガスで置換される時間を第2時間として算出するように構成された請求項5又は6記載の濃度制御装置。
Ri=Ri-1(Exp(-Q/V*Δt))
ここで、Ri:現時点の材料ガスの残留率、Ri-1:単位時間Δt前の材料ガスの残留率、Q:その他のガスの流量、V:その他のガスによる置換対象となるセルの第2容積である。
【請求項8】
前記濃度測定機構が、
前記測定部に存在するガスの全圧を測定する全圧センサと、
前記測定部に存在するガス中の材料ガスの分圧を測定する分圧センサと、
前記全圧センサで測定される全圧と、前記分圧センサで測定される分圧に基づいて前記測定部に存在するガス中の材料ガスの濃度を算出する濃度算出部と、を備え、
前記基準時点判定部が、前記分圧センサで測定される分圧に基づいて基準時点を判定する請求項1乃至3いずれかに記載の濃度制御装置。
【請求項9】
材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを導入するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置であって、
前記濃度制御装置が、
前記導出流路を流れるガスを制御する制御バルブと、
前記導出流路に設けられ、当該導出流路に流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、
前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、
前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部で所定の真空度が達成される時点である基準時点を判定する基準時点判定部と、
基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整部と、を備えた濃度制御装置。
【請求項10】
前記濃度測定機構が、
前記測定部に存在するガスの全圧を測定する全圧センサと、
前記測定部に存在するガス中の材料ガスの分圧を測定する分圧センサと、
前記全圧センサで測定される全圧と、前記分圧センサで測定される分圧に基づいて前記測定部に存在するガス中の材料ガスの濃度を算出する濃度算出部と、を備え、
前記基準時点判定部が、前記全圧センサで測定される全圧に基づいて基準時点を判定する請求項記載の濃度制御装置。
【請求項11】
前記濃度制御装置が、
前記導出流路に設けられた低圧用圧力センサをさらに備え、
前記基準時点判定部が、前記低圧用圧力センサで測定される圧力が所定値以下となった時点を基準時点として判定する請求項9又は10記載の濃度制御装置。
【請求項12】
材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを導入するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置のゼロ調整方法であって、前記濃度制御装置が、前記導出流路を流れる材料ガスとその他のガスからなる混合ガスに含まれる材料ガスの濃度を制御する制御バルブと、前記導出流路に設けられ、当該導出流路に流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、を備えたものであり、
前記ゼロ調整方法が、
前記ガス供給流路から供給されるその他のガスの流量に基づいて、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスが前記その他のガスに置換された時点である基準時点を判定する基準時点判定ステップと、
基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整ステップと、を備えたことを特徴とするゼロ調整方法。
【請求項13】
材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを導入するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置に用いられる濃度制御装置用プログラムであって、前記濃度制御装置が、前記導出流路を流れるガスを制御する制御バルブと、前記導出流路に設けられ、当該導出流路を流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、を備え、
前記濃度制御装置用プログラムが、
前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、
前記ガス供給流路から供給されるその他のガスの流量に基づいて、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスが前記その他のガスに置換された時点である基準時点を判定する基準時点判定部と、
基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整部と、としての機能をコンピュータに発揮させる濃度制御装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造プロセスにおいては、液体又は固体の材料が収容されているタンクに対してキャリアガスを導入し、材料を気化させて材料ガスを発生させ、キャリアガスと材料ガスの混合ガスとしてタンクから導出している。このような混合ガス中に含まれる材料ガスの濃度は濃度制御装置によって予め定められた設定濃度で保たれて、チャンバへ供給される(特許文献1参照)。
【0003】
従来の圧力制御式の濃度制御装置としては、タンクから混合ガスを導出する導出流路に設けられた濃度測定機構、前記導出流路において混合ガスの全圧を制御する制御バルブと、濃度測定機構で測定される測定濃度と予め設定される設定濃度とに基づいて制御バルブを制御する濃度制御器と、を備えたものがある。
【0004】
このような濃度制御装置における濃度の制御精度を保つためには、濃度測定機構の測定値に温度ドリフト等の誤差が発生しないように定期的にゼロ調整を行う必要がある。
【0005】
しかしながら、濃度測定機構のゼロ調整のために半導体製造プロセスを定期的に中断して濃度測定機構のゼロ調整を行うようにすると、スループットが低下してしまうといった問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-31043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、例えば半導体製造プロセスを中断することなく、濃度測定機構のゼロ調整を適宜実施することが可能な濃度制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る濃度制御装置は、材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを導入するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置であって、前記濃度制御装置が、前記導出流路を流れるガスを制御する制御バルブと、前記導出流路に設けられ、当該導出流路に流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスが前記その他のガスに置換された時点である基準時点を判定する基準時点判定部と、基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整部と、を備えたものである。
【0009】
このようなものであれば、例えば前記ガス供給流路から前記導出流路に対してその他のガスのみを流した場合に、前記基準時点判定部によって前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスが前記その他のガスで十分に置換された基準時点を自動で検出することができる。したがって、前記導出流路内を真空引きしなくても前記導出流路に材料ガスが存在せずその他のガスのみでほぼ満たされた状態となったことを自動検出して、前記ゼロ調整部は前記濃度測定機構のゼロ点を適宜調整できる。
【0010】
例えばALD(Atomic Layer Deposition)等のようにチャンバ内に材料ガスが導入される材料ガス供給期間とその他のガスのみが導入されるパージガス供給期間とが交互に実施されるようなプロセスであれば、本発明に係る濃度制御装置ではプロセスを中断することなく、その他のガスのみが流されているパージガス供給期間で前記濃度測定機構のゼロ調整を逐次行うことができる。このため、スループットを低下させることなく、濃度の測定値の精度、及び、濃度の制御精度を保つことが可能となる。
【0011】
例えば前記導出流路内に対して材料ガスを含むガスとその他のガスのみを交互に供給できるようにして、前記測定部に存在するガスをその他のガスに置換して、ゼロ調整を自動的に開始できるようにするには、前記気化器が、前記タンクにその他のガスであるキャリアガスを導入する導入流路をさらに備え、前記ガス供給流路が、前記タンクを迂回して前記導入流路と前記導出流路との間を接続するバイパス流路であり、前記基準時点判定部が、前記導出流路を流れるガスが前記バイパス流路を介して供給されるキャリアガスに置換された時点を基準時点として判定するように構成されていればよい。
【0012】
その他のガスとして希釈ガスを用いて前記導出流路を流れるガスを置換し、ゼロ調整を行えるようにするは、前記ガス供給流路が、前記導入流路にその他のガスである希釈ガスを導入する希釈ガス流路であり、前記基準時点判定部が、前記導出流路を流れるガスが希釈ガスに置換された時点を基準時点として判定するように構成されていればよい。
【0013】
前記導出流路内に流れるガスがその他のガスで置換された基準時点を実測値に基づいて判定できるようにするには、前記濃度制御装置が、前記基準時点判定部が、前記ガス供給流路から前記導出流路に対してその他のガスが供給される供給点から前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定点までの容積と、前記ガス供給流路から供給されるその他のガスの流量と、に基づいて基準時点を判定するように構成されたものであればよい。
【0014】
前記容積に存在するガスが場所によってその他のガスにより置換される態様が異なっていても、前記容積内がその他のガスで完全に置換されるまでの時間を正確に推定して、ゼロ調整開始までの時間を短縮しつつその精度を落とさないようにするには、前記容積が、前記導出流路を形成するパイプ内の第1容積と、前記パイプ内からガスが流入し、前記濃度測定機構により濃度が測定されるセルの第2容積と、からなり、前記基準時点判定部が、第1容積のガスがその他のガスが置換される時間である第1時間と、第2容積のガスがその他のガスで置換される時間である第2時間と、を用いて基準時点を判定するように構成されたものであればよい。
【0015】
セルに至るまでのパイプ内のガスがその他のガスで置換される時間を正確に算出できるようにするには、前記基準時点判定部が、その他のガスの累積流量の示す体積が前記第1容積となるまでの時間を前記第1時間として算出すればよい。すなわち、パイプ内にその他のガスが流入すると、パイプ内のガスはそのままセルへと押し出されるので、累積流量の示す体積が第1容積と一致すればほぼパイプ内の置換は完了する。
【0016】
単純なガスの押し出しとしてはガスの置換が表現できないセルについても十分にその他のガスで置換された時点を正確に推定できる具体的な構成例としては、前記基準時点判定部が、材料ガスの残留率の予測式であるRi=Ri-1(Exp(-Q/V*Δt))に基づいて前記セルのガスがその他のガスで置換される時間を第2時間として算出するものが挙げられる。ここで、Ri:現時点の材料ガスの残留率、Ri-1:単位時間Δt前の材料ガスの残留率、Q:その他のガスの流量、V:その他のガスによる置換対象となるセルの第2容積である。なお、その他のガスの流量については、測定値であってもよいし、流量制御のために用いられる設定値であってもよい。
【0017】
基準時点を精度よく判定するための具体的な構成例としては、前記濃度測定機構が、前記測定部に存在するガスの全圧を測定する全圧センサと、前記測定部に存在するガス中の材料ガスの分圧を測定する分圧センサと、前記全圧センサで測定される全圧と、前記分圧センサで測定される分圧に基づいて前記導出流路を流れるガス中の材料ガスの濃度を算出する濃度算出部と、を備え、前記基準時点判定部が、前記分圧センサで測定される分圧に基づいて基準時点を判定するものが挙げられる。
【0018】
本発明に係る濃度制御装置の別の態様としては、材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを導入するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置であって、前記濃度制御装置が、前記導出流路を流れるガスを制御する制御バルブと、前記導出流路に設けられ、当該導出流路に流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部で所定の真空度が達成される時点である基準時点を判定する基準時点判定部と、基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整部と、を備えた濃度制御装置が挙げられる。
【0019】
このような濃度制御装置であれば、レシピの変更時やメンテナンス時等に例えばチャンバ内が真空引きされて前記導出流路内にガスがほとんど存在していないことを自動で検出し、ゼロ調整を適宜行うこともできる。この場合も、予め定められたプロセスのスケージュールにおいて所定真空度が保たれているときに逐次ゼロ調整ができるので、スループットの低下を防ぐ事が可能となる。
【0020】
前記導出流路において所定の真空度が達成された時点を判定するための具体的な構成としては、前記前記濃度測定機構が、前記測定部に存在するガスの全圧を測定する全圧センサと、前記測定部に存在するガス中の材料ガスの分圧を測定する分圧センサと、前記全圧センサで測定される全圧と、前記分圧センサで測定される分圧に基づいて前記測定部に存在するガス中の材料ガスの濃度を算出する濃度算出部と、を備え、前記基準時点判定部が、前記全圧センサで測定される全圧又は前記分圧センサで測定される分圧に基づいて基準時点を判定するものが挙げられる。
【0021】
前記導出流路内において所定の真空度が十分に達成されていることを検出して、前記基準時点を判定してゼロ調整が行えるようにするには、前記濃度制御装置が、前記導出流路において前記濃度測定機構よりも下流側に設けられた低圧用圧力センサをさらに備え、前記基準時点判定部が、前記低圧用圧力センサで測定される圧力が所定値以下となった時点を基準時点として判定すればよい。
【0022】
本発明に係るゼロ調整方法は、材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを導入するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置のゼロ調整方法であって、前記濃度制御装置が、前記導出流路を流れるガスを制御する制御バルブと、前記導出流路に設けられ、当該導出流路に流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、を備えたものであり、前記ゼロ調整方法が、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスが前記その他のガスに置換された時点である基準時点を判定する基準時点判定ステップと、基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0023】
このようなゼロ調整方法であれば、例えばプロセスにおいて前記導出流路に設けられた前記濃度測定機構において材料ガスが存在せずその他のガスで置換された状態を自動で判定し、プロセスを止めることなく、前記濃度測定機構のゼロ調整を行う事が可能となる。
【0024】
既存の濃度制御装置に用いられているプログラムをアップグレードすることによって本発明に係る濃度制御装置と同等の機能及び効果を発揮できるようにするには、材料が収容されたタンクと、前記材料が気化した材料ガスを前記タンクから外部へと導出する導出流路と、前記導出流路に前記材料ガスとは別のその他のガスを導入するガス供給流路と、を具備する気化器に設けられる濃度制御装置に用いられる濃度制御装置用プログラムであって、前記濃度制御装置が、前記導出流路を流れるガスを制御する制御バルブと、前記導出流路に設けられ、当該導出流路を流れるガスに含まれる材料ガスの濃度を測定する濃度測定機構と、を備え、前記濃度制御装置用プログラムが、前記濃度測定機構で測定される測定濃度と、予め設定される設定濃度との偏差が小さくなるように前記制御バルブを制御する濃度制御器と、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスが前記その他のガスに置換された時点である基準時点を判定する基準時点判定部と、基準時点以降に前記濃度測定機構のゼロ調整を行うゼロ調整部と、としての機能をコンピュータに発揮させる濃度制御装置用プログラムを用いればよい。なお、濃度制御装置用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されているものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明に係る濃度制御装置であれば、前記濃度測定機構により濃度測定が行われる測定部に存在するガスがその他のガスに置換された時点や所定の真空度が達成されている時点を装置自身が自動で判定し、正確なゼロ調整を適宜実施させることが可能となる。したがって、ゼロ調整を開始するタイミングを決定するために別途付加的なセンサを設ける、あるいは、プロセスを中断してゼロ調整用の特殊な動作をさせるといったことをせずに前記濃度測定機構のゼロ調整を継続しながら実施することが可能となる。このため、スループットを低下させないようにしながら、正確なゼロ調整を継続的に行って濃度測定精度や濃度制御精度を高く保ち続ける事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る濃度制御システム及び濃度制御装置を示す模式図。
図2】第1実施形態における制御機構の詳細を示す機能ブロック図。
図3】第1実施形態における材料ガスの濃度変化の一例を示す模式図。
図4】第1実施形態における基準時点判定部の基準時点判定アルゴリズムの適応例を示す模式的グラフ。
図5】第1実施形態のスロープ判定の詳細について示す模式図。
図6】第1実施形態の変形例における基準時点判定部の予測式に基づく基準時点の判定アルゴリズムの適用例を示す模式的グラフ。
図7】本発明の第2実施形態にかかる濃度制御システム及び濃度制御装置を示す模式図。
図8】第2実施形態における制御機構の詳細を示す機能ブロック図。
図9】本発明の第3実施形態にかかる濃度制御システム及び濃度制御装置を示す模式図。
図10】第1実施形態における制御機構の詳細を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1実施形態に係る濃度制御システム200及び濃度制御装置100について各図を参照しながら説明する。
【0028】
第1実施形態の濃度制御システム200は、半導体製造プロセスにおいて例えば成膜室等のチャンバCN内に予め定められた設定濃度のガスを供給するものである。第1実施形態では、例えばチャンバCN内に収容されている複数枚のウエハを対象としてALD(Atomic Layer Deposition)プロセスによってウエハの表面に一層ずつ原子を堆積させる。このため濃度制御システム200は、チャンバCNに対してプリカーサを含むガスの供給と、プリカーサを含まないパージ用のガスの供給を交互に繰り返すように構成されている。
【0029】
この濃度制御システム200は、図1に示すように例えば液体の材料にキャリアガスを供給して気化させ、キャリアガスと材料が気化した材料ガスの混合ガスを生成する気化器VPと、気化器VPで生成されている混合ガス中の材料ガスの濃度を制御する濃度制御装置100と、を備えている。
【0030】
気化器VPは、例えば液体の材料が収容されているタンクTNと、タンクTN内にキャリアガスを導入する導入流路CLと、タンクTNからガスをタンクTNの外へ導出し、チャンバCNに至る導出流路MLと、を備えている。すなわち、チャンバCN内にプリカーサを供給する期間では、導入流路CLから供給されるキャリアガスによりタンクTN内の材料がバブリングされ、キャリアガスと材料が気化した材料ガスの混合ガスが導出流路MLを流れてチャンバCNに供給される。タンクTNの周囲には、恒温槽、ヒータ、温度制御器等からなる温調機構TCが設けられている。温調機構TCによって、タンクTN内の温度は例えば材料を気化させるのに適した温度に一定に保たれる。
【0031】
また、この気化器VPは導出流路MLに対して混合ガスを希釈するための希釈ガスを直接供給する希釈ガス流路DLと、導入流路CLからタンクTNを迂回して導入流路CLと導出流路MLとの間を接続するバイパス流路BLと、を備えている。ここで、バイパス流路BLは、チャンバCN内をパージする期間に導出流路ML内に材料ガスを流さず導入流路CLから導出流路MLにキャリアガスを直接流すために用いられる。
【0032】
ここで、タンクTN内で材料が気化して発生するガスが材料ガスであり、キャリアガス及び希釈ガスがその他のガスである。混合ガスは成分として材料ガスとその他のガスからなる。また、バイパス流路BL及び希釈ガス流路DLが導出流路MLにその他のガスを導入するガス供給流路に相当する。
【0033】
濃度制御装置100は、導入流路CLに設けられた第1マスフローコントローラMFC1と、希釈ガス流路DLに設けられた第2マスフローコントローラMFC2と、導出流路MLに設けられた濃度測定機構1と、濃度測定機構1で測定される測定値に基づいて、第1マスフローコントローラMFC1と第2マスフローコントローラMFC2に設定流量を設定して制御する制御機構COMと、を備えている。さらに、濃度制御装置100は、導入流路CLにおいてバイパス流路BLの接続点よりも下流側に設けられた第1開閉弁V1と、導出流路MLにおいてバイパス流路BLの接続点よりも上流側に設けられた第2開閉弁V2と、バイパス流路BLに設けられた第3開閉弁V3と、を備えている。これらの開閉弁の開閉を切り替えることで、キャリアガスがタンクTNを経由するか、タンクTNを迂回するかを切り替えられるように構成されている。
【0034】
第1マスフローコントローラMFC1は、第1流量センサ、第1制御バルブ、第1流量制御器とを備え、これらの機器が筐体内に収容及び一体化されて1つのモジュールとして構成されたものである。この第1マスフローコントローラMFC1は、制御機構COMから第1設定流量が入力され、タンクTN内に導入されるキャリアガスの流量が第1設定流量で保たれるように流量制御を行う。具体的には、第1流量制御器は、第1流量センサで測定されるキャリアガスの測定流量と入力される第1設定流量との偏差が小さくなるように第1制御バルブの開度を流量フィードバック制御する。
【0035】
第2マスフローコントローラMFC2は、第2流量センサ、第2制御バルブ、第2流量制御器とを備え、これらの機器が筐体内に収容及び一体化されて1つのモジュールとして構成されたものである。この第2マスフローコントローラMFC2は、制御機構COMから第2設定流量が入力され、導出流路MLに供給される希釈ガスの流量が第1設定流量で保たれるように流量制御を行う。具体的には、第2流量制御器は、第2流量センサで測定される希釈ガスの測定流量と入力される第2設定流量との偏差が小さくなるように第2制御バルブの開度を流量フィードバック制御する。
【0036】
濃度測定機構1は、混合ガスの全圧と、材料ガスの分圧に基づいて、測定部内に存在する混合ガス中の材料ガスの濃度を測定するものである。具体的には濃度測定機構1は、混合ガスの全圧を測定する全圧センサ11と、材料ガスの分圧を測定する分圧センサ12と、測定される全圧と分圧に基づいて混合ガス中の材料ガスの濃度を算出する濃度算出部13と、を備えている。より具体的には、分圧センサ12は導出流路MLに形成されたセルに設けられ、全圧センサ11はセルとタンクとの間を接続するパイプに設けられている。ここで、全圧センサ11については、セルに設けてもよいし、セルの下流側に接続されているパイプに設けてもよい。なお、セルはパイプの内径よりも流路面積が拡大している。濃度測定機構1の測定部は、この測定部では例えば全圧センサ11が設けられている地点からセルの出口までと定義することができる。また、セルに全圧センサ11が設けられている場合には測定部はセル自体と定義できる。
【0037】
ここで、全圧センサ11は例えば混合ガスの全圧をダイヤフラムの変形量に基づいて測定するものである。一方、分圧センサ12は材料ガスの吸収波長帯を含む光を射出する光源と、混合ガスを通過した光を受光する受光器と、受光器の出力に応じた分圧信号を出力する信号処理器と、を備えている。光源から射出される光は材料ガスのみに吸収され、キャリアガス又は希釈ガスには吸収されない波長帯域を有している。したがって、受光器では材料ガスによる吸収率のみが測定される。信号処理器は、光の吸収率と検量線に基づいて対応する分圧を示す分圧信号を濃度算出部13に対して出力する。
【0038】
濃度算出部13は、測定された分圧を測定された全圧で割ることによって混合ガス中の材料ガスの濃度を算出する。なお、濃度算出部13については後述する制御機構COMの演算機能を利用して構成されている。
【0039】
次に制御機構COMの詳細について説明する。第1実施形態の制御機構COMは、第1マスフローコントローラMFC1及び第2マスフローコントローラMFC2の動作を制御することで、最終的に導入流路CLを流れてチャンバCNに供給される混合ガスの流量及び混合ガス中の材料ガスの濃度を制御するものである。また、この制御機構COMは前述した濃度制御だけでなく、濃度測定機構1のゼロ調整を自動で行う機能も有している。
【0040】
具体的には制御機構COMは、CPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力手段を備えたいわゆるコンピュータである。制御機構COMは、メモリに格納されている濃度制御装置用プログラムが実行され、各種機器が協業することにより、図2に示すように少なくとも濃度制御器2、基準時点判定部3、ゼロ調整部4としての機能を発揮するものである。
【0041】
濃度制御器2は、第1マスフローコントローラMFC1及び第2マスフローコントローラMFC2にそれぞれ第1設定流量及び第2設定流量を入力することで、第1制御バルブ及び第2制御バルブの開度を制御する。具体的には濃度制御器2にはユーザにより予め設定される混合ガス中に含まれる材料ガスの設定濃度と、導出流路MLに流したいガスの目標トータル流量が入力される。キャリアガスの目標流量である第1設定流量は、この設定濃度と測定濃度の偏差に基づく濃度フィードバック制御により逐次変更される。また、希釈ガスの目標流量である第2設定流量は、第1設定流量との合計量が目標トータル流量と一致するように設定される。
【0042】
第1実施形態では、図3に示すように濃度が所定値で保たれる材料ガス供給期間と、チャンバCN内をパージするためにキャリアガスのみが供給され、混合ガス中の材料ガスの濃度がゼロとなるパージ期間とが交互に繰り返される。なお、パージ期間においては少なくとも導出流路MLにおいて分圧センサ12の測定点においては材料ガス供給期間に供給された材料ガスがパージ期間に供給されるキャリアガスによって完全に置換されるのに十分な時間の長さだけ継続され得る。
【0043】
制御機構COMは、材料ガス供給期間とパージ期間を規定するガス供給期間設定指令に基づき、材料ガス供給期間では第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開放し、第3開閉弁V3を閉止してキャリアガスがタンクTN内を経由してバブリングが行われるようにする。一方、制御機構COMは、パージ期間では第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉止し、第3開閉弁V3を開放してキャリアガスがバイパス流路BLを経由して直接流出流路に供給されるようにする。
【0044】
次に基準時点判定部3、及び、ゼロ調整部4による濃度測定機構1の自動ゼロ調整について説明する。第1実施形態ではALDプロセス中において前述したパージ期間中に流出流路に材料ガスが流れておらず、キャリアガス又は希釈ガスのみが流れていることを自動的に検出して、分圧センサ12のゼロ調整が行われる。
【0045】
すなわち、基準時点判定部3は、前記濃度測定機構1が設けられている位置において混合ガスからキャリアガス又は希釈ガスへの置換が完了する時点である基準時点を判定する。また、基準時点判定部3は例えばALDプロセスが終了し、チャンバCN内を真空引きしてパージする際にも基準時点の判定を行う。
【0046】
まず、導出流路ML内がキャリアガス又は希釈ガスで置換された場合の基準時点の判定動作について説明する。第1実施形態では、基準時点判定部3は濃度測定機構1の測定濃度の出力が所定条件を満たした時点を基準時点として判定する。すなわち、パージ期間に入った時点をトリガとして基準時点判定部3は判定を開始する。図4のグラフに示すようにパージ期間がスタートし、トリガが発生した時点から所定時間は判定を行わない判定待機時間が設定してある。
【0047】
基準時点判定部3は判定待機時間が経過した後に濃度測定機構1の出力が閾値以下となったかどうかを判定するレベル判定を基準時点判定部3は判定する。濃度測定機構1の出力が閾値以下となった以降では基準時点判定部3は濃度測定機構1の出力の時間変化量の絶対値が所定値以下となったかどうかを判定するスロープ判定を行う。スロープ判定は図5に示すように所定の連続するデータ点数を含むスロープ計算ウインドウ内において最小二乗法等により直線式y=ax+bのフィッティングを行い、傾きaを算出する。なお、傾きについてはフィッティングではなく、スロープ計算ウインドウ内の最新データと最も古いデータの2点で傾きaを求めるようにしてもよい。傾きaの絶対値が所定値以下となった時点で基準時点判定部3はその時点を基準時点であると判定する。このようにして、少なくともの測定点において材料ガスを含む混合ガスから材料ガスを含まないキャリアガス又は希釈ガスで置換された時点が判定される。なお、この実施形態では基準時点判定部3は濃度測定機構1で測定される測定濃度に基づいて判定しているが、測定濃度の代わりに濃度測定機構1を構成する分圧センサ12で測定される分圧に基づいて基準時点を判定するように基準時点判定部3を構成してもよい。
【0048】
ゼロ調整部4は、基準時点以降において濃度測定機構1に対してゼロ調整の指示を行う。第1実施形態では基準時点以降において追加待機時間だけ再び待機し、その時点で濃度測定機構1に対してゼロ調整の指示を行う。濃度測定機構1はゼロ調整部4からの指示に従い、内部状態に基づいてゼロ調整を実施する。なお、ゼロ調整に使用する内部状態については、ある時点での内部状態としてもよいし、所定点数の平均値であってもよい。
【0049】
次にチャンバCN内が真空引きされて、導出流路ML内も所定の真空度となる場合の基準時点の判定について説明する。この場合には基準時点判定部3は、例えばユーザによるチャンバCNの真空引きによるパージ指令信号や入力等を受け付け、その時点をトリガとして基準時点の判定を行う。あるいは基準時点判定部3は各開閉バルブの切替え信号を監視し、バルブの状態から導出流路ML内の真空引きが行われているかどうかを判定してもよい。基準時点判定部3は、全圧センサ11の出力値に基づいて所定真空度以下となった時点である基準時点の判定を行う。なお、導出流路ML内が所定の真空度になったかどうかの判定については前述したキャリアガス又は希釈ガスによる置換の判定と同様のアルゴリズムで行われる。
【0050】
また、ゼロ調整部4は導出流路ML内が所定の真空度が達成された場合には、その時点で濃度測定機構1に対してゼロ調整の指示を行う。
【0051】
このように構成された第1実施形態の濃度制御システム200によれば、基準時点判定部3が、ALDプロセス中において導出流路MLにキャリアガス又は希釈ガスしか存在せず、材料ガスが存在していない時点を自動的に判定することができる。そして、導出流路MLに材料ガスがなく、分圧センサ12の出力値がゼロとなるべき時点を判定できるので、その時の分圧センサ12の出力値に基づいてゼロ調整を自動で行うことができる。
【0052】
したがって、ALDプロセスを実施しながら逐次濃度測定機構1のゼロ調整を行うことができる。このため、濃度測定機構1に温度ドリフト等によりゼロ点のずれが発生したとしてもすぐにゼロ調整部4によって補正されるので、混合ガス中における材料ガスの濃度の測定値に誤差が発生しにくくできる。言い換えると濃度測定機構1のゼロ調整のために、各ガスが供給されないようにしたうえで、導出流路MLの真空引きを行わなくても濃度測定機構1のゼロ調整を行うことができる。
【0053】
また、真空引きにより導出流路ML内が所定の真空度となった場合にも濃度測定機構1ついてゼロ調整を自動的に行える。
【0054】
これらのことから、第1実施形態の濃度制御装置100であれば濃度測定機構1のゼロ調整を開始するタイミングを決定するために別途付加的なセンサを設ける、あるいは、プロセスを中断してゼロ調整用の特殊な動作をさせる必要がない。このため、プロセスの中断頻度を低減し、スループットを従来よりも向上させることが可能となる。
【0055】
次に第1実施形態の変形例について説明する。
【0056】
第1実施形態の基準時点判定部3は、濃度測定機構1の出力値に基づいてゼロ調整を行う時点の基準となる基準時点を判定していたが、この出力値を用いずに基準時点を判定してもよい。
【0057】
すなわち、基準時点判定部3は、導出流路MLのセルまでのパイプ内の容積である第1容積のガスが置換される時間である第1時間と、導出流路MLに設けられたセルの容積である第2容積のガスが置換される時間である第2時間の両方に基づいて基準時点を判定するようにしてもよい。
【0058】
具体的には第1時間はパージ期間の開始時点から流量センサで測定されているキャリアガス又は希釈ガスの累積流量の示す体積がセルまでのパイプ内の容積である第1容積と同等になる時間である。キャリアガスで置換を行う場合には、バイパス流路BLの開閉バルブV3からセルまでのパイプ内の容積が第1容積に相当する。また、希釈ガスで置換する場合には希釈流路DLと導出流路MLとの合流点からセルまでのパイプ内の容積が第1容積に相当する。
【0059】
また、セル内の材料ガスの残留率は図6のグラフに示すように指数関数的に減少する。そこで基準時点判定部3は、第1時間の経過時点から予測式Ri=Ri-1(Exp(-Q/V*Δt))に基づいて第2時間を判定する。ここで、Ri:現時点の材料ガスの残留率、Ri-1:単位時間Δt前の材料ガスの残留率、Q:容積内に流入するキャリアガス又は希釈ガスの流量、V:混合ガスの置換対象であるセルの容積である第2容積である。
【0060】
基準時点判定部3は、算出される残留率Riが所定値以下(例えば0.1%以下)となった時点をセルの容積である第2容積がキャリアガス又は希釈ガスで置換された第2時間として判定する。また、基準時点判定部3が、残留率Riに濃度変化の初期値C0をかけて現在の予測濃度を算出し、その予測濃度が濃度測定機構1の測定限界を十分に下回っている時点を第2時間として判定するようにしてもよい。具体的には予測濃度が濃度測定機構1の検出限界の1/10以下となった時点を第2時間として判定すればよい。このように判定された第2時間がゼロ調整を行う基準時点となる。
【0061】
基準時点判定部3は、このようにして算出される第1時間と第2時間を用いて基準時点を判定する。
【0062】
なお、置換対象となる容積の別の例としては各マスフローコントローラのバルブまたは開閉弁から濃度測定機構1が設けられている部分までの配管内の容積が挙げられる。例えば第2マスフローコントローラMFC2が全閉状態となり、キャリアガスのみで混合ガスの置換を行う場合には、第2開閉弁V2、第3開閉弁V3及び第2マスフローコントローラMFC2から濃度測定機構1までの容積と濃度測定器1自身の容積の和に相当する。
【0063】
また、流量Qについてはキャリアガスのみが供給されている場合には、第1マスフローコントローラMFC1の測定流量を用いればよい。キャリアガスと希釈ガスの双方が供給されている場合には各マスフローコントローラの測定流量の和を用いればよい。なお、各マスフローコントローラの出力値が質量流量の場合は、ガスの温度と圧力を用いて体積流量に変換した値を流量Qとする。
【0064】
また、第1時間と第2時間の計算に使用する流量としては、マスフローコントローラの測定流量の代わりに、設定流量を使用してもよい。さらに、本実施形態では実際の時間経過に従って、第1時間と第2時間を計算したが、あらかじめわかっている設定流量を用いて事前に計算をしておいてもよい。
【0065】
また、容積については導出流路MLとセルの設計値を用いているが、その他の方法で求めた値であってもよい。例えば工場出荷時にガス置換時の濃度変化を別途測定しておき、その結果から上記の予測式から容積Vを逆算した値であってもよい。あるいはALDプロセス中において混合ガスからキャリアガスへの置換が行われる際の濃度変化に基づいて上記予測式から容積Vを算出するようにしてもよい。この際、濃度測定機構1においてゼロ点のずれが発生していても算出される容積Vの精度を低下させないようにするためには、濃度変化の初期区間を使用するのが望ましい。
【0066】
また、対象となる容積内を昇圧し、第1圧力から第2圧力に変化する間に容積から流出する流量(流出モル数に相当)と、気体の状態方程式に基づいて容積Vを算出してもよい。
【0067】
次に本発明の第2実施形態に係る濃度制御システム200及び濃度制御装置100について図7及び図8を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した各部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0068】
第2実施形態の濃度制御システム200は、タンクTNから導出される混合ガスを希釈ガスで薄めて設定濃度に近づけるのではなく、希釈ガスを用いずに導出流路ML内を流れる混合ガスの全圧を制御することで混合ガス中に含まれる材料ガスの濃度を設定濃度に近づける濃度制御を行うものである。
【0069】
すなわち、第1実施形態と比較して第2実施形態の濃度制御装置100は、混合ガスの全圧を制御する制御バルブCVが導出流路ML上に設けられている点と、濃度制御器2の出力がキャリアガスの流量を第1マスフローコントローラMFC1で制御するための第1設定流量と、制御バルブCVの操作量である点で異なっている。
【0070】
より具体的には第2実施形態の濃度制御器2は、例えば第1設定流量として固定された値を出力し、第1マスフローコントローラMFC1によりタンクTN内に常に一定流量のキャリアガスが供給され続けるように制御を行う。
【0071】
一方、導出流路ML上に設けられた制御バルブCVの開度については、濃度制御器2は設定濃度と濃度測定機構1で測定される測定濃度との偏差により濃度フィードバック制御を行う。具体的には設定濃度に対して測定濃度が小さい場合には、濃度制御器2は制御バルブCVの開度を大きくして混合ガスの全圧を低下させることで、相対的に材料ガスの分圧を大きくし、混合ガス中の材料ガスの濃度を上昇させる。一方、設定濃度に対して測定濃度が大きい場合には、濃度制御器2は制御バルブCVの開度を小さくして混合ガスの全圧を上昇させることで、相対的に材料ガスの分圧を小さくし、混合ガス中の材料ガス中の濃度を低下させる。各場合において制御バルブCVの操作量の大きさについては設定濃度と測定濃度の偏差に応じた値が設定される。
【0072】
また、第2実施形態において図3に示されるような材料ガス供給期間とパージ期間が繰り返される場合には、第2実施形態においても第1実施形態と同様に制御機構COMにより各開閉弁の開閉の組み合わせが制御される。すなわち、制御機構COMは材料ガス供給期間では第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開放し、第3開閉弁V3を閉止してキャリアガスがタンクTN内を経由してバブリングが行われるようにする。一方、制御機構COMはパージ期間では第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉止し、第3開閉弁V3を開放してキャリアガスがバイパス流路BLを経由して直接導出流路MLに供給されるようにする。
【0073】
基準時点判定部3及びゼロ調整部4については第1実施形態と同様の構成を有しており、例えばパージ期間において基準時点判定部3は導出流路ML内の混合ガスがキャリアガスで置換される時点を判定し、ゼロ調整部4はその判定結果に基づいて自動的に濃度測定機構1のゼロ調整を行う。また、チャンバCN内が真空引きされる場合も同様に基準時点判定部3は、導出流路ML内が所定の真空度に到達したかどうかを判定し、ゼロ調整部4はその判定結果に基づいて濃度測定機構1のゼロ調整を行う。
【0074】
このように第2実施形態のような圧力式の濃度制御システム200であっても、基準時点判定部3及びゼロ調整部4の動作によってプロセスを止めたり、特殊な調整作業用の動作を行ったりすることなく、濃度測定機構1のゼロ調整を自動的に実施することができる。
【0075】
次に第3実施形態の濃度制御システム200及び濃度制御装置100について図9及び図10を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した各部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0076】
第3実施形態の濃度制御システム200では、導入流路CL上に制御バルブCVのみが設けられており、この制御バルブCVによってキャリアガスの流量を濃度フィードバック制御することで導出流路ML内を流れる混合ガス中の材料ガスの濃度が設定濃度で保たれるように制御される。
【0077】
すなわち、第3実施形態の濃度制御装置100は第1実施形態と比較して導入流路CLに設けられた制御バルブCVを備えている点と、濃度制御器2が設定濃度と濃度測定機構1で測定される測定濃度との偏差により導入流路CL上の制御バルブCVを制御する点で異なっている。
【0078】
このように構成された第3実施形態でも基準時点判定部3及びゼロ調整部4の構成及び動作については第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0079】
すなわちパージ期間に制御機構COMがバイパス流路BLを介してキャリアガスを流し、混合ガスがキャリアガスで置換された時点で分圧センサ12のゼロ調整が自動的に行われる。また、チャンバCN内が真空引きされた場合も導出流路MLが所定の真空度に到達した時点で全圧センサ11及び分圧センサ12のゼロ調整が自動的に実施される。
【0080】
その他の実施形態について説明する。
【0081】
本発明に係る濃度制御装置はALDプロセスのみに用いられるものではなく、その他の半導体製造プロセスにおいて、あるいは、半導体製造プロセス以外でも混合ガス中の材料ガスの濃度を制御するために用いることができる。すなわち、本発明の用途は実施形態に示したものに限定されない。
【0082】
濃度制御装置については、各流体機器及び制御機器をモジュール化されたものであっても構わない。また、濃度制御装置は各開閉弁を備えておらず、気化器に設けられた開閉弁の開閉制御だけを司るように構成してもよい。
【0083】
タンク内に収容されている材料については液体に限られるものではなく、固体であっても構わない。
【0084】
基準時点の判定のために濃度測定機構の出力を用いるのではなく、別途、低圧用圧力センサを導出流路に設けて、この低圧用圧力センサの出力に基づいて所定の真空度が達成されたかどうかを基準時点判定部が判定するようにしてもよい。ここで、低圧用圧力センサは例えば全圧センサや分圧センサの検出限界の1/10程度の分解能を有するものを用いれば良い。
【0085】
基準時点判定部による基準時点の判定はレベル判定、スロープ判定の両方を行うものではなく、いずれかのみで基準時点を判定してもよい。また、ゼロ調整部は追加待機時間を経過した後のセンサの出力値に基づいてゼロ調整をするのではなく、基準時点でゼロ調整を行うようにしてもよい。
【0086】
第1実施形態では希釈流路は導入流路とは別に設けられていたが、例えば導入流路において第1マスフローコントローラの上流側から希釈流路が分岐し、導出流路に合流するようにしてもよい。このようにしてキャリアガスと希釈ガスが同じ成分のものとなるようにしてもよいし、異なる成分にしてもよい。なお、キャリアガス及び希釈ガスは分圧センサで使用される光の吸収波長帯を有していない成分であればよい。
【0087】
濃度測定機構として各実施形態では全圧センサと分圧センサを備えたものを例示したが、例えば超音波センサで混合ガス中の材料ガスの濃度を測定するようにしてもよい。すなわち、混合ガス中の材料ガスの濃度が変化することで音速が変化することを利用して濃度を測定するように濃度測定機構を構成してもよい。このような濃度測定機構でも基準時点判定部によりガス置換又は所定の真空度が完了した基準時点を判定し、ゼロ調整部によって自動的にゼロ調整を行うことができる。
【0088】
濃度制御システムによる濃度制御は、各実施形態に示された物に限られず、各方式の一部又は全部を組み合わせ混合ガス中の材料ガスの濃度が設定濃度で保たれるようにしてもよい。
【0089】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の組み合わせや変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0090】
200・・・濃度制御システム
100・・・濃度制御装置
CV ・・・制御バルブ
1 ・・・濃度測定機構
11 ・・・全圧センサ
12 ・・・分圧センサ
13 ・・・濃度算出部
2 ・・・濃度制御器
3 ・・・基準時点判定部
4 ・・・ゼロ調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10