(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】無負極リチウム金属電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20230519BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20230519BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230519BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20230519BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20230519BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20230519BHJP
H01M 4/72 20060101ALI20230519BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20230519BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20230519BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20230519BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M4/72 A
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/44
(21)【出願番号】P 2018247277
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0001849
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】張 元碩
(72)【発明者】
【氏名】姜 孝▲ラン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 之來
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/143274(WO,A1)
【文献】特表2017-534164(JP,A)
【文献】国際公開第2017/214276(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/146357(WO,A1)
【文献】特表2019-501480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M50/40
H01M4/72
H01M12/06、12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体上部に配置された正極活物質層と、を含む正極と、
前記正極上部に配置された負極集電体と、
前記正極と負極集電体との間に配置され、リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上と、第1液体電解質と、を含む複合電解質と、
前記正極と複合電解質との間に配置された液体非透過性イオン伝導性複合膜と、を含
み、
初回充電以前に、前記負極集電体上部に、リチウム金属薄膜を含まない、無負極リチウム金属電池。
【請求項2】
前記液体非透過性イオン伝導性複合膜は、正極と複合電解質とを物理的及び化学的に分離することを特徴とする請求項1に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項3】
前記液体非透過性イオン伝導性複合膜は、固体イオン伝導体膜、固体イオン伝導体と非イオン伝導体とを含んだ複合膜、またはその組み合わせ物であることを特徴とする請求項1または2に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項4】
前記固体イオン伝導体は、Li
1+xTi
2-xAl(PO
4)
3(LTAP)(0≦X≦4)、Li-Ge-P-S-系物質、Li
1+x+yAl
xTi
2-xSi
yP
3-yO
12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO
3、Pb(Zr,Ti)O
3(PZT)、Pb
1-xLa
xZr
1-yTi
yO
3(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、PB(Mg
3Nb
2/3)O
3-PbTiO
3(PMN-PT)、HfO
2、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、Na
2O、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2、SiO
2、SiC、リチウムホスフェート(Li
3PO
4)、リチウムチタンホスフェート(Li
xTi
y(PO
4)
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(Li
xAl
yTi
z(PO
4)
3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li
1+x+y(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
2-xSi
yP
3-yO
12(O≦x≦1、O≦y≦1)、リチウムランタンチタネート(Li
xLa
yTiO
3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(Li
xGe
yP
zS
w、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムニトリド(Li
xN
y、0<x<4、0<y<2)、SiS
2(Li
xSi
yS
z、0<x<3、0<y<2、0<z<4)系ガラス、P
2S
5(Li
xP
yS
z、0<x<3、0<y<3、0<z<7)系ガラス、Li
2O、LiF、LiOH、Li
2CO
3、LiAlO
2、Li
2O-Al
2O
3-SiO
2-P
2O
5-TiO
2-GeO
2系セラミックス、ガーネット系セラミックス(Li
3+xLa
3M
2O
12(0≦x≦5、M=Te、NbまたはZr))、またはそれらの組み合わせ物であることを特徴とする請求項3に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項5】
前記固体イオン伝導体は、Li
1.4Ti
1.6Al
0.4P
3O
12、Li
1.3Ti
1.7Al
0.3P
3O
12、Li
10GeP
2S
12、Li
7La
3Zr
2O
12(LLZ)、Li
2PO
3(LiPON)、Li
5La
3Ta
2O
12、La
0.33La
0.55TiO
3、Li
1.5Al
0.5Ge
1.5P
3O
12、Li
3BO
3、Li
4SiO
4-Li
3PO
4、Li
4SiO
4、Li
1/3La
1/3TiO
3、Li
2O-Al
2O
3-SiO
2-P
2O
5-TiO
2-GeO
2、またはその組み合わせ物であることを特徴とする請求項3に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項6】
前記液体非透過性イオン伝導性複合膜の厚みは、10ないし150μmであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項7】
前記非イオン伝導体が、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリ2-ビニルピリジン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシ共重合体、フッ素化された環状エーテル、ポリエチレンオキシドジアクリレート、ポリエチレンオキシドジメタクリレート、ポリプロピレンオキシドジアクリレート、ポリプロピレンオキシドジメタクリレート、ポリメチレンオキシドジアクリレート、ポリメチレンオキシドジメタクリレート、ポリ(C
1-C
5)アルキルジオールジアクリレート、ポリ(C
1-C
5)アルキルジオールジメタクリレート、ポリジビニルベンゼン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカルボキシル酸、ポリスルホン酸、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリ(ナフタレン-2,6-ジイル)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルブチラル-コ-ビニルアルコール-コ-酢酸ビニル)、ポリ(メチルメタクリレート-コ-エチルアクリレート)、ポリ塩化ビニル-コ-酢酸ビニル、ポリ(1-ビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリビニルエーテル、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、スチレン-ブタジエンラバー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンラバー、スルホネート化スチレン/エチレン-ブチレントリブロックコポリマー、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化脂肪族ウレタンアクリレート、エトキシル化C
1-C
5アルキルフェノールアクリレート及びC
1-C
5アルキルアクリレートからなる群のうち選択される1以上のアクリレートのうちから選択された1つのアクリレートモノマーから得られた高分子、またはその組み合わせ物からなる群から選択された1以上の高分子であることを特徴とする請求項3に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項8】
前記複合電解質の第1液体電解質は、リチウム塩と第1有機溶媒とを含み、
前記第1有機溶媒は、グライム系化合物、ジオキソラン系化合物、エーテル系化合物、フッ素化されたエーテル系化合物及びスルホン系化合物のうちから選択された1以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項9】
前記正極活物質層は、リチウム塩と第2有機溶媒とを含む第2液体電解質を含み、
前記第2有機溶媒は、グライム系化合物、ジオキソラン系化合物、エーテル系化合物、フッ素化されたエーテル系化合物、スルホン系化合物及びカーボネート系化合物のうちから選択された1以上であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項10】
前記第2液体電解質は、第1液体電解質と互いに異なる組成を有することを特徴とする請求項9に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項11】
前記第1液体電解質と第2液体電解質は、それぞれイオン性液体及び高分子イオン性液体のうちから選択された1以上をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項12】
前記第1液体電解質と第2液体電解質とにおいて、リチウム塩の含量は、それぞれ1ないし8Mであることを特徴とする請求項9に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項13】
前記第1液体電解質と第2液体電解質とにおいて、リチウム塩の含量は、それぞれ2ないし5Mであることを特徴とする請求項9に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項14】
前記リチウム金属合金は、i)リチウム(Li)と、ii)Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siは、除外される)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snは、除外される)及びMnO
x(0<x≦2)のうちから選択された1以上と、を含むことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項15】
前記リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上の含量は、複合電解質総重量100重量部を基準にし、1ないし50重量部であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項16】
前記リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上のサイズは、5ないし50μmであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項17】
前記リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上は、リチウム金属粉末、リチウム金属合金粉末、またはその混合物であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項18】
前記複合電解質と液体非透過性イオン伝導性複合膜との間に、多孔性高分子膜をさらに含むことを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項19】
前記多孔性高分子膜は、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリエチレンテレフタレート膜、ポリブチレンテレフタレート膜、ポリエステル膜、ポリアセタル膜、ポリアミド膜、ポリカーボネート膜、ポリイミド膜、ポリエーテルケトン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリフェニレンオキシド膜、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリエチレンナフタレート膜及びその組み合わせ物のうちから選択された1以上であることを特徴とする請求項18に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項20】
前記リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上は、無負極リチウム金属電池の充放電後のネックワークを形成し、相互連結された構造を有することを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項21】
前記複合電解質内に、不織布が含まれていることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項22】
前記不織布が、セルロース、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールのうちから選択された1以上の不織布であることを特徴とする請求項21に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項23】
前記無負極リチウム金属電池は、液体非透過性イオン伝導性複合膜保護用隔壁をさらに含むことを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項24】
前記負極集電体は、メッシュ型集電体であることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項25】
前記複合電解質の第1液体電解質は、リチウム塩と第1有機溶媒とを含み、
前記リチウム塩は、LiSCN、LiN(CN)
2、Li(CF
3SO
2)
3C、LiC
4F
9SO
3、LiPF
3(C
2F
5)
3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiB(C
2O
4)
2、LiPF
6、LiPF
5(CF
3)、LiPF
5(C
2F
5)、LiPF
5(C
3F
7)、LiPF
4(CF
3)
2、LiPF
4(CF
3)(C
2F
5)、LiPF
3(CF
3)
3、LiPF
4(C
2O
4)
2、LiBF
4、LiBF
3(C
2F
5)、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI(LiN(SO
2CF
3)
2))、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI、LiN(SO
2F)
2)、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiCF
3SO
3、LiAsF
6、LiSbF
6、LiClO
4、またはその混合物であることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項26】
前記複合電解質は、半固体またはゲル形態を有することを特徴とする請求項1から25のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項27】
前記複合電解質の厚みは、10ないし150μmであることを特徴とする請求項1から26のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項28】
前記複合電解質がリチウム金属及びリチウム金属合金において、充放電後にも、前記負極集電体と接触することを特徴とする請求項1に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項29】
前記複合電解質内において、前記リチウム金属及び前記リチウム金属合金のうちから選択された1以上と、第1液体電解質とが接触する面積が、同一体積のリチウム金属シート及びリチウム金属合金シートのうちから選択された1以上と、第1液体電解質とが接触する面積の2倍以上であることを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載の無負極リチウム金属電池。
【請求項30】
リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上、及び第1液体電解質を混合し、複合電解質形成用組成物を準備する段階と、
負極集電体上部に、前記複合電解質形成用組成物を供給し、それを乾燥させ、複合電解質を製造する段階と、
前記複合電解質、液体非透過性イオン伝導性複合膜、正極活物質層を含む正極、及び正極集電体を配置し、請求項1ないし29のうちいずれか1項に記載の無負極リチウム金属電池を製造する段階と、を含む無負極リチウム金属電池の製造方法。
【請求項31】
前記負極集電体上部に、複合電解質形成用組成物を供給した後、不織布を配置することを特徴とする請求項30に記載の無負極リチウム金属電池の製造方法。
【請求項32】
前記複合電解質と正極との間に、多孔性高分子膜をさらに配置することを特徴とする請求項30または31に記載の無負極リチウム金属電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無負極リチウム金属電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、現在商用化された二次電池のうち、エネルギー密度が最も高い高性能二次電池であり、例えば、電気自動車のような多様な分野でも使用される。
【0003】
リチウム二次電池の負極としては、リチウム金属薄膜が利用される。そのようなリチウム金属薄膜は、リチウムを板状に圧延して製造するのが一般的である。ところで、そのようなリチウム金属薄膜を負極として具備したリチウム二次電池においては、リチウム金属薄膜上にデンドライトが形成されて成長されることにより、リチウム二次電池のエネルギー密度及び長寿命の特性が満足すべきレベルに至ることができず、改善の余地が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、無負極リチウム金属電池を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、また、前述の無負極リチウム金属電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面により、
正極集電体と、前記正極集電体上部に配置された正極活物質層と、を含む正極と、
前記正極上部に配置された負極集電体と、
前記正極と負極集電体との間に配置され、リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上と、第1液体電解質と、を含む複合電解質と、
前記正極と複合電解質との間に配置された液体非透過性イオン伝導性複合膜を含む無負極と、が提供される。
【0006】
他の側面により、
リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上、並びに第1液体電解質を混合し、複合電解質形成用組成物を準備する段階と、
負極集電体上部に、前記複合電解質形成用組成物を供給し、それを乾燥させ、複合電解質を製造する段階と、
前記複合電解質、液体非透過性イオン伝導性複合膜、正極活物質層を含む正極と、正極集電体とを配置し、前述の無負極リチウム金属電池を製造する段階と、を含む無負極リチウム金属電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明による無負極リチウム金属電池は、既存の無負極セルで発生する充放電効率の低下などの問題点を解決し、エネルギー密度が高く、寿命特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】一具現例による無負極リチウム金属電池の構造を概略的に示す図面である。
【
図1B】
図1Aの無負極リチウム金属電池を構成する液体非透過性イオン伝導性複合膜及び複合電解質及び負極集電体の構造を示す図面である。
【
図1C】一具現例による複合電解質において、リチウム金属粒子の細部的な構造と、リチウム金属粒子の膨脹メカニズムとについて説明するための図面である。
【
図2A】実施例1によって製造された無負極リチウム金属電池のサイクル数による容量変化を示すグラフである。
【
図2B】実施例1によって製造された無負極リチウム金属電池のサイクル数によるクーロン効率変化を示すグラフである。
【
図3A】比較例1によって製造された無負極リチウム金属電池のサイクル数による容量変化を示すグラフである。
【
図3B】比較例1によって製造された無負極リチウム金属電池のサイクル数によるクーロン効率変化を示すグラフである。
【
図4A】比較例2によって製造された無負極リチウム金属電池のサイクル数による容量変化を示すグラフである。
【
図4B】比較例2によって製造された無負極リチウム金属電池のサイクル数によるクーロン効率変化を示すグラフである。
【
図5A】実施例1及び比較例1によって製造された無負極リチウム金属電池のサイクル数による容量変化を示すグラフである。
【
図5B】実施例1及び比較例2によって製造された無負極リチウム金属電池において、律速性能評価結果を示すグラフである。
【
図6A】実施例1及び比較例1によって製造された無負極リチウム金属電池の初期インピーダンス特性を示すグラフである。
【
図6B】実施例1及び比較例1によって製造された無負極リチウム金属電池において、1サイクル後のインピーダンス特性を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一具現例による無負極リチウム金属電池及びその製造方法について、さらに詳細に説明する。
正極集電体と、前記正極集電体上部に配置された正極活物質層と、を含む正極;前記正極上部に配置された負極集電体;前記正極と負極集電体との間に配置され、リチウム金属及びリチウム金属合金のうちから選択された1以上と、第1液体電解質と、を含む複合電解質;及び前記正極と複合電解質との間に配置された液体非透過性イオン伝導性複合膜を含む無負極リチウム金属電池が提供される。
【0010】
負極としてリチウム金属薄膜を採用したリチウム金属電池は、充放電後、リチウム金属薄膜上部にリチウムデンドライトが形成されて成長されることにより、リチウム損失が発生する。その結果、リチウム金属電池の寿命及び容量特性が低下してしまう。そして、リチウム金属薄膜が板型形態を有するために、充電時、上部側または下部側だけに膨脹が可能である。その結果、充放電後、リチウム金属電池の体積膨脹を、所望の範囲レベルに制御し難く、それに対する改善が要求される。
【0011】
本発明者らは、前述の問題点を解決するために、板状のリチウム負極薄膜を具備せず、負極集電体のみを利用することにより、エネルギー密度を改善させながら、液体電解質に、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上を分散または分布させた複合電解質を利用し、それを採用したリチウム金属電池の充放電効率を向上させる。一具現例によるリチウム金属電池は、複合電解質内のリチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上が、独立した金属粒子状態で膨脹自在であるために、前述の従来のリチウム金属電池の短所を解決することができる。
【0012】
本明細書において用語「液体非透過性イオン伝導性複合膜」は、液体が通過または透過されずにイオン伝導性を有する複合膜を意味する。負極がない無負極リチウム金属電池において、複合電解質と正極との間に、液体非透過性イオン伝導性複合膜を配置すれば、正極と複合電解質とが物理的及び化学的に分離され、分離セルを形成する。そのような分離セルにおいては、正極及び複合電解質において、それぞれ異なる電解質を使用することができる。そのように最適化された電解質を使用し、高電圧酸化、デンドライト成長による電解液消耗のような電気化学的短所を補完することができる。その結果、従来のリチウム金属電池において、正極電解質及び負極電解質として、1種の電解質を利用する場合と比較し、広い電気化学的酸化及び還元電位窓を具現することができ、寿命特性が向上する。
【0013】
本明細書において用語「無負極リチウム金属電池」は、初回充電(first charge)以前に、アノード集電体上部に、負極活物質がないリチウム金属電池を示す。当該技術分野に周知されているように、無負極リチウム金属電池は、初回充電サイクル後、負極が存在するとしても、無負極リチウム金属電池製造時には負極がない。それについてさらに詳細に説明すれば、開示された無負極リチウム金属電池は、i)グラファイトのようなリチウム吸蔵/放出自在な負極活物質がない場合、ii)電池組み立て時または初回充電後、負極集電体上に、正極厚を基準にして、10%以下の負極厚を有するリチウム金属薄膜またはリチウム合金薄膜が配置された場合、及び/あるいはiii)電池組み立て時及び初回充電以前、負極活物質層が使用されないリチウム金属電池を意味する。ここで、「負極厚」は、負極集電体と負極活物質層との総厚を意味する。それにより、無負極リチウム金属電池は、負極を有するが、電池製造時、別個の負極活物質がリチウム金属電池内に存在せず、用語「無負極」が使用される。
【0014】
液体非透過性イオン伝導性複合膜としては、例えば、固体イオン伝導体(solid ion conductor)膜、固体イオン伝導体と非イオン伝導体とを含んだ複合膜またはその組み合わせ物を使用することができる。
【0015】
固体イオン伝導体は、Li1+xTi2-xAl(PO4)3(LTAP)(0≦X≦4)、Li-Ge-P-S-系物質、Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、PB(Mg3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、HfO2、SrTiO3、SnO2、CeO2、Na2O、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、Al2O3、TiO2、SiO2、SiC、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li1+x+y(Al,Ga)x(Ti,Ge)2-xSiyP3-yO12(O≦x≦1、O≦y≦1)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムニトリド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、SiS2(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)系ガラス、P2S5(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)系ガラス、Li2O、LiF、LiOH、Li2CO3、LiAlO2、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2-GeO2系セラミックス、ガーネット(garnet)系セラミックス(Li3+xLa3M2O12(0≦x≦5、M=Te、NbまたはZr))のうちから選択された1以上、またはそれらの組み合わせ物である。
【0016】
固体イオン伝導体は、例えば、Li1.4Ti1.6Al0.4P3O12、Li1.3Ti1.7Al0.3P3O12、Li10GeP2S12、Li7La3Zr2O12(LLZ)、Li2PO3(LiPON)、Li5La3Ta2O12、La0.33La0.55TiO3、Li1.5Al0.5Ge1.5P3O12、Li3BO3、Li4SiO4-Li3PO4、Li4SiO4、Li1/3La1/3TiO3、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2-GeO2、またはその組み合わせ物を挙げることができる。
【0017】
非イオン伝導体は、例えば、高分子でもある。該高分子は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリ2-ビニルピリジン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシ共重合体、フッ素化された環状エーテル、ポリエチレンオキシドジアクリルレート、ポリエチレンオキシドデ-メタクリルレイト、ポリプロピレンオキサイドジアクリレート、ポリプロピレンオキシドジメタクリレート、ポリメチレンオキシドジアクリレート、ポリメチレンオキシドジメタクリレート、ポリ(C1-C5)アルキルジオールジアクリレート、ポリ(C1-C5)アルキルジオールジメタクリレートポリジビニルベンゼン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリカルボキシル酸、ポリスルホン酸、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ(p-フェニレン)、ポリアセチレン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリ(ナフタレン-2,6-ジイル)、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルブチラル-co-ビニルアルコール-co-酢酸ビニル)、ポリ(メチルメタクリレート-co-エチルアクリレート)、ポリ塩化ビニル-コ-酢酸ビニル、ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリビニルエーテル、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、スチレン-ブタジエンラバー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンラバー、スルホネート化スチレン/エチレン-ブチレントリブロックコポリマー、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化脂肪族ウレタンアクリレート、エトキシル化C1-C5アルキルフェノールアクリレート及びC1-C5アルキルアクリレートからなる群のうち選択される1以上のアクリレートのうちから選択された1つのアクリレートモノマーから得られた高分子のうちから選択された1以上、またはそれらの組み合わせ物からなる群から選択された1以上である。
【0018】
液体非透過性イオン伝導性複合膜として、米国特許公開US-2015-0079485-A1、US-2016-0181585-A1、US-2017-0093002-A1及びUS-2018-0040904-A1に開示された複合膜を利用することができる。複合膜は、複数個の貫通ホール(through hole)を有する有機膜、及び貫通ホールに配置された複数個のイオン伝導性無機物粒子を含む複合膜である。
【0019】
複合膜において高分子の含量は、例えば、複合膜総重量100重量部を基準にし、25ないし100重量部、50ないし80重量部、例えば、50ないし75重量部、例えば、55ないし70重量部であり、高分子は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂またはポリエチレンである。複合膜は例えば、LTAPとポリビニルアルコールとを含んだ複合膜、またはLTAPとエポキシ樹脂とを含んだ複合膜でもある。LTAPは、例えば、Li1.4Ti1.6Al0.4P3O12、Li1.3Ti1.7Al0.3P3O12のようなリチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)を挙げることができる。
【0020】
液体非透過性イオン伝導性複合膜の厚みは、10ないし150μm、例えば、15ないし90μm、例えば、20ないし50μmである。
【0021】
複合電解質がリチウム金属及びリチウム合金の中での充放電後にも、負極集電体と接触する。そして、複合電解質内において、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上と、第1液体電解質とが接触する面積が、同一体積のリチウム金属シート及びリチウム合金シートのうちから選択された1以上と第1液体電解質とが接触する面積の2倍以上である。
【0022】
図1A及び
図1Bを参照し、一具現例による無負極リチウム金属電池用複合電解質と、それを採用した無負極リチウム金属電池とについてさらに詳細に説明する。
図1Bは、
図1Aの無負極リチウム金属電池において、液体非透過性イオン伝導性複合膜、複合電解質及び負極集電体領域を示したものである。
【0023】
一具現例による無負極リチウム金属電池は、
図1Aに図示されているように、板状のリチウム金属薄膜を具備せず、負極集電体11上部に、複合電解質12が配置された構造を具備している。複合電解質12は、第1液体電解質12bに、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上12aが分散された形態を有する。
【0024】
複合電解質12は、
図1Bに図示されているように、不織布12cをさらに含んでもよい。不織布12cは、第1液体電解質12bと、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上12aとを担持する役割を行うことができる。不織布12cは、省略可能である。例えば、負極集電体がメッシュタイプである場合、不織布を使用しなくてもよい。複合電解質12内において、第1液体電解質12bが等しく分布される。
【0025】
第1液体電解質12bは、リチウム塩と第1有機溶媒とを含む。リチウム塩と第1有機溶媒は、リチウム金属電池で一般的に使用されるものであるならば、全て使用可能である。第1液体電解質12bは、例えば、高濃度電解液でもある。高濃度電解液は、例えば、1ないし8M、例えば、2Mないし5M、または2ないし4Mのリチウム塩を含んだ電解液を有することができる。
【0026】
正極集電体14上に正極活物質層15が配置され、正極18を形成する。正極活物質層15は、正極活物質を含み、第2液体電解質が含まれてもよい。正極18と複合電解質12との間には、それらを分離する液体非透過性イオン伝導性複合膜13が存在する。液体非透過性イオン伝導性複合膜13は、正極18中に含有された第2液体電解質が、複合電解質12側に移動するか、あるいは複合電解質12の第1液体電解質が正極側に移動することを防ぐ。
【0027】
液体非透過性イオン伝導性複合膜13と複合電解質12との間には、それらの電気化学的な接触を防ぐための多孔性高分子膜16が配置される。
図1A及び
図1Bには、多孔性高分子膜16がいずれも含まれているが、必要によっては、省略することもできる。そして、
図1Aに図示されているように、複合電解質12を保護するための隔壁17が設けられる。隔壁17は、複合電解質12を保護する機能が可能であるならば、
図1Aに図示された構造以外に、他の構造を有することも可能である。隔壁17は、例えば、電池ケース(ポーチ)材料によってもなる。
【0028】
図1Bの不織布12cは、気孔度が、10ないし90体積%、例えば、10ないし80体積%、例えば、10ないし50体積%、例えば、25ないし50体積%であり、平均気孔サイズは、0.1ないし10μm、例えば、0.01ないし8μm、例えば、0.1ないし1.0μmであり、該不織布は、例えば、セルロース、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ナイロン及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールのうちから選択された1以上の不織布でもある。
【0029】
多孔性高分子膜16は、その厚みが5ないし30μm、例えば、5ないし25μm、例えば、10ないし20μmである。多孔性高分子膜は、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリエチレンテレフタレート膜・ポリブチレンテレフタレート膜のようなポリエステル膜、ポリアセタル膜、ポリアミド膜、ポリカーボネート膜、ポリイミド膜、ポリエーテルケトン膜、ポリエーテルスルホン膜、ポリフェニレンオキシド膜、ポリフェニレンスルフィド膜、ポリエチレンナフタレート膜、またはその組み合わせ物である。
【0030】
図1Cは、一具現例による複合電解質において、リチウム金属粒子の細部的な構造、及び膨脹メカニズムついて説明したものである。それを参照すれば、一具現例によるリチウム金属電池は、第1液体電解質12bを含んだ複合電解質12内のリチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上12aが、独立した金属粒子状態で、放射形に膨脹自在であり、充放電過程において、リチウム損失を防ぐことができる。
【0031】
一般的なリチウム金属電池においては、充電時、リチウムイオンがリチウム金属薄膜に電着される。しかし、一具現例によるリチウム金属電池において、複合電解質は、放電時、リチウムイオンを提供し、充電時、リチウムイオンが、さらに複合電解質内のリチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上に移動され、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上の表面に電着される。そのような過程を介して、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上は、互いに連結された構造体を形成することができ、そのような構造体は、負極集電体の少なくとも一面に結合及び/または配置される。
【0032】
一具現例による複合電解質の第1液体電解質、及び正極の第2液体電解質は、互いに異なってもよい。第1液体電解質と第2液体電解質とが異なる組成であるとき、無負極リチウム金属電池の高電圧酸化、デンドライト成長による電解液損失のような電気化学的短所を補完することができる。
【0033】
第1液体電解質及び第2液体電解質は、リチウム塩と有機溶媒とを含む。第1液体電解質及び第2液体電解質は、それぞれイオン性液体及び高分子イオン性液体のうちから選択された1以上をさらに含んでもよい。
【0034】
イオン性液体は、常温(25℃)で溶融状態であるイオン性物質であり、陽イオンと陰イオンとを含むものであるならば、制限なしに使用可能である。イオン性液体は、陽イオンとしては、以下に限定されるものではないが、イミダゾリウム、アンモニウム、ピロリジニウム及びピペリジニウムのうちから選択された1以上の陽イオンを含み、陰イオンとしては、以下に限定されるものではないが、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、フルオロボレート及びフルオロホスフェートのうちから選択された1以上の陰イオンを含む。陽イオンの具体的な例としては、トリエチルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム、エチルメチルイミダゾリウム・ブチルメチルイミダゾリウムなどのイミダゾリウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムなどのピロリジニウム、またはメチルプロピルピペリジニウムの陽イオンを有することができる。また、陰イオンの具体的な例としては、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(BETI)、テトラフルオロボレート(BF4)またはヘキサフルオロホスフェート((PF6)の陰イオンが挙げられる。
【0035】
イオン性液体は、具体的な例を挙げれば、[emim]Cl/AlCl3(emim=ethyl methyl imidazolium:エチルメチルイミダゾリウム)、[bmpyr]NTf2(bppyr=butyl methyl pyridinium:ブチルメチルピリジニウム)、[bpy]Br/AlCl3(bpy=4,4’-bipyridine:4,4’‐ビピリジン)、[choline]Cl/CrCl3・6H2O、[[emim]OTf/[hmim]I(hmim=hexyl methy limidazolium:ヘキシルメチルイミダゾリウム)、[choline]Cl/HOCH2CH2OH、[Et2MeN(CH2CH2OMe)]BF4(Et=ethyl:エチル、Me=methyl:メチル、Pr=propyl:プロピル、Bu=butyl:ブチル、Ph=phenyl:フェニル、Oct=octyl:オクチル、Hex=hexyl:ヘキシル)、[Bu3PCH2CH2C8F17]OTf(OTf=trifluoromethane sulfonate:トリフルオロメタンスルホネート)、[bmim]PF6(bmim=butyl methy limidazolium:ブチルメチルイミダゾリウム)、[bmim]BF4、[omim]PF6(omim=octyl methy limidazolium:オクチルメチルイミダゾリウム)、[Oct3PC18H37]I、[NC(CH2)3mim]NTf2(mim=methy limidazolium:メチルイミダゾリウム)、[Pr4N][B(CN)4]、[bmim]NTf2、[bmim]Cl、[bmim][Me(OCH2CH2)2OSO3]、[PhCH2mim]OTf、[Me3NCH(Me)CH(OH)Ph]NTf2、[pmim][(HO)2PO2](pmim=propyl methy limidazolium:プロピルメチルイミダゾリウム)、[(6-Me)quin]NTf2(bquin=butyl quinolinium:ブチルキノリウム、[bmim][Cu2Cl3]、[C18H37OCH2mim]BF4(mim=methy limidazolium:メチルイミダゾリウム)、[heim]PF6(heim=hexyl ethy limidazolium:ヘキシルエチルイミダゾリウム)、[mim(CH2CH2O)2CH2CH2mim][NTf2]2(mim=methy limidazolium:メチルイミダゾリウム)、[obim]PF6(obim=octyl buty limidazolium:オクチルブチルイミダゾリウム)、[oquin]NTf2(oquin=octyl quinolinium:オクチルキノリニウム)、[hmim][PF3(C2F5)3]、[C14H29mim]Br(mim=methy limidazolium:メチルイミダゾリウム)、[Me2N(C12H25)2]NO3、[emim]BF4、[MeN(CH2CH2OH)3]、[MeOSO3]、[Hex3PC14H29]NTf2、[emim][EtOSO3]、[choline][ibuprofenate]、[emim]NTf2、[emim][(EtO)2PO2]、[emim]Cl/CrCl2、[Hex3PC14H29]N(CN)2などでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、イオン性液体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0036】
高分子イオン性液体は、イミダゾリウム基を含む有機陽イオン、及び有機または無機の陰イオンによって構成された高分子形態のイオン性化合物である。高分子イオン性液体の陽イオンとしては、ポリ(1-ビニル-3-アルキルイミダゾリウム)、ポリ(1-アリル-3-アルキルイミダゾリウム)またはポリ(1-(メタ)アクリロイルオキシ-3-アルキルイミダゾリウム)の陽イオンを含む。羅列された陽イオンにおいて、アルキルは、C1ないしC6の炭素数を有する。高分子イオン性液体の陰イオンとしては、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-、(CF3CF2SO2)2N-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-またはその組み合わせを含む。
【0037】
高分子イオン性液体は、例えば、ポリ(1-ビニル-3-アルキルイミダゾリウム)、ポリ(1-アリル-3-アルキルイミダゾリウム)、ポリ(1-(メタ)アクリロイルオキシ-3-アルキルイミダゾリウム)などの陽イオンを含む。前記羅列された陽イオンにおいて、アルキルは、C1ないしC6の炭素数を有する。そして、高分子イオン性液体は、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを有することができる
【0038】
リチウム金属及び前記リチウム合金のうちから選択された1以上のサイズは、5ないし50μm、例えば、10ないし50μm、例えば、20ないし50μmである。本明細書において、用語「サイズ」は、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上が粒子である場合には、平均粒径を示し、粒子ではないか、あるいは非球形粒子である場合には、長軸長を示す。
【0039】
リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上のサイズは、レーザ回折式粒度分布測定(レーザ回折散乱法)によって測定される。また、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上の平均粒径は、コーティング膜を有するリチウム粒子の場合、深部のリチウム粒子のみを利用することにする。リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上は、例えば、リチウム金属粉末、リチウム合金粉末、またはその混合物である。
【0040】
リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上は、大気中において、安定したコーティング膜を有するように安定化処理されたものを使用することができる。コーティング膜は、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)・スチレンブタジエンゴム(SBR)などの有機ゴム、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVA)などの有機樹脂、Li2CO3やLi2Oのような金属炭酸塩や金属酸化物などの無機化合物などによってもコーティングされる。そのように、コーティング膜を有する場合、反応性の高いLiが、大気中の水分や、分散媒中の水分及び/または溶媒と反応しない。
【0041】
リチウム合金は、リチウム(Li)と、Mg、In、Ca、Ti、V、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siは、除外される)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族ないし16族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snは、除外される)及びMnOx(0<x≦2)のうちから選択された1以上と、を含む。リチウム合金は、例えば、リチウム-アルミニウム(Li-Al)合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-スズ合金、リチウム-インジウム合金、リチウム-カルシウム合金、リチウム-チタン合金、リチウム-バナジウム合金などを挙げることができる。
【0042】
リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上の含量は、例えば、複合電解質の総重量100重量部を基準にし、1ないし50重量部、例えば、5ないし40重量部、例えば、15ないし30重量部である。リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上の含量が前記範囲であるとき、初期効率と容量特性とにすぐれる無負極リチウム金属電池を製造することができる。一具現例による無負極リチウム金属電池においては、負極集電体上に負極活物質を別途に塗布する必要なしに、第1液体電解質に付加するリチウム金属の量を制御し、エネルギー密度を、目的とする通りに高めることができる。
【0043】
第1液体電解質の第1有機溶媒は、グライム系化合物、ジオキソラン系化合物、フッ素化されたエーテル系化合物、及びスルホン系化合物のうちから選択された1以上を含む。第2液体電解質は、第1液体電解質の第1有機溶媒として羅列された物質及び/またはカーボネート系化合物も使用することができる。
【0044】
グライム系化合物は、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)、エチレングリコールジエチルエーテル(1,2-ジエトキシエタン)、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ブチレングリコルジメチルエーテル、ブチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、ジブチレングリコールジメチルエーテル、トリブチレングリコールジメチルエーテル、テトラブチレングリコールジメチルエーテル、ジブチレングリコールジエチルエーテル、トリブチレングリコールジエチルエーテル及びテトラブチレングリコールジエチルエーテルからなる群から選択された1以上である。そして、フッ素化されたエーテル系化合物は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル及び2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルのうちから選択された1以上である。
【0045】
ジオキソラン系化合物は、1,3-ジオキソラン、4,5-ジメチル-ジオキソラン、4,5-ジエチル-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、4-エチル-1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン及び2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソランのうちから選択された1以上である。スルホン系化合物は、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルメチルスルホンのうちから選択された1以上である。
【0046】
カーボネート系化合物としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどを使用する。
【0047】
第1有機溶媒は、例えば、フッ素化されたエーテル系化合物を含んでもよい。
フッ素化されたエーテル系化合物の含量は、第1有機溶媒総含量を基準にし、50体積%以下、40体積%以下または30体積%以下である。他の一具現例によれば、フッ素化されたエーテル系化合物の含量は、第1有機溶媒総含量を基準にし、例えば、0.1ないし50体積%、例えば、0.5ないし40体積%、例えば、1ないし30体積%である。
【0048】
フッ素化されたエーテル系化合物は、引火点が約80℃以上と高く、難燃性にすぐれ、それを液体電解質の有機溶媒として使用すれば、高温安定性が改善されたリチウム金属電池を製造することができる。そして、フッ素置換エーテル系化合物は、-CH2-O-モイエティを中心に、フッ素置換官能基が結合された構造を有しており、極性が小さい。従って、そのようなフッ素置換エーテル系化合物は、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)(モノグライム)(DME)のようなリチウムイオンをソルベーションすることができる高溶解能エーテル系溶媒との混和性にすぐれる。
【0049】
フッ素置換エーテル化合物は、下記化学式1で表示される化合物でもある。
(化学式1)
R-CH2-O-CnF2nH
前記化学式1で、Rは、Cm+1HmF2mまたはCmF2m+1であり、nは、2ないし5の整数であり、mは、1ないし5の整数である。
【0050】
前記化学式1で表示されるフッ素置換エーテル化合物は、例えば、HCF2CF2CH2OCF2CF2H、HCF2CF2CH2OCF2CF2CF2CF2H、HCF2CF2OCH2CF3、HCF2CF2OCH2CH2OCF2CF2H、HCF2CF2OCH2CH2OCF2CF2H、HCF2CF2OCH2CH2CH2OCF2CF2H、HCF2CF2CH2OCF2CF2CF2H、HCF2CF2OCH2CH2OCF2CF2CF2H及びHCF2CF2OCH2CH2CH2OCF2CF2CF2Hからなる群から選択された1以上である。
【0051】
前記化学式1で表示されるフッ素置換エーテル化合物は、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルまたは2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルでもある。
【0052】
リチウム塩は、当該技術分野において、電解質製造時、一般的に使用されるリチウム塩であるならば、いずれも使用可能である。リチウム塩は、例えば、LiSCN、LiN(CN)2、Li(CF3SO2)3C、LiC4F9SO3、LiPF3(C2F5)3、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiPF6、LiPF5(CF3)、LiPF5(C2F5)、LiPF5(C3F7)、LiPF4(CF3)2、LiPF4(CF3)(C2F5)、LiPF3(CF3)3、LiPF4(C2O4)2、LiBF4、LiBF3(C2F5)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB(LiB(C2O4)2))、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI(LiN(SO2CF3)2))、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI(LiN(SO2F)2))、LiN(SO2C2F5)2、LiCF3SO3、LiAsF6、LiSbF6、LiClO4、またはその混合物を挙げることができる。
【0053】
第1液体電解質及び第2液体電解質の粘度は、25℃で60cP以下、例えば、50cP以下、例えば、30cP以下、例えば、10cP以下、例えば、5cP以下、例えば、0.01ないし5cP、例えば、0.05ないし5cP、例えば、0.05ないし2.5cPでもある。そのような粘度範囲であるとき、電解質内イオン移動が自由であり、イオン伝導度にすぐれる。そして、第1液体電解質及び第2液体電解質のイオン伝導度は、25℃で1.0mS/cm以上、例えば、2.0mS/cm以上、例えば、4.0mS/cm以上、例えば、1ないし10mS/cm、1ないし7.5mS/cm、例えば、1ないし5mS/cmである。
【0054】
第1液体電解質と第2液体電解質は、前述の有機溶媒以外に、ガンマブチロラクトン、スクシノニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン及びニトロベンゼンのうちから選択された1以上をさらに含んでもよい。
【0055】
複合電解質は、例えば、ゲル形態または半固体(semi-solid)形態を有することができる。複合電解質がゲル形態または半固体形態を有することが、完全固体形態である場合と比較し、充放電時、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上が膨脹自在であるために、前述の従来のリチウム金属電池の短所を解決することができる。
【0056】
複合電解質は、例えば、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上と、第1液体電解質とからもなる。
【0057】
一具現例による複合電解質は、負極集電体上部に、複合電解質形成用組成物を供給し、それを乾燥させて製造することができる。
【0058】
負極集電体は、メッシュ型集電体でもある。負極集電体としてメッシュ型集電体を利用すれば、複合電解質が負極集電体上で効果的に担持される。従って、前述の複合電解質内に不織布を使用しなくともよい。複合電解質形成用組成物は、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上と、第1液体電解質とを混合して準備される。そのような複合電解質形成用組成物は、ゲル形態または半固体形態を有する。組成物の粘度は、特別に制限されるものではないが、例えば、90cps、例えば、80cps、例えば、約60cP以下、例えば、25から60cP以下、例えば、50cP以下、例えば、30cP以下、例えば、10cP以下、例えば、25から5cP以下、例えば、4.5cP以下、例えば、4cP以下、例えば、1ないし5cp、例えば、2ないし4.5cp、例えば、2.5ないし4.0cpである。
【0059】
負極集電体上部に、複合電解質形成用組成物を供給してから、その上部に不織布を選択的に配置することができる。
【0060】
前記結果物上部に、液体非透過性イオン伝導性複合膜、正極活物質層を含む正極、及び正極集電体を積層すれば、無負極リチウム金属電池を製造することができる。
【0061】
一具現例による無負極リチウム金属電池においては、複合電解質は、放電時、リチウムイオンを正極に放出し、充電時、正極から来たリチウムイオンは、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上の金属粒子に移動され、金属粒子表面にも電着される。正極から来たリチウムイオンは、負極集電体上部にも電着される。
【0062】
前述のように、一具現例によるリチウム金属電池は、充電時、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上及び/または負極集電体上に、リチウムが電着される。そして、無負極リチウム金属電池の充電後、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上が、ネットクワークを形成し、相互連結された構造を有することができる。従って、充放電後、従来のリチウム負極薄膜は、上下に膨脹され、それにより、応力(stress)が発生するところに比べ、
図1Cに示されたように一具現例による無負極リチウム金属電池においては、リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1以上が放射形に膨脹され、それによる応力がほとんど発生せず、エネルギー密度が改善され、充放電後、電池の膨張率が低下する。
【0063】
一具現例による無負極(anodeless)リチウム金属電池において、リチウム金属及び/またはリチウム合金が結合して得られた構造体が、負極集電体の少なくとも一面上に、粒子または膜の形態に配置された構造を有することもできる。膜は、連続的であってもよく、不連続であってもよい。リチウム金属及び/またはリチウム合金が結合して得られた構造体が、負極集電体上部に膜を形成する場合、その膜厚は、正極厚を基準にし、10%以下、例えば、5%以下、例えば、2%以下、例えば、1%以下、例えば、0.1ないし1%でもある。他の一具現例によれば、膜厚は、正極厚を基準にし、0.1ないし10%、例えば、0.1ないし5%でもある。
【0064】
他の一具現例によれば、無負極リチウム金属電池の充電後、負極集電体上部に、連続的であったり、不連続的であったりするリチウム金属層が形成されない。
【0065】
正極は、下記方法によって製造される。例えば、正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされて正極板が製造される。代案として、正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて正極板が製造される。正極は、前述の形態に限定されるものではなくて、前記形態以外の形態でもある。
無負極リチウム金属電池の複合電解質は、リチウム金属及びリチウム合金のうち、充放電後にも前記負極集電体と接触することができる。充放電後にも、負極集電体と複合電解質との間にリチウム金属層が均一に形成されないか、全く形成されない場合、複合電解質と負極集電体が接触を保持することができる。
前記複合電解質内で前記リチウム金属及びリチウム合金のうちから選択された1つ以上と、第1液体電解質が接触する面積が、同じ体積のリチウム金属シート及びリチウム合金シートのうちから選択された1つ以上と第1液体電解質が接触する面積の2倍以上である。
【0066】
正極活物質は、リチウム複合酸化物として、当業界で一般的に使用されるものであるならば、制限なしにいずれも使用される。
【0067】
例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組み合わせのうちから選択される金属と、リチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができ、その具体的な例としては、LiaA1-bB’bD2(前記式で、0.90≦a≦1.8及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bB’bO2-cDc(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’bO4-cDc(前記式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobB’cDα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αFα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cDα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’α(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiI’O2;LiNiVO4;Li3-fJ2(PO4)3(0≦f≦2);Li3-fFe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のうちいずれか一つで表現される化合物を使用することができる。
【0068】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0069】
ここで、化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできるということは言うまでもない。コーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティン元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含んでもよい。それらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質でもある。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。コーティング層の形成工程は、化合物にそのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング法、浸漬法など)によってコーティングすることができるならば、いかなるコーティング方法を使用してもよく、それについては、当該分野の当業者に周知内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0070】
導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト微粒子、天然グラファイト、人造グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバカーボンナノチューブ、銅・ニッケル・アルミニウム・銀などの金属粉末、金属ファイバまたは金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、導電剤として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0071】
バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース-スチレン-ブタジエンラバー(SMC/SBR)共重合体、スチレンブタジエンゴム系ポリマー、またはその混合物が使用される。バインダは、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、バインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0072】
溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0073】
前述の正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム金属電池で一般的に使用されるレベルである。リチウム金属電池の用途及び構成により、導電剤、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略されてもよい。
【0074】
一具現例による無負極リチウム金属電池は、セパレータをさらに具備することができる。
セパレータの具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリフッ化ビニリデンの単層膜、またはそれらの2層以上の多層膜が使用され、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータのような混合多層膜を有することができる。
【0075】
電池ケースは、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、リチウム金属電池は、大型薄膜型電池でもある。リチウム金属電池は、リチウムイオン電池でもある。
【0076】
リチウム金属電池は、例えば、リチウム空気電池、リチウム‐硫黄電池などを挙げることができる。
【0077】
一具現例によるリチウム金属電池は、寿命特性及び高率特性にすぐれるので、電気車両(EV:electric vehicle)にも使用される。例えば、プラグインハイブリッド車(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)のようなハイブリッド車にも使用される。また、多量の電力保存が要求される分野にも使用される。例えば、電気自転車、電動工具などにも使用される。
【0078】
一具現例によるリチウム金属電池をいくつかスタックする場合、正極と液体非透過性イオン伝導性複合膜との間にゲル形態の電解質を配置することができる。ゲル形態の電解質は、例えば、VDF-HFP共重合体とリチウム塩と有機溶媒とを含む。
【0079】
以下、下記実施例を挙げ、さらに詳細に説明するが、下記実施例にのみ限定されることを意味するものではない。
【実施例】
【0080】
〔実施例1:無負極リチウム金属電池〕
負極集電体である銅薄膜上部に、複合電解質形成用組成物を供給し、その上部にセルロース不織布(気孔度:50%、厚み:30μm)を配置し、それを乾燥させ、負極集電体上に、複合電解質(厚み:約50μm)を形成した。
【0081】
該複合電解質形成用組成物は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)に、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)(モノグライム)(DME)を混合して得た3.5Mの第1液体電解質に、リチウム金属粉末(サイズ:約50μm)を混合して準備した。該リチウム金属粉末の含量は、該複合電解質の総重量(リチウム塩、有機溶媒及びリチウム金属粉末の総重量)100重量部を基準にし、約20重量部である。
【0082】
それと別途に、正極を下記方法によって製造した。
正極用液体電解質は、0.4M LiTFSI、0.6Mリチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、及びエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートを3:7体積比で混合して準備した。
【0083】
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電剤(Super-P;Timcal Ltd)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びN-メチルピロリドンを混合し、正極活物質層形成用組成物を得た。該正極活物質層形成用組成物において、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電剤及びPVDFの混合重量比は97:1.5:1.5であった。前記正極活物質層形成用組成物をアルミニウムホイル(厚み:約15μm)上部にコーティングし、25℃で乾燥させた後、乾燥された結果物を、真空、約110℃で乾燥させて正極を製造した。
【0084】
前記正極と、負極集電体上の複合電解質との間に、約90μm厚のLTAP(Li1.4Ti1.6Al0.4P3O12)膜を配置し、それらを結合し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0085】
〔実施例2:無負極リチウム金属電池〕
複合電解質の製造時、リチウム金属粉末のサイズが20μmに変化されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0086】
〔実施例3,4:無負極リチウム金属電池〕
リチウム金属粉末の含量が、複合電解質の総重量100重量部を基準にし、約1重量部及び50重量部にそれぞれ変化されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0087】
〔実施例5,6:無負極リチウム金属電池〕
3.5Mの第1液体電解質の代わりに、2Mの第1液体電解質、及び4Mの第1液体電解質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0088】
〔実施例7,8:無負極リチウム金属電池〕
LTAP膜の厚みが20μm及び45μmにそれぞれ変化されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0089】
〔実施例9:無負極リチウム金属電池〕
負極集電体として銅メッシュを使用し、銅メッシュ上部に、複合電解質形成用組成物を供給し、その上部にセルロース不織布を配置しないことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0090】
実施例9において、負極集電体として銅メッシュを利用すれば、銅メッシュが、複合電解質形成用組成物を担持することができ、実施例1で使用されたセルロース不織布を使用する必要がない。
【0091】
〔実施例10,11:無負極リチウム金属電池〕
複合電解質の厚みが10μmないし150μmにそれぞれ変化されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0092】
〔比較例1:無負極リチウム金属電池〕
負極集電体である銅薄膜を1M HClに10分間浸した後、それを蒸溜水及びアセトンで洗浄して乾燥させた。
【0093】
それと別途に、正極は、アルミニウムホイルに、下記方法によって実施し、ニッケルコバルトマンガン(NCM)薄膜をコーティングした。
【0094】
正極用液体電解質は、0.4M LiTFSI、0.6M LiBOB、及びエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを3:7体積比で混合して準備した。
液体電解質は、正極と後述する固体電解質との間に介在された。
【0095】
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電剤(Super-P;Timcal Ltd)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びN-メチルピロリドンを混合し、正極活物質層形成用組成物を得た。該正極活物質層形成用組成物において、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電剤及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合重量比は、97:1.5:1.5であった。
【0096】
前記正極活物質形成用組成物を、アルミニウムホイル(厚み:約15μm)上部にコーティングし、25℃で乾燥させた後、乾燥された結果物を、真空、約110℃で乾燥させて正極を製造した。
【0097】
前記正極、及び負極集電体である銅薄膜上部に、負極電解質として、3.5M LiFSIに、エチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)(モノグライム)(DME)を混合して得た液体電解質を使用し、無負極リチウム金属電池を製造した。
【0098】
固体電解質においては、約90μm厚のLTAP(Li1.4Ti1.6Al0.4P3O12)膜を利用し、該固体電解質を挟み、一面に正極を配置し、固体電解質の他の一面に、負極電解質である液体電解質及び負極集電体を順次に配置し、それらを結合し、無負極リチウム金属電池を製造した。前記固体電解質と正極との間には、正極電解質を配置した。
【0099】
比較例1において、液体電解質として使用された液体電解質は、実施例1の複合電解質と異なり、リチウム金属を含んでいなかった。そのような比較例1のリチウム金属電池は、リチウムが電着されるときに発生するリチウム・集電体金属間核生成電位により、電解液還元が容易に発生した。そして、リチウムデンドライト形成を促進させ、リチウム金属電池の充放電効率が低下し、寿命特性が低下した。
【0100】
〔比較例2:リチウム金属電池〕
リチウム金属負極(厚み:約20μm)と正極との間に、セパレータとして、Celgard 2045を配置し、電解質として、LiTFSIに、有機溶媒であるエチレングリコールジメチルエーテル(1,2-ジメトキシエタン)(モノグライム)(DME)を混合して得た3.5Mの電解液を利用した。
【0101】
前記正極は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電剤(Super-P;Timcal Ltd)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びN-メチルピロリドンを混合し、正極組成物を得た。該正極組成物において、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、導電剤及びPVDFの混合重量比は、97:1.5:1.5であった。次に、前記正極組成物をアルミニウムホイル(厚み:約15μm)上部にコーティングし、25℃で乾燥させた後、乾燥された結果物を、真空、約110℃で乾燥させて製造した。
【0102】
〔評価例1:インピーダンス分析〕
1)初期インピーダンス
実施例1及び比較例1によって製造されたリチウム金属電池の初期インピーダンス特性を測定した。リチウム金属電池のインピーダンスは、インピーダンス分析機(Solartron 1260A Impedance/Gain-Phase Analyzer)を使用し、2プローブ(probe)法により、25℃、106ないし0.1MHz周波数範囲で、10mVの電圧バイアスを与え、抵抗を測定することにより、初期インピーダンスを評価した。
【0103】
実施例1及び比較例1によって製造されたリチウム金属電池製造後の経過時間が24時間であるとき、インピーダンス測定結果に係わるナイキストプロット(Nyquist plot)を
図6Aにそれぞれ示した。
図6Aにおいて、電極のバルク抵抗は、半円の位置及び大きさで決定され、それは、半円の左側x軸切片と、右側x軸切片との差を示す。
図6Aを参照すれば、実施例1の無負極リチウム金属電池は、比較例1の無負極リチウム金属電池と比較し、バルク抵抗が大きく低下しているということが分かった。
【0104】
2)1サイクル後のインピーダンス
実施例1及び比較例1によって製造されたリチウム金属電池の1サイクル後のインピーダンス特性を、下記方法によって測定した。
【0105】
各リチウム金属電池に対して、25℃で、0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流で、カットオフ(cut-off)した。次に、放電時に、電圧が2.8V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成段階、最初サイクル)。そのような充放電過程を2回さらに実施し、化成過程を完了した。
【0106】
各リチウム金属電池に対して、25℃で、0.1C rate(0.38mA/cm
2)の電流で、電圧が4.40V(対Li)に至るまで定電流充電を実施した後、次に、定電圧モードで4.40Vを維持しながら、0.05C rateの電流で、カットオフした。そのように1回充電を実施した後、リチウム金属電池のインピーダンスは、インピーダンス分析機(Solartron 1260A Impedance/Gain-Phase Analyzer)を使用し、2プローブ法により、25℃、106ないし0.1MHz周波数範囲で、10mVの電圧バイアスを与え、抵抗を測定することにより、1サイクル後のインピーダンスを評価した。評価結果を
図6Bに示した。
【0107】
それを参照すれば、比較例1の無負極リチウム金属電池は、1サイクル充放電後、充放電を実施する前と比較し、抵抗は、低減されるが、実施例1の無負極リチウム金属電池と比較し、相変らず増大された結果を示した。
【0108】
〔評価例2:充放電特性〕
実施例1及び比較例1,2によって製造されたリチウム金属電池に対して、25℃で、0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流で、カットオフした。次に、放電時、電圧が2.8V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成段階、最初サイクル)。そのような充放電過程を2回さらに実施し、化成過程を完了した。前記化成段階を経たリチウム金属電池を、常温(25℃)で、リチウム金属対比で3.0~4.4Vの電圧範囲で、i)0.5Cまたはii)1Cの定電流で充電を実施した後、0.2Cで、3.0Vのカットオフ電圧(cut-off voltage)に達するまで、0.72mA電流で定電流放電を行った。前述の充放電過程を反復的に実施し、充放電過程を総50回反復的に実施した。
【0109】
クーロン効率は、下記数式1から計算される。
(数式1)
クーロン効率(%)=(各サイクル放電容量/各サイクル充電容量)×100
【0110】
前述の充放電特性評価結果を、
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、
図4A及び
図4Bに示した。
図2A及び
図2Bは、それぞれ実施例1によって製造されたリチウム金属電池のサイクル数による容量変化及びクーロン効率変化を示したものである。
図3A及び
図3Bは、それぞれ比較例1によって製造されたリチウム金属電池のサイクル数による容量変化及びクーロン効率変化を示したものであり、
図4A及び
図4Bは、それぞれ比較例2によって製造されたリチウム金属電池のサイクル数による容量変化及びクーロン効率変化を示したものである。
【0111】
それを参照すれば、比較例1の無負極リチウム金属電池は、
図3A、
図3Bに図示されているように、充放電効率(クーロン効率)が90%未満であり、10サイクル内の容量維持率が50%未満と低下した。
【0112】
比較例2のリチウム金属電池は、
図4A及び
図4Bに図示されているように、クーロン効率(充放電効率)は、約99.8%を維持し、0.5C基準50サイクル後の容量維持率が98%を維持した。それと比較し、実施例1のリチウム金属電池は、
図2A及び
図2Bに図示されているように、充放電効率にすぐれ、0.5C基準50サイクル以内で容量維持率低下がなかった。
【0113】
また、実施例3~11によって製造されたリチウム金属電池の充放電特性は、前述の実施例1のリチウム金属電池の充放電特性を評価する方法と同一に評価した。
【0114】
評価結果、実施例3~11のリチウム金属電池は、実施例1のリチウム金属電池と比較し、同一であるか、あるいは類似した充放電特性を示した。
【0115】
実施例1及び比較例1に対するリチウム金属電池に対して、25℃で、0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流で、カットオフした。次に、放電時、電圧が2.8V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成段階、最初サイクル)。そのような充放電過程を2回さらに実施し、化成過程を完了した。
【0116】
前記化成段階を経たリチウム金属電池に対して、常温(25℃)で、リチウム金属対比で3.0~4.4Vの電圧範囲で、i)0.5Cまたはii)1Cの定電流で充電を実施した後、0.2Cで、3.0Vのカットオフ電圧に達するまで、0.72mA電流で定電流放電を行った。
【0117】
前述の充放電過程を反復的に実施し、合計100回実施した。サイクル数による放電容量変化結果の一部を
図5Aに示した。
【0118】
それを参照すれば、比較例1のリチウム金属電池は、15回サイクル後、動作せず、実施例1のリチウム金属電池は、100サイクル後にも、放電容量にすぐれていた。実施例1のリチウム金属電池は、170サイクル後の容量維持率が約80%であった。
【0119】
〔評価例3:律速性能〕
実施例1及び比較例2のリチウム金属電池の律速性能を下記方法によって評価した。
実施例1及び比較例2のリチウム金属電池に対して、定電流(0.2C)及び定電圧(4.3V、0.05Cカットオフ)条件で充電させた後、10分間休止(rest)させ、定電流(0.1C、0.5Cまたは1C)条件下で3.0Vになるまで放電させた。すなわち、充放電サイクル回数が増加するとき、周期的に放電速度をそれぞれ0.1C、0.5Cまたは1Cに変化させることにより、前記各リチウム金属電池の高率放電特性(rate capability)(律速性能ともいう)を評価した。ただし、1~3回充放電時には、セルを0.1Cの速度で放電させた。
【0120】
各リチウム金属電池の律速性能は、下記数式2によって定義される。
(数式2)
律速特性[%]=(セルを特定定電流の速度で放電させるときの放電容量)/(セルを0.1Cの速度で放電させるときの放電容量)X100
【0121】
各評価結果のうち一部を
図5Bに示した。
図5Bにおいて、20μm Liが比較例2のリチウム金属電池に対するものである。
【0122】
それを参照すれば、0.5Cにおいては、実施例1のリチウム金属電池は、比較例2のリチウム金属電池と同一レベルの容量特性を示すが1.0C以上では、実施例1のリチウム金属電池が、比較例2のリチウム金属電池と比較し、容量特性にさらにすぐれるということが分かった。
【0123】
以上では、図面及び実施例を参照し、一具現例について説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において、当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の、無負極リチウム金属電池及びその製造方法は、例えば、二次電池関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0125】
11 負極集電体
12 複合電解質
13 液体非透過性イオン伝導性複合膜
14 正極集電体
15 正極活物質層
17 隔壁
18 正極