(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-29
(45)【発行日】2023-06-06
(54)【発明の名称】導電性ポリマー複合体及び基板
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20230530BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20230530BHJP
C08L 33/16 20060101ALI20230530BHJP
C08F 212/14 20060101ALI20230530BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20230530BHJP
C08F 220/38 20060101ALI20230530BHJP
H01B 1/12 20060101ALI20230530BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20230530BHJP
C09D 125/18 20060101ALI20230530BHJP
C09D 133/16 20060101ALI20230530BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230530BHJP
C09D 153/00 20060101ALI20230530BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20230530BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20230530BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L25/18
C08L33/16
C08F212/14
C08F220/26
C08F220/38
H01B1/12 E
H01B1/12 F
H01B1/12 Z
C09D5/24
C09D125/18
C09D133/16
C09D201/00
C09D153/00
C09D201/02
H10K50/11
(21)【出願番号】P 2022011133
(22)【出願日】2022-01-27
(62)【分割の表示】P 2019021118の分割
【原出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】長澤 賢幸
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056348(JP,A)
【文献】特開2017-043753(JP,A)
【文献】特開2018-135471(JP,A)
【文献】特開2016-050304(JP,A)
【文献】特開2017-145323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/12
C08L 25/18
C08L 33/16
C08F 212/14
C08F 220/26
C08F 220/38
H01B 1/12
C09D 5/24
C09D 125/18
C09D 133/16
C09D 201/00
C09D 153/00
C09D 201/02
H10K 50/11
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)π共役系ポリマー、及び
(B)下記一般式(1)で示される繰り返し単位aと、下記一般式(2-1)~(2-7)で示される繰り返し単位から選択される1種又は2種以上の繰り返し単位bとを含む共重合体からなるドーパントポリマー
を含む複合体であって、
前記複合体が、前記繰り返し単位aを与えるモノマーが下記式(G1)~(G3)のうちのいずれかである複合体、又は、前記繰り返し単位bを与えるモノマーが下記一般式(G4)~(G25)のうちのいずれかである複合体であることを特徴とする導電性ポリマー複合体。
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基、Zはフェニレン基、ナフチレン基、エステル基のいずれかであり、Zがフェニレン基、ナフチレン基であればR
2は単結合、エステル基、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかであり、Zがエステル基であればR
2は単結合、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。mは1~3である。R
3、R
5、R
7、R
10、R
12、R
13及びR
15は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
4、R
6、R
8、R
11、及びR
14は、それぞれ独立に単結合、エーテル基、あるいはエステル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。R
9は、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、R
9中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X
1、X
2、X
3、X
4、X
6、及びX
7は、それぞれ独立に単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、X
5は、単結合、エーテル基、エステル基のいずれかである。Yはエーテル基、エステル基、アミノ基、あるいはアミド基のいずれかを示し、アミノ基およびアミド基は水素原子、あるいはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかを含んでもよい。Rf
1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、Rf
2とRf
3は少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、又はフッ素原子若しくはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基であり、nは1~4の整数である。a、b1、b2、b3、b4、b5、b6、及びb7は、0.1≦a≦0.6、0≦b1≦0.9、0≦b2≦0.9、0≦b3≦0.9、0≦b4≦0.9、0≦b5≦0.9、0≦b6≦0.9、0≦b7≦0.9であり、0<b1+b2+b3+b4+b5+b6+b7≦0.9である。)
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
(式中、R
3、R
5、R
7、R
10、R
12、R
13、R
15は前記と同様である。)
【請求項2】
前記(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位aが、下記一般式(4-1)~(4-5)で示される繰り返し単位a1~a5から選ばれる1種又は2種以上を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ポリマー複合体。
【化27】
(式中、R
16、R
17、R
18、R
19およびR
20は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは単結合、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基であり、Yとmは前記と同じである。)
【請求項3】
前記(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位bが、下記一般式(5-1)~(5-4)で示される繰り返し単位b’1~b’4から選ばれる1種又は2種以上を含むものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ポリマー複合体。
【化28】
(式中、R
21、R
22、R
23およびR
24は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、b‘1、b’2、b‘3、b’4は、0≦b‘1<1.0、0≦b’2<1.0、0≦b‘3<1.0、0≦b’4<1.0、0<b‘1+b’2+b‘3+b’4<1.0である。)
【請求項4】
前記(B)ドーパントポリマーが、下記一般式(6)で示される繰り返し単位cを更に含むものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の導電性ポリマー複合体。
【化29】
(cは0<c<1.0である。)
【請求項5】
前記(B)ドーパントポリマーの重量平均分子量が1,000~500,000であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の導電性ポリマー複合体。
【請求項6】
前記(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位aの全繰り返し単位に対する共重合割合が10%~60%であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性ポリマー複合体。
【請求項7】
前記(B)ドーパントポリマーがブロックコポリマーであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性ポリマー複合体。
【請求項8】
前記(A)π共役系ポリマーは、ピロール、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン、アニリン、多環式芳香族化合物、及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種又は2種以上の前駆体モノマーを重合したものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の導電性ポリマー複合体。
【請求項9】
有機EL素子の透明電極層又は正孔注入層の形成に用いられるものであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の導電性ポリマー複合体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の導電性ポリマー複合体によって有機EL素子中の電極層又は正孔注入層が形成されたものであることを特徴とする基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマー複合体、導電性ポリマー組成物と、前記導電性ポリマー複合体又は導電性ポリマー組成物によって有機EL素子中の電極層又は正孔注入層が形成された基板に関する。
【背景技術】
【0002】
共役二重結合を有する重合体(π共役系ポリマー)は、このポリマー自体は導電性を示さないが、適切なアニオン分子をドーピングすることによって電子または正孔の移動が発現し、導電性高分子材料となる。π共役系ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリセレノフェン、ポリテルロフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の(ヘテロ)芳香族ポリマー、及びこれらの混合物等が用いられており、アニオン分子(ドーパント)としては、スルホン酸系のアニオンが最もよく用いられている。これは、強酸であるスルホン酸が上記のπ共役系ポリマーと効率良く相互作用するためである。
【0003】
スルホン酸系のアニオンドーパントとしては、ポリビニルスルホン酸やポリスチレンスルホン酸(PSS)等のスルホン酸ポリマーが広く用いられている(特許文献1)。また、スルホン酸ポリマーには登録商標ナフィオンに代表されるビニルパーフルオロアルキルエーテルスルホン酸もあり、これは燃料電池用途に使用されている。
【0004】
スルホン酸ホモポリマーであるポリスチレンスルホン酸(PSS)は、ポリマー主鎖に対しスルホン酸がモノマー単位で連続して存在するため、π共役系ポリマーに対するドーピングが高効率であり、またドープ後のπ共役系ポリマーの水への分散性も向上させることができる。これはPSSにドープ部位よりも過剰に存在するスルホ基の存在により親水性が保持され、水への分散性が飛躍的に向上するためである。
【0005】
PSSをドーパントとしたポリチオフェンは、高導電性かつ水分散液としての扱いが可能なため、有機ELや太陽電池などの透明電極として使用されているITO(インジウム-スズ酸化物)に換わる塗布型の透明電極膜材料として期待されている。また、ポリチオフェンには、有機ELや太陽電池などの薄膜デバイスが全層塗布型材料機構に移行しつつある段階において、高い導電性は必要ないものの、電極からキャリア移動層へのキャリア移動負荷低減する注入層として機能する塗布型材料としての適用が期待されている。
【0006】
PSSは水に対し非常に親和性の高い水溶性樹脂であるため、π共役系ポリマーとの複合体を形成すると、疎水性の性質をもつ当該ポリマーを水中に粒子として分散することが可能である。この分散液は液体として取り扱うことが可能であり、界面活性剤等を添加することにより、塗布が困難である有機・無機基板上にも塗布成膜することが可能であり、前記用途においても基板上成膜することができる。成膜する方法としては、例えば、スピンコーター等による塗布、バーコーター、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷によって塗布し、その後、熱風循環炉、ホットプレート等による加熱処理、IR、UV照射等を行って導電膜を形成することができる。
【0007】
しかし、その一方でPSSの高い親水性のため、PSSをドーパントとしたπ共役系ポリマーとの複合体は基板上への塗布後、熱風循環炉、ホットプレート等による加熱成膜やIR、UV照射等による成膜後に膜内に水分が多量に残り、素子作成・封止後にその水分が揮発して素子内に充満するなどして素子性能を著しく低下させることがある。例えば、有機ELの構成膜(薄膜)に当該材料を用いた場合、膜内の残存水分および封止までの製造プロセスにおける外部雰囲気から吸収された水分により、構成層の積層および封止後に水分の揮発または隣接層への浸透が生じ、封止素子内や膜内部での水分凝集による欠陥発生、発光層の機能低下や膜内水分による素子駆動電圧の上昇など素子の機能低下を招き、結果として素子寿命が短くなるなどの問題が生じる。
【0008】
また、PSSをドーパントとしたπ共役系ポリマーとの複合体を有機ELや太陽電池など有機薄膜素子中の透明電極材料や正孔注入層の材料として用いた場合、前記成膜後の残存水分の問題の他、有機溶剤への親和性や疎水性基板上での塗布性が貧しいことも問題となっており、スピンコートや各種印刷機器による成膜が困難であった。また、広汎に適用が検討されているPEDOT-PSSでは光吸収が可視光域にあり透過率が低いため光透過性発光素子への適用に支障が生じ、また、複合体の粒子が凝集しやすいなどの特質もあり、液状組成物材料とした後もろ過精製に困難が伴う。濾過をせずに塗布を行うと、粒子凝集体の影響により塗布不良が生じたり、例え均一膜が得られたとしても表面ラフネスが悪く、激しい表面凹凸やピンホールのため積層構造を持つ有機ELや太陽電池などに適用した場合、キャリアの移動障害やショートなどの問題が発生しやすいなどの問題があった。
【0009】
特許文献2、3では、チオフェン、ピロール、アニリン、多環式芳香族化合物から選択される繰り返し単位によって形成されるπ共役系ポリマーに対し、フッ素化酸ユニットを取り込んだドーパントポリマーを使用し、形成される導電性ポリマー組成物が提案されている。水、π共役系ポリマーの前駆体モノマー、フッ素化酸ポリマー、及び酸化剤を任意の順番で組み合わせることにより導電性ポリマー複合体の水分散体となることが示されている。
フッ素化酸ユニットを導入することでフッ素原子の有機溶剤親和性がドーパントポリマーに付与され、その結果、π共役系ポリマーとの複合体全体の有機溶剤や疎水性基板表面への親和性が増え、当該複合体の有機溶剤への分散性や疎水性基板への塗布性が改善する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-146913号公報
【文献】特表2008-546899号公報
【文献】特開2016-188350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、その一方で成膜後の膜内残存水分については低減効果はなく、また、ドーパントはフッ素化酸ユニットとPSSの構成モノマーであるスチレンスルホン酸などの酸ユニットから構成されており、π共役系ポリマーにドープしているスルホン酸末端以外の余剰のスルホン酸末端から発生するH+の量については制御していない。即ち、ドーパントポリマーの繰り返し単位がすべてスルホン酸末端をもつユニットの場合、π共役系ポリマーを構成する繰り返し単位に対し、1:1でドープしていないため、非ドープ状態のドーパントポリマーの繰り返し単位のスルホン酸末端はフリーの酸として存在し、成膜前の液状態の材料の酸性度が非常に高い状態となる。この高酸性度の影響により、塗布工程おける周辺基材の腐食が進行する問題があり、更に薄膜素子の構成要素として成膜乾燥後も隣接層経由又は積層構造の側面から素子構造内にH+が拡散し、それぞれの構成層の化学的変質、機能低下を招き、素子全体の性能が劣化し、耐久性も低下する等の問題があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、新規非ドープ性フッ素化ユニットをドーパントポリマー中に取り込むことで成膜時の水の揮発効率を向上させ、更に余剰酸を発生する酸ユニットを当該非ドープ性フッ素化ユニットで置き換えることで、H+の発生を低減し、濾過性が良好で成膜性が良く、膜形成した際には透明性が高く平坦性が良好な膜を形成することができる導電性ポリマー複合体及びその組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、
(A)π共役系ポリマー、及び
(B)下記一般式(1)で示される繰り返し単位aと、下記一般式(2-1)~(2-7)で示される繰り返し単位から選択される1種又は2種以上の繰り返し単位bとを含む共重合体からなるドーパントポリマー
を含む複合体であることを特徴とする導電性ポリマー複合体を提供する。
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基、Zはフェニレン基、ナフチレン基、エステル基のいずれかであり、Zがフェニレン基、ナフチレン基であればR
2は単結合、エステル基、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかであり、Zがエステル基であればR
2は単結合、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。mは1~3である。R
3、R
5、R
7、R
10、R
12、R
13及びR
15は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
4、R
6、R
8、R
11、及びR
14は、それぞれ独立に単結合、エーテル基、あるいはエステル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。R
9は、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、R
9中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X
1、X
2、X
3、X
4、X
6、及びX
7は、それぞれ独立に単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、X
5は、単結合、エーテル基、エステル基のいずれかである。Yはエーテル基、エステル基、アミノ基、あるいはアミド基のいずれかを示し、アミノ基およびアミド基は水素原子、あるいはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかを含んでもよい。Rf
1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、Rf
2とRf
3は少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、又はフッ素原子若しくはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基であり、nは1~4の整数である。a、b1、b2、b3、b4、b5、b6、及びb7は、0<a<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0≦b4<1.0、0≦b5<1.0、0≦b6<1.0、0≦b7<1.0であり、0<b1+b2+b3+b4+b5+b6+b7<1.0である。)
【0014】
このような導電性ポリマー複合体は、濾過性が良好で、疎水性の高い有機・無機基板への成膜性が良く、膜形成した際には成膜工程において膜内の残存水分を低減でき、透明性、平坦性が良好な導電膜を形成することができる。
【0015】
前記(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位aは、下記一般式(4-1)~(4-5)で示される繰り返し単位a1~a5から選ばれる1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
【化2】
(式中、R
16、R
17、R
18、R
19およびR
20は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは単結合、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基であり、Yとmは前記と同じである。)
【0016】
また、前記(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位bが、下記一般式(5-1)~(5-4)で示される繰り返し単位b’1~b’4から選ばれる1種又は2種以上を含むものであることが好ましい。
【化3】
(式中、R
21、R
22、R
23およびR
24は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、b‘1、b’2、b‘3、b’4は、0≦b‘1<1.0、0≦b’2<1.0、0≦b‘3<1.0、0≦b’4<1.0、0<b‘1+b’2+b‘3+b’4<1.0である。)
【0017】
(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位a及びbが上記特定のものであれば、導電性ポリマー複合体の濾過性および成膜性、有機・無機基板への塗布性、成膜後の透過率が向上し、かつ成膜後の膜内の残存水分の低減に更に効果を生じる。
【0018】
また、(B)ドーパントポリマーは、下記一般式(6)で示される繰り返し単位cを更に含むものであってもよい。
【化4】
(cは0<c<1.0である。)
【0019】
(B)ドーパントポリマーがこのような繰り返し単位cを含むことで、膜の導電率を用途や素子構成層を形成した際の効率的機能発現のために適切なものに調整することができる。
【0020】
(B)ドーパントポリマーの重量平均分子量は1,000~500,000であることが好ましい。
【0021】
(B)ドーパントポリマーの重量平均分子量が上記範囲であると、ポリマー複合体の耐熱性、ポリマー複合体の溶液の均一性、ポリマー複合体の水と有機溶剤への分散性が高くなる。
【0022】
(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位aの全繰り返し単位に対する共重合割合は10%~60%であることが好ましい。
【0023】
(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位aの全繰り返し単位に対する共重合割合が上記範囲であると、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0024】
(B)ドーパントポリマーはブロックコポリマーであることが好ましい。
この場合、導電性ポリマー複合体の導電率が向上する。
【0025】
(A)π共役系ポリマーは、ピロール、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン、アニリン、多環式芳香族化合物、及びこれらの誘導体からなる群から選択される1種又は2種以上の前駆体モノマーを重合したものであることが好ましい。
【0026】
上記前駆体モノマーが上記特定のモノマーであれば、重合が容易であり、また空気中での安定性が良好であるため、(A)π共役系ポリマーを容易に合成できる。
【0027】
上記導電性ポリマー複合体は有機EL素子の透明電極層又は正孔注入層の形成に用いられるものであることが好ましい。
上記導電性ポリマー複合体から形成された導電膜は、導電性、正孔注入性、透明性に優れるため、有機EL素子の透明電極層又は正孔注入層として好適に機能する。
【0028】
また、本発明は、上記導電性ポリマー複合体、溶剤として水又は有機溶剤、下記一般式(3)で表される化合物(C)を含む導電性ポリマー組成物を提供する。
【化5】
(式中、R
201及びR
202はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、水素原子、ヘテロ原子のいずれかを示す。R
203及びR
204はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、水素原子のいずれかを示す。R
201とR
203、あるいはR
201とR
204は互いに結合して環を形成してもよい。Lはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の4価の有機基を示す。Lがヘテロ原子を有する場合、該ヘテロ原子はイオンであってもよい。)
【0029】
このような導電性ポリマー組成物を、有機EL、太陽電池等の薄膜積層素子の電極または正孔注入層として用いて膜形成した際に、積層構造の隣接層ならび他の構成層への酸の拡散が抑制され、酸による影響を緩和することができる。
【0030】
この場合、化合物(C)の含有量は、前記導電性ポリマー複合体100質量部に対して1~30質量部であることが好ましい。
【0031】
化合物(C)の含有量が上記特定の範囲であれば、導電性ポリマー組成物によって形成された帯電防止膜から他の層への酸拡散の低減効果が更に向上する。
【0032】
上記導電性ポリマー組成物のpHは4.0~9.0であることが好ましい。
上記導電性ポリマー組成物のpHが上記範囲であると、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0033】
上記導電性ポリマー組成物はノニオン系界面活性剤を更に含むことが好ましい。
ノニオン系界面活性剤を含む導電性ポリマー組成物は、基材等の被加工体への塗布性が更に向上する。
【0034】
この場合、上記ノニオン系界面活性剤の含有量は、前記導電性ポリマー複合体100質量部に対して1~15質量部であることが好ましい。
【0035】
上記ノニオン系界面活性剤の含有量が上記範囲であれば、基材等の被加工体への塗布性がより良好となり、形成された膜の表面平坦性もより良好になる。
【0036】
上記導電性ポリマー組成物は有機EL素子の透明電極層又は正孔注入層の形成に用いられるものであることが好ましい。
上記導電性ポリマー組成物から形成された導電膜は、導電性、正孔注入性、透明性に優れるため、有機EL素子の透明電極層又は正孔注入層として好適に機能する。
【0037】
さらに、本発明は、導電性ポリマー複合体又は上記導電性ポリマー組成物によって有機EL素子中の電極層又は正孔注入層が形成されたものである基板を提供する。
【0038】
このような基板は、導電性、正孔注入性、透明性に優れる導電膜により形成された、有機EL素子中の電極層又は正孔注入層を備えるものである。
【発明の効果】
【0039】
以上のように、本発明の導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、低粘性で濾過性が良好であり、スピンコート等での塗布成膜性が良く、(B)ドーパントポリマー中、aおよびbのそれぞれの繰り返し単位内に存在するフッ素原子の影響により成膜中の膜内残存水分の除去が効率的で、かつ透明性、平坦性、導電性、正孔注入効率が良好な導電膜を形成することが可能なものである。また(B)ドーパントポリマー中、スルホ基を含有する繰り返し単位bとスルホン酸末端を持たない非ドープ性フッ素化ユニットaを共重合し、そのポリマーをドーパントとして(A)π共役系ポリマーと複合体を形成させることにより、非ドープ状態の余剰スルホン酸末端を低減させることとなり、その結果H+の発生率が低減され、本発明の導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれを薄膜積層素子の構成膜として適用した際にH+の他の構成層への影響を抑えることが可能となる。さらに、このような導電性ポリマー複合体及びその組成物は、疎水性の高い有機・無機基板への親和性が良好であり、有機基板、無機基板のどちらに対しても成膜性が良好なものである。
また、このような導電性ポリマー複合体またはその組成物によって形成された導電膜は、導電性、正孔注入効率、透明性等に優れ、かつ薄膜積層素子の構成膜として適用した際にも、膜からの水分の揮発、凝集などを低減できるため、当該薄膜積層素子の透明電極層または正孔注入層として効果的に機能するものとできる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
上述のように、濾過性が良好でスピンコート等での成膜性が良く、成膜工程においては膜内残存水分を効率的に除去でき、形成膜透明性が高く平坦性が良好な導電膜を形成することができる導電膜形成用材料の開発が求められていた。
【0041】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、導電性高分子材料のドーパントとして広く用いられているポリスチレンスルホン酸ホモポリマー(PSS)の代わりに、非ドープ性フッ素化ユニットaとα位がフッ素化されたスルホ基を有する繰り返し単位を有する繰り返し単位bを共重合したドーパントポリマーを用いることで、濾過性が良好でスピンコートでの成膜性が良く、分子構造から材料の酸性度を緩和でき、膜形成した際には残存水分が少なく、かつ高透明性、高平坦性をもつ導電膜を形成することができる導電性ポリマー複合体及びその組成物を見出し、更に、有機EL素子の構成層として実装して、その性能評価において良好な結果を得ることで本発明を完成させた。
【0042】
即ち、本発明は、(A)π共役系ポリマー、及び(B)下記一般式(1)で示される繰り返し単位aと、下記一般式(2-1)~(2-7)で示される繰り返し単位から選択される1種又は2種以上の繰り返し単位bとを含む共重合体からなるドーパントポリマーを含む複合体である導電性ポリマー複合体である。
【化6】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基、Zはフェニレン基、ナフチレン基、エステル基のいずれかであり、Zがフェニレン基、ナフチレン基であればR
2は単結合、エステル基、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかであり、Zがエステル基であればR
2は単結合、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。mは1~3である。R
3、R
5、R
7、R
10、R
12、R
13及びR
15は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
4、R
6、R
8、R
11、及びR
14は、それぞれ独立に単結合、エーテル基、あるいはエステル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。R
9は、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、R
9中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X
1、X
2、X
3、X
4、X
6、及びX
7は、それぞれ独立に単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、X
5は、単結合、エーテル基、エステル基のいずれかである。Yはエーテル基、エステル基、アミノ基、あるいはアミド基のいずれかを示し、アミノ基およびアミド基は水素原子、あるいはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかを含んでもよい。Rf
1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、Rf
2とRf
3は少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、又はフッ素原子若しくはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基であり、nは1~4の整数である。a、b1、b2、b3、b4、b5、b6、及びb7は、0<a<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0≦b4<1.0、0≦b5<1.0、0≦b6<1.0、0≦b7<1.0であり、0<b1+b2+b3+b4+b5+b6+b7<1.0である。)
【0043】
また、本発明は、上記導電性ポリマー複合体、溶剤として水又は有機溶剤、下記一般式(3)で表される化合物(C)を含むものである導電性ポリマー組成物である。
【化7】
(式中、R
201及びR
202はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、水素原子、ヘテロ原子のいずれかを示す。R
203及びR
204はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、水素原子のいずれかを示す。R
201とR
203、あるいはR
201とR
204は互いに結合して環を形成してもよい。Lはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の4価の有機基を示す。Lがヘテロ原子を有する場合、該ヘテロ原子はイオンであってもよい。)
【0044】
さらに、本発明は、上記導電性ポリマー複合体又は導電性ポリマー組成物によって有機EL素子中の電極層又は正孔注入層が形成されたものである基板である。
【0045】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
[(A)π共役系ポリマー]
本発明の導電性ポリマー複合体は、(A)π共役系ポリマーを含む。この(A)π共役系ポリマーは、π共役系連鎖(単結合と二重結合が交互に連続した構造)を形成する前駆体モノマー(有機モノマー分子)が重合したものであればよい。
このような前駆体モノマーとしては、例えば、ピロール類、チオフェン類、チオフェンビニレン類、セレノフェン類、テルロフェン類、フェニレン類、フェニレンビニレン類、アニリン類等の単環式芳香族類;アセン類等の多環式芳香族類;アセチレン類等が挙げられ、これらのモノマーの単一重合体又は共重合体を(A)π共役系ポリマーとして用いることができる。
上記モノマーの中でも、重合の容易さ、空気中での安定性の点から、ピロール、チオフェン、セレノフェン、テルロフェン、アニリン、多環式芳香族化合物、及びこれらの誘導体が好ましく、ピロール、チオフェン、アニリン、及びこれらの誘導体が特に好ましい。
【0047】
また、(A)π共役系ポリマーを構成するモノマーが無置換のままでも、(A)π共役系ポリマーは十分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換したモノマーを用いてもよい。
【0048】
ピロール類、チオフェン類、アニリン類のモノマーの具体例としては、ピロール、N-メチルピロール、3-メチルピロール、3-エチルピロール、3-n-プロピルピロール、3-ブチルピロール、3-オクチルピロール、3-デシルピロール、3-ドデシルピロール、3,4-ジメチルピロール、3,4-ジブチルピロール、3-カルボキシピロール、3-メチル-4-カルボキシピロール、3-メチル-4-カルボキシエチルピロール、3-メチル-4-カルボキシブチルピロール、3-ヒドロキシピロール、3-メトキシピロール、3-エトキシピロール、3-ブトキシピロール、3-ヘキシルオキシピロール、3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3-メチルチオフェン、3-エチルチオフェン、3-プロピルチオフェン、3-ブチルチオフェン、3-ヘキシルチオフェン、3-ヘプチルチオフェン、3-オクチルチオフェン、3-デシルチオフェン、3-ドデシルチオフェン、3-オクタデシルチオフェン、3-ブロモチオフェン、3-クロロチオフェン、3-ヨードチオフェン、3-シアノチオフェン、3-フェニルチオフェン、3,4-ジメチルチオフェン、3,4-ジブチルチオフェン、3-ヒドロキシチオフェン、3-メトキシチオフェン、3-エトキシチオフェン、3-ブトキシチオフェン、3-ヘキシルオキシチオフェン、3-ヘプチルオキシチオフェン、3-オクチルオキシチオフェン、3-デシルオキシチオフェン、3-ドデシルオキシチオフェン、3-オクタデシルオキシチオフェン、3,4-ジヒドロキシチオフェン、3,4-ジメトキシチオフェン、3,4-ジエトキシチオフェン、3,4-ジプロポキシチオフェン、3,4-ジブトキシチオフェン、3,4-ジヘキシルオキシチオフェン、3,4-ジヘプチルオキシチオフェン、3,4-ジオクチルオキシチオフェン、3,4-ジデシルオキシチオフェン、3,4-ジドデシルオキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン、3,4-ブテンジオキシチオフェン、3-メチル-4-メトキシチオフェン、3-メチル-4-エトキシチオフェン、3-カルボキシチオフェン、3-メチル-4-カルボキシチオフェン、3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン、3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2-メチルアニリン、3-イソブチルアニリン、2-メトキシアニリン、2-エトキシアニリン、2-アニリンスルホン酸、3-アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0049】
中でも、ピロール、チオフェン、N-メチルピロール、3-メチルチオフェン、3-メトキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシチオフェンから選ばれる1種又は2種以上からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ピロール、3,4-エチレンジオキシチオフェンによる単一重合体は導電性が高く、より好ましい。
【0050】
[(B)ドーパントポリマー]
本発明の導電性ポリマー複合体は、(B)ドーパントポリマーを含む。この(B)ドーパントポリマーは、下記一般式(1)で示される繰り返し単位aと、下記一般式(2-1)~(2-7)で示される繰り返し単位から選択される1種又は2種以上の繰り返し単位bとを含む共重合体からなる強酸性ポリアニオンである。
【0051】
【化8】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基、Zはフェニレン基、ナフチレン基、エステル基のいずれかであり、Zがフェニレン基、ナフチレン基であればR
2は単結合、エステル基、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかであり、Zがエステル基であればR
2は単結合、あるいはエーテル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。mは1~3である。R
3、R
5、R
7、R
10、R
12、R
13及びR
15は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
4、R
6、R
8、R
11、及びR
14は、それぞれ独立に単結合、エーテル基、あるいはエステル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかである。R
9は、炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキレン基であり、R
9中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X
1、X
2、X
3、X
4、X
6、及びX
7は、それぞれ独立に単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、X
5は、単結合、エーテル基、エステル基のいずれかである。Yはエーテル基、エステル基、アミノ基、あるいはアミド基のいずれかを示し、アミノ基およびアミド基は水素原子、あるいはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基のいずれかを含んでもよい。Rf
1はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、Rf
2とRf
3は少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する炭素数1~4の直鎖状、分岐状のアルキル基、又はフッ素原子若しくはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基であり、nは1~4の整数である。a、b1、b2、b3、b4、b5、b6、及びb7は、0<a<1.0、0≦b1<1.0、0≦b2<1.0、0≦b3<1.0、0≦b4<1.0、0≦b5<1.0、0≦b6<1.0、0≦b7<1.0であり、0<b1+b2+b3+b4+b5+b6+b7<1.0である。)
【0052】
繰り返し単位aを与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化9】
【0053】
【0054】
【0055】
(B)ドーパントポリマー中の繰り返し単位aの全繰り返し単位に対する共重合割合は10%~60%であることが好ましい。さらに、上記導電性ポリマー複合体の安定性の観点からは、繰り返し単位aの全繰り返し単位に対する共重合割合は10~40%であることが更に好ましい。上記繰り返し単位aの全繰り返し単位に対する共重合割合が上記範囲であると、上記導電性ポリマー複合体を電極として適用した場合に十分な機能を発現する導電率を発現しやすくなり、また上記導電性ポリマー複合体を正孔注入層として適用した場合に十分な機能を発現する正孔注入効率を発現しやすくなる。
【0056】
繰り返し単位b1を与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化12】
【0057】
【0058】
【0059】
繰り返し単位b2を得るためのモノマーは、具体的には下記に例示することが出来る。
【化15】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
繰り返し単位b3を与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化22】
【0067】
【0068】
【0069】
繰り返し単位b4を与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化25】
【0070】
【0071】
【0072】
繰り返し単位b5を与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化28】
(式中、R
12は前記と同様である。)
【0073】
繰り返し単位b6を与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化29】
【0074】
【0075】
繰り返し単位b7を与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化31】
【0076】
【0077】
【0078】
(B)成分は、さらに下記一般式(6)で示される繰り返し単位cを含むことができる。
【化34】
【0079】
繰り返し単位cを与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化35】
上記導電性ポリマー複合体を電極として適用した場合に十分な機能を発現する導電率を発現しやすくし、また上記導電性ポリマー複合体を正孔注入層として適用した場合に十分な機能を発現する正孔注入効率を発現しやすくする観点から、上記繰り返し単位bの全繰り返し単位に対する共重合割合は60~90%であることが好ましく、上記繰り返し単位cを含有する場合は、60%≦b+c≦90%であり、その時上記繰り返し単位cの全繰り返し単位に対する共重合割合は40%以下であることが好ましい。
【0080】
また、(B)ドーパントポリマーは、繰り返し単位b、繰り返し単位c以外の繰り返し単位dを有していてもよく、この繰り返し単位dとしては、例えばスチレン系、ビニルナフタレン系、ビニルシラン系、アセナフチレン、インデン、ビニルカルバゾールなどを挙げることができる。
【0081】
繰り返し単位dを与えるモノマーとしては、具体的には下記のものを例示することができる。
【化36】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
(B)ドーパントポリマーを合成する方法としては、例えば上述の繰り返し単位a~dを与えるモノマーのうち所望のモノマーを、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱重合を行い、(共)重合体のドーパントポリマーを得ることができる。
【0086】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルエチルケトン、γ-ブチロラクトン等を例示できる。
【0087】
ラジカル重合開始剤としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等を例示できる。
【0088】
反応温度は、好ましくは50~80℃であり、反応時間は好ましくは2~100時間、より好ましくは5~20時間である。
【0089】
(B)ドーパントポリマーにおいて、繰り返し単位aを与えるモノマーは1種類でも2種類以上でも良いが、重合性を高めるメタクリルタイプとスチレンタイプのモノマーを組み合わせることが好ましい。
また、繰り返し単位aを与えるモノマーを2種類以上用いる場合は、それぞれのモノマーはランダムに共重合されていてもよいし、ブロックで共重合されていてもよい。ブロック共重合ポリマー(ブロックコポリマー)とした場合は、2種類以上の繰り返し単位aからなる繰り返し部分同士が凝集して海島構造を形成することによってドーパントポリマー周辺に特異な構造が発生し、導電率が向上するメリットが期待される。
【0090】
また、繰り返し単位a~cを与えるモノマーはランダムに共重合されていてもよいし、それぞれがブロックで共重合されていてもよい。この場合も、上述の繰り返し単位aの場合と同様、ブロックコポリマーとすることで導電率が向上するメリットが期待される。
【0091】
ラジカル重合でランダム共重合を行う場合は、共重合を行うモノマーやラジカル重合開始剤を混合して加熱によって重合を行う方法が一般的である。第1のモノマーとラジカル重合開始剤の存在下で重合を開始し、後に第2のモノマーを添加した場合は、ポリマー分子の片側が第1のモノマーが重合した構造で、もう一方が第2のモノマーが重合した構造となる。しかしながら、この場合、中間部分には第1のモノマーと第2のモノマーの繰り返し単位が混在しており、ブロックコポリマーとは形態が異なる。ラジカル重合でブロックコポリマーを形成するには、リビングラジカル重合が好ましく用いられる。
【0092】
RAFT重合(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer polymerization)と呼ばれるリビングラジカルの重合方法は、ポリマー末端のラジカルが常に生きているので、第1のモノマーで重合を開始し、これが消費された段階で第2のモノマーを添加することによって、第1のモノマーの繰り返し単位のブロックと第2のモノマーの繰り返し単位のブロックによるジブロックコポリマーを形成することが可能である。また、第1のモノマーで重合を開始し、これが消費された段階で第2のモノマーを添加し、次いで第3のモノマーを添加した場合はトリブロックポリマーを形成することもできる。
【0093】
RAFT重合を行った場合は分子量分布(分散度)が狭い狭分散ポリマーが形成される特徴があり、特にモノマーを一度に添加してRAFT重合を行った場合は、より分子量分布が狭いポリマーを形成することができる。
なお、(B)ドーパントポリマーにおいては、分子量分布(Mw/Mn)は1.0~2.0、特に1.0~1.5と狭分散であることが好ましい。狭分散であれば、これを用いた導電性ポリマー複合体によって形成した導電膜の透過率が低くなることを防ぐ効果が向上しやすくなる。
【0094】
RAFT重合を行うには連鎖移動剤が必要であり、具体的には2-シアノ-2-プロピルベンゾチオエート、4-シアノ-4-フェニルカルボノチオイルチオペンタン酸、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボネート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロパン酸、シアノメチルドデシルチオカルボネート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモチオエート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドを挙げることができる。これらの中では、特に2-シアノ-2-プロピルベンゾチオエートが好ましい。
【0095】
(B)ドーパントポリマーは、耐熱性、粘度の観点から、重量平均分子量が1,000~500,000、好ましくは2,000~200,000の範囲のものであることが好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)は、溶剤として水、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、又はポリスチレン換算測定値である。
【0096】
なお、(B)ドーパントポリマーを構成するモノマーとしては、スルホ基を有するモノマーを使ってもよいが、スルホ基のリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩をモノマーとして用いて重合反応を行い、重合後にイオン交換樹脂を用いてスルホ基に変換してもよい。
【0097】
[導電性ポリマー複合体]
本発明の導電性ポリマー複合体は、上述の(A)π共役系ポリマーと(B)ドーパントポリマーを含むものであり、(B)ドーパントポリマーは、(A)π共役系ポリマーに配位することで複合体を形成する。
【0098】
本発明の導電性ポリマー複合体は、水および有機溶剤の双方に親和性をもつものであることが好ましく、強疎水性の無機または有機基板に対しスピンコート成膜性や膜の平坦性をさらに良好にすることができる。
【0099】
[導電性ポリマー複合体の製造方法]
(A)π共役系ポリマーと(B)ドーパントポリマーを含む導電性ポリマー複合体は、例えば、(B)ドーパントポリマーの水溶液又は(B)ドーパントポリマーの水・有機溶媒混合溶液中に、(A)π共役系ポリマーの原料となるモノマー(好ましくは、ピロール、チオフェン、アニリン、又はこれらの誘導体モノマー)を加え、酸化剤及び場合により酸化触媒を添加し、酸化重合を行うことで得ることができる。
【0100】
酸化剤及び酸化触媒としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のペルオキソ二硫酸塩(過硫酸塩)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等を使用できる。
【0101】
酸化重合を行う際に用いる反応溶媒としては、水又は水と溶媒との混合溶媒を用いることができる。ここで用いられる溶媒は、水と混和可能であり、(A)π共役系ポリマー及び(B)ドーパントポリマーを溶解又は分散しうる溶媒が好ましい。例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド等の極性溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、D-グルコース、D-グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物、ジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。水と混和可能なこれらの溶媒の配合割合は、反応溶媒全体の50質量%以下が好ましい。
【0102】
また、(B)ドーパントポリマー以外に、(A)π共役系ポリマーへのドーピング可能なアニオンを併用してもよい。このようなアニオンとしては、π共役系ポリマーからの脱ドープ特性、導電性ポリマー複合体の分散性、耐熱性、及び耐環境特性を調整する等の観点から、有機酸が好ましい。有機酸としては、有機カルボン酸、フェノール類、有機スルホン酸等が挙げられる。
【0103】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
フェノール類としては、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類が挙げられる。
【0104】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホン酸基が一つ又は二つ以上を含むものが使用できる。スルホン酸基を一つ含むものとしては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、1-ブタンスルホン酸、1-ヘキサンスルホン酸、1-ヘプタンスルホン酸、1-オクタンスルホン酸、1-ノナンスルホン酸、1-デカンスルホン酸、1-ドデカンスルホン酸、1-テトラデカンスルホン酸、1-ペンタデカンスルホン酸、2-ブロモエタンスルホン酸、3-クロロ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸、2-アミノ-5-ナフトール-7-スルホン酸、3-アミノプロパンスルホン酸、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、へキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4-ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノ-2-クロロトルエン-5-スルホン酸、4-アミノ-3-メチルベンゼン-1-スルホン酸、4-アミノ-5-メトキシ-2-メチルベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-メチルベンゼン-1-スルホン酸、4-アミノ-2-メチルベンゼン-1-スルホン酸、5-アミノ-2-メチルベンゼン-1-スルホン酸、4-アミノ-3-メチルベンゼン-1-スルホン酸、4-アセトアミド-3-クロロベンゼンスルホン酸、4-クロロ-3-ニトロベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、8-クロロナフタレン-1-スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物等のスルホン酸基を含むスルホン酸化合物等を例示できる。
【0105】
スルホン酸基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、m-ベンゼンジスルホン酸、o-ベンゼンジスルホン酸、p-ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、アニリン-2,4-ジスルホン酸、アニリン-2,5-ジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、ジブチルベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ドデシルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、ブチルナフタレンジスルホン酸、2-アミノ-1,4-ベンゼンジスルホン酸、1-アミノ-3,8-ナフタレンジスルホン酸、3-アミノ-1,5-ナフタレンジスルホン酸、8-アミノ-1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸、4-アミノ-5-ナフトール-2,7-ジスルホン酸、アントラセンジスルホン酸、ブチルアントラセンジスルホン酸、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、4-アセトアミド-4’-マレイミジルスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、1-アセトキシピレン-3,6,8-トリスルホン酸、7-アミノ-1,3,6-ナフタレントリスルホン酸、8-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸、3-アミノ-1,5,7-ナフタレントリスルホン酸等が挙げられる。
【0106】
これら(B)ドーパントポリマー以外のアニオンは、(A)π共役系ポリマーの重合前に、(A)π共役系ポリマーの原料モノマー、(B)ドーパントポリマー、酸化剤及び/又は酸化重合触媒を含む溶液に添加してもよく、また重合後の(A)π共役系ポリマーと(B)ドーパントポリマーを含有する導電性ポリマー複合体に添加してもよい。
【0107】
このようにして得た(A)π共役系ポリマーと(B)ドーパントポリマーを含む導電性ポリマー複合体は、必要によりホモジナイザやボールミル等で細粒化して用いることができる。
細粒化には、高い剪断力を付与できる混合分散機を用いることが好ましい。混合分散機としては、例えば、ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ、ビーズミル等が挙げられ、中でも高圧ホモジナイザが好ましい。
【0108】
高圧ホモジナイザの具体例としては、吉田機械興業社製のナノヴェイタ、パウレック社製のマイクロフルイダイザー、スギノマシン社製のアルティマイザー等が挙げられる。
高圧ホモジナイザを用いた分散処理としては、例えば、分散処理を施す前の複合体溶液を高圧で対向衝突させる処理、オリフィスやスリットに高圧で通す処理等が挙げられる。
【0109】
細粒化の前又は後に、濾過、限外濾過、透析等の手法により不純物を除去し、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、キレート樹脂等で精製してもよい。
【0110】
重合反応水溶液に加えることができる、又は(A)π共役系ポリマーの原料となるモノマーを希釈することができる有機溶剤としては、メタノール、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸t-ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0111】
なお、有機溶剤の使用量は、上記モノマー1モルに対して0~1,000mLが好ましく、特に0~500mLが好ましい。有機溶剤の1,000mL以下であれば、反応容器が過大となることがないため経済的である。
【0112】
[導電性ポリマー組成物]
導電性ポリマー組成物中の(A)π共役系ポリマーと(B)ドーパントポリマーの合計含有割合は0.05~5.0質量%であることが好ましい。(A)π共役系ポリマーと(B)ドーパントポリマーの合計含有割合が上記範囲であれば、十分な導電性ないし正孔注入機能と、均一な導電性塗膜が得られるやすくなる。
【0113】
(化合物(C))
前記(A)π共役系ポリマーおよび(B)ドーパントポリマーを含む複合体の水または有機溶剤の溶液または分散液に、下記一般式(3)で表される化合物(C)を加えた組成物を形成することができる。
【化40】
(式中、R
201及びR
202はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、水素原子、ヘテロ原子のいずれかを示す。R
203及びR
204はそれぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基、水素原子のいずれかを示す。R
201とR
203、あるいはR
201とR
204は互いに結合して環を形成してもよい。Lはヘテロ原子を有してもよい炭素数1~20の直鎖状、分岐状又は環状の4価の有機基を示す。Lがヘテロ原子を有する場合、該ヘテロ原子はイオンであってもよい。)
【0114】
このような導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、濾過性が良好で、疎水性の高い有機・無機基板への成膜性が良く、膜形成した際には成膜工程において膜内の残存水分が低減でき、透明性が良好な導電膜を形成することができる。
本発明において一般式(3)で表される化合物(C)は、1種類のみを用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。また、公知の化合物のいずれも用いることができる。
【0115】
上記一般式(3)で表される化合物の構造としては、具体的には下記のものを例示することができる。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
また、本発明の導電性ポリマー組成物は、前記一般式(3)中のLが、ヘテロ原子を有してもよい炭素数2~10の直鎖状、分岐状又は環状の4価の有機基である化合物を含有するものであることが好ましい。
【0120】
また、前記一般式(3)で表される構造以外で、本発明で好適に用いられるものは、以下のものが挙げられる。
【化44】
【0121】
また、本発明における導電性ポリマー組成物の[0120]の一般式で表される化合物及び前記一般式(3)で表される化合物の含有量は、前記(A)π共役系ポリマーと(B)ドーパントポリマーを含む導電性ポリマー100質量部に対して1質量部から50質量部であることが好ましく、5質量部から30質量部であることが更に好ましい。[0120]の一般式で表される化合物等の前記一般式(3)で表される化合物の含有量をこのようなものとすれば、本発明の導電性ポリマー組成物によって形成された帯電防止膜からレジスト層への酸拡散が低減される。
【0122】
(界面活性剤)
本発明では、基板等の被加工体への濡れ性をさらに上げるため、界面活性剤を添加してもよい。このような界面活性剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系の各種界面活性剤が挙げられる。具体的には例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル等のノニオン系界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤、アルキル又はアルキルアリル硫酸塩、アルキル又はアルキルアリルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系界面活性剤、アミノ酸型、ベタイン型等の両性イオン型界面活性剤等を挙げることができる。
【0123】
以上説明したように、本発明の導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、成膜時に効率よく膜内残存水分を除去でき、濾過性及びスピンコートでの成膜性および平坦性が良好で、透明性が高い導電膜を形成することができる。
【0124】
[導電膜]
上述のようにして得られた導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、基板等の被加工体に塗布することにより導電膜を形成できる。導電性ポリマー複合体(溶液)の塗布方法としては、例えば、スピンコーター等による塗布、バーコーター、浸漬、コンマコート、スプレーコート、ロールコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。塗布後、熱風循環炉、ホットプレート等による加熱処理、IR、UV照射等を行って導電膜を形成することができる。
【0125】
このように、本発明の導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、基板等に塗布・成膜することで導電膜とすることができる。また、このようにして形成された導電膜は、導電性、透明性に優れるため、透明電極層または正孔注入層として機能するものとすることができる。
【0126】
[基板]
また、本発明は、上述の本発明の導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれによって導電膜が形成された基板を提供する。特に、有機EL素子中の透明電極層又は正孔注入層が形成された基板とするのが好適である。
基板としては、ガラス基板、石英基板、フォトマスクブランク基板、樹脂基板、シリコンウエハー、ガリウム砒素ウエハー、インジウムリンウエハー等の化合物半導体ウエハー、フレキシブル基板等が挙げられる。また、フォトレジスト膜上に塗布して帯電防止トップコートとして使用することも可能である。
【0127】
以上のように、本発明の導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、超強酸のスルホ基および非ドープ性フッ素化ユニットを含有する(B)ドーパントポリマーが、(A)π共役系ポリマーと複合体を形成することにより、低粘性で濾過性が良好であり、スピンコートでの成膜性が良く、また膜を形成する際には透明性、平坦性、耐久性、及び導電性の良好な導電膜を形成することが可能となる。また、非ドープ状態の酸ユニットに由来するH+の拡散緩和目的として上記一般式(3)で示される化合物(C)を添加することで、組成物として適切な酸性度を保つとともに成膜後に膜外へのH+拡散も抑制をすることができる。このような導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、強い疎水性を有する有機基板、無機基板のどちらに対しても成膜性が良好なものとなる。
また、このような導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれによって形成された導電膜は、導電性、透明性等に優れるため、有機EL素子中の透明電極層または正孔注入層として機能するものとできる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
[ドーパントポリマー合成例]
以下に各実施例で使用される導電性ポリマー複合体中の(B)ドーパントポリマーを重合する際の原料モノマーを示す。
【化45】
【0130】
【0131】
[合成例1]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の1.20gとモノマーb”1の3.75gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=21,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.90
この高分子化合物を(ポリマー1)とする。
【化47】
【0132】
[合成例2]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の0.6gとモノマーb”1の5.00gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=20,500
分子量分布(Mw/Mn)=1.94
この高分子化合物を(ポリマー2)とする。
【化48】
【0133】
[合成例3]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”2の1.20gとモノマーb”1の3.75gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=20,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.88
この高分子化合物を(ポリマー3)とする。
【化49】
【0134】
[合成例4]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の1.51gとモノマーb”2の2.55gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=22,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.93
この高分子化合物を(ポリマー4)とする。
【化50】
【0135】
[合成例5]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の0.60gとモノマーb”2の4.07gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=19,500
分子量分布(Mw/Mn)=1.99
この高分子化合物を(ポリマー5)とする。
【化51】
【0136】
[合成例6]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”6の3.75gとモノマーb”1の1.08gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=21,500
分子量分布(Mw/Mn)=2.07
この高分子化合物を(ポリマー6)とする。
【化52】
【0137】
[合成例7]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”7の0.87gとモノマーb”1の5.00gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=19,500
分子量分布(Mw/Mn)=2.00
この高分子化合物を(ポリマー7)とする。
【化53】
【0138】
[合成例8]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”8の1.00gとモノマーb”1の5.00gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=20,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.85
この高分子化合物を(ポリマー8)とする。
【化54】
【0139】
[合成例9]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の1.51gとモノマーb”3の1.97gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=19,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.61
この高分子化合物を(ポリマー9)とする。
【化55】
【0140】
[合成例10]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の1.51gとモノマーb“4の1.97gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=18,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.68
この高分子化合物を(ポリマー10)とする。
【化56】
【0141】
[合成例11]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の0.90gとモノマーb“5の4.60gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=26,000
分子量分布(Mw/Mn)=2.04
この高分子化合物を(ポリマー11)とする。
【化57】
【0142】
[合成例12]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の0.90gとモノマーb“6の2.35gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてナトリウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=31,000
分子量分布(Mw/Mn)=2.11
この高分子化合物を(ポリマー12)とする。
【化58】
【0143】
[合成例13]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の1.20gとモノマーb“7の1.93gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてリチウム塩をスルホンイミド基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=23,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.88
この高分子化合物を(ポリマー13)とする。
【化59】
【0144】
[合成例14]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の1.20gとモノマーb“8の2.60gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてカリウム塩をn-カルボニルスルホンアミド基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=29,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.66
この高分子化合物を(ポリマー14)とする。
【化60】
【0145】
[合成例15]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーa”1の1.20gとモノマーb“9の1.90gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてカリウム塩をn-カルボニルスルホンアミド基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=27,000
分子量分布(Mw/Mn)=1.61
この高分子化合物を(ポリマー15)とする。
【化61】
【0146】
[合成例16]
窒素雰囲気下、64℃で撹拌したメタノール10gに、モノマーb”1の6.25gと2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.12gをメタノール3gに溶かした溶液を4時間かけて滴下した。さらに64℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた反応溶液を10gの酢酸エチルに激しく撹拌しながら滴下した。生じた固形物を濾過して取り、50℃で15時間真空乾燥して、白色重合体を得た。
得られた白色重合体を純水100gに溶解し、イオン交換樹脂を用いてアンモニウム塩をスルホ基に変換した。得られた重合体を
19F,
1H-NMR及びGPC測定したところ、以下の分析結果となった。
重量平均分子量(Mw)=22,500
分子量分布(Mw/Mn)=1.90
この高分子化合物を(ポリマー16)とする。
【化62】
【0147】
[π共役系ポリマーとしてポリチオフェンを含む導電性ポリマー複合体分散液の調製]
(調製例1)
2.27gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、15.0gのドーパントポリマー1を1,000mLの超純水に溶かした溶液とを30℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を30℃に保ち、撹拌しながら、100mLの超純水に溶かした4.99gの過硫酸ナトリウムと1.36gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、4時間撹拌して反応させた。
得られた反応液に1,000mLの超純水を添加し、限外濾過法を用いて約1,000mL溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記濾過処理が行われた処理液に200mLの10質量%に希釈した硫酸と2,000mLのイオン交換水を加え、限外濾過法を用いて約2,000mLの処理液を除去し、これに2,000mLのイオン交換水を加え、限外濾過法を用いて約2,000mLの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2,000mLのイオン交換水を加え、限外濾過法を用いて約2,000mLの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.3質量%の青色の導電性ポリマー複合体分散液1を得た。
【0148】
限外濾過条件は下記の通りとした。
限外濾過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3,000mL/分
膜分圧:0.12Pa
なお、他の調製例でも同様の条件で限外濾過を行った。
【0149】
(調製例2)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー2に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.09g、過硫酸ナトリウムの配合量を4.59g、硫酸第二鉄の配合量を1.25gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液2を得た。
【0150】
(調製例3)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー3に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.27g、過硫酸ナトリウムの配合量を4.99g、硫酸第二鉄の配合量を1.36gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液3を得た。
【0151】
(調製例4)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー4に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.79g、過硫酸ナトリウムの配合量を6.13g、硫酸第二鉄の配合量を1.67gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液4を得た。
【0152】
(調製例5)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー5に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.64g、過硫酸ナトリウムの配合量を5.82g、硫酸第二鉄の配合量を1.59gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液5を得た。
【0153】
(調製例6)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー6に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.34g、過硫酸ナトリウムの配合量を5.14g、硫酸第二鉄の配合量を1.40gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液6を得た。
【0154】
(調製例7)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー7に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を1.97g、過硫酸ナトリウムの配合量を4.32g、硫酸第二鉄の配合量を1.17gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液7を得た。
【0155】
(調製例8)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー8に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を1.91g、過硫酸ナトリウムの配合量を4.20g、硫酸第二鉄の配合量を1.12gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液8を得た。
【0156】
(調製例9)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー9に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を3.11g、過硫酸ナトリウムの配合量を6.62g、硫酸第二鉄の配合量を1.87gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液9を得た。
【0157】
(調製例10)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー10に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を3.11g、過硫酸ナトリウムの配合量を6.85g、硫酸第二鉄の配合量を1.87gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液10を得た。
【0158】
(調製例11)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー11に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.06g、過硫酸ナトリウムの配合量を4.54g、硫酸第二鉄の配合量を1.24gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液11を得た。
【0159】
(調製例12)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー12に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.97g、過硫酸ナトリウムの配合量を6.53g、硫酸第二鉄の配合量を1.78gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液12を得た。
【0160】
(調製例13)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー13に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を2.97g、過硫酸ナトリウムの配合量を6.55g、硫酸第二鉄の配合量を1.79gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液13を得た。
【0161】
(調製例14)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー14に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を1.78g、過硫酸ナトリウムの配合量を5.67g、硫酸第二鉄の配合量を1.55gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液14を得た。
【0162】
(調製例15)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー15に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を3.20g、過硫酸ナトリウムの配合量を7.04g、硫酸第二鉄の配合量を1.92gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液15を得た。
【0163】
(比較調製例1)
15.0gのドーパントポリマー1をドーパントポリマー16に変更し、3,4-エチレンジオキシチオフェンの配合量を1.93g、過硫酸ナトリウムの配合量を4.25g、硫酸第二鉄の配合量を1.16gに変更する以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、導電性ポリマー複合体分散液16を得た。
【0164】
(比較調製例2)
5.0gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、83.3gのポリスチレンスルホン酸水溶液(Aldrich製18.0質量%)を250mLのイオン交換水で希釈した溶液とを30℃で混合した。それ以外は調製例1と同様の方法で調製を行い、1.3質量%の青色の導電性ポリマー複合体分散液17(PEDOT-PSS分散液)を得た。
【0165】
[π共役系ポリマーとしてポリチオフェンを含む導電性ポリマー組成物の評価]
調製例1~15で得た2.5質量%の導電性ポリマー複合体分散液に、上記一般式(3)で表される化合物(C)の1種であるL-(+)-Lysine 0.43質量%、及びフルオロアルキルノニオン系界面活性剤FS-31(DuPont社製)を混合し、その後、孔径3.00~0.45μmのセルロース製フィルター(ADVANTEC社製)を用いて濾過して、導電性ポリマー組成物を調製し、それぞれ実施例1~15とした。
【0166】
[比較例]
比較調製例1、2で得た導電性ポリマー複合体分散液16、17を用いる以外は実施例と同様にして導電性ポリマー組成物を調製して、それぞれ比較例1、2とした。
【0167】
上述のようにして調製した実施例及び比較例の導電性ポリマー組成物を以下のように評価した。
【0168】
(濾過性)
上記の実施例および比較例の導電性ポリマー組成物の調製において、孔径3.0~0.45μmの再生セルロースフィルターを用いて濾過を行った際に、濾過通液できたフィルター限界孔径を表1に示す。
【0169】
(塗布性)
まず、導電性ポリマー組成物を、1H-360S SPINCOATER(MIKASA製)を用いて膜厚が100±5nmとなるように、Siウエハー上に回転塗布(スピンコート)した。次に、精密高温機にて120℃、5分間ベークを行い、溶媒を除去することにより導電膜を得た。この導電膜に対して、入射角度可変の分光エリプソメーター VASE(J.A.ウーラム社製)で波長636nmにおける屈折率(n,k)を求めた。均一膜を形成できたものを○、屈折率の測定はできたが膜にパーティクル由来の欠陥や部分的にストリエーションが発生したものを×として表1に示す。
【0170】
(粘度)
導電性ポリマー組成物の固形分含有量を1.3質量%とし、液温度が25℃になるように調節した。音叉型振動式粘度計 SV-10(エー・アンド・デイ社製)の付属専用測定セルに35mLを計りとり、調製直後の粘度を測定した。その結果を表1に示す。
【0171】
(pH測定)
導電性ポリマー組成物のpHは、pHメーターD-52(堀場製作所製)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0172】
(表面ラフネス)
導電率の評価方法と同様にして、直径4インチ(100mm)のSiO2ウエハー上に導電膜を得た。AFM NANO-IM-8(イメージメトロロジー社製)により、RMS(二乗平均平方根粗さ)を測定した。その結果を表1及に示す。
【0173】
(透過率)
入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)によって測定された波長636nmにおける屈折率(n,k)より、FT=200nmにおける波長550nmの光線に対する透過率を算出した。その結果を表1に示す。
【0174】
(導電率)
直径4インチ(100mm)のSiO2ウエハー上に、導電性ポリマー組成物1.0mLを滴下後、10秒後にスピンナーを用いて全体に回転塗布した。回転塗布条件は膜厚が100±5nmとなるよう調節した。精密高温機にて120℃、5分間ベークを行い、溶媒を除去することにより導電膜を得た。
得られた導電膜の導電率(S/cm)は、Hiresta-UP MCP-HT450、Loresta-GP MCP-T610(いずれも三菱化学社製)を用いて測定した表面抵抗率(Ω/□)と膜厚の実測値から求めた。その結果を表1に示す。
【0175】
【0176】
表1に示すように、π共役系ポリマーとしてポリチオフェンを含み、かつ繰り返し単位aおよびbを有するドーパントポリマーを含む実施例1~15は、濾過性が良好であり、またスピンコーターによる塗布で均一な塗膜を得ることができた。また、導電性は正孔注入層材料として適正なE-04~E-05S/cmを示し、λ=550nmの可視光に対する透過率も良好であり、表面ラフネスも良好であった。
【0177】
一方、繰り返し単位aを有さない比較例1及び、繰り返し単位a、bを有さないポリスチレンスルホン酸をドーパントポリマーとして用いた比較例2は粘度低下に限界があり、濾過性については比較例1は実施例1~15と同等であったものの成膜後の膜の表面ラフネスは劣り、比較例2はさらにろ過性が劣り、ろ過限界フィルター孔径が1.0μmに留まった。そのため比較例2は結果としてスピンコートにおいては膜上にパーティクルが認められ、またパーティクルや気泡に起因するストリエーションが発生した。また、導電性も高く後述する有機EL素子の実装発光試験においては、基板上に透明電極として蒸着しているITOの蒸着面以外の部分で電極様の機能を発現してしまい、ITO電極上に積層された素子の発光面積以外の部分の余剰発光をして本来の素子部分の発光効率の低下を招いた。また、λ=550nmの可視光に対する透過率は実施例1~15に比べて劣っていた。
【0178】
前記実施例1~15および比較例1、2の導電性組成物を有機EL素子中の正孔注入層として実装し、各素子の輝度低下率を測定した。
【0179】
洗浄したITO付きガラス基板に実施例1~15、比較例1、2の組成物を100nmの膜厚となる様にスピンコート塗布し、正孔輸送層としてα-NPD(ジフェニルナフチルジアミン)を80nmの膜厚になる様に蒸着により積層した。次いで、発光層としてAlq3(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム錯体)を膜厚35nmになる様に蒸着し、その上層に8-Liq(8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム)を30nmの膜厚となる様に蒸着した。その上にマグネシウムと銀を混合した合金で膜厚100nmの電極を形成して有機EL素子を得た。この素子を固定電流密度200mA/m2の高負荷状態で連続発光させ、輝度が初期輝度の70%になるまでの経過時間を測定した。表2にこれらの結果を示す。
【0180】
【0181】
表2に示すように、(A)π共役系ポリマーとしてのポリチオフェンおよび(B)繰り返し単位aを有するドーパントポリマーを含む導電性ポリマー複合体に化合物(C)を加えた導電性ポリマー組成物である実施例1~15は、繰り返し単位aによる成膜中の残存水分低減効果が顕著に現れ、これら膜を正孔注入層として実装した有機EL素子の輝度低下率(素子寿命)が長くなった。
【0182】
一方、繰り返し単位aを有さないドーパントポリマーを含む導電性ポリマー複合体と化合物(C)の組成物(比較例1及び2)は、著しい輝度低下が観測され、素子寿命は短いものとなった。
【0183】
以上のように、本発明の導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、低粘性で濾過性が良好でありスピンコート等での塗布成膜性が良く、(B)ドーパントポリマーの成分中aおよびbのそれぞれの繰り返し単位内に存在するフッ素原子の影響により成膜中の膜内残存水分の除去が効率的で、かつ形成された膜が透明性、平坦性、導電性ないし正孔注入効率の良好な導電膜を形成することが可能となることが明らかとなった。また(B)ドーパントポリマー中、スルホ基を含有する繰り返し単位bとスルホン酸末端を持たない非ドープ性フッ素化ユニットaを共重合し、そのポリマーをドーパントとして(A)π共役系ポリマーと複合体を形成させることにより、非ドープ状態の余剰スルホン酸末端を低減させることとなり、その結果H+の発生率が低減され、本発明材料を薄膜積層素子の構成膜として適用した際にH+の他の構成層への影響を抑えることが可能となる。さらに、このような導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれは、疎水性の高い有機・無機基板への親和性が良好であり、有機基板、無機基板のどちらに対しても成膜性が良好なものとなることが明らかになった。
【0184】
また、このような導電性ポリマー複合体およびその組成物のそれぞれによって形成された導電膜は、導電性、正孔注入効率、透明性等に優れ、かつ薄膜積層素子の構成膜として適用した際にも、膜からの水分の揮発、凝集などを低減できるため、当該薄膜積層素子の透明電極層または正孔注入層として効果的に機能するものとすることができる。
【0185】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。