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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】注出部材接続構造および包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20230526BHJP
   B65D 47/06 20060101ALI20230526BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
B65D41/04
B65D47/06
B65D83/00 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019106215
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020200052
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062351(JP,A)
【文献】特開2017-057009(JP,A)
【文献】特開2005-132424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が流体の流路とされた挿入部を有する注出部材と、前記挿入部内に軸線方向に位置変動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する被挿入部とを備え、
前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあって前記挿入部および前記弁体の螺旋方向への相対変位を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成され、 前記弁体は、前記位置変動によって、前記流路を開放する開放位置と、前記流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、
前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち一方に、他方に向けて突出する第1係合突起が形成され、
前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち他方に、一方に向けて突出し、前記第1係合突起に係合可能な第2係合突起が形成され、
前記第1係合突起および前記第2係合突起は、前記挿入部および前記弁体が相対変位する過程で前記第1係合突起が前記第2係合突起を乗り越える際に振動を生じさせ、
前記挿入孔の内周面と前記挿入部の外周面には、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第2の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記第2の螺旋係合部の螺旋角は、前記第1の螺旋係合部の螺旋角と等しい
注出部材接続構造。
【請求項2】
前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち一方に、前記第1係合突起が係合するストッパ突起が形成されている、請求項1記載の注出部材接続構造。
【請求項3】
前記第1係合突起および前記第2係合突起は、前記軸線方向に沿って形成されている、請求項1または2に記載の注出部材接続構造。
【請求項4】
前記第1係合突起および前記第2係合突起は、前記軸線周りの方向に沿って形成されている、請求項1に記載の注出部材接続構造。
【請求項5】
前記第1の螺旋係合部は、前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち一方に形成されたキー突起と、他方に形成されて前記キー突起に嵌合するキー溝とを有し、
前記第1係合突起と前記第2係合突起のうち一方は、前記キー溝内に形成され、
前記第1係合突起と前記第2係合突起のうち他方は、前記キー突起である、請求項1に記載の注出部材接続構造。
【請求項6】
前記弁体は、前記第1係合突起が前記第2係合突起を乗り越えたときに前記閉止位置にある、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の注出部材接続構造。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の注出部材接続構造の前記注出部材と、前記注出部材が装着される容器とを備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出部材接続構造および包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、印刷装置には、インクが充てんされたインク容器が接続される。インク容器は、挿入部を有する注出部材を備える。印刷装置は、挿入孔を有する被挿入部を備える。注出部材の挿入部は、被挿入部の挿入孔に挿入されることによって印刷装置に接続される。これにより、インク容器内のインクを印刷装置に供給できる。被挿入部と、これに挿入される挿入部とを備えた接続構造としては、特許文献1に記載の連結部材がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-511416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記注出部材は、例えば、接続先の装置に対して接続または接続解除する際に、当該操作をするべきタイミングが使用者にわかりにくい場合があった。
【0005】
本発明の一態様は、注出部材を接続先に対して接続または接続解除する際に、当該操作をするべきタイミングが使用者にわかりやすい注出部材接続構造および包装容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内部が流体の流路とされた挿入部を有する注出部材と、前記挿入部内に軸線方向に位置変動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される挿入孔を有する被挿入部とを備え、前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあって前記挿入部および前記弁体の螺旋方向への相対変位を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記弁体は、前記位置変動によって、前記流路を開放する開放位置と、前記流路を閉止する閉止位置とを切り替え可能であり、前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち一方に、他方に向けて突出する第1係合突起が形成され、前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち他方に、一方に向けて突出し、前記第1係合突起に係合可能な第2係合突起が形成され、前記第1係合突起および前記第2係合突起は、前記挿入部および前記弁体が相対変位する過程で前記第1係合突起が前記第2係合突起を乗り越える際に振動を生じさせる注出部材挿入構造を提供する。
【0007】
前記注出部材接続構造は、前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち一方に、前記第1係合突起が係合するストッパ突起が形成されていることが好ましい。
【0008】
前記第1係合突起および前記第2係合突起は、前記軸線方向に沿って形成されていてもよい。
【0009】
前記第1係合突起および前記第2係合突起は、前記軸線周りの方向に沿って形成されていてもよい。
【0010】
前記第1の螺旋係合部は、前記挿入部の内周面と前記弁体の外周面のうち一方に形成されたキー突起と、他方に形成されて前記キー突起に嵌合するキー溝とを有し、前記第1係合突起と前記第2係合突起のうち一方は、前記キー溝内に形成され、前記第1係合突起と前記第2係合突起のうち他方は、前記キー突起である構成としてもよい。
【0011】
前記弁体は、前記第1係合突起が前記第2係合突起を乗り越えたときに前記閉止位置にあることが好ましい。
【0012】
前記注出部材接続構造は、前記挿入孔の内周面と前記挿入部の外周面に、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第2の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記第2の螺旋係合部の螺旋角は、前記第1の螺旋係合部の螺旋角と等しいことが好ましい。
【0013】
本発明の他の態様は、前記注出部材挿入構造の前記注出部材と、前記容器とを備える包装容器を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、注出部材を接続先に対して接続または接続解除する際に、当該操作をするべきタイミングが使用者にわかりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の注出部材装置の斜視図である。
図2】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の斜視図である。
図3】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の一部の側面図である。
図4】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の一部を前図とは反対側から見た側面図である。
図5】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の断面図である。
図6】第1実施形態の注出部材挿入構造の弁体の斜視図である。
図7】第1実施形態の注出部材挿入構造の弁体を前図とは反対側から見た斜視図である。
図8】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材および弁体の平面図である。
図9】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材および弁体の拡大した平面図である。
図10】第1実施形態の注出部材挿入構造の断面図である。
図11】第1実施形態の注出部材挿入構造の動作を説明する断面図である。
図12】第1実施形態の注出部材挿入構造の動作を説明する断面図である。
図13】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材および弁体の動作を示す拡大平面図である。
図14】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材および弁体の動作を示す拡大平面図である。
図15】第1実施形態の注出部材挿入構造の注出部材および弁体の動作を示す拡大平面図である。
図16】第2実施形態の注出部材挿入構造の断面図である。
図17】第2実施形態の注出部材挿入構造の拡大した断面図である。
図18】第3実施形態の注出部材挿入構造の弁体の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0017】
[注出部材挿入構造](第1実施形態)
図1は、第1実施形態の注出部材装置100の斜視図である。図2は、注出部材10の斜視図である。図3は、注出部材10の一部の側面図である。図4は、注出部材10の一部を図3とは反対側から見た側面図である。図5は、注出部材10の断面図である。図6は、弁体20の斜視図である。図7は、弁体20を図6とは反対側から見た斜視図である。図8は、注出部材10および弁体20の平面図である。図9は、注出部材10および弁体20の拡大した平面図である。図10は、注出部材挿入構造10Aの断面図である。
以下の説明においては、XYZ直交座標系を採用することがある。図1に示すように、X方向は主板部4の幅方向である。Y方向は主板部4の長さ方向である。Y方向は主板部4に沿う面内においてX方向と直交する。Z方向は主板部4の厚さ方向である。Z方向はX方向およびY方向に直交する。平面視とは、Z方向と平行に見ることをいう。
【0018】
図10に即して上下の位置関係を仮に定める。すなわち、図10において上に向かう方向を上方といい、下に向かう方向を下方という。ここで定めた位置関係は、注出部材挿入構造10Aの使用時の姿勢を限定しない。
【0019】
図1に示すように、注出部材装置100は、注出部材10と、弁体20と、受け部30とを備える。
受け部30は、主板部4と、被挿入部5と、底板部6と、規制凸部7と、を備える。第1実施形態の注出部材挿入構造10A(注出部材接続構造)は、注出部材10と、弁体20と、被挿入部5とを有する。
【0020】
主板部4は、概略、矩形状に形成されている。
被挿入部5は、主板部4の一方の面(下面)から下方に突出する筒状に形成されている。被挿入部5の内部空間は挿入孔5aである。XY平面に沿う挿入孔5aの断面は円形状とされている。C2は挿入孔5aの中心軸である。中心軸C2に沿う方向は、被挿入部5の軸線方向である。
【0021】
図1および図10に示すように、挿入孔5aの内周面5bには、第1キー突起41および第2キー突起42が形成されている。第1キー突起41および第2キー突起42は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起41および第2キー突起42は、内周面5bから、挿入孔5aの中心軸に近づく方向に突出している。第1キー突起41と第2キー突起42は、例えば、挿入孔5aの中心軸に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー突起41と第2キー突起42との間の軸周りの角度(突起間角度)は約180°である。
第1キー突起41および第2キー突起42は、挿入孔5aの内周面5bに形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0022】
被挿入部5の下端には底板部6が形成されている。底板部6には、流体が流通する貫通孔である流通孔6aが形成されている。
規制凸部7は、底板部6から上方に突出している。規制凸部7は、例えば、円柱状とされている。規制凸部7の先端面7aには、係合部8が形成されている。係合部8は、先端面7aから上方に突出している。係合部8は、平面視において非円形であって、係合受け部24に係合したときに、弁体20の中心軸C1周り方向の変位を規制することができる。係合部8は、例えば、被挿入部5の軸線方向から見て十字形状の突起である。係合部8は、被挿入部5の内部にあり、係合受け部24に相対回転不能に係合する。
【0023】
図10に示すように、注出部材10は、容器34の容器本体35の開口部35aに装着されている。注出部材10は、基部11と、挿入部12とを有する。図1に示すように、基部11は、例えば、いわゆる舟形であってもよい。図10に示すように、基部11は、容器本体35の開口部35aに取り付けられている。
【0024】
図2に示すように、挿入部12は、筒部12Aと、先端突出部12Bとを備える。筒部12Aは、円筒形状とされている。挿入部12は、基部11の第1面11a(図10における下面)から、図10における下方に突出している。C1は、注出部材10の中心軸、すなわち、挿入部12の中心軸である。中心軸C1に沿う方向は、注出部材10の軸線方向である。
【0025】
先端突出部12Bは、円板状に形成され、筒部12Aの挿入方向の端部(図10における下端部)に設けられている。先端突出部12Bは、筒部12Aの端部(図7における下端部)から内方に突出する。先端突出部12Bには、流通口16が形成されている。流通口16は、注出部材10の軸線方向から見て、先端突出部12Bと同心の円形状とされている。流通口16の内径は、先端突出部12Bの外径より小さい。
【0026】
図1に示すように、基部11には、Z方向に沿って流路13が形成されている。挿入部12の内部空間は流路14となる。流路13,14は、容器本体35(図10参照)の内容物を、挿入部12の流通口16から外部に注出させることができる。
【0027】
図2図4に示すように、挿入部12(筒部12A)の外周面には、第1キー溝43および第2キー溝44が形成されている。第1キー溝43および第2キー溝44は、例えば、長さ方向に直交する断面が半円状の溝である。
【0028】
図3に示すように、第1キー溝43は、第1主溝45と、第1屈折溝47とを有する。第1キー溝43は、第1キー突起41(図1および図10参照)に嵌合する。第1キー溝43(詳しくは第1屈折溝47)と第1キー突起41とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0029】
図4に示すように、第2キー溝44は、第2主溝46と、第2屈折溝48とを有する。第2キー溝44は、第2キー突起42(図1および図10参照)に嵌合する。第2キー溝44(詳しくは第2屈折溝48)と第2キー突起42とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0030】
キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)の螺旋角は、弁体20のキー溝53,54の螺旋角と等しい。キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)は、挿入部12の外周面に形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0031】
図3および図4に示すように、第1主溝45および第2主溝46は、挿入部12の先端12aから、中心軸C1に沿って基部11に近づく方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aから屈折した方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。
【0032】
第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aを起点として、基部11に近づく方向に、中心軸C1に対して傾斜して延びる。第1屈折溝47と第2屈折溝48の傾斜方向は互いに同じである。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、例えば、中心軸C1周り方向に10°~180°の範囲に形成されている。この角度が120°以下であると、接続時の注出部材10のひねりが少なく、より作業しやすい。
【0033】
図2に示すように、第1キー溝43と第2キー溝44は、中心軸C1周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー溝43の最深部と第2キー溝44の最深部との間の中心軸C1周りの角度(溝間角度)は、約180°である。この溝間角度は、第1キー突起41と第2キー突起42との間の突起間角度(図1参照)と等しい。第1キー溝43と第2キー溝44との間の溝間角度は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0034】
挿入部12(筒部12A)の内周面12b(図10参照)には、第1キー突起51および第2キー突起52が形成されている。第1キー突起51および第2キー突起52は、小径部18の内周面の上部に形成されている。第1キー突起51および第2キー突起52は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面12bから、中心軸C1に近づく方向に突出している。第1キー突起51と第2キー突起52は、例えば、中心軸C1に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。第1キー突起51と第2キー突起52との間の突起間角度は約180°である。
第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面12bに形成された「第1の螺旋係合部」である。第1キー突起51と第2キー突起52との間の突起間角度は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0035】
図5に示すように、挿入部12(筒部12A)は、内径が大きい大径部17と、大径部17より内径が小さい小径部18とを有する。小径部18は大径部17の下方に位置する。大径部17と小径部18との境界には、内径の差により段部19が形成されている。
【0036】
大径部17の内周面17aには、第2係合突起56と、ストッパ突起57とが形成されている。図8および図9に示すように、第2係合突起56は、大径部17の内周面17aから内方(中心軸C1に近づく方向)に突出している。第2係合突起56は、筒部22の外周面22aに向かって突出しているともいえる。図5に示すように、第2係合突起56は、段部19から上方に向かって中心軸C1に沿って延出する。
【0037】
図8に示すように、挿入部12(筒部12A)における周方向D(中心軸C1周り方向)の一方を周方向D1という。挿入部12(筒部12A)における周方向Dの他方(周方向D1とは反対の方向)を周方向D2という。
図9に示すように、第2係合突起56は、主部58と、傾斜部59とを備える。主部58は、内周面17aからの突出高さH1が一定である。主部58の平面視形状は矩形状である。主部58の周方向D2側の側面58aは、例えば、挿入部12の径方向に沿う面である。
【0038】
傾斜部59は、主部58の周方向D1側の一端を起点として、主部58から離れる方向(周方向D1)に延出する。傾斜部59は、周方向D1に向かって徐々に内周面17aからの突出高さを減じる。傾斜部59の平面視形状は三角形状である。傾斜部59の表面は、一定の角度で傾斜する傾斜面59aである。挿入部12の径方向に対する傾斜面59aの傾斜角度は、挿入部12の径方向に対する側面58aの傾斜角度より大である。
第2係合突起56の平面視形状は、矩形状の主部58と三角形状の傾斜部59とを組み合わせた台形状である。
【0039】
図8および図9に示すように、ストッパ突起57は、大径部17の内周面17aから内方(中心軸C1に近づく方向)に突出している。ストッパ突起57は、筒部22の外周面22aに向かって突出しているともいえる。図5に示すように、ストッパ突起57は、段部19から上方に延出する。
図9に示すように、ストッパ突起57は、第2係合突起56から周方向D2に間隔をおいて形成されている。ストッパ突起57の平面視形状は矩形状である。ストッパ突起57は、内周面17aからの突出高さH2が周方向に一定である。ストッパ突起57の突出高さH2は、第2係合突起56の突出高さH1より高い。
【0040】
図6および図7に示すように、弁体20は、閉止板21と、筒部22と、複数の連結部23とを備える。図10に示すように、弁体20は、挿入部12の内部に、中心軸C1に沿う方向(軸線方向)に位置変動可能に設けられている。
【0041】
筒部22は、円筒形状とされている。筒部22の外周面には、第1キー溝53および第2キー溝54が形成されている。第1キー溝53および第2キー溝54は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。第1キー溝53および第2キー溝54は、閉止板21に近づく方向に、中心軸C1に対して傾斜して延びる。
【0042】
第1キー溝53は、第1キー突起51に嵌合する。第1キー溝53と第1キー突起51とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。第2キー溝54は、第2キー突起52に嵌合する。第2キー溝54と第2キー突起52とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
第1キー溝53および第2キー溝54は、弁体20の外周面に形成された「第1の螺旋係合部」である。
【0043】
図7に示すように、筒部22の最上部には、下方に向けて凹状となる複数の凹部27が中心軸C1周り方向に間隔をおいて形成されている。凹部27は、例えば、筒部22の径方向から見て矩形状に形成されている。隣り合う凹部27,27間の部分は、凹部27の底部27aから上方に突出する板状凸部28となる。板状凸部28は、例えば筒部22の径方向から見て矩形状に形成されている。板状凸部28は、例えば、中心軸C1周り方向に間隔をおいて複数形成されている。本実施形態では、4つの板状凸部28が中心軸C1周り方向に等間隔に形成されている。
【0044】
図6に示すように、閉止板21は、筒部22と同心の円板状に形成されている。閉止板21の外径は、流通口16(図10参照)の内径にほぼ等しいか、流通口16の内径よりやや大きい。閉止板21は、流通口16を閉止可能である。閉止板21は、中心軸C1に対して垂直である。閉止板21は、筒部22に対して下方に離間した位置にある。
【0045】
閉止板21の先端面21aには、被挿入部5の係合部8と係合する凹状の係合受け部24(被係合部)が形成されている。係合受け部24は、係合部8に対応する形状とされている。係合受け部24は、例えば、弁体20の軸線方向から見て十字形状とされている。係合受け部24に係合部8の先端部が嵌合したときには、弁体20の中心軸C1周り方向の変位が規制される。
【0046】
連結部23は、軸線方向に沿う柱状とされ、閉止板21と筒部22とを連結している。複数の連結部23は、中心軸C1周り方向に間隔をおいて形成されている。そのため、閉止板21が先端突出部12Bから離れると(図12参照)、挿入部12内の流体は、閉止板21と筒部22との隙間を経て流通口16から流出する。
【0047】
図7および図8に示すように、筒部22の最上部の外周面22aには、一対の第1係合突起25,25と、一対の外方突起26,26とが形成されている。第1係合突起25,25および外方突起26,26は、それぞれ板状凸部28の最上部の外周面28aに形成されている。
【0048】
第1係合突起25は、外周面22a(外周面28a)から外方(中心軸C1から離れる方向)に突出している。第1係合突起25は、外周面22a(外周面28a)から大径部17の内周面17aに向かって突出しているともいえる。第1係合突起25は、外周面22a(外周面28a)からの突出高さH3が一定である。第1係合突起25の平面視形状は、例えば、矩形状、または、周方向Dに沿う円弧状である。第1係合突起25の幅(図9に示す周方向Dの寸法)は、第2係合突起56とストッパ突起57との間隔より小さい。
【0049】
図9に示すように、第1係合突起25の突出高さH3は、第2係合突起56およびストッパ突起57と係合可能となるよう定められる。例えば、第1係合突起25の先端面25aと内周面17aとの距離は第2係合突起56の突出高さH1より小さいため、第1係合突起25は前記螺旋方向に移動する過程で第2係合突起56に係合し得る高さを有する。第1係合突起25の先端面25aと内周面17aとの距離はストッパ突起57の突出高さH2より小さいため、第1係合突起25は前記螺旋方向に移動する過程でストッパ突起57に係合し得る高さを有する。
図8に示すように、2つの第1係合突起25,25は、周方向Dに約180°ずれた位置に形成されている。
【0050】
図7および図8に示すように、外方突起26は、XY平面に沿う板状とされる。外方突起26の平面視形状は、突出高さ一定で周方向Dに沿う円弧状である。外方突起26は、外周面22a(外周面28a)から外方(中心軸C1から離れる方向)に突出している。外方突起26は、外周面22a(外周面28a)からの突出高さが一定である。2つの第1係合突起25,25は、周方向Dに約180°ずれた位置に形成されている。
【0051】
図10では、弁体20は、閉止板21が流通口16を閉止する閉止位置P1にある。閉止位置P1では、閉止板21は流通口16内に嵌合することによって流通口16を閉止する。
図8および図9に示すように、閉止位置P1では、弁体20の第1係合突起25は、第2係合突起56とストッパ突起57との間に位置する。
弁体20は、流通口16を開放する開放位置P2(図12参照)をとることもできる。すなわち、弁体20は、軸線方向に位置変動可能であるため、閉止位置P1と開放位置P2とを切り替え可能である。開放位置P2では、閉止板21は流通口16から離れることによって流通口16を開放する。弁体20の第1係合突起25は、開放位置P2では第2係合突起56およびストッパ突起57に干渉できない高さ位置(第2係合突起56とストッパ突起57より高い位置)にあってもよい。
【0052】
[注出部材挿入構造の使用方法]
次に、注出部材挿入構造10Aの使用方法について説明する。まず、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aに挿入する操作について説明する。
図10に示すように、弁体20の閉止板21は流通口16を閉止している。そのため、挿入部12の内容物が漏出するのが抑制される。
【0053】
図11に示すように、注出部材10の挿入部12を被挿入部5の挿入孔5aに合わせる。その際、第1キー溝43および第2キー溝44(図2参照)の位置を、それぞれ第1キー突起41および第2キー突起42の位置に合わせる。注出部材10の中心軸C1は挿入孔5aの中心軸C2に一致させる。
【0054】
挿入部12が挿入孔5aに挿入されると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1キー溝43および第2キー溝44の第1主溝45および第2主溝46に嵌合する(図3および図4参照)。
【0055】
挿入部12を被挿入部5に対して挿入方向に移動させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1主溝45および第2主溝46内を進み、末端45a,46a(図3および図4参照)に達する。
挿入部12を中心軸C1周りの螺旋方向に変位させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48に進入する。これにより、挿入部12は、回転しつつ挿入方向(図11の下方)に変位する。
【0056】
図10および図11では、閉止板21は流通口16内に嵌合し、閉止板21の下面と先端突出部12Bの下面とが同じ高さとなっている。
【0057】
図12に示すように、係合部8が係合受け部24に嵌合すると、弁体20の中心軸C1周り方向の変位が規制される。一方、挿入部12の螺旋方向の変位は妨げられないため、挿入部12は螺旋方向に変位し続ける。この際、挿入部12のキー突起51,52はキー溝53,54(図6および図7参照)内を進行する。
【0058】
弁体20が高さ位置を維持したまま、挿入部12は挿入方向(図12の下方)に変位するため、閉止板21は流通口16から離れる。そのため、容器34の内容物(流体)は、閉止板21と筒部22との隙間を経て流通口16から流出する。内容物は、被挿入部5を経て、流通孔6aを通って貯留容器(図示略)に供給される。
第1キー突起41および第2キー突起42が、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48の終端に達した段階で、挿入部12の、挿入孔5aへの挿入は完了する。
【0059】
次に、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く操作について説明する。
図12に示すように、挿入部12を、挿入時とは逆の方向に回転させつつ、引き抜き方向(図12の上方)に変位させる。この過程で、キー突起41,42は屈折溝47,48内を進行し、キー突起51,52はキー溝53,54内を進行する。図11に示すように、挿入部12の上昇によって流通口16が閉止板21に達するため、流通口16の閉止によって流路13,14は閉止される。
【0060】
弁体20が開放位置P2(図12参照)から閉止位置P1(図11参照)に至る過程における注出部材10および弁体20の動作を図13図15を参照して説明する。図13図15は、注出部材10および弁体20の動作を示す拡大平面図である。
挿入部12の螺旋方向の変位により弁体20が閉止位置P1(図11参照)に近づくと、図13に示すように、第2係合突起56と第1係合突起25とは相対的に近づき、第1係合突起25は第2係合突起56の傾斜面59aに当接する。
以下、弁体20が閉止位置P1(図11参照)に近づく際の挿入部12と弁体20の相対的な変位の方向を「閉止方向」という。閉止方向とは逆の挿入部12と弁体20の相対的な変位の方向を「開放方向」という。
【0061】
図14に示すように、挿入部12がさらに閉止方向に変位すると、第1係合突起25は傾斜面59aの傾斜に従って第2係合突起56に乗り上げる。第2係合突起56は傾斜面59aを有するため、第1係合突起25が第2係合突起56に乗り上げる際の抵抗は小さくなる。
【0062】
第1係合突起25が第2係合突起56に乗り上げる際には、この乗り上げが可能となるように、筒部22と挿入部12の少なくとも一方が他方から離間する方向に弾性変形することができる。例えば、筒部22の一部(板状凸部28)が縮径方向に弾性的に曲げ変形すれば、その部分は挿入部12から離れる方向に変位するため、第1係合突起25の第2係合突起56への乗り上げが容易となる。挿入部12の一部が拡径方向に弾性的に曲げ変形すれば、その部分は弁体20から離れる方向に変位するため、第1係合突起25の第2係合突起56への乗り上げが容易となる。
【0063】
図15に示すように、挿入部12がさらに閉止方向に変位すると、第1係合突起25は第2係合突起56を乗り越える。第1係合突起25が第2係合突起56から落下する際には、筒部22と挿入部12の少なくとも一方における変形は弾性的に復元する。例えば、筒部22の一部(板状凸部28)の縮径方向の変形は弾性的に復元する。挿入部12の拡径方向の変形も弾性的に復元する。その際、筒部22と挿入部12の少なくとも一方に振動が生じ、振動は他方に伝えられる。この振動により、操作者にはクリック感が与えられる。
第1係合突起25による第2係合突起56の乗り越え時までには、弁体20は、閉止位置P1(図11参照)に達する。
【0064】
図9に示すように、挿入部12がさらに閉止方向に変位すると、第1係合突起25はストッパ突起57に達する。そのため、さらなる挿入部12の閉止方向の変位は規制される。
【0065】
第1係合突起25は第2係合突起56の周方向D2側に位置するため、挿入部12が開放方向に変位しようとすると、第1係合突起25と第2係合突起56との干渉によって、その変位は規制される。よって、閉止位置P1にある弁体20のゆるみは起こりにくい。
【0066】
係合部8が係合受け部24から外れると、弁体20の回転規制は解除されるため、弁体20は挿入部12と一体的に移動する。
キー突起41,42が末端45a,46a(図3および図4参照)に達した後、挿入部12を引き抜き方向(図11の上方)に変位させる。これにより、図10に示すように、挿入部12は、挿入孔5aから引き抜かれる。
【0067】
[注出部材挿入構造が奏する効果]
注出部材挿入構造10Aでは、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際、第1係合突起25が第2係合突起56を乗り越えるときに振動が生じ、操作者にクリック感が与えられる。そのため、操作者は、弁体20が閉止位置P1に至ったことを認識することができる。従って、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く操作において、挿入部12が引き抜き可能となったタイミングが操作者にわかりやすい。よって、弁体20が閉止位置P1に至らないうちに注出部材10を引き抜くという事態が生じにくい。また、挿入部12が引き抜き可能となったタイミングが操作者にわかりやすいため、操作者の使用感を良好にすることができる。
【0068】
図15に示すように、第1係合突起25が第2係合突起56を乗り越えた状態では、挿入部12および弁体20の開放方向の変位は規制される。そのため、閉止位置P1にある弁体20のゆるみは起こりにくくなる。よって、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際に、挿入部12からの内容物の漏出を抑制することができる。また、弁体20のゆるみが起こりにくいため、注出部材装置100を輸送する際に注出部材挿入構造10Aに振動が加えられた場合でも、内容物の漏出を抑制することができる。
【0069】
図9に示すように、挿入部12には、第1係合突起25が係合可能なストッパ突起57が形成されているため、弁体20が閉止位置P1に達した後に、挿入部12および弁体20の閉止方向の過剰な変位は規制される。そのため、弁体20による流通口16の閉止状態を正常に維持し、内容物の漏出を抑制することができる。また、挿入部12および弁体20の閉止方向の過剰な変位が規制されるため、注出部材10に弁体20を組み込むときの組み立て作業性を高めることができる。
【0070】
第2係合突起56は、中心軸C1に沿って形成されているため、第1係合突起25を確実に係合させることができる。よって、前述のゆるみ抑制効果およびクリック感付与効果の点で有利となる。
【0071】
図7に示すように、第1係合突起25、第2係合突起56およびストッパ突起57はそれぞれ複数(2つ)形成されている。そのため、挿入部12に対して弁体20が傾いた場合でも、少なくとも1つの第1係合突起25と、少なくとも1つの第2係合突起56とを係合させることができる。よって、前述のゆるみ抑制効果およびクリック感付与効果の点で有利となる。
【0072】
図10に示すように、閉止位置P1にある弁体20は、挿入部12の挿入方向の端部において流通口16を閉止する。そのため、注出部材10を被挿入部5に接続する作業において、挿入部12からの内容物の漏出を抑制することができる。
弁体20は、閉止板21によって流通口16を閉止可能とされているため、図12に示すように、閉止板21の高さを先端突出部12Bからずらせることによって、容易に流通口16を開放できる。
【0073】
流通口16は中心軸C1を中心とする円形状であり、閉止板21は流通口16と同心の円形状である。そのため、挿入部12の回転による流通口16と閉止板21との位置ずれは生じにくい。よって、閉止板21は流通口16を確実に閉止できる。
【0074】
注出部材挿入構造10Aでは、挿入孔5aの内周面にキー突起41,42が形成され、挿入部12の外周面にキー溝43,44が形成されているため、挿入部12の引き抜きの際に、弁体20の閉止板21が流通口16を閉止する。よって、注出部材10を被挿入部5から引き抜く作業において内容物の漏出を抑制することができる。
【0075】
キー溝43,44は、主溝45,46に加えて屈折溝47,48を有するため、キー突起がキー溝内を進行する過程で進行方向が変化することから、操作者が注出部材の挿入操作の完了を確認しやすい。よって、注出部材挿入構造10Aは、操作性に優れている。
【0076】
[注出部材挿入構造](第2実施形態)
図16は、第2実施形態の注出部材挿入構造110Aの断面図である。図17は、注出部材挿入構造110Aの一部(図16において仮想線で囲まれた部分A)を拡大した断面図である。
【0077】
図16および図17に示すように、注出部材挿入構造110Aは、第1実施形態における第1係合突起25、第2係合突起56およびストッパ突起57に代えて、次の構成を備える。
図17に示すように、挿入部12の小径部18の内周面18aには、第2係合突起156が形成されている。第2係合突起156は、中心軸C1周り方向に延在する環状突起である。第2係合突起156の断面(第2係合突起156の長さ方向に直交する断面)の形状は特に限定されず、例えば湾曲凸状(円弧状など)、多角形状(矩形状、三角形状など)としてよい。
【0078】
弁体20の外周面22aには、第1係合突起125が形成されている。第1係合突起125は、中心軸C1周り方向に延在する環状突起である。第1係合突起125の断面(第1係合突起125の長さ方向に直交する断面)の形状は特に限定されず、例えば湾曲凸状(円弧状など)、多角形状(矩形状、三角形状など)としてよい。
第1係合突起125の突出高さは、第2係合突起156と係合可能となるよう定められる。第1係合突起125および第2係合突起156は、挿入部12からの弁体20の脱落を規制する機能を有する。
注出部材挿入構造110Aは、その他の構成については、第1実施形態の注出部材挿入構造10Aと同じであってよい。
【0079】
注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際に、挿入部12の閉止方向の変位により弁体20が閉止位置P1(図11参照)に近づくと、第2係合突起156と第1係合突起125とは相対的に近づく。挿入部12がさらに閉止方向に変位すると、第1係合突起125は第2係合突起156に乗り上げ、第2係合突起156を乗り越える。第1係合突起125が第2係合突起156から落下する際には、第1実施形態と同様に、筒部22と挿入部12の少なくとも一方に振動が生じる。この振動により、操作者にはクリック感が与えられる。
【0080】
第1係合突起125による第2係合突起156の乗り越え時までには、弁体20は、閉止位置P1(図11参照)に達する。挿入部12が開放方向に変位しようとすると、第1係合突起125と第2係合突起156との干渉によって、その変位は規制される。
【0081】
[注出部材挿入構造が奏する効果]
注出部材挿入構造110Aでは、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際、第1係合突起125が第2係合突起156を乗り越えるときに振動が生じ、操作者にクリック感が与えられる。そのため、操作者は、弁体20が閉止位置P1に至ったことを認識することができる。従って、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く操作において、挿入部12が引き抜き可能となったタイミングが操作者にわかりやすい。よって、弁体20が閉止位置P1に至らないうちに注出部材10を引き抜くという事態が生じにくい。また、操作者の使用感を良好にすることができる。
【0082】
第1係合突起125が第2係合突起156を乗り越えた状態では、挿入部12および弁体20の開放方向の変位は規制される。そのため、閉止位置P1にある弁体20のゆるみは起こりにくくなる。よって、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際に、挿入部12からの内容物の漏出を抑制することができる。
【0083】
第1係合突起125および第2係合突起156は、中心軸C1周りの方向に沿って形成されているため、第1係合突起125と第2係合突起156とを確実に係合させることができる。よって、前述のゆるみ抑制効果およびクリック感付与効果の点で有利となる。
【0084】
[注出部材挿入構造](第3実施形態)
図18は、第3実施形態の注出部材挿入構造210Aの弁体20の一部の斜視図である。
図18に示すように、注出部材挿入構造210Aは、第1実施形態における第1係合突起25、第2係合突起56およびストッパ突起57に代えて、次の構成を備える。
【0085】
弁体20のキー溝53,54(図6および図7参照)の内周面には、それぞれ第1係合突起225が形成されている。第1係合突起225は、キー溝53,54の長さ方向に交差する方向(例えば、キー溝53,54の長さ方向に直交する方向)に延在する。第1係合突起225は、キー溝53,54の最深部を含む位置に形成されるのが好ましい。第1係合突起225の断面(第1係合突起225の長さ方向に直交する断面)の形状は特に限定されず、例えば多角形状(矩形状、三角形状など)、湾曲凸状(円弧状など)としてよい。
【0086】
第1係合突起225の突出高さは、当該キー溝(キー溝53またはキー溝54)に嵌合するキー突起(キー突起51またはキー突起52(図10参照)と係合可能となるよう定められる。
第1キー突起51および第2キー突起52は、「第2係合突起」に相当する。
注出部材挿入構造210Aは、その他の構成については、第1実施形態の注出部材挿入構造10Aと同じであってよい。
【0087】
注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際に、挿入部12の閉止方向の変位により弁体20が閉止位置P1(図11参照)に近づくと、キー突起51,52と第1係合突起225とは相対的に近づく。挿入部12がさらに閉止方向に変位すると、第1係合突起225はキー突起51,52に乗り上げ、キー突起51,52を乗り越える。第1係合突起225がキー突起51,52から落下する際には、第1実施形態と同様に、筒部22と挿入部12の少なくとも一方に振動が生じる。この振動により、操作者にはクリック感が与えられる。
【0088】
第1係合突起225によるキー突起51,52の乗り越え時までには、弁体20は、閉止位置P1(図11参照)に達する。挿入部12が開放方向に変位しようとすると、第1係合突起225とキー突起51,52との干渉によって、その変位は規制される。
【0089】
[注出部材挿入構造が奏する効果]
注出部材挿入構造210Aでは、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際、第1係合突起225がキー突起51,52を乗り越えるときに振動が生じ、操作者にクリック感が与えられる。そのため、操作者は、弁体20が閉止位置P1に至ったことを認識することができる。従って、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く操作において、挿入部12が引き抜き可能となったタイミングが操作者にわかりやすい。よって、弁体20が閉止位置P1に至らないうちに注出部材10を引き抜くという事態が生じにくい。また、操作者の使用感を良好にすることができる。
【0090】
第1係合突起225がキー突起51,52を乗り越えた状態では、挿入部12および弁体20の開放方向の変位は規制される。そのため、閉止位置P1にある弁体20のゆるみは起こりにくくなる。よって、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く際に、挿入部12からの内容物の漏出を抑制することができる。
【0091】
第1係合突起225は、キー溝53,54内に形成されているため、第1係合突起225とキー突起51,52とを確実に係合させることができる。よって、前述のゆるみ抑制効果およびクリック感付与効果の点で有利となる。
【0092】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
図1に示す注出部材挿入構造10Aでは、図7および図8に示すように、挿入部12の内周面17aに第2係合突起56およびストッパ突起57が形成され、弁体20の外周面22aに第1係合突起25が形成されているが、第1係合突起、第2係合突起およびストッパ突起の構造はこれに限定されない。例えば、挿入部の内周面に第1係合突起が形成され、弁体の外周面に第2係合突起およびストッパ突起が形成されていてもよい。
図7に示すように、第1係合突起25、第2係合突起56およびストッパ突起57はそれぞれ2つ形成されているが、各突起の数はこれに限定されない。第1係合突起25、第2係合突起56およびストッパ突起57の数は、それぞれ1であってもよいし、2以上の任意の数であってもよい。
【0093】
第1~第3実施形態の注出部材挿入構造10A,110A,210Aは、第1係合突起が第2係合突起を乗り越えたときに、弁体が閉止位置にあるように設計されている。そのため、操作者は、クリック感が与えられたときに、弁体20が閉止位置P1に至ったことを認識することができる。
実施形態の注出部材挿入構造では、第1係合突起が第2係合突起を乗り越えるときの弁体の位置は特に限定されない。例えば、図12に示すように、第1係合突起が第2係合突起を乗り越えたときに弁体が最上昇位置に達するような設計も可能である。
実施形態の注出部材挿入構造では、第1係合突起および第2係合突起がそれぞれ複数形成され、閉止位置から開放位置に至るまでの複数の位置においてクリック感が得られるようにしてもよい。例えば、弁体の移動過程の始点、中間点および終点において、それぞれクリック感が得られる設計も可能である。
【0094】
図1に示すように、係合部8は十字形状とされているが、係合部の形状は十字形状に限定されない。係合部の形状は、係合受け部に係合したときに、弁体の中心軸周り方向の変位を規制することができればよく、例えば、一字形状、多角形状などであってもよい。
【0095】
図1に示す注出部材挿入構造10Aでは、被挿入部5にキー突起41,42が形成され、注出部材10にキー溝43,44が形成されているが、注出部材10および被挿入部5の構造はこれに限定されない。注出部材挿入構造は、挿入部の外周面と挿入孔の内周面のいずれか一方にキー突起が形成され、他方に、キー突起が嵌合するキー溝が形成されていればよい。そのため、図1に示す注出部材挿入構造10Aとは逆に、被挿入部にキー溝が形成され、注出部材にキー突起が形成されていてもよい。
【0096】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、被挿入部5に2つのキー突起41,42が形成され、挿入部12に2つのキー突起51,52が形成されている。被挿入部および挿入部に形成されるキー突起の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。注出部材挿入構造10Aでは、挿入部12に2つのキー溝43,44が形成され、弁体20に2つのキー溝53,54が形成されている。挿入部および弁体に形成されるキー溝の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。
【0097】
注出部材を構成する基部と挿入部とは、一体であってもよいし、別体であってもよい。基部と挿入部とが別体である場合には、例えば、次の構造を採用できる。基部は、挿入部の一部が挿入される貫通孔(図示略)を有する。挿入部の一部は、前記貫通孔に挿入された状態で、凹凸嵌合、ネジ嵌合などにより基部と結合される。基部と挿入部とは着脱自在であってよい。
【0098】
基部と挿入部とが別体であると、次の使用方法が可能である。基部は容器に取り付けておく。挿入部を基部から外した状態で、貫通孔を通して内容物を容器に充填する。次いで、挿入部を基部に取り付ける。この方法によれば、内容物を、挿入部ではなく基部の貫通孔を通して容器に充填することができるため、容器への内容物の流入がスムーズとなり充填操作が容易となる。
【0099】
図1に示す注出部材10と、注出部材10が装着される容器34(図10参照)とは、包装容器を構成する。
【0100】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、弁体20は、容器34側に移動したときに注出部材10の流路13,14が開き、被挿入部5側に移動したときに流路13,14が閉じる。注出部材挿入構造は、これに限らず、弁体が容器側に移動したときに注出部材の流路が閉じ、弁体が被挿入部側に移動したときに注出部材の流路が開く構造を採用してもよい。
【0101】
注出部材挿入構造は、次の構成であってもよい。弁体に被係合部が形成されている。被挿入部に、注出部材を挿入孔へ挿入した際に被挿入部の内部で被係合部と相対回転不能に係合する係合部が形成されている。
「第1係合突起が第2係合突起を乗り越える」は、「第2係合突起が第1係合突起を乗り越える」と言い換えてもよい。「第1係合突起が第2係合突起を乗り越える」は、「第1係合突起と第2係合突起の一方が他方を乗り越える」と言い換えてもよい。
【0102】
本発明の注出部材挿入構造は、容器の内容物の詰替えや補充に好適に適用できる。特に、詰替えや補充時の液漏れが問題となる内容物を用いる場合、例えば、印刷用インキ、トイレタリー用品、調味料、医薬品、燃料などを対象とする場合に好適である。
【符号の説明】
【0103】
5…被挿入部、5a…挿入孔、10…注出部材、10A,110A,210A…注出部材挿入構造、12…挿入部、12A…筒部、12B…先端突出部、13,14…流路、16…流通口、20…弁体、21…閉止板、25,125,225…第1係合突起、34…容器、35a…開口部、41…第1キー突起(第2の螺旋係合部)、42…第2キー突起(第2の螺旋係合部)、47…第1屈折溝(第2の螺旋係合部)、48…第2屈折溝(第2の螺旋係合部)、51…第1キー突起(第1の螺旋係合部)、52…第2キー突起(第1の螺旋係合部)、53…第1キー溝(第1の螺旋係合部)、54…第2キー溝(第1の螺旋係合部)、56,156…第2係合突起、57…ストッパ突起、C1…注出部材の中心軸(軸線)、P1…閉止位置、P2…開放位置。
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