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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】路面撮影装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/01 20060101AFI20230519BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230519BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20230519BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20230519BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20230519BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230519BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
E01C23/01
G03B15/00 V
G03B15/00 U
G03B15/02 T
H04N5/222 100
H04N23/56
H04N7/18 C
H04N7/18 J
G01B11/30 W
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019138824
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021260
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術/モニタリングシステムの現場実証/空港管理車両を活用した簡易舗装路面点検システムの研究開発」事業、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】592090555
【氏名又は名称】パシフィックコンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】上野 功
(72)【発明者】
【氏名】小沼 恵太郎
(72)【発明者】
【氏名】二又 尚人
(72)【発明者】
【氏名】水上 敬介
(72)【発明者】
【氏名】松澤 晴季
(72)【発明者】
【氏名】澤田 茜
(72)【発明者】
【氏名】安達 慎一
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄章
(72)【発明者】
【氏名】熊田 和人
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101487224(CN,A)
【文献】実開昭61-102908(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101487223(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105067633(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104878680(CN,A)
【文献】特開2019-070254(JP,A)
【文献】特開2013-096740(JP,A)
【文献】特開昭59-091202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G03B 15/00
G03B 15/02
G01B 11/30
H04N 5/222
H04N 23/56
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載する,滑走路の路面を撮影するための路面撮影装置であって,
前記路面撮影装置は,
前記車両に取り付けた前後方向に伸縮可能な支持体と,撮影装置と,照明装置とを有しており,
前記支持体に前記撮影装置を取り付け,前記撮影装置の位置を前記車両の前後方向に変更可能であって,
撮影のときには,前記撮影装置が前記車両の後端部から後方に位置しており,前記車両の幅よりも長い前記照明装置の幅方向の中心は,前記撮影装置による撮影範囲の幅方向の中心よりも,光の照射方向とは反対側の位置にあり,
前記照明装置は,前記撮影装置の撮影範囲を,前記滑走路の路面に対して垂直または平行以外の所定の照射角度および前記滑走路の路面に掘られたグルービングの方向で光を照射する,
ことを特徴とする路面撮影装置。
【請求項2】
前記照明装置は,
撮影装置による撮影のときには前記照明装置の長さが前記車両の幅よりも長くし,運搬をするときには前記照明装置の長さが前記車両の幅よりも短くする,
ことを特徴とする請求項1に記載の路面撮影装置。
【請求項3】
前記照明装置は,
折り畳み機構,組み立て機構,伸縮機構のいずれかである長さ調整機構を有しており,
前記長さ調整機構により,撮影時と運搬時の照明装置の長さが調整可能である,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の路面撮影装置。
【請求項4】
前記組み立て機構として,
前記車両に取り付けた照明取付台に固定された光源取付部に,少なくとも一以上のほかの光源取付部を着脱可能に取り付ける,
ことを特徴とする請求項3に記載の路面撮影装置。
【請求項5】
前記支持体の後端部にある固定板に,前記撮影装置を着脱可能な固定部材によって固定する,
ことを特徴とする請求項1に記載の路面撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
路面を撮影する路面撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空港の滑走路や道路などの路面に凹凸などの異常(変状)があると事故につながることがあるため,路面の異常,特に凹凸の異常の有無を検出することが路面の管理からは重要である。そこで,道路などを走行する車両に所定の装置を搭載し,路面を撮影することで,路面の凹凸の検出を行うことが従来より行われている。
【0003】
たとえば下記非特許文献1乃至非特許文献3には,路面を撮影するカメラやGPS装置など,路面の撮影や位置の計測に用いる装置を搭載した専用車両の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】国土交通省東北地方整備局東北技術事務所,”保全技術の支援-道路”,[online],インターネット<URL:http://www.thr.mlit.go.jp/tougi/kensetsu/hozen/romen.html>
【文献】株式会社パスコ,”路面性状調査・道路インフラのトータルマネジメント”,[online],インターネット<URL:https://www.pasco.co.jp/products/real/>
【文献】中日本高速道路株式会社,”vol.04 高速で測定できる,路面性状測定車「ロードタイガー」”,[online],インターネット<URL:http://www.c-nexco.co.jp/corporate/safety/torikumi/torikumi/vol04/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1乃至非特許文献3に示すように,路面の凹凸などの異常の有無を検出する車両は,所定の計測装置を搭載した専用車両を用いていた。専用車両は高性能であり,路面のさまざまな性状を検出することはできるものの,その価格は極めて高価であり,専用車両の導入の妨げとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑み,市販車両にも搭載可能な路面撮影装置を発明した。
【0007】
第1の発明は,車両に搭載する,滑走路の路面を撮影するための路面撮影装置であって,前記路面撮影装置は,前記車両に取り付けた前後方向に伸縮可能な支持体と,撮影装置と,照明装置とを有しており,前記支持体に前記撮影装置を取り付け,前記撮影装置の位置を前記車両の前後方向に変更可能であって,撮影のときには,前記撮影装置が前記車両の後端部から後方に位置しており,前記車両の幅よりも長い前記照明装置の幅方向の中心は,前記撮影装置による撮影範囲の幅方向の中心よりも,光の照射方向とは反対側の位置にあり,前記照明装置は,前記撮影装置の撮影範囲を,前記滑走路の路面に対して垂直または平行以外の所定の照射角度および前記滑走路の路面に掘られたグルービングの方向で光を照射する,路面撮影装置である。
【0008】
本発明の路面撮影装置の構成とすることで,撮影装置を車両よりも後方に位置させ,その撮影範囲を照明装置で照射することで,市販車両にも搭載可能であって,簡便な構造とすることができる。
照明装置は路面の変状に対してくっきりした均質の陰影がでるように路面を照らすこと求められるので,平行光に近い光を当てることがこのましいが,平行光は水平に近ければ陰影が大きくなりすぎ,垂直に近ければ陰影が生じない。そのため,本発明のように,一定の照射角度で光を照射することが好ましい。
路面が滑走路のような場合には,路面の排水性を高めるため,グルービングが設けられていることがある。そのため照明装置からの光の照射によってグルービングが影にならないように,照射角度の方向はグルービングの方向とすることがよい。
照明装置が一定の照射角度で光を照射する場合,照明装置の幅方向の中心と撮影範囲の幅方向の中心とが一致していると,光の照射方向とは反対側の撮影範囲に光が十分に照射されないこととなる。そのため,照明装置の幅方向の中心を撮影範囲の幅方向の中心よりも,光の照射方向とは反対側の位置にずらすことで,撮影装置による撮影範囲の全体に亘って光を十分に照射することができる。
【0009】
第2の発明において前記照明装置は,撮影装置による撮影のときには前記照明装置の長さが前記車両の幅よりも長くし,運搬をするときには前記照明装置の長さが前記車両の幅よりも短くする,路面撮影装置のように構成することができる。
【0010】
撮影装置の撮影範囲が広くても照明がなければ撮影に十分な明るさを確保することができず,適切に撮影が行えない。そうすると,照明装置でできるだけ広い範囲を照らすことが望まれる。一方,照明装置の長さを車両の幅よりも長くすると,移動のために公道を走行することができず,車両の移動に制約が生じる。そこで,撮影を行うときには照明装置の長さを車両の幅よりも長くし,移動のために公道を走行するときには照明装置の長さを車両の幅よりも短くすることで,上記の相反する課題を解決することができる。
【0011】
第3の発明において,前記照明装置は,折り畳み機構,組み立て機構,伸縮機構のいずれかである長さ調整機構を有しており,前記長さ調整機構により,撮影時と運搬時の照明装置の長さが調整可能である,路面撮影装置のように構成することができる。
【0012】
照明装置の撮影時と運搬のための公道走行時の長さの調整は,本発明のような長さ調整機構を照明装置に備えることで実現できる。
【0013】
第4の発明において,前記組み立て機構として,前記車両に取り付けた照明取付台に固定された光源取付部に,少なくとも一以上のほかの光源取付部を着脱可能に取り付ける,路面撮影装置のように構成することができる。
【0014】
本発明のように構成することで,組み立て機構を簡便な構造で実現できる。
【0023】
の発明において,前記支持体の後端部にある固定板に,前記撮影装置を着脱可能な固定部材によって固定する,路面撮影装置のように構成することができる。
【0024】
撮影装置は振動に強い装置ではない。撮影を行わない場合にも車両に取り付けたままであると撮影装置に振動が伝わり,故障などの原因になりかねない。そこで,撮影を行わない場合には,撮影装置を取り外しておくことが望ましく,本発明の構造によってそれが容易に実現可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によって,市販車両にも搭載可能な簡便な構造の路面撮影装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の路面撮影装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図2】本発明の路面撮影装置を車両に取り付けた場合の側面図である。
図3】本発明の路面撮影装置を車両に取り付けた場合の背面図である。
図4】路面撮影装置で路面を撮影する際のイメージを模式的に示す図である。
図5】撮影装置を取付ビームに取り付ける状態を模式的に示す図である。
図6】撮影装置と位置情報計測装置とを取付ビームに取り付けた状態を上方から示す図である。
図7】照明装置を照明取付台の固定する状態の一例を模式的に示す図である。
図8】照明装置の一例を模式的に示す図である。
図9】撮影装置による撮影と照明装置による光の照射との関係を模式的に示す図である。
図10】路面変状検出装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図11】処理システムを機能させるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
図12】可視光画像情報の一例を模式的に示す図である。
図13】深度画像情報の一例を模式的に示す図である。
図14】位置情報の補正を模式的に示す図である。
図15】本発明の処理システムの処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の路面撮影装置1の構成を図1に模式的に示す。また路面撮影装置1を車両Cに搭載した状態を図2および図3に示す。図2は路面撮影装置1を車両Cに搭載した状態の側面図であり,図3は路面撮影装置1を車両Cに搭載した状態の背面図である。
【0028】
路面撮影装置1は,路面を走行する車両Cなどに搭載される装置であって,路面を撮影する少なくとも2台以上の撮影装置10と,位置情報を計測する位置情報計測装置11と,各撮影装置10を同期して撮影を行わせる同期装置12と,撮影装置10で撮影した撮影画像情報および撮影時刻と位置情報計測装置11で計測した位置情報および時刻とを記録する記録装置13と,路面を照らすための照明装置14とを有する。路面撮影装置1の電源(図示せず)は車両Cがハイブリッドカーや電気自動車を用いる場合には,車両Cの電源を利用することができる。また車両Cがハイブリッドカーや電気自動車ではない場合には,車両Cの内部にバッテリーを積載しておき,それを利用する。
【0029】
図4に路面撮影装置1で路面を撮影する際のイメージを模式的に示す。
【0030】
撮影装置10は車両Cが走行する路面を撮影する装置であって,少なくとも2台以上を備えている。撮影装置10としては,好ましくはラインセンサを用いることができるがそれに限定するものではない。ラインセンサは,線単位で路面状況を撮影する。たとえば1mm移動するたびに1mm分の路面を撮影をする。移動距離の検出は距離計を用いればよい。すなわち1mm移動することを距離計で検出することで各撮影装置10により撮影を行う。ラインセンサはレンズ10a1,10b1とラインセンサ素子10a2,10b2とを有する。ラインセンサのレンズ10a1,10b1は,路面を撮影可能なように,路面側に向けられている。ラインセンサは,路面の映像をレンズ10a1,10b1によってラインセンサ素子10a2,10b2に結像させ,その光量をビデオ信号に変換して画像情報として出力する。各ラインセンサが撮影した各画像情報は1mm分の画像情報である。そのため,ラインセンサは,所定の単位枚数分(たとえば1000枚分)の画像情報を連結し,一つの画像情報として後述する記録装置13に記録する。この単位枚数分の画像情報を撮影画像情報とする。
【0031】
位置情報計測装置11は,たとえばGPS装置であり,その位置情報を計測し,時刻情報を取得する。位置情報としてはたとえば緯度,経度が好ましいが,それに限定するものではない。位置情報計測装置11で計測した位置情報および時刻情報は,後述する記録装置13に記録する。位置情報計測装置11は,高精度のGPSレシーバー,たとえば「HemishereA101」などを用いることができる。
【0032】
位置情報計測装置11は,一定のタイミングごとに位置情報および時刻情報を取得する。たとえば1秒間に10回,1秒間に20回などのタイミングで位置情報および時刻情報を取得する。
【0033】
同期装置12は,路面撮影装置1における少なくとも2台以上の撮影装置10を同期させる。すなわち,同期装置12によって,2台以上の撮影装置10の撮影タイミングを同期させて路面を撮影する。
【0034】
記録装置13は,撮影装置10で撮影した撮影画像情報と,位置情報計測装置11で計測した位置情報とを記録する。記録装置13は,路面撮影装置1の一部として,車両Cに設けてもよいし,クラウドサーバなどを用い,車両Cの外部に設けてもよい。
【0035】
撮影装置10は路面の撮影を開始する際には,位置情報計測装置11が所定のPPS信号を用いて,撮影装置10に対して計測開始のコマンドを送る。このコマンドを受け付けた撮影装置10は,撮影を開始するとともに,内蔵した計時手段を「0」にリセットして計時を開始する。そして,撮影装置10で所定の単位枚数,たとえば1000枚分を撮影したところで,計時手段で計時している時刻(相対時刻)を,撮影画像情報に対応づけて記録する。そして,計時手段はそのまま計時を継続し,次の単位枚数分の画像情報を撮影した時点における時刻を,撮影画像情報に対応づけて記録する。これを撮影が終了するまで反復する。すなわち,撮影装置10で単位枚数の画像情報を撮影するごとに,計時手段で計時している時刻(相対時刻)を記録し,撮影画像情報に対応づけて記録しておく。それぞれの単位枚数の画像情報を撮影するのに要した時間は,撮影画像情報に対応づけて記録している相対時刻の差分を演算すれば算出できる。このように撮影装置10での撮影を開始するタイミングと,位置情報計測装置11で位置情報および時刻情報を取得したタイミングとが同期をしていることから,撮影画像情報ごとの時刻情報は,位置情報計測装置11で取得した位置情報に,上記算出した時間を加算することで算出することができる。撮影画像情報ごとの時刻情報は,後述する画像情報補正処理部の際に算出をしてもよいし,撮影装置10が撮影画像情報を記録装置13に記録する際に行うなど,任意のタイミングで行うことができる。
【0036】
上述の単位枚数の画像情報を撮影するのに要した時間の記録は,計時手段で単位枚数ごとの撮影に要した時間を計時するとともに,撮影画像情報の撮影順番を対応づけて記録しておくのでもよいし,ほかの方法であってもよい。
【0037】
なお,撮影装置10としてラインセンサを用いず,通常の光学式カメラなどを用いる場合には,その撮影をした画像情報が撮影画像情報であり,また撮影画像情報ごとの時刻情報を記録しておけばよい。
【0038】
路面撮影装置1は,図2図3に示すように,車両Cの後方に取り付けられる。車両Cのルーフキャリア4や屋根など車両Cの所定箇所には,左右2本の金属製の取付ビーム50(支持体)が取り付けられる。取付ビーム50(支持体)は伸縮可能となっていることが好ましい。取付ビーム50を伸縮可能とする場合,左右それぞれが少なくとも2本の支持体を用いることが好ましい。
【0039】
支持体のうち1本(第1の支持体50a)は,たとえばルーフキャリア4などの車両Cの所定箇所に固定的に取り付けられている。第1の支持体50aは中空状であって,他方の支持体(第2の支持体50b)がその内部に挿入される。これによって,第2の支持体50bは,第1の支持体50aの内壁に沿って前後方向に移動可能となる。第2の支持体50bのうち,第1の支持体50aに挿入される側とは反対側の端部付近に撮影装置10が取り付けられる。
【0040】
左右2本の取付ビーム50(第2の支持体50b)の後端部には固定板50cが取り付けられ,固定板50cには撮影装置10に取り付けたスライド板101を差し込んで固定可能な,たとえば凹字形状の差込部50dが設けられている。撮影装置10に取り付けたスライド板101を固定板50cの差込部50dに差し込み,複数のロックピンなどの固定部材102で固定する。これによって,撮影装置10を取付ビーム50に固定でき,路面撮影装置1を使用する状態において,車両Cの後端部よりも後方に位置させて,路面を上方から撮影することができる。
【0041】
なお,2台の撮影装置10の撮影範囲に重なる範囲が生じるように,車両Cの進行方向に対して垂直方向に並置して固定される。撮影装置10としてラインセンサを用いる場合には,ラインセンサの横軸が極力一致するように,並置して固定する。なお,ラインセンサの横軸が厳密に一致していない場合であっても,後述する深度画像情報生成処理部21の処理において,数十ピクセルかくの領域に対して平均の奥行き(高さおよび/または深さ)を算出するように処理をすれば,2台の撮影装置10で撮影した画像情報同士での多少の位置,角度の相違は,算出される奥行きの精度には大きな影響を与えない。
【0042】
撮影装置10のやや前方には,左右2本の取付ビーム50を架橋するように金属製の棒である架橋体110が設けられており,架橋体110には平板111が取り付けられている。平板111の上に位置情報計測装置11が取り付けられる。
【0043】
図5に撮影装置10を取付ビーム50に取り付ける状態を模式的に示す。図6は撮影装置10と位置情報計測装置11とを取付ビーム50に取り付けた状態を上方から見た図である。
【0044】
第1の支持体50aと第2の支持体50bには同径または略同径の複数の孔(図示せず)が設けられており,そこにロックピンなどの固定部材(図示せず)を挿通することで,第1の支持体50aと第2の支持体50bの前後方向の位置関係を固定する。孔の位置は,撮影装置10が車両Cの後端部よりも後方に位置するように固定する位置,撮影装置10が車両Cの後端部よりも前方に位置するように固定する位置の,少なくとも2カ所あるとよいが,これより多くてもよい。これによって,路面撮影装置1を使用しない場合には,撮影装置10や固定板50cを車両Cの後端部よりも前方に位置させて運搬(路面の撮影を行わずに,単に車両Cを移動させる)を容易にする一方,路面撮影装置1を使用する場合には,撮影装置10を車両Cの後端部よりも後方の位置に突出させて撮影を容易にするように,第2の支持体50bの前後方向の位置関係を調節できる。
【0045】
車両Cの後端部下方付近(バンパー付近)には,照明装置14を支持する金属製の照明取付台52を備えている。照明装置14は,LEDなどの複数の光源140を取り付けるための光源取付部141と,取付部材143と,光源取付部141の角度を調整する角度調整機構142を有する。角度調整機構142は,光源取付部141と取付部材143との間に設けられ,角度調整機構142によって光源取付部141の角度を調整し,光源140からの光の照射角度を変更できる。光源取付部141は,金属,たとえばアルミニウム製の中空状の角パイプを用い,その一つの外面に光源140を取り付ける。取付部材143は,たとえば金属製のL字形状をしており,一辺に孔部144がある。また照明取付台52の後端側に設けた孔部520があり,取付部材143の孔部144と,照明取付台52の孔部520との位置を合わせ,ロックピン521を側面から差し込むことで照明装置14を照明取付台52に固定する。図7に照明装置14を照明取付台52の固定する状態の一例を模式的に示す。
【0046】
照明装置14は,2つの撮影装置10の重畳した撮影範囲に対して光を照射できる程度の長さを有しており,車両Cの幅より長くてもよい。この場合,光源取付部141は,車両Cの幅よりも短くなるように,組み立て機構により組み立てる,折り畳み機構により折り畳める,または伸縮機構により伸縮するなど,照明装置14の長さを車両Cの幅よりも長くしたり,短くする調整機構(これらを総称して「長さ調整機構」という)を備えているとよい。このように照明装置14の長さ調整機構によって,路面撮影装置1を使用しない場合には照明装置14を車両Cの幅よりも短くして運搬を容易にする一方,路面撮影装置1を使用する場合には,照明装置14を車両Cの幅よりも長くして光を照射し,広い範囲を撮影可能にできる。
【0047】
図8は照明装置14の一例を示す図である。図8(a)は,照明装置14が光源取付部141a~141cの3つの部材から構成される場合であって,各光源取付部141を分離した状態を示す図である。図8(b)は光源取付部141a~141cをボルトなどで着脱可能に連結し,使用状態とした照明装置14を示す図である。図8の場合,光源取付部141aに,光源取付部141b,141cを着脱可能に固定することで,照明装置14の一体化と分離を実現できる。
【0048】
なお,折り畳み機構としては,たとえば光源取付部141aの右端部と光源取付部141bの左端部,光源取付部141aの左端部と光源取付部141cの右端部を,それぞれヒンジで固定し,折り畳み可能とすることで実現できる。また伸縮機構としては,上述の取付ビーム50のように,光源取付部141aを中空状に形成し,光源取付部141b,光源取付部141cをその内部に挿入することで,光源取付部141aの内壁に沿って幅方向に移動可能とすることで,伸縮可能とすることができる。
【0049】
図8の照明装置14の場合,光源取付部141aは照明取付台52に取り付けられる。照明取付台52に取り付けられる光源取付部141aの長さは,車両Cの幅よりも短い。そして,路面撮影装置1を使用する場合,光源取付部141aの右端に光源取付部141bを取り付け,光源取付部141aの左端に光源取付部141cを取り付ける。
【0050】
照明装置14は,路面の変状に対してくっきりした均質の陰影ができるように路面を照らすために,路面に平行光に近い光を当てる。そのため光源140としては指向性の高いLEDが好ましいが,それに限定されない。平行光は水平に近ければ陰影が大きくなりすぎ,垂直に近ければ陰影が生じないため,路面に対して垂直または平行以外の一定の角度B,たとえば30~60度程度の角度で照射するとよいが,それに限定しない。傾斜(照射角度B)の方向は,撮影対象とする路面の特性に合わせればよい。たとえば路面が滑走路の場合,グルービング(滑走路面に掘られた排水性を高めるための凹型の溝)が影にならないよう,グルービングの方向とする。グルービングは航空機が滑走する方向に垂直方向に形成され,撮影装置10による撮影の際には,航空機と同じ方向に車両Cが走行することが効率がよいので,照明装置14から出射する光は車両Cの横方向に傾けるとよい。撮影装置10による撮影と照明装置14による光の照射との関係を図9に示す。図9(a)では車両Cの後方から撮影装置10による撮影と照明装置14による光の照射との関係を示す図であり,図9(b)は車両Cの側方から撮影装置10による撮影と照明装置14による光の照射との関係を示す図である。撮影装置10の間隔Aは撮影対象とする幅方向の範囲,撮影装置10を取り付ける高さの位置関係,撮影装置10の画角にもよるが,たとえば260cm程度を撮影幅とし,撮影装置10を路面から140cm程度,撮影装置10の画角が約90度とすると,撮影装置10の間隔Aは,路面までの距離の約10%,たとえば14cm程度の間隔とすることが好ましい。
【0051】
また照明装置14の光源140は,路面に対して30~60度の程度の角度で照射することから,図3に示すように,撮影装置10を車両Cの幅方向の中心付近に設置した場合,照明装置14の幅方向の中心は,車両Cの幅方向の中心(撮影範囲の幅方向の中心)よりも光の照射する方向とは反対側に位置するように照明装置14を取り付けるとよい。なお,照明装置14の光源140から出射された光は,鏡などの反射部材に反射して照明装置14から出射してもよい。この場合,上記の照射角度は,光源140からの直接の角度ではなく,照明装置14から路面に対して出射する光の照射角度となる。
【0052】
すなわち,図3の場合,光源140は,車両Cの後方から見て左斜め下の方向に光を照射している。そのため,照明装置14の幅方向の中心位置は,車両Cの幅方向の中心(撮影範囲の幅方向の中心)よりも右側に位置するように照明装置14を取り付ける。これによって,路面にグルービングがあるような場合であって,撮影装置10を車両Cの幅方向の中心付近に取り付けた場合,撮影装置10の撮影範囲をカバーするように光源140からの光で照射することができる。
【0053】
また,光源取付部141が図8のように3つの部材に分離する場合,光源取付部141aの右端に取り付ける光源取付部141bの長さが,光源取付部141aの左端に取り付ける光源取付部141cの長さよりも長くなるようにしてもよい。
【0054】
架橋体110に取り付けた平板111から路面側に対して,複数,たとえば3本の支柱51a~51cが設けられており,それぞれ照明装置14と接合し,照明装置14を支持している。照明装置14の光源取付部141には支柱51b,51cを取り付ける取付部145があり,取付部145と支柱51b,51cの一端がボルトなどの固定部材によって固定される。支柱51b,51cの他の一端は固定板50cなどにボルトなどの固定部材によって固定される。また,照明装置14のうち,車両Cの幅方向からより長く突出している光源取付部141bについては,さらに車両C4の下方に取り付けた支柱51dによって支持される。支柱51dの一端は車両Cや照明取付台52とボルトなどの固定部材によって分離可能に接合しており,支柱51dの他の一端は光源取付部141bとボルトなどの固定部材によって分離可能に接合している。照明取付台52に固定された光源取付部141aと接合する支柱51aは固定的に取り付けられている。
【0055】
このように光源取付部141b,141c,141dと支柱51b,51c,51dは,ボルトなどの固定部材によって分離可能に取り付けられることで,路面撮影装置1の運搬時には,光源取付部141b,141cを光源取付部141aから分離して運搬可能とせしめる一方,撮影を行うときには,上述のように支柱51b,51c,51dを光源取付部141b,141cにボルトなどによって固定することで,車両Cの幅よりも広い範囲で光を照射し,撮影装置10による撮影を可能とせしめる。
【0056】
路面撮影装置1と処理システム2とを用いた路面変状検出装置3の処理の一例を説明する。路面撮影装置1は,撮影装置10で撮影し記録した撮影画像情報と位置情報計測装置11で計測した位置情報を用いて,処理システム2によって処理がされることで,路面の凹凸の異常(変状)を検出する。路面変状検出装置3の構成を模式的に示すのが図10である。また,図11に,処理システム2を機能させるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す。
【0057】
処理システム2は,路面撮影装置1を搭載した車両Cに搭載されていてもよいし,車両Cに搭載していなくてもよい。変状とは,路面の凹凸の異常であり,たとえば路面にある凹部(ポットホールや剥離など)や凸部(突出部)などがある。
【0058】
処理システム2は,路面撮影装置1で撮影した画像情報(撮影画像情報)を用いて,路面の凹凸の状況を示す深度画像情報を生成し,またそれらと計測した位置情報とを対応づける。処理システム2は,路面撮影装置1で撮影,計測した各情報が記録装置13に記録され,そこに記録された情報に基づいて処理を実行する。処理システム2の処理は,サーバやパーソナルコンピュータのほか,スマートフォンやタブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末などのコンピュータによって実現される。
【0059】
コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報の通信をする通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0060】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0061】
処理システム2のコンピュータは,一台のコンピュータであってもよいし,その機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0062】
本発明の処理システム2における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0063】
処理システム2は,画像情報処理部20と深度画像情報生成処理部21と位置情報取得処理部22と位置情報補正処理部23と出力処理部24とを有する。
【0064】
画像情報処理部20は,路面撮影装置1の記録装置13に記録した撮影画像情報を取得する。画像情報処理部20は,撮影装置10のうち,いずれか一つの撮影装置10を選択し,選択した撮影装置10で撮影した撮影画像情報を,深度画像情報に対応づける画像情報(可視光画像情報)とする。可視光画像情報は,時系列的につなげることで,路面の表面を連続させた画像情報とすることができる。可視光画像情報は,後述する深度画像情報と対応づける。可視光画像情報の一例を図12に示す。
【0065】
なお,画像情報処理部20は,撮影装置10のそれぞれで撮影した撮影画像情報の共通の撮影範囲のみをトリミングして可視光画像情報としてもよい。
【0066】
また可視光画像情報については,所定の台形補正処理やノイズ除去処理,伸縮処理,剪断変形処理,左右の一定の幅を切り捨てるトリミング処理など,適宜,必要な画像処理が行われていてもよい。
【0067】
深度画像情報生成処理部21は,画像情報処理部20で取得した各撮影装置10の各撮影画像情報に基づいて,深度画像情報を生成する。撮影装置10が2台ある場合,それぞれの撮影装置10で同一の路面の範囲を含むように,同期装置12で同期させて撮影をしている。そのときの2台の撮影装置10で撮影された2つの撮影画像情報に基づいて深度画像情報を生成する。深度画像情報とは,奥行き(高さおよび/または深さ)を示す情報を持つ画像情報である。深度画像情報を生成するには,各撮影装置10の視差情報を用いて生成することができる。たとえば対象物となる路面までの距離,撮影装置10の間隔(視差)などの情報をパラメータとし,OpenCVのStereoBMなどで提供されるライブラリ(ブロックマッチングアルゴリズムを利用したステレオ対応点探索)を用いて深度画像情報を生成することができる。深度画像情報は,撮影画像情報における画素の明度によってその奥行き(高さおよび/または深さ)が表現される画像情報であるが,画素の明度以外の情報によって奥行きが表現されてもよい。生成した深度画像情報は,その元となった撮影画像情報や可視光画像情報,その撮影画像情報と対応づけておく。深度画像情報生成処理部21で生成した深度画像情報の一例を図13に示す。
【0068】
深度画像情報については,所定の台形補正処理やノイズ除去処理,伸縮処理,剪断変形処理,左右の一定の幅を切り捨てるトリミング処理など,適宜,必要な画像処理が行われていてもよい。
【0069】
位置情報取得処理部22は,路面撮影装置1の記録装置13に記録した位置情報および時刻情報を取得する。
【0070】
位置情報補正処理部23は,位置情報計測装置11で計測した位置情報を,撮影装置10(とくに可視光画像情報とする撮影画像情報を撮影した撮影装置10)の位置情報に補正する。位置情報の補正は,位置情報取得処理部22で取得した位置情報について,補正対象とする撮影装置10と位置情報計測装置11との位置のずれ量(撮影装置10と位置情報計測装置11とが離れている距離を示す横方向のオフセット)から補正する。これを模式的に示すのが図14である。
【0071】
なお,画像情報処理部20において,可視光画像情報として撮影装置10のそれぞれで撮影した撮影画像情報の共通の撮影範囲のみをトリミングしている場合,得られた可視光画像情報の中央は,撮影装置10a,10bの中央線と一致することから,位置情報補正処理部23の補正処理を実行しなくてもよい。
【0072】
撮影画像情報,可視光画像情報,深度画像情報および位置情報(補正後の位置情報)は,それぞれ対応づけて所定の記憶装置71に記憶されている。
【0073】
出力処理部24は,撮影画像情報,可視光画像情報,深度画像情報,それらの位置情報とを対応づけて,表示装置72などに出力をする。たとえば操作者が表示装置72に表示している路面の画像情報(可視光画像情報)を表示している画面において,特定の位置を選択する操作を行うと,選択された位置の可視光画像情報と深度画像情報とを拡大表示する,などがある。
【0074】
つぎに本発明の路面撮影装置1を使用して路面の撮影,位置情報の計測を行う場合を説明する。なお,以下の説明では,計測対象の路面として滑走路の場合を説明する。
【0075】
滑走路の計測の作業を行う前に,路面撮影装置1を組み立てる作業をまず行う。
【0076】
計測対象となる滑走路に車両Cが到着すると,ルーフキャリア4に取り付けられている取付ビーム50の第1の支持体50aの内部に挿入されている第2の支持体50bを車両Cの後方側に引き出して,撮影装置10が車両Cの後端部よりも後方に位置するように固定する位置で,第1の支持体50aの孔と第2の支持体50bの孔との位置を合わせ,ロックピンなどの固定部材を挿通することで,取付ビーム50の前後方向の位置を固定する。
【0077】
そして第2の支持体50bの後端部にある固定板50cの差込部50dに,撮影装置10に取り付けられたスライド板101を上方から差し込み,スライド板101と固定板50cとをロックピンなどの固定部材102で固定をする。これによって,撮影装置10が第2の支持体50b(取付ビーム50)の後端部に固定され,路面を上方から撮影できる。
【0078】
また,左右の第2の支持体50bを架橋する架橋体110にある平板111の上には位置情報計測装置11が取り付けられている。
【0079】
つぎに,照明取付台52に固定されている照明装置14の光源取付部141aの右端部に光源取付部141bを取り付け,光源取付部141aの左端部に光源取付部141cを取り付ける。光源取付部141aは支柱51aによって固定されているので,固定板50cに支柱51b,支柱51cをボルトなどの固定部材によって取り付ける。また,支柱51bの他の一端は光源取付部141bの取付部145,支柱51cの他の一端は光源取付部141cの取付部145に,それぞれボルトなどの固定部材で固定をする。さらに,支柱51dの一端を車両Cのバンバー下方などにボルトなどの固定部材で固定し,また,支柱51dの他の一端を光源取付部141bにボルトなどの固定部材によって固定をする。
【0080】
そして,照明装置14の前後方向の角度を角度調整機構142を調節することで,撮影装置10の撮影範囲に光源140からの光が照射されるように調節する。
【0081】
以上のような作業を行うことで,図2および図3に示すように,路面撮影装置1を車両Cに設置することができる。
【0082】
このように路面撮影装置1を車両Cに設置すると,計測対象とする画像情報,位置情報を取得するため,計測対象とする滑走路を車両Cで走行する(S100)。
【0083】
滑走路を走行する際には,路面撮影装置1における位置情報計測装置11は,定期的に(たとえば1秒間に10回,20回),位置情報と時刻を取得する(S110)。取得した位置情報と時刻は,対応づけて記録装置13に記録する。また,各撮影装置10は,車両Cが所定の撮影単位,たとえば1mm移動することを距離計で計測すると,滑走路の路面を撮影する(S120)。各撮影装置10で撮影した各撮影画像情報とその撮影時刻とを対応づけて記録装置13に記録する。なお,路面撮影装置1には2台以上の撮影装置10a,10bがあり,同期装置12により各撮影装置10a,10bが同期して撮影を行うので,どの撮影装置10による撮影画像情報であるのか,撮影装置10ごとに識別可能となっている。これは撮影した撮影画像情報に撮影装置10の識別情報が付されていてもよいし,撮影画像情報を保存するフォルダが撮影装置10ごとに分かれていてもよい。
【0084】
以上のように,車両Cが滑走路を走行することで撮影した滑走路の路面の撮影画像情報と撮影時刻,位置情報と時刻とが記録装置13に記録される。
【0085】
そして記録装置13に記録された撮影装置10の撮影画像情報と撮影時刻,位置情報と時刻とに基づいて,処理システム2が各処理を実行する。処理システム2の処理は,バッチ処理でもリアルタイム処理でもよい。記録装置13が車両Cに設けられる場合には,処理システム2を構成するコンピュータが記録装置13から有線または無線で情報を取得してもよいし,車両Cの外,たとえばクラウドサーバに設けられる場合には,処理システム2を構成するコンピュータが当該クラウドサーバから情報を取得してもよい。
【0086】
まず画像情報処理部20は,路面撮影装置1の記録装置13に記録した撮影画像情報を取得する。この際には,各撮影装置10で撮影した撮影画像情報をそれぞれ取得する。そして,各撮影装置10で撮影した撮影画像情報について,撮影時刻ごとに対応する撮影画像情報に基づいて,深度画像情報を生成する(S130)。そして生成した深度画像情報と可視光画像情報と撮影画像情報とその撮影時刻とを対応づける。
【0087】
また画像情報処理部20は,路面撮影装置1の撮影装置10のうち,一台の撮影装置10で撮影した撮影画像情報(可視光画像情報)を時系列的につなげる。これによって,滑走路を連続的に撮影した可視光画像情報が生成できる。
【0088】
位置情報取得処理部22は,路面撮影装置1の記録装置13から位置情報および時刻を取得し,位置情報補正処理部23が,位置情報計測装置11で計測した位置情報を,可視光画像情報に用いた撮影装置10の位置情報に補正をする(S140)。以後の処理で用いる位置情報は,補正後の位置情報(撮影装置10の位置情報)となる。
【0089】
そして,撮影画像情報,可視光画像情報,深度画像情報,撮影時刻,位置情報とがそれぞれ対応づけて記憶される(S150)。なお各画像情報について,所定の画像処理,たとえば台形補正処理やノイズ除去処理,伸縮処理,剪断変形処理,左右の一定の幅を切り捨てるトリミング処理など,適宜,必要な画像処理が行われていてもよい。
【0090】
以上の処理を実行することで,滑走路の路面を撮影した可視光画像情報と深度画像情報と位置情報とを対応づけることができる。
【0091】
さらに,滑走路の路面の撮影後,操作者が表示装置72に表示している路面の画像情報(可視光画像情報)を表示している画面において,特定の位置を選択する操作を行うと,出力処理部24は,選択された位置の可視光画像情報と深度画像情報とを拡大表示する,などの出力処理を行う(S160)。
【0092】
これによって,表示装置72に表示する画面上で,路面の画像情報と,その深度画像情報とを視認することができ,路面の凹凸の変状を視認することができる。たとえば深度画像情報はそのまま表示するほか,画素の明度が深度情報(高さおよび/または深さを示す情報)として表示されるので,画素の明度に基づいて深度情報を数値やヒートマップなど,さまざまな表示形態で表示をしてもよい。また深度情報を用いて,凹凸の異常(変状)の範囲を特定する,などの処理を実行した上で,表示装置72に表示をしても良い。これによって,深度画像情報から,路面の凹凸に異常(変状)があることを検出することができるとともに,その位置も精度高く特定することができる。
【0093】
車両Cが滑走路の外から出て,移動のために公道を走行するような場合には,車両Cに設置した路面撮影装置1を,設置時とは逆の手順で取り外し,車両Cの内部に搭載し,運搬可能とする作業を行う。
【0094】
まず照明装置14の光源取付部141bの取付部145と支柱51b,光源取付部141cの取付部145と支柱51cとのボルトなどの固定部材による固定を外す。また光源取付部141bと支柱51dとのボルトなどの固定部材による固定を外す。そして,支柱51b,51cと固定板50cとのボルトなどの固定部材による固定を取り外し,同様に,支柱51dのボルトなどの固定部材による固定を取り外す。
【0095】
そして照明装置14の光源取付部141aの右端部に取り付けた光源取付部141b,光源取付部141aの左端部に取り付けた光源取付部141cをそれぞれ取り外す。
【0096】
これによって照明装置14を車両Cから取り外せる。
【0097】
つぎに,固定板50cとスライド板101とのロックピンなどの固定部材102による固定を外し,スライド板101を差込部50dに沿って上方に移動することで,撮影装置10を固定板50cから取り外す。これによって,撮影装置10を車両Cから取り外せる。
【0098】
第1の支持体50aの孔と第2の支持体50bの孔との位置を固定しているロックピンなどの固定部材を取り外し,第2の支持体50bを前方に移動させる。そして撮影装置10が車両Cの後端部よりも前方に位置するように固定する位置における,第1の支持体50aの孔と,第2の支持体50bの孔の位置を合わせ,先ほど取り外したロックピンなどの固定部材を創通することで,取付ビーム50の長さを縮めて,その位置を固定する。
【0099】
これによって,取付ビーム50が車両Cの後端部より前方に位置させることができる。
【0100】
取り外した各部材は,車両Cの中に搭載をする。
【0101】
このように路面撮影装置1の一部を車両Cから取り外すことで,公道を走行する際の支障を取り除くことができる。
【0102】
本発明は,本発明の趣旨を逸脱しない範囲において,適宜,設計変更が可能である。また処理は一例であり,その処理を異なる順番で実行することも可能である。さらに,画面の表示についても適宜,変更可能である。また,すべての機能を備えずとも,一部の機能のみを備えるのであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によって,市販車両Cにも搭載可能な簡便な構造の路面撮影装置1を実現することができる。
【符号の説明】
【0104】
1:路面撮影装置
2:処理システム
3:路面変状検出装置
4:ルーフキャリア
C:車両
10:撮影装置
10a1,10b1:レンズ
10a2,10b2:ラインセンサ素子
11:位置情報計測装置
12:同期装置
13:記録装置
14:照明装置
20:画像情報取得処理部
21:深度画像情報生成処理部
22:位置情報取得処理部
23:位置情報補正処理部
24:出力処理部
50:取付ビーム
50a:第1の支持体
50b:第2の支持体
50c:固定板
50d:差込部
51:支柱
51a~d:支柱
52:照明取付台
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
101:スライド板
102:固定部材
110:架橋体
111:平板
140:光源
141:光源取付部
142:角度調整機構
143:取付部材
144:孔部
145:取付部
520:孔部
521:ロックピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15