(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-26
(45)【発行日】2023-06-05
(54)【発明の名称】マスタ/スレーブ周波数ロックループ
(51)【国際特許分類】
H03L 7/22 20060101AFI20230529BHJP
H03L 7/14 20060101ALI20230529BHJP
【FI】
H03L7/22
H03L7/14 160
(21)【出願番号】P 2020531139
(86)(22)【出願日】2018-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018061736
(87)【国際公開番号】W WO2019125679
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-29
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016172
【氏名又は名称】アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED MICRO DEVICES INCORPORATED
(73)【特許権者】
【識別番号】508301087
【氏名又は名称】エーティーアイ・テクノロジーズ・ユーエルシー
【氏名又は名称原語表記】ATI TECHNOLOGIES ULC
【住所又は居所原語表記】One Commerce Valley Drive East, Markham, Ontario, L3T 7X6 Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100111615
【氏名又は名称】佐野 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ヴィー. コソノキー
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル ロジオノフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス シー. ウォン
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0365093(US,A1)
【文献】特開2003-023354(JP,A)
【文献】特開2013-157654(JP,A)
【文献】特開平09-172370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源電圧に接続され、第1発振信号を供給するように構成された第1発振回路であって、前記第1電源電圧は、
電圧レギュレータから供給される、第1発振回路と、
前記第1発振信号に接続され、ターゲット周波数の指標に接続され、第1周波数制御信号を供給して、前記第1発振信号の周波数を前記ターゲット周波数に制御するように構成された制御回路と、
第2電源電圧を受けるように接続され、第2周波数制御信号に応じた周波数を有する第2発振信号を供給するように構成された第2発振回路であって、前記第2周波数制御信号は、前記第1周波数制御信号に少なくとも部分的に基づいており、
前記第2周波数制御信号は、前記第1周波数制御信号に対するオフセットにさらに基づいており、前記第2発振信号の周波数は、前記第2電源電圧の電圧変化に応じる、第2発振回路と、を備える、
装置。
【請求項2】
前記第2発振回路は、
第3電源電圧に接続され、前記第2周波数制御信号に接続された第1遅延線であって、前記第1遅延線は第1遅延線出力信号を供給する、第1遅延線と、
前記第2電源電圧に接続され、前記第2周波数制御信号に接続された第2遅延線であって、前記第2遅延線は第2遅延線出力信号を供給する、第2遅延線と、
前記第1遅延線出力信号と前記第2遅延線出力信号との論理関係に従って前記第2発振信号を供給する論理回路と、をさらに備える、
請求項1の装置。
【請求項3】
前記第1発振回路は、
前記
第1電源電圧に接続され、前記第1周波数制御信号に接続された第3遅延線であって、前記第3遅延線は第3遅延線出力信号を供給する、第3遅延線と、
前記
第1電源電圧に接続され、前記第1周波数制御信号に結接続された第4遅延線であって、前記第4遅延線は第4遅延線出力信号を供給する、第4遅延線と、
前記第3遅延線出力信号と前記第4遅延線出力信号との論理関係に従って、前記第1発振信号を供給する第2論理回路と、をさらに備える、
請求項2の装置。
【請求項4】
前記第3電源電圧は、前記
第1電源電圧である、
請求項2の装置。
【請求項5】
前記第1周波数制御信号は、第1デジタル信号であり、前記オフセットは、第2デジタル信号であり、前記装置は、前記第2デジタル信号を、前記第1デジタル信号に加算又は前記第1デジタル信号から減算する加算回路をさらに備える、
請求項1~4の何れかの装置。
【請求項6】
前記第1発振回路は、前記
第1電源電圧における温度及び電圧の変動を追跡する、
請求項1~4の何れかの装置。
【請求項7】
前記第1発振信号と前記第2発振信号とから信号を選択するセレクタ回路をさらに備える、
請求項1~4の何れかの装置。
【請求項8】
第4電源電圧に接続され、第3周波数制御信号に接続され、前記第4電源電圧の変動に応じた周波数を有する第
3発振信号を供給するように構成された第3発振回路をさらに備え、
前記第3発振信号の周波数は、前記第3周波数制御信号に応じており、前記第3周波数制御信号は、前記第1周波数制御信号に少なくとも部分的に基づいている、
請求項1~4の何れかの装置。
【請求項9】
集積回路内のクロック信号を補償する方法であって、
第1電源電圧を受ける第1発振回路から第1発振信号を供給することと、
ターゲット周波数及び前記第1発振信号の周波数に基づいて、前記第1発振信号の周波数を制御する第1周波数制御信号を生成することと、
前記第1周波数制御信号とオフセット信号とを組み合わせて、第2周波数制御信号を生成することと、
前記第2周波数制御信号を、第2電源電圧を受け、第3電源電圧を受ける第2発振回路に供給するこ
とと、
前記第
2発振回路か
ら第2発振信号
を供給することであって、
前記第2発振信号の周波数は、前記第2周波数制御信号に少なくとも部分的に基づ
いている、ことと、
前記第2電源
電圧に関連する電圧変化に応じて、前記第2発振信号の周波数を調整することと、を含む、
方法。
【請求項10】
前記第2周波数制御信号及び前記第3電源電圧を、前記第2発振回路の第1遅延線に供給することと、
前記第1遅延線から第1遅延線出力信号を供給することと、
前記第2周波数制御信号及び前記第2電源電圧を、前記第2発振回路の第2遅延線に供給することと、
前記第2遅延線から第2遅延線出力信号を供給することと、
前記第1遅延線出力信号及び前記第2遅延線出力信号を論理回路に供給することと、
前記第1遅延線出力信号と前記第2遅延線出力信号との論理関係に従って、前記論理回路から前記第2発振信号を供給することと、をさらに含む、
請求項9の方法。
【請求項11】
前記第1電源電圧は、
電圧レギュレータから供給され、
前記第1電源電圧は、ノイズを含む電源電圧である前記第2電源電圧
よりもクリーンである、
請求項9の方法。
【請求項12】
前記第3電源電圧は、
前記第1電源電圧である、
請求項9~11の何れかの方法。
【請求項13】
前記第2発振回路が、前記第2電源電圧の電圧変動を追跡して前記第2発振信号を生成することと、
前記第1発振回路が、温度変動と、前記第1電源電圧の電圧変動と、を追跡することと、をさらに含む、
請求項9~11の何れかの方法。
【請求項14】
セレクタ回路において、前記第1発振信号及び前記第2発振信号のうち何れかを選択することをさらに含む、
請求項9~11の何れかの方法。
【請求項15】
第4電源電圧及び第5電源電圧を第3発振回路に供給することと、
前記第1周波数制御信号と第2オフセット信号とを組み合わせて第3周波数制御信号を生成することと、
前記第3周波数制御信号を前記第3発振回路に供給して、第3発振信号の周波数を少なくとも部分的に制御することと、
前記第4電源電圧の変動に応じて、前記第3発振信号の周波数を調整することと、をさらに含む、
請求項9~11の何れかの方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
集積回路は、クロック信号を利用して、集積回路を通るデータの流れを同期させる。データの流れは、厳密なタイミングに従い、クロック信号のタイミングは、供給電圧の変動によって変化する場合がある。ノイズは、集積回路の電源供給に影響を及ぼし、ノイズによって電圧が公称電圧レベルを超えたり(オーバーシュート)、又は、下回ったり(ドループ)するように変動し得る。ノイズは、クロック信号に関連するタイミングマージンに悪影響を及ぼす可能性がある。ノイズは、決定論的ノイズ源(deterministic noise sources)及びランダムノイズ源によって引き起こされ得る。現在の高速集積回路(例えば、グラフィックス処理ユニット(GPU)又は中央処理装置(CPU)等)は、電圧ドループに応じてクロック周波数を下げて、データ信号が送り側から送り先に到達するまでの時間を長くすることによって、電源ライン上のノイズを補償する。余分なタイミングマージンを付加するこのようなアダプティブクロッキングアプローチがないと、電圧ドループを受けて障害が発生する可能性がある。
【0002】
従来のアダプティブクロッキングアプローチは、遅延ロックループ(DLL)又は周波数ロックループ(FLL)を利用して、システムクロックを生成しながら、集積回路コンポーネントに供給されるクロック信号の周波数をロックする。これにより、(DLL又はFLLを用いる)アダプティブクロックシステム内の回路は、平均ノイズ電圧(average noisy voltage)及び平均クロック周波数にロックして、電力供給応答及び応用特性(application characteristics)に依存するために不確実性が生じる。特に、アダプティブクロックシステムは、温度変動又は低周波電圧変動に起因して存在し得る低周波ノイズにロックすることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって、本明細書の実施形態は、周波数ロックループ(FLL)のマスタ/スレーブ構成を利用して、ループをロックするプロセス、ターゲット電圧、温度(PVT)追跡目標を、電源電圧の電圧ドループ又は電圧オーバーシュートに応じてクロック周波数を適応させることから切り離す。
【0004】
したがって、一実施形態では、装置は、第1電源電圧に接続され、第1発振信号を供給するように構成された第1発振回路を含む。第1電源電圧は、調整された電源電圧である。制御回路は、第1発振信号を受信し、ターゲット周波数の指標を受信するように接続されており、第1周波数制御信号を供給して、第1発振信号の周波数をターゲット周波数に制御するように構成されている。第2発振回路は、第2電源電圧を受けるように接続されており、第2周波数制御信号に応じた周波数を有する第2発振信号を供給するように構成されている。第2周波数制御信号は、第1周波数制御信号に少なくとも部分的に基づいている。第2発振信号の周波数は、第2電源電圧の電圧変化にさらに応じる。
【0005】
別の実施形態では、集積回路内のクロック信号を補償する方法は、第1電源電圧を受ける第1発振回路から第1発振信号を供給することを含む。方法は、ターゲット周波数及び第1発振信号の周波数に基づいて、第1発振信号の周波数を制御する第1周波数制御信号を生成することを含む。方法は、第2周波数制御信号を、第2電源電圧を受け、第3電源電圧を受ける第2発振回路に供給することを含む。第2周波数制御信号は、第1制御信号に少なくとも部分的に基づいている。第2発振回路は、第2周波数制御信号に基づく第2発振信号の周波数を有する第2発振信号を供給する。また、第2発振回路は、第2電源電圧に関連する電圧変化に応じて、第2発振信号の周波数を調整する。
【0006】
別の実施形態では、装置は、調整された電源電圧に接続されたマスタ発振回路を含む。マスタ発振回路は、マスタ発振信号を供給するように構成されている。制御回路は、マスタ発振信号に接続されており、マスタ周波数制御信号を供給して、マスタ発振信号の周波数をターゲット周波数に制御するように構成されている。スレーブ発振回路は、マスタ発振回路に供給される調整された電源電圧と同じであってもよいし、別々に調整されてもよい調整された電源電圧に接続されている。スレーブ発振回路は、ノイズ又はドループ電源電圧を受け、マスタ周波数制御信号と、マスタ周波数制御周波数へのオフセットとに基づくスレーブ周波数制御信号に応じた周波数を有するスレーブ発振信号を供給するように構成されている。ノイズ又はドループを電源電圧は、調整された電源電圧よりも高周波の電圧ドループ又は電圧オーバーシュートを有する。第2発振信号の周波数は、ノイズ又はドループ電源電圧の電圧変化に応じる。
【0007】
本発明は、添付の図面を参照することによってより良く理解され、その多くの目的、特徴及び利点が当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】マスタ発振器及びスレーブ発振器を含む例示的なシステムを示す図である。
【
図2】スレーブ発振器の実施形態のハイレベルブロック図である。
【
図3】スレーブ発振器のC素子の動作を示すタイミング図である。
【
図4】スレーブ発振器の実施形態の更なる詳細を示すハイレベルブロック図である。
【
図5】マスタ発振器が複数のスレーブ発振器を制御する実施形態のハイレベルブロック図である。
【
図6】スレーブ発振器のオフセットを生成するための制御構造の実施形態を示す図である。
【
図7】制御ループによって実効周波数を追跡し、ターゲット周波数に近づくように調整する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
異なる図面で同じ符号を使用する場合には、類似又は同一の要素を示す。
【0010】
図1を参照すると、例示的なシステムは、マスタ発振器101と、スレーブ発振器103と、を含む。図示した実施形態では、マスタ発振器及びスレーブ発振器の両方は、デジタル制御発振器(DCO)である。マスタ発振器101及びループ制御ロジック104を含む周波数ロックループ(FLL)は、マスタ発振器101に関連する電圧変化及び温度変化に起因する周波数変化を追跡する。ループ制御ロジック104は、周波数制御ワード(FCWM)105をマスタ発振器に供給する。マスタ発振器101は、調整された電圧112をレギュレータ107から受け取る。これにより、マスタDCO101が受け取る電圧は、スレーブ発振器103が受け取るノイズ又はドループVDD電圧111よりもかなり「クリーン」であることが保証される。ノイズ/ドループ電圧は、例えば、プロセッサコアによって利用される電圧であってもよい。スレーブ発振器103は、マスタ発振器制御信号を利用して周波数を制御し、スレーブ発振器出力109を、本明細書でさらに説明するように、ドループ電圧111の変動に適応させる。
【0011】
スレーブ発振器103は、マスタ周波数制御ワードFCWMに基づくスレーブ周波数制御ワード(FCWS)115を、加算回路114から受信する。加算回路114は、オフセットをFCWMに追加して、スレーブ周波数制御ワードFCWS115を生成することができる。オフセットは0の値を有してもよく、この場合、スレーブ発振器は、変更されていないFCWMを受信する。実施形態では、スレーブ発振器及びマスタ発振器が物理的に近接して配置されているため、マスタ発振器に影響を及ぼすPVT変動は、スレーブ発振器にも影響を与える。マスタ発振器及びスレーブ発振器は、
図1の実施形態に示すようにデジタル制御発振器であってもよいが、他の実施形態では、発振器は電圧制御発振器又は電流制御発振器であってもよい。制御信号FCWM,FCWSは、DCOの周波数を制御するためのマルチビットデジタル信号であってもよい。他の実施形態では、FCWM及びFCWSは、発振器のアナログ制御のための電圧信号又は電流信号である。アナログの実施形態では、加算回路114は、電圧又は電流の加算又は減算を行うように実装される。
【0012】
ループ制御ロジック104は、既知の周波数を有する基準クロック121を受信する。図示した実施形態では、基準クロックは、分周器123で分周されてもよい。カウンタ125は、所定の基準クロック周期数をカウントして、マスタ発振器クロック信号127のためのサンプリングウィンドウを提供する。カウンタ129は、サンプリングウィンドウ中に、マスタ発振器クロック信号(又は、分周されたバージョン)をカウントする。図示した実施形態では、分周器131は、マスタ発振器クロック信号127を分周する。比例積分(PI)コントローラ133は、分周されたマスタ発振器クロック信号周期数のカウントを、サンプリングウィンドウを通して受信し、サンプリングされたカウント値をターゲットカウント値135と比較する。このターゲットカウント値は、マスタ発振器クロック信号127のターゲット周波数を表す。図示した実施形態はPIコントローラ133を利用するが、他の制御アプローチを他の実施形態で利用してもよい。制御ロジック104は、マイクロコントローラ又は他の制御ロジックに実装されてもよい。制御ループは、電圧及び温度の変化に起因する低周波の変化を追跡し、特定のダイに関連するプロセス変動を補償する。これにより、スレーブ発振器103を低周波のPVT変動から分離し、集積回路の電圧ドメインに供給されるノイズ電圧で発生する高周波の電圧ドループ又は電圧オーバーシュートに応答できるようになる。
【0013】
図1は、別々のレギュレータブロック107,108を示しているが、実施形態は、単一のレギュレータを利用して、調整された電圧をマスタ及びスレーブ発振器101,103に供給してもよく、この場合、調整された電圧112,113は同じ電圧である。セレクタ回路141は、マスタ発振器出力信号127及びスレーブ発振器出力信号109を受信する。セレクタ回路は、テスト目的で、セレクタ回路141から出力されるマスタ発振信号を選択してもよい。アダプティブクロック発生器が遮断された電源電圧上にあり、他のロジックが依然としてクロックを必要とする場合には、マスタ発振器からのクロック信号が動作上選択され得る。
【0014】
図2は、電圧ドループに応じてシステムクロックを遅くし、電圧オーバーシュートに応じて周波数を制限するアダプティブ発振器として機能する例示的なスレーブ発振器103のハイレベルブロック図である。アダプティブスレーブ発振器103は、調整された電圧VDD113で動作する基準遅延線201と、ノイズ/ドループ電圧111で動作するドループ遅延線(droopy delay line)203と、を含む。遅延線201に供給される電圧は「クリーン」であり、クロック信号Aは、クロック信号Bよりも安定しているべきである。遅延線203は、ドループ電圧と共に周波数が変化するクロック信号Bを出力する。ドループ電圧111が降下すると遅延線が遅くなり、ドループ電圧が増加すると遅延線が速くなる。インバータ207は、第5インバータを構成しており、遅延線201,203の各々を発振器として確実に機能させることに留意されたい。
【0015】
図3に示すように、C素子ロジック205は、301において入力A及び入力Bの両方がハイである場合に、論理ハイの出力信号Cを出力する。C素子ロジック205は、303において入力A及び入力Bの両方がローになるまで出力信号Cをハイに保つ。出力Cが論理ローになると、305において両方の入力が再びハイになるまで、C素子は、出力Cをローに維持する。
図3に示すように、クロック信号Aがクロック信号Bよりも先行する場合、クロック信号Cは、クロック信号Bと同じある。クロック信号Bがクロック信号Aよりも先行する場合、クロック信号Cは、クロック信号Aと同じである。したがって、C素子ロジック205は、307において入力A及び入力Bの両方がハイである場合、論理ハイの出力信号Cを出力し、309において両方の入力がローになるまで出力Cをハイに保つ。出力Cが論理ローになると、C素子は、311において両方の入力が再びハイになるまで出力Cをローに維持する。言い換えれば、ロジック205は、出力する最新のパルスを選択する。
【0016】
図4は、アダプティブスレーブ発振器103の実施形態のさらに詳細な図である。この実施形態は、調整された電圧402を受け取る基準遅延線401と、ドループ電圧404を受け取るドループ遅延線403と、を含む。各遅延線は、オン又はオフになり得るいくつかの遅延素子の行を有する。オンになっている行が多いほど、遅延素子の動作が速くなる。一実施形態では、遅延線401,403は、256行を有する。他の実施形態は、他の数の行を有してもよい。実施形態は、
図4に示すトライステートインバータ、バッファ又は他の形式の遅延素子を使用してもよい。さらに、シングルエンドの実施形態が示されているが、他の実施形態は、差動遅延線を利用してもよい。
【0017】
周波数制御ワード(FCW)405は、各遅延線の何行が有効にされるか、したがって各遅延線の出力周波数を選択する。図示した実施形態では、バイアス設定407は、各遅延線の可変コンデンサを制御する。さらに、必要に応じて、オフセット値409を使用して、基準遅延線401に供給されるFCW405を調整してもよい。ドループ遅延線403は、ドループ遅延線403に供給されるFCW405を調整するために使用することができるオフセット値411を受信する。基準遅延線及びドループ遅延線のオフセットロジックは、説明を容易にするために示していない。
図4に示す実施形態は、電圧ドループ等の高周波ノイズを効果的に処理するが、低周波ノイズに対してはうまく機能しない。実際、
図4の回路は、低周波ノイズにロックし、ノイズを補償できない場合がある。マスタ発振器制御ループ(
図1を参照)を利用すると、システム内の低周波ノイズをより効果的に補償することができる。
【0018】
一実施形態では、マスタ発振器101(
図1)は、
図4に示すような2つの遅延線を含む。しかしながら、1つの遅延線が調整された電圧供給を受け、1つの遅延線がドループ電圧供給を受けるのではなく、各遅延線が調整された電圧供給を受ける。したがって、そのような実施形態では、C素子出力は、マスタ発振器の両方の遅延線を反映する。
【0019】
図1を再度参照すると、加算回路114は、マスタ周波数制御ワードFCWM及びオフセット計算ロジック137で生成されたオフセット値136からスレーブ制御ワードFCWS115を形成する。オフセット計算ロジックは、入力139,140を受信し、これらの入力により、オフセット計算ロジックが、加算回路114に供給されるオフセット値136を増減させて、FCWM105がスレーブ発振器103に供給される前にFCWMを増減させる。オフセット値136は0であってもよく、この場合、スレーブ発振器は、変更なしにマスタ周波数制御ワード105を使用する。特定の状況(例えば、検出された電流偏位(例えば、電流オーバーシュート又は電流アンダーシュート))において、オフセット計算ロジック137は、強制信号139を受信し、電流偏位の方向に応じてマスタ周波数制御ワードからオフセットを加算又は減算することによって、スレーブ発振器によって供給される周波数を調整する。他の状況では、オフセットが0以外になる場合がある。例えば、2つの独立したクロックドメインが集積回路で動作しており、スレーブDCO103によって供給されるドメインが、他のクロックドメイン内のFIFOのオーバーランを回避するために減速する必要がある場合がある。また、様々な電力管理結果に影響を与えて、スレーブ発振器から供給されるクロック周波数を高速化又は低減するために、オフセットを使用してもよい。図示した実施形態では、オフセット計算ロジック137は、適切なオフセット量の決定を助けるために、マスタ周波数制御ワード105を受信する。別々に示されているが、加算回路114及びオフセット計算ロジック137を組み合わせて、変更されたFCWMをFCWSとして供給してもよい。一実施形態では、スレーブ発振器103は、2つのオフセット計算ブロック137(1つのみ示されている)と、2つの加算回路114(1つのみ示されている)と、を有する。一方のオフセット計算ブロック及び加算回路は、基準遅延線用(例えば、
図2及び
図4の201,401)であり、他方のオフセット計算ブロック及び加算回路は、ドループ遅延線用(例えば、
図2及び
図4の203,403を参照)である。これにより、スレーブ基準の周波数と、マスタ周波数制御ワードによって別の方法で制御されるドループ遅延線の周波数と、を独立して調整することができる。
【0020】
図5は、マスタ発振器501が2つのスレーブ発振器503,505を制御する実施形態を示す図である。スレーブ発振器503は、加算回路507を介してマスタ周波数制御ワード(FCWM)を受信し、スレーブ発振器505は、加算回路509を介してマスタ周波数制御ワード(FCWM)を受信する。スレーブ発振器503は、ドループ電圧VDD(0)を受け取り、スレーブ発振器505は、ドループ電圧VDD(1)を受け取る。VDD(0)及びVDD(1)は、共通の入力電圧レールから生じ得るが、個別に制御された電圧ドメイン及びクロックドメインで使用され得る。例えば、一方の電圧ドメインはオフにされ、他方の電圧ドメインは電力が供給されたままであってもよい。2つのスレーブ発振器は、異なる基準電圧を受け取る場合がある。個別のオフセット計算ブロック511,515は、2つのスレーブ発振器の周波数制御ワードFCWS0,FCWS1に必要な任意のオフセットを個別に決定する。
【0021】
図6及び
図7は、ストレッチ量(Stretch Amount)を決定して、オフセット計算ロジック137(
図1)に供給する方法の例を示す図である。制御ループ104に加えて、クロックロジックは、所定期間に亘るスレーブ発振器の実効周波数を決定するためのロジックを含んでもよい。スレーブ発振器出力信号601及び既知の基準クロック信号603は、実効周波数計算ロジック605に供給される。実効周波数計算ロジックは、実効周波数を決定するために、所定数の基準クロックサイクルに亘って生じるスレーブ発振器クロックサイクルの数をカウントする。基準クロックサイクルの数は、所定期間(例えば、10ms)に対応する。マイクロコントローラ607は、比例積分微分(PID)、PI制御ループ、又は、実効周波数を制御するための他の形式の制御を動作させてもよい。
【0022】
図7を参照すると、制御ロジックは、最大周波数Fmax701を設定する。曲線703は、実際の周波数を表す。図に示すように、実際の周波数は、最大周波数によって制限されている。コントローラは、周波数制御ワードを減らし、スレーブ発振器を遅くすることによって周波数を制限するために、オフセット計算ロジック137へのストレッチ量入力140(
図1参照)を使用して、周波数が最大周波数に確実に制限されるようにしてもよい。ターゲット周波数は、705として示されている。実効周波数707が時間の経過と共にターゲット周波数705よりも極端に低くなる場合には、
図7に示すように、ストレッチ量入力140を使用してスレーブ発振器の周波数を増加させ、時間の経過と共に実効周波数を増加させてターゲット周波数に近づけることができる。実効周波数がターゲット周波数より高い場合には、スレーブ発振器周波数を下げるようにマスタ周波数制御ワードを調整するために、オフセット計算ロジックを使用して実効周波数を下げることができる。マスタ周波数制御ワードに適用されるオフセットを介して周波数を制御することに加えて、コントローラは、実効周波数がターゲット値を超えるか又はターゲット値未満であるかに応じて、VDDを増加又は減少させることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、回路及び物理構造が一般的に想定されているが、現代の半導体設計及び製造では、物理構造及び回路は、後続の設計、試験又は製造の段階での使用に適したコンピュータ可読記述形態で具現化され得ることが十分に認識されている。例示的な構成において個別のコンポーネントとして提示された構造及び機能は、組み合わされた構造又はコンポーネントとして実装されてもよい。実施形態は、回路と、回路システムと、関連する方法と、かかる回路、システム及び方法の非一時的なコンピュータ可読媒体の符号化とを含むことが考えられ、これらは全て本明細書に記載され、添付の特許請求の範囲に定義される。本明細書で使用する場合、非一時的なコンピュータ可読媒体は、少なくともディスク、テープ、他の磁気媒体、光学媒体、半導体媒体(例えば、フラッシュメモリカード、ROM)又は電子媒体を含む。
【0024】
よって、ターゲット電圧及びターゲット温度に関する追跡目標を、電源電圧の高周波電圧変動に応じてクロック周波数を適応させることから切り離す実施形態を説明した。本明細書に記載した説明は例示的なものであり、以下の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示される実施形態の他の変形及び修正は、以下の特許請求の範囲に記載された範囲から逸脱することなく、本明細書に記載した説明に基づいて実施されてもよい。