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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】光学セル及びガス分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/03 20060101AFI20230529BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230529BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20230529BHJP
【FI】
G01N21/03 B
G01N1/00 101R
G01N21/3504
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018098135
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019203752
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】中根 正博
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-002656(JP,A)
【文献】特表2017-504028(JP,A)
【文献】国際公開第2012/120957(WO,A1)
【文献】米国特許第03981176(US,A)
【文献】特開昭61-091542(JP,A)
【文献】特開2017-194458(JP,A)
【文献】特開平09-101257(JP,A)
【文献】特表2018-509598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 1/00 - G01N 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが導入される内部空間を有する光学セルであって、
前記内部空間を形成するセル本体と、
前記セル本体に対向する対向面を有し、その対向面が前記セル本体の外面に接続されるマニホールド部材と、
前記マニホールド部材を加熱する加熱機構とを備え、
前記セル本体が、前記外面から前記内部空間へ貫通する第1の貫通孔を有し、
前記マニホールド部材が、前記セル本体の前記外面に沿うように延びており、外部から取り込んだ前記ガスを前記第1の貫通孔を介して前記内部空間へ導入するガス導入路を有し、
前記ガス導入路が、前記マニホールド部材の内部に形成されており、
前記加熱機構が、前記ガス導入路に沿って設けられていることを特徴とする光学セル。
【請求項2】
前記セル本体が、前記第1の貫通孔と対をなし、前記第1の貫通孔から長手方向に離間して配置された第2の貫通孔を有し、
前記マニホールド部材が、外部から取り込んだ前記ガスを前記第1の貫通孔を介して前記内部空間へ導入する前記ガス導入路を有すると共に、前記内部空間に導入された前記ガスを前記第2の貫通孔を介して外部へ導出するガス導出路をさらに有している請求項1記載の光学セル。
【請求項3】
前記ガス導出路及び前記ガス導入路が、前記マニホールド部材の長手方向のいずれか一方側に外部へ連通する一端を有している請求項2記載の光学セル。
【請求項4】
前記マニホールド部材が、前記ガス導入路を二つ有し、一方がサンプルガスを導くサンプルガス導入路であり、他方がパージガスを導くパージガス導入路であり、
前記加熱機構が、前記サンプルガス導入路及び前記パージガス導入路を加熱している請求項1乃至3のいずれかに記載の光学セル。
【請求項5】
前記パージガス導入路が、その途中で二つの分岐路に分岐し、一方の前記分岐路が、前記パージガスを前記内部空間の長手方向のいずれか一方側へ導入し、他方の前記分岐路が、前記パージガスを前記内部空間の長手方向の他方側へ導入する請求項4記載の光学セル。
【請求項6】
前記セル本体に接続された前記マニホールド部材を、当該セル本体の外面と直交し、かつ、前記第1の貫通孔及び前記第2の貫通孔を結ぶ直線の中心を通る軸線を回転軸として180°回転させた場合に、その回転前後において前記ガス導入路に連通する前記第1の貫通孔又は前記第2の貫通孔の一方と前記ガス導出路に連通する前記第1の貫通孔又は前記第2の貫通孔との他方とが入れ替わるように構成されている請求項2記載の光学セル。
【請求項7】
ガスが導入される内部空間を有する光学セルであって、
前記内部空間を形成する少なくとも二つのセル要素と、
前記二つのセル要素のうちで一方のセル要素を加熱する加熱機構とを備え、
前記一方のセル要素が、他方のセル要素に対向する対向面を有し、その対向面が前記他方のセル要素の外面に接続されており、
前記一方のセル要素が、外部から取り込んだ前記ガスを前記内部空間へ導入するガス導入路を有し、
前記ガス導入路が、前記一方のセル要素の内部に形成されており、
前記加熱機構が、前記ガス導入路に沿って前記一方のセル要素の内部に設けられていることを特徴とする光学セル。
【請求項8】
前記一方のセル要素が、前記内部空間に導入された前記ガスを前記外部へ導出するガス導出路をさらに有し、
前記ガス導入路及び前記ガス導出路の前記内部空間へ連通する一端が、前記一方のセル要素の長手方向に離間して配置される請求項7記載の光学セル。
【請求項9】
求項1乃至8のいずれかに記載の光学セルと、
前記光学セルの前記内部空間へ向けて光を射出する光源と、
前記内部空間から出射した光を検出する光検出器と、
前記光検出器で検出された光強度信号に基づいて前記ガスを分析する情報処理装置とを備えるガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学セル及びガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のガス分析装置として、例えば、特許文献1には、ガスが導入される内部空間を有する長尺状の光学セルを備えるガス分析装置であって、外部から内部空間にサンプルガスを導入するサンプルガス導入路と、外部から内部空間にパージガスを導入するパージガス導入路と、内部空間に導入されたサンプルガス及びパージガスを外部へ導出するガス導出路と、光学セルの内部空間へ向けて光を射出する光源と、光学セルの内部空間から出射した光を検出する光検出器と、を備えたものが開示されている。
【0003】
ところで、この種のガス分析装置においては、内部空間に導入されたサンプルガスの温度を予め定められた設定値に保った状態で分析する必要がある。しかし、前記特許文献1に係るガス分析装置においては、内部空間に導入するサンプルガス及びパージガスの間に温度差がある場合、パージ動作を実行すると、サンプルガスによって高温になった内部空間がパージガスによって冷却される。このため、再度内部空間にサンプルガスを導入して分析しようとすると、内部空間の温度が設定値に上昇するまで待ち時間が必要となり、その結果、連続的に分析できないという問題があった。
【0004】
さらに、この種のガス分析装置を長年使用し続けると、サンプルガス導入路の内面にサンプラガスの成分が付着する。このため、ガス導入路による内部空間に対するガス導入量が低下し、ガス置換速度が遅くなり、その結果、応答性が低下するという問題が生じる。
【0005】
また、この種のガス分析装置は、例えば、自動車等のエンジンから排出される排ガスの成分を分析するために使用される。この場合、エンジンから排出される排ガスを光学セルに導入しながら連続的に分析し、エンジン状態と、そのエンジン状態における排ガスの成分とを照合しながら、各エンジン状態における排ガスの成分を判断する。そして、このような使用態様において、サンプルガス導入路による内部空間に対するガス導入量が低下すると、エンジンから排ガスが排出されるタイミングと、その排ガスを分析するタイミングとの間のずれが大きくなり、各エンジン状態における排ガスの成分を正確に判断できなくなるという問題が生じる。
【0006】
ところが、前記特許文献1に係るガス分析装置においては、光学セルに対し、サンプルガス導入路が一体的に接続されているため、サンプルガス導入路を光学セルから容易に取り外すことができず、サンプルガス導入路による内部空間に対するガス導入量の低下を容易に解消することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開S60-233536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、ガス導入路による内部空間に対するガス導入量の低下を容易に解消することができ、また、内部空間に対して導入される各種ガスの温度差を比較的小さくすることができる光学セルを得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る光学セルは、ガスが導入される内部空間を有する光学セルであって、前記内部空間を形成するセル本体と、前記セル本体の長手方向に延びる外面に接続されるマニホールド部材と、前記マニホールド部材を加熱する加熱機構とを備え、前記セル本体が、前記外面から前記内部空間へ貫通する貫通孔を有し、前記マニホールド部材が、長手方向に沿って延びており、外部から取り込んだ前記ガスを前記長手方向の一方側から他方側へ導いた後に前記貫通孔を介して前記内部空間へ導入するガス導入路を有していることを特徴とするものである。
【0010】
このようなものであれば、ガス導入路を有するマニホールド部材をセル本体から容易に分離することができるため、マニホールド部材を交換することにより、ガス導入路の詰りによって生じる問題を容易に解決することができる。また、ガス導入路によってガスを内部空間の長手方向の一端側から他端側へ導いているため、ガス導入路を流れるガスが加熱機構によって比較的長い時間加熱されるようになる。これにより、例えば、外部から取り込まれるサンプルガス及びパージガスに温度差が大きい場合であっても、ガス導入路を通過して内部空間に至る間に同様の温度に調整される。これにより、パージ動作後の温度の立ち上がり期間を短くすることができ、迅速に測定を行うことができるようになる。ガス導入路の外部へ連通する一端が異なる位置に設けられたマニホールド部材を用意することにより、光学セルに接続される各機器の配管を考慮してマニホールド部材を変更することができる。これにより、当該配管の取り回しが容易となる。
【0011】
また、内部空間の一部にガスが滞留することを抑制したい場合には、内部空間へガスを導入する導入位置及び内部空間からガスを導出する導出位置を、互いに離間した状態にすればよい。
【0012】
具体的には、前記セル本体が、長手方向に離間して配置された対をなす貫通孔を有し、前記マニホールド部材が、外部から取り込んだ前記ガスを前記一方の貫通孔を介して前記内部空間へ導入する前記ガス導入路を有すると共に、前記内部空間に導入された前記ガスを前記他方の貫通孔を介して外部へ導出するガス導出路をさらに有するようにしてもよい。
【0013】
また、前記ガス導出路及び前記ガス導入路が、前記マニホールド部材の長手方向のいずれか一方側に前記外部へ連通する一端を有しているものであってもよい。
【0014】
このようなものであれば、ガス導入路及びガス導出路の外部へ連通する一端がマニホールド部材の一箇所に集約して配置することができる。これにより、光学セルに接続される各機器からの配管の取り回しが容易となる。
【0015】
また、サンプルガス及びパージガスを別のガス導入路としてもよい。具体的には、前記マニホールド部材には、前記一方のセル要素が、前記ガス導入路を二つ有し、一方がサンプルガスを導くサンプルガス導入路であり、他方がパージガスを導くパージガス導入路であり、前記加熱機構が、前記サンプルガス導入路及び前記パージガス導入路を加熱するものであってもよい。
【0016】
この場合、前記パージガス導入路が、その途中で二つの分岐路に分岐し、前記一方の分岐路が、前記パージガスを前記内部空間の長手方向のいずれか一端側へ導入し、前記他方の分岐路が、前記パージガスを前記内部空間の長手方向の他端側へ導入するものであってもよい。
【0017】
このようなものであれば、内部空間に対し、その内部空間の長手方向に離間した位置からパージガスを導入することができる。これにより、内部空間全体が満遍なくパージされる。
【0018】
また、前記セル本体に接続された前記マニホールド部材を、当該セル本体の外面と直交し、かつ、前記対をなす貫通孔を結ぶ直線の中心を通る軸線を回転軸として180°回転させた場合に、その回転前後において前記ガス導入路に連通する前記貫通孔と前記ガス導出路に連通する前記貫通孔とが入れ替わるように構成されているものであってもよい。
【0019】
このようなものであれば、マニホールド部材を180°回転してもセル本体と接続することができるようになる。これにより、ガス導入路及びガス導出路の外部と連通する一端(各ポート)の位置を入れ替えることができるようになり、光学セルと各機器との配管の自由度が増す。
【0020】
この種のガス分析装置においては、内部空間に対する各種ガスの導入位置がサンプルガスの測定精度に影響を与える。すなわち、例えば、内部空間に対するパージガスの導入位置が不適切な場合には、内部空間のサンプルガスによる汚れが十分にパージされなくなり、その後のサンプルガスの測定精度に悪影響を及ぼす。また、内部空間に対するサンプルガスの導入位置が不適切な場合には、内部空間の一部にサンプルガスが滞留し、これが原因となってサンプルガスの測定精度に悪影響を及ぼす。
【0021】
そこで、本発明に係る光学セルのように、ガスが導入される内部空間を有する光学セルであって、前記内部空間を形成する少なくとも二つのセル要素と、前記二つのセル要素のうちで一方のセル要素を加熱する加熱機構とを備え、前記一方のセル要素が、長手方向に沿って延びており、外部から取り込んだ前記ガスを前記長手方向の一方側から他方側へ導いた後に前記内部空間へ導入するガス導入路を有するようにしてもよい。
【0022】
このようなものであれば、一方のセル要素を交換することにより、内部空間に対するガスの導入位置を容易に変更することができる。
【0023】
また、この場合、前記一方のセル要素が、前記内部空間に導入された前記ガスを前記外部へ導出するガス導出路をさらに有し、前記ガス導入路及び前記ガス導出路の前記内部空間へ連通する一端が、前記一方のセル要素の長手方向に離間して配置してもよい。
【0024】
また、本発明に係るガス分析装置は、前記いずれかに記載の光学セルと、前記光学セルの前記内部空間へ向けて光を射出する光源と、前記内部空間から出射した光を検出する光検出器と、前記光検出器で検出された光強度信号に基づいて前記ガスを分析する情報処理装置とを備えるものである。
【発明の効果】
【0025】
このように構成した光学セルによれば、内部空間に対する各種ガスの導入位置を容易に変更することができ、また、内部空間に対して導入される各種ガスの温度差を比較的小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1に係るガス分析装置の全体構成を示す模式図である。
図2】同実施形態に係るガス分析装置の光学セルを模式的に示す断面図である。
図3】同実施形態に係るガス分析装置の光学セルを模式的に示すA-A断面図である。
図4】同実施形態に係るガス分析装置の光学セルを模式的に示す平面図である。
図5】実施形態2に係る光学セルを模式的に示す分解斜視図である。
図6】その他の実施形態に係る一方のセル要素及び他方のセル要素を示す模式図である。
図7】その他の実施形態に係る一方のセル要素を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係るガス分析装置を図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施形態のガス分析装置100は、例えば、内燃機関から排出される排ガス等の試料ガスをNDIR等の赤外分光法を用いて分析するものである。なお、本実施形態に係るガス分析装置は、排ガスの以外のガス(サンプルガス)を分析するために用いることもできる。
【0029】
<実施形態1> 本実施形態に係るガス分析装置100は、具体的には、図1に示すように、光源たる半導体レーザ10と、サンプルガスが導入されると共に、半導体レーザ10からの光を多重反射させる光学セル20と、光学セル20から射出した光を検出する光検出器30と、光検出器30により検出された光強度信号に基づいてサンプルガスに含まれる成分を分析する情報処理装置40とを備えている。なお、本発明に係るガス分析装置100は、光学セル20が特徴的であるので、まずはそれ以外の各部について説明する。
【0030】
前記半導体レーザ10は、ここでは半導体レーザ10の一種である量子カスケードレーザ(QCL: Quantum Cascade Laser)であり、中赤外(4μm~10μm)のレーザ光を発振する。この半導体レーザ10は、与えられた電流(又は電圧)によって、発振波長を変調(変える)ことが可能なものである。なお、発振波長が可変でさえあれば、他のタイプのレーザを用いてよく、発振波長を変化させるために、温度を変化させるなどしてもよい。
【0031】
前記光検出器30は、ここでは、比較的安価なサーモパイルなどの熱型のものを用いているが、その他のタイプのもの、例えば、応答性がよいHgCdTe、InGaAs、InAsSb、PbSeなどの量子型光電素子を用いても構わない。
【0032】
前記情報処理装置40は、バッファ、増幅器などからなるアナログ電気回路と、CPU、メモリなどからなるデジタル電気回路と、それらアナログ/デジタル電気回路間を仲立ちするADコンバータ、DAコンバータなどとを具備したものであり、前記メモリの所定領域に格納した所定のプログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することによって、前記光検出器30からの出力信号を受信し、その値を演算処理して測定対象成分の濃度を算出する機能を発揮する。
【0033】
次に、本実施形態に係るガス分析装置100の特徴である光学セル20について詳述する。
【0034】
前記光学セル20は、図2及び図3に示すように、ガスが導入される内部空間Sを有する長尺状のものであり、所謂多重反射セルである。なお、本実施形態の光学セル20は、内部空間を有する略直方体状の筐体である。そして、光学セル20は、内部空間Sを形成する二つのセル要素21,22と、前記二つのセル要素21,22のうちで一方のセル要素21に設けられる加熱機構23と、他方のセル要素22に設けられる三つの反射部材24と、を備えている。なお、以下においては、説明の便宜上、光学セル20の長手方向を前後方向、光学セル20の長手方向に直交する方向を左右方向、光学セル20の前後方向及び左右方向に直交する方向を上下方向と言う。
【0035】
前記二つのセル要素21,22は、光学セル20の外形を形成するものであり、互いに分離可能になっている。なお、本実施形態の光学セル20は、略直方体状の筐体であり、この筐体を構成する前側壁20a、後側壁20b、左側壁20c、右側壁20d、上側壁20e及び下側壁20fが、いずれかのセル要素21,22によって形成される。
【0036】
具体的には、図3及び図4に示すように、前記一方のセル要素21は、筐体を構成する長手方向に沿って延びる一つの側壁(上側壁20e)を形成している。よって、一方のセル要素21は、板状をなしている。
【0037】
前記一方のセル要素21には、外部から導入されたガスを内部空間Sへ導くガス導入路L1と、内部空間Sから導出されたガスを外部へ導くガス導出路L2と、が設けられている。本実施形態においては、サンプルガス及びパージガスを一つのガス導入路L1によって内部空間Sへ導入するようになっている。なお、ガス導入路L1によって内部空間Sへ校正ガス等の他のガスを導入することもできる。
【0038】
前記ガス導入路L1は、取込口L1aが一方のセル要素21の長手方向の一方側(一端側)に設けられており、排出口L1bが一方のセル要素21の長手方向の他方側(他端側)に設けられている。すなわち、ガス導入路L1は、取込口L1aから取り込んだガスを長手方向の一方側(一端側)から他方側(他端側)へ導いた後に排出口L1bから排出するように構成されている。別の言い方をすれば、ガス導入路L1は、取込口L1aから取り込んだガスを内部空間Sの長手方向の中央(図3中、二点鎖線にて示す)を跨ぐように導いた後に排出口L1bから排出するようになっている。
【0039】
本実施形態のガス導入路L1は、取込口L1aが一方のセル要素21の側面(左面21a)に設けられており、排出口L1bが一方のセル要素21の内部空間Sに臨む面(底面21f)に設けられている。なお、ガス導入路L1は、一方のセル要素32における左右方向(幅方向)の中央を長手方向に延びる経路を通っている。
【0040】
前記ガス導出路L2は、取込口L2a及び排出口L2bのいずれもが一方のセル要素21の長手方向の一方側に設けられている。これにより、一方のセル要素21において、ガス導入路L1の内部空間Sと連通する排出口L1b及びガス導出路L2の内部空間Sと連通する取込口L2aが長手方向に離間して配置された状態となる。すなわち、ガス導入路L1は、内部空間Sの長手方向の他方側へガスを導入し、ガス導出路L2は、内部空間Sの長手方向の一方側からガスを導出する。
【0041】
本実施形態のガス導出路L2は、取込口L2aが一方のセル要素21の内部空間Sに臨む面(底面21f)に設けられており、排出口L2bが一方のセル要素21の側面(左面21a)に設けられている。なお、ガス導出路L2は、一方のセル要素21における左右方向(幅方向)に延びる経路を通っている。
【0042】
そして、前記一方のセル要素21には、ガス導入路L1の取込口L1aと連通する導入ポートP1と、ガス導出路L2の排出口L2bと連通する導出ポートP2とがその側面(左面20a)から突出している。なお、導入ポートP1及び導出ポートP2は、一方のセル要素21の長手方向の一方側に並列させて配置されている。
【0043】
また、前記一方のセル要素21には、加熱機構23が設けられている。なお、加熱機構23は、ガス導入路L1を介して内部空間Sへ導入されるガスの温度を予め定められた設定値(分析時の内部空間Sの温度)に近づくように調節するものである。具体的には、加熱機構23は、一方のセル要素21の内部に差し込まれる一対のヒータ23a,23bである。そして、加熱機構23は、一方のセル要素21全体を加熱し、これにより、一方のセル要素21の内部を通過するガス導入路L1を流れるガスも加熱される。なお、加熱機構23は、他方のセル要素22に設けてもよい。これにより、光学セル20の内部空間Sに導入されたガスの温度変化を抑制することができる。
【0044】
ここで、前記ガス導入路L1の長さは、ガス導入路L1を通過するガスの通過時間と、ガス導入路L1を通過するガスの温度上昇値とに基づき設定される。具体的には、通過時間は、ガス導入路L1の取込口L1aから取り込まれたガスが排出口L1bへ達するまでの時間によって定まり、温度上昇値は、ガス導入路L1の取込口L1aから取り込まれるガスの温度と排出口L1bから排出されるガスの温度との差によって定まる。そして、加熱機構は、通過時間及び温度上昇値等に基づき加熱温度が設定される。因みに、温度上昇値は、ガス導入路L1の排出口L1bから排出されるガスの温度が前記設定値近傍になるように設定することが好ましい。
【0045】
前記他方のセル要素22は、筐体を構成する他の側壁、具体的には、前側壁20a、後側壁20b、左側壁20c、右側壁20d及び下側壁20fを形成している。よって、他方のセル要素22は、一方へ開口する筐状をなしている。そして、他方のセル要素22の開口を一方のセル要素21によって塞ぐことにより、内部空間Sが形成されるようになっている。なお、一方のセル要路21は、他方のセル要素22に対してネジ止めできるようになっている。
【0046】
前記他方のセル要素22には、図2に示すように、長手方向において対向する一対の側壁(前側壁20a及び後側壁20b)にそれぞれ反射部材24が設置されている。具体的には、対向する一対の側壁のうちで一方の側壁(前側壁20a)には、第1反射部材24aが設置されており、他方の側壁(後側壁20b)には、二つの第2反射部材24b,24cが設置されている。なお、第1反射部材24aと二つの第2反射部材24b、24cとは、互いに反射面を対向させており、二つの第2反射部材24b、24cは、反射面を第1反射部材24aへ向けるように内側へ傾斜している。
【0047】
また、前記他方のセル要素22には、第1反射部材24aが設置された一方の側壁(前側壁20a)に、光を内部空間Sへ入射させる入射窓W1及び光を内部空間Sから射出させる出射窓W2が設けられている。具体的には、入射窓W1及び出射窓W2は、第2反射部材24b,24cの配列方向に沿って第1反射部材24aを挟んだ位置に設けられている。
【0048】
本実施形態の光学セル20においては、入射窓W1から入射した光は、当該入射窓W1から視て遠い方の第2反射部材24cに入射するように構成されている。つまり、入射窓W1は、遠い方の第2反射部材24cを向くように傾斜して設けられている。一方、出射窓W2は、当該出射窓W2から視て遠い方の第2反射部材24bを向くように傾斜して設けられている。その他、入射窓W1は、近い方の第2反射部材24bを向いて設けられ、出射窓W2も、近い方の第2反射部材24cを向いて設けられたものであっても良い。これにより、入射窓W2から内部空間Sに入射した光は、三つの反射部材24の間で反射を繰り返した後、出射窓W2から出射するようになっている。
【0049】
<実施形態2> 本実施形態は、前記実施形態1に係るガス分析装置に使用される光学セルの変形例である。本実施形態に係る光学セル20は、図5に示すように、内部空間Sを形成するセル本体26と、セル本体26に分離可能に接続されるマニホールド部材27と、を備えている。なお、図示しないが、マニホールド部材27は、前記実施形態1の一方のセル要素21と同様に加熱機構を備えている。また、セル本体26は、所謂ヘリオットセルであり、内部空間Sに対向する一対の反射部材24を備えている。
【0050】
前記マニホールド部材27は、セル本体26の長手方向に延びる一つの外面26aに接続される長尺状のものである。本実施形態のマニホールド部材27には、セル本体26と対向する対向面27aに、セル本体26の外面26aに設けられた凹部26bと合致する凸部27bを有している。これにより、マニホールド部材27の凸部27bをセル本体26の凹部26bに嵌め込むことにより、セル本体26に対してマニホールド部材27が位置決めされる。
【0051】
また、前記マニホールド部材27には、外部から導入されたサンプルガスを内部空間Sへ導くサンプルガス導入路L1と、外部から導入されたパージガスを内部空間Sへ導くパージガス導入路L3と、内部空間Sから導出されたサンプルガス及びパージガスを外部へ導くガス導出路L2と、が設けられている。
【0052】
前記サンプルガス導入路L1は、取込口L1aがマニホールド部材27の長手方向の一方側に設けられており、排出口L1bがマニホールド部材27の長手方向の他方側に設けられている。すなわち、サンプルガス導入路L1は、取込口L1aから取り込んだガスを長手方向の一方側から他方側へ導いた後に排出口L1bから排出するように構成されている。
【0053】
前記パージガス導入路L3は、取込口L3aがマニホールド部材27の長手方向の一方側に設けられており、排出口L3bがマニホールド部材27の長手方向の一方側及び他方側の両側に設けられている。すなわち、パージガス導入路L3は、その途中で二つの分岐路L3x,L3yに分岐している。そして、一方の分岐路L3xが、マニホールド部材27の長手方向の一方側へ延びており、他方の分岐路L3yが、マニホールド部材27の長手方向の他方側へ延びている。なお、パージガス導入路L3は、サンプルガス導入路L1と並列して延びている。
【0054】
前記ガス導出路L2は、取込口L2a及び排出口L2bのいずれもがマニホールド部材27の長手方向の一方側に設けられている。これにより、マニホールド部材27において、サンプルガス導入路L1の内部空間Sと連通する排出口L1b及びガス導出路L2の内部空間Sと連通する取込口L2aが長手方向に離間して配置された状態となる。
【0055】
また、前記セル本体26の外面26aには、サンプルガス導入路L1の排出口L1bに対応する貫通孔H1と、パージガス導入路L3の二つの排出口L3bに対応する二つ貫通孔H3と、ガス導出路L2の取込口L2aに対応する貫通孔H2と、が設けられている。なお、貫通孔H1及び一方の貫通孔H3は、セル本体26における内部空間Sの長手方向の一方側へ貫通しており、貫通孔H2及び他方の貫通孔H3は、セル本体における内部空間Sの長手方向の他方側へ貫通している。
【0056】
そして、セル本体26にマニホールド部材27を接続した状態において、サンプルガス導入路L1と貫通孔H1とが連通し、パージガス導入路L3と二つの貫通孔H3とが連通し、ガス導出路L2と貫通孔H2とが連通するようになっている。
【0057】
なお、本実施形態においては、セル本体26に接続されたマニホールド部材27を、セル本体26の外面(マニホールド部材27の対向面27a)と直交し、かつ、対をなす貫通孔(貫通孔H1と貫通孔H2、又は、両貫通孔H3,H3)を結ぶ直線(図5中、一点鎖線にて示す。)の中心Xを通る軸線Yを回転軸として180°回転させた場合に、その回転前後においてサンプルガス導入路L1に連通する貫通孔H1とガス導出路L2に連通する貫通孔H2とが入れ替わると共に、パージガス導入路L3の一方の分岐路L3xに連通する貫通孔H3とパージガス導入路L3の他方の分岐路L3yに連通する貫通孔H3とが入れ替わる。これにより、セル本体26に対してマニホールド部材27を接続する場合に、マニホールド部材27に設置された各ポートP1~P3をセル本体26の長手方向に対していずれの位置(一方側又は他方側)に配置するか選択できるようになり、光学セル100の各機器との接続に自由度が増す。なお、対をなす貫通孔(貫通孔H1と貫通孔H2、又は、両貫通孔H3,H3)を結ぶ直線は、その中心Xが互いに重なっている。
【0058】
<その他の実施形態> 前記実施形態1及び2においては、一方のセル要素21を一つの側壁(上側壁20e)によって構成し、他方のセル要素22を他の五つの側壁(前側壁20a、後側壁20b、左側壁20c、右側壁20d及び下側壁20f)によって構成したが、これに限定されない。例えば、図6に示すように、一方のセル要素21を上側壁20e及び後側壁20bによって構成し、他方のセル要素22を他の四つの側壁(前側壁20a、左側壁20c、右側壁20d及び下側壁20f)によって構成したものであってもよい。この場合、光学セル20を、前記実施形態2の光学セル20と同様にヘリオットセルとすれば、一方のセル要素21に一方の反射部材を設け、他方のセル要素22に他方の反射部材を設けることになる。このように、一方のセル要素21は、少なくとも一つの長手方向に沿って延びる側壁を備える構成にすればよく、このような構成により、ガス導入路L1を長手方向に沿って延ばすことができ、ガス導入路L1を通過するガスの加熱機構による加熱区間を長くすることができる。
【0059】
また、前記実施形態1のガス導入路L1は、外部から取り込んだガスを一方のセル要素21の長手方向の一方側から他方側へ導いた後に内部空間Sへ導入する構成であればよい。よって、例えば、図7(a)に示すように、ガス導入路L1は、一方のセル要素21の長手方向の一方側に設けられた取込口L1aから取り込んだガスを蛇行させながら他方側へ導いた後、当該他方側に設けられた排出口L1bから内部空間Sへ導入する構成であってもよい。また、図7(b)に示すように、ガス導入路L1は、一方のセル要素21の長手方向の一方側に設けられた取込口L1aから他方側へ導き、再度一方側へ導いた後、一方側に設けられた排出口L1bから内部空間Sへ導入する構成であってもよい。このように、ガス導入路L1は、外部から取り込んだガスを一方のセル要素21の長手方向の一方側から他方側へ導く途中の経路や一方側から他方側へ導いた後の経路が特に限定されない。
【0060】
また、前記各実施形態においては、光学セル20の実施形態として多重反射セルを例示して説明したが、本発明に係る光学セル20は、光学セル20の一端側に光源10を設置し、光学セル20の他端側に光検出器30を設置し、光源10から出射した光を内部空間Sへ入射した後、その内部空間Sを往復することなく通過した光を光検出器30で検出する所謂ワンパスタイプのガス分析装置に対しても使用することもできる。
【0061】
また、前記実施形態1においては、光学セル20を二つのセル要素21,22によって構成しているが、三つ以上のセル要素によって構成してもよい。
【0062】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0063】
100 ガス分析装置
10 光源
20 光学セル
21 一方のセル要素
22 他方のセル要素
23 加熱機構
26 セル本体
26a 外面
27 マニホールド部材
H1~H3 貫通孔
L1 ガス導入路(サンプルガス導入路)
L2 ガス導出路
L3 パージガス導入路
30 光検出器
40 情報処理装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7