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  • 特許-MEMS素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】MEMS素子
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/04 20060101AFI20230530BHJP
   H04R 19/00 20060101ALI20230530BHJP
   H04R 19/01 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H04R19/04
H04R19/00
H04R19/01
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019160902
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021040255
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177493
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 修
(72)【発明者】
【氏名】荒木 新一
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-054307(JP,A)
【文献】特開2014-176035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックチャンバーを備えたハンドル基板上に、固定電極を含むバックプレートと可動電極膜とを対向配置したMEMS素子において、
前記固定電極は、スペーサーを介して前記ハンドル基板上に配置し、
前記可動電極膜は、支持部材を介して前記バックプレートに支持され、
前記支持部材は、前記可動電極膜の落下を防止する第一のストッパー部と、前記可動電極膜と前記固定電極との接触を防ぐ第二のストッパー部を含む中継部と、該中継部を連結し前記固定電極の外周に沿って前記バックプレートに接合する連結部と、前記第一のストッパー部と前記第のストッパー部の間に備えた支持部とからなり、前記可動電極膜に形成した孔内を前記支持部が貫通し、前記孔の内壁と前記支持部の間、前記可動電極膜と第一のストッパー部の間および前記可動電極膜と第二のストッパー部の間に隙間を設けることで前記可動電極膜と前記支持部材が接触により接続していることを特徴とするMEMS素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS素子に関し、特にマイクロフォン、各種センサ等として用いられるMEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスを用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子として、半導体基板上に可動電極、犠牲層および固定電極を形成した後、犠牲層の一部を除去することで、スペーサーを介して固定電極と可動電極との間にエアーギャップ(中空)構造が形成された容量型のMEMS素子が知られている。
【0003】
例えば、容量型のMEMS素子では、複数の貫通孔を備えた固定電極と、音圧等を受けて振動する可動電極とを対向して配置し、振動による可動電極の変位を電極間の容量変化として検出する構成となっている。この種のMEMS素子は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
従来のMEMS素子の動作を図6に模式的に示す。ハンドル基板21上に絶縁膜22を介して導電性の可動電極を含む可動電極膜23(振動膜に相当)と導電性の固定電極を含む固定電極膜24がスペーサー25を介して配置され、音圧等を受けて可動電極膜23が振動すると、固定電極膜24との間の距離が変化し、固定電極膜24の固定電極と可動電極膜23の可動電極との間で形成されているキャパシタの容量値が変化する。この容量値を図示しない電極から取り出すことで、可動電極膜23が受ける音圧等に応じた出力信号を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-55087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のMEMS素子は、熱膨張や熱収縮によりハンドル基板21の寸法が変動し、可動電極膜23を変形させ、可動電極膜23が固定電極膜24に近づくあるいは離れるという変位が生じる。そのため、可動電極膜23と固定電極膜24との間の寸法が変動して出力特性が変動してしまうという問題があった。本発明はこのような問題点を解消し、MEMS素子のハンドル基板に寸法変動があった場合でも特性変動の少ないMEMS素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、バックチャンバーを備えたハンドル基板上に、固定電極を含むバックプレートと可動電極膜とを対向配置したMEMS素子において、前記固定電極は、スペーサーを介して前記ハンドル基板上に配置し、前記可動電極膜は、支持部材を介して前記バックプレートに支持され、前記支持部材は、前記可動電極膜の落下を防止する第一のストッパー部と、前記可動電極膜と前記固定電極との接触を防ぐ第二のストッパー部を含む中継部と、該中継部を連結し前記固定電極の外周に沿って前記バックプレートに接合する連結部と、前記第一のストッパー部と前記第のストッパー部の間に備えた支持部とからなり、前記可動電極膜に形成した孔内を前記支持部が貫通し、前記孔の内壁と前記支持部の間、前記可動電極膜と第一のストッパー部の間および前記可動電極膜と第二のストッパー部の間に隙間を設けることで前記可動電極膜と前記支持部材が接触により接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のMEMS素子は、熱収縮等によりハンドル基板に寸法変動があった場合でも、可動電極膜と支持部材の間に隙間を設けることで、可動電極膜が支持部材に接合することなく接触することにより接続し、支持部材を介してバックプレートに支持される構造のため、ハンドル基板の寸法変動により生じる応力を可動電極膜と支持部材の間の隙間が吸収することで、熱収縮等による可動電極膜への影響をなくし、安定した出力特性のMEMS素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例のMEMS素子を説明する図である。
図2】本発明の実施例のMEMS素子の一部拡大図である。
図3】本発明の実施例のMEMS素子を説明する図である。
図4】本発明の実施例のMEMS素子を説明する図である。
図5】本発明の実施例のMEMS素子を説明する図である。
図6】一般的なMEMS素子の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のMEMS素子は、可動電極膜と支持部材の間に隙間を設けることで、可動電極膜が支持部材に接合することなく接触することにより接続し、支持部材を介してバックプレートに支持される構造のため、熱収縮等によりハンドル基板に寸法変動があったとしても、その寸法変動により生じる応力を可動電極膜と支持部材の間に設けた隙間が吸収し、可動電極膜にその応力が伝わることがなく、可動電極膜が変位することがないので、出力特性の変動を抑制することが可能となる。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例
【0011】
本発明の第1の実施例について説明する。図1は本発明の第1の実施例の説明図である。図1に示すように本実施例のMEMS素子は、バックチャンバー1を備えた例えばシリコン基板からなるハンドル基板2上に絶縁膜3およびスペーサー4を介して、固定電極5を含むバックプレート6を配置している。一方可動電極膜7は支持部材8を介して固定電極5を含むバックプレート6に支持され、固定電極5を含むバックプレート6と対向するように配置している。支持部材8は導電性を有しており、例えばドープドポリシリコン等で形成することができる。
【0012】
図2は、バックプレート6、可動電極膜7および支持部材8の一部拡大図である。図2に示すように支持部材8は、第1のストッパー部8A、支持部8B、第2のストッパー部8Cを備えた中継部8Dおよび連結部8Eからなり、可動電極膜7に設けた孔9内を支持部8Bが貫通するように配置し、孔9の内壁と支持部8Bとの間、可動電極膜7と第一のストッパー8Aとの間および可動電極膜7と第二のストッパー8Cとの間に隙間を設けるように形成することにより、可動電極膜7は支持部材8に接合せず、接触することで接続する。
【0013】
図3は、固定電極5、バックプレート6、可動電極膜7、支持部材8の連結部8Eおよび中継部8Dの配置を示す図である。図1および図3に示すように、固定電極5の外周部を囲み、固定電極5およびその引き出し電極と接触しないように支持部材8の連結部8Eをバックプレート6に形成し、連結部8Eの可動電極膜7側に中継部8Dを形成している。図3に示す例では、連結部8Eを円環状に形成したものを記載したが、角部を有する形状としてもよく、全ての中継部8Dと接続できればよい。また、図3に示す例では中継部8Dを6つ配置したものを記載したが、2つ以上配置すればよく、バランスよく配置すればよい。
【0014】
このようなMEMS素子を動作させない、つまり電圧を印加しない場合は、図4に示すように支持部材8の第一のストッパー8Aによって、可動電極膜7が落下することを防止するとともに、可動電極膜7と第一のストッパー8Aが接触した状態となっている。可動電極膜7は、少なくとも第一のストッパー8Aの一部と接触していればよい。MEMS素子を動作させた、つまり電圧を印加した場合は、可動電極膜7と第一のストッパー8Aの接触部が電気的に接続し、可動電極膜7が固定電極5に向かって凸状に反りあがるとともに固定電極5の方向へ上昇し、図5に示すように第二のストッパー8Cによって上昇が止まり、固定電極5に衝突することを防止するとともに、可動電極膜7と第二のストッパー8Cが接触し、電気的に接続している状態となる。可動電極膜7が固定電極5の方向へ上昇している間は、可動電極膜7と支持部8Bが接触しているため、可動電極膜7と支持部材8は、常に電気的に接続している状態となる。可動電極膜7は全ての支持部8Bと接触していなくてもよく、少なくとも1か所で支持部8Bと接触していればよい。
【0015】
このような構造の本発明のMEMS素子は、可動電極膜7の孔9の内壁と支持部8Bとの間、可動電極膜7と第一のストッパー8Aとの間および可動電極膜7と第二のストッパー8Cとの間に隙間を設けるように形成することにより、可動電極膜7が支持部材8に接合することなく接触することで接続し、支持部材8を介してバックプレート6に支持される構造のため、熱収縮等によりハンドル基板2に寸法変動があったとしても、その寸法変動により生じる応力を可動電極膜7の孔9の内壁と支持部8Bとの間の隙間が吸収し、可動電極膜7に伝わることがなくなる。つまり、ハンドル基板2の寸法変動により可動電極膜7が固定電極5に近づくあるいは離れるという変位が生じることがなく、出力特性の変動を抑制することが可能となり、安定した出力特性を得ることができる。
【0016】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明の上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば固定電極5や可動電極膜7の形状は、円形に限定するものではなく、それぞれ長方形などの矩形形状としてもよい。
【符号の説明】
【0017】
1:バックチャンバー、2: ハンドル基板、3:絶縁膜、4:スペーサー、5:固定電極、6:バックプレート、7:可動電極膜、8:支持部材、8A:第一のストッパー部、8B:支持部、8C:第二のストッパー部、8D:中継部、8E:連結部、9:孔、21:ハンドル基板、22:絶縁膜、23:可動電極膜、24:固定電極膜、25:スペーサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6