(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/34 20060101AFI20230530BHJP
H03F 1/32 20060101ALI20230530BHJP
H03F 3/38 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
H03F3/34 210
H03F3/34 220
H03F1/32
H03F3/38
(21)【出願番号】P 2019039584
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大司
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-502581(JP,A)
【文献】特開平09-244590(JP,A)
【文献】実開昭59-059021(JP,U)
【文献】特開2014-147050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0368267(US,A1)
【文献】米国特許第09912309(US,B1)
【文献】特開2018-061143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00- 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、
前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、
前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、
前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、
前記第1の増幅器と前記第2のチョッパ変調器との間に入出力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するノイズリダクションループ回路と、
を備え、
前記ノイズリダクションループ回路は、
前記ノイズリダクションループ回路の入力を増幅する第3の増幅器と、
前記第3の増幅器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、
前記第3の増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分が低減された増幅器であり、
前記ノイズリダクションループ回路の入出力が負帰還構成となるよう接続され、
前記第3の増幅器は、前記第3の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能を有する校正回路を備えるオートゼロ増幅器を含み、
前記オートゼロ増幅器は、前記校正回路として機能するオートゼロ増幅回路を備え、
前記オートゼロ増幅回路は、前記オートゼロ増幅回路における増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正信号をサンプリングする校正モードと、前記校正信号によりオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された前記増幅器によって入力信号を増幅する増幅モードと、を有し、
前記オートゼロ増幅回路を前記校正モードに切り替える第1のスイッチと、前記オートゼロ増幅回路を前記増幅モードに切り替える第2のスイッチと、を備え、
前記第1及び第2のスイッチを所定の動作クロックによって交互に駆動して前記校正モードと前記増幅モードとを交互に動作させ、
前記オートゼロ増幅器を駆動する前記所定の動作クロックは、前記第1及び第2のチョッパ変調器を駆動する動作クロックの周波数より低い周波数の動作クロックとする、増幅装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の増幅装置であって、
前記オートゼロ増幅器は、複数の前記オートゼロ増幅回路を有し、第1のオートゼロ増幅回路が前記校正モードにて動作する時、第2のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードにて動作し、前記第1のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードにて動作する時、前記第2のオートゼロ増幅回路が前記校正モードにて動作する、増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅器は、センサ信号等の増幅に広く用いられているが、いくつかの応用例では、増幅器内部のオフセット成分及び低周波雑音成分が非常に小さいことを要求される。従来の増幅器では、オフセット成分及び低周波雑音成分がその要求を満たすことができないため、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法が多く存在している。
【0003】
オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の一例として、チョッパ安定化増幅器が存在している。チョッパ安定化増幅器は、チョッパ変調器を用いて入力段の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分のみが高周波帯域に変調するように構成することで、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法である。
【0004】
オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の他の例として、オートゼロ増幅器が存在している。オートゼロ増幅器は、内蔵している校正回路によって増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法である。一般にオートゼロ増幅器は、スイッチによって入出力を切り替え、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。そのため、一つのオートゼロ増幅器だけでは、校正モードの時に信号を増幅することができない。そこで、例えば非特許文献1に開示されているように、二つのオートゼロ増幅器を用意し、一方のオートゼロ増幅器が校正モードの時、もう片方が増幅モードとなり信号を増幅するように構成されたPing-Pongオートゼロ増幅器が採用されている。
【0005】
以上のように、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する手法の例として、チョッパ安定化増幅器とオートゼロ増幅器とが存在する。しかし、チョッパ安定化増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分が高周波帯域に変調され、それがリップルノイズとなり、リップルノイズによる高周波雑音成分が生じる課題がある。また、オートゼロ増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減するような信号を校正回路がサンプリングする必要があるため、サンプリングの際に生じるエイリアシング雑音が発生し、エイリアシング雑音による低周波雑音成分が生じる課題がある。このため、これらの課題を改善するための手法がいくつか存在している。
【0006】
一例として、特許文献1に開示されているように、チョッパ安定化増幅器とPing-Pongオートゼロ増幅器の動作を組み合わせた手法が存在する。この手法を用いた場合、Ping-Pongオートゼロ増幅器によって発生したエイリアシング雑音は、チョッパ変調器によって高周波帯域に変調されるため、低周波雑音成分を大きく低減できる。また、チョッパ変調器によって高周波帯域に変調されたオフセット成分及び低周波雑音成分は、Ping-Pongオートゼロ増幅器によって大きく低減される。このため、オフセット成分及び低周波雑音成分が高周波帯域に変調されることによって発生するリップルノイズによる高周波雑音成分も大きく低減することができる。
【0007】
他の例として、特許文献2に開示されているように、チョッパ安定化増幅器の後段にスイッチドキャパシタ型のノッチフィルタを使用する手法が存在する。この手法を用いることによって、チョッパ安定化増幅器によって発生したリップルノイズはノッチフィルタによって低減され、結果としてオフセット成分及び低周波雑音成分だけではなく、高周波雑音も低減することができる。
【0008】
さらに他の例として、特許文献3、特許文献4に開示されているように、フィードバック手法を用いることで、チョッパ安定化増幅器のリップルノイズを低減する手法が存在する。この手法は、リップルノイズをフィードバック回路の入力の増幅器やカップリング容量によって検出した後に、フィードバック回路内部のチョッパ変調器によってリップルノイズをオフセット成分及び低周波雑音成分に復調し、入力段の増幅器の出力に負帰還させるものである。このフィードバックにより、入力段の増幅器によって発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。この手法により、チョッパ変調器によって変調されるオフセット成分及び低周波雑音成分が低減され、結果としてリップルノイズ、つまり高周波雑音成分を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6476671号明細書
【文献】米国特許第7292095号明細書
【文献】米国特許第7764118号明細書
【文献】米国特許第8120422号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ion E. Opris and Gregory T.A. Kovacs, “A Rail-to-Rail Ping-Pong Op-Amp”, IEEE J. Solid-State Circuits, vol. 31, no 9, pp. 1320-1324, Sep. 1996.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図7は、チョッパ安定化増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
図7では基本的なチョッパ安定化増幅器の構成を示している。チョッパ安定化増幅器は、チョッパ変調器1001、増幅器1002、チョッパ変調器1003を備える。
図7の構成において、増幅器1002にはオフセット成分(Voffset)及び低周波雑音成分(1/f noise)が発生する。そこで、チョッパ変調器1001によって低周波帯域の信号成分を増幅器1002のオフセット成分及び低周波雑音成分が少ない高周波帯域に変調し、増幅器1002にて増幅した後、チョッパ変調器1003によって高周波帯域の信号成分を低周波帯域に復調する。これにより、チョッパ安定化増幅器の全体のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。しかし、チョッパ変調器1003によって高周波帯域に変調されたオフセット成分及び低周波雑音成分はリップルノイズとなり、高周波雑音成分が発生する課題が生じる。
【0012】
図8は、
図7の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
図8では、信号成分、雑音成分、オフセット成分のそれぞれについて、時間波形と周波数分布の変化過程のイメージを示している。
図8において、上段は時間波形、下段は周波数特性をそれぞれ示している。チョッパ変調器1001及びチョッパ変調器1003のチョッパ周波数をfchとする。信号成分は、一度チョッパ変調器1001によって高周波帯域に変調された後に、増幅器1002にて増幅され、増幅器1002のオフセット成分及び低周波雑音成分が加算される。その後、チョッパ変調器1003を通すことにより信号成分は復調され、オフセット成分及び低周波雑音成分は高周波帯域に変調される。このように、チョッパ安定化増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調することによってリップルノイズが発生してしまうため、低雑音化を図るためには、リップルノイズの原因となるオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する必要がある。
【0013】
本発明は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高精度に低減することが可能な増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、入力信号を高周波帯域に変調する第1のチョッパ変調器と、前記第1のチョッパ変調器の出力を増幅する第1の増幅器と、前記第1の増幅器の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調する第2のチョッパ変調器と、前記第2のチョッパ変調器の出力を増幅する第2の増幅器と、前記第1の増幅器と前記第2のチョッパ変調器との間に入出力が接続され、前記第1の増幅器の出力を負帰還して前記第1の増幅器において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するノイズリダクションループ回路と、を備え、前記ノイズリダクションループ回路は、前記ノイズリダクションループ回路の入力を増幅する第3の増幅器と、前記第3の増幅器の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力を増幅する第4の増幅器と、を有し、前記第3の増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分が低減された増幅器であり、前記ノイズリダクションループ回路の入出力が負帰還構成となるよう接続され、前記第3の増幅器は、前記第3の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能を有する校正回路を備えるオートゼロ増幅器を含み、前記オートゼロ増幅器は、前記校正回路として機能するオートゼロ増幅回路を備え、前記オートゼロ増幅回路は、前記オートゼロ増幅回路における増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正信号をサンプリングする校正モードと、前記校正信号によりオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された前記増幅器によって入力信号を増幅する増幅モードと、を有し、前記オートゼロ増幅回路を前記校正モードに切り替える第1のスイッチと、前記オートゼロ増幅回路を前記増幅モードに切り替える第2のスイッチと、を備え、前記第1及び第2のスイッチを所定の動作クロックによって交互に駆動して前記校正モードと前記増幅モードとを交互に動作させ、前記オートゼロ増幅器を駆動する前記所定の動作クロックは、前記第1及び第2のチョッパ変調器を駆動する動作クロックの周波数より低い周波数の動作クロックとする、増幅装置を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記の増幅装置であって、前記オートゼロ増幅器は、複数の前記オートゼロ増幅回路を有し、第1のオートゼロ増幅回路が前記校正モードにて動作する時、第2のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードにて動作し、前記第1のオートゼロ増幅回路が前記増幅モードにて動作する時、前記第2のオートゼロ増幅回路が前記校正モードにて動作する、増幅装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、オフセット成分及び低周波雑音成分を高精度に低減することが可能な増幅装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図2】本実施形態の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
【
図3】第2の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図4】本実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
【
図5】第3の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図6】第4の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。
【
図7】チョッパ安定化増幅器を用いた増幅回路の構成例を示す図である。
【
図8】
図7の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る増幅装置を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
本実施形態では、チョッパ変調器及びオートゼロ増幅器を用いたチョッパ安定化増幅器を含む増幅装置の構成例を例示する。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の増幅装置の構成を示す図である。第1の実施形態の増幅装置は、入力端より入力される入力信号Vinを高周波帯域に変調するチョッパ変調器101と、チョッパ変調器101の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器102とを備える。また、増幅装置は、相互コンダクタンス増幅器102の出力の信号成分を低周波帯域に復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器103と、チョッパ変調器103にて復調された信号成分を増幅する増幅器120とを備える。増幅器120の出力が増幅装置の出力端となり、出力信号Voutが出力される。また、増幅装置は、相互コンダクタンス増幅器102とチョッパ変調器103との間に入出力が接続されたノイズリダクションループ(Noise Reduction Loop)回路110を備える。
【0031】
ノイズリダクションループ回路110は、高周波帯域に変調された信号成分を増幅する相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分を、チョッパ変調器103が高周波帯域に変調する前にフィードバックして低減する回路である。この構成により、ノイズリダクションループ回路110は、チョッパ変調器103の出力に発生するリップルノイズを低減する機能を有する。本明細書では、このような雑音低減機能を有する負帰還ループのフィードバック回路をノイズリダクションループ回路と呼ぶことにする。
【0032】
ノイズリダクションループ回路110は、ノイズリダクションループ回路110の入力を増幅するオートゼロ増幅器(Autozeroing Amplifier)111と、オートゼロ増幅器111の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路(Filter)112と、フィルタ回路112の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器113とを有する構成である。ノイズリダクションループ回路110は、入出力が負帰還構成となるように相互コンダクタンス増幅器102とチョッパ変調器103との間に接続することにより、相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するように動作する。ノイズリダクションループ回路110によって、チョッパ変調器103により変調される相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分が低減される。したがって、ノイズリダクションループ回路110を設けることにより、チョッパ安定化増幅器の出力に本来現れる高周波帯域のリップルノイズが低減される。
【0033】
ただし、ノイズリダクションループ回路110の入力段に用いる増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分は、ノイズリダクションループ回路110の精度を低下させる。このため、増幅装置の入力段の相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する精度が下がり、結果として、増幅装置の出力にリップルノイズとして現れるおそれがある。このような事情に鑑み、ノイズリダクションループ回路110の入力段の増幅器には、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減する工夫が必要となる。そこで本実施形態では、ノイズリダクションループ回路110の入力段に用いる増幅器をオートゼロ増幅器111として構成し、オフセット成分及び低周波雑音成分を低減することによって、この影響を十分無視できる。
【0034】
図2は、本実施形態の増幅回路による信号成分、雑音成分及びオフセット成分の時間波形と周波数特性の一例を示す特性図である。
図2では、信号成分、雑音成分、オフセット成分のそれぞれについて、時間波形と周波数分布の変化過程のイメージを示している。
図2において、上段は時間波形、下段は周波数特性をそれぞれ示している。チョッパ変調器101及びチョッパ変調器103のチョッパ周波数をfchとする。
【0035】
信号成分は、チョッパ変調器101によって高周波帯域に変調された後に、相互コンダクタンス増幅器102にて増幅される。その後、チョッパ変調器103を通すことにより信号成分は復調され、増幅器120にて増幅されて出力される。本実施形態では、ノイズリダクションループ回路110によって、図中の破線→実線で示すように、増幅回路の入力段の相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分が低減される。このため、増幅器120の出力において、増幅回路の出力として最終的に出力されるリップルノイズが低減される。
【0036】
前述した特許文献3の手法では、フィードバック回路内部のチョッパ変調器の後段にローパスフィルタ回路とスイッチドキャパシタ型のノッチフィルタを用いることによって、フィードバック回路の入力段の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を低減させている。スイッチドキャパシタ型のノッチフィルタを用いる場合、フィードバック回路の安定性設計の自由度が制限される課題がある。また、ノッチフィルタのサンプリング動作が大信号入力時の過渡特性に影響を与えてしまうという課題がある。また、前述した特許文献4の手法では、フィードバック回路の入力段にカップリング容量を用いることによって、フィードバック回路の入力段の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を低減させている。カップリング容量を用いる場合、フィードバック回路の入力段のカップリング容量が利得を持たないため、フィードバック回路内部のチョッパ変調器後の増幅器で発生するオフセット成分及び低周波雑音成分の影響が大きくなる。このオフセット成分及び低周波雑音成分は、フィードバック回路の精度を低下させるため、チョッパ安定化増幅器の入力段のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する精度が下がり、結果として、チョッパ安定化増幅器の出力にリップルノイズとして現れるという課題がある。
【0037】
これに対し、本実施形態では、フィードバック回路内部にチョッパ変調器を設けず、相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分をそのままフィードバックしてオフセット成分を低減させる構成としている。本実施形態のように、ノイズリダクションループ回路110の入力段に用いる増幅器をオートゼロ増幅器111とすることによって、フィードバック回路内部にノッチフィルタ回路を設ける必要がないという利点がある。加えて、ノイズリダクションループ回路110の入力段のオートゼロ増幅器111において大きな利得をとることができるため、フィードバック回路の後段の増幅器によるオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を大きく低減できる利点がある。したがって、増幅回路によって発生する入力オフセット電圧と、1/f雑音による低周波雑音成分とを、精度良く低減させることが可能になる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、チョッパ安定化増幅器を含む増幅装置において、増幅装置の出力に本来現れるオフセット成分及び低周波雑音成分とリップルノイズを高精度に低減することが可能な増幅装置を実現できる。
【0039】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第2の実施形態の増幅装置は、
図1に示した本実施形態の増幅装置をより具体的に示す一構成例である。増幅装置は、入力端より入力される入力信号Vinを高周波帯域に変調するチョッパ変調器101と、チョッパ変調器101の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器102とを備える。また、増幅装置は、相互コンダクタンス増幅器102の出力の信号成分を低周波帯域に復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器103と、チョッパ変調器103にて復調された信号成分を増幅する増幅器120aとを備える。増幅器120aの出力が増幅装置の出力端となり、出力信号Voutが出力される。また、増幅装置は、相互コンダクタンス増幅器102とチョッパ変調器103との間に入出力が接続されたノイズリダクションループ回路110を備える。
【0040】
ノイズリダクションループ回路110は、ノイズリダクションループ回路110の入力を増幅するオートゼロ増幅器111と、オートゼロ増幅器111の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路112と、フィルタ回路112の出力を増幅する相互コンダクタンス増幅器113とを有する構成である。ノイズリダクションループ回路110は、入出力が負帰還構成となるように相互コンダクタンス増幅器102とチョッパ変調器103との間に接続することにより、相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減するように動作する。
【0041】
ノイズリダクションループ回路110のオートゼロ増幅器111は、例えばPing-Pongオートゼロ増幅器を用いて構成される。オートゼロ増幅器111は、増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能を有する校正回路を備える。Ping-Pongオートゼロ増幅器は、並列に接続された二つのオートゼロ増幅回路210、220を有して構成され、オートゼロ増幅回路210、220はそれぞれ校正回路として機能する増幅器である。オートゼロ増幅回路210は、二系統のスイッチΦ1及びΦ2と、二つの相互コンダクタンス増幅器211及び212と、サンプリング容量C21とを有して構成される。オートゼロ増幅回路220は、二系統のスイッチΦ1及びΦ2と、二つの相互コンダクタンス増幅器221及び222と、サンプリング容量C22とを有して構成される。
【0042】
オートゼロ増幅回路210は、動作モードとして、校正モードと増幅モードとを有する。校正モードは、相互コンダクタンス増幅器211のオフセット成分及び低周波雑音成分をキャンセルするための校正電圧をサンプリングするモードである。校正モードでは、相互コンダクタンス増幅器212によって相互コンダクタンス増幅器211のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減できるような信号(校正電圧等の校正信号)を、サンプリング容量C21によりサンプリングする。増幅モードは、校正信号によりオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された相互コンダクタンス増幅器211によって、入力信号を増幅するモードである。増幅モードでは、校正モードでサンプリングされた校正信号を印加した相互コンダクタンス増幅器212により、相互コンダクタンス増幅器211のオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された状態となる。そして、このオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された相互コンダクタンス増幅器211によって入力信号を増幅する。オートゼロ増幅回路210は、所定の動作クロックのクロック信号によってスイッチΦ1及びΦ2を切り替えることにより、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。
【0043】
オートゼロ増幅回路220もオートゼロ増幅回路210と同様に、校正モードと増幅モードとを有する。すなわち、オートゼロ増幅回路220は、校正モードにおいて、相互コンダクタンス増幅器221のオフセット成分及び低周波雑音成分を相互コンダクタンス増幅器222によって低減できるような信号(校正電圧等の校正信号)をサンプリング容量C22によってサンプリングする。また、オートゼロ増幅回路220は、増幅モードにおいて、オフセット成分及び低周波雑音成分が相互コンダクタンス増幅器222の校正信号によって低減された相互コンダクタンス増幅器221により、入力信号を増幅する。オートゼロ増幅回路220は、所定の動作クロックのクロック信号によってスイッチΦ1及びΦ2を切り替えることにより、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。
【0044】
オートゼロ増幅回路210が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路220は増幅モードで動作し、オートゼロ増幅回路220が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路210は増幅モードで動作する。
【0045】
図4は、本実施形態の増幅回路におけるクロック信号の動作波形の一例を示す図である。
図4において、CHOP及びCHOP ̄はチョッパ変調器101、103を駆動する動作クロックとしての相補チョッピングクロック信号の動作波形を示している。ここで、オーバーライン付きのCHOP ̄は、CHOPの反転信号を表すものである。また、φ1及びφ2はオートゼロ増幅回路210、220のスイッチΦ1、Φ2をそれぞれ駆動する動作クロックに関するクロック信号の動作波形を示している。
【0046】
スイッチΦ1、Φ2を駆動する動作クロックのクロック信号φ1、φ2の周波数は、相補チョッピングクロック信号CHOP及びCHOP ̄の周波数、すなわちチョッパ変調器101、103のチョッパ周波数fchよりも低い周波数に設定する。ここで、クロック信号φ1、φ2の周波数をオートゼロ周波数fazとすると、faz<fchとし、例えばfaz≒(1/2)×fchに設定する。例えば、チョッパ周波数fchを約100kHz程度とした場合、オートゼロ周波数fazは約50kHz程度に設定する。
【0047】
オートゼロ増幅器のエイリアシング雑音は、チョッパ変調器によって高周波成分から低周波成分に変調され、増幅回路の出力として現れるおそれがある。この課題に対して、本実施形態では、オートゼロ増幅器111の動作クロックのクロック信号φ1、φ2の周波数をチョッパ周波数fchよりも低くすることにより、オートゼロ増幅器111のエイリアシング雑音の帯域がチョッパ周波数より低くなる。これによって、オートゼロ増幅器111のエイリアシング雑音の高周波成分を発生させないようにできる。
【0048】
オートゼロ増幅器111をPing-Pongオートゼロ増幅器により構成した場合、オートゼロ増幅器111のトランスコンダクタンスgmは増幅器の入力段の相互コンダクタンス増幅器102と比較して小さな値にでき、オートゼロ増幅器111の回路面積及び消費電力を小さく設計することができる。このため、オートゼロ増幅器111をPing-Pongオートゼロ増幅器としても、増幅装置全体の増幅器の数は増加するが、回路面積及び消費電力の増大が十分小さくなるように設計することができる。
【0049】
ノイズリダクションループ回路110のフィルタ回路112は、例えば、相互コンダクタンス増幅器301と容量C31、C32、C33とによって構成される積分回路を用いる。フィルタ回路112により、オートゼロ増幅器111の出力の高周波成分を低減し、低周波成分を相互コンダクタンス増幅器301にて増幅して通過させる。そして、フィルタ回路112の出力を相互コンダクタンス増幅器113にて増幅し、相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分をフィードバックする。
【0050】
チョッパ変調器103の後段に設けられる出力段の増幅器120aは、例えば
図3のように、3段の増幅器により構成し、増幅装置全体として4段の増幅回路を構成する。増幅器120aは、相互コンダクタンス増幅器124、相互コンダクタンス増幅器123、増幅器121を備える構成である。
【0051】
増幅器120aは、入力を相互コンダクタンス増幅器124の入力とし、チョッパ変調器103の出力に相互コンダクタンス増幅器124が接続される。相互コンダクタンス増幅器124の出力には相互コンダクタンス増幅器123の入力が接続される。相互コンダクタンス増幅器123の出力には増幅器121の入力が接続され、増幅器121の出力が増幅器120aの出力、すなわち
図3の増幅装置の出力端となる。
【0052】
また、増幅器120aには、入れ子型ミラー補償構成となるように接続された位相補償容量C111、C112、C121、C122、C131が設けられる。また、チョッパ変調器101の入力と増幅器121の入力との間にフィードフォワードアンプとして機能する相互コンダクタンス増幅器122が接続される。増幅装置の安定性の更なる向上を図るために、フィードフォワード構成となるように相互コンダクタンス増幅器122の出力を増幅器121の入力に接続する。これらの位相補償容量C111、C112、C121、C122、C131と相互コンダクタンス増幅器122によるフィードフォワードアンプとによって、位相補償回路が構成される。
【0053】
本実施形態によれば、チョッパ安定化増幅器を含む増幅装置において、増幅装置の出力に本来現れるオフセット成分及び低周波雑音成分とリップルノイズを高精度に低減することができる。また、増幅装置を全て連続系の回路で構成でき、ノッチフィルタ回路等を設けない構成にできる。また、本実施形態では、ノイズリダクションループ回路においてオートゼロ増幅器111の利得を大きくとることができるため、後段のフィルタ回路112の相互コンダクタンス増幅器301や相互コンダクタンス増幅器113における利得やオフセット成分の影響を小さくできる。さらには相互コンダクタンス増幅器102、相互コンダクタンス増幅器124、相互コンダクタンス増幅器123と増幅器を多段に構成することによって、フィードフォワードアンプとして機能する相互コンダクタンス増幅器122のオフセット成分の影響を低減できる。
【0054】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第3の実施形態の増幅装置は、チョッパ変調器103の後段に設ける出力段の増幅器の構成を変更した第1変形例である。
【0055】
図3に示した増幅器120aの構成を用いる場合、相互コンダクタンス増幅器124のオフセット成分が無視できない場合がある。第3の実施形態では、出力段の増幅器における相互コンダクタンス増幅器124のオフセット成分の影響を低減する一つの手法として、チョッパ変調器を設けた増幅器120bの構成例を示す。
【0056】
チョッパ変調器103の後段に設けられる増幅器120bは、例えば
図5のように、3段の増幅器により構成し、増幅装置全体として4段の増幅回路を構成する。増幅器120bは、チョッパ変調器125、相互コンダクタンス増幅器124、チョッパ変調器126、相互コンダクタンス増幅器123、増幅器121を備える構成である。
【0057】
増幅器120bは、入力部にチョッパ変調器125を設け、チョッパ変調器103の出力にチョッパ変調器125の入力が接続され、内部増幅器としての相互コンダクタンス増幅器124の入力にチョッパ変調器125の出力が接続される。相互コンダクタンス増幅器124の出力にはチョッパ変調器126の入力が接続され、チョッパ変調器126の出力に相互コンダクタンス増幅器123の入力が接続される。相互コンダクタンス増幅器123の出力には増幅器121の入力が接続され、増幅器121の出力が増幅器120bの出力、すなわち
図5の増幅装置の出力端となる。
【0058】
このように、相互コンダクタンス増幅器124の入力と出力にそれぞれチョッパ変調器125、チョッパ変調器126を接続し、相互コンダクタンス増幅器124のオフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するように動作させる構成とする。
【0059】
本実施形態によれば、ノイズリダクションループ回路110より後段の増幅器120bにおける相互コンダクタンス増幅器124のオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を低減できる。この結果、チョッパ安定化増幅器を含む増幅装置全体のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減することが可能になる。
【0060】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態の増幅回路の構成を示す図である。第4の実施形態の増幅装置は、チョッパ変調器103の後段に設ける出力段の増幅器の構成を変更した第2変形例である。第4の実施形態では、出力段の増幅器における相互コンダクタンス増幅器124のオフセット成分の影響を低減する他の手法として、オートゼロ増幅器を設けた増幅器120cの構成例を示す。
【0061】
チョッパ変調器103の後段に設けられる増幅器120cは、例えば
図6のように、3段の増幅器により構成し、増幅装置全体として4段の増幅回路を構成する。増幅器120cは、オートゼロ増幅器124c、相互コンダクタンス増幅器123、増幅器121を備える構成である。すなわち、
図3の構成における相互コンダクタンス増幅器124をオートゼロ増幅器124cにより構成している。
【0062】
オートゼロ増幅器124cは、例えばPing-Pongオートゼロ増幅器を用いて構成される。Ping-Pongオートゼロ増幅器は、並列に接続された二つのオートゼロ増幅回路410、420を有して構成され、オートゼロ増幅回路410、420はそれぞれ校正回路として機能する増幅器である。オートゼロ増幅回路410は、二系統のスイッチΦ3及びΦ4と、二つの相互コンダクタンス増幅器411及び412と、サンプリング容量C41とを有して構成される。オートゼロ増幅回路420は、二系統のスイッチΦ3及びΦ4と、二つの相互コンダクタンス増幅器421及び422と、サンプリング容量C42とを有して構成される。
【0063】
オートゼロ増幅回路410は、オートゼロ増幅回路210と同様に、校正モードと増幅モードとを有する。すなわち、オートゼロ増幅回路410は、校正モードにおいて、相互コンダクタンス増幅器411のオフセット成分及び低周波雑音成分を相互コンダクタンス増幅器412によって低減できるような校正信号をサンプリング容量C41によってサンプリングする。また、オートゼロ増幅回路410は、増幅モードにおいて、オフセット成分及び低周波雑音成分が相互コンダクタンス増幅器412の校正信号によって低減された相互コンダクタンス増幅器411により、入力信号を増幅する。オートゼロ増幅回路410は、所定の動作クロックのクロック信号によってスイッチΦ3及びΦ4を切り替えることにより、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。
【0064】
オートゼロ増幅回路420もオートゼロ増幅回路410と同様に、校正モードと増幅モードとを有する。すなわち、オートゼロ増幅回路420は、校正モードにおいて、相互コンダクタンス増幅器421のオフセット成分及び低周波雑音成分を相互コンダクタンス増幅器422によって低減できるような校正信号をサンプリング容量C42によってサンプリングする。また、オートゼロ増幅回路420は、増幅モードにおいて、オフセット成分及び低周波雑音成分が相互コンダクタンス増幅器422の校正信号によって低減された相互コンダクタンス増幅器421により、入力信号を増幅する。オートゼロ増幅回路420は、所定の動作クロックのクロック信号によってスイッチΦ3及びΦ4を切り替えることにより、校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。
【0065】
オートゼロ増幅回路410が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路420は増幅モードで動作し、オートゼロ増幅回路420が校正モードにて動作する時、オートゼロ増幅回路410は増幅モードで動作する。
【0066】
オートゼロ増幅器124cにおける動作クロックは、
図4に示したクロック信号の動作波形を用いる。すなわち、オートゼロ増幅器124cのスイッチΦ3及びΦ4を駆動する動作クロックのクロック信号φ3、φ4は、オートゼロ増幅器111のスイッチΦ1、Φ2を駆動する動作クロックのクロック信号φ1、φ2と同様である。スイッチΦ3及びΦ4を駆動する動作クロックのクロック信号φ3、φ4の周波数は、相補チョッピングクロック信号CHOP及びCHOP ̄の周波数、すなわちチョッパ変調器101、103のチョッパ周波数fchよりも低い周波数に設定する。これにより、オートゼロ増幅器124cのエイリアシング雑音の帯域をチョッパ周波数より低くし、オートゼロ増幅器124cのエイリアシング雑音の高周波成分を発生させないようにする。
【0067】
本実施形態によれば、ノイズリダクションループ回路110より後段の増幅器120cにおいてオートゼロ増幅器124cを用いることにより、増幅器120cのオフセット成分及び低周波雑音成分の影響を大きく低減させることができる。この結果、チョッパ安定化増幅器を含む増幅装置全体のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減することが可能になる。
【0068】
上述したように、本実施形態の構成によれば、増幅装置の出力に本来現れるオフセット成分及び低周波雑音成分とリップルノイズとを大きく低減できる。本実施形態では、オフセット成分及び低周波雑音成分を大きく低減させた増幅回路を実現でき、チョッパ安定化増幅器を用いたZero-Driftアンプ等の特性を改善できる。したがって、例えばセンサ信号等を増幅するための高精度な増幅動作を要求される増幅回路、計装アンプ等の増幅装置において、より安定的に、精度良くオフセット成分及び低周波雑音成分を低減することが可能になる。
【0069】
本実施形態では、入力信号を高周波帯域に変調するチョッパ変調器101と、チョッパ変調器101の出力を増幅する第1の増幅器としての相互コンダクタンス増幅器102と、相互コンダクタンス増幅器102の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器103と、チョッパ変調器103の出力を増幅する第2の増幅器120と、相互コンダクタンス増幅器102とチョッパ変調器103との間に入出力が接続されるノイズリダクションループ回路110とを備える。ノイズリダクションループ回路110は、相互コンダクタンス増幅器102の出力を負帰還して相互コンダクタンス増幅器102において発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。ノイズリダクションループ回路110によって、相互コンダクタンス増幅器102の出力のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減することにより、増幅装置の出力に本来現れるリップルノイズの発生を抑制できる。このため、精度良くオフセット成分及び低周波雑音成分を低減可能となる。よって、オフセット成分及び低周波雑音成分をより高精度に低減する2段アンプ等の増幅装置を実現できる。
【0070】
また、ノイズリダクションループ回路110は、ノイズリダクションループ回路110の入力を増幅する第3の増幅器としてのオートゼロ増幅器111と、オートゼロ増幅器111の出力の高周波信号成分を低減するフィルタ回路112と、フィルタ回路112の出力を増幅する第4の増幅器としての相互コンダクタンス増幅器113と、を有してよい。第3の増幅器は、オフセット成分及び低周波雑音成分が低減された増幅器であり、ノイズリダクションループ回路110の入出力が負帰還構成となるよう接続される。これにより、ノイズリダクションループ回路110の入出力間に存在するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する。このような構成のノイズリダクションループ回路110によって、精度良くオフセット成分及び低周波雑音成分を低減できる。
【0071】
また、第3の増幅器は、第3の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能を有する校正回路を備えるオートゼロ増幅器111を含んでよい。オートゼロ増幅器111の校正回路によって、オフセット成分及び低周波雑音成分をより高精度に低減できる。
【0072】
また、オートゼロ増幅器111は、校正回路として機能するオートゼロ増幅回路210、220を備えてよい。オートゼロ増幅回路210、220は、オートゼロ増幅回路210、220における相互コンダクタンス増幅器211、221のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する校正信号を相互コンダクタンス増幅器212、222にてサンプリングする校正モードと、相互コンダクタンス増幅器212、222の校正信号によりオフセット成分及び低周波雑音成分が低減された相互コンダクタンス増幅器211、221によって入力信号を増幅する増幅モードと、を有する。オートゼロ増幅器111は、オートゼロ増幅回路210、220を校正モードに切り替える第1のスイッチと、オートゼロ増幅回路210、220を増幅モードに切り替える第2のスイッチと、を備える。オートゼロ増幅回路210では、第1のスイッチがスイッチΦ2、第2のスイッチがスイッチΦ1となり、オートゼロ増幅回路220では、第1のスイッチがスイッチΦ1、第2のスイッチがスイッチΦ2となる。オートゼロ増幅回路210、220は、第1及び第2のスイッチΦ1、Φ2を所定の動作クロックによって交互に駆動して校正モードと増幅モードとを交互に動作させる。これにより、オートゼロ増幅回路210、220は、オートゼロ増幅器111のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させる機能を有する。このような構成のオートゼロ増幅器111によって、精度良くオフセット成分及び低周波雑音成分を低減できる。
【0073】
また、オートゼロ増幅器111は、複数のオートゼロ増幅回路210、220を有してよい。第1のオートゼロ増幅回路210が校正モードにて動作する時、第2のオートゼロ増幅回路220が増幅モードにて動作し、第1のオートゼロ増幅回路210が増幅モードにて動作する時、第2のオートゼロ増幅回路220が校正モードにて動作する。これにより、Ping-Pongオートゼロ増幅器が構成され、複数のオートゼロ増幅回路によって校正モードと増幅モードとを交互に動作させることにより、常時オフセット成分及び低周波雑音成分を低減しながら増幅を行うことができる。
【0074】
また、オートゼロ増幅器111を駆動する所定の動作クロックは、第1及び第2のチョッパ変調器101、103を駆動する動作クロックの周波数より低い周波数の動作クロックとする。すなわち、オートゼロ増幅器111を駆動する動作クロックのオートゼロ周波数fazを、チョッパ変調器101、103を駆動する動作クロックのチョッパ周波数fchよりも低くし、faz<fchとなるように、例えばfaz≒(1/2)×fchに設定する。これにより、オートゼロ増幅器111のエイリアシング雑音の帯域がチョッパ周波数より低くなり、高周波成分にオートゼロ増幅器111のエイリアシング雑音が発生しないようにオートゼロ増幅器111を動作させることができる。
【0075】
また、フィルタ回路112は、相互コンダクタンス増幅器301と、容量C31、C32、C33とによって構成される積分回路を含んでよい。フィルタ回路112は、第3の増幅器としてのオートゼロ増幅器111の出力の低周波信号成分を増幅し、高周波信号成分を低減する機能を有する。フィルタ回路112によって、高周波信号成分を低減して相互コンダクタンス増幅器102のオフセット成分をフィードバックできる。
【0076】
また、第2の増幅器120aは、入力信号を増幅する第5の増幅器としての相互コンダクタンス増幅器124と、相互コンダクタンス増幅器124の出力信号を増幅する1つ以上の増幅器(相互コンダクタンス増幅器123、増幅器121)と、位相補償回路とを有してよい。位相補償回路は、入れ子型ミラー補償構成となるように接続された位相補償容量C111、C112、C121、C122、C131と、チョッパ変調器101の入力と増幅器121の入力との間にフィードフォワード構成となるように接続された相互コンダクタンス増幅器122とによって構成してよい。これにより、2段アンプと同様に、3段アンプ、4段アンプ、5段アンプ等の多段増幅の増幅装置を構成する場合に、オフセット成分及び低周波雑音成分をより高精度に低減する増幅装置を実現できる。
【0077】
また、第2の増幅器120bにおいて、第5の増幅器は、入力信号を高周波帯域に変調するチョッパ変調器125と、チョッパ変調器125の出力を増幅する内部増幅器としての相互コンダクタンス増幅器124と、相互コンダクタンス増幅器124の出力の信号成分を復調し、オフセット成分及び低周波雑音成分を高周波帯域に変調するチョッパ変調器126と、を有するものとしてよい。このような構成の第5の増幅器では、第5の増幅器の内部増幅器で発生するオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能を有する。これにより、オフセット成分及び低周波雑音成分をより高精度に低減する多段増幅の増幅装置を実現できる。
【0078】
また、第2の増幅器120cにおいて、第5の増幅器は、第5の増幅器のオフセット成分及び低周波雑音成分を低減する機能を有する校正回路を備えるオートゼロ増幅器124cを含んでよい。オートゼロ増幅器124cは、上記のオートゼロ増幅器111と同様に、校正モードと増幅モードとを有し、オートゼロ増幅器124cのオフセット成分及び低周波雑音成分を低減させるオートゼロ増幅回路410、420を有する構成としてよい。これにより、オフセット成分及び低周波雑音成分をより高精度に低減する多段増幅の増幅装置を実現できる。
【0079】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、オフセット成分及び低周波雑音成分を高精度に低減することが可能となる効果を有し、例えばセンサ信号等を増幅する増幅回路、計装アンプ等の増幅装置に有用である。
【符号の説明】
【0081】
101、103、125、126:チョッパ変調器
102、113、122、123、124、211、212、221、222、301、411、412、421、422:相互コンダクタンス増幅器
110:ノイズリダクションループ回路
111、124c、:オートゼロ増幅器
112:フィルタ回路
120、120a、120b、120c、121:増幅器
210、220、410、420:オートゼロ増幅回路
C111、C112、C121、C122、C131:位相補償容量
C31、C32、C33:容量
C21、C22、C41、C42:サンプリング容量
Φ1、Φ2、Φ3、Φ4:スイッチ