(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】塩化物イオンセンサ、及び塩化物イオン濃度計測方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/02 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
(21)【出願番号】P 2019046929
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018194321
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「IoT推進のための横断技術開発プロジェクト/Field Intelligence搭載型大面積分散IoTプラットフォームの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章史
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔彦
(72)【発明者】
【氏名】水野 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】福原 克郎
(72)【発明者】
【氏名】河村 直明
(72)【発明者】
【氏名】滝野 晶平
(72)【発明者】
【氏名】井出 周治
(72)【発明者】
【氏名】関谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】植村 隆文
(72)【発明者】
【氏名】吉本 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】根津 俊一
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-184948(JP,A)
【文献】特開2001-165883(JP,A)
【文献】中国実用新案第206208820(CN,U)
【文献】特開2013-019671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/02
G01N 17/00
G01N 33/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物中の塩化物イオン濃度を計測するセンサであって、
前記コンクリート構造物の表面に相互に間隔を隔てて配置される少なくとも一対の電極と、
前記少なくとも一対の電極の間に交流電流を流した状態におけるインピーダンスを測定する測定部とを備え、
前記少なくとも一対の電極が、導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有
し、
前記ホットメルト樹脂が、ポリウレタン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びスチレン系樹脂より選択される熱可塑性樹脂、並びに、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、及び塩ビ系熱可塑性エラストマーより選択される熱可塑性エラストマーよりなる群から選択される1種以上である、塩化物イオンセンサ。
【請求項2】
前記導電性フィラーが、銀または導電性カーボンである、請求項1に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項3】
前記ホットメルト樹脂が、熱可塑性エラストマーを含む、請求項1又は2に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項4】
前記電極が、前記ホットメルト電極上に、導電層を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項5】
前記電極上に、更に基材を有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項6】
前記電極が、シート化されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項7】
前記電極を複数有し、当該複数ある電極が、シート状の基材にパターン状に配置されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項8】
前記電極と前記測定部とが導電性配線で接続され、前記導電性配線の少なくとも一部が、前記基材の少なくとも一方の面に形成されたパターン配線である、請求項5
又は7に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項9】
測定されたインピーダンスに基づく情報の無線送信を行う無線送信部をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項10】
前記無線送信部が、更に電力を供給するバッテリを備える、請求項9に記載の塩化物イオンセンサ。
【請求項11】
コンクリート構造物中の塩化物イオン濃度を計測する計測方法であって、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の塩化物イオンセンサを準備する準備工程と、
前記塩化物イオンセンサが備える少なくとも一対の電極を、前記コンクリート構造物の表面にそれぞれ接着する接着工程と、
前記少なくとも一対の電極間にコンクリート体を介して交流電流を流した状態におけるインピーダンスを測定する測定工程とを有し、
前記接着工程が、前記ホットメルト電極を加熱溶融することによって、コンクリート構造物に接着する工程を含む、塩化物イオン濃度計測方法。
【請求項12】
更に、測定されたインピーダンスから塩化物イオン濃度を算出する算出工程とを有し、
前記算出工程が、少なくとも前記インピーダンスの測定工程により得られた測定されたインピーダンスに基づいて、塩化物イオン濃度を算出する、請求項11に記載の塩化物イオン濃度計測方法。
【請求項13】
前記準備工程が、請求項9又は10に記載の塩化物イオンセンサを準備する準備工程であり、
前記インピーダンスの測定工程により得られた測定されたインピーダンスに基づく情報の無線送信を行う工程を更に有する、請求項11又は12に記載の塩化物イオン濃度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物中の塩化物イオンを検出する塩化物イオンセンサ、及び、塩化物イオン濃度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物中に配設される鉄筋等の金属は、周囲の環境によっては劣化が促進することがある。例えば、塩化物イオン濃度の高い環境下では、当該金属の腐食が促進されやすいことが知られている。そのため、コンクリート構造物中の塩化物イオン濃度を非破壊で測定する方法が検討されている。
【0003】
コンクリート構造物中の塩化物イオン濃度の測定方法の一つとして、導電方式が知られている。導電方式は、概説すると、対象となるコンクリート構造物に交流電流を流した状態で、当該コンクリート構造物のインピーダンスと、当該インピーダンスの位相角ピーク周波数などを測定し、当該コンクリート構造物の水分率などの情報と組み合わせて、塩化物イオン濃度を算出する方法である。
【0004】
上記導電方式に用いられる、様々な測定装置、測定システムが提案されている。
例えば特許文献1には、コンクリート体の特性に関する情報を格納する特性情報格納手段と、コンクリート体の表面に相互に間隔を隔てて配置された一対の電極と、前記一対の電極の相互間に前記コンクリート体を介して交流電流を流した状態におけるインピーダンス又はピーク周波数を測定する測定手段とを備え、前記測定手段を用いて測定されたインピーダンス等の測定値に基づき、前記特性情報を参照して塩分濃度を特定する、コンクリート体の塩分濃度測定システムが開示されている。上記特性情報としては、例えば、インピーダンスと、当該インピーダンスのピーク周波数と、水分率と、塩分濃度とを、相互に対応付ける特性情報等が含まれている。特許文献1によれば、上記システムにより、コンクリート体の塩分濃度を、測定対象となる建築物に出向いて簡易かつリアルタイムに測定することができるとされている。
【0005】
また特許文献2には、コンクリート体の表面に相互に間隔を隔てて配置された一対の電極と、前記一対の電極の相互間に前記コンクリート体を介して交流電流を流した状態におけるインピーダンスと、当該インピーダンスの位相角がピークになる位相角ピーク周波数とを測定する測定手段と、前記コンクリート体の水分率、又は前記コンクリート体が配置された環境の水蒸気量を取得する水分情報取得手段と、前記測定手段にて測定された前記インピーダンスと前記位相角ピーク周波数と、前記水分情報取得手段にて取得された複数の前記水分率又は複数の前記水蒸気量に基づいて、前記コンクリート体の塩化物濃度を評価するための評価値を算出する算出手段と、前記算出手段にて算出された前記評価値に基づいて、前記コンクリート体の塩化物濃度を特定する特定手段とを備えた、コンクリート体の塩化物濃度測定システムが開示されている。特許文献2によれば、水蒸気量等の外的要因の影響を受けやすいインピーダンスや位相角ピーク周波数について、当該外的要因の影響を考慮することにより、コンクリート体の塩化物濃度を正確に測定することが可能となるとされている。
なお、特許文献1及び2のシステムにおいては、上記電極として真鍮が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-184948号公報
【文献】特許第6338238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンクリート構造物中に配設される鉄筋等の金属の状態を推定するためには、塩化物イオン濃度の長期的なモニタリングが必要である。本発明者らは、塩化物イオンセンサをコンクリート構造物に設置して、定点で長期的にモニタリングすることを検討した。しかしながら、コンクリート構造物表面に配置される電極は、コンクリート中の塩化物イオンにより劣化しやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、長期的なモニタリングが可能な塩化物イオンセンサ、及び塩化物イオン濃度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは耐候性に優れ、コンクリート表面への接着性にも優れた電極を用いることにより、上記課題を解決できるとの知見を得て本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本実施の塩化物イオンセンサは、コンクリート構造物中の塩化物イオン濃度を計測するセンサであって、
前記コンクリート構造物の表面に相互に間隔を隔てて配置される少なくとも一対の電極と、
前記少なくとも一対の電極の間に交流電流を流した状態におけるインピーダンスを測定する測定部とを備え、
前記少なくとも一対の電極が、導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有する。
【0011】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、前記導電性フィラーが、銀または導電性カーボンである。
【0012】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、前記ホットメルト樹脂が、熱可塑性エラストマーを含む。
【0013】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、前記電極が、前記ホットメルト電極上に、導電層を有する。
【0014】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、前記電極上に、更に基材を有する。
【0015】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、前記電極が、シート化されている。
【0016】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、前記電極を複数有し、当該複数ある電極が、シート状の基材にパターン状に配置されている、
【0017】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は前記電極と前記測定部とが導電性配線で接続され、前記導電性配線の少なくとも一部が、前記基材の少なくとも一方の面に形成されたパターン配線である。
【0018】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、検出されたインピーダンスに基づく情報の無線送信を行う無線送信部をさらに備える。
【0019】
上記塩化物イオンセンサの一実施形態は、前記無線送信部が、更に電力を供給するバッテリを備える。
【0020】
本実施の塩化物イオン濃度計測方法は、コンクリート構造物中の塩化物イオン濃度を計測する計測方法であって、
前記塩化物イオンセンサを準備する準備工程と、
前記塩化物イオンセンサが備える少なくとも一対の電極を、前記コンクリート構造物の表面にそれぞれ接着する接着工程と、
前記少なくとも一対の電極間にコンクリート体を介して交流電流を流した状態におけるインピーダンスを測定する測定工程とを有し、
前記接着工程が、前記ホットメルト電極を加熱溶融することによって、コンクリート構造物に接着する工程を含む。
【0021】
上記塩化物イオン濃度計測方法の一実施形態は、更に、測定されたインピーダンスから塩化物イオン濃度を算出する算出工程とを有し、
前記算出工程が、少なくとも前記インピーダンスの測定工程により得られた測定されたインピーダンスに基づいて、塩化物イオン濃度を算出する。
【0022】
上記塩化物イオン濃度計測方法の一実施形態は、前記準備工程が、請求項7または8に記載の塩化物イオンセンサを準備する準備工程であり、
前記インピーダンスの測定工程により得られた測定されたインピーダンスに基づく情報の無線送信を行う工程を更に有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、長期的なモニタリングが可能な塩化物イオンセンサ、及び塩化物イオン濃度計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態の塩化物イオンセンサの概略図である。
【
図2】塩化物イオンセンサの設置例を示す概略図である。
【
図3】第2実施形態の塩化物イオンセンサの概略図である。
【
図4】第3実施形態の塩化物イオンセンサの概略図である。
【
図6】塩化物イオン濃度計測方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】電極1aの一例を示す、概略的な断面図である。
【
図8】電極1aの別の一例を示す、概略的な断面図である。
【
図9A】第4実施形態における、配線パターンを備える電極シートの概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[塩化物イオンセンサ]
本実施の塩化物イオンセンサは、
前記コンクリート構造物の表面に相互に間隔を隔てて配置される少なくとも一対の電極と、
前記少なくとも一対の電極の間に交流電流を流した状態におけるインピーダンスを測定する測定部とを備え、
前記少なくとも一対の電極が、導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有する。
【0026】
本実施の塩化物イオンセンサは、上記のような構成とすることにより、長期的(例えば3ヶ月以上)にコンクリート構造物への設置が可能であり、長期的にモニタリング可能な塩化物イオンセンサとすることができる。
本実施の塩化物イオンセンサは、少なくとも一対の電極により、測定対象となるコンクリート構造物に交流電流を流した状態でインピーダンスを測定するものである。塩化物イオン濃度は、予め準備された、インピーダンスと、水分率と、塩化物イオン濃度との関係を含むコンクリートの特性情報データベース(以下、特性情報DBとすることがある)を参照し、測定されたインピーダンスから算出するものである。
以下、このような本実施の塩化物イオンセンサに関し、まず電極について説明し、次いで各実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
なお、本実施において周波数とは、インピーダンスに対応する周波数であって、具体的には、インピーダンス測定時にコンクリート構造物に流した交流電流の周波数である。ピーク周波数とは、インピーダンスの位相角がピークになる周波数をいう。水分率とは、コンクリート構造物の表面から所定深さ(例えば20mm)までの範囲における単位体積当たりの水分量を意味する。また、水蒸気量とは、コンクリート構造物が配置された環境における水蒸気量を意味し、蒸気圧曲線を参照して湿度と温度から算出することができる。
【0028】
<電極>
本実施の塩化物イオンセンサにおいて用いられる電極は、少なくとも導電性フィラーが分散されたホットメルト樹脂を含むホットメルト電極を有するものであり、必要に応じて、導電層など、更に他の構成を有していてもよいものである。以下このような電極の各構成について説明する。
【0029】
(ホットメルト電極)
本実施において、ホットメルト電極は、前記コンクリート構造物の表面に配置されて用いられるものである。
本実施においてホットメルト電極は、加熱により溶融し、コンクリート構造物の表面に貼り付けた後、冷却して固化するものである。そのため、コンクリート構造物表面に密着して安定して保持される。また、ホットメルト電極は、コンクリート構造物表面の空隙を充填するため、接触抵抗が抑制される。また、導電性フィラーはホットメルト樹脂中に分散されているため、電極から解離してコンクリート構造物に浸透することなく電極中に保持される。そのため、本実施のホットメルト電極は、コンクリート構造物表面での状態変化が小さく、安定して電圧を測定することが可能である。そのため、当該電極を用いることにより長期的なモニタリングが可能な塩化物イオンセンサを得ることができる。
【0030】
本実施のホットメルト電極は、少なくともホットメルト樹脂と、導電性フィラーとを含有するものであり、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。以下、このようなホットメルト電極に含まれる各成分について説明する。
【0031】
(1)ホットメルト樹脂
本実施においてホットメルト樹脂は、電極をコンクリート構造物の表面に設置する際に加熱溶融可能な樹脂を含むものであり、このような樹脂として公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂や、熱可塑性エラストマーが挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
本実施においてはホットメルト樹脂として、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーを含むことにより、常温(例えば、25℃)においてゴム弾性を有する電極とすることができる。ゴム弾性を有することにより、電極の破断が抑制されて、より長期的なモニタリングが可能な塩化物イオンセンサを得ることができる。当該熱可塑性エラストマーの常温における弾性率は、例えば、0.1~100MPaとすることができる。
【0034】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー;ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU);オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO);ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE);ポリアミド系熱可塑性エラストマー;フッ素系熱可塑性エラストマー;塩ビ系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記熱可塑性エラストマーは、水素添加されたものであってもよい。
本実施においては、熱可塑性エラストマーの中でも、スチレン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0035】
本実施においてホットメルト樹脂の重量平均分子量は、取り扱い性の点から、5,000以上1,000,000以下が好ましく、10,000以上800,000以下がより好ましい。
なお本実施において、重量平均分子量は、東ソー社製GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)「HLC-8320」を用いた測定におけるポリスチレン換算分子量である。
【0036】
ホットメルト樹脂の含有割合は、導電性と接着性の点から、ホットメルト電極全量100質量%中、40~98質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましい。
【0037】
(2)導電性フィラー
本実施において、導電性フィラーは、ホットメルト樹脂中に分散されて用いられ、電極の導電性を確保するものである。導電性フィラーは、公知のものの中から適宜選択できる。導電性フィラーの形状は、ホットメルト樹脂中で分散され得る粒子状ものであればよく、フレーク状(鱗片状)、球状、針状、繊維状、樹枝状など任意の形状とすることができる。導電性フィラーの含有比率を減らしながら導電性を確保する点からは、フレーク状の導電性フィラーを用いることが好ましい。
【0038】
導電性フィラーの材質としては、例えば、銀、金、銅、亜鉛、酸化亜鉛、マンガン、ニッケル、アルミニウムなどの金属;酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズドープ酸化インジウム(FTO)、酸化スズ(IO)、ネオジム・バリウム・インジウム酸化物などの金属酸化物;ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、オリゴチオフェン系等の有機物;カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、フラーレン、酸化グラフェン、アセチレンブラックなどの導電性カーボンのほか、アルミナ、ガラスなどの無機絶縁体やポリエチレンやポリスチレンなどの高分子の表面を導電性材料でコーティングしたもの等が挙げられる。本実施において導電性フィラーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
本実施においては、中でも、導電性フィラーが銀または導電性カーボンであることが好ましく、導電性カーボンであることがより好ましい。更に、導電性カーボンとしては、中でも、グラファイト、カーボンファイバー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又は酸化グラフェンが好ましい。
銀及び導電性カーボンは導電性に優れ、また、耐熱性、耐水性、耐酸性など各種耐性に優れているため、長期信頼性に優れた電極となる。また、銀または導電性カーボンを用いたホットメルト電極は、当該銀または導電性カーボンが安定して存在し、長期的なモニタリングが可能であるため、照合電極を用いることなく電圧の変化を捉えることができる。そのため、本実施の電極は照合電極を有しない構成であっても、腐食センサを実現することができる。
【0040】
導電性フィラーの含有割合は、導電性と接着性の点から、ホットメルト電極100質量%中、2~60質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。
ホットメルト電極の厚みは特に限定されないが、例えば、50~2000μmであり、100~1500μmが好ましい。
【0041】
(3)その他の成分
本実施のホットメルト電極は、効果を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。好適な他の成分として、粘着付与剤、可塑剤などが挙げられる。粘着付与剤又は可塑剤を含むホットメルト電極は、粘着性が付与されるため、コンクリート表面への仮止めが可能になり接着時の施工が容易になる。粘着付与剤及び可塑剤は、公知のものの中から適宜選択して各々1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、粘着付与剤及び可塑剤は、一方のみを用いてもよく、併用してもよい。
ホットメルト電極が粘着付与剤又は可塑剤を含有する場合、その合計の含有割合は、ホットメルト電極全量100質量%中、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0042】
また、本実施のホットメルト電極は、更に他の成分として、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、柔軟性付与剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、紫外線吸収剤、チキソトロピー付与剤、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、流動性付与剤、消泡剤、ブロッキング防止剤、難燃剤、色材等を含有してもよい。ホットメルト電極がこれらの成分を含有する場合、その含有割合は、ホットメルト電極全量100質量%中、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0043】
(他の構成)
本実施において電極は、前記ホットメルト電極のみを有する構成であってもよく、必要に応じて、導電層など、更に他の構成を有していてもよい。
【0044】
導電層は、ホットメルト電極のコンクリート構造物の表面に配置される面とは反対側の面に設けられるものである。当該導電層は、コンクリート構造物の表面とは直接接触しないため、コンクリート構造物中の塩化物イオンによる腐食の影響が抑制される。そのため、当該導電層は任意の構成とすることができる。導電層としては、例えば、銀・塩化銀電極層、カーボンフレークを含有する銀・塩化銀電極層や、金属箔などの導電性の箔などが挙げられる。
【0045】
また、電極上に更に基材を有していてもよい。基材は、通常、ホットメルト電極のコンクリート構造物の表面に配置される面とは反対側の面に配置され、前記導電層を有する場合には、当該導電層上に配置される。基材は電極製造時における取り扱い性を向上するほか、電極使用時においてホットメルト電極及び導電層の保護膜としての機能を有する。
本実施において、基材は限定されず、例えば各種樹脂フィルムの中から適宜選択することができる。基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AES(アクリロニトリルーエチレンースチレン共重合樹脂)、カイダック(アクリル変性塩ビ樹脂)、変性ポリフェニレンエーテル、及びこれら樹脂の2種以上からなるポリマーアロイ等のフィルムや、これらの積層フィルムなどが挙げられる。基材は透明であっても不透明であってもよい。基材はコンクリート表面の凹凸に追従しやすい点から可撓性を有することが好ましい。
【0046】
(電極の製造方法)
本実施に電極の製造方法について、以下に一例を示す。
電極の製造方法の一例として、まず、前記ホットメルト樹脂と、前記導電性フィラーと、必要に応じて用いられる他の成分とを混合して混合物とする。当該混合物は、均一に分散するためにホットメルト樹脂を溶解する溶剤を含有してもよい。
次いで、前記混合物を公知の分散機により分散して分散体とする。分散機としては、例えば、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。
次いで、得られた分散体を基材上に塗布する。塗布方法は、ホットメルト電極の厚みや材質等に応じて適宜選択すればよい。例えば、インクジェット法、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、カーテンコート法、スリットコート法、スクリーン印刷法、反転印刷法、ホットメルトアプリケーター、ホットメルトコーター、スリットコーター、ホットメルトロールコーター等の方法が挙げられる。得られた塗膜を必要に応じて乾燥することにより、ホットメルト電極を得ることができる。
基材が不要な場合は、剥離性の基材を用いて上記と同様の塗膜を形成した後に、基材を剥離してもよい。また、電極が導電層を有する場合には、基材上に導電層を形成した後導電層上に、前記ホットメルト電極用の分散体を塗布して、ホットメルト電極を形成すればよい。
【0047】
上記の方法により形成された電極はシート化されている。また、上記の方法によりホットメルト電極をパターン状に印刷することにより、1つのシート状の基材に複数の電極をパターン状に配置することができる。複数の電極をパターン状に配置することにより、対となる電極の間隔の調整が不要となる。また、1つのシート状基材に複数の電極を配置することにより、コンクリート構造物に複数の塩化物イオンセンサを配置する場合も、設置が容易となる。
【0048】
<塩化物イオンセンサの実施形態>
以下、本発明に係る塩化物イオンセンサの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0049】
(第1実施形態)
図1は、本実施の塩化物イオンセンサの第1実施形態を示す概略図である。
図1の例に示す塩化物イオンセンサ10は、コンクリート構造物100の表面に相互に間隔を隔てて配置される一対の電極1a及び1bと、インピーダンスを測定する測定部2とを備え、前記一対の電極1a及び1bが各々ホットメルト電極を有している。
電極1aと電極1bの間隔は、コンクリート構造物100に交流電流を流した状態で、インピーダンスが測定可能な範囲で任意の間隔であり、例えば、1~100mmの範囲である。傾向として、一対の電極1a及び1bの間隔を広げる程、コンクリート構造物の深い部分測定することが可能になるため、コンクリート構造物100の測定しようとする深さに応じて調整することができる。
【0050】
ここで
図7及び
図8を参照して、電極の構成を説明する。
図7は電極1aの一例を示す、概略的な断面図である。
図7に示される電極1aは、ホットメルト電極4上に、導電層5と基材6とがこの順に積層した積層体が用いられているが、電極1aの構成は前述の通り、少なくともホットメルト電極4を備えればよいものである。
また
図8の例では、コンクリート構造物100の表面上に配置された電極1aが、保護部7で被覆されている。このような構成とすることにより、ホットメルト電極4を含む電極1aと、外部の水分や塩分との接触を抑制できるため、より長期信頼性に優れた塩化物イオンセンサとなる。保護部7は、
図8の例に示されるように基材6を含む電極1a全体を封止するものであってよい。また保護部7は、少なくとも電極1aの周縁部に配置され、基材6との組合せにより電極1aを保護してもよい。保護部7は、公知の樹脂を用いることができる。なお、ホットメルト電極4、導電層5及び基材6の詳細は前述の通りであるのでここでの説明は省略する。
【0051】
測定部2は、少なくとも一対の電極1a及び1bの相互間にコンクリート構造物100を介して交流電流を流し、当該交流電流を流した状態におけるインピーダンス、更に必要に応じて周波数や、ピーク周波数を測定する。測定部2としては、公知のインピーダンスメータ(LCRメータ)を用いることができる。また、測定部2は、発振器や電流計等を組み合わせて構成してもよい。
インピーダンスメータは、少なくとも一対の電極1a及び1bの相互間にコンクリート構造物100を介して交流電流を流した状態におけるインピーダンス又はピーク周波数を測定する測定手段である。このインピーダンスメータの測定原理は任意であるが、例えば、ブリッジ法や共振法など公知の方法によってインピーダンスを測定できる。2端子法のインピーダンスメータでは、一対の電極(2つの電極)を使用する。また、4端子法のインピーダンスメータでは、二対の電極(4つの電極)を使用する。
測定部2は、通常、演算部50と接続されて、塩化物イオンセンサシステムを構成してもよい。
図1の例では、測定部2と演算部50とは、配線21により接続されている。測定部2で測定されたインピーダンス等は、演算部50に入力され、当該演算部50により塩化物イオン濃度が算出される。演算部50については後述する。
【0052】
本実施形態において測定対象となるコンクリート構造物100は特に限定されない。測定対象となるコンクリート構造物100は、通常、塩化物イオンと水分を含有し、更に内部に鉄筋を有している。当該コンクリート構造物100の構造は任意であり、平坦面であっても曲面であってもよく、凹凸等を有していてもよい。本実施の塩化物イオンセンサ10の電極1a及び1bはホットメルト電極を有するため、任意の形状に追従して密着することができる。コンクリート構造物100の具体例としては、トンネルや、橋梁、橋脚、ダム、その他建築物の少なくとも一部を構成するコンクリート構造物等が挙げられる。
【0053】
図2に、本実施の塩化物イオンセンサ10を、トンネルの内壁101に配置した例を示す。本実施の塩化物イオンセンサ10は、トンネルの内壁101に1個単独で配置してもよく、
図2の例に示されるように2個以上が連結されたものであってもよい。連結した塩化物イオンセンサ20は、例えば、シート状の基材31にパターン状に配置された電極に複数の測定部2を設けることにより製造することができる。連結した塩化物イオンセンサ20を用いることにより、各塩化物イオンセンサ10を予め設定した所定の間隔で設置することが容易となる。
【0054】
また、
図2の例に示されるように、連結した塩化物イオンセンサ20は、配線22を共有してもよい。配線22は、例えば、測定部2と演算部50とを接続する配線、測定部2と後述する無線送信部3とを接続する配線、各塩化物イオンセンサ10と外部電源(不図示)とを接続する配線等が挙げられる。連結した塩化物イオンセンサ20が配線22を共有する場合、更に演算部50や無線送信部3を共有してもよい。
【0055】
更に、
図2の例に示されるように、連結した塩化物イオンセンサ20をトンネル内に所定の間隔で複数設けることもできる。連結した塩化物イオンセンサ20を複数設けることにより、トンネル全体にわたる塩化物イオン濃度をマッピングすることができる。
図2の例に示されるように複数の連結した塩化物イオンセンサ20は、配線23を共有してもよい。配線23は、前記配線22と同様、例えば、測定部2と演算部50とを接続する配線、測定部2と後述する無線送信部3とを接続する配線、各塩化物イオンセンサ10と外部電源(不図示)とを接続する配線等が挙げられる。複数ある連結した塩化物イオンセンサ20は、更に演算部50や無線送信部3を共有してもよい。
【0056】
図5に演算部50の一例を示す。
図5の例で演算部50は、入力部51、出力部52、記憶部53、算出部54及び制御部55を備える。演算部50として、例えば公知のパーソナルコンピュータ、PDA、タブレット端末等を用いることができる。
【0057】
入力部51は、本実施の形態に係る測定方法を実行するために必要な各種の情報の入力を受け付けるための入力手段であり、少なくとも測定部2に接続される端子を有していればよく、必要に応じて、キーボード、タッチパネル、後述する水分率計61に接続される端子や、各種のスイッチ類などを備えていてもよい。
【0058】
出力部52は、本実施の形態に係る測定方法を実行するために必要な各種の情報を出力する出力手段であり、例えば、モニタ等として構成されている。
【0059】
記憶部53は、演算部50の処理に必要な各種の情報を記憶する記憶手段であり、例えばハードディスクやその他の記録媒体によって構成される。本実施においては、特性情報DB40を備える。当該特性情報DB40は、コンクリート構造物100の、インピーダンスと、当該インピーダンスに対応する周波数と、水分率と、塩化物イオン濃度との相互関係を特定する特性情報、又は、インピーダンスの位相角がピークになるピーク周波数と、水分率と、塩化物イオン濃度との相互関係を特定する特性情報を含んでいる。当該特性情報は、例えば、予め、水分率及び塩分濃度が既知であるコンクリート構造物100のインピーダンス及び周波数、又は、インピーダンスの位相角がピークになるピーク周波数を測定することにより取得できる。また、例えば、特開2012-184948号公報、特許第6338238号など、公知の文献から取得してもよい。
特性情報DB40は、全てを生データとして格納する必要はなく、一部の生データのみを格納すると共に必要に応じて他のデータを補間により生成してもよい。例えば、周波数とインピーダンスとの関係を示すデータを格納する場合、複数の断続的な周波数に対応するインピーダンスのみを生データとして格納しておき、これら複数の周波数の間の周波数に対応するインピーダンスについては、生データに基づいて補間により生成してもよい。
【0060】
算出部54は、測定部2を用いて測定されたインピーダンスと当該インピーダンスに対応する周波数、又は、インピーダンスの位相角がピークになるピーク周波数に基づいて、前記特性情報DB40に格納された特性情報を参照することにより、コンクリート構造体100の水分率と塩化物イオン濃度を算出する。当該算出部54は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されている。特に、本実施の形態に係る塩化物イオン濃度算出プログラムは、読み取り可能な記録媒体に格納され、当該記録媒体から演算装置5にインストールされることで、算出部54を実質的に構成する。
【0061】
また、制御部55は、演算部50を構成する各部を制御すると共に、測定部2の測定開始、測定終了等の制御を行う。制御部55は、算出部54と同様、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成される。
【0062】
(第2実施形態)
図3は、本実施の塩化物イオンセンサの第2実施形態を示す概略図である。
図3の例に示す塩化物イオンセンサ10は、無線送信部3を備え、当該無線送信部3と測定部2とが接続されている点で第1実施形態と相違する。
無線送信部3は、測定部2で測定されたインピーダンス等の情報を、演算部50に無線で送信する。送信される信号は、特に限定されず、アナログ方式でも、デジタル方式でも、どちらの方式でもよい。また、送信形態は光、電波、電磁波等どのような通信形態でもよい。
図2の例のように塩化物イオンセンサ10が複数ある場合、どの塩化物イオンセンサ10からの情報かを識別できるように、各無線送信部3は、塩化物イオンセンサ10の識別情報を、インピーダンスの情報と併せて演算部50に送る。
【0063】
無線送信部3は、電力を供給するバッテリ(不図示)を備えてもよい。バッテリは、少なくとも無線送信部3に必要な電力を供給する。また必要に応じて、バッテリから測定部2へ電力を供給してもよい。バッテリによって無線送信部3及び測定部2に必要な電力を供給することにより、塩化物イオンセンサ10は外部への配線(例えば、
図2の配線22及び配線23)が不要となり、シンプルな構成となる。その結果、コンクリート構造物100の任意の場所に設置することができる。
【0064】
(第3実施形態)
図4は、本実施の塩化物イオンセンサの第3実施形態を示す概略図である。第3実施形態では、前記第1実施形態の塩化物イオンセンサ10とは別に、水分率計61が備えられており、当該水分率計61は演算部50と接続されている。水分率計61は、コンクリート構造物100の水分率を取得する。第1実施形態は、インピーダンス等の測定値から、水分率と、塩化物イオン濃度を算出するものであった。これに対し、本実施形態は、水分率を測定値とすることにより、塩化物イオン濃度の算出精度が向上する。
【0065】
水分率計61は、コンクリート構造物100の水分率を取得する水分情報取得手段である。この水分率計61は公知の方法の中から適宜選択でき、例えば、赤外線の反射によって光学的に水分検出を行う方法や、コンクリートの水分による誘電率(高周波容量)の変化を検出し、当該検出結果に基づいて水分を測定する方法等が挙げられる。
【0066】
(第4実施形態)
図9は、本実施の塩化物イオンセンサの第4実施形態を示す概略図である。本実施形態では、インピーダンス検出部2と電極4との間の配線(導線8)の少なくとも一部が、電極4を備える基材6上に形成されたパターン配線8aにより構成されている。即ち、本実施形態では、基材6上にパターン配線8aと一対の電極4とを備えたパターン配線付電極シート200を用いる。パターン配線8aと電極4は同一面に形成してもよく、また、電極4とは反対側の面にパターン配線8aを形成して、基材の開口部を通じて結線してもよい。
パターン配線8aの形成方法は、例えば、基材6上の電極4と、基材6の端部等に配置されたインピーダンス検出部2と接続する端子との間を、導電材を含むインキを印刷してパターニングする方法や、
フレキシブル回路のように、基材6上に蒸着、金属箔のラミネートやメッキ等により導電性金属を積層し、エッチングでパターンを形成し、次いで用いる電極4を形成し、インピーダンス検出部2の配線と結線する方法が挙げられる。
配線パターン8aと電極4との間の接合部分は、接触抵抗が小さければそのまま印刷により結線できる。また、接触抵抗が大きい場合は銀ペーストや金属フィラーによる導電性接着剤等により結線してもよい。配線パターン8a上には更に当該配線パターンを封止する保護部7を有してもよく、また、耐候性のある基材と粘着剤を積層したラミネートフィルムによって全体または部分的にラミネートしてもよい。
電極4と同一面にパターン配線8aを印刷する場合は、配線の端部で電極を形成し、電極を部分的あるいは全体を露出させて加熱溶融してコンクリート構造物100の表面上に設置できる。パターン配線付電極シートの電極4の反対面にパターン配線8aを印刷する場合は電圧検出部または電極部の基材にスルーホールを設けその中に導電インキ、導電性の接着剤、あるいはホットメルト電極を埋め込むことで接合することもできる。その場合もパターン配線8a上に保護部7を有してもよく、耐候性のある基材と粘着剤を積層したラミネートフィルムによって全体または部分的にラミネートしてもよい。
【0067】
本実施においては、印刷配線は容易に形成可能で、フレキシブル性にも優れる点から、好ましい。印刷配線に用いられる導電性インキは、少なくとも導電性微粒子を含有するものであり、必要に応じてバインダー成分や、溶剤などの他の成分を含有してもよいものである。
【0068】
前記導電性微粒子は、形成された導電性配線内で、焼結して焼結体となるものであってもよいが、複数の導電性微粒子が接触して導電性を発現するものが好ましい。
【0069】
導電性微粒子としては、金属微粒子、カーボン微粒子、導電性酸化物微粒子などが挙げられる。
金属微粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、アルミニウム、タングステン、モルブテン、白金等の金属単体粉のほか、銅-ニッケル合金、銀-パラジウム合金、銅-スズ合金、銀-銅合金、銅-マンガン合金などの合金粉、前記金属単体粉または合金粉の表面を、銀などで被覆した金属コート粉などが挙げられる。また、カーボン微粒子としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、導電性酸化物微粒子としては、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウムなどが挙げられる。導電性微粒子は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施においては、導電性配線の長期信頼性の点から、耐水性、耐酸性などの耐候性に優れたカーボン微粒子を用いることが好ましい。
【0070】
導電性微粒子の形状は特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。また、導電性微粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、導電性インキ中での分散性や、配線後の導電性の点から、0.1μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上30μm以下がより好ましい。
【0071】
導電性インキは、バインダー成分を含有することが好ましい。バインダー成分としては、成膜性及び、成膜後の密着性、柔軟性などの点から樹脂を含むことが好ましい。前記樹脂は、導電性配線用途に用いられる樹脂の中から適宜選択して用いることができる。当該樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ビニルエーテル樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系ブロック共重合樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられ、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
パターン配線8a中の導電性微粒子の含有割合は、パターン配線8a全量に対し、50質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。また、パターン配線8a中のバインダー成分の含有割合は、パターン配線8a全量に対し、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
導電性微粒子の含有割合が上記下限値以上であれば、導電性に優れた導電性配線となる。また、バインダー成分の含有割合が上記下限値以上であれば、成膜性や、基材6への密着性が向上し、導電性配線付き電極シートの導電性配線に柔軟性を付与することができる。
【0073】
パターン配線付電極シート200のパターン配線8aは、例えば、前記導電性微粒子と前記バインダー成分と、必要に応じて溶剤等を含有する導電性インキを調製した後、当該導電性インキを、基材上に印刷し、必要に応じて溶剤を除去することにより形成することができる。
溶剤は、印刷方法に応じて適宜選択すればよい。また印刷方法は、導電性インキの組成や、パターン配線の膜厚に応じて、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷、インクジェット法など公知の印刷技術の中から適宜選択すればよい。
【0074】
パターン配線付電極シート200のパターン配線8aの厚みは特に限定されず、導電性と柔軟性を両立する点から、例えば、1μm以上500μm以下とすることができ、10μm以上300μm以下が好ましい。また、印刷型センサシートの導電性配線の幅は、限定されず、必要な導電性が得られる幅とすればよい。例えば、0.1mm以上とすることができ、1mm~100mmが好ましい。なお、複数ある導電性配線は同一の厚みや幅であってもよく、互いに異なる厚みや幅を有していてもよい。
【0075】
<パターン配線付電極シートの保護部(保護層)>
パターン配線付電極シートの保護部7は、少なくとも前記パターン配線8a上に設けられる層であり、前記パターン配線8aの傷つきや、水、酸素、酸やアルカリ等との接触を抑制し、長期信頼性を向上する。保護部7は、例えば、前記導電性配線付き電極シートのシート基材と同様のシートを貼り合せることにより保護層として形成することができる。
【0076】
[塩化物イオン濃度計測方法]
本実施の塩化物イオン濃度計測方法は、
コンクリート構造物中の塩化物イオン濃度を計測する計測方法であって、
前記塩化物イオンセンサを準備する準備工程と、
前記塩化物イオンセンサが備える一対の電極を、前記コンクリート構造物の表面にそれぞれ接着する接着工程と、
前記一対の電極間にコンクリート体を介して交流電流を流した状態におけるインピーダンスを測定する測定工程とを有し、
前記接着工程が、前記ホットメルト電極を加熱溶融することによって、コンクリート構造物に接着する工程を含む。
【0077】
以下、本発明の腐食検出方法の実施形態について、
図6を参照して説明する。
図6は、塩化物イオン濃度計測方法の一例を示すフローチャートである。
まず、塩化物イオンセンサ10を準備する(S1:準備工程)。次に、一対の電極1a及び1bと、コンクリート構造物100の表面とを、ホットメルト電極を介して電気的に接触させる(S3:接着工程)。次いで、前記一対の電極間にコンクリート体を介して交流電流を流した状態におけるインピーダンスを測定する(S4:測定工程)。得られた測定結果は、有線で、又は、塩化物イオンセンサ10が無線送信部3を備える場合は無線により、演算部に送られ(S5:無線送信工程)、演算部50において特性情報DB40を参照して塩化物イオン濃度が算出される(S6:算出工程)。
【0078】
本実施形態では、接着工程において、電極1a及び1bが有するホットメルト電極を加熱溶融する工程を含む。このような手法により、コンクリート構造物100の表面に凹凸があったとしても、ホットメルト電極は、溶融時に凹凸に沿って変形して強固に接着される。その結果、コンクリート構造物100の表面に対する電気的接触を長期間良好に維持することができる。
【0079】
さらに、パターン配線付電極シート200を用いた塩化物イオンセンサは予め基材上に導線8が形成された電極シートであるため、大面積・多点の自然電位測定を行う際に腐食センサの設置がさらに簡単になる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0081】
[塩化物イオンセンサ用電極の製造]
<製造例1>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSIS(スチレン・イソプレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をポリイミドフィルム(カプトン200EN:東レ・デュポン株式会社製)上に200μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は2×101Ωcmであった。
【0082】
<製造例2>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSIS(スチレン・イソプレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム上に100μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は3×103Ωcmであった。
【0083】
<製造例3>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に200μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は2×10-1Ωcmであった。
【0084】
<製造例4>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をポリイミドフィルム上に1000μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は2×101Ωcmであった。
【0085】
<製造例5>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に300μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は6×101Ωcmであった。
【0086】
<製造例6>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリアミド系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に150μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は5×101Ωcmであった。
【0087】
<製造例7>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリエステル系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に500μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は4×103Ωcmであった。
【0088】
<製造例8>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリオレフィン系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に250μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は1×101Ωcmであった。
【0089】
<製造例9>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリウレタン系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に400μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は1×101Ωcmであった。
【0090】
<製造例10>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにポリ塩化ビニル(PVC)系熱可塑性樹脂をベースとしたホットメルト樹脂とカーボンフィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPENフィルム上に200μmの厚みで積層し、基材を有する電極とした。電極部位の体積抵抗率は1×101Ωcmであった。
【0091】
<製造例11>
加熱装置を備えた卓上ニーダーにSEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂と銀フィラーを加え、130~180℃で3時間加熱攪拌した。エラストマーの溶け残りがないことを確認し、ホットメルト電極を得た。作製したホットメルト電極をPEN基材上に200μmの厚みで積層された電極を得た。電極部位の体積抵抗率は4×10-4Ωcmであった。
【0092】
<ホットメルト樹脂組成物および封止材シートの製造例>
SIS(スチレン・イソプレン・スチレン)系エラストマーをベースとしたホットメルト樹脂を離型フィルムに挟み、テスター産業製卓上テストプレス機にて100℃、100kgf/cm2で30秒間熱プレスをおこない膜厚200~300μmのシート状に加工し封止材シート1とした。
【0093】
<製造例12:パターン配線付電極シート>
300mm×100mmのポリアミドフィルム(カプトン200EN:東レ・デュポン株式会社製)上に
図9のように導電性カーボンインキ(カーボン系導電ペースト RA FS 090:東洋インキ製)で幅10mmライン2本をライン間スペース5mmで印刷し100℃30分で熱乾燥させて、さらに実施例1で作成したホットメルト電極を40mm×40mmとなるようにポリイミドフィルム(カプトン:東レ・デュポン株式会社製)上に200μmの厚みで積層し、更に電極部分を避け、配線部分を覆うように基材上に封止材シートを離型フィルムの上から熱ロールラミを150℃、4kgf/cm
2、1m/minで行い、電極と炭素配線と封止材を備えるパターン配線付電極シート200を得た(
図9)。電極部4の体積抵抗率は2×10
1Ωcmであった。
【0094】
<製造例13:パターン配線付電極シート>
300mm×100mmのポリアミドフィルム(カプトン200EN:東レ・デュポン株式会社製)上に
図9のように導電性銀ペースト( RA FS 007:東洋インキ製)で幅10mmライン2本をライン間スペース5mmで印刷し100℃30分で熱乾燥させて、さらに実施例1で作成したホットメルト電極を40mm×40mmとなるようにポリイミドフィルム(カプトン:東レ・デュポン株式会社製)上に200μmの厚みで積層し、更に電極部分を避け、配線部分を覆うように基材上に封止材シートを離型フィルムの上から熱ロールラミを150℃、4kgf/cm
2、1m/minで行い、電極と炭素配線と封止材を備えるパターン配線付電極シート200を得た(
図9)。電極部4の体積抵抗率は2×10
1Ωcmであった。
<製造例14:パターン配線付電極シート>
300mm×100mmの片面ポリイミド銅張積層板(F30-VC1:ニッカン工業株式会社製)の基材上に
図9の様に幅1mmのライン2本をライン間スペース5mmで導電性配線8を銅エッチングで形成し、さらに電極部分を避け配線部分を覆うように基材上にポリイミドカバーレイフィルム(ニカフレックスCSKE ベースフィルム厚さ25μm:日刊工業株式会社製)を貼り付け、カバーレイ部分を160℃×90分、成型圧力4MPaで熱プレスし配線部分を封止した。さらに実施例で作成したホットメルト電極を40mm×40mmとなるように基材上に300mmの厚みで積層し、電極とエッチングによる銅配線による配線パターンとカバーレイによる封止材を備えるパターン配線付電極シート200を得た(
図9)。電極部4の体積抵抗率は2×10
1Ωcmであった。
【0095】
<比較製造例1>
高分子ポリマー(Poly(styrene-b-ethylene oxide-b-styrene):PS-PEO-PS)とイオン液体とを混合してなるイオン導電性ゲルをアルミ箔上に積層することによってイオン導電性を持つ電極を得た。電極部位のイオン伝導度は4×10-2Scmであった。
【0096】
【0097】
<実施例1>
(測定)
1.体積抵抗率の測定
製造例1で作製した電極とポリイミドフィルムの積層物を1.5cm×3cmに裁断し、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製:ロレスターGX MCP-T700)を用いて電極部位の体積抵抗率の測定を行った。3回測定し、その平均値を測定値とした。
【0098】
2.接着力の測定
接着力判定には島津製作所社製の引張試験機EX―SXを用いて測定した。製造例1で得られた、200μmの厚みを持つホットメルト電極とポリイミドフィルムの積層物からなる25mm幅のシートをグラインダーで表面研磨処理をした7cm×7cmのコンクリート被着体表面、に対してホットメルト電極側を貼りつけ、さらに200℃に加熱した板を基材の上から1分間押し付けることでコンクリートに対する接着を行った。加熱終了後、室温に戻るまで24時間放置したものを測定サンプルとした。測定方法はシートの端を90度の角度で速度を50mm/min.で引き剥がしたときの荷重から接着力を評価した。使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0099】
3.複合腐食耐性試験
複合腐食試験は日本自動車技術会規格(JASO)M609/M610に準拠した試験を長時間実施した。具体的には複合腐食試験機(BQD-2)内部にサンプルを地面に対して70度に傾けた状態で置いた。サンプルの複合腐食条件は、初めに5%NaCl、35℃で2時間塩水噴霧を行った後、50%RH、60℃の乾燥環境下に4時間おき、さらに95%RH、50℃の湿潤環境下に2時間おいた。このサイクルを200回実施した。実施後、測定サンプルを回収し、下記の試験前後の結果を比較することで劣化判定を行った。
【0100】
A.導電性変化
複合腐食試験測定用のサンプルは1.体積抵抗率の測定、と同様にして作製し、同時に抵抗率も測定した。サンプルを複合腐食試験機に投入し、上記の条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法でサンプルの体積抵抗率の測定を行った。
複合腐食試験前後で体積抵抗率が1×103Ωcm未満を保持している場合は◎、複合腐食試験前後で体積抵抗率が1×105Ωcm未満を保持している場合は〇、それ以外の場合は×とした。
【0101】
B.接着性変化
実施例1で作製した、ホットメルト電極がコンクリートに接着した測定サンプルを上記条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法にて接着力を評価した。試験前の接着力が10N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が10N未満の場合は◎、試験前の接着力が5N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が5N未満の場合は〇、それ以外の場合は×とした。
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0102】
4.塩化物イオン計測
(特性情報データベースの作成)
インピーダンス計測用に使用したコンクリート供試体は、200×100×100cmサイズの直方体として次のように作製した。
水、セメント、砂を用いて打設し、塩化物量1m3あたり0.5kg、1kg、5kg、10kgを含んだ4種類の供試体を製作した。さらに各コンクリート供試体の含水率を0.5%、1%、5%、10%に調整することで、塩化物量と水分率が既知の合計16種類のコンクリート供試体を作製した
実施例1で作製した厚み200μm、サイズ4×4cm、間隔10cmに隔てられた2対のホットメルト電極シートとポリイミドフィルムからなる積層体を前記各コンクリート供試体の各々の表面上に貼付し、それぞれ200℃で熱圧着することにより各コンクリート供試体表面に2対の電極を接着した。
同一のコンクリート供試体表面に接着した2対の電極を、電線を介してLCRメーターにそれぞれ接続することにより交流インピーダンスの計測を可能とした。
各コンクリート供試体の電極間の交流インピーダンスの実部及び虚部の周波数特性をそれぞれ計測した。周波数は0.1Hzから10MHzまで掃引した。
各含水率・含有塩濃度における交流インピーダンスの値を各周波数ごとにプロットし特性情報データベースを作成した。
【0103】
次に、表2に示される含水率と塩化物イオン含有量が既知のコンクリート供試体を準備し、実施例1の複合腐食耐性試験後の電極を上記データベースの作成と同様にコンクリート供試体の表面上に接着した。
同一コンクリート供試体表面に接着した2対の電極をLCRメーターにそれぞれ接続することにより計測を可能とした。事前に水分計(KETT社製HI-520-2)を用いてコンクリート供試体の含水率測定を行った。塩化物イオン濃度の定量評価は2対の電極間の交流インピーダンスの実部及び虚部の周波数特性を計測し、測定した含水率と、交流インピーダンス値を前記特性情報データベースに当てはめて検量線法により塩化物イオン含有量を算出した。周波数は0.1Hzから10MHzまで掃引した。作製した供試体のインピーダンスを計測し、塩化物濃度の定量化ができた場合は〇、それ以外を×とした。
【0104】
<比較例1>
比較製造例1で作製したイオンゲル電極をアルミ基板上に500μmの厚みで積層されたものを用いて、下記の測定を行った。導電性の評価は交流インピーダンス法を用いて行った。
【0105】
<測定>
1.イオン伝導率の測定
比較製造例1で作製したイオンゲル電極を、インピーダンスアナライザーを用いてイオン伝導率の測定を行った。3回測定し、その平均値を測定値とした。
【0106】
2.接着力の測定
接着力判定には島津製作所社製の引張試験機EX―SXを用いて測定した。比較製造例1で得られた、500μmの厚みを持つイオンゲル電極とアルミ基材の積層物からなる25mm幅のシートをグラインダーで表面研磨処理をした7cm×7cmのコンクリート被着体表面、に対してイオンゲル電極側を貼りつけることで接着を行った。接着力の測定方法はシートの端を90度の角度で速度を50mm/min.で引き剥がしたときの荷重から接着力を評価した。
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0107】
3.複合腐食耐性試験
複合腐食試験は日本自動車技術会規格(JASO)M609/M610に準拠した試験を長時間実施した。具体的には複合腐食試験機(BQD-2)内部にサンプルを地面に対して70度に傾けた状態で置いた。サンプルの複合腐食条件は、初めに5%NaCl、35℃で2時間塩水噴霧を行った後、50%RH、60℃の乾燥環境下に4時間おき、さらに95%RH、50℃の湿潤環境下に2時間おいた。このサイクルを200回実施した。実施後、測定サンプルを回収し、下記の試験前後の結果を比較することで劣化判定を行った。
【0108】
A.導電性変化
複合腐食試験測定用のサンプルは1.イオン伝導率の測定、と同様にして作製し、同時に抵抗率も測定した。サンプルを複合腐食試験機に投入し、上記の条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法でサンプルの導電性の測定を行った。複合腐食試験前後でイオン伝導率が1×10-3S/cm以上を保持している場合は◎、複合腐食試験前後でイオン伝導率が1×10-5S/cm以上を保持している場合は〇、それ以外の場合は×とした。
【0109】
B.接着性変化
比較例1で作製した、イオンゲル電極がコンクリートに接着した測定サンプルを上記条件で腐食サイクル試験を行った後、同様の方法にて接着力を評価した。試験前の接着力が10N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が10N未満の場合は◎、試験前の接着力が5N以上でかつ腐食試験後の接着力値の低下が5N未満の場合は〇、それ以外の場合は×とした。
使用グラインダー:Monotaro スリムディスクグラインダー(MRO-100DG)
【0110】
4.塩化物イオン計測
(特性情報データベースの作成)
インピーダンス計測用に使用したコンクリート供試体は、200×100×100cmサイズの直方体として次のように作製した。
水、セメント、砂を用いて打設し、塩化物量1m3あたり0.5kg、1kg、5kg、10kgを含んだ4種類の供試体を製作した。さらに各コンクリート供試体の含水率を0.5%、1%、5%、10%に調整することで、塩化物量と水分率が既知の合計16種類のコンクリート供試体を作製した
比較例1で作製した厚み200μm、サイズ4×4cm、間隔10cmに隔てられた2対のイオンゲル電極シートとポリイミドフィルムからなる積層体を前記各コンクリート供試体の各々の表面上に貼付することにより各コンクリート供試体表面に2対の電極を接着した。
同一のコンクリート供試体表面に接着した2対の電極を、電線を介してLCRメーターにそれぞれ接続することにより交流インピーダンスの計測を可能とした。
各コンクリート供試体の電極間の交流インピーダンスの実部及び虚部の周波数特性をそれぞれ計測した。周波数は0.1Hzから10MHzまで掃引した。
各含水率・含有塩濃度における交流インピーダンスの値を各周波数ごとにプロットし特性情報データベースを作成した。
【0111】
次に、表2に示される含水率と塩化物イオン含有量が既知のコンクリート供試体を準備し、比較例1の複合腐食耐性試験後の電極を上記データベースの作成と同様にコンクリート供試体の表面上に接着した。
同一コンクリート供試体表面に接着した2対の電極をLCRメーターにそれぞれ接続することにより計測を可能とした。事前に水分計(KETT社製HI-520-2)を用いてコンクリート供試体の含水率測定を行った。塩化物イオン濃度の定量評価は2対の電極間の交流インピーダンスの実部及び虚部の周波数特性を計測し、測定した含水率と、交流インピーダンス値を前記特性情報データベースに当てはめて検量線法により塩化物イオン含有量を算出した。周波数は0.1Hzから10MHzまで掃引した。作製した供試体のインピーダンスを計測し、塩化物濃度の定量化ができた場合は〇、それ以外を×とした。
【0112】
<実施例2~14>
実施例1と同様の方法にて、実施例2~14の作製と測定を行った。結果を表2に示す。
【0113】
【符号の説明】
【0114】
1a、1b 電極
2 測定部
3 無線送信部
4 ホットメルト電極
5 導電層
6 基材
7 保護部
8 導線
10 塩化物イオンセンサ
20 連結した塩化物イオンセンサ
21、22、23 配線
31 シート状の基材
40 特性情報データベース
50 演算部
51 入力部
52 出力部
53 記憶部
54 算出部
55 制御部
61 水分率計
100 コンクリート構造物
101 内壁
200 パターン配線付電極シート