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特許7287596電子回路装置およびその製造方法、ならびに電子回路装置の試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】電子回路装置およびその製造方法、ならびに電子回路装置の試験方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20230530BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20230530BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230530BHJP
   H01M 50/284 20210101ALN20230530BHJP
   H01M 50/569 20210101ALN20230530BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALN20230530BHJP
【FI】
H01M50/204 301
H01M50/204 101
H01M10/42 P
H01M10/04 Z
H01M50/284
H01M50/569
H01M10/0562
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019134418
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2021018935
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】緒方 敏洋
(72)【発明者】
【氏名】松延 明彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 恒平
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-197164(JP,A)
【文献】特開2015-204263(JP,A)
【文献】特表2010-519675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298
H01M50/50-50/598
H01M10/42-10/48
H01M10/00-10/04
H01M10/06-10/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面と、該実装面に連続し断面形状をコの字型とする壁部とを備えた実装基板と、
該実装基板の前記壁部の間の一方の表面に実装された全固体電池と、
該全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の分割引出配線からなる一組の分割引出配線が接続し、各分割引出配線は相互に電気的に分離されている少なくとも2組の分割引出配線と、
前記壁部間に充填され、前記全固体電池を被覆する封止樹脂と、
一組の前記分割引出配線のうち少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記実装基板の他方の表面に実装された電子部品と、
前記分割引出配線にそれぞれ接続し前記壁部表面に露出する外部引出電極と、
前記分割引出配線に接続する試験用コンタクト部と、を備えたことを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
列状に配置される電子回路装置の形成予定領域に凹部を備えた集合基板を用意する工程と、
前記集合基板上に、外部引出電極と、該外部引出電極と全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続し、相互に電気的に分離された分割引出配線と、該分割引出配線に接続する試験用コンタクト部とを形成する工程と、
前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の前記分割引出配線からなる一組の前記分割引出配線が接続するように、前記凹部内に全固体電池を実装する工程と、
前記凹部内に樹脂を注入し、前記全固体電池を樹脂封止する工程と、
前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続する一組の前記分割引出配線のうち、少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記集合基板の他方の面に電子部品を実装する工程と、
樹脂封止された前記全固体電池および前記電子部品を含み、前記集合基板の表面に前記外部引出電極および前記試験用コンタクト部が露出する各電子回路装置に個片化する工程と、を含むことを特徴とする電子回路装置の製造方法。
【請求項3】
列状に配置される電子回路装置の形成予定領域に凹部を備えた集合基板を用意する工程と、
前記集合基板上に、外部引出電極と、該外部引出電極と全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続し、相互に電気的に分離された分割引出配線と、該分割引出配線に接続する試験用コンタクト部とを形成する工程と、
前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の前記分割引出配線からなる一組の前記分割引出配線が接続するように、前記凹部内に前記全固体電池を実装する工程と、
未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、
前記凹部内に樹脂を注入し、前記全固体電池を樹脂封止する工程と、
前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続する一組の前記分割引出配線のうち、少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記集合基板の他方の面に電子部品を実装する工程と、
樹脂封止された前記全固体電池および前記電子部品を含み、前記集合基板の表面に前記外部引出電極および前記試験用コンタクト部が露出する各電子回路装置に個片化する工程と、を含むことを特徴とする電子回路装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の電子回路装置の製造方法において、
未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程を、前記凹部内に前記全固体電池を実装し、前記凹部内に樹脂を注入し、前記試験用コンタクト部が露出するように前記全固体電池を樹脂封止する工程の後に行うことを特徴とする電子回路装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載の電子回路装置の製造方法において、
未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程は、前記凹部内に前記全固体電池を実装し、前記凹部に樹脂を注入し、前記試験用コンタクト部が露出するように前記全固体電池を樹脂封止し、前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続する一組の前記分割引出配線のうち、少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記集合基板の他方の面に電子部品を実装した後、未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程であることを特徴とする電子回路装置の製造方法。
【請求項6】
実装面と、該実装面に連続し断面形状をコの字型とする壁部とを備えた実装基板と、該実装基板の前記壁部の間の一方の表面に実装された全固体電池と、該全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の分割引出配線からなる一組の分割引出配線が接続し、各分割引出配線は相互に電気的に分離されている少なくとも2組の分割引出配線と、前記壁部間に充填され、前記全固体電池を被覆する封止樹脂と、一組の前記分割引出配線のうち少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記実装基板の他方の表面に実装された電子部品と、前記分割引出配線にそれぞれ接続し前記壁部表面に露出する外部引出電極と、前記分割引出配線に接続する試験用コンタクト部と、を備えた電子回路装置の試験方法において、
未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、を含むことを特徴とする電子回路装置の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装基板に実装されている電子回路装置およびその製造方法、ならびに電子回路装置の試験方法に関し、特に気密状態の実装が求められる全固体電池が実装される電子回路装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器、腕時計型歩数計などのウェアラブル機器等では高機能化と小型化の要請が強く、これらの機器に搭載される電子回路装置は、小型化が求められている。
【0003】
電子回路装置を小型化するためには、実装基板に電子部品を高密度実装するのが好ましい。高密度実装された電子回路装置は種々提案されている(例えば、特許文献1等)。
【0004】
一方、実装基板に実装される電子部品の中には、大気中の水分等により特性が劣化するため、気密状態で実装する必要があることが知られている。例えば、全固体電池では、ガラス封止により気密状態を保つ方法が採用されている(特許文献2)。
【0005】
本願出願人は、簡便に全固体電池のような電子部品を気密構造に保つことができる電子回路装置を提案した(特願2019-71980号、特願2019-100087号)。
【0006】
ところで全固体電池は、電荷が蓄積した状態(充電された状態)で加熱されると全固体電池の内部の組成変化や変質等の劣化が生じることが知られている。一方、本願出願人が先に提案したこの種の全固体電池を備えた電子回路装置は、マザー基板等に実装する際には半田等を用いるため、リフロー加熱温度(240℃程度)に晒されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-76561号公報
【文献】特開2018-170297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種の電子回路装置では、実装時に加熱工程を避けることが難しい。そのため実装工程前には、全固体電池に電荷を蓄積させることなく電子回路装置の試験を行うことが望まれる。本発明はこのような実情に鑑み、全固体電池に電荷を蓄積させることなく、全固体電池の実装状態を確認することができる電子回路装置およびその製造方法、ならびに電子回路装置の試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る電子回路装置は、実装面と、該実装面に連続し断面形状をコの字型とする壁部とを備えた実装基板と、該実装基板の前記壁部の間の一方の表面に実装された全固体電池と、該全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の分割引出配線からなる一組の分割引出配線が接続し、各分割引出配線は相互に電気的に分離されている少なくとも2組の分割引出配線と、前記壁部間に充填され、前記全固体電池を被覆する封止樹脂と、一組の前記分割引出配線のうち少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記実装基板の他方の表面に実装された電子部品と、前記分割引出配線にそれぞれ接続し前記壁部表面に露出する外部引出電極と、前記分割引出配線に接続する試験用コンタクト部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本願請求項2に係る電子回路装置の製造方法は、列状に配置される電子回路装置の形成予定領域に凹部を備えた集合基板を用意する工程と、前記集合基板上に、外部引出電極と、該外部引出電極と全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続し、相互に電気的に分離された分割引出配線と、該分割引出配線に接続する試験用コンタクト部とを形成する工程と、前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の前記分割引出配線からなる一組の前記分割引出配線が接続するように、前記凹部内に全固体電池を実装する工程と、前記凹部内に樹脂を注入し、前記全固体電池を樹脂封止する工程と、前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続する一組の前記分割引出配線のうち、少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記集合基板の他方の面に電子部品を実装する工程と、樹脂封止された前記全固体電池および前記電子部品を含み、前記集合基板の表面に前記外部引出電極および前記試験用コンタクト部が露出する各電子回路装置に個片化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本願請求項3に係る電子回路装置の製造方法は、列状に配置される電子回路装置の形成予定領域に凹部を備えた集合基板を用意する工程と、前記集合基板上に、外部引出電極と、該外部引出電極と全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続し、相互に電気的に分離された分割引出配線と、該分割引出配線に接続する試験用コンタクト部とを形成する工程と、前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の前記分割引出配線からなる一組の前記分割引出配線が接続するように、前記凹部内に前記全固体電池を実装する工程と、未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、前記凹部内に樹脂を注入し、前記全固体電池を樹脂封止する工程と、前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続する一組の前記分割引出配線のうち、少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記集合基板の他方の面に電子部品を実装する工程と、樹脂封止された前記全固体電池および前記電子部品を含み、前記集合基板の表面に前記外部引出電極および前記試験用コンタクト部が露出する各電子回路装置に個片化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本願請求項4に係る電子回路装置の製造方法は、請求項3記載の電子回路装置の製造方法において、未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程を、前記凹部内に前記全固体電池を実装し、前記凹部内に樹脂を注入し、前記試験用コンタクト部が露出するように前記全固体電池を樹脂封止する工程の後に行うことを特徴とする。
【0013】
本願請求項5に係る電子回路装置の製造方法は、請求項3記載の電子回路装置の製造方法において、未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程は、前記凹部内に前記全固体電池を実装し、前記凹部に樹脂を注入し、前記試験用コンタクト部が露出するように前記全固体電池を樹脂封止し、前記全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続する一組の前記分割引出配線のうち、少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記集合基板の他方の面に電子部品を実装した後、未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程であることを特徴とする。
【0014】
本願請求項6に係る電子回路装置の試験方法は、実装面と、該実装面に連続し断面形状をコの字型とする壁部とを備えた実装基板と、該実装基板の前記壁部の間の一方の表面に実装された全固体電池と、該全固体電池の2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ複数の分割引出配線からなる一組の分割引出配線が接続し、各分割引出配線は相互に電気的に分離されている少なくとも2組の分割引出配線と、前記壁部間に充填され、前記全固体電池を被覆する封止樹脂と、一組の前記分割引出配線のうち少なくとも一つの前記分割引出配線に接続するとともに少なくとも一つの前記分割引出配線に未接続状態となるように前記実装基板の他方の表面に実装された電子部品と、前記分割引出配線にそれぞれ接続し前記壁部表面に露出する外部引出電極と、前記分割引出配線に接続する試験用コンタクト部と、を備えた電子回路装置の試験方法において、未充電状態の前記全固体電池の2つの電極の一方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、該測定の後あるいは前に、前記全固体電池の2つの電極の他方の電極に接続する一組の前記分割引出配線のうち、前記電子部品と未接続状態の前記分割引出配線を含む2つの前記分割引出配線に接続する前記試験用コンタクト部の間の抵抗値を測定する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子回路装置は、気密状態の実装が要求される全固体電池を封止樹脂による封止を行うのみで気密性良く封止でき、非常に簡便に全固体電池を備えた電子回路装置を形成することが可能となる。一方気密状態の実装が要求されない電子部品は、実装基板上に露出して実装された構造とすることができ、部品の交換等が容易となるという利点がある。
【0016】
実装基板に接続する壁部を備える構成とすることで、外部引出用の分割電極の形成が容易となる。さらに、電子回路装置が実装されるマザー基板等と熱膨張率が等しく、あるいは近い材料を選択することで、信頼性の向上も図ることが可能となる。
【0017】
外部引出電極を複数の電極で構成することで、各外部引出電極の熱容量を小さくでき、そのばらつきも小さくできる。その結果、半田実装する際に、各外部引出電極の半田が溶融するタイミングが揃い、電子回路装置が傾いたり、位置ずれを起こすことなく実装することが可能となる。また、各外部引出電極を小さく形成することができ、外部引出電極への半田の這い上がりが良くなり、実装信頼性が向上するという利点がある。視認性が良くなるという利点もある。
【0018】
本発明の電子回路装置の製造方法は、通常の半導体装置の製造工程のみで形成することができ、歩留まり良く、簡便に電子回路装置を形成することが可能となる。
【0019】
本発明の電子回路装置の製造工程中の試験工程および電子回路装置の試験方法は、全固体電池の一方の電極のみ、あるいは他方の電極のみに接続する試験用コンタクト部を用いて試験を行うことで、全固体電池を未充電の状態に保つことができ、その後に加熱工程を経たとしても全固体電池の特性劣化を招くことがなく好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の電子回路装置の製造工程を説明する図である。
図2】本発明の電子回路装置の製造工程を説明する図である。
図3】本発明の電子回路装置の製造工程を説明する図である。
図4】本発明の電子回路装置の製造方法を説明する図である。
図5】本発明の電子回路装置の製造工程を説明する図である。
図6】本発明の電子回路装置の説明図である。
図7】本発明の電子回路装置の試験方法を説明する図である。
図8】本発明の電子回路装置の製造工程中に行う試験工程を説明する図である。
図9】本発明の電子回路装置の製造工程中に行う別の試験工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、気密状態の実装が求められる全固体電池と、気密状態の実装が求められない電子部品とを高密度に実装することで小型化が可能で、信頼性が高く、さらに全固体電池を充電することなく試験を行うことができる電子回路装置およびその製造方法に関する。また本発明は、全固体電池を未充填状態に保ち試験工程を行うことができる電子回路装置の製造方法および試験方法に関する。以下、本発明について詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の第1の実施例について、電子回路装置の製造工程に従い説明する。まず、エポキシ樹脂等からなる集合基板1を用意する。この種の集合基板1は、通常の半導体装置の製造工程で使用されている樹脂基板(有機基板)を使用することができる。集合基板1は、完成した電子回路装置が実装されるマザー基板の材質に応じて、適宜選択するのが好ましく、例えば熱膨張率の等しい材質あるいは近い材質を選択すると、実装信頼性の向上を図ることができる。集合基板1は個片化により分割されると、個々の実装基板を構成する。
【0023】
図1は、凹部2が形成された集合基板1の説明図で、図1(a)に断面図を、図1(b)に平面図を示している。図1に示す例では、後述する工程に従い、4個の電子回路装置が形成される。凹部2を備えた集合基板1は、絶縁層の両面に所望の配線パターン等が形成された導電膜を備えた両面板1aと、凹部2に相当する貫通孔を備えた枠板1bとを貼り合せて用意することができる。
【0024】
凹部2の両端には壁部3が形成されており、この壁部3を構成する集合基板1に円形の貫通孔4を形成する。この円形の貫通孔4はドリルを用いて形成すると、低コストで加工時間も短く、簡便に形成することができる。貫通孔4内および集合基板1の表裏面には外部引出電極5を形成する。外部引出電極5は、両面板1aの金属膜と、貫通孔内や枠板1b表面にメッキ法等により形成する金属膜で形成することができる。外部引出電極5は、凹部2内に延出し、相互に電気的に分離された分割引出配線6に接続している。この分割引出配線6は、図1(b)に示すように、両面板1aの金属膜やメッキ法等により形成する金属膜で形成することができる。
【0025】
次に図2に示すように、凹部2内に全固体電池7を実装する。全固体電池7は、凹部2の底部に形成された分割引出配線6に接続される。このとき、全固体電池7の陽極あるいは陰極のいずれかとなる電極それぞれに、電気的に分離された3個(一組)の分割引出配線6を接続している。
【0026】
凹部2内に実装される全固体電池7は、大気中の水分等により特性が劣化してしまうので気密状態の実装が求められる。そこでこのような特性劣化を防止するため、図3に示すようにエポキシ樹脂等の封止樹脂8を凹部2内に充填して樹脂封止する。十分な気密性を保つためには、全固体電池7の表面を封止樹脂8で十分に覆う必要がある。そのため図2で示した凹部2の深さ(換言すると、壁部3の高さ)は、集合基板1上に実装される全固体電池7の高さより深く(高く)するのが好ましい。具体的には、全固体電池7の高さが0.6mmのとき、凹部2の壁部3の高さを0.8mm程度とすることで、全固体電池7を凹部2の底部に形成された分割引出配線6や接着材の高さ等のばらつき等が発生しても、水分の侵入等のない気密構造を形成することができる。気密構造を形成するためさらに厚く封止樹脂8を形成する必要がある場合には、封止樹脂8の厚さや、全固体電池7の高さ等を考慮し、枠板1bの厚さを適宜設定すればよい。
【0027】
なお図2では、全固体電池7を2個ずつ実装した例を示しているが、気密状態の実装が求められない別の種類の電子部品を組み合わせて実装しても良い。
【0028】
このように集合基板1の表面は封止樹脂8により平坦化される(図3)。使用される封止樹脂8は、ディスペンサーから滴下して平坦化できるように、粘度100Pa・s程度以下が好ましい。また耐薬品性、耐リフロー性等を考慮し、例えばエポキシ系樹脂を選択するのが好ましい。二酸化シリコン等のフィラーの充填量を多くし(例えば60wt%程度以上)、吸水率を0.3wt%程度以下の樹脂を用いることで、気密状態の実装が可能となる。全固体電池7を実装する際、半田を用いた場合にはフラックス除去の工程を追加しても良い。
【0029】
その後、集合基板1の裏面(他方の表面に相当)に電子部品を実装する。図4に示す例では、3個の電子部品9a、9b、9cを実装している。
【0030】
図4に示すようにこの種の電子回路装置では、集合基板1上に様々な大きさの電子部品が実装される。このような場合、裏面側の電子部品9a~9cを実装した後、表面側の全固体電池7を実装して樹脂封止する工程とすると、電子部品9a~9cが脱落する可能性がある。そのため、上述のように表面側に全固体電池7を実装し、樹脂封止する工程を先に行うのが好ましい。当然ながら、電子部品の脱落等が無ければ、工程を逆にすることは可能である。
【0031】
次に、集合基板を個片化する。この個片化は、外部引出電極5が電子回路装置の外周に露出するように行う。具体的には図5に示すように、貫通孔4の中央部が切断位置10となる格子状に、例えばダイシングソーを走行させて行う。ダイシングソーを用いた切断方法では、集合基板1を所定の寸法だけ切削除去することになる。本実施例では、貫通孔4を比較的小さい径となるように形成しているため、図5に示すように切断位置10の端部が貫通孔4の中央に位置するようにする。凹部2間の切断位置10は、両端が貫通孔4の中央に位置するように配置している。凹部2間の切断は、必ずしも1回の切断で両端の貫通孔4を切断する必要は無く、一方の貫通孔4を切断した後、他方の貫通孔4を切断するように構成してもよい。
【0032】
図5に示す例では、4個の電子回路装置に個片化される。一般的に個片化工程は、集合基板を固定するためのシートに貼り付けて行うため、集合基板の裏面が封止樹脂の充填により平坦化されていることは、集合基板あるいは個片化後の電子回路装置をシートに確実に接着できる点で好ましい。また壁部3と全固体電池7との隙間に切削屑が入り込むこともなく好ましい。なお、図5では、表面に実装されている電子部品9a~9cに接続する配線の一部は図示を省略している。
【0033】
図6は、個片化後の電子回路装置20の斜視図を示す。図6に示すように個片化された電子回路装置20は、個片化された集合基板(実装基板1A)の表面に複数の電子部品9a、9b、9cが実装され、実装基板の逆の面には、全固体電池が封止樹脂8で被覆された状態で実装されている。また壁部3には、図1および図2で説明した全固体電池の陽極あるいは陰極となる2つの電極のいずれかの電極にそれぞれ接続し、相互に電気的に分離された分割引出配線に接続する外部引出電極5が露出している。
【0034】
本実施例では、貫通孔4の開口径を小さくすることで、壁部3として残る厚さを薄くしている。これは、大きな開口径の貫通孔を形成する場合と比較して、電子回路装置を小型化できることを示している。一方図面上下方向の両端には、壁部3は残らないように切断し小型化を実現している。
【0035】
このように本実施例の電子回路装置20は、全固体電池7と複数の電子部品9a~9cを高密度実装することができ、さらに全固体電池7が封止樹脂によって被覆することで気密封止されている。また、外部引出電極5が電子回路装置の側壁に露出する構造となっているため、電子回路装置を実装する際、半田等の接続部材が外部引出電極5の側壁を這い上がり、確実な接続を形成でき、目視検査等も容易となる。
【0036】
ところで本実施例の外部引出電極5は、すべて全固体電池の陽極あるいは陰極となる電極に接続しているが、図6に示すように一部の外部引出電極5のみが電子部品9a~9cのいずれかと接続し、外部引出電極5の一部は接続を形成していない。このように接続を形成していない外部引出電極5および分割引出配線6を備えることで、以下に詳述するように電子回路装置の試験を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0037】
次に第2の実施例として、上述の第1の実施例で説明した電子回路装置20の試験方法において説明する。図6に示す電子回路装置20は、図2で説明したように全固体電池7の陽極あるいは陰極となる電極を比較的深い凹部2内で分割引出配線6に接続する構造となっている。そのため、全固体電池7の電極が確実に分割引出配線6と接続していることを確認する必要がある。ところで、この接続状態を確認する際、全固体電池7に電荷が蓄積されることは好ましくない。そこで本実施例では、全固体電池7の陽極あるいは陰極となる2つの電極間に電圧を印加しない方法で全固体電池7の接続状態を確認する。
【0038】
全固体電池の2つの電極間に電圧を印加しないため、本実施例の試験方法は、電子回路装置20の全固体電池の2つの電極のいずれか一方の電極に接続する端子のみを使用して試験を行う。例えば図7に示すように、封止樹脂8により封止された電子回路装置20の全固体電池の一方の電極に接続する3個(一組)の分割引出配線、これにそれぞれ接続する外部引出電極5、さらに外部引出電極5に接続して延出する試験用コンタクト部11(a)に接続するように、それぞれ試験装置に接続したプローブ12を接触させる。図7では、3本のプローブ12を用いる例を示している。なお、試験用コンタクト部11は電子部品9a等に接続する配線パターンと同時に形成することができる。
【0039】
まず、試験用コンタクト部11(a)に接続するプローブ12(1)とプローブ12(2)の間に所定の電圧を印加し抵抗値を測定する。プローブ12(1)は、このプローブ12(1)に接続する試験用コンタクト部11(a)、外部引出電極5および図示しない分割引出配線を介して一つの全固体電池の一方の電極に接続する。さらにこの全固体電池の一方の電極は、図示しない別の分割引出配線、外部引出電極5および試験用コンタクト部11(a)を介してプローブ12(2)に接続する。したがって、プローブ12(1)とプローブ12(2)間の抵抗値を測定し、所定の抵抗値以下であることを確認することで全固体電池が分割引出配線および外部引出電極5に確実に接続していることが確認できる。
【0040】
同様にプローブ12(2)とプローブ12(3)の間に所定の電圧を印加し抵抗値を測定する。上述の通りプローブ12(2)は、このプローブ12(2)に接続する試験用コンタクト部11(a)、外部引出電極5および図示しない分割引出配線を介して全固体電池の一方の電極に接続する。さらにこの全固体電池の一方の電極は、図示しないさらに別の分割引出配線、外部引出電極5および試験用コンタクト部11(a)を介してプローブ12(3)に接続する。したがって、プローブ12(2)とプローブ12(3)間の抵抗値を測定し、所定の抵抗値以下であることを確認することで全固体電池が分割引出配線および外部引出電極5に確実に接続していることが確認できる。
【0041】
このような抵抗値の測定結果が、いずれかの抵抗値あるいは両方の抵抗値が所定の値を超える場合には、正常な接続状態にないことになり、不良品と判断されることになる。
【0042】
なお、図7に示すように電子部品9a等を実装した状態では、プローブ12(2)は電子部品9a、9c等を介して全固体電池の他方の電極に接続している。しかしながら、全固体電池が正常に接続している状態であれば抵抗値を測定することができる程度の低い電圧を印加するように設定することで、全固体電池を充電する電荷が供給されることはない。ただし回路配置によって、プローブ12(2)とプローブ12(1)あるいはプローブ12(2)とプローブ12(3)との間に電圧を印加するのが好ましくない場合には、プローブ12(1)とプローブ12(3)の間の抵抗値により、全固体電池が正常に接続されたことを確認する構成とすることも可能である。
【0043】
以上のように測定することで、1つの全固体電池の一方の電極の接続状態を確認することができる。その後、この全固体電池の他方の電極に接続する試験用コンタクト部11(b)にプローブ12を接続し、同様の測定を行うことで、この全固体電池の他方の電極の接続状態を確認することができる。この際、一方の電極側の測定と他方の電極側の測定を同時に行わなければ、いずれを先に測定しても良い。また、別の全固体電池の接続状態を同時に確認しても問題ない。
【0044】
本実施例の電子回路装置は、全固体電池を2個備える構成としているので、別の全固体電池についても同様の測定を行えば、すべての全固体電池の接続状態を確認することができる。
【0045】
なお試験用コンタクト部11(a)、11(b)は、必ずしも特別に形成する必要はなく、外部引出電極5の一部に上述のプローブ12を接続する程度の大きさが確保できれば、この接続する部分を試験用コンタクト部とすることもできる。また接続状態を確認するための電気的測定は、抵抗値を算出する他、所定の電圧印加時の電流値、あるいは所定の電流値に達する電圧値を測定する構成としても良いことは言うまでもない。
【実施例3】
【0046】
次に第3の実施例について説明する。上述の第2の実施例の電子回路装置の試験方法は、電子回路装置20の個片化後に行う試験方法として説明した。しかしながら、個片化後の試験では、電子回路装置20を所定の位置に配置し、プローブ12を位置合わせする必要があり、測定に要する時間が長くなってしまう。そこで、製造工程中に試験工程を追加する構成すると、多数の電子回路装置を測定する際の測定時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
例えば、図2で説明したように全固体電池7の電極を比較的深い凹部2内で分割引出配線6に接続する。その後、封止樹脂8で全固体電池7を被覆する前に全固体電池7の接続状態を確認する。
【0048】
本実施例においても、全固体電池の2つの電極間に電圧を印加しないため、全固体電池の一方の電極あるいは他方の電極の一方のみを交互に試験する。例えば図8に示すように、全固体電池7の一方の電極に接続する分割引出配線6に接続する試験用コンタクト部11(a)にそれぞれ試験装置に接続したプローブ12を接触させる。
【0049】
試験用コンタクト部11(a)に接続するプローブ12(1)とプローブ12(2)の間に所定の電圧を印加し抵抗値を測定する。プローブ12(1)は、このプローブ12(1)に接続する試験用コンタクト部11(a)、分割引出配線6を介して一つの全固体電池7の一方の電極に接続する。さらにこの全固体電池7の一方の電極は、別の分割引出配線6および試験用コンタクト部11(a)を介してプローブ12(2)に接続する。したがって、プローブ12(1)とプローブ12(2)間の抵抗値を測定し、所定の抵抗値以下であることを確認することで全固体電池7が分割引出配線6に確実に接続していることが確認できる。
【0050】
同様にプローブ12(2)とプローブ12(3)の間に所定の電圧を印加し抵抗値を測定する。上述の通りプローブ12(2)は、このプローブ12(2)に接続する試験用コンタクト部11(a)および分割引出配線6を介して全固体電池7の一方の電極に接続する。さらにこの全固体電池の一方の電極は、さらに別の分割引出配線および試験用コンタクト部11(a)を介してプローブ(3)に接続する。したがって、プローブ12(2)とプローブ12(3)間の抵抗値を測定し、所定の抵抗値以下であることを確認することで全固体電池7が分割引出配線6に確実に接続していることが確認できる。
【0051】
このような抵抗値の測定結果が、いずれかの抵抗値あるいは両方の抵抗値が所定の値を超える場合には、正常な接続状態にないことになり、不良と判断されることになる。
【0052】
なお本実施例においても、全固体電池7の一方の電極と他方の電極とを直接接続する配線を形成しなければ、全固体電池7の一方の電極に接続したプローブ12が他方の電極に接続することはない。しかしながら、全固体電池7の一方の電極と他方の電極を直接接続する配線が配置されている場合には、そのような配線に未接続状態のプローブ12間の抵抗値により、全固体電池が正常に接続されたことを確認する構成とすることも可能である。
【0053】
以上のように測定することで、1つの全固体電池7の一方の電極の実装状態を確認することができる。その後、この全固体電池7の他方の電極に接続する試験用コンタクト部11(b)にプローブ12を接続し、同様の測定を行うことで、この全固体電池7の他方の電極の接続状態を確認することができる。この際、一方の電極側の測定と他方の電極側の測定を同時に行わなければ、いずれを先に測定しても良い。また、別の全固体電池の接続状態を同時に確認しても問題ない。
【0054】
本実施例では、集合基板上に複数の全固体電池7を備える構成としているので、各全固体電池7について同様の測定を行えば、すべての全固体電池7の接続状態を確認することができる。本実施例では、集合基板上に配置された試験用コンタクト部11に測定のためのプローブ12を接触させるため、集合基板1の位置合わせを行えば、通常のテスト工程のように順次測定を行うことができ、短時間の測定が可能となる。
【0055】
なお試験用コンタクト部11(a)、11(b)は、必ずしも特別に形成する必要はなく、外部引出電極5の一部に上述のプローブ12を接続する程度の大きさが確保できれば、この接続する部分を試験用コンタクト部とすることも可能である。また接続状態を確認するための電気的測定は、抵抗値を算出する他、所定の電圧印加時の電流値、あるいは所定の電流値に達する電圧値を測定する構成としても良いことは言うまでもない。
【0056】
本実施例では、全固体電池7が露出した状態で試験結果を得ることができるので、その試験結果に基づき、全固体電池7の交換や接続をやり直すことができる。このとき全固体電池7を加熱したとしても、全固体電池7には電荷が蓄積していないので特性が劣化することはない。全固体電池7の接続状態の確認のみを行う場合には、全固体電池7を封止樹脂8で被覆した後、上述の測定を行うようにしても良い。
【実施例4】
【0057】
次に第4の実施例について説明する。上述の第3の実施例では、集合基板に全固体電池7が実装された面を表面にして、分割引出配線6に接続する試験用コンタクト部11に測定のためのプローブ12を接触させた場合について説明した。本実施例は、集合基板の逆の面を表面にして試験を行うこともできる。
【0058】
例えば図9に示すように、図4および図5で説明した電子部品9a~9cを実装する面を表面にして、全固体電池7の一方の電極に接続する分割引出配線6、外部引出電極5および試験用コンタクト部11(a)にそれぞれ試験装置に接続したプローブ12を接触させる。なお図9では、電子部品9a~9cに接続を形成するための電極の一部の図示を省略している。
【0059】
試験方法は、上記第3の実施例と同様である。試験用コンタクト部11(a)に接続するプローブ12(1)とプローブ12(2)の間に所定の電圧を印加し抵抗値を測定する。プローブ12(1)は、このプローブ12(1)に接続する試験用コンタクト部11(a)、外部引出電極5および分割引出配線6を介して一つの全固体電池7の一方の電極に接続する。さらにこの全固体電池7の一方の電極は、別の分割引出配線6、外部引出電極5および試験用コンタクト部11(a)を介してプローブ12(2)に接続する。したがって、プローブ12(1)とプローブ12(2)間の抵抗値を測定し、所定の抵抗値以下であることを確認することで全固体電池7が分割引出配線6に確実に接続していることが確認できる。
【0060】
同様にプローブ12(2)とプローブ12(3)の間に所定の電圧を印加し抵抗値を測定する。上述の通りプローブ12(2)は、このプローブ12(2)に接続する試験用コンタクト部11(a)、外部引出電極5および分割引出配線6を介して全固体電池7の一方の電極に接続する。さらにこの全固体電池の一方の電極は、さらに別の分割引出配線6、外部引出電極5および試験用コンタクト部11(a)を介してプローブ12(3)に接続する。したがって、プローブ12(2)とプローブ12(3)間の抵抗値を測定し、所定の抵抗値以下であることを確認することで全固体電池7が分割引出配線6に確実に接続していることが確認できる。
【0061】
このような抵抗値の測定結果が、いずれかの抵抗値あるいは両方の抵抗値が所定の値を超える場合には、正常な接続状態にないことになり、不良と判断されることになる。
【0062】
なお本実施例においても、全固体電池7の一方の電極と他方の電極とを直接接続する配線を形成しなければ、全固体電池7の一方の電極に接続したプローブ12が他方の電極に接続することはない。しかしながら、全固体電池7の一方の電極と他方の電極を直接接続する配線が配置されている場合には、そのような配線に未接続状態のプローブ12間の抵抗値により、全固体電池が正常に接続されたことを確認する構成とすることも可能である。
【0063】
以上のように測定することで、1つの全固体電池7の一方の電極の実装状態を確認することができる。その後、この全固体電池7の他方の電極に接続する試験用コンタクト部11(b)にプローブ12を接続し、同様の測定を行うことで、この全固体電池7の他方の電極の接続状態を確認することができる。この際、一方の電極側の測定と他方の電極側の測定を同時に行わなければ、いずれを先に測定しても良い。また、別の全固体電池の接続状態を同時に確認しても問題ない。
【0064】
本実施例でも、集合基板上に複数の全固体電池7を備える構成としているので、各全固体電池7について同様の測定を行えば、すべての全固体電池の接続状態を確認することができる。本実施例では、集合基板上に配置された試験用コンタクト部11に測定のためのプローブ12を接触させるため、集合基板1の位置合わせを行えば、通常のテスト工程のように順次測定を行うことができ、短時間の測定が可能となる。
【0065】
なお試験用コンタクト部11(a)、11(b)は、必ずしも特別に形成する必要はなく、外部引出電極5の一部に上述のプローブ12を接続する程度の大きさが確保できれば、この接続する部分を試験用コンタクト部とすることも可能である。また接続状態を確認するための電気的測定は、抵抗値を算出する他、所定の電圧印加時の電流値、あるいは所定の電流値に達する電圧値を測定する構成としても良いことは言うまでもない。
【0066】
本実施例では、全固体電池7が露出した状態で試験結果を得ることができるので、その試験結果に基づき、全固体電池7の交換や接続をやり直すことができる。このとき全固体電池7を加熱したとしても、全固体電池7には電荷が蓄積していないので特性が劣化することはない。全固体電池7の接続状態の確認のみを行う場合には、全固体電池7を封止樹脂8で被覆した後、上述の測定を行っても良い。また電子部品9a~9cを実装した後、個片化する前に上述の試験を行っても良い。
【0067】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこれら実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、外部引出電極5の形状は、電子回路装置が実装されるマザー基板との接続構造に応じて適宜変更可能である。また分割引出配線6、外部引出電極5の数は、電子回路装置上に実装される電子部品や回路構成に応じて適宜変更可能で、所望の試験を行うため少なくとも電気的に分離された2つ以上に分割された分割引出配線6等を備える等種々変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1: 集合基板、1a:両面板、1b:枠板、1A:実装基板、2:凹部、3:壁部、4:貫通孔、5:外部引出電極、6:分割引出配線、7:全固体電池、8:封止樹脂、9、9a、9b、9c:電子部品、10:切断位置、11:試験用コンタクト部、12:プローブ、20:電子回路装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9