(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-25
(45)【発行日】2023-06-02
(54)【発明の名称】感染している細胞培養物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20230526BHJP
C12N 1/10 20060101ALI20230526BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230526BHJP
C12Q 1/66 20060101ALI20230526BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230526BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N1/10
C12Q1/04
C12Q1/66
G01N33/15 Z
(21)【出願番号】P 2019548907
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2018055717
(87)【国際公開番号】W WO2018162623
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】シュパンゲンベルク,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グレコ,ベアトリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】マルケス レアル サンチェス アルベス, パウラ マリーア
(72)【発明者】
【氏名】テシェイラ カロンド,マニエル ジョゼ
(72)【発明者】
【氏名】マウリシオ ブリトー アタイーデ,アナ クアタリナ
(72)【発明者】
【氏名】パウロ レベロ,ソフィア ラケール
(72)【発明者】
【氏名】デ アンドラーデ テラス アレズ,フランシスカ マリーア
(72)【発明者】
【氏名】メストレ スィマォン,ダニエル フィリペ
(72)【発明者】
【氏名】プルデンシオ ピニャテッリ,ルイ ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】ピント フレイレ フォンティニャ,ディアナ マリサ
(72)【発明者】
【氏名】モンテイロ マイア マチャド,マルタ
【審査官】原 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/005995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12Q
A61K
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓の細胞を含有する細胞凝集物を含む3D細胞培養物であって、
ここで、
肝臓の細胞が、HepG2またはHC-04細胞であり、該細胞凝集物が、50μmから200μmまでの範囲における平均直径を有し、病原体により感染しているスフェロイドであ
り、
病原体が、ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)または三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)である、前記3D培養物。
【請求項2】
3D細胞培養物が、単一培養物または共生培養物である、請求項
1に記載の前記3D細胞培養物。
【請求項3】
病原体が、レポーター系統である、請求項1
または2に記載の3D細胞培養物。
【請求項4】
細胞培養物が、培地を含有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の3D細胞培養物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の3D細胞培養物であって、ここで、該3D細胞培養物が、可溶性細胞外マトリックス、および/または生体適合性の生体材料をさらに含有する、前記3D細胞培養物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の3D細胞培養物を含有する、マルチウェルプレート。
【請求項7】
肝臓の細胞を含有する3D細胞培養物の生産のための方法であって、以下のステップ:
● 撹拌に基づく培養システムにおける、2D培養中に広がった肝臓の細胞を含有する、単一細胞懸濁液の接種
、ここで、肝臓の細胞が、HepG2またはHC-04細胞であり;
● 該結果として生じる細胞培養物の、40から110rpmの撹拌速度における撹拌;
● 病原体とともに細胞凝集物を含有する、該結果として生じる3D細胞培養物のインキュベーション、
ここで、細胞凝集物が、50μmから200μmまでの範囲における平均直径を有し、病原体により感染しているスフェロイドであり、病原体が、ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)または三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)である、を含む前記方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の3D細胞培養物の生産のための方法であって、ここで、インキュベーションが静置条件下で実施され、ここで、細胞凝集物と一緒に病原体を含有する3
D細胞培養物が、最大1800xgまでにおける遠心分離に曝され、またはインキュベーションが、動的条件下において実施され、ここで、該細胞培養体積が、縮小されおよび細胞培養が、撹拌に曝される、前記方法。
【請求項9】
請求項
7または
8に記載の方法によって、入手可能な肝臓の細胞を含有する、3D細胞培養物。
【請求項10】
以下のステップ:
● 肝臓の細胞を含有する3D細胞培養物とともに化合物をインキュベーションすること、ここで、該3D細胞培養物が請求項の1~
5のいずれか1項に記載の細胞培養物または請求項
7または
8に記載の方法によって得られた細胞培養物である;
● 病原体の侵入、化合物のクリアランス、および/または宿主細胞の発達をモニタリングすること、を含むスクリーニング方法。
【請求項11】
3D細胞培養物に接触される化合物の細胞障害性の効果、および/または代謝の性質、および/または細胞培養物に接触される化合物の病原体に対する効果を決定するための、請求項1~
5のいずれか1項に記載の3D細胞培養物の使用。
【請求項12】
ワクチン開発のための、請求項1~
5のいずれか1項に記載の3D細胞培養物の使用。
【請求項13】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の3D細胞培養物を含む、薬および/またはワクチン
のスクリーニングのためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、肝臓の細胞を含有し、および病原体により感染している3D細胞培養物、かかる細胞培養物を調製するための方法およびその使用に関する。
【0002】
多様な病原体が、肝臓の中を通過するか、または肝臓の中で成熟する。
プラスモジウム属パラサイト、マラリアの原因となる媒介物(agent)、による感染の場合において、感染している蚊がヒトを含む哺乳類から血の食事をとるとき、蚊の唾液腺に存在するスポロゾイドが、上部真皮の毛細血管の中に接種され、それらはそこから門脈循環に達することになる。その後、それらは、それらが肝細胞に侵入する肝臓へ移行する。
【0003】
ここで、パラサイトは、赤血球外のパラサイトの発達と名付けられるプロセスを経て、それにおいて肝臓のパラサイトは無性的に増殖し、およびメロゾイトに分化する。この複製フェーズの完了において、10,000~40,000のメトロゾイドは、結局血流の中に遊離され、その地点において、それらは赤血球の内側へ侵入しおよび増殖し、無性生殖の新しいサイクルおよび成長を開始する。[Prudencio, M., Rodriguez, A., & Mota, M. M. (2006). The silent path to thousands of merozoites: the plasmodium liver stage. Nature Reviews. Microbiology, 4(November), 849-56]
【0004】
単一のパラサイトが赤血球の内側に存在するとき、それは初期トロホゾイトと名付けられる。トロホゾイトは成長し、および次いで、無性的に増殖すること、シゾゴニーとして知られる現象,を始める。シゾントが、十分に成熟するとき、赤血球は破裂し、循環するマラリアパラサイトの数の引き続く増大と共に、メトロゾイドを遊離する。この感染のフェーズの間、いくつかのパラサイトは、オスおよびメス両方のガメトサイトに分化する。
【0005】
それらは、次いで蚊によって血の食事の間に吸い上げられ、およびオスとメスの配偶子に変換する。オスとメス配偶子の接合は、二倍体接合子を形成し、それは順にオーキネートとなる。それらのオーキネートは、昆虫の中腸へ移動し、腸壁を通過し、および血リンパにおいてオーシストを形成する。オーシストの減数分裂が起き、成熟およびスポロゾイドを遊離する破裂を導き、それは人間に戻る伝染のサイクルを続ける準備のできたハマダラカ属の蚊のメスの唾液腺へ、次いで移動する[Douglas, N. M., Simpson, J. a., Phyo, A. P., et al. (2013) Gametocyte dynamics and the role of drugs in reducing the transmission potential of plasmodium vivax. Journal of Infectious Diseases, 208, 801-812; Swann, J., Corey, V., Scherer, C. a., et al. (2016) High-Throughput Luciferase-Based Assay for the Discovery of Therapeutics That Prevent Malaria. ACS Infectious Diseases, acsinfecdis.5b00143]。
【0006】
すべての哺乳類感染性のプラスモジウム属種は、肝臓を経て通過しおよび成熟するが、しかし三日熱マラリア原虫および卵形マラリア原虫(P.ovale)は、-ヒプノゾイドとして知られる-肝臓に潜伏した形を生み出し得、それは病気の再発を導き得る。プリマキンは、後者の徴候に対する現在ただ一つ販売される単剤治療薬であり、代謝の活性化によって、その効果を発揮すると思われる。肝臓ステージの予防法のために、アトバコンは、別のパートナー薬剤と組み合わせて使用される。
【0007】
プラスモジウム属のライフサイクルの肝臓ステージの研究は、肝臓の細胞株(例えば、HepG2、Huh7、HC04)およびヒト肝細胞の初代培養物の使用から大いに利益を得てきた[Prudencio, M., Mota, M. M., & Mendes, A. M. (2011). A toolbox to study liver stage malaria. Trends in Parasitology]。これらの細胞は、2D培養システムにおいて大部分は探究されきており、およびパラサイトの肝臓の発達の具体的な特徴を追求し、および扱うために、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼ(Luc)のいずれかのレポーター遺伝子を恒常的に発現するプラスモジウム属系統と組み合わせられてきた。
【0008】
例としては、最終の肝細胞の効果的な侵入にむかう、スポロゾイド細胞の横断プロセスの要求[Mota, M. M., Hafalla, J. C. R., & Rodrigues, A. (2002) Migration through host cells activates Plasmodium sporozoites for infection. Nat Med, (9(11), 548. Risco-Castillo, V., Topcu, S., Marinach, C. et al. (2015) Malaria sporozoites traverse host cells within transient vacuoles. Cell host and Microbe, 18, 593-603]、一時的な胞の内部における隅から隅までの肝臓感染の発達[Risco-Castillo, V., Topcu, S., Marinach, C. et al. (2015) Malaria sporozoites traverse host cells within transient vacuoles. Cell Host and Microbe, 18, 593-603]および後期肝臓ステージ感染の間に、寄生体胞を壊すことに関与する重要なタンパク質の役割および特異的な局在化[Burda, P. C., Roelli, M. a., Schaffner, M., et al. (2015) A Plasmodium phospholipase is involved in disruption of liver stage parasitophorous vacuoles membrane. PLoS Pathogens, 11, e1004760]は、かかるモデルを利用し、扱われた。
【0009】
熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)および三日熱マラリア原虫の発達を許容するin vitroの肝臓のモデル、2つの最も臨床的に関連するヒト感染性のプラスモジウム属の種もまた開発された[Chattopadhyay, R., Velmurugan, S., Chakiath, C., et al. (2010) establishment of an In vitro assay for assessing the effects of Drugs on Liver Stages of Plasmodium vivax Malaria. PLoS ONE, 5(12), 1-8; Dumoulin, P. C., Trop, S. A., Ma, J., et al. (2015) Flow cytometry based detection and isolation of Plasmodium falciparum liver stages in vitro. PLoS ONE, 10, 1-2; March, S., Ng, S., Velmurugan, S., et al. (2013) A microscale human liver platform that supports the hepatic stages of Plasmodium falciparum and vivax. Cell host and Microbe, 14(1), 104-115]。
【0010】
プラスモジウム属感染および発達ための肝臓の微小環境の物理化学的な特徴の関連性は、in vitroにおいて初代肝細胞と間質細胞を共培養することによって、示された。より具体的には、低酸素が、異なるプラスモジウム属種の発達を高めることが実証された[Ng, S., March, S., Galstian, A., Hanson, K., et al. (2014) Hypoxia promotes liver stage malaria infection in primary human hepatocytes in vitro, 215-224]。
【0011】
さらにその上、それらのin vitroの肝臓のモデルは、抗プラスモジウム属薬の同定と開発において補助し得る、ハイスループットスクリーニングプラットフォームの開発に貢献している。[Derbyshire, E. R., Prudencio, M., Mota, M. M., et al. (2012) Liver-stage malaria parasites vulnerable to diverse chemical scaffolds. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 109(22), 8511-6; Swann, J., Corey, V., Scherer, C. A., et al. (2016) High-throughput Luciferase-Based Assay for the Discovery of Therapeutics That Prevent Malaria. ACS Infectious Diseases, 2(4): 281-293.]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以前に確立されたプラスモジウム属感染のin vitroのモデルは、パラサイト生物学の具体的な特徴の増大する理解への、それらの重要性を証明してきた。それにもかかわらず、実験的に使用される三日熱マラリア原虫スポロゾイドを得ることの本来ある難しさだけでなく、長い時間の期間、高い生存率および機能で培養において維持され得る肝臓細胞のモデルの欠如にも起因して、肝臓休止状態の形態のパラサイト(ヒプノゾイド)を扱っているモデルおよびアッセイはほとんどない。
【0013】
文献において記載される入手可能なレポートは、サルマラリア(P.cynomologi)に感染している霊長類の初代肝細胞の2D培養物に基づいており[Dembele, L., Gego, A., Zeeman, A. M., et al. (2011) Towards an in vitro model of Plasmodium hypnozoites suitable for drug discovery. PLoS ONE, 6(3), 1-7; Voorberg-van der Wel, A., Zeeman, A. M., van Amsterdam, S. M., et al. (2013) Transgenic Fluorescent Plasmodium cynomolgi Liver Stages Live Imaging and Purification of malaria hypnozoites-forms. PLoS ONE, 8(1)]、そこでヒプノゾイトは、それらのアトバコンへの耐性によって、正常に発達しているシゾントから識別される。
【0014】
しかしながら、初代細胞培養の限られた時間(コラーゲンサンドイッチ培養のとき、最大2週間まで)のため、ヒプノゾイドの再生力は、評価されなかった。改善されるコラーゲンサンドイッチシステムを想定する1つの最近のレポートは、サルマラリア原虫感染後、初代肝細胞と肝細胞腫細胞株の40日間の共生培養を維持することができた[Dembele, L., Franetich, J., Lorthiois, A., et al. (2014) Persistance and activation of malaria hypnozoites in long‐term primary hepatocyte cultures. Nature Medicine, 20(3), 307-312]。
【0015】
このモデルによって、著者らは、ヒプノゾイドの肝細胞における1か月より長い残留性を実証し、および感染後3週間を超える、正常な発達へのそれらの活性化を示した。しかしながら、このモデルの技術的な複雑さは、そのスループットを減少し、薬物スクリーニング設定における適応性を損なう。
【0016】
ヒト肝臓の3D;細胞モデルにおける最近の発展は、肝臓の細胞株または、新しく単離されるヒト肝細胞の細胞スフェロイドを生み出すことによって、撹拌タンクのバイオリアクタ(STB)における数多くの重要な肝細胞の特徴を再現する(recapitulate)能力を有することを実証した [Rebelo, S. P., Costa, R., Estrada, M., et al. (2014) HepaRG microencapsulated sheroids in DMSO‐free culture: Novel culturing approaches for enhanced xenobiotic and biosynthetic metabolism. Arch Toxicol; Tostoes, R. M., Leite, S. B., Serra, M., et al. (2012) human liver cell spheroids in extended perfusion bioreactor culture for repeated‐dose drug testing. Hepatology, 55(4), 1227-1236; Rebelo, S., Costa, R., Sousa, M. F. Q., et al. (2015) establishing Liver Bioriactors for In Vitro Research. Protocols in In Vitro Hepatocyte Research, 1250, 1-390]。
【0017】
重要なことに、酸素およびpHなどの物理化学的なパラメーター、同様にフィーディングのレジメンは、STBにおいて調整され得、長期間の培養における肝臓の表現型の再現性および安定性、同様に、肝臓の具体的な特徴(例えば、門脈周囲のまたは静脈周囲の生理的な酸素濃度)をモデル化することを可能にする。
【0018】
なお、STBのスケーラビリティは、ハイスループットスクリーニングプラットフォームをフィードすることに使用され得る多量の肝臓のスフェロイドの生産を可能にする[Rebelo, S. P., Costa, R., Estrada, M., et al. (2014) HepaRG microencapsulated s in DMSO‐free culture: Novel culturing approaches for enhanced xenobiotic and biosynthetic metabolism. Arch Toxicol.; Tostoes, R. M., Leite, S. B., Serra, M., et al. (2012) human liver cell sphernoids in extended perfusion bioreactor culture for repeated‐dose drug testing. Hepatology, 55(4), 1227-1236; Rebelo, S., Costa, R., Sousa, M. F. Q., et al. (2015) Establishing Liver Bioreactors for In Vitro Research. Protocols in In Vitro Hepatocyte Research, 1250, 1-390]。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の記載
本発明は、肝臓の細胞を含有する細胞凝集物を含み、ここで細胞凝集物が病原体によって感染されている3D;細胞培養物を提供する。
本発明の3D培養物は、良好な長期安定性を有し、およびしたがって薬物スクリーニングおよびワクチン開発のために有用である。
本発明の特定の態様において、病原体は、パラサイトである。
【0020】
別の具体的な態様において、3D細胞培養物は、単一培養物または共生培養物である。
本発明の別の具体的な態様において、肝臓の細胞は、以下:初代ヒト、マウス、および霊長類幹細胞、HC-04、HepG2、HepaRGおよび/またはHuh7などの細胞株、および多能性、または多分化能の幹細胞から由来する肝細胞様細胞を含む供給源の群から選択される。
そのうえ、本発明のさらなる具体的な態様において、肝臓の細胞は、以下:初代ヒトおよび霊長類肝細胞、HC-04、HepG2、HepaRGおよび/またはHuh7を含む細胞株の群から選択される。
【0021】
具体的な態様において、3D細胞培養物は、少なくとも1つの肝臓の細胞タイプからの細胞(特に、初代ヒトおよび霊長類幹細胞、HC-04、HepG2、HepaRGおよび/またはHuh7など)および内皮、免疫または間質細胞(ヒト間葉系肝細胞、マクロファージ、線維芽細胞または星状細胞)などの非実質細胞を含有する共生培養物である。
非常に具体的な態様において、3D細胞培養物は、少なくとも1つの肝臓の細胞タイプ(特に初代ヒトおよび霊長類幹細胞、HC-04、HepG2、HepaRGおよび/またはHuh7など)およびヒト間葉系幹細胞を含有する共生培養物である。
【0022】
別の特定の態様において、本発明による3D細胞培養物は、(顕微鏡によって)50μmから200μmの範囲内の平均直径を有する細胞凝集物を含有する。細胞凝集物は、スフェロイドであり得る。
さらなる具体的な態様は、3D細胞培養物を指し、ここで、パラサイトは、プラスモジウム属からであり、好ましくは、ネズミマラリア原虫(P.berghei)、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、サルマラリア原虫、マラリア原虫(P.malariae)およびサルマラリア原虫を含むプラスモジウム属から選択される。細胞凝集物の感染のために、スポロゾイドは、細胞凝集物と接して置かれる。
【0023】
さらなる具体的な態様において、病原体は、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼ(Luc)を発現するプラスモジウム属種などのレポーター系統である。レポーター系統は、非常に容易な検出および感染率のモニタリングを許容する。
本発明の別の態様において、3D細胞培養は、細胞培地を含有し、ここで、培地は哺乳類細胞培養培地(特に、F12-サプリメントによって、捕捉されるまたはされないDMEMなど)である。好ましい態様において、細胞培地は、最大20%までのFBS濃度をさらに含有する。
【0024】
哺乳類培地の選択は、細胞株に依り、例えば、HC-04細胞培養には、F12によって捕捉されるDMEMが好適であり、HepG2細胞培養には、DMEM(F12なしの)が好適である。HepaRGおよび初代肝細胞には、細胞培地は、例えば、[Rebelo, S. P. et al. (2014) HepaRG microencapsulated spheroids in DMSO‐free culture: Novel culturing approaches for enhanced xenobiotic and biosynthetic metabolism. Arch Toxicol][Tostoes, R. M., et al (2012). human liver cell spheroids in extended perfusion bioreactor culture for repeated‐dose drug testing. Hepatology, 55(4), 1227-1236]、または[Rebelo, S., Costa, R., Sousa, M. F. Q., Brito, C., & Alves, P. M. (2015). Establishing Liver Bioreactors for In Vitro Research. Protocols in In Vitro Hepatocyte Research, 1250, 1-390]が、使用され得る。
【0025】
本発明の別の態様は、3D細胞培養物に関し、ここで、3D細胞培養物は、可溶性細胞外マトリックス(好ましくはラミニン、フィブロネクチンおよび/またはコラーゲン)、および/または生体適合性の生体材料(例えば、アルギン酸、キトサン、ポリ乳酸)をさらに含有する。
本発明の別の態様は、3D細胞培養物に関し、ここで、3D細胞培養物は、可溶性細胞外マトリックス、好ましくはラミニン、フィブロネクチンおよび/またはコラーゲンをさらに含有する。
【0026】
本発明の具体的な態様において、3D細胞培養物は、少なくとも0.01%の感染率によって特徴づけられる(例えば、蛍光および発光により測定される;レポーター遺伝子を発現しないパラサイトによる感染は、適切な抗体による染色に続く免疫蛍光顕微鏡、およびプラスモジウム属に特異的なプライマーおよび適切なハウスキーピング宿主遺伝子についてのプライマーを採用する定量的リアルタイムPCRを包含する多様な方法により評価され得る[Prudencio, M., Mota, M. M., & Mendes, A. M. (2011). A toolbox to study liver stage malaria. Trends in Parasitology])。
【0027】
よって、非常に具体的な態様は、3D細胞培養物に言及し、ここで、
● 細胞培養物は、好ましくは、以下:ネズミマラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、サルマラリア原虫、マラリア原虫およびサルマラリア原虫を含む群から選択される、プラスモジウム属のパラサイトである病原体によって感染しており;
● 肝臓の細胞は、以下:初代ヒト、マウスおよび霊長類肝細胞、HC-04、HepG2、HepaRおよび/またはHuh7などの細胞株、および多能性/多分化能の幹細胞から由来する肝細胞様細胞を含む供給源の群から選択される。
● 細胞培養物は、哺乳類細胞培地(および好ましくは、培地は最大20%までのFBS濃度をさらに含有する)を含有する。
【0028】
別の非常に具体的な態様は、3D細胞培養物を指し、ここで、
● 細胞培養物は、好ましくは、以下:ネズミマラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、サルマラリア原虫、マラリア原虫およびサルマラリア原虫を含む群から選択される、プラスモジウム属のパラサイトである病原体によって感染しており;
● 肝臓の細胞は、以下:初代ヒトおよび霊長類肝細胞、HC-04、HepG2、HepaRGおよび/またはHuh7を含む細胞株の群から選択され、
● 細胞培養物は、哺乳類細胞培地(および好ましくは、培地は最大20%までのFBS濃度をさらに含有する)を含有する。
【0029】
好ましくは、かかる3D細胞培養物は、50μmから200μmの範囲内の平均直径を有する細胞凝集物を含有する(相当する細胞凝集物は、長期培養のために有用である。)。かかる細胞培養物は、可溶性細胞外マトリックス(好ましくは、ラミニン、フィブロネクチンおよび/またはコラーゲン)または生体適合性の生体材料(例えば、アルギン酸、キトサン、ポリ乳酸)を、さらに含有してもよい。
感染のために、スポロゾイドは、3D細胞凝集物と接して置かれる。
【0030】
上に記載される本発明による感染している3D細胞培養物は、例えば、薬物スクリーニングおよびワクチン開発のために有用である。特に、本発明による細胞培養物は、以下の有用性:改善された長期安定性(感染している3D細胞培養物は、最大2/3か月まで培養され得る)、良好な培養機能性、および/または改善された感染力、を有する。
【0031】
本発明は、上に記載されるように肝臓の細胞の3D細胞培養物を含有するマルチプレートを、さらに提供する。マルチウェルプレートは、例えば、薬またはワクチン開発におけるハイスループットスクリーニングのために有用である。
【0032】
加えて、本発明は、肝臓の細胞を含有する3D細胞培養物の生産のための方法を提供し、以下のステップ:
● (ステップa)撹拌に基づく培養システムにおける2D培養の中に広がった肝臓の細胞および/または他の細胞タイプ(特に間葉系幹細胞および/または例えば、クッパー、星状、内皮細胞などの非実質肝臓細胞)を含有する、単一細胞懸濁液の注入;
● (ステップb)40から110rpmまでの撹拌速度における、結果として生じる細胞培養物の撹拌;
● (ステップc)細胞凝集物(好ましくは、50μmから200μmまでの範囲内の平均直径を有する)とともに病原体(ここで、細胞-対-病原体の比は好ましくは、10:1と1:5000の間)を含有する、結果として生じる3D細胞培養物のインキュベーション、を含む。
【0033】
本発明は、肝臓の細胞を含有する、以下のステップを含む3D細胞培養物の生産のための方法もまた提供し:
● (ステップa)撹拌に基づく培養システムにおいて2D培養の中に広がった肝臓の細胞を含有する単一細胞懸濁液の注入(ステップa);
● (ステップb)40から90rpmまでの撹拌速度における、結果として生じる細胞培養物の撹拌);および
● (ステップc)細胞凝集物(好ましくは、50μmから200μmまでの範囲内の平均直径を有する)と病原体(ここで、細胞-対-病原体の比は好ましくは、5:1と1:5000の間)を含有する、結果として生じる3D細胞培養物のインキュベーション、を含む。
注入のために使用される2D培養は、異なるよく知られる手順によって入手可能である(例えば、Freshney RI: culture of Animal cells. 6th Ed. Hoboken, NJ, USA: John Wiley & Sons, Inc., 2010を参照)。
【0034】
上に記載される方法の好ましい態様において、単一細胞の細胞培地における単一細胞の濃度は、0.1x106から1x106細胞/mLまでの範囲内である。さらにその上、撹拌に基づく培養システムは、好ましくは、撹拌タンクバイオリアクタまたはスピナーベッセルである。好ましくは、注入もまた、撹拌に基づく培養システムにおいて実施される。
【0035】
記載される方法の別の好ましい態様において、注入(ステップa)および/または撹拌(ステップb)および/またはインキュベーション(ステップc)は、37℃±2℃の範囲内の温度、湿度を含む雰囲気(最大相対湿度95%まで)、空気中5~10%のCO2において実施される。具体的な態様において、撹拌は、数週間の期間において実施される(例としては1~2週間)(ここで、培地は、必要であれば、好ましくは2~3日毎に交換される)。
【0036】
この方法の別の非常に重要な態様において、3D細胞培養物は、インキュベーション(ステップc)の間、最大1800xgまでにおいて、遠心される。遠心分離は、それらの密度による培地中におけるある層において、細胞および病原体の局所的な濃度を増大することによって、細胞-病原体の接触を促進する。この態様において、細胞培地の体積は、好ましくは一定に保たれる(それは、細胞培地体積の、時間にわたる減少が全くない、または有意な減少が全くないことを意味する)。それにもかかわらず、培地は、必要ならば交換され得(好ましくは、全体の体積を変えることなしに)、好ましくは、培地は2~3日毎に交換される。最も好ましくは、中程度の加速およびブレーキ設定は、凝集物/スフェロイドの融合を避ける目的で、この遠心分離手順のために使用される。本発明によると、上に記載される状態は、「静置インキュベーション状態」と言及され得る。
【0037】
そのうえ、本発明の具体的な態様において、細胞培養は、インキュベーション(ステップc))の間、最大1800xgまで遠心され、ここで、細胞培養物の体積は、好ましくは一定の水準に保たれる。
【0038】
別の態様において、3D細胞培養物は、インキュベーション(ステップc))の間、撹拌に曝される(好ましくはスピナーベッセルまたはマルチウェルプレートにおいて)。撹拌のスピードは、好ましくは110から40rpmまでの範囲内である。撹拌は、細胞-病原体接触を促進するのに有用である。その上、かかる態様において、細胞培地体積は、好ましくはインキュベーションの間に開始時の体積の10~75%まで縮小される。細胞培養の体積の減少は、増大した濃度という結果になる。これは、病原体-細胞の接触をさらに促進できる。本発明によると、上に記載される状態は、「動的状態」として言及され得る。それらの状態のもとで、インキュベーションは、例えば、撹拌スピードを110から40rpm)の範囲内で調節することを伴う継続的な撹拌のもとでおよそ2時間において、実施され得る。この態様は、大きな体積の細胞培養物のために特に好適であり、および大きな凝集物の形成が所望される場合もまた、有利であり得る。
【0039】
結局、本発明の具体的な態様において、細胞培養は、インキュベーション(ステップc))の間撹拌に曝され、ここで、撹拌スピードは、好ましくは、110から40rpmの範囲内であり、およびここで細胞培養体積は、好ましくは開始時の体積の10~75%まで縮小される。
【0040】
本発明による3D細胞培養物の生産のための方法のさらなる態様において、インキュベーションは、静置の状態のもとで実施され、ここで、細胞凝集物を病原体と一緒に含有する3D細胞培養物は、最大1800xgまでにおける遠心分離に曝されるか、またはインキュベーションは、動的状態のもとで実施され、ここで、細胞培養体積は、縮小され(好ましくは開始時の体積の10~75%)および細胞培養は、撹拌に曝される(撹拌スピードは、好ましくは110から40rpmまでの範囲内である)。
【0041】
別の態様において、細胞培地体積は、継続的な撹拌のもとで、感染の間に開始時の体積の50~75%に縮小される。これは、大きな凝集物の形成が所望される場合、特に好適である。
本発明は、方法によって入手可能な肝臓の細胞の3D細胞培養物、または上に記載されるように、肝臓の細胞の3D細胞培養物の製造にもまた関する。
【0042】
本発明は、スクリーニング方法もまた提供し、以下のステップ:
● 化合物と肝臓の細胞の3D細胞培養物のインキュベーション、ここで、肝臓の細胞培養物は、上に記載されるような細胞培養物、または上に記載される方法によって手に入れられる細胞培養物であり;
● 病原体の侵入のモニタリング、化合物クリアランスおよび/または宿主細胞の発達、を含む。
【0043】
モニタリングは、異なるよく知られるテクニックを使用して実施され得る(例えば、蛍光、発光、免疫蛍光および抗原検出など)。
本発明は、3D細胞培養物に接した化合物の細胞障害性の効果および/または代謝の性質、および/または細胞培養物に接した化合物の病原体に対する効果を決定するための、本発明による3D細胞培養物の使用、にさらに関する(好ましくは、薬物スクリーニングの目的のために)。
【0044】
本発明による3D培養物および方法は、新規の抗感染性の化合物のスクリーニングのために好適であり、例えば、達成され得る肝細胞の成熟の表現型、達成され得る高い感染力(例えば、ネズミマラリア原虫については、最大3%まで達成できる感染率)および病原体レポーターシステムの簡単さという理由からである。加えて、具体的な時間期間における化合物のインキュベーションによって、感染プロセスに対する化合物の作用の点を明らかにすることは、可能である(
図1参照)。
【0045】
本発明は、ワクチン開発のための本発明による3D細胞培養物の使用にさらに関する。
本発明は、抗寄生虫薬および/またはワクチンのためのスクリーニングアッセイにさらに関する。
本発明は、薬(好ましくは抗寄生虫薬)および/または本発明による3D細胞培養物を含むワクチンについてのスクリーニングのためのキットにもまた、関する。
【0046】
本発明による生産方法は、かかる3D細胞培養物を多量に製造することを許容し、そしてそれは、例えば、ハイスループットスクリーニングのために非常に有用である。
本発明の文脈において、「3D細胞培養物」または「3D培養物」という用語は、3次元の細胞凝集物(特にスフェロイドを包含する)を含む細胞培養物を、指す。3D培養において、細胞は、お互い付着され、そのため細胞と細胞の相互作用を許容する。
【0047】
「2D細胞培養物」または「2D培養物」という用語は、2次元の細胞培養物を指す。
「細胞凝集物」という用語は、3D細胞凝集(特にスフェロイド)を指す。
【0048】
「共生培養物」という用語は、少なくとも2つの別個の細胞タイプを含有するin vitro細胞培養物を指し、ここで、少なくとも細胞のタイプは、肝臓の細胞のタイプである。よって、共生培養物は、例えば、2つ(またはより多く)の異なる肝臓の細胞のタイプからの細胞を含有してもよく、または共生培養物は、1つ(またはより多く)の肝臓の細胞のタイプからの細胞を、少なくとも1つ(またはより多く)のさらなる非肝臓の細胞タイプからの細胞と組み合わせて含有してもよい。「単一培養物」という用語は、1つのみの(肝臓の)細胞のタイプを含有するin vitro細胞培養を指す。
【0049】
細胞凝集物の観点において、「感染している」(または「感染している凝集物」)という用語は、細胞凝集物当たり、平均で少なくとも1つの細胞が感染していることを意味する。本発明の文脈において、感染している細胞は、肝臓の細胞である。
【0050】
本発明の文脈において、「多能性または多分化能の幹細胞から由来する肝細胞様細胞」は、肝臓の細胞へ分化する潜在力を有する未分化の細胞である。「多能性幹細胞」は、3つの胚葉へ分化し得、一方「多分化能の幹細胞」は、組織特異性のある細胞タイプのみに分化し得る肝臓の前駆細胞を指す。
「単一細胞懸濁液」という用語は、個別の、非凝集細胞を基本的に含む細胞の懸濁液を指す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1-抗プラスモジウム属剤についての薬物スクリーニングにおいて使用され得る可能性のある化合物インキュベーションレジュメの例。(A)病原体の追加の1時間前から、最大2または7日後までの薬のインキュベーション;(B)プラスモジウム属スポロゾイドの追加の前の1時間の間の薬のインキュベーション;(C)プラスモジウム属スポロゾイトの追加における2時間の間の薬のインキュベーション;(D)プラスモジウム属スポロゾイドの追加の時点から2時間の、最大2または7日までの薬のインキュベーション。
【0052】
【
図2】
図2-3D培養の間のHepG2スフェロイドの特徴づけ。(A)培養の第一および第二週目(夫々、4日目および9日目)の生/死アッセイ(生細胞、フルオレセイン-ジアセテート;死細胞、Topro-3)のフェーズコントラストおよび蛍光顕微鏡画像。スケールバー:50μm。(B)培養の第一および第二週目(夫々、4および9日目)におけるスフェロイドの直径。結果は、2つの独立的な実験の平均値±標準偏差として表示される。(C)代謝の遺伝子、CYP3A4、CYP1A2およびCYP2D6についての15日にわたる培養の、2D培養物および3D培養物の遺伝子発現水準の分析。結果は、2または3つの独立的な実験の平均±平均値の標準誤差として表示される。
【0053】
【
図3】
図3-3D培養の間のHepaRGスフェロイドの特徴づけ。(A)培養の第一および第二週目(夫々、4日目および9日目)の間の生/死アッセイ(生細胞、フルオレセイン-ジアセテート;死細胞、Topro-3)のフェーズコントラストおよび蛍光顕微鏡画像。スケールバー:50μm。(B)培養の第一および第二週目(夫々、4および9日目)におけるスフェロイドの直径。結果は、2つの独立的な実験の平均±平均値の標準誤差として表示される。
【0054】
【
図4】
図4-HC-04細胞の凝集の最適化。凝集は、10%から20%(v/v)FBSを含む培地において、細胞を3日間培養することによって、誘導された。培養の6日目までの2つの培養条件からのHC-04スフェロイドの代表的なコントラストフェーズ顕微鏡画像。スケールバー:50μm。
【0055】
【
図5】
図5-3D培養の間のHC-04スフェロイドの特徴づけ。(A)培養の第二週目(9日目)における生/死アッセイ(生細胞、フルオレセイン-ジアセテート;死細胞、Topro-3)のフェーズコントラストおよび蛍光顕微鏡画像。スケールバー:50μm。(B)培養の第一および第二週目(夫々、4および9日目)のスフェロイドの直径。結果は、3つの独立的な実験の平均値±標準偏差として表示される。(C)代謝の遺伝子、CYP3A4、CYP1A2およびCYP2D6についての3日目での2D培養物および15日にわたる培養の3D培養物の遺伝子発現水準の分析。結果は、2または3つの独立的な実験の平均±平均値の標準誤差として表示される。
【0056】
【
図6】
図6-HC-04スフェロイドの表現型の特徴づけ。(A)E-カドヘリン;(B)F-アクチン;(C)アルブミン;(D)肝細胞核内因子4アルファ(HNF4α);(E)CYP3a4;(F)CD81:の検出。9日目からのスフェロイドの10μmの厚さの凍結切片の蛍光顕微鏡からの画像。スケールバー:50μm。
【0057】
【
図7】
図7-3D培養の間のPHHスフェロイドの特徴づけ。(A)それぞれ培養の3および6日目における死細胞(死細胞、Topro-3)を示すフェーズコントラストおよび顕微鏡画像。スケールバー:100μm。
【
図8】
図8-ヘテロタイプなスフェロイド培養物の特徴づけ。(A)培養の3日目におけるPHH:HepaRG共生培養のフェーズコントラスト顕微鏡画像。スケールバー:50μm。(B)培養の4日目におけるHC-04:HepaRG共生培養物のフェーズコントラスト顕微鏡画像。スケールバー:50μm。
【0058】
【
図9】
図9-動的状態における3D培養物のネズミマラリア原虫感染の特徴づけ。(A)感染48時間後の生/死アッセイ(生細胞、フルオレセイン-ジアセテート;死細胞、Topro-3)のフェーズコントラストおよび蛍光顕微鏡画像。スケールバー:100μm。(B)静置のおよび動的状態における感染している3D培養物の感染率、静置の感染と比較したパーセンテージとして表される。ルシフェラーゼ活性は、DNAのμgによって、基準化された。結果は、単一の実験からの4回のテクニカルリピートの平均値±標準偏差である。
【0059】
【
図10】
図10-感染のためのHepG2スフェロイドの培養条件の最適化。後者は遅い加速とブレーキをともなう、500、1000および1800xgにおける、遠心分離後のHepG2スフェロイドの生存細胞(フルオレセイン-ジアセテート)の蛍光顕微鏡画像。スケールバー:100μm。
【
図11】
図11-96ウェルプレートにおけるHepG2スフェロイドの培養。中程度の加速およびブレーキをともない、1800xgにおいて5分の間の遠心され、および加えて96ウェルプレートにおいてさらに48時間の間、維持されたHepG2スフェロイドの生存細胞(フルオレセイン-ジアセテート)の蛍光顕微鏡画像。スケールバー:100μm。
【0060】
【
図12】
図12-細胞-対-スポロゾイト比率の最適化および接触の機序。(A)遠心される(黒)および遠心されない(灰色)状態に対する相対的発光単位(RLU)によるルシフェラーゼ活性。結果は、単一の実験からの5つのテクニカルリーピートの平均値±標準偏差である。(B)HepG2の2D培養物の感染と比較の感染しているHepG2スフェロイドのルシフェラーゼ活性。結果は、少なくとも3つの独立的な生物学的実験の平均±平均値の標準誤差である。
【
図13】
図13-感染における細胞密度の最適化。96-ウェルプレートにおける第一および第二週目のHepG2スフェロイド分布のコントラストフェーズ顕微鏡画像。スケールバー:100μm。
【0061】
【
図14】
図14-HepG2スフェロイドのプラスモジウム属感染の最適化。1:1細胞-対-スポロゾイド比率において感染している2Dで培養されたHepG2細胞と比較した、Pb-Luc(A)およびPb-GFP(B)によるHepG2スフェロイドの感染率。結果は、少なくとも5つの独立的な実験の平均値±平均値の標準誤差として表される。(C)HepG2スフェロイドにおけるPb-GFPパラサイトの発展。2Dで培養されたHepG2細胞について手に入れられるものに対して基準化されたGFP強度の結果。結果は、少なくとも5つの独立的な実験の平均値±平均値誤差として表される。
*は、スチューデントのt検定による有意差を指し示す(
**p<0.01、
*p<0.05)。
【0062】
【
図15】
図15-HC-04スフェロイドのプラスモジウム属感染。HC-04スフェロイドおよびHepG2について基準化される2D細胞培養物についてのPb-Luc(A)およびPb-GFP(B)の感染率。結果は、少なくとも3つの独立的な実験の平均値±平均値の標準誤差として表される。(C)HC-04スフェロイドにおけるPb-GFPパラサイトの発展。2Dで培養されたHepG2のために手に入れられるものに対して基準化されたGFP強度の結果。結果は、少なくとも3つの独立的な実験の平均値±平均値の標準誤差として表示される。
*は、スチューデントのt検定による有意差を指し示す(
*p<0.05)。
【0063】
【
図16】
図16-HC-04スフェロイドにおけるプラスモジウム属感染の定量化。(A)1:2細胞-対-スポロゾイト比率における2.5および5x10
4細胞/ウェルで感染しているスフェロイドのパーセンテージ。結果は、2つの独立的な実験の平均±標準偏差である。(B)1:2細胞-対―スポロゾイド比率で、2.5および5x10
4細胞/ウェルにおいて感染されるスフェロイド当たりの感染している細胞の数、結果は、2つの独立的な実験の平均±標準偏差である。(C)Pb-GFP感染の代表的な蛍光顕微鏡画像。スケールバー:100μm。
【0064】
【
図17】
図17-感染中のプラスモジウム属発達の特徴づけ。(A)GFP強度の定量化により決定される、HepG2およびHC-04における2Dおよび3D培養物中の時間にわたる(感染後24から60時間)Pb-GFPの発展。結果は、3つの独立的な実験の平均±標準偏差。(B)HC-04スフェロイドおよび2D培養物中の感染後24時間、36時間および48時間における感染している細胞の中のスポロゾイト成長のモニタリング。矢印は、発展するパラサイトを持つ細胞を指し示す。(C)具体的なα-UIS-4抗体を使用する48時間感染後のUIS4寄生体胞タンパク質の検出。3D画像は、4.2μmのz-スタックの投影である。スケールバー:50μm。
【0065】
【
図18】
図18-感染している赤血球細胞(RBC)の定量化によって決定されるHC-04の3D培養物およびHepG2の2D培養物からのメロソームのin vivo感染力。結果は、状態あたり少なくとも4匹のマウスを包含する1つの実験の平均±標準偏差である。
【0066】
【
図19】
図19-Pb感染しているHC-04スフェロイドにおける薬物活性の分析。ATQによって処置される3D培養物の用量反応曲線。結果は、処置されない対照に対して基準化される感染のパーセンテージとして表される。結果は、最大2つの独立的な実験の平均として表される。
【
図20】
図20-本発明による感染している3D培養の調製および抗マラリア薬についてのハイスループットスクリーニングにおける同じものの使用の図式的な表現。
【実施例】
【0067】
他に特定しないかぎり、すべての出発材料は、商業的な供給者から手に入れられ、およびさらなる精製なしに使用される。他に特定しないかぎり、すべての温度は、℃において表され、およびすべての反応はRTにおいて行われる。
【0068】
略語
ATQ-アトバコン
DMEM-ダルベッコ改変イーグル培地
DMSO-ジメチルスルホキシド
ECM-細胞外マトリックス
FBS-ウシ胎仔血清
F12-栄養混合物F-12ハム
GFP-緑色蛍光タンパク質
HNF4α-肝細胞各因子4アルファ
ネズミマラリア原虫(P.berghei)-プラスモジウム・ベルゲイ
サルマラリア原虫(P.cynomologi)-プラスモジウム・シノモロジ
熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)-プラスモジウム・ファルシパルム
マラリア原虫(P.malariae)-プラスモジウム・マラリア
卵形マラリア原虫(P.ovale)-プラスモジウム・オヴァール
三日熱マラリア原虫(P.vivax)-プラスモジウム・ビバックス
Pb-GFP-GFPを恒常的に発現するプラスモジウム・ベルゲイ
Pb-Luc-ルシフェラーゼを恒常的に発現するプラスモジウム・ベルゲイ
RLU-相対的な発光単位
rpm-分当たりの回転
S.D-標準偏差
STB-撹拌タンクバイオリアクタ
xg-重力x倍
本発明は、(しかし限定されないが)以下の実施例において記載される具体的な態様への参照によって説示されることになる。
【0069】
I.3D培養物の生育および特徴づけ
実施例1a:HepG2細胞の3D培養物の確立
HepG2スフェロイドを、撹拌タンクシステムにおいて、生み出した。HepG2スフェロイドについて使用される培養条件は、表1において要約される。
【0070】
HepG2細胞は、高い細胞生存率を伴い(
図2)、スフェロイドを形成した。4日目までに、HepG2スフェロイドは、平均直径63±14μmをもち、コンパクトであった(
図2、4日目)。スフェロイドは、培養の第二週目までに、より高い直径の不均一性を表したものの(
図2、9日目)、しかしそれらは、平均直径104±32μmで、第1週目におけるよりもよりコンパクトである(
図2B)。経時的なCYP3A4、2D6および1A2の基底の遺伝子発現の分析は、培養期間にわたる遺伝子発現において主要な違いは全くないことを指し示し、3D培養物における代謝は、経時的に安定していることを示した(
図2C)。
【0071】
表1:HepG2細胞の3D培養物の確立のための培養条件
【表1】
【0072】
実施例1b:HepaRG細胞の3D培養物の確立
HepaRGスフェロイドを、撹拌タンクシステムにおいて生み出した。最適化された3D培養パラメーターを、表2に要約する。HepaRGスフェロイドの代表的な画像、および培養時間に沿うスフェロイドの直径を、
図3に示す。スフェロイドは、40±7μmの平均直径を有し、および少なくとも培養の2週間の間、維持された(
図3B)。
【0073】
HepG2について観察されたもの(データは示されない)と反対に、HepaRG細胞の合計数は、培養時間の間中、維持された。HepG2とHepaRG細胞の3D培養物の間の違いを、以前に我々のチームによってレポートされたように、3DにおけるHepaRG細胞の非増殖性の表現型によって説明し得、[Rebelo, S. P., Costa, R., Estrada, M., et al. (2014) HepaRG microencapsulated spheroids in DMSO-free culture: novel culturing approaches for enhanced xenobiotic and biosynthetic metabolism. Arch Toxicol.]、3D培養条件において、高い増殖性のあるHepG2スフェロイドと対照的である。
【0074】
表2:HepaRG細胞の3D培養物の確立のための培養条件。
【表2】
【0075】
例1c:HC-04細胞の3D培養物の確立
HC-04細胞株の3D培養物を、HepG2細胞に履行される条件に基づいて、確立した。10%FBSにおいてHC-04細胞を培養するとき、接種濃度および撹拌速度の変動は、細胞凝集効率性に有益な効果を、全く有さなかった。HC-04細胞は、非常に少なく、および非コンパクトなスフェロイド(
図4)を形成した。培養の最初の3日の間に、FBS濃度を20%まで増大することは、凝集効率性を改善し、およびよりコンパクトなHC-04回スフェロイドを生み出した(
図4)。最適化された培養ストラテジーを、表3に要約する。
【0076】
最適化された凝集ストラテジーを使用して、HC-04細胞は、高い細胞生存率(
図5A)をもって、コンパクトなスフェロイドを形成した。培養の4日目において、HC-04スフェロイドは、58±16μmの平均直径を表し(
図5B)、そしてそれは培養時間の間中増大し、9日目までにはおよそ100±24μmに達した。CYP3A4およびCYP2D6の基底の遺伝子発現の分析は、培養期間にわたる遺伝子発現における増減にもかかわらず、培養の第2週目(15日目)において、それらの遺伝子の発現におけるピークがあったことを指し示した。一方で、CYP1A2の発現水準は、培養期間にわたって減少する(
図5C)。
【0077】
HC-04スフェロイドの肝臓の表現型を、免疫蛍光顕微鏡によって特徴づけた(
図6)。細胞間接合部のスペースのE-カドヘリンの検出は、きつい細胞-細胞コンタクトを指し示し、それは以前に3D培養物において最大化されるとレポートされた[Tostoes, R. M., Leite, S. B., Serra, M., et al. (2012) Human liver cell spheroids in extended perfusion bioreactor culture for repeated-dose drug testing. Hepatology, 55(4), 1227-1236]。
【0078】
スフェロイドのすみずみまで検出される細胞間領域のF-アクチンの豊富さは、高い細胞の極性化、および肝臓の細胞の典型である毛細胆管様構造の存在を指し示す。肝臓のアイデンティティーを、スフェロイドのすべての細胞における、肝臓に特異的な生合成生産物の1つであるアルブミンの検出および肝臓に特異的なタンパク質HNF4αの存在によって、さらに実証した。
【0079】
CY3A4の検出(
図6E)は、スフェロイドにおけるHC-04細胞による肝臓の代謝酵素の発現を確証し、同様に、プラスモディウム属の肝細胞の中への侵入に関与すると知られる受容体の1つであるCD81を、[Foquet, L., Hermsen, C. C., Verhoye, L., et al. (2014) Anti-CD81 but not anti-SR-BI blocks Plasmodim falciparum liver infection in humanized mouse model. Journal of Antimicrobial Chemotherapy, 70(February), 1784-1787]スフェロイドの中に不均一に検出し、大部分を細胞膜において集積していた(
図6F)。全体的に、スフェロイドにおけるHC-04細胞は、肝細胞の典型的な表現型の特徴を表す。
【0080】
表3:HC-04の3D培養物の確立のための培養条件
【表3】
【0081】
例1d:初代ヒト肝細胞の3D培養物の確立
凍結保存初代ヒト肝細胞(PHH)の3D培養物を、肝臓の細胞株について以前に記載されるストラテジーに基づいて、表4による同じ細胞接種濃度および初期撹拌スピードを増加することで、確立した。PHHスフェロイドは、培養の6日後コンパクトであり、および3D培養物は、撹拌タンクベッセルの中で最大で2週間まで維持された(
図7)。
【0082】
表4:凍結保存PHHの3D培養物の確立のための培養条件
【表4】
【0083】
例1e:肝臓のスフェロイド(HC-04:HepaRGおよびPHH:HepaRGの3D共生培養物)のヘテロタイプな培養物の確立
HC-04およびHepaRG細胞株の3D共生培養物を、HC-04細胞のために履行された凝集条件に基づいて確立した。表3により、細胞を、2HC-04:1HepaRGの比率においてDMEM+F12培地中で共生培養した。HepaRG細胞を伴う共生培養物は、HC-04の単一培養物と比較すると、細胞凝集において有益な効果を有し、10%のFBS濃度(体積/体積)でスフェロイドの生成を可能にした。2週間の培養時間に沿って、撹拌速度の50から80rpmまでの変動は、コンパクトなスフェロイドの生成を導いた(
図8A)。最適化される凝集ストラテジーを使用して、結果として生じる回転楕円体は、培養の4日目において65±13平均直径を表し、9日目までに、およそ113±32μmに達した(データを示さない)。
【0084】
HepaRG細胞株を伴うPHHの共生培養物について、9PHH:1HepaRG比の比率の2x10
5細胞/mL細胞密度を、試験した。凝集は効率的であり、スフェロイドを注入の3日後に形成し、および培養期間にわたって、培養生存率を維持した(
図8B)。両方の細胞の供給源に対する、HepaRG細胞株の共生培養ストラテジーは、培養の初めの4日間における効果的な凝集効率性を導いた。
【0085】
II.3D培養物の感染および特徴づけ
実施例2a:動的状態におけるネズミマラリア原虫スポロゾイトを伴うHepG2細胞の3D培養物の感染
多くの数のスフェロイドの感染および長期間の間の培養における維持のために、スピナーベッセルを使用する動的状態において、感染を履行した。細胞-対-スポロゾイドコンタクトを最大化し、および剪断応力の肝臓のスフェロイドの生存率への影響を最小化する目標でスポロゾイドおよび細胞の濃度、細胞-対-スポロゾイト比率および感染の間の培養体積および撹拌などの数個のパラメーターは、動的感染を確立するために考慮された。スピナーベッセルを使用して動的状態における感染の履行のために使用されるパラメーターおよび条件は、表5に要約される。
【0086】
表5.動的状態における感染の確立のための培養条件。
【表5】
【0087】
動的状態における感染率を、HepG2の3D培養物において評価し、および、2.5x10
4細胞/ウェルにおいて、1:1の細胞-対-スポロゾイト比率を使用して静置の状態と比較した。感染後48時間の細胞の生存率は高く、培養パラメーターの操作および結果として生じる剪断応力は、スフェロイドの完全な状態および生存率への影響を全く有さなかったことを指し示した(
図9A)。その上、動的な状態における感染は、成功であり(静置の状態における感染と比べると66%)、このストラテジーを、スフェロイドの感染のために適用し得ることを指し示した。動的状態における感染は、大量のスポロゾイドを必要とするため、他の肝臓の細胞の供給源の感染、および感染の特徴づけを必然的にともなう引き続きの実施例を、静置の状態で実施した。
【0088】
例2b:静置の状態におけるネズミマラリア原虫のスポロゾイドによるHepG2細胞の3D培養物の感染
細胞濃度、細胞-対―スポロゾイド比率、細胞-対-スポロゾイド接触の機序およびスフェロイドの培養時間を包含する感染パラメーターを、最適化した。スポロゾイトを、感染しているハマダラカステップヘンシ蚊(Anopheles stephensi mosquites)の唾液腺の解剖から手に入れた。唾液腺の物理的な破損に引き続き、スポロゾイト懸濁液を、スポロゾイドが培養における接種に採用されるまで、氷の上に最大3時間まで保った。
【0089】
スフェロイドにおける標準の感染条件の履行のために遠心分離、および引き続く96ウェルプレートにおける静置の培養の効果を評価した。すべての遠心分離スピードは、遠心分離スピードに徐々に達し、および徐々に減少した条件(Rotina420R, Hettich Centrifugeにおける、加速およびブレーキプロファイル5に同等)を除き、スフェロイドの融合を導いた、
図10。この条件のもとで、プレートの中央の段(段C、D、およびE)において、スフェロイドは、融合なしに完全な状態を保持し、および細胞濃度に独立して高い細胞生存率を維持した。そのため、培養の進度を、記載される設定を使用して、遠心分離後48時間の間査定した。読み出し情報は、細胞生存率およびスフェロイドの融合であった(
図11)。培養における48時間後、HepG2のスフェロイドは、試験された3つの細胞濃度の中、最小限のスフェロイド融合で、高い細胞生存率を維持した。
【0090】
初期に、ルシフェラーゼ(Pb-Luc)またはGFP(Pb-GFP)を恒常的に発現するプラスモディウム・ベルゲイのレポータ株を採用する準備段階のアッセイを、実施し、細胞-対-スポロゾイド比率および接触の機序の範囲を最適化した。Pb-Lucパラサイトは、ルシフェラーゼ基質の追加に引き続く細胞ライセート発光の読みによって、感染を測定することを可能にする。Pb-GFPパラサイトは、感染フローサイトメトリー分析を測定することを可能にする。かかる分析は、侵入した細胞のパーセンテージ(GFP-陽性細胞の%)および肝臓の細胞の内部のパラサイトの発達を測定することを許容する(GFP強度)。試験された状態および採用された読み出し情報を表6において描写し、および手に入れられた結果を
図12において表示する。
【0091】
表6:Pb-LucによるHepG2のスフェロイドの感染の最適化のために試験されたパラメーターおよび対応するものの読み出し情報。
【表6】
【0092】
HepG2のスフェロイドは、細胞-対-スポロゾイドコンタクトを遠心分離により促進した時、より高い感染率を表示した(
図12A)。それらの条件において、最も高い感染率を、細胞濃度2.5および5x10
4細胞/ウェルを使用して1:2および1:1の細胞-対-スポロゾイト比率において手に入れた(
図12B)。
【0093】
したがって、感染のために好ましい手順は:(i)感染のためのスピナーベッセルから96ウェルプレートへのスフェロイドの分布;(ii)中程度の加速およびブレーキをともなう1800xg5分間における遠心分離によるスポロゾイド-対-細胞コンタクトの促進;(iii)静置の状態における感染後48時間の間、感染評価のための96ウェルプレートにおけるスフェロイドの維持、であった。
【0094】
1:2および1:1の細胞-対-スポロゾイト比率を選択し、ネズミマラリア原虫の感染の最適化に進んだ。細胞-対-スポロゾイトコンタクトを最大化することを目標として、感染における細胞密度を最適化し、ウェルの表面の最大カバー度を達成した。結果は、
図13において表示される。2.5x10
4および5x10
4細胞/ウェルの注入(夫々、7.8x10
4および15.6x10
4細胞/cm
2)は、培養において、48時間後、スフェロイドの融合を観察することなく、スフェロイドによってウェルの表面の60~80%をカバーすることを導いた。逆に、10x10
4細胞/ウェルの播種密度を使用するとき、スフェロイドの融合が起こった。そのため、2つの細胞-対-スポロゾイド比率(1:1および1:2)を査定すること、および培養において1または2週間までに生み出されるスフェロイドを使用することによって、ネズミマラリアによるHepG2スフェロイドの感染のさらなる最適化のために、より低い細胞濃度(2.5x10
4および5x10
4細胞/ウェル)を選択した。
【0095】
結果は、培養において2週間までによって生み出された肝臓のスフェロイドによって、より高い感染率を、手に入れたことを示した。その上、感染率を、ネズミマラリア原虫の両株について5x10
4細胞/ウェルおよび1:2細胞-対-スポロゾイド比率を使用して、最大化し得ただろう(夫々、Pb-LucおよびPb-GFPについて、HepG2 2D細胞と比較すると150%および80%;
図14A;B)。それでもなお、1:2細胞-対-スポロゾイト比率における2.5x10
4細胞/ウェルは、限定されるスポロゾイト入手可能性のケースにおいては、代替として考えられ、2D培養物と比較すると、89%のPb-Luc感染率へ導く(
図14A、B)。一般に、HepG2スフェロイドの感染率は、2D細胞について手に入るものに、匹敵する(
図14A;B)。
【0096】
表6:培養の第一週目対培養の第二週目におけるスフェロイド。感染率を、1:1細胞-スポロゾイト比率において感染しているHepG2 2D培養物に基準化されたルシファラーゼ活性として表現する。1:2細胞-対-スポロゾイト比率における5x10
4細胞/ウェルを除いて、少なくとも2つの独立的な実験からの結果。
【表7】
【0097】
両方の分析用の方法、ルシファラーゼ活性またはGFP蛍光の評価は、感染状態を同定し、最も高い感染率を導くことにおいて一貫していた(
図14A;B)。観察された感染率における差は、採用された2つの分析用の方法に本来ある違いによって、説明されるかもしれない。Pb-GFPについて、感染率は、感染している細胞の数(GFP-ポジティブ細胞のパーセンテージ)またはパラサイトの発達(GFP強度)を反映する。逆に、Pb-Lucによる感染は、ルシファラーゼ活性によって分析され、および感染率は、感染している細胞の数と同様にPb-Lucパラサイトの発達を累積的に反映する。
【0098】
スポロゾイトは、HepG2スフェロイドにおいて発達することができ、採用されたすべての条件において、2D培養物において観察されたものの65%より大きい発達(
図14C)およびより低い細胞密度条件(2.5x10
4細胞/ウェル)については、それより高いものを表示した。
【0099】
手に入れられたデータを考慮して、HepG2スフェロイドのネズミマラリア原虫の感染のための最適なストラテジーを:(i)2週間培養からのスフェロイド;(ii)5x104細胞/ウェルの細胞密度;および(iii)1:2細胞-対-スポロゾイト比率を使用して履行した。
【0100】
例2c:静置の状態における、ネズミマラリア原虫スポロゾイトによるHC-04細胞の3D培養物の感染
HC-04細胞を、両方のネズミマラリア原虫のパラサイト株によって感染した。2D培養物における、HC-04細胞の感染率は、それぞれPb-LucおよびPb-GFPについての2D条件のもとでHepG2細胞に観察されたもののおよそ79%および47%であった(
図15A;B)。HepG2細胞のように、ネズミマラリア原虫の感染を、異なる(i)細胞-対―スポロゾイト比率および(ii)細胞密度を査定することによって、HC-04スフェロイドにおいて最適化した。感染を、HepG2について上に記載したように(
図15A;B)、1:2の細胞-対-スポロゾイト比率、および5x10
4細胞/ウェルの細胞密度(
図15A;B)を使用し、最大化し得るだろう(
図14A;B)。すべての試験された状態について、HC-04の3D培養物におけるPb-GFPb-GEFの発達は、HepG2の2D培養物においてに匹敵する、またはより高い(
図15C)。
【0101】
1:2の細胞-対-スポロゾイト比率においてPb-GFPによって感染しているスフェロイドのパーセンテージを、2.5x10
4および5x10
4細胞/ウェル細胞密度について、蛍光顕微鏡によって定量化した。両方の条件において、55%より多くのスフェロイドが感染しており(
図16A)、感染しているスフェロイド当たり平均およそ3個の感染している細胞をもった(
図16B)。
【0102】
例2d:3D培養物における経時的なパラサイトの発達の評価
3Dにおけるネズミマラリア原虫の感染の履行および最適化に加えて、パラサイトの発達の特徴づけを、両方の肝臓の細胞株(HepG2およびHC-04)について実施した。感染60時間後に観察されたパラサイトの発達を、GFP強度の定量化によって、特徴づけた。発達の匹敵するプロファイルを、試験されたすべての条件に対して観察した(2Dおよび3D;HepG2およびHC-04)(
図17A)。ネズミマラリア原虫の発達の動態は、増大するプロファイルを示し、48時間においてその最大値に達し、その後感染60時間後まで維持した(
図17A)。同時に、効果的に侵入された肝臓の細胞の内部において、Pb-GFPは、増殖することができ、2Dおよび3Dの両方において感染している肝臓の細胞のサイズの増大を導いた(
図17B)。
【0103】
その上、感染48時間後、UIS4、寄生体胞の膜中のタンパク質の検出は、寄生体胞の中におけるパラサイトの発達を確証した(
図17C)。3D培養物におけるパラサイトの発達が、完全であるかどうか評価するために、メロソームの遊離を査定し、および両方の細胞株からの(HepG2およびHC-04)2Dおよび3D培養物の両方において、感染72時間後において、培養上澄み中にメロソームを検出した。メロソームを含有する培養上澄みをマウスに注入し、および寄生虫血症を感染している赤血球細胞(RBC)のパーセンテージを査定することによって、経時的にモニターした(
図18)。寄生虫血症を試験したすべての条件のマウスにおいて検出し、2Dおよび3D培養物におけるスポロゾイトの発達が同等でありおよび完成性のメトロゾイドを含有する成熟メロソームという結果になる。
【0104】
例2c:ネズミマラリア原虫スポロゾイドによるHC-04細胞およびHepaRGの3D共生培養物の感染
HC-04代謝の活性の特徴づけおよび薬物スクリーニングのためのin vitroモデルとして使用されるその適性は、まれである。これは、いくつかの抗プラスモジウム薬(例えば、プリマキン)の正しい代謝のための肝臓代謝活性の重要性を考慮して、このモデルにおける抗プラスモジウム薬評価のための主要な限定を表現する可能性がある。この限定を、乗り越えるために、共生培養システムに基づくストラテジーを考えた。
【0105】
ここで、それらの細胞(HepaRG細胞株)が、入手可能なヒト肝臓の細胞株プラットフォームの中で肝臓機能のより正確なサロゲートとして以前に記載されているという理由から、HepaRG細胞株を選択し、共生培養ストラテジーを追求した[Rebelo, S. P., Costa, R., Estrada, M., et al. (2014) HepaRG microencapsulated spheroids in DMSO-free culture: novel culturing approaches for enhanced xenobiotic and biosynthetic metabolism. Arch Toxicol.]。その上、以前のレポートは、初代肝細胞およびHepaRGの共生培養物は、肝細胞の完全な状態およびフィットネスをながらえ得るだろうこと同様に改善されたサルマラリア原虫感染を示した[Dembele, L., Franetich, J., Lorthiois, A., et al. (2014) Persistence and activation of malaria hypnozoites in long-term primary hepatocyte cultures. Nature Medicine, 20(3), 307-312]。
【0106】
HC-04およびHepaRGの共生培養物が、ネズミマラリア原虫感染について影響があるだろうかを評価した。3:1の比率のHC-04細胞、HepaRG細胞を、試験した。共生培養物およびHC-04単一培養物の感染を、上に記載される最適化された状態において、Pb-GEFで実施した(2週目のスフェロイド、1:2の比において、細胞密度2.5x104および5x104細胞/ウェル)。結果は、表7において表示される。
【0107】
表7:HC-04:HepaRGスフェロイドのプラスモジウム感染。GFP-ポジティブ細胞の頻度として表現されるPb-GFPによる感染。単一の実験からのデータ。
【表8】
【0108】
結果は、共生培養がHC-04スフェロイドの感染のために、最高の条件と同定される感染率に影響を与えなかったことを指し示す(1:2細胞-対-スポロゾイド比率および細胞密度5x104細胞/ウェル)。そのため、この共生培養ストラテジーは、HC-04の単一培養物と比べると、システムの代謝の力を改善する有望な代替を構成する。
【0109】
III.3D培養物の感染に対する標準薬のin vitro試験
実施例3:標準抗プラスモジウム薬プリマキンおよびアトバコンの試験
抗感染性の薬物スクリーニング目的のためのこの発明において表示されるプラットフォームの適性を、肝臓ステージプラスモジウム属感染を標的とすることに、代謝を全く要求しない1つの参照薬、アトバコン(ATQ)を使用して探究した。
【0110】
HC-04の3D培養物を、上に記載される最適化された条件(1:2の比における2.5x10
4細胞/ウェルの細胞密度)においてPb-Lucで感染した。感染における薬の効果の評価を、発明の詳細な説明の項におけるインキュベーションレジメン(A)として記載されるように、スポロゾイドと共にインキュベーションする前に0.01から100nMの間の濃度の範囲で1時間インキュベーションすることによって実施し、およびスポロゾイドの追加48時間後、読み出し情報を実施した(
図1)。採用された薬の濃度は、細胞生存率に影響を与えないことを示した。用量反応曲線を、ATQによって処置された3D培養物について確立し、およびスポロゾイト感染について、0.6nMの50%阻害濃度(IC
50)を決定した。試験された最も高い濃度は、90%より大きく感染を減少することを導いた(
図19)。2Dおよび3D培養において、ATQは、2Dおよび3D培養物において同じように働いた(データは示されない)。