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特許7287626発泡性粒子、発泡性粒子を製造する方法、発泡性樹脂組成物、及び、発泡体を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】発泡性粒子、発泡性粒子を製造する方法、発泡性樹脂組成物、及び、発泡体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20230530BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C08J9/16 CEY
C08F292/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019151208
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021031551
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 優
(72)【発明者】
【氏名】谷口 竜王
(72)【発明者】
【氏名】中 佑介
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/023581(WO,A1)
【文献】特開2013-213144(JP,A)
【文献】特開昭58-118834(JP,A)
【文献】特開2011-37957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
C08F 2/00-2/60
C08F 292/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子、及び前記無機粒子に結合したグラフトポリマー鎖を有する発泡性粒子であって、
当該発泡性粒子を、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分で120℃から600℃まで昇温することを含む熱重量測定によって分析したときに、2段階以上の重量減少が観測される、発泡性粒子。
【請求項2】
前記熱重量測定によって得られる重量と温度との関係を表す曲線の一次微分曲線が、1段階目の重量減少に相当し200℃以上400℃以下の範囲に最小値を示すピークと、2段階目の重量減少に相当し400℃を超えて600℃以下の範囲に最小値を示すピークとを有する、請求項1に記載の発泡性粒子。
【請求項3】
前記グラフトポリマー鎖が、熱分解によって脱離する部位を有する熱分解性モノマー単位を含む、請求項1又は2に記載の発泡性粒子。
【請求項4】
前記熱分解性モノマー単位が、t-ブチルエステル基を有するモノマー単位である、請求項3に記載の発泡性粒子。
【請求項5】
無機粒子、及び前記無機粒子に結合したグラフトポリマー鎖を有する発泡性粒子であって、
前記グラフトポリマー鎖が、熱分解によって脱離する部位を有する熱分解性モノマー単位を含む、発泡性粒子。
【請求項6】
前記熱分解性モノマー単位が、t-ブチルエステル基を有するモノマー単位である、請求項5に記載の発泡性粒子。
【請求項7】
前記無機粒子が100nm以下の粒径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡性粒子。
【請求項8】
前記無機粒子が、シリカ粒子、又は金属酸化物粒子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の発泡性粒子。
【請求項9】
当該発泡性粒子が、前記無機粒子の表面に結合し、下記式(1):
【化1】

で表され、GPが前記グラフトポリマー鎖を示し、Rが炭素数3~10のアルキレン基を示し、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す、グラフト基を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の発泡性粒子。
【請求項10】
発泡体を形成するために用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の発泡性粒子。
【請求項11】
無機粒子の表面に、下記式(2):
【化2】

で表され、Xがハロゲン原子を示し、Rが炭素数3~10のアルキレン基を示し、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す、重合開始基を結合させる工程と、
前記重合開始基から開始されるリビングラジカル重合によりグラフトポリマー鎖を生成させ、それにより下記式(1):
【化3】

で表され、GPが前記グラフトポリマー鎖を示し、Rが炭素数3~10のアルキレン基を示し、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す、グラフト基を形成する工程と、
を備える、請求項9に記載の発泡性粒子を製造する方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の発泡性粒子と、樹脂とを含有する、発泡性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の発泡性樹脂組成物を加熱することによって発泡体を形成する工程を含む、発泡体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性粒子、発泡性粒子を製造する方法、発泡性樹脂組成物、及び、発泡体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ポリスチレン等に代表される樹脂の発泡体は、食品包装、建設材料、紙加工、自動車等の工業分野において、断熱材、衝撃吸収剤、意匠性プリントとして用いられている。発泡体は、一般に、熱膨張性マイクロカプセル、又はラテックス粒子のような発泡性粒子を用いて形成されることがある(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5738502号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】第18回高分子ミクロスフェア討論会講演会要旨集、2014年、117ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面は、樹脂を含む発泡体を形成するために用いることのできる、新規な発泡性粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、無機粒子、及び前記無機粒子に結合したグラフトポリマー鎖を有する発泡性粒子に関する。当該発泡性ナノ粒子を、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分で120℃から600℃まで昇温することを含む熱重量測定によって分析したときに、2段階以上の重量減少が観測されてもよい。あるいは、前記グラフトポリマー鎖が、熱分解によって脱離する部位を有するモノマー単位を含んでもよい。
【0007】
本発明の別の一側面は、発泡性粒子を製造する方法に関する。当該方法は、無機粒子の表面に、下記式(2):
【化1】

で表され、Xがハロゲン原子を示し、Rが炭素数3~10のアルキレン基を示し、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す、重合開始基を結合させる工程と、前記重合開始基から開始されるリビングラジカル重合によりグラフトポリマー鎖を生成させ、それにより下記式(1):
【化2】

で表され、GPが前記グラフトポリマー鎖を示し、Rが炭素数3~10のアルキレン基を示し、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す、グラフト基を形成する工程と、を備えていてもよい。
【0008】
本発明の更に別の一側面は、上記発泡性粒子と、樹脂とを含有する、発泡性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明の更に別の一側面は、上記発泡性樹脂組成物を加熱することによって発泡体を形成する工程を含む、発泡体を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、樹脂を含む発泡体を形成するために用いることのできる、新規な発泡性粒子が提供される。
【0011】
本発明の一側面に係る発泡性粒子は、樹脂及び溶剤に対して良好な分散性を有することができる。そのため、発泡性粒子を種々の樹脂を発泡させるための発泡剤として容易に用いることができる。本発明の一側面に係る発泡性粒子は、製造のために高温及び高圧の条件を必要とすることなく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ポリ(t-ブチルメタクリレート)の熱重量分析の結果を示すグラフである。
図2図1に示される曲線の一次微分曲線を示すグラフである。
図3】グラフトポリマー鎖が導入される前、及びグラフトポリマー鎖が導入されたシリカ粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図4】グラフトポリマー鎖が導入されたシリカ粒子の熱重量分析の結果の一例を示すグラフである。
図5】発泡体の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
一実施形態に係る発泡性粒子は、無機粒子、及び無機粒子に結合したグラフトポリマー鎖を有する。一実施形態に係る発泡性粒子を加熱すると、グラフトポリマー鎖が部分的に分解することによってガスが発生し、それにより発泡体を形成することができる。
【0015】
無機粒子は、ナノスケールのサイズを有する無機ナノ粒子であってもよい。より具体的には、無機粒子が100nm以下、70nm以下、又は50nm以下の粒径を有していてもよい。無機粒子の粒径の下限は、特に制限されないが、通常、5nm程度である。ここでの粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって得られる粒子の二次元画像の最大幅を意味する。
【0016】
無機粒子は、シリカ粒子、金属粒子、金属酸化物粒子、又は金属窒化物粒子であってもよく、シリカ粒子又は金属酸化物粒子であってもよい。金属粒子、金属酸化物粒子、又は金属窒化物粒子を構成する金属の例としては、Au、Ag、Pt、及びPdのような貴金属、並びに、Ti、Zr、Ta、Sn、Zn、Cu、V、Sb、In、Hf、Y、Ce、Sc、La、Eu、Ni、Co、及びFeのような遷移金属が挙げられる。
【0017】
グラフトポリマー鎖は、ラジカル重合性官能基を有するモノマーに由来する1種又は2種以上のモノマー単位から構成される。グラフトポリマー鎖を構成するモノマーは、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基を有するモノマーであってもよい。
【0018】
グラフトポリマー鎖は、熱分解によって脱離する部位を有するモノマー単位(熱分解性モノマー単位)を含んでいてもよい。熱分解性モノマー単位は、t-ブチルエステル基を有するモノマーに由来するモノマー単位であってもよく、その例としては、t-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。t-ブチル(メタ)アクリレートは、下記反応式で表されるように、熱分解によってt-ブチル基の部位が脱離して、イソブテンガスを生成する。
【0019】
【化3】
【0020】
グラフトポリマー鎖は、熱分解性モノマー単位のみを含むホモポリマー鎖であってもよいし、熱分解性モノマー単位、及びその他のモノマー単位を含む共重合体鎖であってもよい。その他のモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
熱分解性モノマー単位の割合は、無機粒子の質量に対して20質量%以下であってもよく、0.1質量%以上であってもよい。熱分解性モノマー単位の量がこれら範囲内にあると、適度なサイズの気泡が形成され易い。同様の観点から、発泡性粒子の粒径が、無機粒子の粒径に対して3倍以下であってもよい。
【0022】
無機粒子を、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分で120℃から600℃まで昇温することを含む熱重量測定によって分析したときに、2段階以上の重量減少が観測されてもよい。グラフトポリマー鎖が上記の熱分解性モノマー単位を含む場合、熱分解性モノマー単位の熱分解に由来する1段階目の重量減少と、より高温でのグラフトポリマーの主鎖の熱分解に由来する2段階目の重量減少とが観測されることが多い。
【0023】
図1は、ポリ(t-ブチルメタクリレート)の熱重量分析の結果を示すグラフである。図1は、測定試料としてのポリ(t-ブチルメタクリレート)の重量と、温度との関係を表す。図1に示されるように、250~300℃付近の領域における1段階目の重量減少と、400~500℃付近の領域における2段階目の重量減少とが認められる。各段階の熱分解の温度は、例えば、重量と温度との関係を表す曲線の一次微分曲線から求めることができる。図2は、図1に示される曲線の一次微分曲線を示すグラフであり、微分値(dW/dT)と温度との関係を表す。図2に示される一次微分曲線は、1段階目、2段階目の重量減少にそれぞれ対応する2つのピークを含む。各ピークにおいて最小値が示される温度を、重量減少を生じる熱分解の温度とみなすことができる。
【0024】
無機粒子の熱重量測定によって得られる重量と温度との関係を表す曲線の一次微分曲線が、200℃以上400℃以下の範囲に最小値を示す1段階目の重量減少に相当するピークと、400℃を超えて600℃以下の範囲に最小値を示す2段階目の重量減少に相当するピークとを有していてもよい。1段階目の重量減少に対応する熱分解の温度が、200℃以上350℃以下であってもよい。2段階目の重量減少に対応する熱分解の温度が、400~500℃であってもよい。グラフトポリマー鎖と同様のモノマーから構成されるポリマーを別途準備し、その熱重量測定によってグラフトポリマー鎖の分解挙動を推測することもできる。
【0025】
グラフトポリマー鎖は、一般的なグラフト重合法によって形成されるグラフト鎖であることができる。グラフトポリマー鎖を形成する重合方法は、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)及び可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)のようなリビングラジカル重合、放射線グラフト重合、又は溶液重合であってもよい。
【0026】
リビングラジカル重合によってグラフトポリマー鎖を形成する方法は、例えば、無機粒子の表面に重合開始基を結合させる工程と、重合開始基から開始されるリビングラジカル重合によってグラフトポリマー鎖を生成させる工程とを含む。リビングラジカル重合を含む方法によれば、グラフトポリマー鎖が高密度で導入された発泡性粒子を容易に得ることができる。
【0027】
重合開始基は、例えば、トリアルコキシシリル基と、重合開始基とを有するアルコキシシラン化合物を無機粒子と反応させることによって、無機粒子の表面に導入される。重合開始基を有するアルコキシシラン化合物とともに、重合開始基を有しないアルコキシシラン化合物を無機粒子と反応させてもよい。この場合、重合開始基を有するアルコキシシラン化合物と、重合開始基を有しないアルコキシシラン化合物との割合を調整することによって、無機粒子の表面におけるグラフトポリマー鎖の密度を制御することができる。重合開始基を有しないアルコキシシラン化合物は、通常のシランカップリング剤であってもよい。反応性官能基を有し、重合開始基を有しないトリアルコキシシリル基を有するアルコキシシラン化合物を無機粒子と反応させ、次いで反応性官能基を、重合開始基を有する化合物と反応させることにより、重合開始基を導入してもよい。
【0028】
グラフトポリマー鎖を形成するためのリビングラジカル重合は、ポリマー合成の分野において通常適用される条件で行うことができる。生成した発泡性粒子は、通常の方法による精製、後処理又はこれらの組み合わせによって単離することができる。
【0029】
グラフトポリマー鎖は、通常、連結基としての有機基を介して無機粒子の表面に結合している。例えば、グラフトポリマー鎖が、無機粒子の表面に結合した下記式(1)で表されるグラフト基に含まれていてもよい。このグラフト基は、Rに結合したシリル基を介して無機粒子の表面に結合していてもよい。
【化4】
【0030】
式(1)中、GPはグラフトポリマー鎖を示し、Rは炭素数3~10のアルキレン基を示し、R及びRはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。Rは、炭素数4~8、又は6のアルキレン基であってもよい。Rが直鎖のアルキレン基であってもよい。
【0031】
式(1)で表されるグラフト基を有する発泡性粒子は、例えば、無機粒子の表面に、下記式(2):
【化5】

で表される重合開始基を結合させる工程と、重合開始基から開始されるリビングラジカル重合(特に、原子移動ラジカル重合)によりグラフトポリマー鎖を生成させ、それにより上記式(1)で表されるグラフト基を形成する工程とを含む方法によって、製造することができる。式(2)中、Xはハロゲン原子(例えば臭素原子)を示し、R、R、及びRは式(1)中のR、R、及びRと同様に定義される。
【0032】
式(2)の重合開始基は、例えば、下記式(3)で表されるアルコキシシラン化合物を無機粒子と反応させることによって、無機粒子の表面に導入される。式(3)中のR4は、炭素数1~3のアルキル基を示し、1分子中の複数のR4は同一でも異なってもよい。Rがメチル基又はエチル基であってもよい。R、R及びRは式(1)中のR、R、及びRと同様に定義される。
【化6】
【0033】
式(2)の重合開始基を、下記式(4)で表されるアルコキシシラン化合物を無機粒子と反応させることによって無機粒子の表面にアミノ基を導入することと、導入されたアミノ基と下記式(5)で表される化合物との反応により式(2)のグラフト基を形成することとを含む方法によって導入することもできる。
【化7】
【0034】
グラフトポリマー鎖が溶解する溶剤に発泡性粒子を浸漬したときに、無機粒子から脱離するグラフトポリマー鎖の量が、発泡性粒子の質量に対して0.01質量%以下であってもよい。
【0035】
一実施形態に係る発泡性樹脂組成物は、以上説明した発泡性粒子と、樹脂とを含有する。通常、樹脂中に発泡性粒子が分散される。
【0036】
樹脂は、特に制限されず、熱可塑性樹脂であってもよく、その例としてはアクリル樹脂、スチレン系樹脂、及びポリオレフィンが挙げられる。
【0037】
発泡性樹脂組成物における発泡性粒子の量は、グラフトポリマー鎖の質量の割合が樹脂の質量に対して10質量%以下となる量であってもよい。この割合は、1質量%以上であってもよい。樹脂及び発泡性粒子の合計量が、発泡性樹脂組成物の質量に対して50~100質量%、60~100質量%、70~100質量%、80~100質量%、又は90~100質量%であってもよい。
【0038】
発泡性樹脂組成物が、酸、又は酸を発生する材料を更に含有してもよい。これにより、発泡性粒子の発泡温度を低下させることができる。
【0039】
発泡性樹脂組成物を加熱することによって発泡体を形成する工程を含む方法によって、樹脂の発泡体を製造することができる。発泡のための加熱温度は、400℃以下、又は350℃以下であってもよく、200℃以上であってもよい。
【実施例
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
1.発泡性粒子の作製
1-1.無機粒子への重合開始基の導入
マグネチックスターラーで撹拌しながら、500mLのナスフラスコに、メタノール250mL、及びシリカ粒子(コロイダルシリカ)及びメタノールを含むコロイド溶液(MA-ST-L(商品名)、日産化学株式会社製、平均粒径50nm、濃度40質量%)17gを入れた。そこに、アミノプロピルトリエトキシシラン9mLを加え、混合溶液を18時間撹拌した。その後、遠心分離によりシリカ粒子を精製し、溶媒をメチルエチルケトン(MEK)に置換して、アミノ基が導入されたシリカ粒子を濃度8質量%で含む分散液を得た。得られた分散液50mLに、トリエチルアミン1.62mmolを溶解させ、次いでMEK50mLを更に加えた。続いて、ブロモイソブチルブロマイド(BiBB)1.62mmolが10mLのMEKに溶解した溶液を分散液に加え、混合液を室温で18時間撹拌した。その後、遠心分離、上澄みの除去及びメタノールへの再分散を3回繰り返すことによりシリカ粒子を精製した。精製されたシリカ粒子をメチルエチルケトン(MEK)に再分散させて、ブロモイソブチル基を含む重合開始基が導入されたシリカ粒子(SiNP-Br)のMEK分散液を得た。
【0042】
1-2.グラフトポリマー鎖の形成
重合開始基が導入されたシリカ粒子(SiNP-Br)を含むMEK分散液(濃度1質量%)20g、t-ブチルメタクリレート10mmol、及びペンタメチルジエチレントリアミン0.5mmolを、50mLのナスフラスコに入れた。凍結脱気を繰り返すことにより、ナスフラスコ内を窒素で充填した。グローブボックス内でナスフラスコを開放し、ナスフラスコ内の混合物に臭化銅を加えた。反応混合物を60℃で18時間撹拌した後、空気に曝すことにより反応を停止させた。遠心分離、上澄みの除去及びMEKへの再分散を3回繰り返すことにより、グラフトポリマー鎖としてポリ(t-ブチルメタクリレート)鎖(Poly(t-BMA))を有する発泡性粒子(SiNP-g-PtBMA)を精製した。
【0043】
図3は、原料として用いられたシリカ粒子(図3の(a))、及びグラフトポリマー鎖が導入されたシリカ粒子(発泡性粒子)(図3の(b))の透過型顕微鏡写真である。グラフトポリマー鎖が導入されたシリカ粒子の平均粒径は78nmであり、グラフトポリマー鎖の導入によって粒径が増加したことが確認された。
【0044】
(実施例2)
平均粒径10nmのシリカ粒子(コロイダルシリカ)を含むコロイド溶液(メタノールシリカゾル(商品名)、日産化学株式会社製、濃度40質量%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、グラフトポリマー鎖としてポリ(t-ブチルメタクリレート)鎖(Poly(t-BMA))を有する発泡性粒子を作製した。
【0045】
(実施例3)
グラフトポリマー鎖を形成するモノマーとしてt-ブチルアクリレート10mmolを用いたこと以外は実施例1と同様にして、グラフトポリマー鎖としてポリ(t-ブチルアクリレート)鎖(Poly(t-BA))を有する発泡性粒子を作製した。
【0046】
(実施例4)
グラフトポリマー鎖を形成するモノマーとして、t-ブチルアクリレート10mmol及びメチルメタクリレート10mmolを併用したこと以外は実施例1と同様にして、グラフトポリマー鎖としてポリ(t-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート)鎖(Poly(MMA-co-t-BMA))を有する発泡性粒子を作製した。
【0047】
(比較例1)
グラフトポリマー鎖を形成するモノマーとしてメチルメタクリレート10mmolのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、グラフトポリマー鎖としてポリメチルメタクリレート鎖(Poly(MMA))が導入されたシリカ粒子を作製した。
【0048】
(比較例2)
グラフトポリマー鎖を形成するモノマーとしてn-ブチルメタクリレート10mmolのみを用いたこと以外は実施例1と同様にして、グラフトポリマー鎖としてポリ(n-ブチルメタクリレート鎖(Poly(n-BMA))が導入されたシリカ粒子を作製した。
【0049】
2.発泡性粒子の熱重量測定
グラフトポリマー鎖が導入された各シリカ粒子(発泡性粒子)を、窒素気流下で、室温(25℃付近)から120℃まで昇温速度10℃/分で昇温することと、120℃で30分保持することと、120℃から600℃まで昇温速度5℃/分で昇温することとを順に含む条件の熱重量測定によって分析した。実施例1~4の発泡性粒子は、100~600℃の範囲に2段階の重量減少を示した。図4は、発泡性粒子(SiNP-g-PtBMA)の熱重量測定の結果を示すグラフである。図4には、重合開始基が導入されたシリカ粒子(SiNP-Br)の熱重量測定の結果も併せて破線で示されている。比較例1、2のシリカ粒子の熱重量測定では、400℃以上の領域において、熱分解による1段階の重量減少だけが観測された。グラフトポリマー鎖が導入されたシリカ粒子の熱重量測定における100~600℃の範囲全体での重量減少量から、重合開始基が導入されたシリカ粒子の熱重量測定における100~600℃の範囲全体での重量減少量を差し引いた値を、グラフト量(シリカ粒子及びグラフトポリマー鎖の合計量に対するグラフトポリマー鎖の量の割合)とみなした。表1に算出されたグラフト量が示される。
【0050】
3.発泡体の作製
ポリメチルメタクリレート(PMMA)のテトラヒドロフラン溶液(濃度5.0質量%)に、グラフトポリマー鎖が導入された各シリカ粒子を、PMMAの量に対して2質量%の量で分散させた。得られた溶液をガラス板にスピンコートによって塗布し、塗膜を乾燥させることによって、PMMA及びシリカ粒子を含むPMMAフィルム(発泡性樹脂組成物のフィルム)を作製した。得られたPMMAフィルムはPMMA単体と同様に透明であり、PMMA中でのシリカ粒子の分散性が良好であることが分かった。
【0051】
得られたPMMAフィルムを300℃で1時間加熱したところ、実施例のシリカ粒子(発泡性粒子)を含むPMMAフィルムは発泡体を形成した。図5は、実施例1の発泡性粒子(SiNP-g-PtBMA)を含むPMMAフィルムから形成された発泡体の電子顕微鏡写真である。シリカ粒子の粒径が50nmである点を考慮すると、発泡によって気泡が形成されているといえる。比較例のシリカ粒子を含むPMMAフィルム、及びPMMA単体のフィルムでは、発泡は確認されなかった。
【0052】
【表1】


図1
図2
図3
図4
図5