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特許7288174湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、化粧板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、化粧板
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20230531BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230531BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230531BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230531BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230531BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/42 002
C08G18/42 069
B32B7/12
B32B27/40
B32B27/00 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018212168
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020079335
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-074826(JP,A)
【文献】特開2018-001456(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026513(WO,A1)
【文献】特開2006-348232(JP,A)
【文献】特開平06-093244(JP,A)
【文献】特開2009-286941(JP,A)
【文献】米国特許第06221978(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
C08G71/00-71/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であり、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記ポリオール(a)が、
融点が95~110℃の結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)を含有し、
更に、ヘキサンジオール及びドデカンジカルボン酸を反応させた結晶性ポリエステルポリオールと、ポリカプロラクトンポリオールと、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール及びアジピン酸を反応させたポリエステルポリオールと、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを含有するものであり、
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の使用量が、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計100質量部中5~45質量部の範囲であり、
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)が、ヘキサンジオールと、セバシン酸と、フタル酸との反応物であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(a)が有する水酸基及びポリイソシアネート(b)が有するイソシアネート基のモル比[NCO/OH]が、1.5~5の範囲である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
基材及び化粧シートが接着剤により貼り合された化粧板であって、前記接着剤が請求項1又は2記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有するものであることを特徴とする化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
板状の基材に化粧シートが貼り合された化粧板は、床材、扉、造作部材、天板等の建築内装材に広く利用されている。前記床材に使用される化粧板としては、例えば、基材毎に化粧シートを貼り合わせ、更に実(さね)加工等を施したものを1枚1枚隙間なく繋ぎ合わせることで床(フローリング)材を施工する方法が広く採用されている。
【0003】
しかしながら、係る方法では、各基材に対して化粧シートを貼り合わせるため化粧シートのロスが多く、また施工時間も長くなるため生産性が低いとの指摘があった。これに代わり、近年では大きな面積の基材に溝部を設け、その上から真空ラミネート等により化粧シートを一体的に貼り合わせることで大きな面積の床材を作製する方法が検討され始めている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
前記加工に使用できる接着剤としては、例えば、脂環式ポリエステルポリオール及び脂肪族ポリエステルポリオールを含有するポリオールと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
しかしながら、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、基材の溝部では化粧シートの接着が不十分となり、化粧シートの浮きや剥がれが生じる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-74657号公報
【文献】特開2013-87150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、基材の溝部とシートとの間に良好な初期接着性を付与することができる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(a)が、融点が80℃を超えて140℃以下の結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)を含有し、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の使用量が、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計100質量部中5~45質量部の範囲であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記湿気硬化型ホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤により、基材及び化粧シートが貼り合わされた化粧板を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、基材の溝部とシートとの間に良好な初期接着性(以下、「初期接着性」と略記する。)を付与することができる。
【0011】
よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、化粧板の貼り合わせ用接着剤として好適に用いることができる。また、得られた化粧板は、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板などに好適に使用することができ、床材として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものであり、その原料として特定の結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)を特定量使用することが必須である。
【0013】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)は、優れた接着性を付与するため、融点が80℃を超えて140℃以下のものを用いることが必須である。係る融点範囲の結晶性ポリエステルポリオールを用いることにより、シートを加熱し溝部へ追従させた際に高い凝集力を付与できるため、優れた初期接着性が得られるものと推察される。前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の融点としては、より一層優れた初期接着性が得られる点から、85~130℃の範囲であることが好ましく、90~120℃の範囲がより好ましく、95~110℃の範囲が更に好ましい。
【0014】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の使用量としては、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計100質量部中5~45質量部の範囲であること必須である。前記(a1-1)の使用量が5質量部を下回る場合には、得られる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が、基材に浸透しすぎるため所望の初期接着性を得ることができず、また、45質量部を超える場合には、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の溶融が困難となり、シートへの塗工自体が困難となることや、基材へ密着性が著しく低下し所望の初期接着性を得ることができない。前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の使用量としては、より一層優れた初期接着性、及び作業性が得られる点から、8~43質量部の範囲が好ましく、10~42質量部の範囲がより好ましく、15~41質量部の範囲が更に好ましく、30~40質量部の範囲が特に好ましい。
【0015】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)としては、具体的には、例えば、水酸基を2個以上有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。
【0016】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、初期接着性をより一層向上できる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール及びデカンジオールからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0017】
前記多塩基酸としては、例えば、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、無水フタル酸を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、結晶性を高め、初期接着性をより一層向上できる点から、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、及び無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上の多塩基酸を用いることが好ましい。
【0018】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の融点は、その結晶性の高さと相関しており、高結晶性のポリエステルポリオールを用いることが好ましい。前記ポリエステルポリオールの融点および結晶性は、原料モノマーの選択、共重合組成、平均分子量等により調整することができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。また、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の融点の測定方法は、実施例にて記載する。
【0019】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の好ましい組成としては、ヘキサンジオールと、セバシン酸と、フタル酸(イソフタル酸、テレフタル酸、及び、オルトフタル酸からなる群より選ばれる1種以上)との反応物が挙げられる。
【0020】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の数平均分子量としては、融点を調整しやすく、より一層優れた初期接着性、及び作業性が得られる点から、500~5,000の範囲であることが好ましく、1,000~4,500の範囲がより好ましく、2,000~4,000の範囲が更に好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0021】
前記ポリオール(a)としては、融点が40~80℃の結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)を更に含有することが好ましい。前記(a1-2)を用いることにより、基材への浸透性と結晶性とを両立でき、より一層優れた初期接着性を得ることができる。
【0022】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)は、前記(a1-1)と同様の原料を用いることができ、好ましくは、前記2個以上の水酸基を有する化合物として、エチレングリコール、ブタンジオール、及びヘキサンジオールからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましく、前記多塩基酸としては、アジピン酸、セバシン酸、及びドデカンジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上の多塩基酸を用いることが好ましい。
【0023】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)の融点の測定方法は、結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)と同様である。
【0024】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)の数平均分子量としては、より一層優れた初期接着性が得られる点から、500~5,000の範囲であることが好ましく、1,500~4,500の範囲がより好ましく、2,000~4,000の範囲が更に好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0025】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-2)には、前記したものの他にも、ポリカプロラクトンポリオールを用いることができる。前記ポリカプロラクトンポリオールとしては、前記した2個以上の水酸基を有する化合物とε-カプロラクトンとの反応物を用いることができる。
【0026】
前記(a1-2)としてポリカプロラクトンポリオールを用いる場合の数平均分子量としては、オープンタイム、及び初期接着性をより一層向上できる点から、5,000~200,000の範囲であることが好ましく、10,000~150,000の範囲がより好ましく、30,000~100,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0027】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)及び(a1-2)の合計使用量としては、より一層優れた接着性が得られる点から、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計100質量部中50質量部以上であることが好ましく、50~80質量部の範囲がより好ましい。
【0028】
前記ポリオール(a)には、前記(a1-1)及び(a1-2)以外にも、その他のポリオールを併用してもよい。
【0029】
前記その他のポリオールとしては、例えば、前記(a1-1)及び(a1-2)以外のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層の密着性が得られるため、前記(a1-1)及び(a1-2)以外のポリエステルポリオールを用いることが好ましい。前記(a1-1)及び(a1-2)以外のポリエステルポリオールの数平均分子量としては、500~10,000の範囲であることが好ましい。なお、前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0030】
前記ポリイソシアネート(b)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、反応性及び接着性の点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0031】
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0032】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(b)の入った反応容器に、前記ポリオール(a)の混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(b)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(a)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0033】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際の、前記ポリオール(a)が有する水酸基及び前記ポリイソシアネート(b)が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)として、未反応のポリイソシアネートを減らし、高温下での高い凝集力を付与できる点から、1.5~5の範囲であることが好ましく、1.8~3の範囲がより好ましい。
【0034】
以上の方法によって得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、高温下での接着性をより一層向上できる点から、1~10質量%の範囲であることが好ましく、2~5質量%の範囲がより好ましく、2.5~4質量%の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0035】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は前記ウレタンプレポリマーを含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0036】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、光安定剤、充填材、染料、顔料、消泡剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0037】
次に、本発明の化粧板について説明する。
【0038】
前記化粧板は、基材及び化粧シートが接着剤を介して貼り合されたものであり、前記接着剤は前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有するものである。
【0039】
前記基材としては、例えば、板状の木材、集成材、合板、MDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材;硬質セメント珪酸カルシウム板等の無機質基材などを用いることができる。
【0040】
前記基材の厚さ、幅、および、長さは、それぞれ化粧板の使用される用途に応じて適宜決定されるが、例えば、縦が600~4,000mm、横が50~5,000mm、厚さが2~18mmの範囲が挙げられる。
【0041】
本発明にあっては、前記基材は長手方向(幅が長い方向を示す。幅が縦横同じである場合にはどちらか一方を示す。)、及び、長手方向以外の少なくとも1方向に溝を有するものを用いた場合でも、化粧シートの溝部への良好な接着性を付与することができる。長手方向の溝は1つであっても2つ以上であってもよく、また、長手方向以外の溝も1つであっても2つ以上であってもよい。前記長手方向以外の溝の方向としては、最も利用頻度が高い点、及び、ライン生産上溝部に化粧シートを追従させやすい点から、長手方向に対して垂直であることが好ましい。
【0042】
前記基材が有する溝としては、円筒溝、三角溝、平面溝等、アリ溝等が挙げられる。これらの溝は1種でも2種以上が混在していてもよい。これらの中でも、床材等での利用頻度が高く、化粧シートの溝部への追従性が良好なことから、三角溝が好ましい。
【0043】
前記溝の深さは、化粧板の使用される用途に応じて適宜決定されるが、例えば、0.5~3mmの範囲が挙げられる。また、溝の幅としては、例えば、0.5~3mmの範囲が挙げられる。
【0044】
本発明で用いることができる化粧シートは、無地であっても、装飾的な色や模様が施されているものであってもよい。また、前記化粧シートの材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂;化粧紙、不織布、織布、木質薄化粧突き板、畳表等が挙げられる。これらの中でも、溝部への追従性の点から、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステルを用いることが好ましい。
【0045】
前記化粧シートの厚さとしては、溝部への追従性に優れる点から、0.05~0.3mmの範囲が好ましく、0.1~0.2mmの範囲がより好ましい。
【0046】
前記基材と化粧シートとの貼り合わせには、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を用いる。前記接着剤層としては、十分な接着性が得られればよく適宜決定できるが、例えば、0.03~0.15mmの範囲が挙げられる。
【0047】
本発明の化粧板は、前記基材、及び、化粧シートが貼り合されたものであり、基材の側面部、平面部および平面部に設けられた溝部において化粧シートが連続して貼り合わされてものであり、背面部(平面部の裏側)にも化粧シートが貼り合されていてもよい。
【0048】
次に、本発明の化粧板の製造方法について説明する。
【0049】
本発明の化粧板は、例えば、前記化粧シート上に接着剤を塗布して、化粧シートと前記した溝を有する基材平面、側面、及び場合により背面部とを貼り合わせ、(i)その後、基材の溝部にあたる化粧シートを局部加熱し、化粧シートを局部的に軟化させ、基材の溝部に圧着させる方法;(ii)その後、真空ラミネートすることで一体的に貼り合わせる行う方法などが挙げられる。前記真空ラミネートを行う際には、熱をかけながら行うこともできる。
【0050】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、基材の溝部とシートとの間に良好な接着性を付与することができる。
【0051】
よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、化粧板の貼り合わせ用接着剤として好適に用いることができる。また、得られた化粧板は、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板などに好適に使用することができ、床材として特に好適に使用することができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0053】
[実施例1]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性ポリエステルポリオール(ヘキサンジオール、テレフタル酸、およびセバシン酸を反応させたもの、融点;100℃、数平均分子量;2,000、以下「結晶性PEs-1」と略記する。)25質量部、結晶性ポリエステルポリオール(ヘキサンジオール及びドデカンジカルボン酸を反応させたもの、融点;72℃、数平均分子量;3,500、以下「結晶性PEs-2」と略記する。)40質量部、結晶性ポリエステルポリオール(ポリカプロラクトンポリオール、融点;50℃、数平均分子量;80,000、以下「結晶性PEs-3」と略記する。)10質量部、その他のポリエステルポリオール(エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、及びアジピン酸を反応させたもの、数平均分子量;5,000、以下「その他PEs-1」と略記する。)5質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;4,000、以下「PEt-1」と略記する。)2質量部を仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)18質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.14、ウレタンプレポリマーのNCO%は2.50質量%であった。
【0054】
[実施例2]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性PEs-1を25質量部、結晶性PEs-2を25質量部、結晶性PEs-3を10質量部、結晶性ポリエステルポリオール(ヘキサンジオール及びアジピン酸を反応させたもの、融点;58℃、数平均分子量;4,500、以下「結晶性PEs-4」と略記する。)15質量部、その他PEs-1を5質量部、PEt-1を2質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを18質量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.22、ウレタンプレポリマーのNCO%は2.58質量%であった。
【0055】
[実施例3]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性PEs-1を30質量部、結晶性PEs-2を30質量部、結晶性PEs-3を10質量部、その他PEs-1を10質量部、PEt-1を2質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを18質量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.77、ウレタンプレポリマーのNCO%は3.86質量%であった。
【0056】
[実施例4]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性PEs-1を40質量部、結晶性PEs-2を20質量部、結晶性PEs-3を10質量部、その他PEs-1を10質量部、PEt-1を2質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを18質量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.19、ウレタンプレポリマーのNCO%は2.93質量%であった。
【0057】
[実施例5]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性PEs-1を42質量部、結晶性PEs-2を10質量部、結晶性PEs-3を10質量部、結晶性PEs-4を10質量部、その他PEs-1を10質量部、PEt-1を2質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを16質量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.24、ウレタンプレポリマーのNCO%は2.98質量%であった。
【0058】
[実施例6]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性ポリエステルポリオール(ヘキサンジオール、テレフタル酸、およびアジピン酸を反応させたもの、融点;96℃、数平均分子量;3,500、以下「結晶性PEs-5」と略記する。)を42質量部、結晶性PEs-2を23質量部、結晶性PEs-3を10質量部、その他PEs-1を10質量部、PEt-1を2質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを13質量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.47、ウレタンプレポリマーのNCO%は2.6質量%であった。
【0059】
[比較例1]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性PEs-1を60質量部、結晶性PEs-2を10質量部、結晶性PEs-3を10質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを20質量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.43、ウレタンプレポリマーのNCO%は3.95質量%であった。
【0060】
[比較例2]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性PEs-1を50質量部、結晶性PEs-2を10質量部、結晶性PEs-3を10質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを17質量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.15、ウレタンプレポリマーのNCO%は3.05質量%であった。
【0061】
[比較例3]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、結晶性PEs-2を30質量部、結晶性PEs-3を10質量部、結晶性PEs-4を30質量部、その他PEs-1を10質量部、PEt-1を2質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、MDIを18量部加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.77、ウレタンプレポリマーのNCO%は3.86質量%であった。
【0062】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した値を示す。
【0063】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0064】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0065】
[結晶性ポリエステルポリオールの融点の測定方法]
各結晶性ポリエステルポリオール10mgを測定容器中に秤量し、示差走査熱量測定装置(セイコー電子株式会社製「DSC 220C」)を使用して、窒素ガス流量50ml/分、加熱速度10℃/分で20℃から210℃まで昇温し、次いで210℃で3分間保持させた後、冷却速度50℃/分で-100℃まで降温し、再度2次昇温を200℃まで行い、チャート上に描かれたDSC曲線から融点(℃)を求めた。
【0066】
[化粧板の作製方法]
木目模様のある塩化ビニル系化粧シート(厚さ130μm、軟化点50℃、以下「PVC」と略記する。)の裏面に、Tダイコーターを使用して実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を60μmの厚さで塗布し、接着剤層を基材(縦182cm、幅31cm、厚さ9mmのMDFであり、縦60cm、幅15cmの長方形をなすような三角溝(溝の幅1mm、深さ0.8mm)を、長手方向に順次半分ずつずれるように連続して形成されたもの)に加圧しながら貼り合わせた。次いで、化粧シートの余剰部分を基材の四方側面部に折り曲げ、圧着させた。
続いて、基材の溝部にあたる化粧シートを、80℃に加熱した押し込み治具を押し当て局部加熱し、軟化させながら伸長させ基材の溝底面に圧着させた。その後、加熱していない押し込み治具を押し当て冷却して圧着させることで、化粧板を得た。
【0067】
[接着性の評価方法]
接着性の評価は、以下の2つの方法により評価した。
【0068】
<最終接着性>
前記方法で作成した化粧版を23℃下で5日間養生した後、溝部の断面を観察し、最終接着性を評価した。
「○」:化粧シートの浮きは確認されなかった。
「△」:一部化粧シートの浮きが確認されたが、実用上問題無いレベルであった。
「×」:接着ができなかった。
【0069】
<クリープ試験>
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を、それぞれ120℃の温度で1時間溶融させた。該接着剤をポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。23℃下15分放置し、その後80℃下で2分間放置した。該塗布層の上に、80℃下でMDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)を貼り合せ、圧着ローラーで圧着した。圧着後25mm幅の試験片に対して、75gの荷重を90°方向に与えて、15分経過後のポリエチレンテレフタレートシートの剥離長さ(mm)を測定し、以下のように評価した。
「○」:剥離長さが5mm以下であった。
「△」:剥離長さが5mmを超えて10mm以下であった。
「×」:剥離長さが10mmを超えていた、又は、重りが落下した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた接着性を有することが分かった。
【0074】
一方、比較例1及び2は、結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)の使用量が本発明で規定する範囲を超える態様であるが、接着性が不良であった。
【0075】
比較例3は、結晶性ポリエステルポリオール(a1-1)を用いない態様であるが、接着性が不良であった。