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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-30
(45)【発行日】2023-06-07
(54)【発明の名称】水性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20230531BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230531BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230531BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20230531BHJP
   C08G 18/82 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
C09J175/04
C09K3/10 D
C08L75/04
C08G18/44
C08G18/82
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019026559
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020132736
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】髭白 朋和
(72)【発明者】
【氏名】三上 明音
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
C09J1/00-201/10
C09K3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)を含む水性樹脂組成物からなるヒートシール剤であって、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリオール成分(a)及びポリイソシアネート成分(b)の反応物であり、
前記ポリオール成分(a)が、ポリカーボネートポリオール及び2,2-ジメチロールプロピオン酸を含むものであり、
前記ポリイソシアネート成分(b)が、イソホロンジイソシアネートを含むものであり、
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が、1,000以上3,000以下であり、
前記ポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合基濃度が、0.1mol/kg以上2mol/kg以下であり、
前記ポリウレタン樹脂(A)の示差走査熱量分析法にて測定した融解ピーク強度が10J/g以上であるヒートシール剤。
【請求項2】
以下の方法により測定した前記ポリカーボネートポリオールの融解ピーク強度が、10J/g以上である請求項1記載のヒートシール剤。
[融解ピーク強度測定方法]
ポリカーボネートポリオールを-100℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温する。150℃で5分保持した後、降温速度10℃/分で-100℃まで冷却する。再度、-100℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温したときの熱量を示差走査熱量分析法により測定し、融解ピークにおけるポリカーボネート1gあたりの吸収熱量を融解ピーク強度とする。
【請求項3】
ポリウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)を含む水性樹脂組成物から形成されるシートであって、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリオール成分(a)及びポリイソシアネート成分(b)の反応物であり、
前記ポリオール成分(a)が、ポリカーボネートポリオール及び2,2-ジメチロールプロピオン酸を含むものであり、
前記ポリイソシアネート成分(b)が、イソホロンジイソシアネートを含むものであり、
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が、1,000以上3,000以下であり、
前記ポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合基濃度が、0.1mol/kg以上2mol/kg以下であり、
前記ポリウレタン樹脂(A)の示差走査熱量分析法にて測定した融解ピーク強度が10J/g以上であるシート。
【請求項4】
以下の方法により測定した前記ポリカーボネートポリオールの融解ピーク強度が、10J/g以上である請求項3記載のシート。
[融解ピーク強度測定方法]
ポリカーボネートポリオールを-100℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温する。150℃で5分保持した後、降温速度10℃/分で-100℃まで冷却する。再度、-100℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温したときの熱量を示差走査熱量分析法により測定し、融解ピークにおけるポリカーボネート1gあたりの吸収熱量を融解ピーク強度とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム、皮革、金属、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック、発泡体等の各種基材をポリウレタン系水性溶液、分散液、及びこれらを用いて得られる水性接着剤を使用して接着する場合、様々な生産ラインや加工温度等の異なる条件下で加工を行っても、接着直後及び経時で高い接着強度を発現することが重要である。
【0003】
特に水性樹脂の場合、水を除去した後に貼り合わせを行う加工方法(ドライラミネート加工、真空成型加工等、加工温度:50~80℃程度)では、加工温度付近での接着剤の粘着性を如何に発現し、更に耐熱性を保持してバランスをとるかが、樹脂設計をする上で非常に重要となる。このため、低温での加工適正と耐熱性のバランスのとれた水性接着剤の提供が強く要望されてきた。こうした水性接着剤として、結晶性ポリエステルポリオールを用いて得られる結晶性ポリウレタン樹脂を含む水性接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-328187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来から知られる組成物では、低温シール時の表面タック抑制と高い初期接着強度を達成した上で、高湿条件下において接着強度を維持することが困難な場合があった。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、低温シール時の表面タックを抑制しつつ、高い初期接着強度を両立し、さらに、高湿条件下においても接着強度を維持することを可能とする水性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)を含み、前記ポリウレタン樹脂(A)が、ポリオール成分(a)及びポリイソシアネート成分(b)の反応物であり、前記ポリオール成分(a)が、ポリカーボネートポリオールを含むものであり、前記ポリウレタン樹脂(A)の示差走査熱量分析法にて測定した融解ピーク強度が10J/g以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性樹脂組成物は、低温シール時の表面タックを抑制しつつ、高い初期接着強度を両立するシート及びヒートシール剤を提供することができ、さらに前記シート及びヒートシール剤は、高湿条件下においても接着強度を維持することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂(A)及び水性媒体(B)を含む。
【0009】
前記ポリウレタン樹脂(A)は、ポリオール成分(a)及びポリイソシアネート成分(b)の反応物である。
【0010】
前記ポリオール成分(a)は、1種又は2種以上のポリオールを含むものであり、前記ポリオールは、高分子量ポリオールとして、ポリカーボネートポリオールを含む。
【0011】
前記高分子量ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下である。
【0012】
前記高分子量ポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法により、ポリスチレンを標準試料とした換算値として測定することができる。
【0013】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとの反応物;ホスゲンとポリオールとの反応物等が挙げられる。
【0014】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の炭素原子数2~10のアルキルカーボネート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭素原子数3~10のシクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等の炭素原子数13~20の芳香族カーボネートなどが挙げられる。
【0015】
前記炭酸エステル又はホスゲンと反応しうるポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の炭素原子数2~6の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール(以下、「脂環式構造を含有する」基又は化合物を単に「脂環式」として表現する場合がある。);ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオール(以下、「芳香族構造を含有する基又は化合物」を単に「芳香族」として表現する場合がある。);ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、ポリエステルポリオール(ポリヘキサメチレンアジペート等)等の高分子量ポリオール(数平均分子量500以上5,000以下)などが挙げられる。
【0016】
前記ポリカーボネートポリオールの融解ピーク強度を以下の方法により測定した場合、該融解ピーク強度は、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上、さらに好ましくは30J/g以上であり、例えば100J/g以下、さらには70J/g以下、60J/g以下であってもよい。
【0017】
[融解ピーク強度の測定方法]
ポリカーボネートポリオールを-100℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温する。150℃で5分保持した後、降温速度10℃/分で-100℃まで冷却する。再度、-100℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温したときの熱量を示差走査熱量分析法により測定し、融解ピークにおけるポリカーボネート1gあたりの吸収熱量を融解ピーク強度とする。
【0018】
前記ポリカーボネートポリオールの融解ピーク温度を以下の方法により測定した場合、該融解ピーク温度は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0019】
[融解ピーク温度の測定方法]
ポリカーボネートポリオールを-100℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温する。150℃で5分保持した後、降温速度10℃/分で-100℃まで冷却する。再度、-100℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温したときの熱量を示差走査熱量分析法により測定し、融解ピークの温度を融解ピーク温度とする。
【0020】
前記ポリカーボネートポリオールの含有率は、前記高分子量ポリオール中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。前記ポリカーボネートポリオールは、前記ポリウレタン樹脂(A)を形成するポリオール成分として、ポリウレタン樹脂(A)中に取り込まれていることが重要であり、ポリウレタン樹脂(A)を形成した後に、前記ポリカーボネートポリオールを混合したとしても、十分な低温接着性を発揮できない場合がある。
【0021】
前記ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、前記ポリウレタン樹脂(A)の結晶性の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、さらに好ましくは1,800以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,000以下である。
【0022】
前記高分子量ポリオールは、その他の高分子量ポリオールとして、ポリエーテルポリール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール等を含んでいてもよい。
【0023】
前記ポリエーテルポリオールとしては、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を必要に応じ開始剤として、アルキレンオキシドを付加重合(開環重合)させたポリオール等が挙げられる。
【0024】
前記開始剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-プロパンジオ-ル、1,3-プロパンジオ-ル、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の直鎖状ジオール;ネオペンチルグリコール等の分岐鎖状ジオール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ピロガロール等のトリオール;ソルビトール、蔗糖、アコニット糖等のポリオール;アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸等のトリカルボン酸;リン酸;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミン;トリイソプロパノールアミン;ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタル酸等のフェノール酸;1,2,3-プロパントリチオールなどが挙げられる。
【0025】
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0026】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリイソブテンポリオール、水素添加(水添)ポリブタジエンポリオール、水素添加(水添)ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(例えば、分子量50以上300以下のポリオール)とポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0027】
前記低分子量ポリオールとしては、分子量が50以上300以下程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール等の炭素原子数2以上6以下の脂肪族ポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキシド付加物等の芳香族構造含有ポリオールなどが挙げられる。
【0028】
前記ポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸;並びに前記脂肪族ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0029】
前記高分子量ポリオールは、接着強度を維持する観点から、ポリエステルポリオールの含有率が抑制されていることが好ましく、ポリエステルポリオールの含有率は、前記高分子量ポリオール中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下であり、下限は0質量%である。
【0030】
前記ポリオール(a)中、高分子量ポリオールの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量である。
【0031】
前記ポリオール成分(a)は、親水性基を有するポリオールを含むことが好ましい。前記親水性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等のアニオン性基;置換又は無置換のアミノ基等のカチオン性基;ポリオキシアルキレン基等のノニオン性基などが挙げられ、アニオン性基が好ましい。
【0032】
前記アニオン性基を有するポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、カルボキシル基を有するポリオール、スルホン酸基を有するポリオールが挙げられる。
【0033】
前記カルボキシル基を有するポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ酸;及び前記カルボキシ基を有するポリオールと前記ポリカルボン酸との反応物などが挙げられる。前記ヒドロキシ酸としては、2,2-ジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0034】
前記スルホン酸基を有するポリオールとしては、例えば、5-スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4-スルホフタル酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸基を有するジカルボン酸;前記ジカルボン酸の塩と、前記芳香族構造含有ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0035】
前記ポリオール成分(a)としてアニオン性基を有するポリオールが含まれる場合、前記ポリウレタン樹脂(A)の酸価は、好ましくは2mgKOH/g以上70mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。
本発明でいう酸価は、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用したカルボキシ基やスルホン酸基を有するポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて、前記ウレタン樹脂(A)1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として算出した理論値である。
【0036】
良好な水分散性を発現する観点から、前記アニオン性基の一部又は全部は、塩基性化合物等によって中和されていることが好ましい。
【0037】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を含む金属水酸化物などが挙げられる。ウレタン樹脂組成物の水分散安定性を向上させる観点から、前記塩基性化合物とアニオン性基とのモル比(塩基性基/アニオン性基)は、好ましくは0.5以上3.0以下、より好ましくは0.8以上2.0以下である。
【0038】
前記カチオン性基を有するポリオールとしては、N-メチル-ジエタノールアミン;1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオール等の3級アミノ基を有するポリオールなどが挙げられる。
【0039】
前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部又は全部が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のカルボン酸;酒石酸等のヒドロキシ酸;リン酸などの酸性化合物で中和されていることが好ましい。
【0040】
前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部又は全部が4級化されているものであることが好ましい。前記4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロリド、エチルクロリド等が挙げられる。これらの中でもジメチル硫酸を使用することが好ましい。
【0041】
前記カチオン性基を有するポリオールを用いる場合、前記ウレタン樹脂(A)のアミン価は、好ましくは2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。なお本発明で言うアミン価は、前記ウレタン樹脂(A)の製造に使用した3級アミノ基を有するポリオール等の3級アミノ基含有化合物の使用量に基づいて、ウレタン樹脂(A)1gを中和するのに必要な塩化水素のモル数(mmol)及び水酸化カリウムの式量(56.1g/mol)の積として算出した理論値である。
【0042】
前記ノニオン性基を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレン構造を有するポリオール等が挙げられる。
【0043】
前記親水性基を有するポリオールの含有率は、前記ポリオール(a1-1)の合計100質量%中、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0044】
前記ポリオール成分(a)は、低分子量ポリオールを含んでいてもよい。前記低分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば50以上、好ましくは60以上、より好ましくは70以上であり、好ましくは500未満、より好ましくは490以下、さらに好ましくは300以下である。
【0045】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の炭素原子数2~10(好ましくは炭素原子数2~8)の脂肪族ポリオール;シクロヘキサンジメタノール等の炭素原子数3~20(好ましくは炭素原子数6~10)の脂環式のポリオールなどが挙げられる。
【0046】
前記低分子量ポリオールの含有量は、前記ポリオール成分(a)中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0047】
前記ポリイソシアネート成分(a)は、1種又は2種以上のポリイソシアネートを含む。前記ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。中でも、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
【0048】
前記ポリイソシアネート成分(a)として、脂肪族ポリイソシアネートを含むことも好ましい。前記脂肪族ポリイソシアネートのイソシアネート基を除いた部分の炭素原子数は、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。
【0049】
前記脂肪族ポリイソシアネートを含む場合、該脂肪族ポリイソシアネートの割合は、ポリイソシアネート成分(a)中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。なお前記脂肪族ポリイソシアネートは必須成分ではなく、含まなくともよい。
【0050】
前記ポリイソシアネート成分(b)に含まれるイソシアネート基と、前記ポリオール成分(a)に含まれる水酸基とのモル比(NCO/OH)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下である。
【0051】
前記ポリウレタン樹脂(A)は、無溶剤下又は有機溶剤の存在下で、前記ポリオール成分(a)と、前記ポリイソシアネート成分(b)とを反応させることによって製造することができる。
【0052】
前記ポリオール(a1-1)と前記ポリイソシアネート(a1-2)との反応温度は、通常50℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0053】
前記ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0054】
安全性や環境に対する負荷低減を図るため、前記ポリウレタン樹脂(A)の製造途中又は製造後に、減圧留去などによって前記有機溶剤の一部又は全部を除去してもよい。
【0055】
前記ポリウレタン樹脂(A)は、前記ポリオール成分(a)と、前記ポリイソシアネート成分(b)との反応物に、さらに、鎖伸長剤(c)を付加させたものであってもよい。
前記鎖伸長剤としては、ポリアミン、ヒドラジン化合物、その他活性水素含有化合物等が挙げられる。
【0056】
前記ポリアミンとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0057】
前記ヒドラジン化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0058】
前記その他活性水素含有化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール、及び水等が挙げられ、本発明の水性樹脂組成物の保存安定性が低下しない範囲内で用いることもできる。
【0059】
ポリウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは30,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。
【0060】
ポリウレタン樹脂(A)の示差走査熱量分析法にて測定した該融解ピーク強度は、好ましくは10J/g以上、より好ましくは20J/g以上、さらに好ましくは30J/g以上であり、例えば100J/g以下、さらには70J/g以下、60J/g以下であってもよい。前記融解ピーク強度の測定方法としては、具体的には、以下の方法が好ましい。
【0061】
[融解ピーク強度の測定方法]
ポリウレタン樹脂を-100℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温する。150℃で5分保持した後、降温速度10℃/分で-100℃まで冷却する。再度、-100℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温したときの熱量を示差走査熱量分析法により測定し、融解ピークにおけるポリウレタン樹脂1gあたりの吸収熱量を融解ピーク強度とする。
【0062】
ポリウレタン樹脂(A)の融解ピーク温度を以下の方法により測定した場合、該融解ピーク温度は、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であり、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0063】
[融解ピーク強度の測定方法]
ポリウレタン樹脂を-100℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温する。150℃で5分保持した後、降温速度10℃/分で-100℃まで冷却する。再度、-100℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温したときの熱量を示差走査熱量分析法により測定し、融解ピークにおけるポリウレタン樹脂1gあたりの吸収熱量を融解ピーク強度とする。
【0064】
前記ポリウレタン樹脂(A)のウレタン結合基濃度は、好ましくは2mol/kg以下、より好ましくは2.0mol/kg以下、さらに好ましくは1.7mol/kg以下であり、例えば0.1mol/kg以上、0.5mol/kg以上、0.7mol/kg以上であってもよい。
【0065】
前記ウレタン結合基濃度は、前記ポリオール成分(a)及び前記ポリイソシアネート成分(b)の仕込み量に基づいて算出した理論値を表すものとする。
【0066】
前記水性媒体(B)としては、水;水と混和する有機溶剤;水と前記水と混和する有機溶剤との混合物が挙げられる。前記水と混和する有機溶剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶剤;エチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールエーテル溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン等のラクタム溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド溶剤などが挙げられ、アルコール溶剤が好ましい。
【0067】
水の含有率は、前記水性媒体(B)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0068】
前記水性媒体(B)の含有率は、前記水性樹脂組成物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
【0069】
前記水性樹脂組成物は、前記ポリウレタン樹脂(A)、前記水性媒体(B)以外にその他の添加剤を含んでいてもよい。前記その他の添加剤としては、架橋剤、界面活性剤、可塑剤、アンチブロッキング剤、無機粒子、帯電防止剤、ワックス、光安定剤、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光触媒性化合物、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。
【0070】
前記水性樹脂組成物から形成されるシートも本発明の技術的範囲に包含される。前記シートの厚さは、例えば1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0071】
前記シートは、基材と積層されていてもよい。前記基材の材質としては、紙;不織布;アルミニウム等の金属(アルミニウム箔等);ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、アルミニウム蒸着プラスチックフィルム、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルム、アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂(樹脂フィルム)などが挙げられる。前記基材は、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等の表面処理がされたものであってもよい。
【0072】
前記基材の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0073】
前記シートは、前記水性樹脂組成物をスプレーコート法、カーテンコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、刷毛塗法、浸漬法等の方法により塗工し、乾燥させることで製造することができる。前記基材として、樹脂(樹脂フィルム)を用いる場合、インラインコートしてもよく、オフラインコートしてもよい。乾燥温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは120℃以下である。
【0074】
前記シートは、低温シール時の表面タックを抑制しつつ、高い初期接着強度を両立するものであり、さらに、高湿条件下においても接着強度を維持することが可能である。そのため、ヒートシール剤として有用であり、特に120℃以下(さらには100℃以下、80℃以下)でシールする低温ヒートシール剤として有用であり、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等の包装資材に好適に用いることができる。
【実施例
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明の実施例で用いた測定方法は、以下の通りである。
【0076】
〔融解ピーク強度測定方法〕
融解ピーク強度については、示差走査熱量分析による測定を実施。
1st-RUN → -100℃から150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)
2nd-RUN → 1st-RUN終了後、-100℃まで冷却(降温速度10℃/分)し、再度150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)
示差走査熱量分析機器として、TA Instruments社製 DSC Q100を使用した。
【0077】
〔接着剤表面タック評価方法〕
膜厚30μmのアルミ箔からなる基材の表面に、乾燥時の膜厚が約10μmとなるように前記接着剤を塗布し、150℃で3分間加熱することによって、前記基材の表面に接着層を形成した。
◎;接着層の表面に指を押し付けても、接着層の付着が全くない。
〇;接着層の表面に指を押し付けると、接着層の付着がわずかにある。
△;接着層の表面に指を押し付けると、接着層の付着があるが、その付着力は弱い。
×;接着層の表面に指を押し付けると、接着層の付着が強い。
【0078】
〔促進試験方法〕
水性ウレタン樹脂組成物をガラス瓶に充填し、40℃×3ヶ月静置。
【0079】
〔接着強度測定方法〕
アルミ箔に水性樹脂を塗工(目標膜厚10μm)・乾燥し、1日放置後に、ラミネーターでアルミ箔を熱接着(50℃*0.2MPa*速度:300mm/min)。熱接着1日後、引張強度を測定する。
【0080】
[合成例1](ポリエステルポリオール(I-1)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、1,4-ブタンジオール487質量部、アジピン酸710部、及びジブチル錫オキサイド0.5質量部を仕込み酸価が0.5以下になるまで230℃で15時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(I-1)(水酸基価=56.5mgKOH/g、酸価=0.2mgKOH/g)を得た。
【0081】
[合成例2](ポリエステルポリオール(I-2)の合成)
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応容器中で窒素ガスを導入しながら、エチレングリコール70質量部、ネオペンチルグリコール255質量部、アジピン酸300質量部、イソフタル酸235質量部、セバシン酸348質量部、及びジブチル錫オキサイド0.5質量部を仕込み酸価が0.5以下になるまで230℃で15時間重縮合反応を行い、ポリエステルポリオール(I-2)(水酸基価=56.1mgKOH/g、酸価=0.2mgKOH/g)を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
ウレタン樹脂の調製に使用したポリオールのDSC熱分析結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
[合成例3](水性ウレタン樹脂組成物(I-1)の調製)
反応容器で宇部興産株式会社製ETERNACOLL UH-300(345.5質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン326.5質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.21質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸12.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート44.0質量部、オクチル酸第一錫0.4質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、イソプロピルアルコール60.2質量部と5%アンモニア水36.5質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1210質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=12.5mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-1)を調製した。
【0086】
[合成例4](水性ウレタン樹脂組成物(I-2)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T6002(333.3質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン278.9質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール4.42質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸15.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート52.4質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート13.2質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、5%アンモニア水45.6質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1000質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=15.0mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-2)を調製した。
【0087】
[合成例5](水性ウレタン樹脂組成物(I-3)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T6002(347.0質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン302.7質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール1.44質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸25.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート81.4質量部、オクチル酸第一錫0.43質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、イソプロピルアルコール45.5質量部と5%アンモニア水76.1質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1200質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=23.0mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-3)を調製した。
【0088】
[合成例6](水性ウレタン樹脂組成物(I-4)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T6002(335.3質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン278.7質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール4.51質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸15.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート45.2質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート18.4質量部、オクチル酸第一錫0.2質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、5%アンモニア水45.6質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1150質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=15.0mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-4)を調製した。
【0089】
[合成例7](水性ウレタン樹脂組成物(I-5)の調製)
反応容器で宇部興産株式会社製ETERNACOLL UH-300(331.2質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン267.4質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.51質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸12.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート57.9質量部、オクチル酸第一錫0.4質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.65質量%になったのを確認した。次に、イソプロピルアルコール20.1質量部とトリエチルアミン9.5質量部を加え、50℃で10分間攪拌した。その後、イオン交換水1250質量部を30分かけて滴下し、メタキシレンジアミン4.99質量部を加え、水溶化完了させた。3時間後、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=12.5mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-5)を調製した。
【0090】
[合成例8](水性ウレタン樹脂組成物(I-6)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T6002(333.3質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン278.7質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール4.42質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸15.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート52.4質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート13.2質量部、オクチル酸第一錫0.21質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、5%アンモニア水45.6質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1180質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=15.0mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-6)を調製した。
【0091】
[合成例9](水性ウレタン樹脂組成物(I-7)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T6002(325.1質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン297.1質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.58質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸32.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート88.6質量部、オクチル酸第一錫0.45質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、5%アンモニア水97.4質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1380質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=30.0mgKOH/g、不揮発分=25質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-7)を調製した。
【0092】
[合成例10](水性ウレタン樹脂組成物(I-8)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T6002(338.7質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン342.1質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.73質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸14.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート51.9質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート13.1質量部、オクチル酸第一錫0.21質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.34質量%になったのを確認した。次に、トリエチルアミン10.3質量部を加え、50℃で10分間攪拌した。その後、イオン交換水1380質量部を30分かけて滴下し、メタキシレンジアミン2.53質量部を加え、水溶化完了させた。3時間後、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=14.0mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-8)を調製した。
【0093】
[合成例11](水性ウレタン樹脂組成物(I-9)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T6001(343.9質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン435質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.02質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸23.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート114.2質量部、オクチル酸第一錫0.48質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、5%アンモニア水70.0質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1310質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=20.0mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-9)を調製した。
【0094】
[合成例12](水性ウレタン樹脂組成物(I-10)の調製)
反応容器で旭化成株式会社製DURANOL T4692(333.4質量部)を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン267.4質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.58質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸12.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート55.7質量部、オクチル酸第一錫0.39質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、5%アンモニア水36.5質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1310質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=12.5mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-10)を調製した。
【0096】
[合成例13](水性ウレタン樹脂組成物(I-11)の調製)
前記ポリエステルポリオール(I-1)352.0質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン278.5質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.08質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸10.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート56.3質量部、オクチル酸第一錫0.42質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、イソプロピルアルコール62.8質量部、5%アンモニア水30.5質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1070質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=10mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-11)を調製した。
【0097】
[合成例14](水性ウレタン樹脂組成物(I-12)の調製)
前記ポリエステルポリオール(I-2)352.0質量部を減圧下100℃で脱水し、その後80℃まで冷却後、メチルエチルケトン341.9質量部を加え、攪拌し均一に混合した。次に、ネオペンチルグリコール0.12質量部、2,2’-ジメチロールプロピオン酸10.0質量部を加え、次いでイソホロンジイソシアネート56.3質量部、オクチル酸第一錫0.42質量部を加えて、75℃で15時間反応させた。前記ウレタン樹脂の製造に使用した原料の合計質量に対するイソシアネート基の質量割合(イソシアネート値)が0.01質量%以下になったのを確認した。次に、イソプロピルアルコール62.8質量部、5%アンモニア水30.5質量部を加え、50℃で30分間攪拌した。その後、イオン交換水1070質量部を30分かけて滴下し、水溶化完了させた。次いで、減圧下、30℃~50℃でメチルエチルケトンを除去することによって、固形分当たり酸価=10mgKOH/g、不揮発分=30質量%の水性ウレタン樹脂組成物(I-12)を調製した。
【0098】
[実施例1]
水性ウレタン樹脂組成物(I-1)を膜厚30μmのアルミ箔からなる基材(以下、AL箔と省略)の表面に、乾燥時の膜厚が約10μmとなるように塗布し、100℃で3分間加熱することによって、前記基材の表面に接着層を形成させた樹脂積層体を得た。樹脂積層体に対して、1日室温下で放置し、接着剤表面のタックを測定した。次に、未塗工のAL箔と前記樹脂積層体表面をラミネート機(50℃、送り速度300mm/分、0.2MPa)で貼り合わせた。1日後に、300mm/分の速度で剥離強度を測定した。また、水性ウレタン樹脂組成物(I-1)を40℃×3ヶ月の促進試験後、同様に膜厚30μmのAL箔の表面に、乾燥時の膜厚が約10μmとなるように塗布し、100℃で3分間加熱することによって、前記基材の表面に接着層を形成させた樹脂積層体を得た。次に、未塗工のAL箔と前記樹脂積層体表面をラミネート機(50℃、送り速度300mm/分、0.2MPa)で貼り合わせた。1日後に、300mm/分の速度で促進試験後の剥離強度を測定した。
【0099】
[実施例2]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-2)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0100】
[実施例3]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-3)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0101】
[実施例4]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-4)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0102】
[実施例5]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-5)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0103】
[実施例6]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-6)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0104】
【表3】
【0105】
[比較例1]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-7)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0106】
[比較例2]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-8)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0107】
[比較例3]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-9)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0108】
[比較例4]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-10)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0109】
[比較例5]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-11)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0110】
[比較例6]
性ウレタン脂組成物(I-1)の代わりに水性ウレタン樹脂組成物(I-12)を使用した以外は、実施例1と同様に行った。
【0111】
【表4】

【0112】
実施例1~6は、本発明の実施例であり、低温シール時の表面タックを抑制しつつ、高い初期接着強度を両立し、さらに、高湿条件下においても接着強度を維持することが可能であった。比較例1、2、4は、ポリウレタン樹脂の融解ピーク強度が10J/g未満の例であり、十分な接着強度を得ることができず、比較例3は、ポリウレタン樹脂が、融解ピーク強度を有しない例であり、十分な接着強度を得ることができず、比較例5、6は、ポリオール成分がポリカーボネートポリオールを含まない例であり、高湿条件下において、接着強度が低下した。