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特許7281529積層体、ブリスター容器、及びプレススルーパッケージ
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  • 特許-積層体、ブリスター容器、及びプレススルーパッケージ 図1
  • 特許-積層体、ブリスター容器、及びプレススルーパッケージ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-17
(45)【発行日】2023-05-25
(54)【発明の名称】積層体、ブリスター容器、及びプレススルーパッケージ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20230518BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230518BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230518BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/32 C
B32B27/32 101
B32B7/022
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021213089
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2017053663の分割
【原出願日】2017-03-17
(65)【公開番号】P2022036168
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大
(72)【発明者】
【氏名】古川 秀一
(72)【発明者】
【氏名】松山 岳生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-501799(JP,A)
【文献】特表2008-507597(JP,A)
【文献】特開2012-117068(JP,A)
【文献】特表平06-511272(JP,A)
【文献】特開2014-028508(JP,A)
【文献】特開2012-135980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0260991(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有し、総膜厚が400μm以下の積層体であって、
前記中間層が、前記フッ素系樹脂層と前記基材層とを接着する接着剤層であり、直鎖状低密度ポリエチレンと、無水マレイン酸変性ポリエチレンからなり、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計を質量100%としたとき、ポリエチレン樹脂の割合は10%以上70%以下であり、前記ポリエチレン樹脂は前記直鎖状低密度ポリエチレンであり、前記変性ポリエチレン樹脂は前記無水マレイン酸変性ポリエチレンであり、
前記中間層の厚みが、5μm以上50μm以下であり、
前記積層体は、深絞り成形によるプレススルーパッケージ用またはブリスター容器用であって、前記積層体の上降伏点応力が1500N/cm以上であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
基材層、中間層、フッ素系樹脂層第2の中間層、第2の基材層この順で有し、総膜厚が400μm以下の積層体であって、
前記中間層が、前記フッ素系樹脂層と前記基材層とを接着する接着剤層であり、前記第2の中間層が、前記フッ素系樹脂層と前記第2の基材層とを接着する接着剤層であり、前記中間層および前記第2の中間層が、直鎖状低密度ポリエチレンと、無水マレイン酸変性ポリエチレンからなり、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計を質量100%としたとき、ポリエチレン樹脂の割合は10%以上70%以下であり、前記ポリエチレン樹脂は前記直鎖状低密度ポリエチレンであり、前記変性ポリエチレン樹脂は前記無水マレイン酸変性ポリエチレンであり、
前記中間層の厚みおよび前記第2の中間層の厚みが、5μm以上50μm以下であり、
前記積層体は、深絞り成形によるプレススルーパッケージ用またはブリスター容器用であって、前記積層体の上降伏点応力が1500N/cm 以上であることを特徴とする積層体。
【請求項3】
前記中間層の厚みが、10μm以上30μm以下である、請求項に記載の積層体。
【請求項4】
前記中間層の厚みおよび前記第2の中間層の厚みが、10μm以上30μm以下である、請求項に記載の積層体。
【請求項5】
前記フッ素系樹脂層がポリクロロ三フッ化エチレンからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体の水蒸気透過率が0.5g/m/24時間以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体を深絞り成形することによって製造されるブリスター容器。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体を深絞り成形することによって製造されるプレススルーパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、ブリスター容器、及びプレススルーパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
バリア性の高いフィルム積層体は、食品や医薬品等の包装材料に使用されている。医薬品分野において、錠剤やカプセルの個包装にはプレススルーパッケージ(以下、「PTP」と記載することがある)が用いられる。
内容物の劣化抑制のためPTPの形成材料である樹脂フィルムには、水蒸気に対するバリア性が求められる。また、一般的にPTPは深絞り成形により製造されるため、PTPの形成材料である樹脂フィルムには、良好な成形性が求められる。例えば特許文献1~2には、水蒸気に対するバリア性を向上させるため、フッ素系樹脂フィルムを積層した積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-28508号公報
【文献】特開2012-135980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バリア性の高いフッ素系の樹脂を用いて、水蒸気に対するバリア性の高い積層体を製造する際には、高いバリア性に加えて成形性にも優れた積層体を提供することが要求される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、成形性に優れた積層体、該積層体を用いたブリスター容器、及びプレススルーパッケージを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有し、総膜厚が400μm以下の積層体であって、前記中間層の厚みが、5μm以上50μm以下であり、積層体の上降伏点応力が1500N/cm以上であることを特徴とする積層体。
[2]前記フッ素系樹脂層の前記中間層とは反対の面上に、第2の中間層、第2の基材層をさらにこの順で有する、[1]に記載の積層体。
[3]前記フッ素系樹脂層がポリクロロ三フッ化エチレンからなる、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]前記中間層がポリエチレン樹脂と、変性ポリエチレン樹脂とからなる、[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層体。
[5]前記中間層が酸変性ポリオレフィン樹脂と、エポキシ基を含む樹脂と、エラストマー樹脂とからなる、[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層体。
[6]前記中間層の厚みが、10μm以上30μm以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の積層体。
[7]前記第2の中間層がポリエチレン樹脂と、変性ポリエチレン樹脂とからなる、[2]~[6]のいずれか1つに記載の積層体。
[8]前記第2の中間層が酸変性ポリオレフィン樹脂と、エポキシ基を含む樹脂と、エラストマー樹脂とからなる、[2]~[6]のいずれか1つに記載の積層体。
[9]前記第2の中間層の厚みが、10μm以上30μm以下である、[2]~[8]のいずれか1つに記載の積層体。
[10]前記積層体の水蒸気透過率が0.5g/m/24時間以下である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層体。
[11][1]~[10]のいずれか1つに記載の積層体を含むブリスター容器。
[12][1]~[10]のいずれか1つに記載の積層体を含むプレススルーパッケージ。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、成形性に優れた積層体、該積層体を用いたブリスター容器、及びプレススルーパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の積層体の概略断面図である。
図2】本発明の積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
【0009】
<積層体>
≪第1実施形態≫
本発明の積層体の第1実施形態について、図1を参照して説明する。
図1に示す本実施形態の積層体1は、基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11がこの順で積層されている。中間層10はフッ素系樹脂層11と基材層12とを接着する接着剤層として機能し、中間層10を介して基材層12とフッ素系樹脂層11とが積層されている。
本実施形態の積層体1は、基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11の3層構造である。3層構造の積層体は、複雑な工程を経ずに製造でき、また、積層体の各膜の均一性がより向上するため好ましい。
【0010】
本実施形態の積層体は、下記の測定条件で測定した上降伏点応力が1500N/cm以上であり、2000N/cm以上が好ましく、2100N/cm以上がより好ましい。
積層体の上降伏点応力が上記下限値以上であると、各層間が強固に密着した、層間剥離を生じない積層体とすることができる。
積層体の上降伏点応力が上記下限値以上であると、深絞り成形時の成形性がよく、ブリスター容器やPTPに用いた際に、容器本体を使用時に十分な硬さにすることができる。すなわち、深絞り成形時には積層体の深絞り部分が凸状となり元の積層体に比べて延びる部分ができるが、上降伏点が上記下限値以上であると凸状となった深絞り部分が、もとの形状に戻ろうとする力が少なくなり、積層体の成形性がよくなる。これにより、多少の衝撃やハンドリング時の取扱いにおいても容器が変形することがなくなる。これにより例えば自動包装ラインに対する適合性を良好なものとすることができる。
【0011】
上降伏点応力の上限値は特に限定されないが、一例を挙げると、5000N/cm以下とすることができる。
上降伏点応力は基材層、フッ素系樹脂層、中間層のそれぞれの各層の素材及び厚みを調整することにより、上記特定の数値範囲に制御することができ、特に基材層の厚みと、中間層の組成により制御することが好ましい。
【0012】
本実施形態において、上降伏点応力は下記測定条件にて測定する。
測定機:島津製作所(株)製 オートグラフ100A型
測定条件:JIS K-6732(引張速度:50mm/min、試験温度:25℃)試験片の形状及び寸法:JIS K-7127試験片タイプ5に基づいた寸法。
単位:N/cm、JIS K 6732に準拠して測定した値
【0013】
以下、本発明を構成する各層について説明する。
【0014】
[基材層]
本実施形態において、基材層12を形成する材料は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はビニル系樹脂のいずれかである。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられる。
本実施形態においては、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0015】
本実施形態においては、上記のいずれかの樹脂材料を基材層12に用いることにより、例えば絞り成形により成形する際の成形性が良好となる。
【0016】
本実施形態において基材層12の厚みは特に限定されず、一例を挙げると、下限値は50μm以上、80μm以上、100μm以上が挙げられる。また上限値は、250μm以下、220μm以下、200μm以下が挙げられる。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0017】
[中間層]
・中間層(1)
本実施形態においては中間層10として、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂とを含む中間層(以下、「中間層(1)」と記載する場合がある)を用いることが好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられ、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
【0018】
変性ポリエチレン樹脂は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリエチレン樹脂であって、ポリエチレン樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものである。本実施形態においては、ポリエチレン樹脂を酸変性して得られたものが好ましい。
酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、ポリエチレン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
【0019】
変性前のポリエチレン樹脂材料は、原料モノマーとしてエチレンを含むものであれば限定されず、公知のポリエチレン樹脂が適宜用いられる。具体的には、ポリエチレン樹脂として上述した例の他、;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレン・α-オレフィン共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂等が挙げられる。
【0020】
酸官能基含有モノマーは、エチレン性二重結合と、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基とを同一分子内に持つ化合物であって、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
カルボキシ基を有する酸官能基含有モノマー(カルボキシ基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)などのα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸などの不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
これらの酸官能基含有モノマーは、中間層を構成する成分において1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
なかでも酸官能基含有モノマーとしては、酸無水物基を有する酸官能基含有モノマーが好ましく、カルボン酸無水物基含有モノマーがより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、未反応の酸官能基含有モノマーによる接着力の低下を防ぐため、予め未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを用いることが好ましい。
【0022】
本実施形態において、変性ポリエチレン樹脂は無水マレイン酸変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0023】
本実施形態においては、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計を質量100%としたとき、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の下限値は、10%以上が好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂の合計量に対するポリエチレン樹脂の割合の上限値は、70%以下が好ましく、60%以下がさらに好ましい。例えば、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合比は、[ポリエチレン樹脂]:[変性ポリエチレン樹脂]=20:80~60:40を取ることができる。
本実施形態においては、ポリエチレン樹脂と変性ポリエチレン樹脂との混合材料を用いた中間層(1)を使用することにより、フッ素系樹脂層と基材層との間の密着性が向上する。このため層間剥離が生じにくい積層体を提供できる。
【0024】
・中間層(2)
本実施形態においては中間層10として、酸変性ポリオレフィン樹脂と、エポキシ基を含む樹脂と、エラストマー樹脂とを含む中間層(以下、「中間層(2)」と記載する)を用いることも好ましい。
中間層(2)が含む各成分について説明する。
【0025】
・・酸変性ポリオレフィン樹脂
酸変性ポリオレフィン樹脂(以下、「(A)成分」と記載する)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であって、ポリオレフィン系樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものである。
(A)成分は、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるポリオレフィン系樹脂の変性や、酸官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合等により得られる。なかでも(A)成分としては、ポリオレフィン系樹脂を酸変性して得られたものが好ましい。
酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で、ポリオレフィン樹脂と酸官能基含有モノマーとを溶融混練するグラフト変性が挙げられる。
【0026】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレン又はα-オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレン又はα-オレフィンとのブロック共重合体等が挙げられる。なかでも、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体;以下、「ホモPP」ということがある。)、プロピレン-エチレンのブロック共重合体(以下、「ブロックPP」と言うことがある。)、プロピレン-エチレンのランダム共重合体(以下、「ランダムPP」と言うことがある)等のポリプロピレン系樹脂が好ましく、特にランダムPPが好ましい。
共重合する場合の前記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、α-オレフィン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。
【0027】
酸官能基含有モノマーは、エチレン性二重結合と、カルボキシ基又はカルボン酸無水物基とを同一分子内に持つ化合物であって、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。
カルボキシ基を有する酸官能基含有モノマー(カルボキシ基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)などのα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸などの不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
これらの酸官能基含有モノマーは、(A)成分において1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
なかでも酸官能基含有モノマーとしては、後述する(B)成分との反応性が高いことから酸無水物基を有する酸官能基含有モノマーが好ましく、カルボン酸無水物基含有モノマーがより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、未反応の酸官能基含有モノマーによる接着力の低下を防ぐため、予め未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを(A)成分として用いることが好ましい。ここで「未反応」とは、酸変性に用いられないことを意味する。
【0029】
なかでも(A)成分としては、フッ素系樹脂層に対する高い密着性を発揮できる観点から無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
【0030】
・・エポキシ基を含む樹脂
本実施形態において、エポキシ基を含む樹脂は、エポキシ基及びビニル基を有する成分であることが好ましい。エポキシ基を含む樹脂は、1,2‐ビニル構造を有することが好ましく、ブタジエンを部分的にエポキシ化した、エポキシ化ポリブタジエンがより好ましい。1,2-ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したものが特に好ましい。
本実施形態に用いることができるエポキシ基を含む樹脂としては、例えば、日本曹達株式会社の液状ポリブタジエンJP-100,JP-200や株式会社アデカのアデカサイザーBF-1000などが挙げられる。
エポキシ基を含む樹脂の数平均分子量は500以上4,000以下であることが好ましい。
エポキシ基を含む樹脂の数平均分子量が上記上限値以下であると、常温で固形状態となることによる粘着性の低下を抑制でき、接着性の低下を防止できる。
本発明において数平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)によって測定されるポリスチレン換算の値とする。
エポキシ基を含む樹脂は特にエポキシ化ポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0031】
・・エラストマー樹脂
エラストマー樹脂(以下、「(C)成分」と記載する)は、エラストマーとしての特性を備える成分であればよく、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー等が挙げられる。
なかでも、オレフィン系エラストマーが好ましく、例えば、ポリスチレン等からなるハードセグメントと、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等からなるソフトセグメントとを有するブロック共重合体が挙げられる。オレフィン系エラストマーに使用可能なオレフィン系重合体としては、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-エチレン共重合体等の芳香族オレフィン-脂肪族オレフィンの共重合体が挙げられる。
【0032】
本実施形態において、(A)成分50質量部以上99質量部以下に対して、(C)成分は1質量部以上50質量部以下で含有されることが好ましい。なかでも、(C)成分65質量部以上85質量部以下に対して、(B)成分が15質量部以上25質量部以下含有されることがより好ましい。
【0033】
本実施形態において、中間層10の厚みは、5μm以上50μm以下であり、10μm以上30μm以下であることが好ましい。
本実施形態において、中間層10の厚みが上記下限値以上であることにより、密着性を向上させ、層間剥離を防止できる。また、中間層の厚みが上記上限値以下であることにより、厚膜化に起因する成形性の劣化を防止できる。
【0034】
[フッ素系樹脂層]
フッ素系樹脂層11に用いられるフッ素系樹脂材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、及びこれらの1種又は2種以上の混合物などを用いることができ、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)が好ましい。
【0035】
本実施形態においてフッ素系樹脂層11の厚みは特に限定されず、一例を挙げると、下限値は5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、上限値は、200μm以下が好ましく、170μm以下が好ましい。さらに好ましくは150μm以下である。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本実施形態においては、フッ素系樹脂層11の厚みが上記下限値以上であると、積層体の水蒸気透過率を低くすることができ、例えば医薬品用のプレススルーパッケージに用いた際に、高い防湿性を発揮し、水蒸気に起因する内容物の劣化を防止できる。
本実施形態においては、フッ素系樹脂層11の厚みが上記上限値以下であると、生産コストを削減できる。
【0036】
≪第2実施形態≫
本発明の積層体の第2実施形態について、図2を参照して説明する。
図2に示す本実施形態の積層体2は、基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11、第2の中間層13、第2の基材層14がこの順で積層されている。
5層構成の積層体は、積層体の強度が高まるため好ましい。また、5層構成の積層体は、カールが生じにくくなるため好ましい。
本実施形態における、基材層、中間層、フッ素系樹脂層を構成する各材料については、前記第1実施形態において説明した各材料と同様である。
第2の基材層14を構成する材料についての説明は、前記基材層12と同様である。第2の基材層14と、基材層12とは、材質が同一であっても異なっていてもよいが、同一の材質であることが好ましい。
第2の中間層13を構成する材料についての説明は、前記中間層10と同様である。第2の中間層13と、中間層10とは、材質が同一であっても異なっていてもよいが、同一の材質であることが好ましい。
【0037】
本実施形態の積層体は、下記の測定条件で測定した上降伏点応力が1500N/cm以上であり、2000N/cm以上が好ましく、2100N/cm以上がより好ましい。
積層体の上降伏点応力が上記下限値以上であると、各層間が強固に密着した、層間剥離を生じない積層体とすることができる。
また、積層体の上降伏点応力が上記下限値以上であると、積層体の深絞り成形性がより向上する。このため例えば自動包装ラインに対する適合性を良好なものとすることができる。
本実施形態の積層体の上降伏点応力が上記下限値以上であると、前述の第1実施形態と同様に、深絞り成形時の成形性がよく、ブリスター容器やPTPに用いた際に、容器本体を使用時に十分な硬さにすることができる。
【0038】
本実施形態において上降伏点応力の上限値は特に限定されないが、一例を挙げると、5000N/cm以下とすることができる。
上降伏点応力は基材層12、中間層10、フッ素系樹脂層11、第2の中間層13、第2の基材層14のそれぞれの各層の素材及び厚みを調整することにより、上記特定の数値範囲に制御することができ、特に基材層12、14の厚みと、中間層10、第2の中間層13の組成により制御することが好ましい。
【0039】
本実施形態において、基材層を構成する材料と第2の基材層と構成する材料とは、同一であってもよく異なっていてもよいが、同一の樹脂材料からなることが好ましい。
基材層に対する第2の基材層の厚みが、0.5倍~1.1倍であることが好ましく、0.9倍~1.1倍であることがより好ましく、0.95倍~1.05倍であることが特に好ましい。
【0040】
本実施形態において、中間層を構成する材料と第2の中間層と構成する材料とは、同一であってもよく異なっていてもよいが、同一の樹脂材料からなることが好ましい。
基材層に対する第2の基材層の厚みが、0.9倍~1.1倍であることがより好ましく、0.95倍~1.05倍であることが特に好ましい。
【0041】
本発明の積層体は、総膜厚の上限が400μm以下であり、300μm以下であることが好ましい。また、総膜厚の下限は80μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。この膜厚とすることで、内容物の保護がしやすく、成形後にも保管や使用がしやすくなる。
【0042】
また、本発明の積層体の水蒸気透過率は0.5g/m/24時間以下であることが好ましく、0.4g/m/24時間以下がより好ましく、0.3g/m/24時間以下が特に好ましい。
【0043】
<ブリスター容器、プレススルーパッケージ>
本実施形態のブリスター容器、プレススルーパッケージは、前記本発明の第1又は第2実施形態の積層体を深絞り成形することによって製造される。
前記本発明の第1実施形態の積層体1を用いる場合、フッ素系樹脂層11は内側とすることもでき、外側とすることも出来るが、外側となるように成形することが好ましい。 本実施形態のプレススルーパッケージは、例えば錠剤やカプセル剤の個包装に用いられる。プレススルーパッケージやブリスター容器用に有用である。
前記本発明の積層体は、水蒸気透過率が低いため、錠剤やカプセル等の内容物の劣化を防止できる。
【0044】
本発明の積層体は、前記基材層の原料となる樹脂と、前記中間層の原料となる樹脂と、前記フッ素系樹脂層の原料となる樹脂と、を同時に溶融押出成形することにより製造することが好ましい。
また、第2実施形態の積層体は、前記基材層の原料となる樹脂と、前記中間層の原料となる樹脂と、前記フッ素系樹脂層の原料となる樹脂と、前記第2の中間層の原料となる樹脂と、前記第2の基材層の原料となる樹脂と、を同時に溶融押出成形することにより製造することが好ましい。
【実施例
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0046】
<3層構成の積層体>
≪実施例1~6、比較例1~2≫
基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有する3層構成の積層体を製造した。表1に示す各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々に加熱溶融したものを、同時多層押出成形が可能な押出機を用いて同時多層製膜を行って製膜し、基材層、中間層、フッ素系樹脂層をこの順で有する3層構成の積層体を得た。各積層体の上降伏点応力を以下の方法で測定した。比較例2は、積層体を製造後、層間剥離を起こしたため上降伏点応力を測定することができなかった。
【0047】
[上降伏点応力]
上降伏点応力は下記測定条件にて測定した。
測定機:島津製作所(株)製 オートグラフ100A型
測定条件:JIS K-6732(引張速度:50mm/min、試験温度:25℃)試験片の形状及び寸法:JIS K-7127試験片タイプ5に基づいた寸法。
単位:N/cm、JIS K 6732に準拠して測定した値
【0048】
【表1】
【0049】
表1中、各記号は以下の材料を意味する。[ ]内の数値は各層の厚みである。
・PET;ポリエチレンテレフタレート樹脂。三菱化学(株)製NOVAPEXI4を使用。
・PCTFE;ポリクロロ三フッ化エチレン樹脂。ダイキン工業(株)製DF0050-C1を使用。
・中間層1~4;下記表2に示す中間層1~4。表2中、各材料の比率は質量比(%)である。
【0050】
【表2】
【0051】
・評価
実施例1~6、比較例1の各積層体について、以下の各試験を行った。比較例2の積層体は、層間剥離を起こしたため評価することができなかった。
【0052】
[水蒸気透過率測定]
上述の<3層構成の積層体>に従って得られた積層体について、JIS K7129:2008(A法)に準じて、水蒸気透過度計(LYSSY社製、製品名「L80-5000」を使用し、セル温度40℃、相対湿度差90%RHの条件下にて測定した。水蒸気透過率は、24時間に透過した面積1平方メートル当たりの水蒸気のグラム数[g/(m・24h)]で表す。
【0053】
[成形性]
積層体成形性は、プレススルーパッケージを成形した際の成形不良の有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎;深絞り部分の偏肉、深絞り後の形状保持が非常に良好であった。
○;深絞り部分の偏肉、深絞り後の形状保持がおおむね良好であった。
△;深絞り部分がわずかに偏肉し、もしくは深絞り後の形状保持ができていないものがあった。
×; 深絞り部分が偏肉し、もしくは深絞り成形後に深絞り部分の形状が保持できていなかった。あるいは、積層体が相関剥離をして、成形後に成形物としての形状を保持できていなかった。
【0054】
【表3】
【0055】
上記結果に示した通り、本発明を適用し、上降伏点応力が1500N/cm以上である実施例1~6の積層体は、水蒸気透過率が低く、さらに成形性にも優れていた。上降伏点が1500N/cmを大きく下回る比較例1は、水蒸気透過率が高く、成形性も良好ではなかった。
【0056】
<5層構成の積層体>
≪実施例7~11、比較例3~4≫
基材層、中間層、フッ素系樹脂層、第2の中間層、第2の基材層をこの順で有する5層構成の積層体を製造した。表4に示す各層の原料となる樹脂をそれぞれ別々に加熱溶融したものを、同時多層押出成形が可能な押出機を用いて同時多層製膜を行って製膜し、基材層、中間層、フッ素系樹脂層、第2の中間層、第2の基材層をこの順で有する5層構成の積層体を得た。
【0057】
【表4】
【0058】
表4中、各記号は以下の材料を意味する。[ ]内の数値は各層の厚みである。
・PET;ポリエチレンテレフタレート樹脂。三菱化学(株)製NOVAPEXI4を使用。
・PCTFE;ポリクロロ三フッ化エチレン樹脂。ダイキン工業(株)製DF0050-C1を使用。
・中間層1~4;上記表2に示す中間層1~4。
【0059】
[上降伏点応力]
上記と同様の方法で測定した。比較例4は、積層体を製造後、層間剥離を起こしたため上降伏点応力を測定することができなかった。
【0060】
・評価
実施例7~11、比較例3の各積層体について、上記と同様の方法により、[水蒸気透過率]、[成形性]について評価した。その結果を表5に記載する。比較例4は、積層体を製造後、層間剥離を起こしたため評価することができなかった。
【0061】
【表5】
【0062】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例7~11の積層体は、水蒸気透過率が低く、成形性にも優れていた。比較例3は、水蒸気透過率は実施例と同等であったものの、成形性が良好ではなかった。
【符号の説明】
【0063】
1、2:積層体、11:フッ素系樹脂層、10:中間層、12:基材層、13:第2の中間層、14:第2の基材層
図1
図2