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特許7284225全固体二次電池用硫化物系固体電解質、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池
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  • 特許-全固体二次電池用硫化物系固体電解質、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】全固体二次電池用硫化物系固体電解質、その製造方法及びそれを含む全固体二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20230523BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230523BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230523BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230523BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230523BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/133
H01B1/06 A
H01B1/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021139850
(22)【出願日】2021-08-30
(65)【公開番号】P2022041968
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0110596
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515294318
【氏名又は名称】世宗大学校産学協力団
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 東洛
(72)【発明者】
【氏名】宋 ▲ミン▼相
(72)【発明者】
【氏名】韓 貞敏
(72)【発明者】
【氏名】柳 永均
(72)【発明者】
【氏名】李 揆▲リン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 正斗
(72)【発明者】
【氏名】韓 相日
(72)【発明者】
【氏名】孫 基先
(72)【発明者】
【氏名】沈 成根
(72)【発明者】
【氏名】李 軫熙
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/047565(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131725(WO,A1)
【文献】特開2020-027701(JP,A)
【文献】特開2016-035921(JP,A)
【文献】特開2017-147205(JP,A)
【文献】特開2008-059999(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108238616(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0326627(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0562
H01M 4/13
H01M 4/134
H01M 4/133
H01B 1/06
H01B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム、リン、硫黄、及びハロゲンを含み、アルジロダイト型結晶構造を有する硫化物系固体電解質であり、
硫化物系固体電解質に対するX線回折分析によって求められる、2θ 30±0.1゜でのピーク強度に対する、2θ 29±0.1゜でのピーク強度の比(I(29.0)/I(30.0))が0.0006~0.06であり、
前記硫化物系固体電解質に対するX線回折分析によって求められる、2θ 30±0.1゜でのピーク強度に対する2θ 27.1±0.1゜でのピーク強度の比(I(27.1)/I(30.0))が0.06以下であり、
前記硫化物系固体電解質が下記化学式1で表示される化合物である、全固体二次電池用硫化物系固体電解質
<化1>
Li Ha
化学式1において、Haは、ハロゲン元素であり、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択された1つ以上であり、
4.7<a<5.3、4.4≦b≦4.5、0.7<c<1.5である
【請求項2】
前記I(29.0)/I(30.0)が0.0006~0.04である、請求項1に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質。
【請求項3】
前記I(27.1)/I(30.0)が0.055~0.059である、請求項1または2に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質。
【請求項4】
前記硫化物系固体電解質における硫黄に対するリチウムの原子比(Li/S)が1.13以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質。
【請求項5】
前記硫化物系固体電解質が下記化学式2で表示される化合物である、請求項に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質:
<化2>
LiPSCl
化学式2において、aは、5.04~5.28の数であり、bは、4.4~4.5の数であり、cは、1.13~1.34の数である。
【請求項6】
前記化学式1で表示される化合物がLi5.04PS4.46Cl1.13、Li5.28PS4.47Cl1.34、Li5.20PS4.44Cl1.32、Li5.20PS4.46Cl1.29、またはその組合わせである、請求項に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質。
【請求項7】
前記硫化物系固体電解質のヤング率が80GPa以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質。
【請求項8】
前記硫化物系固体電解質のイオン伝導度は、25℃で2mS/cm以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質。
【請求項9】
正極層、負極層及びこれらの間に配置された固体電解質層を含む全固体二次電池において、
前記正極層及び固体電解質層のうちから選択された1つ以上が請求項1~のうち、いずれか1項の硫化物系固体電解質を含む、全固体二次電池。
【請求項10】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層と、を含み、
前記第1負極活物質層上部及び前記負極集電体と第1負極活物質層との間の1つ以上に第2負極活物質層が配置され、
前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む、請求項に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層と、を含み、
前記第1負極活物質層と固体電解質層との間にカーボン層がさらに含まれ
前記カーボン層は、非晶質炭素または結晶質炭素を含む、請求項に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
硫化物系固体電解質形成用前駆体である硫黄(S)前駆体、リン(P)前駆体、及びハロゲン前駆体を混合して前駆体混合物を得て、前記前駆体混合物を接触させる段階と、
前記前駆体混合物を350℃以上で熱処理する段階と、を含み、請求項1~のうち、いずれか1項の硫化物系固体電解質を製造する、全固体二次電池用硫化物系固体電解質の製造方法。
【請求項13】
前記熱処理が真空条件で500~650℃で5時間以上熱処理する、請求項12に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質の製造方法。
【請求項14】
前記前駆体混合物を接触させる段階が、
硫黄(S)前駆体、リン(P)前駆体及びハロゲン前駆体を機械的ミリングする段階を含む、請求項12または13に記載の全固体二次電池用硫化物系固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池用硫化物系固体電解質、その製造方法、及びそれを含む全固体二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求によってエネルギー密度と安全性の高い電池の開発が活発になされている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器、通信機器分野だけではなく、自動車分野でも実用化されている。自動車分野においては、生命に係わっているので、特に安全が重要視されている。
【0003】
現在、市販されているリチウムイオン電池は、可燃性有機分散媒を含んで電解液が用いられているので、短絡が発生した場合、過熱及び火災の可能性がある。これについて、電解液の代りに、固体電解質を用いた全固体電池が提案されている。
【0004】
全固体電池は、可燃性有機分散媒を使用しないことにより、短絡が発生しても、火災や爆発の発生可能性を大きく減らしうる。したがって、そのような全固体電池は、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べて大きく安全性を高めうる。
【0005】
全固体電池の固体電解質としては、硫化物系固体電解質が使用されうる。ところで、既存の硫化物系固体電解質は、イオン伝導度及び機械的特性が十分ではなく、これに係わる改善が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、新規な全固体二次電池用硫化物系固体電解質を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、上述した硫化物系固体電解質の製造方法を提供することである。
【0008】
さらに他の側面は、上述した硫化物系固体電解質を含み、性能が改善された全固体二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面によって、リチウム、リン、硫黄、及びハロゲンを含み、アルジロダイト型結晶構造を有する硫化物系固体電解質であり、
硫化物系固体電解質に対するX線回折分析によって求められる、2θ 30±0.1゜でのピーク強度に対する2θ 29±0.1゜でのピーク強度の比(I(29.0)/I(30.0))が0.06以下であり、
前記硫化物系固体電解質に対するX線回折分析によって求められる、2θ 30±0.1゜でのピーク強度に対する2θ 27.1±0.1゜でのピーク強度の比(I(27.1)/I(30.0))が0.06以下である全固体二次電池用硫化物系固体電解質が提供される。
【0010】
他の側面によって、正極層;負極層;前記正極層及び負極層の間に配置された固体電解質層を含む全固体二次電池であり、
前記正極層と固体電解質層のうちから選択された1つ以上が上述した正極層である全固体二次電池が提供される。
【0011】
さらに他の側面によって硫化物系固体電解質形成用前駆体である硫黄(S)前駆体、リン(P)前駆体及びハロゲン前駆体を混合して前駆体混合物を接触させる段階;及び
前記前駆体混合物を350℃以上で熱処理する段階;を含み、上述した硫化物系固体電解質を製造する全固体二次電池用硫化物系固体電解質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
一側面による全固体二次電池用硫化物系固体電解質は、広い温度領域で高いイオン伝導度を有しつつ、機械的特性に優れる。そのような硫化物系固体電解質を含む固体電解質を利用すれば、容量特性及び寿命特性が改善された全固体二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1、2で製造された硫化物系固体電解質及びLiPSClに対するXRDスペクトルを示す図面である。
図2】比較例1、2で製造された硫化物系固体電解質及びLiPSClに対するXRDスペクトルを示す図面である。
図3】比較例3及び比較例4で製造された硫化物系固体電解質及びLiPSClに対するXRDスペクトルを示す図面である。
図4】実施例1で製造された硫化物系固体電解質に対するヤング率測定結果を示す図面である。
図5】一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
図6】一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
図7】一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一具現例による全固体二次電池用硫化物系固体解質、それを含む全固体二次電池及びその製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0015】
全固体二次電池の固体電解質としては、アルジロダイト型硫化物系固体電解質が用いられる。ところで、そのような硫化物系固体電解質は、イオン伝導度特性と物理的及び電気化学的安定性が十分ではなく、これに係わる改善が要求される。
【0016】
それにより、本発明者らは、リチウムと硫黄とが欠乏した非化学量論比を有するアルジロダイト型硫化物系固体電解質に係わる本願発明を完成した。
【0017】
一具現例の硫化物系固体電解質は、リチウムと硫黄とが欠乏した非化学量論的組成を有しており、格子構造内に欠陥によって化学量論比を有するアルジロダイト型硫化物系固体電解質と比較して広い温度領域で高いイオン伝導度を示す。硫化物系固体電解質は、製造時に高価の硫化リチウム原料物質の含量を減少させて製造費用が減少する。
【0018】
一具現例の一硫化物系固体電解質は、25℃でイオン伝導度が2mScm-1以上、または、2.3~5mScm-1である。
【0019】
一具現例による硫化物系固体電解質は、リチウム、リン、硫黄、及びハロゲンを含み、アルジロダイト型結晶構造を有し、硫化物系固体電解質に対するX線回折分析によって求められる、2θ 、30±0.1゜でのピーク強度に対する2θ 29±0.1゜でのピーク強度の比(I(29.0)/I(30.0))が0.06以下である。そして、前記硫化物系固体電解質に対するX線回折分析によって求められる、2θ 30±0.1゜でのピーク強度に対する、2θ 27.1±0.1゜でのピーク強度の比(I(27.1)/I(30.0))が0.06以下である。
【0020】
ハロゲンはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)からなる群から選択された1つ以上である。
【0021】
(27.1)は、LiSに係わる情報を示し、I(29.0)は、LiPSに係わる情報を与え、I(30.0)は、アルジロダイト相であるLiHaに係わる情報を与える。
【0022】
回折角2θ 17.5-18.5゜、26.5-27.5゜及び29゜領域で不純物相が観察され、そのような不純物相が多く存在すれば、硫化物系固体電解質のイオン伝導度が低下する。したがって、そのような不純物相に係わるピークの強度が減少すれば、イオン伝導度特性がさらに改善された硫化物系固体電解質が得られる。
【0023】
(29.0)/I(30.0)及びI(27.1)/I(30.0)が0.06以下であるということは、不純物相が小さく、純度が非常に高いということを意味する。ここで、不純物相は、例えば、低イオン伝導性物質である物質であるLiS、LiPSなどに係わるものであり、高イオン伝導性に係わるアルジロダイトLiHaに係わる相のピーク強度が強い物質であるとき、高いイオン伝導度を有する。
【0024】
一具現例による硫化物系固体電解質に対するX線回折分析において、I(29.0)/I(30.0)が0.0006~0.04、0.0007~0.038、または0.0008~0.035である。そして、I(27.1)/I(30.0)は、0.055~0.059または0.0056~0.0058である。
【0025】
一具現例の一硫化物系固体電解質で硫化物系固体電解質の硫黄に対するリチウムの原子比(Li/S)が1.13以上、または、1.13~1.18である。硫黄に対するリチウムの原子比(Li/S)が前記範囲であるとき、高エネルギー密度を有する全固体二次電池を製造することができる。
【0026】
一具現例による硫化物系固体電解質が下記化学式1で表示される化合物である。
<化1>
LiHa
化学式1において、Haは、ハロゲン元素であり、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)からなる群から選択された1つ以上であり、
4.7<a<5.3、<4.4≦b≦4.5、0.7<c<1.5である。
【0027】
化学式1において、aは、4.8~5.29、4.9~5.28、または5.04~5.28である。そして、bは、4.4~4.5、または4.44~4.47であり、cは、0.8~1.45、1~1.4、1.1~1.35、または1.13~1.34である。
【0028】
化学式1の化合物は、例えば、下記化学式2で表示される化合物でもある。
<化2>
LiPSCl
化学式2において、aは、5.04~5.28の数であり、bは、4.4~4.5の数であり、cは、1.13~1.34の数である。
【0029】
化学式1で表示される化合物は、例えば、Li5.04PS4.461.13、Li5.28PS4.471.34、Li5.04PS4.46Cl1.13、Li5.28PS4.47Cl1.34、Li5.20PS4.44Cl1.32、Li5.20PS4.46Cl1.29、またはその組合わせである。
【0030】
一具現例による硫化物系固体電解質のヤング率(Young’s modulus)は、80GPa以上、例えば、80~95GPaである。硫化物系固体電解質のヤング率が非常に優れて機械的特性が非常に優秀である。ヤング率は、同じ変位を得るのに消耗する圧力であり、同一圧力でもって高い密度を有する固体電解質層を製造することができる。
【0031】
ヤング率は、一名「引張弾性率」と同じ意味を有する。引張弾性率(tensile modulus)は、dynamic mechanical analysis system(DMA800, TA Instruments社)を用いて測定し、保護膜試片は、ASTM standard D412 (Type V specimens)を通じて準備する。そして、保護膜の引張弾性率は、25℃、約30%の相対湿度で分当たり5mmの速度で応力に対する変形変化を測定する。このように得られた応力歪み曲線(stress-strain curve)の勾配から引張弾性率を評価する。
【0032】
一具現例による硫化物系固体電解質のヤング率は、上述したヤング率を測定する方法及び使用装置を、通常の技術者が全固体二次電池の固体電解質層を分離し、すなわち、分離された固体電解質層(isolated solid electrolyte layer)に対して容易に測定することができる。
【0033】
一具現例による全固体二次電池は、正極層;負極層;及び前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、前記正極層及び固体電解質層のうちから選択された1つ以上が一具現例による硫化物系固体電解質を含む。
【0034】
[全固体二次電池]
図5を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10;負極層20;及び正極層10と前記負極層20との間に配置された固体電解質層30;を含む。
【0035】
前記正極層10は、一具現例による固体電解質を含んでもよい。
固体電解質層30は、一具現例による固体電解質を含んでもよい。
【0036】
正極層10が正極集電体11及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12を含み、正極活物質層は、正極活物質、バインダ、及び固体電解質を含む。固体電解質は、一具現例の硫化物系固体電解質でもある。そして負極層20は、負極集電体21及び負極集電体上に配置された第1負極活物質層22を含む。
【0037】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはこれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は省略可能である。
【0038】
正極集電体11は、金属基材の一面または両面上に配置されるカーボン層をさらに含んでもよい。金属基材上にカーボン層がさらに配置されることにより、金属基材の金属が正極層が含む固体電解質によって腐食されることを防止し、正極活物質層12と正極集電体11との間の界面抵抗を減少させうる。カーボン層の厚さは、例えば、1μm~5μmでもある。カーボン層の厚さが過度に薄ければ、金属基材と固体電解質との接触を完全に遮断し難い。カーボン層の厚さが過度に厚ければ、全固体二次電池のエネルギー密度が低下しうる。カーボン層は、非晶質炭素、結晶質炭素などを含んでもよい。
【0039】
[正極層:正極活物質]
正極活物質層12は、例えば、正極活物質、固体電解質、バインダ及び溶媒を含む。
正極活物質層12は、導電材を含んでもよい。導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素ナノ纎維、カーボンナノチューブのうちから選択された1つ以上である。
【0040】
正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似しているか、異なる。固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照する。
【0041】
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)可能な正極活物質である。正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(Lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)などのリチウム遷移金属酸化物、硫化ニッケル、硫化銅、硫化リチウム、酸化鉄、または酸化バナジウム(vanadium oxide)などがあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で正極活物質として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。正極活物質は、それぞれ単独また2種以上の混合物である。
【0042】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、Li1-b(前記式において、0.90≦a≦1,及び0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(前記式において、0≦b≦0.5,0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-αα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cMnα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αα(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi1-b-cMn2-α(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.5,0≦c≦0.05,0<α<2である);LiNi(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0.001≦d≦0.1である.);LiNiC℃MnGeO(前記式において、0.90≦a≦1,0≦b≦0.9,0≦c≦0.5,0≦d≦0.5,0.001≦e≦0.1である.);LiNiG(前記式において、0.9≦a≦1,0.001≦b≦0.1である.);LiCoG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である.);LiMnG(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である.);LiMn(前記式において、0.90≦a≦1,0.001≦b≦0.1である.);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうち、いずれか1つで表現される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはこれらの組合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはこれらの組合わせであり;Eは、Co、Mn、またはこれらの組合わせであり;FはF、S、P、またはこれらの組合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組合わせであり;QはTi、Mo、Mn、またはこれらの組合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組合わせである。そのような化合物表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、上述した化合物とコーティング層が付加された化合物の混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物がある。コーティング層形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当業者にとってよく理解されうる内容なので、詳細な説明は省略する。
【0043】
正極活物質は、例えば、上述したリチウム遷移金属酸化物のうち、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に酸素原子層と金属原子層とが交互に規則的に配列し、これにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンのそれぞれ形成する面心立方格子(face centered cubic lattice, fcc)が互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2ほどずれて配置された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNiCoAl(NCA)または、LiNiCoMn(NCM)(0<x<1,0<y<1,0<z<1,x+y+z=1)などの三元系リチウム遷移金属酸化物である。正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー(energy)密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0044】
正極活物質は、上述したように被覆層によって覆われていてもよい。被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層に公知されたものであれば、いずれでもよい。被覆層は、例えば、LiO-ZrO(LZO)などである。
【0045】
正極活物質が、例えば、NCAまたは、NCMなどの三元系リチウム遷移金属酸化物として、ニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させて充電状態で正極活物質の金属溶出の減少が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態でのサイクル(cycle)特性が向上する。
【0046】
正極活物質の形状は、例えば、真球、楕円球状などの粒子形状である。正極活物質の粒径は、特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極層10の正極活物質の含量も特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極に適用可能な範囲である。
【0047】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質を含んでもよい。
正極活物質12は、一具現例による硫化物系固体電解質を含んでもよい。
【0048】
正極層10が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質と同一であるか、異なる。固体電解質に係わる詳細な内容は、固体電解質層30部分を参照する。
【0049】
正極活物質層12が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質に比べてD50平均粒径が小さくもある。例えば、正極活物質層12が含む固体電解質のD50平均粒径は、固体電解質層30が含む固体電解質のD50平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下でもある。
【0050】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12は、バインダを含んでもよい。バインダは、例えば、ポリビニリデンフルオライド、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、及びポリメチルメタクリレートなどである。
【0051】
[正極層:導電材]
正極活物質層12は、導電材を含んでもよい。導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素纎維、金属粉末などである。
【0052】
[正極層:その他添加剤]
正極層10は、上述した正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラー(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導助剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0053】
正極層10が含むフィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導助剤などとしては、一般的に全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0054】
[固体電解質層]
固体電解質層に含有された固体電解質は、一具現例による硫化物系固体電解質でもある。
【0055】
[固体電解質層:硫化物系固体電解質]
図5及び図6を参照すれば、固体電解質層30は、正極層10及び負極層20間に配置され、一具現例による硫化物系固体電解質、一般的な硫化物系固体電解質またはその組合わせを含む。
【0056】
一具現例による全固体二次電池において正極層が一具現例による硫化物系固体電解質を含む固体電解質層は、一般的な硫化物系固体電解質を含んでもよい。
【0057】
一般的な硫化物系固体電解質は、例えば、LiS-P,LiS-P-LiX,(Xは、ハロゲン元素)、LiS-P-LiO,LiS-P-LiO-LiI,LiS-SiS,LiS-SiS-LiI,LiS-SiS-LiBr,LiS-SiS-LiCl,LiS-SiS-B-LiI,LiS-SiS-P-LiI,LiS-B,LiS-P-Z(m,nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGa)のうち、1つ、LiS-GeS,LiS-SiS-LiPO,LiS-SiS-LiMO(p,qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、GaInのうち、1つ)、Li7-xPS6-xCl,0≦x≦2,Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である。硫化物系固体電解質は、例えば、LS、Pなどの出発原料を溶融急冷法や機械的ミリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を遂行することができる。固体電解質は、非晶質、結晶質、またはそれらが混合された状態でもある。また、固体電解質は、例えば、上述した硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも構成元素として、硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含むものでもある。例えば、固体電解質は、LiS-Pを含む材料でもある。固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料として、LiS-Pを含むことを利用する場合、LiSとPの混合モル比は、例えば、LiS:P=50:50~90:10程度の範囲である。
【0058】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型(Argyrodite-type)の化合物でもある。特に、硫化物系固体電解質iPSCl,LiPSBr及びLiPSIのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の化合物でもある。
【0059】
硫化物系固体電解質の密度は、1.5~2.0g/ccである。硫化物系固体電解質が前記範囲であるとき、全固体二次電池の内部抵抗が減少し、Liによる固体電解質の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0060】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダを含んでもよい。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであるが、それらに限定されず、当該技術分野でバインダとして使用可能なものであれば、いずれも可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12と第1負極活物質層22とが含むバインダと同一であるか、異なる。
【0061】
[負極層]
[負極層:負極活物質]
負極層20は、負極集電体21及び負極集電体上に配置された第1負極活物質層22を含む。第1負極活物質層22は、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
【0062】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下である。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nm~4μm、10nm~2μm、または10nm~900nmである。負極活物質が、そのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時にリチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易である。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)直径(D50)である。
【0063】
負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質及び金属または準金属負極活物質のうち、選択された1つ以上を含む。
【0064】
炭素系負極活物質は、特に非晶質炭素(amorphous carbon)である。非晶質炭素としては、例えば、カーボンブラック(carbon black;CB)、アセチレンブラック(acetylene black;AB)、ファーネスブラック(furnace black;FB)、ケッチェンブラック(ketjen black;KB)、グラフェン(graphene)などがあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で非晶質炭素として分類されるものであれば、いずれも可能である。非晶質炭素は、結晶性を有していないか、結晶性が非常に低い炭素であって、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0065】
金属または準金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野でリチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または準金属負極活物質として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属負極活物質ではない。
【0066】
第1負極活物質層22は、そのような負極活物質のうち、一種の負極活物質を含むか、複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、第1負極活物質層22は、非晶質炭素のみを含むか、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む。他に、第1負極活物質層22は、非晶質炭素と金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上との混合物を含む。非晶質炭素と金などの混合物の混合比は、重量比として、例えば、10:1~1:2、5:1~1:1、または4:1~2:1であるが、必ずしもそのような範囲に限定されず、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。負極活物質が、そのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0067】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子及び金属または準金属からなる第2粒子の混合物を含む。金属または準金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。他の例として、準金属は、半導体である。第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に8~60重量%、10~50重量%、15~40重量%、または20~30重量%である。第2粒子が、そのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0068】
[負極層:バインダ]
第1負極活物質層22の含むバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどがあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野でバインダとして使用可能なものであれば、いずれも可能である。バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダで構成されうる。
【0069】
第1負極活物質層22がバインダを含むことにより、第1負極活物質層22が負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程で第1負極活物質層22の体積変化及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、第1負極活物質層22の亀裂が抑制される。例えば、第1負極活物質層22がバインダを含まない場合、第1負極活物質層22が負極集電体21から容易に分離されうる。負極集電体21から第1負極活物質層22が離脱することにより、負極集電体21が露出された部分で、負極集電体21が固体電解質層と接触することにより、短絡の発生可能性が増加する。第1負極活物質層22は、例えば、第1負極活物質層22を構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21上に塗布し、乾燥して作製される。バインダを第1負極活物質層22に含めることにより、スラリー中に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法でスラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による詰まり)を抑制することができる。
【0070】
[負極層:その他添加剤]
第1負極活物質層22は、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導助剤などをさらに含んでもよい。
【0071】
[負極層構造]
第1負極活物質層22の厚さは、例えば、正極活物質層厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層の厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~10μm、または3μm~7μmである。第1負極活物質層の厚さが過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層を崩壊させて全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層の厚さが過度に厚くなると、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層による全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層の厚さが減少すれば、例えば、負極活物質層の充電容量も減少する。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または2%以下である。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、0.1%~50%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、0.1%~10%、0.1%~5%、または0.1%~2%である。第1負極活物質層22の充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22の厚さが非常に薄くなるので、繰り返される充放電過程で第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させて全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下して第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0072】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に正極活物質層12のうち、正極活物質の質量を乗算して得られる。正極活物質が複数種使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度X質量値を計算し、その値の総和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22の充電容量も同じ方法で計算される。すなわち、第1負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に第1負極活物質層22のうち、負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が複数種使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度X質量値を計算し、その値の総和が第1負極活物質層22の容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を用いて推定された容量である。全固体半電池(half-cell)を用いた充電容量測定によって正極活物質層12と第1負極活物質層22の充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。他に、正極活物質層12と第1負極活物質層22の充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量でもある。
第1負極活物質層と固体電解質層との間にカーボン層がさらに含まれうる。
【0073】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料で構成される。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などがあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で電極集電体として使用するものであれば、いずれも可能である。負極集電体の厚さは、1~20μm、例えば、5~15μm、例えば7~10μmである。
【0074】
負極集電体21は、上述した金属のうち、1種で構成されるか、2種以上の金属の合金または被覆材料で構成されうる。負極集電体21は、例えば、板状またはホイル状(foil)の形態である。
【0075】
図6を参照すれば、全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21上にリチウムと合金を形成する元素を含む薄膜24をさらに含む。薄膜24は、負極集電体21と前記第1負極活物質層22との間に配置される。薄膜24は、例えば、リチウムと合金を形成する元素を含む。リチウムと合金を形成可能な元素は、例えば、金、銀、亜鉛、錫、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビスマスなどがあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野でリチウムと合金を形成することができる元素であれば、いずれも可能である。薄膜24は、これら金属のうち、1つで構成されるか、様々な金属の合金で構成される。薄膜24が負極集電体21上に配置されることにより、例えば薄膜24と第1負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層(図示せず)の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0076】
薄膜の厚さd24は、例えば、1nm~800nm、10nm~700nm、50nm~600nm、または、100nm~500nmである。薄膜の厚さd24が1nm未満になる場合、薄膜24による機能が発揮され難い。薄膜の厚さd24が過度に厚ければ、薄膜24自体がリチウムを吸蔵して負極層でリチウムの析出量が減少して全固体電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下しうる。薄膜24は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによって負極集電体21上に配置されうるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で薄膜24を形成することができる方法であれば、いずれも可能である。
【0077】
[負極層:負極活物質]
負極層20は、負極集電体21及び負極集電体上に配置された第1負極活物質層22を含む。第1負極活物質層22は、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
【0078】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下である。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nm~4μm、10nm~2μm、または、10nm~900nmである。負極活物質が、そのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時にリチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易である。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザ式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)直径(D50)である。
【0079】
負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質及び金属または準金属負極活物質のうち、選択された1つ以上を含む。
【0080】
炭素系負極活物質は、特に非晶質炭素(amorphous carbon)である。非晶質炭素としては、例えば、カーボンブラック(carbon black;CB)、アセチレンブラック(acetylene black;AB)、ファーネスブラック(furnace black;FB)、ケッチェンブラック(ketjen black;KB)、グラフェン(graphene)などがあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で非晶質炭素として分類されるものであれば、いずれも可能である。非晶質炭素は、結晶性を有していないか、結晶性が非常に低い炭素であって、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0081】
金属または準金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野でリチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または準金属負極活物質として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属負極活物質ではない。
【0082】
第1負極活物質層22は、そのような負極活物質のうち、一種の負極活物質を含むか、複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、第1負極活物質層22は、非晶質炭素のみを含むか、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む。他に、第1負極活物質層22は、非晶質炭素と金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上との混合物を含む。非晶質炭素と金などの混合物の混合比は、重量比として、例えば、10:1~1:2、5:1~1:1、または、4:1~2:1であるが、必ずしもそのような範囲に限定されず、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。負極活物質が、そのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0083】
第1負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子及び金属または準金属からなる第2粒子の混合物を含む。金属または準金属は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。他の例として、準金属は、半導体である。第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に8~60重量%、10~50重量%、15~40重量%、または20~30重量%である。第2粒子が、そのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0084】
[負極層:析出層]
図7を参照すれば、全固体二次電池1は、充電によって、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含む。
【0085】
第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。したがって、第2負極活物質層23は、リチウムを含む金属層であるので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それらに限定されず、当該技術分野でリチウム合金として使用可能なものであれば、いずれも可能である。第2負極活物質層23は、そのような合金のうち、1つまたはリチウムからなるか、複数種の合金からなる。
【0086】
第2負極活物質層の厚さd23は、特に制限されないが、例えば、1μm~1000μm、1μm~500μm、1μm~200μm、1μm~150μm、1μm~100μm、または1μm~50μmである。第2負極活物質層の厚さd23が過度に薄ければ、第2負極活物質層23によるリチウム貯蔵庫(reservoir)の役割を遂行することが困難である。第2負極活物質層の厚さd23が過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増加し、サイクル特性がむしろ低下する可能性がある。第2負極活物質層23は、例えば、そのような範囲の厚さを有する金属ホイルでもある。
【0087】
全固体二次電池1において第2負極活物質層23は、例えば、全固体二次電池1の組立前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置されるか、全固体二次電池1の組立後、充電によって負極集電体21と第1負極活物質層22との間に析出される。
【0088】
全固体二次電池1の組立前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第2負極活物質層23が配置される場合、第2負極活物質層23がリチウムを含む金属層なので、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。第2負極活物質層23を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。例えば、全固体二次電池1の組立前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムホイルが配置される。
【0089】
全固体二次電池1の組立後、充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、全固体二次電池1の組立時に第2負極活物質層23を含まないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増加する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超過して充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。すなわち、第1負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動してきたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超えて充電すれば、例えば、第1負極活物質層22の後面、すなわち負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムによって第2負極活物質層23に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層23は、主にリチウム(すなわち、金属リチウム)で構成される金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質がリチウムと合金または化合物を形成する物質で構成されることにより得られる。放電時には、第1第1負極活物質層22及び第2負極活物質層23、すなわち、金属層のリチウムがイオン化されて正極層10方向に移動する。したがって、全固体二次電池1において、リチウムを負極活物質として使用することができる。また、第1負極活物質層22は、第2負極活物質層23を被覆するので、第2負極活物質層23、すなわち、金属層の保護層の役割を行うと共に、リチウムデンドライト(dendrite)の析出成長を抑制する役割を遂行する。したがって、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果として、全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組立後、充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、負極集電体21と前記第1負極活物質層22及びこれらの間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含まないLiフリー(free)領域である。
【0090】
次いで、一具現例による硫化物系固体電解質の製造方法を説明する。
硫化物系固体電解質は、硫化物系固体電解質形成用前駆体である硫黄(S)前駆体、リン(P)前駆体、及びハロゲン前駆体を混合して前駆体混合物を得て、前駆体混合物を接触させる段階;及び前記前駆体混合物を350℃以上で熱処理する段階;を経て製造することができる。
【0091】
前記熱処理は、真空条件で500~650℃で5時間以上、例えば、20時間熱処理を実施する。前記前駆体混合物をボロシリケート(Borosilicate)アンプルに入れた後、真空条件でトーチシーリングして真空条件を組成する。そのような製造方法によれば、既存の高価であり、毒性が強いHS真空条件で進行する熱処理方法を適用せずとも、高純度及びそのイオン伝導度の硫化物系固体電解質が得られる。熱処理を前記温度範囲で実施すれば、不純物相が形成されず、高純度でありながら、物理的特性及び電気化学的安定性が向上した硫化物系固体電解質が得られる。
【0092】
一具現例による硫化物系固体電解質の製造方法において、前駆体混合物を接触させる段階が硫黄(S)前駆体、リン(P)前駆体及びハロゲン前駆体を機械的ミリングする段階を含む。
硫黄(S)前駆体として、LiSが用いられる。リン(P)前駆体として、P、リン粉末(phosphorus powder)、P、(NHHPO、(NH)HPO、NaHPO、NaPO、またはその組合わせが用いられる。そして、ハロゲン前駆体として、LiCl、LiI、LiBr、またはその組合わせが用いられる。
硫黄(S)前駆体、リン前駆体及びハロゲン前駆体の含量は、化学量論的に制御され、一具現例による硫化物固体電解質を製造する。
【0093】
次いで、上述した硫化物系固体電解質を用いて全固体二次電池の製造方法を説明する。
まず、正極活物質、バインダ、固体電解質、導電材及び溶媒を混合して正極活物質層形成用組成物を準備する。
【0094】
正極集電体上に前記正極活物質層形成用組成物をコーティングして乾燥し、正極活物質層を形成して正極層を提供する。
前記乾燥は、40~60℃で実施する。
【0095】
これと別途に負極集電体と第1負極活物質層を含む負極層を提供する段階;前記負極層と正極層との間に固体電解質層を提供して積層体を準備する段階;及び前記積層体を加圧(Press)する段階;を含む。
前記固体電解質層は、一具現例による硫化物系固体電解質を含む固体電解質層である。
【0096】
加圧は、25~90℃の範囲で実施し、圧力は、550MPa以下、例えば、500MPa以下、例えば、400~500MPa範囲で加圧して全固体二次電池を完成する。加圧時間は、温度及び圧力などによって異なり、例えば、30分未満である。そして、加圧は、例えば、静水圧(isostatic press)、ロール加圧(roll press)または平板加圧(plate press)でもある。
【0097】
一具現例による全固体二次電池は、中大型電池または電力保存装置(energy storage system: ESS)に適用可能である。
【0098】
以下の実施例を通じてさらに詳細に説明するが、下記実施例に限定されることを意味するものではない。
【0099】
(固体電解質の製造)
実施例1
「表1の硫化物固体電解質が得られるように、LiS、P、及びLiClを化学量論的に定量後、グローブボックス内で、1時間以上乳鉢で混合して前駆体混合物を得る。前記機械的ミリング処理から得た粉末材料2000mgをボロシリケートアンプルに投入した後、真空ポンプに連結して真空雰囲気を組成した後、トーチシーリングする。真空雰囲気でシーリングされたアンプルを550℃で12時間熱処理を実施して硫化物系固体電解質を得た。
【0100】
実施例2~4
LiS、P、LiCl及びLiNの含量を下記表1の実施例2ないし4の硫化物系固体電解質がそれぞれ得られるように、それぞれ秤量したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して硫化物系固体電解質を得た。
【0101】
比較例1~6
LiS、P、LiCl及びLiNの含量を下記表1の比較例1ないし6の硫化物系固体電解質がそれぞれ得られるようにそれぞれ秤量したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して硫化物系固体電解質を得た。
【0102】
【表1】
【0103】
表1から分かるように、比較例1及び2の硫化物系固体電解質は、実施例1ないし4の硫化物系固体電解質と比べて、リチウム含量が低く、比較例3~6の硫化物系固体電解質は、実施例1ないし4の場合と比べてリチウム含量が高い。
【0104】
(全固体二次電池の製造)
製作例1
(正極層製造)
正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Mn0.05(NCM)を準備した。固体電解質として、結晶性である(crystalline)アルジロダイト系固体電解質(LiPSCl)を使用した。そして、バインダとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロン(登録商標)バインダ)を準備し、導電剤として、炭素ナノ纎維(CNF)を準備した。そのような材料を正極活物質:固体電解質:炭素ナノ纎維:バインダ=86.91:11.85:0.25:0.99の重量比で分散媒であるオクチルアセテートと混合した正極活物質層形成用組成物を製造した。正極活物質層固形粉の総重量は、正極活物質、固体電解質、炭素ナノ纎維及びバインダの総重量を示す。
【0105】
前記正極活物質層形成用組成物をシート状に成形した後、40℃コンベクションオーブン(convection oven)で2時間1次熱処理を実施して乾燥した。次いで、80℃、真空オーブンで12時間2次熱処理を実施し乾燥して正極シートを製造した。
【0106】
(負極層製造)
負極集電体として、厚さ10μmのNi箔を準備した。また、負極活物質として、一次粒径が約30nmであるカーボンブラック(CB)及び平均粒径は、約60nmである銀(Ag)粒子を準備した。
【0107】
カーボンブラック(CB)と銀(Ag)粒子を3:1の重量比で混合した混合粉末0.25gを容器に入れ、そこにPVDFバインダ(クレハ社の#9300)が7重量%含まれたNMP溶液2gを追加して混合溶液を準備した。次いで、その混合溶液にNMPを少しずつ添加しながら、混合溶液を撹拌してスラリーを製造した。製造されたスラリーをNi箔(foil)にバーコータ(bar coater)を用いて塗布し、80℃のコンベクションオーブンで10分間乾燥させて積層体を得た。得られた積層体を100℃で8時間以上、すなわち、10時間真空乾燥した。以上の工程によって負極集電体上に第1負極活物質層が形成された負極層を製造した。
【0108】
(固体電解質層の製造)
アクリル系バインダ(SX-A334, Zeon Co., Ltd.)を酢酸オクチル(octyl acetate)に添加して4wt%バインダ溶液を準備した。実施例1の硫化物系固体電解質(D50=3μm、結晶質)に準備されたアクリル系バインダ溶液を添加し、シンキーミキサー(Thinky mixer)で混合してスラリーを準備した。スラリーは、固体電解質の98.5重量部に対して1.5重量部のアクリル系バインダを含む。製造されたスラリーを不織布上にバーコータ(bar coater)を用いて塗布し、50℃のコンベクションオーブンで5分間乾燥させて積層体を得た。得られた積層体を真空オーブン、40℃で10時間以上乾燥した。以上の工程によって固体電解質層を製造した。
【0109】
(全固体二次電池の製造)
正極層と負極層との間に固体電解質層を配置して積層体を準備した。準備された積層体を80℃で500MPaの圧力で10分間、平板加圧(hot plate press)処理して全固体二次電池を製造した。そのような加圧処理によって固体電解質層が焼結されて電池特性が向上する。加圧された正極活物質層の厚さは、約80μmであり、負極活物質層の厚さは、7μmであり、固体電解質層の厚さは、60μmである。
【0110】
製作例2~4
固体電解質層の製造時、実施例1の硫化物系固体電解質の代わりに、実施例2ないし4の硫化物系固体電解質を用いたことを除いては、製作例1と同様に実施して全固体二次電池を製造した。
【0111】
比較製作例1~4
固体電解質層の製造時、実施例1の硫化物系固体電解質の代わりに、比較例1ないし4の硫化物系固体電解質を用いたことを除いては、製作例1と同様に実施して全固体二次電池を製造した。
【0112】
評価例1:イオン伝導度測定
実施例1~4及び比較例1~6で製造した硫化物系固体電解質の粉末を直径10mmのフレームに入れ、350mPaの圧力に加圧してペレットで成形した。ペレットの両面にインジウム(In)薄膜を被覆してイオン伝導度の測定のための試料を準備した。準備した試料に対して、AUTOLAB PGSTAT30(Metrohm Autolab Co. Ltd.)ポテンショスタット(potentiostat)を使用して、インピーダンスを測定してナイキストプロット(Nyquist plot)を図示し、それから25℃でイオン伝導度を測定した。
測定されたイオン伝導度を下記表2に示した。
【0113】
【表2】
【0114】
表2に示されているように、実施例1ないし4の固体電解質は、2mS/cm以上のイオン伝導度を具現し、全固体二次電池用固体電解質に適したイオン伝導度を有していることを確認した。そして、実施例1及び2の固体電解質は、25℃の温度で比較例1ないし6の固体電解質と比較して改善されたイオン伝導度を示した。
【0115】
評価例2:X線回折(XRD)分析
実施例1~2及び比較例1~4で製造された硫化物系固体電解質に対してXRDスペクトルを測定し、その結果を図1ないし図3に示した。X線回折分析は、Bruker社のD8 Advanceを用いて実施し、XRDスペクトル測定にCu Kα放射線(radiation)を使用した。
【0116】
図1は、実施例1、2で製造された硫化物系固体電解質及びLiPSClに対するXRDスペクトルを示し、図2は、比較例1及び比較例2で製造された硫化物系固体電解質及びLiPSClに対するXRDスペクトルを示した図面である。そして、図3は、比較例3及び比較例4で製造された硫化物系固体電解質及びLiPSClに対するXRDスペクトルを示す図面である。
【0117】
【表3】
【0118】
図1を参照して、実施例1及び2の固体電解質は、I(27.1)/I(30.0)及びI(29.0)/I(30.0)が0.06以下である範囲を示した。そのような結果から、実施例1及び2の硫化物系固体電解質は、不純物相が減少したことが分かる。
【0119】
これに比べて、図2及び図3を参照して、比較例1、2及び4の硫化物系固体電解質と、LiPSClはI(27.1)/I(30.0)及びI(29.0)/I(30.0)が0.06を超過する範囲を示し、比較例3の硫化物系固体電解質のI(27.1)/I(30.0)は、0.06以下であるが、I(29.0)/I(30.0)は、0.06を超過した。これにより、実施例1及び2の場合に比べて、イオン伝導度に不利な不純物相がさらに含有されていることを確認した。
【0120】
図1ないし図3を参照すれば、実施例1~2の硫化物系固体電解質は、比較例1~4及びLiPSClの場合と同様に、アルジロダイト結晶構造を有するということが分かった。
【0121】
評価例3:ヤング率(Young’s Modulus)評価
前記実施例1によって製造された固体電解質層の厚さは、約20μmであった。
前記固体電解質層に対して引張弾性率(tensile modulus)をDMA800(TA Instruments社)を用いて測定し、固体電解質層試片は、ASTM standard D412 (Type V specimens)を通じて準備した。引張弾性率は、ヤング率(Young’s Modulus)とも称する。
【0122】
前記固体電解質層を25℃、約30%の相対湿度で分当たり5mmの速度で応力に対する変形変化を測定した。応力歪み曲線(stress-strain curve)の勾配から引張弾性率を得た。
固体電解質層に対するヤング率評価結果を、下記表4及び図4に示した。
【0123】
【表4】
【0124】
表4及び図4を参照して、実施例1によって製造された固体電解質層は、引張弾性率が非常に優秀であるということが分かった。
【0125】
評価例4:充放電テスト
製作例1、製作例2、比較製作例1、比較製作例2、比較製作例3及び比較製作例4で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電テストによって評価した。
【0126】
電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した後、電池電圧が2.5Vになるまで0.05Cの定電流で放電を20時間実施した(第1サイクル)。次いで、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した後、電池電圧が2.5Vになるまで0.33Cの定電流で3時間放電を実施した(第2サイクル)。その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで0.5Cの定電流で2時間放電を実施した(第3サイクル)。その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで1Cの定電流で1時間放電を実施した(第4サイクル)。
【0127】
その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.33Cの定電流で3時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで0.33Cの定電流で3時間放電を実施した(第5サイクル)。
【0128】
前記サイクルを合計100回繰り返した。
前記サイクルを繰り返した後の平均電圧、寿命特性及び容量特性を調査した。
上述した特性を評価した結果、製作例1及び製作例2の全固体二次電池は、比較製作例1ないし4の場合と比較して、容量、平均電圧及び寿命特性が優秀であった。
【0129】
以上、添付図面を参照して例示的な一具現例に対して詳細に説明したが、本創意的思想は、そのような例に限定されない。本創意的思想が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で各種変更例または修正例を導出可能であるということは自明であり、それらも本創意的思想の技術的範囲に属するものであるという点は言うまでもない。
【符号の説明】
【0130】
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極層
21 負極集電体
22 第1負極活物質層
30 固体電解質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7