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特許7284281高い熱安定性を有する固体状充電式リチウムイオン電池用の固体電解質を含む正極材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-22
(45)【発行日】2023-05-30
(54)【発明の名称】高い熱安定性を有する固体状充電式リチウムイオン電池用の固体電解質を含む正極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20230523BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230523BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230523BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230523BHJP
   H01M 4/1391 20100101ALI20230523BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230523BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230523BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20230523BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230523BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/1391
H01M10/0562
H01M10/052
C01B25/45 Z
C01G53/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021549107
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 IB2020051355
(87)【国際公開番号】W WO2020170136
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】62/807,833
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/807,863
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19162577.1
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19162591.2
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19176362.2
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(73)【特許権者】
【識別番号】517107151
【氏名又は名称】ユミコア・コリア・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】505282042
【氏名又は名称】ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョンウ・カン
(72)【発明者】
【氏名】スン-ジュン・ウ
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/089430(WO,A1)
【文献】特表2018-505521(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107210434(CN,A)
【文献】特開2011-216234(JP,A)
【文献】特開2008-112661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
H01B 1/08
C01B 25/45
C01G 53/00-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン固体電池で使用されることになるカソライトであって、
(i)式:Li(3.5+L+x)Si(0.5+S-x)(0.5+p-x)Ge2x4+a(式中、-0.10≦L≦0.10、-0.10≦s≦0.10、-0.10≦p≦0.10、-0.40≦a≦0.40、及び0.00≦x≦0.30)を有する固体電解質粉末と、
(ii)式:Li1+kM’1-k(式中、M’=Ni1-x’-y’-z’Mnx’Coy’z’、並びに-0.05≦k≦0.05、0≦x’≦0.40、0.05≦y’≦0.40、及び0≦z’≦0.05、Aは、Li、M’、及びOとは異なるドーピング元素)を有する正極活物質粉末と、を含み、前記正極活物質粉末が、層状のR-3m結晶構造を有する粒子を含み、前記カソライトが、D99≦50μmと、少なくとも1.0×10-6S/mのイオン伝導度と、を有する、カソライト。
【請求項2】
Aが、Al、Ca、W、B、Si、Ti、Mg、及びZrのうちいずれか1つ以上である、請求項1に記載のカソライト。
【請求項3】
前記固体電解質粉末:前記正極活物質粉末の重量比が、10:90以上及び50:50以下である、請求項1又は2に記載のカソライト。
【請求項4】
前記正極活物質粉末が、モノリシック又は多結晶形態を有する粒子を含む、請求項1又は2に記載のカソライト。
【請求項5】
30μm≦D99≦50μmである、請求項1又は2に記載のカソライト。
【請求項6】
少なくとも1.0×10-5S/mのイオン伝導度である、請求項1又は2に記載のカソライト。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のカソライトを作製するためのプロセスであって、
-式:Li(3.5+L+x)Si(0.5+S-x)(0.5+p-x)Ge2x4+aを有する固体電解質粉末を、式:Li1+kM’1-k[式中、M’=Ni1-x’-y’-z’Mnx’Coy’z’、並びに-0.05≦k≦0.05、0≦x’≦0.40、0.05≦y’≦0.40、及び0≦z’≦0.05]を有する正極活物質粉末と混合して、
混合物を得る工程と、
-前記混合物を、少なくとも600℃及び最大800℃の温度の酸化雰囲気において加熱することにより、請求項1~6のいずれか一項に記載の前記カソライトを得る工程と、を含む、プロセス。
【請求項8】
前記固体電解質粉末及び前記正極活物質粉末が一緒に混合され、
前記固体電解質粉末:前記正極活物質粉末の重量比が、10:90以上及び50:50以下である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記混合物を加熱する前記工程が、少なくとも1時間及び最大20時間中に実施される、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記混合物を加熱する前記工程が、少なくとも15体積%の酸素を含む雰囲気において実施される、請求項7又は9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記混合物を加熱する前記工程が、空気中において実施される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の前記カソライト、固体状電解質、及びLi金属アノードを含む、固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム超イオン伝導体(LISICON)型固体電解質粉末(SE)と、正活物質(positive active material)と、を含む、カソライトに関し、上記カソライトは高い熱安定性を有する。本発明によるカソライトは、電気自動車(EV)で使用されることになる固体状充電式リチウムイオン電池(又は固体状電池用のSSB)に好適である。
【背景技術】
【0002】
一般式:Li4±xSi1-xで表されるLSPO(リチウムシリコンリン酸化物)電解質は、高い化学的及び電気化学的安定性、高い機械的強度、及び高い電気化学的酸化電圧を有し、この固体電解質をEV用途に適したものにする。
【0003】
しかしながら、SSBのカソライトを形成するためのこのようなSEと正極活物質との適合性は、SE及び正極活物質の両方の適切な選択を必要とする本質的な態様である。
【0004】
本発明の枠組みにおいて、カソライトは、SEと正極活物質粉末との混合物を、空気のような酸化雰囲気下で少なくとも600℃の温度で加熱することから生じる化合物を意味する。
【0005】
SSBにおけるカソライトの使用は、正極活物質とSEとの間のより良好な界面接触を可能にすることによって、上記カソード活物質を含むSSBの容量を改善する目的を有する。
【0006】
したがって、カソライトに変換されることになる酸化物SEは、600℃以上の温度で、正極材料とともに安定であるべきである。正極材料を有するSEの化学的及び電気化学的不安定性は、SEと正極活物質との間の界面反応を引き起こし得る。例えば、LiCoOの正極活物質と、GeSを発生させるLi10GeP12電解質又は総イオン抵抗の増加を担う界面上の硫化コバルト化合物との間の反応。
【0007】
このようなカソライトから作製された固体状電池の使用をより高性能にし、EVアプリケーションの分野でより魅力的にするために、安定したカソライトに変換することができる正極材料を設計する必要性がある。
【0008】
加えて、EV用途に好適な正極活物質は、十分な体積エネルギー密度を有するリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(以下、「NMC」と称される)系正極材料である。
【0009】
更に、NMC正活物質を使用して、未加工Co材料の著しい価格の変動の後に、あまり望ましくないCoの含有量を下げて、より高い容量を得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、600℃以上の温度で、NMC系正極活物質との改善された熱安定性を有するSEを提供することである。
【0011】
更に、SEとNMC系正極活物質との混合物の熱処理から得られたカソライトは、十分な第1の放電容量、すなわち、少なくとも160.0mAh/gの第1の放電容量を実証するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
金属Liは、本発明によるカソライトを含むSSBのアノードとして本発明の範囲で使用することができる。
【0013】
本発明によるSEは、カソライトとLi金属系アノードとの間の固体状電解質として使用されるようにすることができることを前提として、SEは、SSBの上記Li金属系アノードに適合しなければならず、SEが、上記アノードと接触している間、600℃以上の温度で熱安定性のままでなければならないことを意味する。
【0014】
これらの目的は、
(i)式:Li(3.5+L+x)Si(0.5+S-x)(0.5+p-x)Ge2x4+a[式中、-0.10≦L≦0.10、-0.10≦s≦0.10、-0.10≦p≦0.10、-0.40≦a≦0.40、及び0.00≦x≦0.30]を有する固体電解質粉末と、
(ii)式:Li1+kM’1-k[式中、M’=Ni1-x’-y’-z’Mnx’Coy’z’、並びに-0.05≦k≦0.05、0≦x’≦0.40、0.05≦y’≦0.40、及び0≦z’≦0.05]を有する正極活物質粉末と、を含み、上記正極活物質粉末が、層状のR-3m結晶構造を有する粒子を含み、上記カソライトが、D99≦50μmと、少なくとも1.0×10-6S/mのイオン伝導度と、を有する、請求項1に記載のカソライトを提供することによって達成される。
【0015】
ドーパントAは、例えば、Al、Ca、W、B、Si、Ti、Mg、及びZrのうちいずれか1つ以上であり得る。
【0016】
LSPO系SEを含む固体電池における請求項1に記載のカソライトの使用により、>170mAh/gの第1の放電容量が達成されることを可能することが実際に実証されている(補遺.表3の実施例4-1)。
【0017】
加えて、本発明によるカソライトを構築するSEは、600℃以上の温度でLi金属系アノードに接触している間、熱的に安定であり、このタイプのアノードを含むSSBに使用するためのその好適性を裏付けることが実証されている(補遺.図8の(b))。
【0018】
本発明は、以下の実施形態:
1.-リチウムイオン固体電池で使用されることになるカソライトであって、
(i)式:Li(3.5+L+x)Si(0.5+S-x)(0.5+p-x)Ge2x4+a[式中、-0.10≦L≦0.10、-0.10≦s≦0.10、-0.10≦p≦0.10、-0.40≦a≦0.40、及び0.00≦x≦0.30]を有する固体電解質粉末と、
(ii)式:Li1+kM’1-k[式中、M’=Ni1-x’-y’-z’Mnx’Coy’z’、並びに-0.05≦k≦0.05、0≦x’≦0.40、0.05≦y’≦0.40、及び0≦z’≦0.05]を有する正極活物質粉末と、を含み、上記正活物質粉末が、層状のR-3m結晶構造を有する粒子を含み、上記カソライトが、D99≦50μmと、少なくとも1.0×10-6S/mのイオン伝導度と、を有する、カソライト、に関する。
【0019】
この第1の実施形態では、Aは、Li、M’、及びO元素とは異なるドーピング元素である。
【0020】
ドーパントAは、例えば、Al、Ca、W、B、Si、Ti、Mg、及びZrのうちいずれか1つ以上であり得る。
【0021】
2.-上記混合物が、固体電解質(10:90以上及び50:50以下の正極活物質との重量比)を含む、実施形態1に記載のカソライト。
【0022】
3.-正極活物質粉末が、モノリシック又は多結晶形態を有する粒子を含む、実施形態1又は2に記載のカソライト。
【0023】
4.-30μm≦D99≦50μmである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のカソライト。
【0024】
5.-少なくとも1.0×10-5S/mのイオン伝導度である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のカソライト。
【0025】
6.-実施形態1~5のいずれか1つに記載のカソライトを作製するためのプロセスであって、
-式:Li(3.5+L+x)Si(0.5+S-x)(0.5+p-x)Ge2x4+aを有する固体電解質粉末を、式:Li1+kM’1-k[式中、M’=Ni1-x’-y’-z’Mnx’Coy’z’、並びに-0.05≦k<0.05、0≦x’<0.40、0.05≦y’≦0.40、及び0≦z’≦0.05]を有する正極活物質粉末と混合して、混合物を得る工程と、
-混合物を、少なくとも600℃及び最大800℃の温度の酸化雰囲気において加熱することにより、実施形態1~5のいずれか1つに記載のカソライトを得る工程と、を含む、プロセス。
【0026】
任意に、固体電解質粉末は、少なくとも0.1μm及び最大10μmのD50を有する。
【0027】
正活物質粉末は、少なくとも1μm及び最大25μmのD50を有し得る。
【0028】
7.-固体電解質粉末及び正極活物質粉末が、固体電解質(10:90以上及び50:50以下の正極活物質との重量比)中で一緒に混合される、実施形態6に記載のプロセス。
【0029】
8.-混合物を加熱する工程が、少なくとも1時間及び最大20時間中に実施される、実施形態6又は7に記載のプロセス。
【0030】
9.-混合物を加熱する工程が、具体的には空気中の、少なくとも15体積%の酸素を含む雰囲気において実施される、実施形態6~8のいずれか1つに記載のプロセス。
【0031】
10.-実施形態1~6のいずれか1つに記載のカソライトと、固体電解質粉末と、を含む、複合物。
【0032】
11.-実施形態10に記載の複合物と、Li金属アノードと、を含む、固体電池。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】(a)多結晶NMC811(M’=Ni0.80Mn0.10Co0.10)、(b)Li3.5Si0.50.5電解質と共焼結した後の多結晶NMC811(実施例1)、及び(c)プリスチンLi3.5Si0.50.5のX線回折パターンの比較。
図2】(a)多結晶NMC622(M’=Ni0.60Mn0.20Co0.20)、(b)Li3.5Si0.50.5電解質と共焼結した後の多結晶NMC622(実施例2A-1)、(c)Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+a(x=0.1)電解質と共焼結した後の多結晶NMC622(実施例2A-2)、及びプリスチンLi3.5Si0.50.5のX線回折パターンの比較。
図3】(a)モノリシックNMC622(M’=Ni0.60Mn0.20Co0.20)、(b)Li3.5Si0.50.5電解質と共焼結した後のモノリシックNMC622(実施例2B-1)、(c)Li(3.5+x)Si(0.5-x)P(0.5-x)Ge2x4+a(x=0.2)電解質と共焼結した後のモノリシックNMC622(実施例2B-2)、及び(d)プリスチンLi3.5Si0.50.5のX線回折パターンの比較。
図4】(a)多結晶NMC111(M’=Ni1/3Mn1/3Co1/3)、(b)Li3.5Si0.50.5電解質と共焼結した後の多結晶NMC111(実施例3)、及び(c)プリスチンLi3.5Si0.50.5のX線回折パターンの比較。
図5】(a)カソード材料LiNi0.5Mn1.5、(b)Li3.5Si0.50.5電解質と共焼結した後のカソード材料LiNi0.5Mn1.5(比較例1)、及び(c)プリスチンLi3.5Si0.50.5のX線回折パターンの比較。
図6】多結晶NMC622 (M’=Ni0.60Mn0.20Co0.20)、Li3.5Si0.50.5電解質と共焼結した後の多結晶NMC622(実施例2A-1)、及びLi(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+a(x=0.1)電解質と共焼結した後の多結晶NMC622(実施例2A-2)を使用した、電圧グラフと容量グラフとの比較。
図7】スピネルLiNi0.5Mn1.5、及びLi3.5Si0.50.5電解質と共焼結した後のスピネルLiNi0.5Mn1.5(比較例1)を使用した、電圧グラフと容量グラフとの比較。
図8】(a)250℃で溶融Li金属に曝露する前、及び(b)15分の曝露後のLSPOのX線回折パターンの比較。
図9】Li3.5Si0.50.5電解質と700℃で共焼結した後のモノリシックNMC622(M’=Ni0.60Mn0.20Co0.20)(実施例4-1)、 及びLi3.5Si0.50.5電解質と900℃で共焼結した後のモノリシックNMC622(比較例2-2)を使用した、電圧グラフと容量グラフとの比較。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施を可能にするために、以下の発明を実施するための形態において、好ましい実施形態を詳細に記載する。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態に関して記載するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではないことが理解されるだろう。それとは対照的に、本発明は、以下の発明を実施するための形態を考慮することから明らかになるように、多数の代替物、変形物、及び均等物を含む。
【0035】
特に、本発明は、Li金属系アノードと、NMCタイプの正極活物質とLSP(G)O電解質との混合物から作製されたカソライトと、を含む、SSBの電解質としてのLSP(G)Oの使用に関する。
【0036】
多結晶NMC及びモノリシックNMCの両方を、本発明における正極活物質として使用することができる。「モノリシック」形態とは、二次粒子が基本的に1つの一次粒子のみを含有する形態を指す。文献では、それらは、単結晶材料、モノ結晶材料、及び一体材料とも称される。一次粒子の好ましい形状は、円礫(pebblestone)形状と説明できよう。モノリシック形態は、高い焼結温度、より長い焼結時間、及びより高過剰のリチウムの使用によって達成することができる。「多結晶」形態は、二次粒子が、2つ以上の一次粒子を含有する形態を指す。
【0037】
以下に提供された実施例では、本発明による粉末状正極活物質、及び上記正極活物質から作製されたカソライトは、600℃よりも高い温度で安定したままであることが実証される。更に、本発明によるカソライトはまた、Li金属アノードの存在下での安定性も実証される。したがって、本発明によるカソライトとLi金属系アノードとの組み合わせは、EV用途に好適な優れた熱安定性を有するSSBをもたらすことができる。
【0038】
(固体)カソライト材料は、LSPGO SE組成物をNMC組成物と混合して、酸化雰囲気下で、600℃~800℃で1~20時間の熱処理を受けたカソライトを生成することによって調製される。具体的には、上記カソライトを生成するための方法は、LSPGO SE及びNMC組成物がブレンドされて、混合物を提供し、次いで焼結される、共焼結プロセスからなる。
【0039】
カソライト中のLSP(G)O材料及びNMC正極活物質の組成物の各々を得るためのいくつかの方法がある。カソライト中の固体電解質と正極活物質との間のメジアン粒径(D50)の差は、2μm以上であるが、それらは、エルボージェット空気分級機(elbow jet air classifier)(https://elcanindu.com/elbo-jet-air-classifier/)などの分級機を使用して、分離することができる。別個の粒子の組成物を、E)誘導結合プラズマ法(Inductively Coupled Plasma method)に従って測定して、カソライト中のLSP(G)O材料及びNMC正極活物質の組成物の各々を決定する。
【0040】
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)における電子エネルギー損失分光法(Electron Energy Loss Spectroscopy、EELS)の使用は、カソライト中のLSP(G)O材料及びNMC正極活物質の組成物の各々を得るための別の例である。元素及びそれらの原子量は、断面のLSP(G)O粒子及びNMC正極活物質粒子のEELSを別個に測定することによって直接得ることができる。
【0041】
本発明では、LSPO及びLSPGO材料とNMC正極活物質との適合性を、(すなわち、カソライト中での)共焼結プロセスの前後のX線回折(XRD)パターンの比較によって調査した。XRD調査から検出された構造的変化、例えば、格子パラメータ上で観察された変化は、材料間の不適合性の指標である。表1は、本発明で使用された実施例及び比較例のリストを示しており、これらは、混合比と共焼結温度とのいくつかの組み合わせを有する正極活物質と固体電解質粉末との混合物である。NMCのいくつかの組成物を調査し、ここで、NMCに続く数は、それぞれ、混合物中のNi、Mn、及びCoのモル分率を示す。
【0042】
本発明の粉末状正極活物質の固体電解質とLi金属との化学的安定性を、溶融Li金属との直接接触によって調査した。溶融Li金属との曝露後のLSPGOペレットXRD回折パターンを、曝露前の元のパターンと比較する。
【0043】
実施例では、以下の分析方法を使用する。
【0044】
A)X線回折試験
以下の手順により、円柱形ペレットを調製する:0.175gの粉末状固体電解質化合物を、1.275cmの直径を有する型に入れる。230MPaの圧力を型に加える。そのペレットを、酸素雰囲気において、700℃で3時間、焼結する。
【0045】
ペレットサンプルのX線回折パターンを、Rigaku X-Rayで収集する。
1.5418Åの波長で放射するCu Ka放射源を使用した回折計(D/MAX-2500/PC)。機器の構成は、1°のソーラースリット(Sollerslit、SS)、1°の発散スリット(divergenceslit、DS)、及び0.15mmの受光スリット(receptionslit、RS)に設定する。回折パターンを、毎分4°の走査速度で10-70°(2θ)の範囲で得る。得たXRDパターンを、X’Pert HighScore Plusソフトウェアを使用したリートベルト精密化法(Rietveld refinement method)によって解析する。ソフトウェアは、信頼性の高いリートベルト精密化解析結果を有する粉末パターン解析ツールである。
【0046】
B)コインセル試験
正極の調製のために、0.16gのNMC、0.03gの伝導体(スーパーP)、及び0.125gの8重量%のPVDF結合剤を含有するカソライトを、自転公転ミキサー(Thinky mixer)を使用して、NMP溶媒中で20分間混合する。均一化したスラリーを、ギャップが15μmであるドクターブレードコータを使用して、アルミニウム箔の片面上に塗り広げる。スラリーコーティング箔を乾燥させ、直径8mmの円形状に打ち抜く。Swagelokセルを、正極、13mmの直径を有するセパレータ、及び負極として11mmの直径を有するリチウム箔の構成を有する、アルゴン充填グローブボックス内で組み立てる。EC/DMC(1:1重量%)中の1M LiPFを、電解質として使用する。各セルを、自動電池サイクラーWonatech-WBCS3000を使用して、25℃でサイクル循環する。NMC用の4.3~2.5V/Li金属窓範囲、及びLNMO用の5.0~1.5V/Li金属窓範囲内の0.1Cでのコインセル試験を使用して、サンプルレート性能を評価する。
【0047】
C)粒径分布
粒径分布(psd)測定で使用されたカソライト粉末サンプルを、めのう乳鉢及び乳棒を使用して、カソライト粉末サンプルを手で砕くことによって調製する。psdは、水性媒体中にカソライト粉末サンプルの各々を分散させた後、Hydro MV湿式分散付属品を備えるMalvern Mastersizer 3000を使用することによって測定する。カソライト粉末の分散を改善するために、十分な超音波照射及び撹拌を適用し、適切な界面活性剤を導入する。D50及びD99を、Hydro MV測定値によるMalvern Mastersizer 3000から得た累積体積%分布の50%及び99%での粒径として定義する。
【0048】
D)電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)
以下の手順により、円柱形ペレットを調製する:0.175gの粉末状固体電解質化合物サンプルを、1.275cmの直径を有する型に入れる。230MPaの圧力を型に加える。そのペレットを、酸素雰囲気において、700℃で3時間、焼結する。EIS測定を可能にするために、銀ペーストをペレットの両側に塗布して、Ag/ペレット/Agのサンプル構成を有する。
【0049】
EIS測定を、Ivium-n-Stat計器(一体型周波数応答分析器を備えたポテンショスタット/ガルバノスタット)を使用して実施する。この計器は、周波数掃引に対するインピーダンス応答を収集するための電池/燃料セルの試験方法で一般的に使用される。測定周波数範囲は、10Hz~10-1Hzである。設定点/ディケードは10であり、設定電圧は0.05Vである。測定を、室温(25℃で)で実行する。リチウムイオン伝導度を、以下に提供する等式に基づいて計算する:
【0050】
【数1】
【0051】
式中、Lはペレットの厚さであり、Aはサンプルの面積であり、Rは電気化学的インピーダンス分光法によって得た抵抗である。
【0052】
このEIS測定値の標準偏差は、2.0×10-8である。
【0053】
E)誘導結合プラズマ(ICP)
正極活物質、固体電解質、及びカソライトの組成物を、Agillent ICP720-ESを使用した誘導結合プラズマ(ICP)法によって測定する。1グラムの粉末サンプルを、三角フラスコ(Erlenmeyer flask)内の50mLの高純度塩酸(溶液の総量に対して少なくとも37重量%のHCl)に溶解する。粉末が完全に溶解するまで、フラスコを時計皿でカバーし、380℃のホットプレート上で加熱する。室温まで冷却した後、三角フラスコからの溶液を250mLのメスフラスコに注ぎ込む。その後、メスフラスコの250mLの標線まで脱イオン水を充填し、続いて、完全に均一化させる。ピペットで適切な量の溶液を取り出し、2回目の希釈のために250mLメスフラスコに移し、メスフラスコの250mLの標線まで内部標準物質及び10%塩酸を充填した後、均一化させる。最後に、この溶液をICP測定に使用する。
【0054】
LSPO及びLSPGOのための以下の調製方法を実施例で使用する。
【0055】
LSPO及びLSPGOの調製
LSPO及びLSPGOを、ブレンド及び高温反応によって従来の固体状プロセスで合成する。LSPOを、以下の工程によって調製する:
1)混合:対応するモル比に従って、約6.0gの総重量を有するLiCO、SiO、及び(NHHPOを、140mlの脱イオン水と、3、5、及び10mmの直径を有する各100gのYドープZrOボールとともに250mlのボトルに入れた。ボトルを、300RPMでの従来のボールミル装置内で、24時間回転させた。均一に混合したスラリーを、90℃で12時間、乾燥させた。
2)焼成:乾燥した混合物を、900℃で6時間、Ar雰囲気下で焼成した。
3)粉砕:1.4gの焼成した粉末を、30mlのアセトンと、1mmの直径(dimeter)を有する3.4gのYドープZrOボールとともに45mlのボトルに入れた。ボトルを、500RPMでの従来のボールミル装置内で、6時間回転させた。粉砕された粉末を、70℃で6時間、乾燥させた。
4)焼結:乾燥させた粉末を、酸素雰囲気において、700℃で3時間焼結して、Li3.5Si0.50.5の式を有する最終LSPO固体電解質化合物を得た。
【0056】
Li(3.5+x)Si(0.5-x)(0.5-x)Ge2x4+aの一般式を有するGe含有LSPOサンプル(LSGPO)を、GeOを混合工程で添加し、LiCO、SiO、及び(NHHPOの量をx=0.10の目標モル比に従って混合工程で調整したことを除いて、LSPOと同じように調製する。
【0057】
LSPO及びLSGPOサンプルは、2μmのメジアン粒径(D50)を有する。
【0058】
本発明は、以下の実施例で更に例示され、正極材料を有するLSPO及びLSPGOの化学的安定性を調査する。
【0059】
[実施例1]
多結晶NMC811正極活物質を、以下の工程に従って調製する。
【0060】
1)金属含有前駆体(MBP)の調製
MBP811を、オーバーフロー管及び400Wのインペラモータを使用して、10Lの液体体積を有する反応器内で実施された共沈プロセスによって調製した。直径10cmのインペラを、800RPMで撹拌する。反応器は、激しい撹拌を可能にする4つのバッフルを有する。50L/時の窒素ガスの流れを、液体レベルの上に適用して、激しい撹拌による酸化を回避する。全濃度110g/Lの金属を有する硫酸ニッケル、硫酸マンガン、及び硫酸コバルト(NiSO、MnSO、CoSO)を含有する3つの溶液を調製して、混合MeSO溶液を取得する(式中、Meは、Ni、Mn、及びCoからなる)。400g/LのNaOHの溶液及び25%の未希釈のアンモニア溶液を使用する。シード調製及びコア沈殿を含む、2工程プロセスを使用する。
【0061】
1-1)シード調製:
Ni0.80Mn0.10Co0.10(OH)シード前駆体を、6時間の特定の滞留時間を有する連続撹拌槽反応器(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)内で典型的な共沈を使用して調製する。また、シードが最終粒子のごく一部のみであり、そのためその組成物に影響を与えないため、シード前駆体の組成物も異なる場合がある。開始時に、反応器を水及びアンモニアで充填して、内部に15g/Lのアンモニア溶液を調達する。反応器内の温度は、60℃である。反応器を出発溶液で充填した後、異なる試薬(M’SO溶液、NaOH溶液、NH溶液)を、異なる注入点で同時に反応器内にポンプ注入し、アンモニアと金属との比を1:1に保ち、pHを約11.7に保つ。沈殿反応中、溶液中の各金属イオンに対して2個超のOH-イオンがあるべきである。24時間後、反応器は定常状態にあり、D50は5~20μmであり、オーバーフローからのスラリーを収集する。沈殿した金属水酸化物を洗浄し、保護雰囲気下で濾過して、溶解した塩及びアンモニアを除去する。200gの湿潤ケーキを1Lの水中で再パルプ化し、ボールミルによる機械的粉砕で処理する。この処理により、D50のサイズが2μm未満まで減少する。
【0062】
1-2)MBP粒子の沈殿:
MBP811を、3時間の特定の又は平均の滞留時間を有する連続撹拌槽反応器(CSTR)内で調節共沈を使用して調製する。Niを有するM’SO溶液:Mn:0.80:0.10:0.10組成物のCOモル比を使用する。開始時に、反応器を水及びアンモニアで充填して、内部に15g/Lのアンモニア溶液を得る。反応器内の温度は、60℃である。反応器を出発溶液で充填した後、異なる試薬(M’SO溶液、NaOH溶液、NH溶液)を、異なる注入点で同時に反応器内にポンプ注入し、アンモニアと金属との比を1:1に保ち、pHをNaOH溶液で約11.7に保つ。溶液中の各金属イオンに対して2個超のOH-イオンがあるべきである。6時間後、S1からのシード100gを反応器に添加する。反応器内の粒径は、直ちに大きくなり、スパン(span)が狭くなる。少なくとも6時間後、スパンは、0.9を下回る値まで徐々に縮小する。この時点で、粒子は約6~11μmまで成長している。ここで、オーバーフロー中のスラリーを3Lのビーカ内に回収し、粒子をビーカ内に沈降させる。ビーカを30分ごとにデカントし、スラリーを反応器に戻し入れる。粒子が十分なサイズ(約11μm)に達したときに試薬の投入を停止する。
【0063】
2)正極活物質の調製
MBP811をリチウム源とブレンドし、続いて高温で焼結することによって、多結晶正極活物質P-NMC811を得る。LiOHをリチウム源として選択し、ブレンドを1.00のLiと金属とのモル比(Li/M’)を有するように設計する。この30gのブレンドを、780℃のるつぼ内で焼結する。目標温度での焼結を、酸素雰囲気下で12時間実施する。焼結された凝集化合物を破砕し、ふるい分けする。P-NMC811は、11μmのメジアン粒径(D50)を有する。
【0064】
P-NMC811とLSPOとを重量比2:1の混合比に従って混合し、実施例1の材料を、酸素雰囲気(すなわち、空気のような)において、700℃で3時間、熱処理することによって作製する。
【0065】
図1では、(a)におけるP-NMC811のXRDパターンを、LSPO(b)及びプリスチンLSPO(c)を有する共焼結されたP-NMC811のパターンと比較する。(b)における回折図(diffractogram)は、高温での共焼結後であっても結晶構造が維持されることを示す同様のピークポジションを示す。(006)/(012)平面に対応する約38°のピークの分割は、典型的なR-3m層状構造を示す。(b)における全ての追加のピーク、例えば、21~25°の範囲は、グラフ(c)と直接比較することができるようにLSPO相に由来する。表2及び3は、プリスチンNMC、共焼結NMC+LSPO、及びプリスチンLSPOのリートベルト精密化後の格子パラメータを示した。共焼結の前後から得た比較的変化しない格子パラメータ値は、適合性を確認する結晶サイズ及び構造を変化させないことを示す。
【0066】
[実施例2A]
NMC622の設計された組成を有する多結晶形態を有するリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物は、Cellcore(登録商標)HX12グレードで市販のUmicoreの独自の製品である。生成物は、11.8μmのメジアン粒径(D50)、BET=0.30m/g、及びLiを有し:M’=1.03:1、及びラベル付けされたP-NMC622。
【0067】
実施例2A-1 材料を、P-NMC622が正極活物質として使用することを除いて、実施例1の調製と同様の様態を通して得る。
【0068】
実施例2A-2 材料を、P-NMC622を正極活物質として使用し、LSPGOを電解質として使用することを除いて、実施例1の調製と同様の様態を通して得る。
【0069】
図2は、プリスチンP-NMC622(a)のXRDパターンを、LSPO(b)とLSPGO(c)との混合物についての各々の共焼結パターンと比較している。(b)及び(c)のNMC相における更なるピークの参照として、プリスチンLSPO回折パターンが(d)に表示されている。
【0070】
表2及び3に、共焼結後のNMC、LSPO、及びLSPGO構造の格子パラメータを示す。格子パラメータ値は、未変化の結晶サイズ及び構造を示す一定のままである。
【0071】
[実施例2B]
Li(Ni0.60Mn0.20Co0.20)Oの目標式を有するM-NMC622化合物、及びモノリシック形態を、二重焼結プロセス及び以下のように行う湿式ミル粉砕プロセスを通して得る:
1)共沈:約4μmのD50を有する混合遷移金属水酸化物を、KR101547972B1(6頁25行目~7頁32行目)に記載のプロセスによって調製する。
2)1回目のブレンド:リチウム欠乏焼結前駆体を得るために、LiCO及び共沈生成物を、0.85のLi/M’比で、30分間、Henschelミキサーで均一にブレンドして、1回目のブレンドを得る。
3)1回目の焼結:1回目のブレンドを、酸素含有雰囲気下、935℃で10時間焼結する。この工程から得られた生成物は、Li/M’=0.85を有する粉末状リチウム欠乏焼結前駆体である。
4)ブレンド:Liの化学量論量をLi/M’=1.01に補正するために、リチウム欠乏焼結前駆体をLiOH・HOとブレンドする。ブレンドをミキサー内で30分間実施して、2回目のブレンドを得る。
5)2回目の焼結:2回目のブレンドを、ローラーハースキルン(RHK)において、酸素含有雰囲気下、890℃で10時間焼結する。焼結されたブロックをジョークラッシュ破砕装置によって破砕する。
6)湿式ミル粉砕:凝集している中間粒子をモノリシックな一次粒子に破壊するために、湿式ボールミル粉砕プロセスを適用する。5Lのボトルを、1Lの脱イオン水、5.4kgのZrOボール、及びプロセス番号5からの1kgの2回目の焼結生成物で充填する。ボトルを市販のボールミル装置上で回転させる。
7)回復焼成(3回目の焼結):湿式ボールミル生成物を、炉において、酸素含有雰囲気下、750℃で10時間加熱する。焼結化合物をふるい分けする。
【0072】
M-NMC622を正極活物質として使用することを除いて、実施例2B-1材料を、実施例1の調製と同様の様態を通して得る。
【0073】
M-NMC622を正極活物質として使用し、LSPGOを電解質として使用することを除いて、実施例2B-2材料を、実施例1の調製と同様の様態を通して得る。
【0074】
図3のXRDパターン比較は、共焼結後に結晶構造が一定のままである、図2と同様の傾向を示す。結果は、LSPO及びLSPGOもまた、M-NMC622正極活物質と適合性であることを示す。
【0075】
表2及び3に、共焼結後のNMC、LSPO、及びLSPGO構造の格子パラメータを示す。格子パラメータ値は、未変化の結晶サイズ及び構造を示す一定のままである。
【0076】
[実施例3]
NMC111[Li1.13Ni0.34Mn0.33Co0.330.97(OH)1.03]の設計された組成を有する多結晶形態を有するリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物。最終生成物は、10.1μmのメジアン粒径(D50)、BET=0.28m/g、及びLi:M’=1.095:1、並びにラベル付けされたNMC111を有する。
【0077】
P-NMC111を正極活物質として使用することを除いて、実施例3の材料を、実施例1の調製と同様の様態を通して得る。P-NMC111とXRDを通して調査した電解質間の構造適合性を、図4に表示している。
【0078】
表2及び3に、共焼結後のNMC、LSPO、及びLSPGO構造の格子パラメータを示す。格子パラメータ値は、未変化の結晶サイズ及び構造を示す一定のままである。
【0079】
比較例1:
スピネル構造化したLiNi0.5Mn1.5、S-LNMOを、以下の工程に従って調製する:
1)ブレンド:対応するモル比に従って、約2.4gの総重量を有するLiCO、NiO、及びMnを、30mlのアセトンと、1mmの直径(dimeter)を有する3.4gのYドープZrOボールとともに45mlのボトルに入れた。ボトルを、500RPMでの従来のボールミル装置内で、6時間回転させた。
2)乾燥:ブレンドした粉末を、70℃で6時間、乾燥させる。
3)焼結:乾燥粉末を、900℃で24時間、熱処理する。
【0080】
S-LNMOを正極活物質として使用することを除いて、比較例1を実施例1における共焼結サンプルの調製と同様の様態において調製する。
【0081】
図5のX線回折パターンは、本発明におけるスピネル構造化した正極活物質についての適合性調査を示す。比較例1の回折図は、両方の成分からのピーク寄与を依然として示す。しかしながら、表2に表示する格子パラメータaは、LNMO中の8.179ÅからLSPOと混合した後の8.167Åまでの大きな変化を示し、これは2つの材料の不適合性を示している。
【0082】
説明実施例1
Li金属を有する電解質の安定性を調査するために、LSPGOを溶融Li金属と直接接触させる。LSPGOペレットを、0.175gの粉末を2349.7kgf/cmの圧力下で加圧し、続いて700℃で3時間、O雰囲気下で焼結することによって作製する。Li箔の細片を、250℃のホットプレート上で加熱したステンレス鋼プレート上に配置する。溶融Liを、調製したLSPGOペレット上に直接注ぎ、ペレットを15分間観察する。全ての実験を、Ar雰囲気を有するグローブボックス内で行う。ペレットを熱暴走について視覚的に観察し、構造をX線回折を使用して調査した。
【0083】
[実施例4]
M-NMC622とLSGPOとの混合比が1:1であることを除いて、実施例4-1を実施例2B-1の調製と同様の様態を通して得る。
【0084】
混合物を600℃で焼結することを除いて、実施例4-2を実施例4-1の調製と同様の様態を通して得た。
【0085】
比較例2
表1に表示するように、混合物を500℃、900℃で焼結する、及びそれぞれ焼結しないことを除いて、比較例2-1、比較例2-2、及び比較例2-3を実施例4-2の調製と同様の様態を通して得る。
【0086】
NMCを有するLSPO及びLSPGOの電気化学的安定性
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
実施例2におけるP-NMC622を有するLSPO及びLSPGOの電気化学的安定性を、充電-放電測定を通して比較する。容量を、正極活物質の量で正規化する。図6に示すように、4.3~2.5Vの窓範囲で評価を行う。P-NMC622についての第1の充電値及び放電値は、それぞれ176.52及び169.16mAh/gである。容量の小さい変化を、LSPO電解質との組み合わせで観察し、この値は、それぞれ第1の充電容量値及び放電容量値について164.97mAh/g及び164.68mAh/gである。P-NMC622とLSPGOとの組み合わせは、LSPOとの混合物と比較して容量値が少し高くなる。これらは、各々第1の充電容量について166.44mAh/gであり、第1の放電容量について165.48mAh/gである。Geをドープした後の、より導電性のLSPOに主に関するわずかに高い値。全ての試験片の曲線形状は、NMC622及びSEの電気化学的安定性を同様に示す。対照的に、コインセル評価は、比較例1についての充電容量値及び放電容量値が、プリスチンS-LNMOの充電容量値及び放電容量値と有意な差を有することを示している。図7に示すように、1.5~5.0Vの窓範囲で評価を行う。S-LNMOについての第1の充電値及び放電値は、それぞれ288.14mAh/g及び284.66mAh/gである。容量の大きい差を、LSPO電解質と組み合わせて観察し、この値は、第1の充電容量値及び放電容量値について、それぞれ230.89mAh/g及び211.52mAh/gである。これは、LSP(G)Oを有するP-NMC622混合物の安定性を示すが、LSPOを有するS-LNMOの混合物についてではないことを示す。
【0091】
【表4】
【0092】
表4に表示するようなサイズ分布測定の結果は、実施例4-1、実施例4-2、及び比較例2-2が、約10.2~10.5μmの同様のD50を有することを示す。しかしながら、D99値は、より高い共焼結温度でより大きくなる。例えば、実施例4-1のD99(700℃での焼結から生じる)は34.7μmであるが、比較例2-2のD99(900℃での共焼結から生じる)は143.0μmである。図9に表示するような実施例4-1及び比較例2-2のコインセル特性は、電気化学的性能に対する共焼結温度の影響を示す。ここで、900℃で焼結された比較例2-2は、700℃で焼結された実施例4-1と比較して、低い放電容量を明確に示している。
【0093】
一方、600℃よりも低い共焼結温度も好ましくない。表4に提供するイオン伝導度データはまた、カソライトのイオン伝導度が共焼結温度に依存し、カソライトは、より高い共焼結温度でより導電性であることを実証している。700℃で調製した共焼結から生じる実施例4-1は、10-5S/cmのイオン伝導度を有するが、比較例2-1(500℃での共焼結から生じる)は、10-7S/cmのイオン伝導度を有する、すなわち、実施例4-1のイオン伝導度に関して、100倍の減少をこのサンプルについて観察している。
【0094】
Li金属箔を有する電解質の化学的安定性
Li金属を有するLSPGOの化学的安定性を、溶融Li金属との直接接触を通して調査した。図8に表示するように、溶融Li金属との曝露後のLSPGOペレットXRD回折パターンを、曝露前の元のパターンと比較する。両方の測定で、同じピーク位置を有する回折図を生成し、構造が同じままであることを示す(Li金属との反応の結果として構造的変化はない)。また、ペレットについては、熱暴走又は任意の発熱反応なしに、接触時に非常に安定であることを観察している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9