(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-24
(45)【発行日】2023-06-01
(54)【発明の名称】電流モード降圧型スイッチングレギュレータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20230525BHJP
【FI】
H02M3/155 P
(21)【出願番号】P 2019127140
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 充剛
(72)【発明者】
【氏名】森尻 敬治
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012698(JP,A)
【文献】特開2013-074657(JP,A)
【文献】特開2009-278719(JP,A)
【文献】特開2009-278756(JP,A)
【文献】特開2009-268290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号と該クロック信号に同期したランプ電圧を生成する発振器と、前記ランプ電圧とスイッチ電流検出電圧を加算する加算器と、目標の出力電圧を決める基準電圧と前記出力電圧を示す帰還電圧との誤差電圧を出力する誤差増幅器と、前記加算器から出力する加算電圧と前記誤差増幅器から出力する誤差電圧を比較してPWM制御電圧を生成する比較器と、前記クロック信号がセット端子に入力し前記PWM制御電圧がリセット端子に入力するRSFF回路と、該RSFF回路がセットされたときオンして負荷側に電流を供給するスイッチングトランジスタと、前記RSFF回路がリセットされたときオンして前記PWM制御電圧をゼロリセットするリセットトランジスタとを備えた電流モード降圧型スイッチングレギュレータにおいて、
前記比較器の出力側と前記RSFF回路のリセット端子との間に、前記PWM制御電圧が前記RSFF回路をリセットできる信号になって第1の時間が経過した時点から第2の時間だけ前記PWM制御電圧をマスクするマスク回路を挿入したことを特徴とする電流モード降圧型のスイッチングレギュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電流モード降圧型のスイッチングレギュレータにおいて、
前記マスク回路は、前記PWM制御電圧が立上がると前記第2の時間のパルス幅のワンショットパルスを生成するワンショットマルチ回路と、該ワンショットパルスを前記第1の時間だけ遅延した信号によって前記PWM制御電圧を前記第1の時間の経過後の前記ワンショットパルスの時間だけマスクするAND回路と、を備えることを特徴とする電流モード降圧型のスイッチングレギュレータ。
【請求項3】
請求項2に記載の電流モード降圧型のスイッチングレギュレータにおいて、
前記ワンショットパルスのパルス幅は、前記クロック信号の周期よりも短いことを特徴とする電流モード降圧型のスイッチングレギュレータ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の電流モード降圧型のスイッチングレギュレータにおいて、
前記第1の時間は、前記クロック信号のパルス幅よりも短いことを特徴とする電流モード降圧型のスイッチングレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作電圧の低下を図りながら出力電圧の範囲を拡大した電流モード降圧型スイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
図7に、従来の電流モード降圧型スイッチングレギュレータの回路構成を示す(例えば、特許文献1参照)。MP1はPMOSのスイッチングトランジスタであり、電圧がVinの電圧源1の正極端子にソースが接続され、ドレインはノードN1に接続されている。2はトランジスタMP1のゲートを駆動する駆動回路、3は駆動回路2に入力する信号を反転するインバータ、4はインバータ3を介して駆動回路2を動作させるRSFF回路、5はスイッチングトランジスタMP1に流れる電流を検出する電流センス回路である。6はノードN2に入力する帰還電圧Vfbと電圧源7の目標出力電圧相当の基準電圧Vrefの差分を増幅する誤差増幅器、8はRSFF回路4をセットするためのクロック信号CLKとそのクロック信号CLKに同期したランプ形状のランプ電圧Vrampを生成する発振器、9は電流センス回路5で検出されたスイッチ電流検出電圧V5とランプ電圧Vrampを加算する加算器、10は加算器9から出力する加算電圧V9と誤差増幅器6から出力する誤差電圧V6を比較してRSFF回路4をリセットまでの時間を設定するためのPWM制御電圧V10を作成する比較器、MN1は加算器9の出力を“L”に落とすためのリセット用のNMOSトランジスタであり、RSFF回路4の端子QBが“H”になることによりオンする。このトランジスタMN1は加算電圧V9にノイズが乗って比較器10が誤動作することを防止するためのものである。以上の回路を含む点線のブロックがIC回路11として構成される。L1はスイッチングトランジスタMP1がオンしたときにエネルギーを蓄積するインダクタ、C1は平滑コンデンサ、D1はトランジスタMP1がオフしたときにインダクタL1に蓄積されたエネルギーを平滑コンデンサC1や出力端子N3に接続された負荷に供給するスイッチ用のダイオード、R1,R2は端子N3の出力電圧Voutを検出するための分圧用の抵抗であり、そこで得られた帰還電圧VfbがノードN2に入力される。
【0003】
この電流モード降圧型スイッチングレギュレータでは、クロック信号CLKでRSFF回路4がセットされたとき端子Qが“H”となり、駆動回路2の出力電圧が“L”になってスイッチングトランジスタMP1がオンする。また、誤差電圧V6と加算電圧V9が比較器10で比較され、その結果がV9>V6になったとき、比較器10から出力するPWM制御電圧V10が“H”となり、RSFF回路4がリセットされ、端子Qが“L”となって駆動回路2の出力電圧V2が“H”になり、スイッチングトランジスタMP1がオフする。また、RSFF回路4の端子QBが“H”になりトランジスタMN1がオンして、PWM制御電圧V10を“L”にし、マスクする。
【0004】
以上の結果、スイッチングトランジスタMP1はクロックCLKの立上りからPWM制御電圧V10が“H”になるまでの期間だけオンする。このオン期間は帰還電圧Vfbが低いほど、つまり負荷が重いほど長くなる。このようにして、スイッチングトランジスタMP1はPWM制御され、Vfb=Vrefとなるように、出力電圧Voutが制御される。
【0005】
この電流モード降圧型スイッチングレギュレータでは、出力電圧Voutは下記式の通り、オンデューティのサイクルDonによって定義される。
ここで、TはクロックCLKやランプ電圧Vrampの周期、TonはスイッチングトランジスタMP1のオン時間、Toffはオフ時間、Vout(min)は最小出力電圧、Vout(max)は最大出力電圧、Ton(min)は最小オン時間、Toff(min)は最小オフ時間である。
【0006】
出力可能な最小オフ時間、最小オン時間はIC回路11の内部で決定される。上記の式(3),(4)で示される通り、最小オフ時間が小さいほど最大出力電圧が高くなり、最小オン時間が小さいほど最小出力電圧が低くなる。したがって、出力電圧Voutの範囲を広くするためには、最小オフ時間と最小オン時間を小さくすることが要求される。
【0007】
また、入力電圧Vinの低電圧化やPWMゲイン上昇による過渡特性の改善を目的とするときは、比較器10に入力する加算電圧V9の振幅を小さくすることが行われる。
【0008】
しかし、比較器10に入力する加算電圧V9の振幅を小さくし、かつ最小オフ時間と最小オン時間を短縮しようとした場合、
図7の回路構成では誤動作が発生して、正常なオンデューティDonを実現することができない場合がある。そのメカニズムを
図8、
図9を用いて以下に説明する。
【0009】
ランプ電圧Vrampは、クロック信号CLKの立上りに同期して上昇し、予め内部で設定された電圧Vaに達すると下降し、その後、発振器8内で生成されるブランキング時間taの間だけ“L”のままとなり、これが繰り返される鋸波である。ランプ電圧Vrampとスイッチ電流検出電圧V5を足し合わせた加算電圧V9が、比較器10の非反転入力となる。最小オン時間はクロック信号CLKのパルス幅tb、最小オフ時間はブランキング時間taにより決定される。
【0010】
発振器8にて生成したクロック信号CLKが立ち上がると、RSFF回路4の端子Qが“H”となり、スイッチングトランジスタMP1がオンして、ノードN1が“H”となり、インダクタL1にエネルギーが蓄積される。その後、加算電圧V9が誤差電圧V6を上回ると、比較器10から出力するPWM制御電圧V10が“L”→“H”に変化する。このため、RSFF回路4の端子Qが“L”、端子QBが“H”になり、リセットトランジスタMN1がターンオンする。このとき、
図10(a),(b)に示すように、加算電圧V9が生じているライン12の寄生インダクタLpや寄生キャパシタCpの成分等により、加算電圧V9にリンギングが発生する。
【0011】
ランプ電圧Vrampの振幅が小さく加算電圧V9の振幅が小さい場合、リンギングの発生によりRSFF回路4の端子Qが“L”となった後に、PWM制御電圧V10が“L”となる。そして、この後にリンギングによってPWM制御電圧V10に“H”のパルスP1が発生しても、次にクロック信号CLKが立ち上がるまでに、スイッチ電流検出電圧V5が低下してから時間余裕がある場合は、
図8に示すように、RSFF回路4はQ=“L”、QB=“H”を維持して問題は発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、スイッチ電流検出電圧V5が低下してからクロック信号CLKが立上がるまでに時間余裕がない場合は、PWM制御電圧V10が“H”に立上がった直後にクロック信号CLKが立上がってRSFF回路4がセットされてQ=“H”、QB=“L”になった際に、
図9に示すように、リンギングによってPWM制御電圧V10に“H”のパルスP1が発生すると、RSFF回路4がリセットされて、スイッチングトランジスタMP1がオフする異常動作となる。
【0014】
このように、入力電圧Vinの低電圧化やPWMゲイン上昇による過渡特性の改善を目的としてランプ電圧Vrampの振幅を小さくし加算電圧V9の振幅を小さくしたときは、スイッチ電流検出電圧V5が低下してからクロック信号CLKが立上がるまでに時間余裕がない場合に、スイッチングトランジスタMN1のターンオン時のリンギングによる誤動作を防止するために、ランプ電圧Vrampのブランキング時間taとクロック信号CLKのパルス幅tbの合計時間を、パルスP1がマスクされる程度に長くしなければならない。このため、最小オフ時間や最小オン時間を短縮することが困難となり、出力電圧Voutの出力可能範囲が制限される。
【0015】
本発明の目的は、低電圧化への対応や過度特性の改善をはかるためにランプ電圧の振幅を小さくした場合でも、スイッチングトランジスタの最小オン時間と最小オフ時間を短縮できるようにした電流モード降圧型スイッチングレギュレータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、クロック信号と該クロック信号に同期したランプ電圧を生成する発振器と、前記ランプ電圧とスイッチ電流検出電圧を加算する加算器と、目標の出力電圧を決める基準電圧と前記出力電圧を示す帰還電圧との誤差電圧を出力する誤差増幅器と、前記加算器から出力する加算電圧と前記誤差増幅器から出力する誤差電圧を比較してPWM制御電圧を生成する比較器と、前記クロック信号がセット端子に入力し前記PWM制御電圧がリセット端子に入力するRSFF回路と、該RSFF回路がセットされたときオンして負荷側に電流を供給するスイッチングトランジスタと、前記RSFF回路がリセットされたときオンして前記PWM制御電圧をゼロリセットするリセットトランジスタとを備えた電流モード降圧型スイッチングレギュレータにおいて、前記比較器の出力側と前記RSFF回路のリセット端子との間に、前記PWM制御電圧が前記RSFF回路をリセットできる信号になって第1の時間が経過した時点から第2の時間だけ前記PWM制御電圧をマスクするマスク回路を挿入したことを特徴とする。
【0017】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の電流モード降圧型のスイッチングレギュレータにおいて、前記マスク回路は、前記PWM制御電圧が立上がると前記第2の時間のパルス幅のワンショットパルスを生成するワンショットマルチ回路と、該ワンショットパルスを前記第1の時間だけ遅延した信号によって前記PWM制御電圧を前記第1の時間の経過後の前記ワンショットパルスの時間だけマスクするAND回路と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の電流モード降圧型のスイッチングレギュレータにおいて、前記ワンショットパルスのパルス幅は、前記クロック信号の周期よりも短いことを特徴とする。
【0019】
請求項4にかかる発明は、請求項1、2又は3に記載の電流モード降圧型のスイッチングレギュレータにおいて、前記第1の時間は、前記クロック信号のパルス幅よりも短いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、比較器の出力側とRSFF回路のリセット端子との間に、PWM制御電圧がRSFF回路をリセットできる信号になって第1の時間が経過した時点から第2の時間だけPWM制御電圧をマスクするマスク回路を挿入したので、低電圧化への対応や過度特性の改善をはかるためにランプ電圧の振幅を小さくした場合でも、スイッチングトランジスタの最小オン時間と最小オフ時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の電流モード降圧型スイッチングレギュレータの回路図である。
【
図4】
図1のスイッチングレギュレータのマスク回路13の動作波形図である。
【
図5】
図1のスイッチングレギュレータの全体の動作波形図である。
【
図6】
図1のスイッチングレギュレータの全体の動作波形図である。
【
図7】従来のスイッチングレギュレータの回路図である。
【
図8】
図7のスイッチングレギュレータの動作波形図である。
【
図9】
図7のスイッチングレギュレータの動作波形図である。
【
図10】(a)は
図7のスイッチングレギュレータのライン12の寄生素子の説明図、(b)はそのリンギングの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の電流モード降圧型スイッチングレギュレータの実施例について説明する。
図1はその回路図であり、
図7で説明したものと同じものには同じ符号を付けた。再掲すると、MP1はPMOSのスイッチングトランジスタであり、電圧がVinの電圧源1の正極端子にソースが接続され、ドレインはノードN1に接続されている。2はトランジスタMP1のゲートを駆動する駆動回路、3は駆動回路2に入力する信号を反転するインバータ、4はインバータ3を介して駆動回路2を動作させるRSFF回路、5はスイッチングトランジスタMP1に流れる電流を検出する電流センス回路である。6はノードN2に入力する帰還電圧Vfbと電圧源7の目標出力電圧相当の基準電圧Vrefの差分を増幅する誤差増幅器、8はRSFF回路4をセットするためのクロック信号CLKとそのクロック信号CLKに同期したランプ電圧Vrampを生成する発振器、9は電流センス回路5で検出されたスイッチ電流検出電圧V5とランプ電圧Vrampを加算する加算器、10は加算器9から出力する加算電圧V9と誤差増幅器6から出力する誤差電圧V6を比較してRSFF回路4をリセットまでの時間を設定するためのPWM制御電圧V10を作成する比較器、MN1は加算器9の出力を“L”に落とすためのリセット用のNMOSトランジスタであり、RSFF回路4の端子QBが“H”になることによりオンする。このトランジスタMN1は加算電圧V9にノイズが乗って比較器10が誤動作することを防止するためのものである。以上の回路を含む点線のブロックがIC回路11として構成される。L1はスイッチングトランジスタMP1がオンしたときにエネルギーを蓄積するインダクタ、C1は平滑コンデンサ、D1はトランジスタMP1がオフしたときにインダクタL1に蓄積されたエネルギーを平滑コンデンサC1や出力端子N3に接続された負荷に供給するスイッチ用のダイオード、R1,R2は端子N3の出力電圧Voutを検出するための分圧用の抵抗であり、そこで得られた帰還電圧VfbがノードN2に入力する。
【0023】
点線で囲んだブロックは本実施例で追加したマスク回路13である。マスク回路13において、14はワンショットマルチ回路であり、OR回路15の出力電圧V15が“H”になることによりパルス幅がT1のワンショットパルス電圧V14を発生する。パルス幅T1はクロック信号CLKの周期よりは短い。16はワンショットマルチ回路14のワンショットパルス電圧V14を反転するインバータ、17はインバータ16の出力電圧V16を時間tcだけ遅延させる遅延回路、18は比較器10から出力するPWM制御電圧V10を遅延回路17の出力電圧V17によってマスクするためのAND回路である。OR回路15はワンショットパルス電圧V14又はPWM制御電圧V10のいずれかが“H”のとき出力電圧V15を“H”にする。
【0024】
図2にワンショットマルチ回路14の内部回路を示す。入力端子141に接続されるインバータ142の出力側が、電流源143に接続されたPMOSトランジスタMP2とNMOSトランジスタMN2からなるインバータ回路に接続され、両トランジスタMP2,MN2の共通ドレインがキャパシタC2に接続されている。そして、キャパシタC2が閾値電圧Vth144のインバータ144に接続されている。145はインバータ144の出力電圧V144を反転するインバータ、146はインバータ145の出力電圧V145が“L”でインバータ142の出力電圧V142が“L”のとき“H”のワンショットパルス電圧V14を出力するNOR回路である。
【0025】
このワンショットマルチ回路14では、
図4に示すように、OR回路15の出力電圧V15が“H”に立ち上がると、インバータ142の出力電圧V142が“L”に立ち下がって、トランジスタMP2がオンすることにより、キャパシタC2が電流源143の電流で充電されその電圧VC2が上昇する。この電圧VC2が次段のインバータ144の閾値電圧Vth144を超えると、そのインバータ144の出力電圧V144が“L”になり、その次のインバータ145の出力電圧V145が“H”になる。この直前ではNOR回路146の一方の入力には“L”の電圧V142が入力してその出力電圧V14は“H”になっているが、NOR回路146の他方の入力電圧V145が“H”になることで、NOR回路146の出力電圧V14は“L”になる。このようにして、ワンショットマルチ回路14の出力端子147には、パルス幅がT1のワンショットパルス電圧V14が発生する。
【0026】
なお、OR回路15を接続した理由は次の通りである。PWM制御電圧V10が“H”になっている時間が短く、キャパシタC2の電圧VC2が閾値電圧Vth144に到達しない場合は、電圧V144が常に“H”となり、電圧V145が常に“L”になり、電圧V14が“H”を継続する。そこで、この“H”の電圧V14をOR回路15を経由して電圧V15として帰還させることにより、PWM制御電圧V10の持続時間が短くても、キャパシタC2の電圧VC2が閾値電圧Vth144に必ず到達するようにしたものである。
【0027】
図3に遅延回路17の内部回路を示す。入力端子171に入力側が接続されたインバータ172の出力側にはインバータ173の入力側が接続され、その出力側が出力端子174に接続されている。C3はインバータ172,173の間と接地との間に接続されたキャパシタである。
【0028】
この遅延回路17では、インバータ172の出力インピーダンスとキャパシタC3の容量で決まる時間tcだけ、入力端子171に入力したワンショットパルス電圧V14を遅延して出力端子174から出力する。
【0029】
以上から、
図1の回路のマスク回路13では、PWM制御電圧V10が“H”に立ち上がってから遅延回路17で遅延された電圧V17が“L”に立ち下がる期間tcだけ、AND回路18がゲートを開いて、比較器10から出力するPWM制御電圧V10をリセット用の電圧として、RSFF回路4のリセット端子Rに出力する。期間tcが経過して電圧V17が立下がった後は、AND回路18はゲート閉じるので、意図しないパルスがRSFF回路4のリセット端子Rに入力することが防止される。遅延時間tcは短いほどマスク開始のタイミングが早くなるので、好ましい。この遅延時間tcは例えば、クロック信号CLKのパルス幅tbよりも短いことが好ましい。
【0030】
したがって、スイッチ電流検出電圧V5が低下してからクロック信号CLKが立上がるまでに時間余裕がある場合は(
図5)はもちろん、時間余裕が無い場合(
図6)においても、RSFF回路4のリセットによるトランジスタMN1のターンオンによって加算器9の出力ライン12の加算電圧V9にリンギングが発生し加算電圧V9が変動しても、その変動によりPWM制御電圧V10に生じるパルスP1は、AND回路18によってマスクされ、RSFF回路4がセットされた直後にそのパルスP1によってRSFF回路4が再リセットされることはなく、駆動回路2が誤動作することが防止される。
【0031】
よって、本実施例では、ランプ電圧Vrampの振幅を小さくし加算電圧V9の振幅を小さくした場合でも、トランジスタMN1のターンオン時にライン12に発生するリンギングの影響を回避するためにクロック信号CLKのパルス幅tbとランプ電圧Vrampのブランキング期間taを制限する必要がない。このため、最小オフ時間や最小オン時間の短縮が可能となり、低電圧化や加算電圧V9の振幅低減による特性改善を図った場合でも、出力電圧Voutの出力可能範囲の拡大が可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1:電圧源、2:駆動回路、3:インバータ、4:RSFF回路、5:電流センス回路、6:誤差増幅器、7:電圧源、8:発振器、9:加算器、10:比較器、11:IC、12:ライン、13:マスク回路、14:ワンショットマルチ回路、141:入力端子、142:インバータ、143:電流源、144,145:インバータ、146:NOR回路、147:出力端子、15:OR回路、16:インバータ、17:遅延回路、171:入力端子、172,173:インバータ、174:出力端子、18:AND回路