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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】注出部材挿入構造および包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/42 20060101AFI20230526BHJP
【FI】
B65D25/42 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019082953
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020179874
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3165763(JP,U)
【文献】特開平02-139368(JP,A)
【文献】特開2018-062351(JP,A)
【文献】特開2015-224068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が流体の流路とされた挿入部を有する注出部材と、前記挿入部内に軸線方向移動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する被挿入部とを備え、
前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあって前記挿入部および前記弁体の螺旋方向への相対移動を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成され、
前記弁体は、前記軸線方向移動によって、前記流路を開放する開放位置と、前記挿入部の挿入方向の端部において前記流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、
前記被挿入部に、係合部が形成され、
前記弁体に、前記係合部に係合して前記弁体の回転を規制する係合受け部が形成され、
前記挿入孔の内周面と前記挿入部の外周面には、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第2の螺旋係合部がそれぞれ形成されている、
注出部材挿入構造。
【請求項2】
前記挿入部は、内部が前記流路とされた円筒形状の筒部と、前記筒部の挿入方向の端部に設けられた先端突出部とを備え、
前記先端突出部に、前記流体が流通する流通口が形成され、
前記弁体は、前記流通口を閉止する閉止板を備える、請求項1記載の注出部材挿入構造。
【請求項3】
前記流通口は、前記軸線方向から見て前記軸線を中心とする円形状であり、
前記閉止板は、前記軸線方向から見て前記流通口と同心の円形状である、請求項2記載の注出部材挿入構造。
【請求項4】
前記第2の螺旋係合部の螺旋角は、前記第1の螺旋係合部の螺旋角と等しい、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の注出部材挿入構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の注出部材挿入構造の前記注出部材と、前記注出部材が装着される容器とを備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出部材挿入構造および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、印刷装置には、インクが充てんされたインク容器が接続される。インク容器は、挿入部を有する注出部材を備える。印刷装置は、挿入孔を有する被挿入部を備える。注出部材の挿入部は、被挿入部の挿入孔に挿入されることによって印刷装置に接続される。これにより、インク容器内のインクを印刷装置に供給できる。被挿入部と、これに挿入される挿入部とを備えた接続構造としては、特許文献1に記載の連結部材がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-511416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記注出部材は、接続先の装置に接続する際に内容物が漏出することがあった。そのため、接続作業において内容物の漏出を抑制することが求められている。
【0005】
本発明の一態様は、注出部材を接続先に接続する作業において内容物の漏出を抑制できる注出部材挿入構造および包装容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内部が流体の流路とされた挿入部を有する注出部材と、前記挿入部内に軸線方向移動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する被挿入部とを備え、前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあって前記挿入部および前記弁体の螺旋方向への相対移動を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記弁体は、前記軸線方向移動によって、前記流路を開放する開放位置と、前記挿入部の挿入方向の端部において前記流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能である、注出部材挿入構造を提供する。
【0007】
前記挿入部は、内部が前記流路とされた円筒形状の筒部と、前記筒部の挿入方向の端部に設けられた先端突出部とを備え、前記先端突出部に、前記流体が流通する流通口が形成され、前記弁体は、前記流通口を閉止する閉止板を備えることが好ましい。
【0008】
前記流通口は、前記軸線方向から見て前記軸線を中心とする円形状であり、前記閉止板は、前記軸線方向から見て前記流通口と同心の円形状であることが好ましい。
【0009】
前記挿入孔の内周面と前記挿入部の外周面には、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第2の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記第2の螺旋係合部の螺旋角は、前記第1の螺旋係合部の螺旋角と等しいことが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様は、前記注出部材挿入構造の前記注出部材と、前記容器とを備える包装容器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、注出部材を接続先に接続する作業において内容物の漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の注出部材装置の斜視図である。
図2】実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の斜視図である。
図3】実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の一部の側面図である。
図4】実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の一部を前図とは反対側から見た側面図である。
図5】実施形態の注出部材挿入構造の弁体の斜視図である。
図6】実施形態の注出部材挿入構造の弁体を前図とは反対側から見た斜視図である。
図7】実施形態の注出部材挿入構造の断面図である。
図8】実施形態の注出部材挿入構造の動作を説明する断面図である。
図9】実施形態の注出部材挿入構造の動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0014】
[注出部材挿入構造]
図1は、実施形態の注出部材装置100の斜視図である。図2は、注出部材10の斜視図である。図3は、注出部材10の一部の側面図である。図4は、注出部材10の一部を図3とは反対側から見た側面図である。図5は、弁体20の斜視図である。図6は、弁体20を図5とは反対側から見た斜視図である。図7は、注出部材挿入構造10Aの断面図である。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を採用することがある。図1に示すように、X方向は主板部4の幅方向である。Y方向は主板部4の長さ方向である。Y方向は主板部4に沿う面内においてX方向と直交する。Z方向は主板部4の厚さ方向である。Z方向はX方向およびY方向に直交する。平面視とは、Z方向と平行に見ることをいう。
【0015】
図7に即して上下の位置関係を仮に定める。すなわち、図7において上に向かう方向を上方といい、下に向かう方向を下方という。ここで定めた位置関係は、注出部材挿入構造10Aの使用時の姿勢を限定しない。
【0016】
図1に示すように、注出部材装置100は、注出部材10と、受け部30とを備える。
受け部30は、主板部4と、被挿入部5と、底板部6と、規制凸部7と、を備える。実施形態の注出部材挿入構造10A(注出部材接続構造)は、注出部材10と、被挿入部5とを有する。
【0017】
主板部4は、概略、矩形状に形成されている。
被挿入部5は、主板部4の一方の面(下面)から下方に突出する筒状に形成されている。被挿入部5の内部空間は挿入孔5aである。XY平面に沿う挿入孔5aの断面は円形状とされている。C2は挿入孔5aの中心軸である。中心軸C2に沿う方向は、被挿入部5の軸線方向である。
【0018】
図1および図7に示すように、挿入孔5aの内周面5bには、第1キー突起41および第2キー突起42が形成されている。第1キー突起41および第2キー突起42は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起41および第2キー突起42は、内周面5bから、挿入孔5aの中心軸に近づく方向に突出している。第1キー突起41と第2キー突起42は、例えば、挿入孔5aの中心軸に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー突起41と第2キー突起42との間の軸周りの角度(突起間角度)は約180°である。
第1キー突起41および第2キー突起42は、挿入孔5aの内周面5bに形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0019】
被挿入部5の下端には底板部6が形成されている。底板部6には、流体が流通する貫通孔である流通孔6aが形成されている。
規制凸部7は、底板部6から上方に突出している。規制凸部7は、例えば、円柱状とされている。規制凸部7の先端面7aには、係合部8が形成されている。係合部8は、先端面7aから上方に突出している。係合部8は、平面視において非円形であって、係合受け部24に係合したときに、弁体20の中心軸C1周り方向の変位を規制することができる。係合部8は、例えば、被挿入部5の軸線方向から見て十字形状の突起である。係合部8は、被挿入部5の内部にあり、係合受け部24に相対回転不能に係合する。
【0020】
図7に示すように、注出部材10は、容器34の容器本体35の開口部35aに装着されている。注出部材10は、基部11と、挿入部12とを有する。図1に示すように、基部11は、例えば、いわゆる舟形であってもよい。図7に示すように、基部11は、容器本体35の開口部35aに取り付けられている。
【0021】
図2に示すように、挿入部12は、筒部12Aと、先端突出部12Bとを備える。筒部12Aは、円筒形状とされている。挿入部12は、基部11の第1面11a(図7における下面)から、図7における下方に突出している。C1は、注出部材10の中心軸、すなわち、挿入部12の中心軸である。中心軸C1に沿う方向は、注出部材10の軸線方向である。
【0022】
先端突出部12Bは、円板状に形成され、筒部12Aの挿入方向の端部(図7における下端部)に設けられている。先端突出部12Bは、筒部12Aの端部(図7における下端部)から内方に突出する。先端突出部12Bには、流通口16が形成されている。流通口16は、注出部材10の軸線方向から見て、先端突出部12Bと同心の円形状とされている。流通口16の内径は、先端突出部12Bの外径より小さい。
【0023】
図1に示すように、基部11には、Z方向に沿って流路13が形成されている。挿入部12の内部空間は流路14となる。流路13,14は、容器本体35(図7参照)の内容物を、挿入部12の流通口16から外部に注出させることができる。
【0024】
図2図4に示すように、挿入部12(筒部12A)の外周面には、第1キー溝43および第2キー溝44が形成されている。第1キー溝43および第2キー溝44は、例えば、長さ方向に直交する断面が半円状の溝である。
【0025】
図3に示すように、第1キー溝43は、第1主溝45と、第1屈折溝47とを有する。第1キー溝43は、第1キー突起41(図1および図7参照)に嵌合する。第1キー溝43(詳しくは第1屈折溝47)と第1キー突起41とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0026】
図4に示すように、第2キー溝44は、第2主溝46と、第2屈折溝48とを有する。第2キー溝44は、第2キー突起42(図1および図7参照)に嵌合する。第2キー溝44(詳しくは第2屈折溝48)と第2キー突起42とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0027】
キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)の螺旋角は、弁体20のキー溝53,54の螺旋角と等しい。キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)は、挿入部12の外周面に形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0028】
図3および図4に示すように、第1主溝45および第2主溝46は、挿入部12の先端12aから、中心軸C1に沿って基部11に近づく方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aから屈折した方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。
【0029】
第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aを起点として、基部11に近づく方向に、中心軸C1に対して傾斜して延びる。第1屈折溝47と第2屈折溝48の傾斜方向は互いに同じである。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、例えば、中心軸C1周り方向に10°~180°の範囲に形成されている。この角度が120°以下であると、接続時の注出部材10のひねりが少なく、より作業しやすい。
【0030】
図2に示すように、第1キー溝43と第2キー溝44は、中心軸C1周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー溝43の最深部と第2キー溝44の最深部との間の中心軸C1周りの角度(溝間角度)は、約180°である。この溝間角度は、第1キー突起41と第2キー突起42との間の突起間角度(図1参照)と等しい。第1キー溝43と第2キー溝44との間の溝間角度は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0031】
挿入部12(筒部12A)の内周面12b(図7参照)には、第1キー突起51および第2キー突起52が形成されている。第1キー突起51および第2キー突起52は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面12bから、中心軸C1に近づく方向に突出している。第1キー突起51と第2キー突起52は、例えば、中心軸C1に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。第1キー突起51と第2キー突起52との間の突起間角度は約180°である。
第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面12bに形成された「第1の螺旋係合部」である。第1キー突起51と第2キー突起52との間の突起間角度は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0032】
図7に示すように、弁体20は、挿入部12の内部に、中心軸C1に沿う方向(軸線方向)に移動可能に設けられている。
図5および図6に示すように、弁体20は、閉止板21と、筒部22と、複数の連結部23とを備える。
【0033】
筒部22は、円筒形状とされている。筒部22の外周面には、第1キー溝53および第2キー溝54が形成されている。第1キー溝53および第2キー溝54は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。第1キー溝53および第2キー溝54は、閉止板21に近づく方向に、中心軸C1に対して傾斜して延びる。
【0034】
第1キー溝53は、第1キー突起51に嵌合する。第1キー溝53と第1キー突起51とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。第2キー溝54は、第2キー突起52に嵌合する。第2キー溝54と第2キー突起52とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
第1キー溝53および第2キー溝54は、弁体20の外周面に形成された「第1の螺旋係合部」である。
【0035】
閉止板21は、筒部22と同心の円板状に形成されている。閉止板21の外径は、流通口16(図7参照)の内径にほぼ等しいか、流通口16の内径よりやや大きい。閉止板21は、流通口16を閉止可能である。閉止板21は、中心軸C1に対して垂直である。閉止板21は、筒部22に対して下方に離間した位置にある。
【0036】
図5に示すように、閉止板21の先端面21aには、被挿入部5の係合部8と係合する凹状の係合受け部24(被係合部)が形成されている。係合受け部24は、係合部8に対応する形状とされている。係合受け部24は、例えば、弁体20の軸線方向から見て十字形状とされている。係合受け部24に係合部8の先端部が嵌合したときには、弁体20の中心軸C1周り方向の変位が規制される。
【0037】
連結部23は、軸線方向に沿う柱状とされ、閉止板21と筒部22とを連結している。複数の連結部23は、中心軸C1周り方向に間隔をおいて形成されている。そのため、閉止板21が先端突出部12Bから離れると(図9参照)、挿入部12内の流体は、閉止板21と筒部22との隙間を経て流通口16から流出する。
【0038】
図7では、弁体20は、閉止板21が流通口16を閉止する閉止位置P1にある。閉止位置P1では、閉止板21は流通口16内に嵌合することによって流通口16を閉止する。弁体20は、流通口16を開放する開放位置P2(図9参照)をとることもできる。開放位置P2では、閉止板21は流通口16から離れることによって流通口16を開放する。
【0039】
[注出部材挿入構造の使用方法]
次に、注出部材挿入構造10Aの使用方法について説明する。まず、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aに挿入する操作について説明する。
図7に示すように、弁体20の閉止板21は流通口16を閉止している。そのため、挿入部12の内容物が漏出するのが抑制される。
【0040】
図8に示すように、注出部材10の挿入部12を被挿入部5の挿入孔5aに合わせる。その際、第1キー溝43および第2キー溝44(図2参照)の位置を、それぞれ第1キー突起41および第2キー突起42の位置に合わせる。注出部材10の中心軸C1は挿入孔5aの中心軸C2に一致させる。
【0041】
挿入部12が挿入孔5aに挿入されると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1キー溝43および第2キー溝44の第1主溝45および第2主溝46に嵌合する(図3および図4参照)。
【0042】
挿入部12を被挿入部5に対して挿入方向に移動させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1主溝45および第2主溝46内を進み、末端45a,46a(図3および図4参照)に達する。
挿入部12を中心軸C1周りの螺旋方向に変位させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48に進入する。これにより、挿入部12は、回転しつつ挿入方向(図8の下方)に変位する。
【0043】
図7および図8では、閉止板21は流通口16内に嵌合し、閉止板21の下面と先端突出部12Bの下面とが同じ高さとなっている。
【0044】
図9に示すように、係合部8が係合受け部24に嵌合すると、弁体20の中心軸C1周り方向の変位は規制される。一方、挿入部12の螺旋方向の変位は妨げられないため、挿入部12は、螺旋方向に変位し続ける。この際、挿入部12のキー突起51,52はキー溝53,54(図5および図6参照)内を進行する。
【0045】
弁体20が高さ位置を維持したまま、挿入部12は挿入方向(図9の下方)に変位するため、閉止板21は流通口16から離れる。そのため、容器34の内容物(流体)は、閉止板21と筒部22との隙間を経て流通口16から流出する。内容物は、被挿入部5を経て、流通孔6aを通って貯留容器(図示略)に供給される。
第1キー突起41および第2キー突起42が、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48の終端に達した段階で、挿入部12の、挿入孔5aへの挿入は完了する。
【0046】
次に、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く操作について説明する。
図9に示すように、挿入部12を、挿入時とは逆の方向に回転させつつ、引き抜き方向(図9の上方)に変位させる。この過程で、キー突起41,42は屈折溝47,48内を進行し、キー突起51,52はキー溝53,54内を進行する。図8に示すように、挿入部12の上昇によって流通口16が閉止板21に達するため、流通口16の閉止によって流路13,14は閉止される。
【0047】
係合部8が係合受け部24から外れると、弁体20の回転規制は解除されるため、弁体20は挿入部12と一体的に移動する。
キー突起41,42が末端45a,46a(図3および図4参照)に達した後、挿入部12を引き抜き方向(図8の上方)に変位させる。これにより、図7に示すように、挿入部12は、挿入孔5aから引き抜かれる。
【0048】
[注出部材挿入構造が奏する効果]
図7に示すように、閉止位置P1にある弁体20は、挿入部12の挿入方向の端部において流通口16を閉止する。そのため、注出部材10を被挿入部5に接続する作業において、挿入部12の内容物の漏出を抑制することができる。
【0049】
弁体20は、閉止板21によって流通口16を閉止可能とされているため、図9に示すように、閉止板21の高さを先端突出部12Bからずらせることによって、容易に流通口16を開放できる。
【0050】
流通口16は中心軸C1を中心とする円形状であり、閉止板21は流通口16と同心の円形状である。そのため、挿入部12の回転による流通口16と閉止板21との位置ずれは生じにくい。よって、閉止板21は流通口16を確実に閉止できる。
【0051】
注出部材挿入構造10Aでは、挿入孔5aの内周面にキー突起41,42が形成され、挿入部12の外周面にキー溝43,44が形成されているため、挿入部12の引き抜きの際に、弁体20の閉止板21が流通口16を閉止する。よって、注出部材10を被挿入部5から引き抜く作業において内容物の漏出を抑制することができる。
【0052】
キー溝43,44は、主溝45,46に加えて屈折溝47,48を有するため、キー突起がキー溝内を進行する過程で進行方向が変化することから、操作者が注出部材の挿入操作の完了を確認しやすい。よって、注出部材挿入構造10Aは、操作性に優れている。
【0053】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、図5に示すように、弁体20では、係合部8は十字形状とされているが、係合部の形状は十字形状に限定されない。係合部の形状は、係合受け部に係合したときに、弁体の中心軸周り方向の変位を規制することができればよく、例えば、一字形状、多角形状などであってもよい。
【0054】
図1に示す注出部材挿入構造10Aでは、被挿入部5にキー突起41,42が形成され、注出部材10にキー溝43,44が形成されているが、注出部材10および被挿入部5の構造はこれに限定されない。注出部材挿入構造は、挿入部の外周面と挿入孔の内周面のいずれか一方にキー突起が形成され、他方に、キー突起が嵌合するキー溝が形成されていればよい。そのため、図1に示す注出部材挿入構造10Aとは逆に、被挿入部にキー溝が形成され、注出部材にキー突起が形成されていてもよい。
【0055】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、被挿入部5に2つのキー突起41,42が形成され、挿入部12に2つのキー突起51,52が形成されている。被挿入部および挿入部に形成されるキー突起の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。注出部材挿入構造10Aでは、挿入部12に2つのキー溝43,44が形成され、弁体20に2つのキー溝53,54が形成されている。挿入部および弁体に形成されるキー溝の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。
【0056】
注出部材を構成する基部と挿入部とは、一体であってもよいし、別体であってもよい。基部と挿入部とが別体である場合には、例えば、次の構造を採用できる。基部は、挿入部の一部が挿入される貫通孔(図示略)を有する。挿入部の一部は、前記貫通孔に挿入された状態で、凹凸嵌合、ネジ嵌合などにより基部と結合される。基部と挿入部とは着脱自在であってよい。
【0057】
基部と挿入部とが別体であると、次の使用方法が可能である。基部は容器に取り付けておく。挿入部を基部から外した状態で、貫通孔を通して内容物を容器に充填する。次いで、挿入部を基部に取り付ける。この方法によれば、内容物を、挿入部ではなく基部の貫通孔を通して容器に充填することができるため、容器への内容物の流入がスムーズとなり充填操作が容易となる。
【0058】
図1に示す注出部材10と、注出部材10が装着される容器34(図7参照)とは、包装容器を構成する。
【0059】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、弁体20は、容器34側に移動したときに注出部材10の流路13,14が開き、被挿入部5側に移動したときに流路13,14が閉じる。注出部材挿入構造は、これに限らず、弁体が容器側に移動したときに注出部材の流路が閉じ、弁体が被挿入部側に移動したときに注出部材の流路が開く構造を採用してもよい。
【0060】
前記注出部材挿入構造は、前記弁体に、被係合部が形成され、前記被挿入部に、前記注出部材を前記挿入孔へ挿入した際に前記被挿入部の内部で前記被係合部と相対回転不能に係合する係合部が形成されている構成であってよい。
【0061】
本発明の注出部材挿入構造は、容器の内容物の詰替えや補充に好適に適用できる。特に、詰替えや補充時の液漏れが問題となる内容物を用いる場合、例えば、印刷用インキ、トイレタリー用品、調味料、医薬品、医療・検査機器、燃料などを対象とする場合に好適である。
【符号の説明】
【0062】
5…被挿入部、5a…挿入孔、10…注出部材、10A…注出部材挿入構造、12…挿入部、12A…筒部、12B…先端突出部、13,14…流路、16…流通口、20…弁体、21…閉止板、24…係合受け部(被係合部)、34…容器、35a…開口部、41…第1キー突起(第2の螺旋係合部)、42…第2キー突起(第2の螺旋係合部)、47…第1屈折溝(第2の螺旋係合部)、48…第2屈折溝(第2の螺旋係合部)、51…第1キー突起(第1の螺旋係合部)、52…第2キー突起(第1の螺旋係合部)、53…第1キー溝(第1の螺旋係合部)、54…第2キー溝(第1の螺旋係合部)、C1…注出部材の中心軸(軸線)、P1…閉止位置、P2…開放位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9